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【発明の名称】 遊星歯車装置を備えた変速装置
【発明者】 【氏名】塚田 善昭

【氏名】榊原 健二

【要約】 【課題】変速装置の小型化と構造の簡単化、変速特性の変更の容易化とを可能にする遊星歯車装置を備えた変速装置を提供する。

【解決手段】リングギヤ21、41、61、遊星ギヤ24、44、64、サンギヤ22、42、62の各3つのギヤのうち、制御部材として機能するサンギヤ22、42、62は、固定軸9に一方向クラッチ15、16、17を介して支持されてなる遊星歯車装置20、40、60を備えた変速装置1において、各3つのギヤのうち、入力部材として機能するリングギヤ21、41、61と出力部材として機能する遊星ギヤ24、44、64との間には、油圧クラッチが介設され、該油圧クラッチには、該油圧クラッチを作動させ、その断続を行なわせるように制御された圧油が固定軸9内に設けられた給油通路90を介して供給される。給油通路90は、複数の遊星歯車装置20、40、60に共用され、ロータリーバルブ91は、変速制御装置により操作されるアクチュエータ92を介して回動制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊星歯車装置が、固定軸上に配置され、前記遊星歯車装置を構成するリングギヤ、遊星ギヤ、サンギヤの3つのギヤのうち、制御部材として機能するギヤは、前記固定軸に一方向クラッチを介して支持されてなる遊星歯車装置を備えた変速装置において、前記3つのギヤのうち、入力部材として機能するギヤと出力部材として機能するギヤとの間には、油圧クラッチが介設され、前記油圧クラッチには、前記油圧クラッチを作動させ、その断続を行なわせるように制御された圧油が前記固定軸内に設けられた給油通路を介して供給されるようにされたことを特徴とする遊星歯車装置を備えた変速装置。
【請求項2】 複数の前記遊星歯車装置が、前記固定軸上に並べられて伝動連結され、前記給油通路が、複数の前記遊星歯車装置に共用されたことを特徴とする請求項1記載の遊星歯車装置を備えた変速装置。
【請求項3】 前記給油通路は、前記固定軸内に同軸に配置されたロータリーバルブにより連通・遮断されるようにされたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の遊星歯車装置を備えた変速装置。
【請求項4】 前記ロータリーバルブは、変速制御装置により操作されるアクチュエータを介して回動制御され、前記アクチュエータは、前記固定軸内に同軸に配置されたことを特徴とする請求項3記載の遊星歯車装置を備えた変速装置。
【請求項5】 前記遊星歯車装置を備えた変速装置が、車両の車輪の側方に、車両の前後方向に沿って配設されたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の遊星歯車装置を備えた変速装置。
【請求項6】 前記制御部材として機能するギヤは、サンギヤとされ、入力部材として機能するギヤは、リングギヤとされ、出力部材として機能するギヤは、遊星ギヤとされたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか記載の遊星歯車装置を備えた変速装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願の発明は、遊星歯車装置を備えた変速装置に関し、特に変速装置の小型化と変速特性の変更の容易化とを図った遊星歯車装置を備えた変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】従来、遊星歯車装置を備えた変速装置において、遊星歯車装置を構成するリングギヤ、遊星ギヤ、サンギヤの3つのギヤのうち、入力部材として機能するギヤと出力部材として機能するギヤとの間にあって、これら両部材間の動力伝達を制御する制御部材として機能するギヤの保持部もしくは制御部は、遊星歯車装置と並んで設けられていたので、変速装置が大型化、複雑化していた(実開昭58
109646号公報参照)。
【0003】そこで、本出願人は、従来の遊星歯車装置を備えた変速装置が有する前記のような問題点を解決して、動力伝達装置の小型化と構造の簡単化、変速比の変更の容易化等を可能にする遊星歯車装置を備えた変速装置を開発して、先に、特願平11 90642号として特許出願を行なった。

【0004】しかしながら、この発明においては、遊星歯車装置の変速特性が遠心クラッチを構成するウエイトに作用する遠心力により一義的に決められていたので、走行条件によって変速特性を自由に変えることが難しかった。
【0005】また、従来、遊星歯車装置を備えた変速装置において、油圧の切換えによって変速するものもあるが、油圧切換えのためのソレノイドやピストン等が使用されて、構造が複雑なものになっていた(一般の4輪AT)。
【0006】本願の発明は、従来の遊星歯車装置を備えた変速装置が有する前記のような問題点を解決して、変速装置の小型化と構造の簡単化、変速特性の変更の容易化とを可能にする遊星歯車装置を備えた変速装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および効果】本願の発明は、前記のような課題を解決した遊星歯車装置を備えた変速装置に係り、その請求項1に記載された発明は、遊星歯車装置が、固定軸上に配置され、前記遊星歯車装置を構成するリングギヤ、遊星ギヤ、サンギヤの3つのギヤのうち、制御部材として機能するギヤは、前記固定軸に一方向クラッチを介して支持されてなる遊星歯車装置を備えた変速装置において、前記3つのギヤのうち、入力部材として機能するギヤと出力部材として機能するギヤとの間には、油圧クラッチが介設され、前記油圧クラッチには、前記油圧クラッチを作動させ、その断続を行なわせるように制御された圧油が前記固定軸内に設けられた給油通路を介して供給されるようにされたことを特徴とする遊星歯車装置を備えた変速装置である。
【0008】請求項1に記載された発明は、前記のように構成されているので、遊星歯車装置の変速特性は、油圧クラッチを断続させる圧油(作動油)の供給タイミングによって決められる。この結果、この圧油の供給タイミングを走行条件に応じて適宜制御することにより、遊星歯車装置の変速特性を走行条件に応じて適宜変更することができ、走行性能を向上させることができる。
【0009】また、油圧クラッチを断続させる圧油は、固定軸内に設けられた給油通路を介して供給されるので、固定軸内の空きスペースを有効に利用して圧油を供給することができ、変速装置の外周を小径化することができる。これにより、変速装置を小型化することができる。
【0010】また、請求項2記載のように請求項1記載の発明を構成することにより、複数の遊星歯車装置が、固定軸上に並べられて伝動連結され、給油通路が、複数の遊星歯車装置に共用されるので、複数の遊星歯車装置を備えた変速装置を小型化することができる。
【0011】また、請求項3記載のように請求項1または請求項2記載の発明を構成することにより、給油通路は、固定軸内に同軸に配置されたロータリーバルブにより連通・遮断されるようにされるので、このロータリーバルブを回動制御することにより、油圧クラッチへの圧油の供給タイミングの制御が可能になり、その制御がきわめて容易になる。また、ロータリーバルブの構造は簡単であり、変速段数が違っても、その構造変更を少なくすることができる。
【0012】さらに、請求項4記載のように請求項3記載の発明を構成することにより、ロータリーバルブは、変速制御装置により操作されるアクチュエータを介して回動制御され、該アクチュエータは、固定軸内に同軸に配置される。この結果、固定軸内の空きスペースを有効に利用してアクチュエータを配置することができ、変速装置をさらに小型化することができる。
【0013】また、請求項5記載のように請求項1ないし請求項4のいずれか記載の発明を構成することにより、遊星歯車装置を備えた変速装置が、車両の車輪の側方に、車両の前後方向に沿って配設される。この結果、車両における変速装置を小型化することができ、後輪の横に近接配置することができる。
【0014】さらにまた、請求項6記載のように請求項1ないし請求項5のいずれか記載の発明を構成することにより、制御部材として機能するギヤは、サンギヤとされ、入力部材として機能するギヤは、リングギヤとされ、出力部材として機能するギヤは、遊星ギヤとされる。この結果、遊星歯車装置を構成する3つのギヤのうち、最も内側のギヤであるサンギヤが固定軸に一方向クラッチを介して支持されるので、遊星歯車装置を構成する3つのギヤのうち、制御部材として機能するギヤを固定軸に一方向クラッチを介して支持する構成をきわめて簡単化することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図1ないし図6に図示される本願の請求項1ないし請求項6に記載された発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態における遊星歯車装置を備えた変速装置の縦断面図、図2および図3は、図1の部分拡大図、図4は、図1の変速装置の一作動状態における遊星歯車装置の縦断面図、図5は、図1の変速装置において使用される変速用ロータリーバルブの拡大図、図6は、同変速用ロータリーバルブの作動図である。
【0016】図1ないし図3において、本実施形態における遊星歯車装置20、40、60を備えた変速装置1は、例えば、自動二輪車に搭載される内燃機関の減速機として使用されるものであって、図示されない内燃機関のクランクシャフトの回転が、変速装置1の図1において略中央部に配置されたドリブンギヤ2に入力されて、右方端に配置された出力ギヤ3から減速されて出力される。
【0017】ドリブンギヤ2は、大径部と小径部とからなる回転筒体4の段部に円周方向に複数個形成された突起と、これらの突起に対応させてドリブンギヤ2に形成された複数個の円孔とが嵌着し合うことにより、回転筒体4と一体に結合されており、回転筒体4は、その図1において右方小径部4b が遠心式発進クラッチ6のインナ6a とスプライン嵌合されて、ニードル軸受7、8を介してセンター軸9に回転自在に支持されている。出力ギヤ3も、そのボス部がニードル軸受85を介してセンター軸9に回転自在に支持されている。ニードル軸受8は、また、遠心式発進クラッチ6のアウタ6b をも回転自在に支持している。
【0018】ドリブンギヤ2と出力ギヤ3との間には、図1において左から順に、遠心式発進クラッチ6、2速用変速クラッチ12、3速用変速クラッチ13、4速用変速クラッチ14がセンター軸9上に配置されている。2速用変速クラッチ12、3速用変速クラッチ13、4速用変速クラッチ14は、センター軸9上に一方向クラッチ15〜17を介して片側にのみ回転可能に支持されて、それぞれ配置されている。
【0019】センター軸9は、固定軸であって、その図1において右方端が、詳細には図示されないが、クランクケース等のケース10の右方ケース部10a に回り止めによって回転不能に固定されている。センター軸9の図1において左方端は、左方ケース部10b の軸受部に支持されている。
【0020】したがって、ドリブンギヤ2が内燃機関のクランクシャフトによりギヤの噛合を介して回転されると、遠心式発進クラッチ6のインナ6a がドリブンギヤ2と一体に回転する。そして、その回転数が第1の所定の回転数に達すると、インナ6a のウエイトが遠心式発進クラッチ6のアウタ6b の内周面に接して、遠心式発進クラッチ6が接続状態になる。
【0021】遠心式発進クラッチ6のアウタ6b は、センター軸9上において隣接する2速用変速クラッチ12のアウタ12a とリベット18により一体に結合されているので、遠心式発進クラッチ6が前記のようにして接続状態になると、このアウタ12a もドリブンギヤ2と一体に回転する。
【0022】回転ドラム状の2速用変速クラッチ12のアウタ12a の外方筒状部の開口側内周縁には、第1遊星歯車装置20のリングギヤ21が嵌着されている。また、センター軸9上には、アウタ12a に隣接して第1遊星歯車装置20のサンギヤ22と一体のサンギヤボス22a が、前記した一方向クラッチ15を介して片側にのみ回転可能に支持されている。一方向クラッチ15は、センター軸9とサンギヤボス22a との間に圧入されている。
【0023】第1遊星歯車装置20のリングギヤ21とサンギヤ22との間には、遊星ギヤ24が、これらのギヤと噛み合うようにして介装されている。そして、これらリングギヤ21、サンギヤ22、遊星ギヤ24により、第1遊星歯車装置20が構成されている。
【0024】また、2速用変速クラッチ12のアウタ12aの外方筒状部の内周面には、環状板状の変速用クラッチプレート25が複数枚植設されている。そして、これに対向するようにして、遊星ギヤ24のキャリアとして作用するクラッチセンター26のボス部である遊星ギヤボス26a の外周面には、環状板状の変速用フリクションディスク28が複数枚、クラッチプレート25からわずかに離間させられて、これと相対回転自在に嵌着されている。
【0025】2速用変速クラッチ12のアウタ12aは、その中央部にセンター軸9に嵌合して摺動しながら回転するボス部30を有しており、また、このボス部30の外方端から外方筒状部と同方向に伸長させられた内方筒状部30a を有している。この内方筒状部30a とサンギヤボス22a との間には、ニードル軸受31が介設されている。ボス部30には、円周方向に等間隔に放射方向に指向して通孔30b が複数個形成されている。
【0026】外方筒状部と内方筒状部30a とに挟まれたアウタ12aの底部は、シリンダ室32とされており、このシリンダ室32内にピストン33が摺動自在に収容されている。このシリンダ室32内には、後述するとおり、アウタ12aの回転が第2の所定の回転数に達したとき、センター軸9内に設けられた給油通路90からセンター軸9に形成された通孔34a 、前記した通孔30b を介して作動油が供給される。
【0027】そして、この作動油がピストン33をウエイブスプリング35の付勢力に抗して図3において右方に押して、クラッチプレート25とフリクションディスク28とを接触させる。このようにして、2速用変速クラッチ12が接続状態にされて、クラッチセンター26および遊星ギヤ24は、2速用変速クラッチ12のアウタ12a と一体に回転する。これにより、第1遊星歯車装置20全体が、アウタ12a と一体に回転する。このように、2速用変速クラッチ12は、油圧によって断続される油圧クラッチとして構成されている。27は、リターンスプリングである。
【0028】ここで、2速用変速クラッチ12のインナは、リングギヤ21を除いた第1遊星歯車装置20の各構成部材および変速用クラッチプレート28よりなるものと見ることができる。これら2速用変速クラッチアウタ12a と2速用変速クラッチインナとにより、2速用変速クラッチ12が構成されている。
【0029】2速用変速クラッチ12は、次のように作動する。先ず、ドリブンギヤ2の回転数が第1の所定の回転数(LOWレシオ)に達して、遠心式発進クラッチ6が接続状態になると、2速用変速クラッチ12のアウタ12a が回転し、該アウタ12a と一体のリングギヤ21が回転して、第1遊星歯車装置20に回転動力が入力される。リングギヤ21は、第1遊星歯車装置20において、入力部材として機能している。
【0030】第1遊星歯車装置20において、リングギヤ21が回転すると、サンギヤ22が一方向クラッチ15により逆方向に回転不能に固定されているので、遊星ギヤ24がリングギヤ21とサンギヤ22との間で自転しながら公転する。
【0031】遊星ギヤ24のクラッチセンター26は、センター軸9上において隣接する3速用変速クラッチ13のアウタ13a と一体に結合されているので、遊星ギヤ24の公転は、この一体結合を介して3速用変速クラッチ13のアウタ13a に伝達される。遊星ギヤ24の公転数は、第1遊星歯車装置20の所定の減速比に基づき、リングギヤ21の回転数に対して減速されている。
【0032】遊星ギヤ24は、第1遊星歯車装置20において、出力部材として機能している。サンギヤ22は、入力部材として機能するリングギヤ21と出力部材として機能する遊星ギヤ24との間にあって、第1遊星歯車装置20の減速比を制御する制御部材として機能している。
【0033】ドリブンギヤ2の回転数がさらに増加すると(LOWレシオ→2速レシオ)、リングギヤ21の回転数がさらに増加し、遊星ギヤ24の公転数も増加して、これらの回転数が第2の所定の回転数レベルに達したとき、シリンダ室32内に圧油が供給されて、ピストン33を図において右方に押して、クラッチプレート25とフリクションディスク28とを接触させる。これにより、2速用変速クラッチ12が接続状態になり、第1遊星歯車装置20全体が2速用変速クラッチ12のアウタ12a およびドリブンギヤ2と一体に回転する。そして、この回転は、第1遊星歯車装置20の遊星ギヤ24のクラッチセンター26と3速用変速クラッチ13のアウタ13a との一体結合を介してアウタ13a に減速されずに伝達される。
【0034】3速用変速クラッチ13の構成は、2速用変速クラッチ12の構成と基本的に同じであるので、2速用変速クラッチ12の各部品20〜35に対応する部分には、40〜55の符号をそれぞれ付し、第1桁の数字および添字を双方合致させて示すことにして、詳細な説明を省略する。また、4速用変速クラッチ14の構成についても、同様であり、60〜75の符号をそれぞれ付し、第1桁の数字および添字を双方合致させて示すことにして、詳細な説明を省略する。
【0035】前記のようにして、2速用変速クラッチ12のアウタ12a の回転が3速用変速クラッチ13のアウタ13a に減速されるかもしくは減速されずに伝達されると、3速用変速クラッチ13は、2速用変速クラッチ12と全く同様に作動して、アウタ13aへの回転入力を、第2遊星歯車装置40の遊星ギヤ44のクラッチセンター46と4速用変速クラッチ14のアウタ14a との一体結合を介してアウタ14a に減速するかもしくは減速せずに伝達する。
【0036】アウタ13a への回転入力が小さい(回転数が低い)場合には、3速用変速クラッチ13は、この回転入力を4速用変速クラッチ14のアウタ14a に減速して伝達する。また、この回転入力が大きくて(回転数が高い)、第3の所定の回転数に達したとき(2速レシオ→3速レシオ)には、3速用変速クラッチ13は、接続状態になるので、この回転入力を4速用変速クラッチ14のアウタ14a に減速せずに伝達する。
【0037】前記のようにして、3速用変速クラッチ13のアウタ13a の回転が4速用変速クラッチ14のアウタ14a に減速されるかもしくは減速されずに伝達されると、4速用変速クラッチ14は、3速用変速クラッチ13と全く同様に作動して、アウタ14aへの回転入力を、第3遊星歯車装置60の遊星ギヤ64のクラッチセンター66と出力プレート80との一体結合を介して出力プレート80に減速するかもしくは減速せずに伝達する。
【0038】アウタ14a への回転入力が小さい場合には、4速用変速クラッチ14は、この回転入力を出力プレート80に減速して伝達する。また、この回転入力が大きくて、第4の所定の回転数に達したとき(3速レシオ→4速レシオ)には、4速用変速クラッチ14は、接続状態になるので、この回転入力を出力プレート80に減速せずに伝達する。
【0039】出力プレート80は、そのボス部が出力ギヤ3のボス部と一体化されているので、出力プレート80に伝達された回転入力は、同速度でもって出力ギヤ3に伝達され、この出力ギヤ3から出力される。
【0040】以上のようにして、ドリブンギヤ2と出力ギヤ3との間に配置された遠心式発進クラッチ6、2速用変速クラッチ12、3速用変速クラッチ13、4速用変速クラッチ14のそれぞれの作用により、ドリブンギヤ2に伝達される回転入力が、その大きさ(回転数の大きさ)に応じて多段階に変速されて、出力ギヤ3から出力される。
【0041】すなわち、ドリブンギヤ2に伝達される回転入力が2速用変速クラッチ12が接続されるまでの範囲にある場合、遠心式発進クラッチ6のみが接続状態にあり、その回転入力は、変速クラッチ12〜14により3段階に減速されて、出力ギヤ3から出力される(LOWレシオ)。
【0042】回転が上がり、3速用変速クラッチ13が接続される回転数以下になった場合、遠心式発進クラッチ6と2速用変速クラッチ12とが接続状態にあり、その回転入力は、変速クラッチ13、14により2段階に減速される(2速レシオ)。
【0043】さらに、回転が上がり、4速用変速クラッチ14が接続される回転数以下になった場合、遠心式発進クラッチ6、2速用変速クラッチ12および3速用変速クラッチ13が接続状態にあり、4速用変速クラッチ14のみにより1段階に減速される(3速レシオ)。
【0044】さらに、回転が上がり、4速用変速クラッチ14が接続される回転数になると、遠心式発進クラッチ6、変速クラッチ12〜14の全てが接続状態にあり、ドリブンギヤ2に伝達される回転入力は、そのまま高速で出力プレート80に伝達され、出力ギヤ3から出力される(4速レシオ)。
【0045】このように、本実施形態における変速装置1は、変速クラッチ12〜14の作用により、ドリブンギヤ2に伝達される回転入力を、その大きさ(回転数の大きさ)に応じて1〜3段階に減速して出力する。この減速段数は、同一モジュールからなる変速クラッチの配置台数によるから、変速比(減速比)の変更は容易である。
【0046】ここで、ドリブンギヤ2の回転数が所定の第2〜第4の回転数に達したとき、油圧クラッチとして構成される変速クラッチ12〜14の各シリンダ室32、52、72に順次圧油を供給して、これらの変速クラッチ12〜14を順次接続状態にする圧油の供給構造について、図1〜図6を参照しつつ、詳細に説明する。
【0047】センター軸9は、中空パイプから形成されており、その中空部が、変速クラッチ12〜14の各シリンダ室32、52、72に圧油を供給する給油通路90とされている。そして、この給油通路90に、ロータリーバルブ91と、このロータリーバルブ91を回動制御するアクチュエータとしてのオイルバルブシャフト92とがそれぞれ収容されている。ロータリーバルブ91とオイルバルブシャフト92とは、それらの端部同志がピンにより連結されている。センター軸9の図1において右方端は、閉塞部材114 により閉塞されている。
【0048】給油通路90を通って各シリンダ室32、52、72に供給される圧油は、このロータリーバルブ91の回動により連通・遮断されて、変速クラッチ12〜14が断続される。そのために、ロータリーバルブ91には、その軸方向に間隔を置き、周方向に位相をずらせて、変速クラッチ12〜14に対応した数の弁口93a 、94a 、95a がそれぞれ形成されている(図5、図6参照)。
【0049】第1の弁口93a は、ドリブンギヤ2の回転数が所定の第2の回転数に達したとき、センター軸9に形成された通孔34a と連通状態にされて、ロータリーバルブ91内の圧油がシリンダ室32に供給される。これにより、ピストン33がウエイブスプリング35の付勢力に抗してクラッチプレート25を押して、変速クラッチ12が接続状態にされる。ウエイブスプリング35は、変速クラッチ12が接続されるときの変速ショックを緩和させる働きをしている。27は、リターンスプリングである。
【0050】第2の弁口94a は、ドリブンギヤ2の回転数が所定の第3の回転数に達したとき、センター軸9に形成された通孔54a と連通状態にされて、ロータリーバルブ91内の圧油がシリンダ室52に供給される。これにより、ピストン53がウエイブスプリング55の付勢力に抗してクラッチプレート45を押して、変速クラッチ13が接続状態にされる。なお、このとき、変速クラッチ12は接続状態を維持している。
【0051】第3の弁口95a は、ドリブンギヤ2の回転数が所定の第4の回転数(TOP)に達したとき、センター軸9に形成された通孔74a と連通状態にされて、ロータリーバルブ91内の圧油がシリンダ室72に供給される。これにより、ピストン73がウエイブスプリング75の付勢力に抗してクラッチプレート65を押して、変速クラッチ14が接続状態にされる。なお、このとき、変速クラッチ12および変速クラッチ13は接続状態を維持している。したがって、3段の変速クラッチ12〜14の全てが接続状態にある。
【0052】ロータリーバルブ91の前記のような回動制御は、変速制御装置100 (図1、図2参照)により、アクチュエータとして機能するオイルバルブシャフト92を介して行なわれる。変速制御装置100 は、変速用モータ101 、コントロールギヤ102、ポテンショメータ103 、ストッパーピン104 等から構成されている。以下に、この変速制御装置100 の構造と作用について説明する。
【0053】図1および図2において、オイルバルブシャフト92は、センター軸9の図1において左方端から突出して伸長して、左方ケース部10b に固着された軸受板105により軸受され、その端部にコントロールギヤ102 が嵌着されている。このコントロールギヤ102 は、同じく左方ケース部10b に固着されたモータ取付けケース106 に取り付けられた変速用モータ101 の回転軸端のギヤと噛み合い、変速用モータ101 が所定角度回転すると、その回転は、コントロールギヤ102 およびオイルバルブシャフト92を介してロータリーバルブ91に伝達される。
【0054】103 は、ロータリーバルブ91の回転角度を検出するためのポテンショメータであり、そのギヤ109 がコントロールギヤ102 と噛み合っている。104 は、ストッパーピンであり、複数設けられてロータリーバルブ91の位置決めをする。このストッパーピン104 の位置決め機能により、変速用モータ101 がロータリーバルブ91の位置保持をするために必要な動力が不要にされるので、変速用モータ101 を小型化することができる。
【0055】ストッパーピン104 を保持するスライド部材107 は、ギヤ109 の軸に摺動自在に嵌挿され、コイルスプリング108 により常時軸受板105 に向けて弾発されており、軸受板105 に形成された凹部に落ち込むことにより、ロータリーバルブ91を安定に保持する。
【0056】変速用モータ101 には、車両の走行状態を検出する各種センサーからの信号が入力される。例えば、車速信号が入力されて、車速が遠心式発進クラッチ6、2〜3速用変速クラッチ12〜14の各クラッチを接続・遮断状態にする回転数に達すると、変速用モータ101 が所定角度ずつ正転もしくは逆転して、オイルバルブシャフト92を介してロータリーバルブ91を正転もしくは逆転させる。そして、これらのクラッチの接続・遮断の組合せを各種に変更する。なお、このようなロータリーバルブ91の回動制御は、変速用モータ101 に依らずに、マニュアル操作に依って行なわれてもよい。
【0057】センター軸9の図1において左方端が左方ケース部10b の軸受部に支持される部分においては、その軸受部の内方寄りの部分が抉られ、フランジ蓋部材111 により蓋をされて、そこに作動油(圧油)の供給室110 が形成されている。図示されないオイルポンプにより圧送されてきた作動油は、この供給室110 により受容されて、ここからセンター軸9に形成された通孔112 を通り、センター軸9内の給油通路90に流入する。そして、ロータリーバルブ91の内部を満たす。
【0058】前記のようにして構成される遊星歯車装置20、40、60を備えた変速装置1は、例えば、自動2輪車の車輪113 (図1参照)の側方に、車両の前後方向に沿って配設される。変速装置1は、前記のとおり、小型化されているので、これが車幅方向に大きく張り出すことはない。
【0059】内燃機関の始動時には、図示されない始動用モータもしくはキック機構により、所定レシオの歯車の噛合を介して始動用トルクが始動用ギヤ81(図1参照)に入力される。
【0060】始動用ギヤ81は、図1に図示されるように、そのボス81a と回転筒体4の大径部4a との間に介設された始動用一方向クラッチ83を介して、回転筒体4に連結されている。ボス81a は、ニードル軸受84を介してセンター軸9に回転自在に軸受されている。
【0061】したがって、いま、始動用ギヤ81に始動用トルクが入力されると、その回転入力は、始動用一方向クラッチ83、回転筒体4を介してドリブンギヤ2に伝達され、このドリブンギヤ2から出力される。そして、ドリブンギヤ2に噛み合う図示されないギヤを介してクランクシャフトが回転させられて、内燃機関が始動する。
【0062】本実施形態は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。遊星歯車装置20、40、60がセンター軸(固定軸)9上に配置され、該遊星歯車装置20、40、60を構成するリングギヤ21、41、61、遊星ギヤ24、44、64、サンギヤ22、42、62の各3つのギヤのうち、制御部材として機能するサンギヤ22、42、62は、センター軸9に一方向クラッチ15、16、17を介して支持されてなる遊星歯車装置20、40、60を備えた変速装置1において、該各3つのギヤのうち、入力部材として機能するリングギヤ21、41、61と出力部材として機能する遊星ギヤ24、44、64との間には、油圧クラッチ(遊星歯車装置20の油圧クラッチは、クラッチプレート25、フリクションディスク28、シリンダ室32、ピストン33、リターンスプリング27からなる。遊星歯車装置40、60の油圧クラッチも、同様の部材からなる(図3参照)。)がそれぞれ介設され、該油圧クラッチには、該油圧クラッチを作動させ、その断続を行なわせるように制御された圧油がセンター軸9内に設けられた給油通路90を介して供給されるようになっている。
【0063】この結果、遊星歯車装置20、40、60の変速特性は、それぞれの油圧クラッチを断続させる圧油の供給タイミングによって決めることができるので、この圧油の供給タイミングを走行条件に応じて適宜制御することにより、遊星歯車装置20、40、60の変速特性を走行条件に応じて適宜変更することができ、走行性能を向上させることができる。
【0064】また、油圧クラッチを断続させる圧油は、センター軸9内に設けられた給油通路90を介して供給されるので、センター軸9内の空きスペースを有効に利用して圧油を供給することができ、変速装置1の外周を小径化することができる。これにより、変速装置1を小型化することができる。
【0065】また、複数の遊星歯車装置20、40、60が、センター軸9上に並べられて伝動連結され、給油通路90が、複数の遊星歯車装置20、40、60に共用されているので、複数の遊星歯車装置20、40、60を備えた変速装置1を小型化することができる。
【0066】さらに、給油通路90は、センター軸9内に同軸に配置されたロータリーバルブ91により連通・遮断されるようにされているので、このロータリーバルブ91を回動制御することにより、各油圧クラッチへの圧油の供給タイミングを制御することが可能になり、その制御がきわめて容易になる。また、ロータリーバルブ91の構造は簡単であり、変速段数が違っても、その構造変更を少なくすることができる。
【0067】また、ロータリーバルブ91は、変速制御装置100 により操作されるオイルバルブシャフト92(アクチュエータ)を介して回動制御され、該オイルバルブシャフト92は、センター軸9内に同軸に配置されているので、センター軸9内の空きスペースを有効に利用してオイルバルブシャフト92を配置することができ、変速装置1をさらに小型化することができる。
【0068】また、遊星歯車装置20、40、60を備えた変速装置1が、車両の車輪113 の側方に、車両の前後方向に沿って配設されているので、車両における変速装置を小型化することができ、後輪の横に近接配置することができて、車幅方向に張り出すようなことがなくなる。
【0069】さらにまた、制御部材として機能するギヤは、サンギヤ22、42、62とされ、入力部材として機能するギヤは、リングギヤ21、41、61とされ、出力部材として機能するギヤは、遊星ギヤ24、44、64とされているので、遊星歯車装置20、40、60を構成する3つのギヤのうち、最も内側のギヤであるサンギヤ22、42、62がセンター軸9に一方向クラッチ15、16、17を介して支持されることになり、遊星歯車装置20、40、60を構成する3つのギヤのうち、制御部材として機能するギヤをセンター軸9に一方向クラッチ15、16、17を介して支持する構成をきわめて簡単化することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年10月13日(1999.10.13)
【代理人】 【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望 (外2名)
【公開番号】 特開2001−108083(P2001−108083A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−291686