| 【発明の名称】 |
巻き掛け伝動装置の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】山崎 正己
【氏名】高森 誠二
【氏名】萱嶋 浩一
【氏名】横井 英夫
【氏名】服部 勇仁
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| 【要約】 |
【課題】無段変速機におけるベルトのスリップ状態の判定精度を向上する。
【解決手段】駆動力源の出力側に設けられたプライマリプーリおよびセカンダリプーリと、こプライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトとを有し、ベルトのスリップ状態を判定することのできる無段変速機の制御装置において、ベルトの振動状態に基づいて、ベルトのスリップ状態を判定するスリップ判定手段(ステップS2,S3)を備えている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動側回転部材および従動側回転部材と、この駆動側回転部材および従動側回転部材に巻き掛けられた巻き掛け伝動部材とを有し、この巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定することのできる巻き掛け伝動装置の制御装置において、前記巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、この巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定するスリップ判定手段を備えていることを特徴とする巻き掛け伝動装置の制御装置。 【請求項2】 トルクの伝達経路に設けられた駆動側回転部材および従動側回転部材と、この駆動側回転部材および従動側回転部材に巻き掛けられた巻き掛け伝動部材とを有し、前記駆動側回転部材または前記従動側回転部材の少なくとも一方に対する前記巻き掛け伝動部材の巻き掛け径を制御することにより、前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との間における変速比を制御することができるとともに、前記巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定することのできる巻き掛け伝動装置の制御装置において、前記巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、この巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定するスリップ判定手段を備えていることを特徴とする巻き掛け伝動装置の制御装置。 【請求項3】 前記スリップ判定手段により判定される前記巻き掛け伝動部材のスリップ状態に基づいて、前記駆動側回転部材から出力されるトルクと、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記巻き掛け伝動部材との接触面圧との相対関係を制御する相対関係制御手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の巻き掛け伝動装置の制御装置。 【請求項4】 前記相対関係制御手段は、前記巻き掛け伝動部材のスリップの度合いが大きいほど、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記巻き掛け伝動部材との接触面圧を高める機能を備えていることを特徴とする請求項3に記載の巻き掛け伝動装置の制御装置。 【請求項5】 前記スリップ判定手段は、加速度センサにより前記巻き掛け伝動部材の振動状態を判定する機能を備えていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の巻き掛け伝動装置の制御装置。 【請求項6】 前記スリップ判定手段は、音圧センサにより前記巻き掛け伝動部材の振動状態を判定する機能を備えていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の巻き掛け伝動装置の制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、駆動側回転部材および従動側回転部材に巻き掛け伝動部材が巻き掛けられており、巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定することのできる巻き掛け伝動装置の制御装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、車両の走行状態に応じた最適の条件でエンジンを運転することを目的として、エンジンの出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を連続的に制御することのできる無段変速機と、変速比を段階的に制御することのできる有段変速機とがある。このような、無段変速機の一例として、ベルト式の無段変速機が挙げられる。このベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリを有しており、プライマリプーリの溝およびセカンダリプーリの溝にベルトが巻き掛けられている。また、プライマリプーリおよびセカンダリプーリは、共に溝幅を変更することができるように構成されている。 【0003】そして、プライマリプーリの溝幅を制御することにより、ベルトの巻き掛け径が変化してその変速比が変更される。また、セカンダリプーリの溝幅を制御することにより、ベルトに対するセカンダリプーリの挟圧力が変化する。その結果、ベルトの張力が変化して、プライマリプーリおよびセカンダリプーリとベルトとの接触面圧を、無段変速機に入力されるトルクに応じた状態に制御することができる。さらに、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの溝幅を制御するための油圧制御装置の元圧を、オイルポンプにより発生するように構成されており、このオイルポンプが、エンジンに駆動されるように構成されている。 【0004】上記構成の無段変速機においては、前記接触面圧と無段変速機に入力されるトルクとの対応関係が適正でない場合は、ベルトのスリップまたは接触面圧の過剰(伝達するべきトルクに対して、接触面圧が必要以上に高いこと)が生じる可能性がある。ベルトのスリップが生じた場合は、ベルトおよびプライマリプーリならびにセカンダリプーリの摩耗が促進されて、その耐久性が低下するとともに、動力伝達効率が低下する問題があった。また、接触面圧の過剰が発生した場合は、ベルトとプライマリプーリおよびセカンダリプーリとの接触面の摩耗が促進されるとともに、ベルトに必要以上の張力が与えられてその耐久性が低下する問題があり、さらに、エンジンの動力がオイルポンプの駆動により浪費されて、燃費が低下する可能性もあった。 【0005】これらの問題に対処するための方法としては、ベルトのスリップ状態を判定し、その判定結果に応じてベルトと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリとの接触面圧を制御することが挙げられる。このように、無段変速機のベルトのスリップ状態を判定し、かつ、スリップを防止する制御をおこなうことのできる無段変速機の制御装置の一例が、特開平4−54363号公報に記載されている。この公報の制御装置においては、エンジンの出力側に無段変速機(巻き掛け伝動装置)が搭載されており、この無段変速機は、プライマリプーリ(駆動側回転部材)およびセカンダリプーリ(従動側回転部材)と、各プーリに巻き掛けられた駆動ベルト(巻き掛け伝動部材)とを有している。各プーリはシーブの動作により、その溝幅を変更することができる。また、シーブの動作は油圧シリンダにより制御され、この油圧シリンダに作用するライン圧を制御することにより、駆動ベルトの巻き付け径を変えて無段変速することができる。 【0006】そして、エンジンのトルクが無段変速機のプライマリプーリに伝達されると、このトルクが駆動ベルトを経由してセカンダリプーリに伝達される。この動作中に、駆動ベルトの目標ベルト速度と実ベルト速度とに基づいて、駆動ベルトのスリップ変化が算出される。ここで、駆動ベルトのスリップが発生した場合は、各プーリの油圧シリンダに作用するライン圧を補正することにより、駆動ベルトの張力、言い換えれば、セカンダリプーリおよびプライマリプーリとの接触面圧が制御される。このようにして、駆動ベルトのスリップが防止されて、駆動ベルトの耐久性が向上し、かつ、応答性が向上するものとされている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上記のように、ベルトのスリップ状態を判定し、その判定結果に基づいてベルトの張力を制御する場合は、まず、ベルトのスリップ状態を的確に判定する必要性がある。上記公報においては、目標ベルト速度と実ベルト速度とに基づいて駆動ベルトのスリップ変化量を判定しているが、目標ベルト速度と実ベルト速度との対応関係は、駆動ベルトのスリップ変化以外の条件により変化する可能性がある。 【0008】例えば、実ベルト速度は計測手段から直接的に得られるが、目標ベルト速度は、目標変速比に基づき目標ベルト巻き掛け径を推定した上で算定される。この場合、算定した目標ベルト巻き掛け径と実ベルト巻き掛け径とが必ずしも一致せずに、ずれ(誤差)が生じる。このような、目標ベルト巻き掛け径と実ベルト巻き掛け径とのずれが生じる要因としては、プライマリプーリとセカンダリプーリとの軸間距離の精度誤差、各プーリのベルト保持面の角度誤差、駆動ベルトの周長誤差、プライマリプーリおよびセカンダリプーリを支持するケーシングと、駆動ベルトとの、温度変化にともなう線膨張率の違い、プライマリプーリおよびセカンダリプーリのベルト保持面の摩耗、駆動ベルトの経時変化にともなう摩耗、駆動ベルトの伸び、ベルトの巻き掛け径やベルトの周長に関わる算定エラー、目標ベルト速度に対する実行制御油圧のばらつき、変速過渡応答のずれによるばらつきなどが挙げられる。 【0009】上記のような各種の事項が単独もしくは重複して発生した場合は、駆動ベルトのスリップ量の変化に関わりなく、目標ベルト速度と実ベルト速度との対応関係が変化する可能性がある。その結果、駆動ベルトのスリップ状態の判定精度が低下する可能性があった。 【0010】この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、巻き掛け伝動部材のスリップ状態の判定精度を向上することのできる巻き掛け伝動装置の制御装置を提供することを目的としている。 【0011】 【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動側回転部材および従動側回転部材と、この駆動側回転部材および従動側回転部材に巻き掛けられた巻き掛け伝動部材とを有し、この巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定することのできる巻き掛け伝動装置の制御装置において、前記巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、この巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定するスリップ判定手段を備えていることを特徴とするものである。 【0012】請求項1の発明によれば、実際に巻き掛け伝動部材がスリップした場合に発生する巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、巻き掛け伝動部材のスリップ状態が判定される。したがって、巻き掛け伝動部材のスリップ状態に必ずしも影響を及ぼさない条件は、スリップの状態を判定する条件には含まれ難くなり、スリップ状態の判定精度を向上することができる。 【0013】請求項2の発明は、トルクの伝達経路に設けられた駆動側回転部材および従動側回転部材と、この駆動側回転部材および従動側回転部材に巻き掛けられた巻き掛け伝動部材とを有し、前記駆動側回転部材または前記従動側回転部材の少なくとも一方に対する前記巻き掛け伝動部材の巻き掛け径を制御することにより、前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との間における変速比を制御することができるとともに、前記巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定することのできる巻き掛け伝動装置の制御装置において、前記巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、この巻き掛け伝動部材のスリップ状態を判定するスリップ判定手段を備えていることを特徴とするものである。 【0014】請求項2の発明によれば、実際に巻き掛け伝動部材がスリップした場合に発生する巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、巻き掛け伝動部材のスリップ状態が判定される。このため、巻き掛け伝動部材のスリップ状態に必ずしも影響を及ぼさない条件は、スリップの状態を判定する条件には含まれ難くなり、スリップ状態の判定精度を向上することができる。したがって、巻き掛け伝動装置の動力伝達状態を正確に把握することができる。 【0015】請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記スリップ判定手段により判定される前記巻き掛け伝動部材のスリップ状態に基づいて、前記駆動側回転部材から出力されるトルクと、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記巻き掛け伝動部材との接触面圧との相対関係を制御する相対関係制御手段を備えていることを特徴とするものである。 【0016】請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の作用が生じるほか、巻き掛け伝動部材と駆動側回転部材および従動側回転部材との接触面圧を、伝達するべきトルクに応じた状態に適合させるように制御することができる。 【0017】請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記相対関係制御手段は、前記巻き掛け伝動部材のスリップの度合いが大きいほど、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記巻き掛け伝動部材との接触面圧を高める機能を備えていることを特徴とするものである。 【0018】請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の作用が生じるほか、巻き掛け伝動部材のスリップを確実に抑制することができる。 【0019】請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれかの構成に加えて、前記スリップ判定手段は、加速度センサにより前記巻き掛け伝動部材の振動状態を判定する機能を備えていることを特徴とするものである。 【0020】請求項5の発明によれば、加速度センサにより、巻き掛け伝動部材の弦振動が判定され、請求項2〜4のいずれかの発明と同様の作用が生じる。 【0021】請求項6の発明は、請求項2〜4のいずれかの構成に加えて、前記スリップ判定手段は、音圧センサにより前記巻き掛け伝動部材の振動状態を判定する機能を備えていることを特徴とするものである。 【0022】請求項6の発明によれば、音圧センサにより、巻き掛け伝動部材の弦振動が判定され、請求項2〜4のいずれかの発明と同様の作用が生じる。 【0023】この発明において、巻き掛け伝動部材のスリップ状態としては、スリップの有無、スリップの度合い、スリップの強度、スリップ量、スリップ率、スリップ割合などが例示される。 【0024】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。図2は、この発明を適用したFF車(フロントエンジンフロントドライブ;エンジン前置き前輪駆動車)のスケルトン図である。図2において、1は車両の駆動力源としてのエンジンであり、このエンジン1としては内燃機関、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが用いられる。そして、エンジン1のクランクシャフト2が車両の幅方向に配置されている。なお、以下の説明は、エンジン1としてガソリンエンジンを用いた場合に対応している。 【0025】また前記エンジン1の出力側には、トランスアクスル3が設けられている。このトランスアクスル3は内部中空のケーシング4を有し、ケーシング4の内部には、トルクコンバータ5と前後進切り換え機構6と無段変速機(CVT)7と最終減速機(言い換えれば差動装置)8とが設けられている。まず、トルクコンバータ5の構成について説明する。ケーシング4の内部には、クランクシャフト2と同一の軸線(図示せず)を中心として回転可能なインプットシャフト9が設けられており、インプットシャフト9におけるエンジン1側の端部にはタービンランナ10が取り付けられている。 【0026】一方、クランクシャフト2の後端にはドライブプレート11を介してフロントカバー12が連結されており、フロントカバー12にはポンプインペラ13が接続されている。このタービンランナ10とポンプインペラ13とは対向して配置され、タービンランナ10およびポンプインペラ13の内側にはステータ14が設けられている。また、インプットシャフト9におけるフロントカバー12側の端部には、ダンパ機構16を介してロックアップクラッチ15が設けられている。上記のように構成されたフロントカバー12およびポンプインペラ13などにより形成されたケーシング(図示せず)内に、作動流体としてのオイルが供給されている。 【0027】上記構成により、エンジン1の動力(トルク)がクランクシャフト2からフロントカバー12に伝達される。この時、ロックアップクラッチ15が解放されている場合は、ポンプインペラ13のトルクが流体によりタービンランナ10に伝達され、ついでインプットシャフト9に伝達される。なお、ポンプインペラ13からタービンランナ10に伝達されるトルクを、ステータ14により増幅することもできる。一方、ロックアップクラッチ15が係合されている場合は、フロントカバー12のトルクが機械的にインプットシャフト9に伝達される。 【0028】前記ケーシング4の内部におけるトルクコンバータ5と前後進切り換え機構6との間には、オイルポンプ17が設けられている。このオイルポンプ17のロータ(図示せず)と、ポンプインペラ13とが円筒形状のハブ19により接続されている。また、オイルポンプ17のボデー(図示せず)はケーシング4側に固定されている。この構成により、エンジン1の動力がポンプインペラ13を介してロータに伝達され、オイルポンプ17を駆動することができる。 【0029】前記前後進切り換え機構6は、インプットシャフト9と無段変速機7との間の動力伝達経路に設けられている。前後進切り換え機構6はダブルピニオン形式の遊星歯車機構32を有している。この遊星歯車機構32は、インプットシャフト9の無段変速機7側の端部に設けられたサンギヤ33と、このサンギヤ33の外周側に、サンギヤ33と同心状に配置されたリングギヤ34と、サンギヤ33に噛み合わされたピニオンギヤ35と、このピニオンギヤ35およびリングギヤ34に噛み合わされたピニオンギヤ36と、ピニオンギヤ35およびピニオンギヤ36を、サンギヤ33の周囲を一体的に公転可能な状態で保持したキャリヤ37とを有している。そして、このキャリヤ37と駆動側シャフト21とが連結されている。また、キャリヤ37とインプットシャフト9との間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチCRが設けられている。さらに、ケーシング4側には、リングギヤ34の回転・固定を制御するブレーキBRが設けられている。 【0030】前記無段変速機7は、インプットシャフト9と同心状に配置された駆動側シャフト21と、駆動側シャフト21と相互に平行に配置された従動側シャフトとしてのカウンタシャフト22とを有している。一方、ケーシング4の内壁46には軸受47が取り付けられており、ケーシング4の外壁48には軸受49が取り付けられている。そして、軸受47,49により駆動側シャフト21が回転可能に保持されている。さらに、ケーシング4の内壁46には軸受50,51が取り付けられており、ケーシング4の外壁48には軸受52,53が取り付けられている。そして、軸受50,〜53によりカウンタシャフト22が回転可能に保持されている。 【0031】前記駆動側シャフト21にはプライマリプーリ23が設けられており、カウンタシャフト22側にはセカンダリプーリ24が設けられている。プライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24はいずれも主として金属材料により構成されている。プライマリプーリ23は、駆動側シャフト21に固定された固定シーブ25と、駆動側シャフト21の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ26とを有している。そして、固定シーブ25と可動シーブ26との対向面には、相互の組合せによりV字形状の溝M1を構成する方向に傾斜した保持面54,55が形成されている。 【0032】また、この可動シーブ26を駆動側シャフト21の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ26と固定シーブ25とを接近・離隔させる油圧アクチュエータ27が設けられている。この油圧アクチュエータ27は、油圧室(図示せず)と、油圧室の油圧に応じて駆動側シャフト21の軸線方向に動作し、かつ、可動シーブ26に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。 【0033】一方、セカンダリプーリ24は、カウンタシャフト22に固定された固定シーブ28と、カウンタシャフト22の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ29とを有している。そして、固定シーブ28と可動シーブ29との対向面には、相互の組合せによりV字形状の溝M2を構成する方向に傾斜した保持面56,57が形成されている。 【0034】また、この可動シーブ29をカウンタシャフト22の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ29と固定シーブ28とを接近・離隔させる油圧アクチュエータ30が設けられている。この油圧アクチュエータ30は、油圧室(図示せず)と、油圧室の油圧によりカウンタシャフト22の軸線方向に動作し、かつ、可動シーブ29に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。 【0035】上記構成のプライマリプーリ23の溝M1およびセカンダリプーリ24溝M2に対して、ベルト31が巻き掛けられている。図3はベルト31の構成を示す拡大図であり、ベルト31は、リング形状に構成された2つのフープ58と、2つのフープ58に取り付けられ、かつ、フープ58の円周方向に配置された多数のブロック59とを有する。フープ58は金属製の薄板を複数枚重ねて構成されている。また、多数のブロック59は金属製の薄板(駒)により構成され、相互に接触した状態でフープ58により保持されている。 【0036】前記ブロック59には、保持面54,〜57側に向けて突出した2つの肩部59Aが形成されている。各肩部59Aの両端には、保持面54,〜57に接触する接触面61が形成されている。また、各肩部59Aの外周側には、保持面54,〜57側に開口する溝60がそれぞれ形成され、各溝60にフープ58がそれぞれ挟み込まれている。 【0037】さらに各肩部59Aにおける溝60に臨む縁部の形状は、ベルト31の外周側に向けて突出する方向に湾曲している。さらに、フープ58における肩部59Aと接触する面、つまり内周面58Aの形状が、肩部59Aに対応して円弧形状に湾曲されている。この肩部59Aの縁部とフープ58の内周面58Aとが、フープ58が溝60から脱落する方向に移動することを防止する機能、いわゆるセンタリング機能を有している。なお、前記各フープ58を構成する金属板同士の間(各層間)には、潤滑油が供給されている。 【0038】前記無段変速機7と最終減速機8との間の動力伝達経路には、カウンタシャフト22と相互に平行なインターミディエイトシャフト39が設けられている。インターミディエイトシャフト39にはカウンタドリブンギヤ40とファイナルドライブギヤ41とが形成されている。前記カウンタシャフト22にはカウンタドライブギヤ42が形成され、カウンタドライブギヤ42とカウンタドリブンギヤ40とが噛み合わされている。 【0039】一方、前記最終減速機8はリングギヤ43を有し、ファイナルドライブギヤ41とリングギヤ43とが噛み合わされている。また、リングギヤ43はデフケース(図示せず)の外周に形成され、このデフケースの内部には複数のピニオンギヤ(図示せず)が取り付けられている。このピニオンギヤには2つのサイドギヤ(図示せず)が噛み合わされている。2つのサイドギヤには別個にフロントドライブシャフト44が接続され、各フロントドライブシャフト44には、駆動輪(前輪)45が接続されている。 【0040】さらに、前記ケーシング4の外壁48の外面、例えば軸受49に隣接する箇所には、加速度センサ62が取り付けられている。この加速度センサ62としては、動電型ピックアップ、可変抵抗型ピックアップ、圧電型ピックアップなどが例示される。この加速度センサ62は、ベルト31の弦振動に起因する駆動側シャフト21の振動、具体的には駆動側シャフト21の半径方向の振動(加速度)を検出するためのものである。 【0041】ここで、加速度センサ62を駆動側シャフト21側に設けた理由は、プライマリプーリ23のトルクがベルト31に伝達されるように構成されているため、ベルト31のすべり(スリップ)はプライマリプーリ23側で生じやすいからである。また、図4に示すように、ケーシング4の内部、例えば、ベルト31の外周面と対向する位置には、音圧センサ63が設けられている。この音圧センサ63は、ベルト31の弦振動に起因する音圧の変化を検出するためのものである。 【0042】図5は、図2に示す車両の制御系統を示すブロック(図示せず)である。まず、ロックアップクラッチ12の係合・解放、および無段変速機7を制御する油圧制御装置64は、オイルパンからオイルを汲み上げるオイルポンプ65と、エンジン1の電子スロットルバルブ(後述)の開度に応じて油圧回路全体の元圧を制御するライン圧制御バルブ66と、ライン圧制御バルブ66により調圧されたライン圧が入力されるロックアップクラッチコントロールバルブ67と、前後進切り換え機構6の係合・解放を制御する前後進クラッチコントロールバルブ68と、アクチュエータ27,30の油圧室に作用する油圧を制御するレシオコントロールバルブ69と、これらの各バルブの出力油圧を制御する各種のリニアソレノイドバルブ70とを有する。 【0043】そして、油圧制御装置64と電子制御装置(ECU)104とが相互に信号通信可能に接続されているとともに、シフトレバー114が油圧制御装置64に対して機械的に接続されている。この電子制御装置104は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。 【0044】この電子制御装置104に対しては、エンジン回転数センサ105の信号、アクセル開度センサ106の信号、スロットル開度センサ107の信号、ブレーキスイッチ108の信号、シフトレバー114の操作状態を検出するシフトポジションセンサ109の信号、プライマリプーリ23の回転数を検出する入力回転数センサ110の信号、セカンダリプーリ24の回転数を検出する出力回転数センサ111の信号、加速度センサ62の信号、音圧センサ63の信号などが入力されている。 【0045】前記シフトポジションセンサ109の信号に基づいて、駆動ポジション(例えばD(ドライブ)ポジション、R(リバース)ポジションなど)または非駆動ポジション(例えばN(ニュートラル)ポジション、P(パーキング)ポジションなどのいずれが選択されているかが判断される。さらに、駆動ポジションのうち、前進ポジション(例えばDポジション)または後進ポジション(Rポジション)のいずれが選択されているかが判断される。また、入力回転数センサ110の信号、出力回転数センサ111の信号に基づいて、車速および無段変速機7の変速比を演算することができる。 【0046】また電子制御装置104に対しては、エンジン1の電子スロットルバルブ115、燃料噴射制御装置112、点火時期制御装置113が信号通信可能に接続されている。電子スロットルバルブ115は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度を制御することができるほか、電子スロットルバルブ115は、アクセルペダルの操作以外の条件に基づいて、その開度を電気的に制御することができる機能を有している。そして、電子制御装置104に入力される各種の信号や、電子制御装置104に記憶されているデータに基づいて、電子制御装置104から、燃料噴射制御装置112、点火時期制御装置113、油圧制御装置64、電子スロットルバルブ115に対して制御信号が出力される。 【0047】そして、電子制御装置104には、各種の信号に基づいてエンジン1およびロックアップクラッチ15ならびに無段変速機7を制御するために各種のデータが予め記憶されている。例えば、アクセル開度および車速などのような走行状態に基づいて、無段変速機7の変速比を制御することにより、エンジン1の最適な運転状態を選択するためのデータが、電子制御装置104に記憶されている。また、電子制御装置104には、アクセル開度および車速をパラメータとするロックアップクラッチ制御マップが記憶されており、このロックアップクラッチ制御マップに基づいてロックアップクラッチ15が係合・解放・スリップの各状態に制御される。 【0048】ここで、実施形態の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、プライマリプーリ23がこの発明の駆動側回転部材に相当し、セカンダリプーリ24がこの発明の従動側回転部材に相当し、ベルト31がこの発明の巻き掛け伝動部材に相当し、無段変速機7がこの発明の巻き掛け伝動装置に相当する。 【0049】上記構成を有する車両の制御内容の一例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。イグニッションキー(図示せず)の操作によりシステムが起動されると、電子制御装置104に入力される信号の処理がおこなわれ(ステップS1)、かつ、その処理結果に応じた制御がおこなわれる。例えば、シフトレバー114の操作に基づいて前後進切り換え機構6が制御される。 【0050】まず、前進ポジションが選択された場合はクラッチCRが係合され、かつ、ブレーキBRが解放されて、インプットシャフト9と駆動側シャフト21とが直結状態になる。この状態においては、エンジン1のトルクが、トルクコンバータ5を経由してインプットシャフト9に伝達されると、インプットシャフト9およびキャリヤ37ならびに駆動側シャフト21が一体回転する。駆動側シャフト21のトルクは、プライマリプーリ23およびベルト31ならびにセカンダリプーリ24を介してカウンタシャフト22に伝達されるとともに、このトルクはインターミディエイトシャフト39を介して最終減速機8に伝達された後、さらにこのトルクが車輪45に伝達されて車両が前進する。 【0051】これに対して、後進ポジションが選択された場合はクラッチCRが解放され、かつ、ブレーキBRが係合されて、リングギヤ34が固定される。すると、インプットシャフト9の回転にともなってピニオンギヤ35,36が共に自転しつつ公転し、キャリヤ37がインプットシャフト9の回転方向とは逆の方向に回転する。その結果、駆動側シャフト21およびカウンタシャフト22ならびにインターミディエイトシャフト39が前進ポジションの場合とは逆方向に回転し、車両が後退する。 【0052】また、車速およびアクセル開度などの条件から判断される車両の加速要求、および電子制御装置104に記憶されているデータ(例えば、エンジン回転数およびスロットル開度をパラメータとする最適燃費曲線)などに基づいて、エンジン1の運転状態が最適状態になるように、無段変速機7の変速比が制御される。具体的には、油圧アクチュエータ27の油圧室の油圧を制御することにより、プライマリプーリ23の溝M1の幅が調整される。その結果、プライマリプーリ23におけるベルト31の巻き掛け半径が変化し、無段変速機7の入力回転数と出力回転数との比、すなわち変速比が無段階(連続的)に制御される。 【0053】さらに、油圧アクチュエータ30の油圧室の油圧を制御することにより、セカンダリプーリ24の溝M2の幅が変化する。つまり、ベルト31に対するセカンダリプーリ24の挟圧力が制御される。この挟圧力によりベルト31の張力が制御され、プライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24とベルト31との接触面圧が制御される。したがって、セカンダリプーリ24の挟圧力は、無段変速機7に入力されるトルク、および無段変速機7の変速比などに基づいて制御される。無段変速機7に入力されるトルクは、エンジン回転数、スロットル開度、トルクコンバータ5のトルク比などに基づいて判断される。上記のような、溝M1,M2の幅の制御に際しては、リニアソレノイドバルブ70の電流値が制御されてその出力油圧が変化することにより、油圧アクチュエータ27,30の油圧室の油圧が制御される。 【0054】図6は、無段変速機7の変速比γと、無段変速機7に対する入力トルクTinとに基づいて、セカンダリプーリ24の挟圧力Pdを設定するためのマップである。ここでは、便宜上、入力トルクとして「高」、「中」、「低」の3つの特性線が例示されている。「高」の特性の入力トルクは、例えば、車両が急激な登坂路を走行する際に、アクセル開度が高開度となった状態に相当する。また、「低」の特性の入力トルクは、例えば、車両が平坦路を走行する際に、アクセル開度が低開度となった状態に相当する。なお、「中」の特性の入力トルクは、アクセル開度が「高」と「低」の間の開度になった状態に相当する。 【0055】これら、3つの入力トルクは、いずれもその変速比が大きくなることにともない、入力トルクが増加する特性を有している。そして、無段変速機7に対する入力トルクが増加することにともない、セカンダリプーリ24の挟圧力を増加する制御がおこなわれる。より具体的には、変速比が同じであるとすれば、「高」の入力トルクに対応する挟圧力の方が、「中」の入力トルクに対応する挟圧力よりも高く設定され、かつ、「中」の入力トルクに対応する挟圧力の方が、「低」の入力トルクに対応する挟圧力よりも高く設定される。 【0056】上記ステップS1についで、ベルト31のすべり状態を判定する基準となるベルト31の弦振動が検出される(ステップS2)。この弦振動は前記加速度センサ62の信号または音圧センサ63の信号の少なくとも一方に基づいて判断される。すなわち、ベルト31はプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24に巻き掛けられているために、プライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面圧が、無段変速機7に入力されるトルク以下である場合には、図7に示すように、プライマリプーリ23またはセカンダリプーリ24とベルト31との接触面間にすべり(スリップ)が発生するとともに、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24とが接触していない領域(弦長Lの領域)において、ベルト31の弦振動aが生じる。 【0057】この弦振動が加振源となり、その振動が駆動側シャフト21および軸受49を介してケーシング4に伝達される。このケーシング4の振動が加速度センサ62により検出されている。また、音圧センサ63はベルト31の弦振動による音圧の変化を検出している。したがって、ベルト31の弦振動の状態に基づいて、ベルト31のすべり状態を判定することができる。なお、弦長Lは、プライマリプーリ23の回転中心と、セカンダリプーリ24の回転中心との距離に等しい。 【0058】そして、ステップS2の検出結果に基づいてベルト31のすべりが生じているか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3においては、例えば、図6のマップで求められた挟圧力に対応して、リニアソレノイドバルブ70の電流値の制御信号を出力してから、所定時間が経過するまでの間に、加速度センサ62または音圧センサ63の少なくとも一方の信号により判断される振動のピーク値と、電子制御装置104に記憶されているすべり判定基準値(ベルト31のすべりのないセンサ信号の平均値から算出したしきい値)とを比較して、ベルト31のすべりの有無が判断される。 【0059】図8は、センサの信号から判断される振動出力レベルF1[dB]、ベルト31の振動周波数[Hz]との関係を示す線図である。この図8は、各センサの出力信号をバンドパスフィルタを介して特定の低周波数帯域の振動成分を抽出したものである。この図8において、実際の振動出力レベルF1が、しきい値F0を越えた場合に、ベルト31にすべりが生じているものと判断される。言い換えれば、図9に示すように、振動出力レベルF1が、しきい値(つまり、すべり判定基準値)F0を超えた超過振動分の有無に基づいて、ベルト31にすべりのない駆動力伝達正常状態と、ベルト31の微すべり状態とが識別される。なお、ベルト31の振動周波数は、振動周波数=弦振動(ベルト31自身の剛性ファクターk×弦長L×ベルト31の張力Ft) により求められる。 【0060】また、このステップS3においては、ベルト31のすべり度合い(または、すべり強度、すべり量、すべり割合)も判定される。この判定方法としては、加速度センサ62または音圧センサ63の少なくとも一方の信号により判断される振動出力レベルF1が、すべり判定基準値F0をどの程度越えたか、または、すべり判定基準値F0を超えた回数を計数することなどが例示される。 【0061】さらに、ステップS3においては、ベルト31のスリップ率とすべり判定基準値F0とを比較して、ベルト31のすべりを判定することもできる。図10は、無段変速機7に対する入力トルクTinと、スリップ率との関係を示すスリップ率曲線図である。図10によれば、セカンダリプーリ24の挟圧力を一定とし、かつ、変速比を一定とした状態においては、無段変速機7に対する入力トルクを零から増加させていくと、入力トルクが増加することにともないスリップ率が上昇する傾向が表れている。ここで、入力トルクが所定値T1以下の領域にある状態では、スリップ率が所定値G1以下のマイクロスリップ領域(正常伝達域)にある。そして、入力トルクが所定値T1を越えると、スリップ率が所定値G1を越えて微すべり域に移行している。さらに入力トルクが増加すると、スリップ率が急激に上昇してすべり領域(異常域)に移行している。したがって、スリップ率が所定値G1を越えた場合は、ベルト31にすべりが生じているものと判断することもできる。 【0062】上記ステップS3で肯定的に判断された場合は、ベルト31のすべりを鎮静化(低下もしくは抑制)させるための補正係数または補正量が算出される(ステップS4)。ベルト31のすべりを鎮静化させるための制御としては、ベルト31の張力を補正するフィードバック制御と、エンジントルクを低下させるフィードバック制御とが例示される。ここで、補正係数または補正量の算出方法について説明する。例えば、図11に示すマップに基づいて、ステップS3で求められたすべり度合い(またはすべり強度、すべり量、すべり割合)から、補正係数または補正量を求めることができる。その後、ベルト31の張力制御またはエンジン出力制御を実行し(ステップS5)、リターンされる。 【0063】図12は、ステップS5の具体的な制御内容の一例を示す図であり、ここでは、所定の変速比γ1で入力トルク(高)に制御され、かつ、挟圧力が所定圧Pd1に制御されている状態において、ステップS3で肯定的に判断された場合を説明する。この場合は、挟圧力Pd1を挟圧力Pd2に上昇させるフィードバック制御、または、入力トルク(高)を破線のようにトルクダウンさせるフィードバック制御がおこなわれる。 【0064】すなわち、ベルト31の挟圧力制御に際しては、油圧制御装置64に対して制御信号が出力されるとともに、リニアソレノイドバルブ70の駆動電流値(デューティ比)を制御することにより、セカンダリプーリ24の油圧室の油圧が上昇し、ベルト31に対するセカンダリプーリ24の挟圧力が増加される。このようにして、ベルト31の張力が高められると、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面圧が強められ、ベルト31のすべりが抑制される。 【0065】一方、エンジン出力制御に際しては、電子スロットルバルブ115の開度を低下させる制御(吸入空気量制御)、燃料噴射制御装置122による燃料噴射量を減少させる制御、点火時期制御装置113による点火時期を遅角させる制御などのうちの少なくとも一つがおこなわれ、エンジントルクがダウンされる。このような制御により、無段変速機7に入力されるトルクと、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面圧との対応関係が変化し、ベルト31のすべりが抑制される。 【0066】上記ステップS3,〜S5における入力トルクと挟圧力との関係が、図13に示されている。図13には、入力トルクと挟持力との関係に基づいて、ベルト31にすべりのない正常伝達領域とすべり領域とが示されている。また、正常伝達領域とすべり領域との間には、微すべり領域が示されている。まず、入力トルクT2と挟持力Pd3との交点A1が微すべり領域にある際に、入力トルクを変化することなく、挟圧力をPd3からPd4に上昇させる制御により、入力トルクT2と挟圧力Pd4との交点A2が、正常伝達領域に移行する。また、挟圧力を変更することなく、入力トルクをT2からT1に低下させる制御により、入力トルクT1と挟圧力Pd3との交点A3が、正常伝達領域に移行する。 【0067】一方、前記ステップS3で否定的に判断された場合は、ベルト31に対するセカンダリプーリ24の挟圧力を低下させる制御、または入力トルクをアップさせる制御をおこない(ステップS6)、リターンされる。この挟圧力の低下制御としては、例えば図13に示す入力トルクと挟圧力との交点が、すべり限界(正常伝達領域において、微すべり領域に可及的に近い位置)に移行するように、挟圧力を低下させる制御が挙げられる。 【0068】また、所定の入力トルクで実際にベルト31のすべりが発生した挟圧力を記憶しておくとともに、この挟圧力の低下制御をおこなう場合に、記憶されている挟圧力よりも若干高い挟圧力まで、挟圧力を低下させる制御(いわゆる学習制御)をおこなうこともできる。この学習制御においては、例えば、図13に示すように、入力トルクと挟圧力との交点A4が正常伝達領域に設定されるように、挟圧力Pd5を設定することができる。この挟圧力Pd5は、図6のマップから求められる挟圧力の基準値よりも高めである。 【0069】ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ステップS2,S3がこの発明のスリップ判定手段に相当し、ステップS4,〜S6がこの発明の相対関係制御手段に相当する。 【0070】図14は、この実施形態のシステムにおける信号処理の流れを階層的に示す図である。すなわち、入力トルク算出手段においては、電子制御装置104に入力される信号および予め設定されているデータに基づいて、無段変速機7に入力されるトルクが算出される。また、目標挟圧力設定手段においては、入力トルク算出手段により算出された値に基づいて、目標挟圧力が設定される。 【0071】さらに、目標挟圧力が得られるように、挟圧力調整弁であるリニアソレノイドバルブの駆動電流値を設定する。そして、この駆動電流値によりリニアソレノイドバルブが制御され、ベルトに対する挟圧力が制御される。ところで、ベルト挟圧力が制御された場合は、加速度センサまたは音圧センサなどの振動検出センサの信号から、ベルト弦振動判定手段によりベルトの弦振動の状態が判定される。その判定結果から、弦振動レベル算出手段がベルトの弦振動のレベルを算出し、その弦振動のレベルに応じて、挟圧力補正係数設定手段が、セカンダリプーリの挟圧力の補正係数または補正量を算出する。そして、補正係数または補正量に基づいて、入力トルクおよび変速比により求められる挟圧力が補正される。 【0072】以上のように、この実施形態によれば、ベルト31が実際にスリップした場合に生じるベルト31の弦振動に基づいて、ベルト31のスリップ状態が判定されている。ここで、加速度センサ62が最もベルト31のすべりの生じやすいプライマリプーリ23側に設けられているために、ベルト31の弦振動を確実に検出することができる。このため、ベルト31のスリップ状態に必ずしも影響を及ぼさない条件は、スリップの状態を判定する基準には含まれ難くなり、スリップ状態の判定精度を向上することができるとともに、プライマリプーリ23とセカンダリプーリ24との間におけるトルク(動力)伝達状態を正確に把握することができる。 【0073】そして、このようにして判定されたベルト31のスリップ状態に基づいて、ベルト31の張力が制御され、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面圧を、無段変速機7に入力されるトルクに応じた状態に制御することができる。 【0074】例えば、ベルト31にすべりが生じていた場合は、ベルト31の張力を強めることにより、そのすべりが抑制される。ここで、ベルト31のスリップの度合いが大きいほど、ベルト31の張力を高める制御がおこなわれるために、そのすべりを確実に抑制することができる。したがって、ベルト31およびプライマリプーリ23ならびにセカンダリプーリ24の摩耗が抑制されて、その耐久性が向上する。 【0075】また、ベルト31にすべりが生じていない場合は、ベルト31の張力を弱めることにより、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面圧を、ベルト31にすべりが生じない程度、もしくは許容される微小なすべりが生じる程度まで低下される。したがって、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面の摩耗が抑制されるほか、ベルト31の耐久性および寿命が向上する。 【0076】具体的には、フープ58に生じる円周方向の引っ張り応力と、ブロック59の肩部58Aに生じる曲げ応力とが軽減されて、ベルト31の耐久性および寿命が向上する。また、フープ58を構成する金属板の各層間に供給された潤滑油が、フープ58の各層間に維持され易くなり、フープ58の各層同士の平面方向のすべりが促進されてセンタリング機能が維持され、ベルト31の耐久性および寿命が向上する。 【0077】さらに、プライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24対して、必要以上の荷重が作用することが抑制される。したがって、軸受47,49,51,53の摺動部位に生じる摩擦力が軽減されるとともに、ベルト31とプライマリプーリ23およびセカンダリプーリ24との接触面圧の過大な上昇が抑制されて、無段変速機7の動力伝達効率を向上することができ、燃費が向上する。また、駆動側シャフト21およびカウンタシャフト22に作用する曲げ荷重が抑制もしくは緩和され、駆動側シャフト21およびカウンタシャフト22のたわみが抑制されて、その耐久性が向上する。 【0078】さらに、駆動側シャフト21およびカウンタシャフト22のたわみが抑制されることにより、駆動側シャフト21の回転軸線(図示せず)と、プライマリプーリ23の幅方向の中心線(図示せず)とのなす角度、カウンタシャフト22の回転軸線(図示せず)と、セカンダリプーリ24の幅方向の中心線(図示せず)とのなす角度の変化が抑制される。言い換えれば、各回転軸線に対する保持面54,55または保持面56,57の傾きの変動が抑制される。このため、保持面54,〜57と接触面61との接触角の変動が抑制され、保持面54,〜57および接触面61の摩耗が抑制されて、ベルト31およびプライマリプーリ23ならびにセカンダリプーリ24の耐久性が向上する。 【0079】さらに、保持面54,〜57に対するベルト31の食い込み(食い付き)現象が緩和され、溝M1,M2の幅を変更する場合に、保持面54,〜57からのベルト31の離脱性が向上する。言い換えれば、ベルト31を保持面54,〜57から引き剥がす際に、フープ58に必要以上に引っ張り応力が生じることが抑制され、ベルト31の耐久性が向上する。 【0080】さらに、ベルト31に対するセカンダリプーリ24の挟圧力を制御する油圧室の油圧を、可及的に低くすることができる。このため、無段変速機7の油圧回路の元圧を、前記油圧室の油圧低下分に対応して低位に設定すれば済む。したがって、オイルポンプ17の駆動によるエンジン1の動力損失が抑制され、燃費を向上することができる。 【0081】この実施形態において、巻き掛け伝動部材としては、ベルトの他にチェーンが例示される。また、エンジンに代えて電動機を搭載した車両においても、上記制御を適用することができる。この場合は、ベルトにすべりが生じていた際に、ベルトに対する挟圧力を上昇させる制御をおこなうほか、電動機のトルクを低下させる制御をおこなうことによっても、ベルトのすべりを抑制することができる。また、駆動力源としてエンジンおよび電動機を搭載し、その出力側に無段変速機が搭載された車両に対しても、上記制御を適用することができる。この場合は、ベルトにすべりが生じていた際に、エンジントルクを低下させる制御、または電動機のトルクを低下させる制御の少なくとも一方をおこなうことによっても、ベルトのすべりを抑制することができる。 【0082】 【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明によれば、実際に巻き掛け伝動部材がスリップした場合に発生する巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、巻き掛け伝動部材のスリップ状態が判定される。したがって、巻き掛け伝動部材のスリップ状態に必ずしも影響を及ぼさない条件は、スリップの状態を判定する基準には含まれ難くなり、巻き掛け伝動部材のスリップ状態の判定精度を向上することができる。 【0083】請求項2の発明によれば、実際に巻き掛け伝動部材がスリップした場合に発生する巻き掛け伝動部材の振動状態に基づいて、巻き掛け伝動部材のスリップ状態が判定される。このため、巻き掛け伝動部材のスリップ状態に必ずしも影響を及ぼさない条件は、スリップの状態を判定する基準には含まれ難くなり、巻き掛け伝動部材のスリップ状態の判定精度を向上することができる。したがって、無段式変速機の動力伝達状態を正確に把握することができる。 【0084】請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られるほか、巻き掛け伝動部材と各回転部材との接触面圧を、伝達するべきトルクに応じた状態に制御することができる。したがって、ベルトのすべりもしくは接触面圧の過剰が抑制され、ベルトや回転部材の耐久性が向上するとともに、動力の伝達効率が向上する。 【0085】請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られるほか、ベルトのすべりを確実に抑制することができ、ベルトの耐久性および動力の伝達効率を一層向上することができる。 【0086】請求項5の発明によれば、加速度センサにより、巻き掛け伝動部材の弦振動が判定されるほか、請求項2〜4の発明と同様の効果を得られる。 【0087】請求項6の発明によれば、音圧センサにより、巻き掛け伝動部材の弦振動が判定されるほか、請求項2〜4の発明と同様の効果を得られる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年10月13日(1999.10.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083998 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 丈夫
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| 【公開番号】 |
特開2001−108082(P2001−108082A) |
| 【公開日】 |
平成13年4月20日(2001.4.20) |
| 【出願番号】 |
特願平11−291517 |
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