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【発明の名称】 電動パワーステアリング装置
【発明者】 【氏名】黒川 貴則

【氏名】新井 大和

【要約】 【課題】操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を伝達する合成樹脂製ウォームホイールの強度を向上し、その電動アクチュエータの高出力化を可能にし、ウォームホイールを小径化して省スペース化を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供する。

【解決手段】操舵補助力発生用電動アクチュエータ8の回転をウォーム9とウォームホイール10を介して車輪6に伝達する。そのウォームホイール10は合成樹脂材製とされる。その合成樹脂材の数平均分子量は30000以上、60000以下とされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を、ウォームと、このウォームに噛み合うウォームホイールとを介して車輪に伝達する電動パワーステアリング装置において、そのウォームホイールは合成樹脂材製とされ、その合成樹脂材の数平均分子量は30000以上、60000以下とされていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】 前記合成樹脂材はナイロン系合成樹脂材である請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】 そのウォームホイールは前記合成樹脂材から射出成形される請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】 前記合成樹脂材は無垢材である請求項1〜3の中の何れかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】 前記合成樹脂材に強化繊維が充填されている請求項1〜3の中の何れかに記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転をウォームとウォームホイールを介して車輪に伝達する電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】軽自動車や小型自動車においては、操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転をウォームとウォームホイールを介して車輪に伝達する電動パワーステアリング装置が用いられ、そのウォームホイールを合成樹脂材製とすることで軽量化および低騒音化が図られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、環境問題に対処するために車両の低燃費化が要望されていることから、大型自動車に用いられる電動パワーステアリング装置においても、そのウォームホイールを合成樹脂材製とすることが要望されている。そのためには、その電動アクチュエータを軽自動車に比べて高出力化する必要があるため、その電動アクチュエータの回転を減速するウォームホイールの歯元強度を向上する必要がある。
【0004】しかし、従来の合成樹脂材製ウォームホイールは、電動アクチュエータの高出力化に耐え得る十分な歯元強度がなかった。
【0005】本発明は、上記問題を解決することのできる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を、ウォームと、このウォームに噛み合うウォームホイールとを介して車輪に伝達する電動パワーステアリング装置において、そのウォームホイールは合成樹脂材製とされ、その合成樹脂材の数平均分子量は30000以上、60000以下とされていることを特徴とする。本発明の構成によれば、電動アクチュエータの回転を伝達するウォームホイールを合成樹脂材製とすることで軽量化および低騒音化を図ることができ、且つ、その合成樹脂材の数平均分子量を30000以上とすることでウォームホイールの歯元強度を向上でき、60000以下とすることで成形性を確保できる。本発明は、以下の知見に基づくものである。金属材製ギヤに適用される一般的な理論計算式によれば、ギヤの歯元強度はギヤ材料の引っ張り強度、曲げ強度に相関する。しかし、合成樹脂材製ウォームホイールの場合、歯元強度は材料の引っ張り強度、曲げ強度に相関しない。事実、引っ張り強度や曲げ強度を向上するために合成樹脂材に強化繊維を充填した場合、充填しなかった場合よりも歯元強度は低下した。これは、合成樹脂材製ウォームホイールの歯元強度は、合成樹脂材の弾性に基づく歯に作用する面圧の緩和と、合成樹脂材の強度のバランスとによって定まるためである。そして、その合成樹脂材の粘度を増加させることにより歯元強度を向上できることを新たに見出して本発明をなすに至った。合成樹脂材の粘度は数平均分子量の増大により増加することから、従来にあってはウォームホイールの材料となる合成樹脂材の数平均分子量を15000〜20000以下としていたのを、従来の1.5倍〜2倍以上の30000以上の値とすることで従来よりも粘度を増加させ、ウォームホイールの歯元強度を増大させた。なお、合成樹脂材の固有粘度ηは、Mを数平均分子量、Kを定数、aを定数として、η=KMa により求められる。また、その数平均分子量を60000以下とすることで成形性を確保できる。そのウォームホイールは射出成形工程を経て成形され、その射出成形のための成形型のゲートはフィルムゲートとされるのが好ましい。これにより、その合成樹脂材の数平均分子量が大きいために成形型のキャビティ内に射出される材料の溶液粘度が大きくても、そのキャビティ内に材料を均一に充填して成形性の低下を防止できる。
【0007】その合成樹脂材はナイロン系合成樹脂材であるのが好ましい。数平均分子量の大きな高粘度ナイロンは初期強度が高いことから、吸水や熱劣化による強度低下を防止できる。また、ナイロン系合成樹脂材は数平均分子量が高くても成形性に優れると共に長寿命化を図れる。
【0008】そのウォームホイールは合成樹脂材から射出成形されるのが好ましい。射出成形することで成形コストを低減できる。
【0009】その合成樹脂材は無垢材であるのが好ましい。これにより、そのウォームホイールと噛み合うウォームの摩耗を防止できる。
【0010】その合成樹脂材に強化繊維が充填されていてもよい。強化繊維の充填により、その合成樹脂材の吸水や熱による寸法変化を防止して寸法安定性を向上できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に示す電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2の操舵により発生する操舵トルクを、ステアリングシャフト3によりピニオン4に伝達することで、そのピニオン4に噛み合うラック5を移動させ、そのラック5の動きをタイロッドやナックルアーム等(図示省略)を介して車輪6に伝達することで舵角を変化させる。
【0012】そのステアリングシャフト3により伝達される操舵トルクに応じた操舵補助力を付与するため、その操舵トルクを検出するトルクセンサ7と、その検出された操舵トルクに応じ駆動されるモータ(電動アクチュエータ)8と、そのモータ8により駆動される駆動シャフト50の外周に設けられる金属製ウォーム9と、そのウォーム9に噛み合うと共にステアリングシャフト3に取り付けられるウォームホイール10とが設けられている。そのモータ8の回転をウォーム9およびウォームホイール10を介してステアリングシャフト3から車輪6に伝達することで操舵補助力を付与できる。図2に示すように、ハウジング21に取り付けられるモータ8により駆動される駆動シャフト50は、そのハウジング21により軸受62、63を介して支持される。
【0013】そのステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に連結される第1シャフト3aと、この第1シャフト3aにピン22により連結される筒状の第2シャフト3bと、この第2シャフト3bの外周にブッシュ25を介して相対回転可能に嵌め合わされる筒状の第3シャフト3cとに分割されている。各シャフト3a、3b、3cの中心に沿って弾性部材としてトーションバー23が挿入されている。そのトーションバー23の一端は第1シャフト3aと第2シャフト3bとに前記ピン22により連結され、他端はピン24により第3シャフト3cに連結されている。これにより、その第2シャフト3bと第3シャフト3cとは操舵トルクに応じて弾性的に相対回転可能とされている。
【0014】その第2シャフト3bは、そのハウジング21に圧入されたステアリングコラム30によりブッシュ31を介して支持される。その第3シャフト3cは、ハウジング21により軸受26、27を介して支持される。その第3シャフト3cの外周に嵌め合わされる金属製スリーブ11の外周に、上記ウォームホイール10が一体化されている。なお、そのスリーブ11は第3シャフト3cに圧入されたり、あるいはキー等を介して固定されてもよい。また、過大なトルクが作用した場合にウォームホイール10とステアリングシャフト3とが相対回転するように、トルクリミッター機構がスリーブ11と第3シャフト3cとの間に設けられてもよい。
【0015】そのトルクセンサ7は、第2シャフト3bに固定される磁性材製の第1検出リング36と、第3シャフト3cに固定される磁性材製の第2検出リング37と、両検出リング36、37の対向間を覆う検出コイル33とを有する。第1検出リング36の端面に周方向に沿って設けられる複数の歯36aと、第2検出リング37の端面に周方向に沿って設けられる複数の歯37aとの対向面積が、第2シャフト3bと第3シャフト3cの操舵トルクに応じた弾性的な相対回転に応じて変化し、その変化に対応して検出コイル33の発生磁束に対する磁気抵抗が変化することから、その検出コイル33の出力に基づき操舵トルクが検出できる。このトルクセンサ7は公知の構成のものを用いることができる。その検出された操舵トルクに対応した信号に応じて上記モータ8が駆動され、このモータ8の回転はウォーム9、ウォームホイール10を介してステアリングシャフト3に伝達される。
【0016】そのモータ8の回転の減速ギアであるウォームホイール10は合成樹脂材製とされ、射出成形工程を経て成形されている。その合成樹脂材の数平均分子量は30000以上、60000以下とされている。その合成樹脂材は、本実施形態ではPA(ポリアミド)6、PA66、PA46、PA12、PA11、PPA(ポリパラバン酸)11、PA6T、PA6・6T等のナイロン系合成樹脂材とされ、他の材料は何も充填されていない無垢材とされている。その合成樹脂材の数平均分子量が大きくなると、射出成形時に成形型のキャビティ内に射出される材料の溶液粘度が大きくなり、例えば数平均分子量が60000の場合は溶液粘度(ηr)が6.0にもなって成形性が低下する。そのため本実施形態では、図3に示すように、ウォームホイール10の成形型90のゲート90aはフィルムゲートとされている。これにより、その合成樹脂材の数平均分子量が大きいために射出溶液粘度が大きくても、キャビティ90b内に材料を均一に充填できるようにしている。なお、材料をキャビティ90b内に均一に充填するためにゲート90aの肉厚tは2.5mm以上とするのが好ましく、ランナー90cの長さLは短い程に好ましいが金型剛性を確保する必要があることから40mm以上50mm以下とするのが好ましく、そのランナー90cの入口径D1は材料の流動抵抗低減のために4mm以上とすると共に材料射出ノズルの径(通常3mm)との段差による抵抗低減のために6mm以下とするのが好ましく、そのランナー90cの出口径D2は材料の流動抵抗低減のために13mm以上として最大径はゲート90aの直径に等しくしてもよい。本実施形態では、その成形型90に上記スリーブ11を挿入した状態で射出成形を行うことでウォームホイール10をスリーブ11に一体化し、その成形後にゲート90aやランナー90cに充填された材料の除去やウォームホイール10の歯の仕上げ等を機械加工により行っている。
【0017】上記構成によれば、モータ8の回転を伝達するウォームホイール10を合成樹脂材製とすることで軽量化および低騒音化を図ることができ、且つ、その合成樹脂材の数平均分子量を30000以上とすることでウォームホイールの歯元強度を向上でき、60000以下とすることで成形性を確保できる。その合成樹脂材はナイロン系合成樹脂材であるので初期強度が高く、吸水や熱劣化による強度低下を防止でき、また、成形性に優れると共に長寿命化を図れる。そのウォームホイール10を合成樹脂材から射出成形することで成形コストを低減できる。その合成樹脂材は無垢材であるのでウォーム9の摩耗を防止できる。
【0018】本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ウォームホイールの材料としてナイロン系以外のPPS(ポリフェニレンスルフィド)、PES(ポリエーテルスルホン)、POM(ポリアセタール)等の熱可塑性合成樹脂材を用いてもよい。また、ウォームホイールの材料である合成樹脂材に強化繊維が充填されてもよい。強化繊維の充填により、その合成樹脂材の吸水や熱による寸法変化を防止して寸法安定性を向上できる。その強化繊維としては、そのウォームホイールに噛み合うウォームの摩耗を防止する上でチタン酸カリウムウィスカーやアラミド繊維等とするのが好ましい。
【0019】
【実施例】上記実施形態の構成の電動パワーステアリング装置においてウォームホイールを数平均分子量が略60000のPA66の無垢材から射出成形したものを実施例とし、ウォームホイールを数平均分子量が略20000のPA66の無垢材から射出成形した以外は実施例と同様の構成の電動パワーステアリング装置を比較例とし、ウォームホイールの歯元強度試験と耐久試験とを行った。歯元強度試験は、ウォームホイールをロックした状態でウォームにトルクを付加し、そのウォームホイールの歯が破損した時のウォームに付加したトルクをウォームホイールの歯元強度として測定した。その結果、比較例では歯元強度が11N・mであったのが、実施例では23N・mであった。また、耐久試験は、車輪側から一定の負荷を作用させた状態で、ステアリングホイールを一定回転角度で一定回数だけ往復回転させ、ウォームホイールの歯の磨耗量に対応するウォームの歯との間のバックラッシ量を測定した。その結果、比較例のウォームホイールの磨耗量に対する実施例のウォームホイールの磨耗量の割合は68.3%であった。すなわち、本発明によれば合成樹脂製ウォームホイールの強度向上と高寿命化を図れることを確認できる。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を伝達する合成樹脂製ウォームホイールの強度を向上し、その電動アクチュエータの高出力化を可能にし、ウォームホイールを小径化して省スペース化を図ることができ、さらに吸水や熱劣化による強度低下を防止して高寿命化を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年10月6日(1999.10.6)
【代理人】 【識別番号】100095429
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 進
【公開番号】 特開2001−108024(P2001−108024A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−285475