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【発明の名称】 変速比無限大無段変速機の制御装置
【発明者】 【氏名】西尾 元治

【氏名】蔵本 浩明

【氏名】酒井 弘正

【氏名】成田 靖史

【氏名】長門 達也

【氏名】阿部 万三郎

【要約】 【課題】車両停止時の総変速比が無限大からずれることによるセレクトレバー操作時のショックや違和感を防止する。

【解決手段】NレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、ステップモータのステップ数を一時的に増減させて動かした後、ギアードニュートラルポイントGNPを実現する位置へ駆動して、トルクシフトによるヒステリシスの影響を回避する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーまたはスイッチの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、前記アクチュエータの位置を一時的に動かした後、ギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動することを特徴とする変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項2】 エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーまたはスイッチの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、前記アクチュエータの位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から一時的に動かした後、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動することを特徴とする変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項3】 前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出してアクチュエータの位置を一時的に動かす際に、少なくともトルクシフトによるヒステリシスの大きさに応じた位置までアクチュエータを動かすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項4】 前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、車両の進行方向に応じて、前記アクチュエータの駆動方向を設定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項5】 前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジへの操作を検出したときには、前記アクチュエータの駆動位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から、無段変速機構の変速比の大側に予め設定された位置へ向けて駆動した後、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動することを特徴とする請求項4に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項6】 前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからRレンジへの操作を検出したときには、前記アクチュエータの駆動位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から、無段変速機構の変速比の小側に予め設定された位置へ向けて駆動した後、発進の際にギアードニュートラルポイントに対応した位置へ駆動することを特徴とする請求項4に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項7】 エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーまたはスイッチの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、入力トルクが0のときにギアードニュートラルポイントを実現する位置へ前記アクチュエータを駆動し、このギアードニュートラルポイントを実現する位置は、前記シフト位置検出手段で設定された進行方向に向けて入力トルクが変化するときに、進行方向に応じたクリープトルクを制御可能な位置であることを特徴とする変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項8】 エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーまたはスイッチの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置へ前記アクチュエータを駆動することを特徴とする変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項9】 前記変速比制御手段は、前記入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置を、トルクシフトによるヒステリシスの領域の外側またはヒステリシス領域の終点に設定したことを特徴とする請求項8に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
【請求項10】 前記変速比制御手段は、前記入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置を、無段変速機構への入力トルクの方向に応じて設定することを特徴とする請求項9に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両などに搭載される変速比無限大無段変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】変速比を連続的に変更可能な無段変速機構に一定変速機構と遊星歯車機構を組み合わせることにより、変速比を無限大まで変更可能にした変速比無限大無段変速機(以下、「IVT」とする。)が知られている。このような変速機は、例えば、特開昭63−219956号に開示されている。
【0003】一般に、IVTにおいては、エンジンに連結されるIVT入力軸にトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構が並列的に連結されるとともに、無段変速機構の出力軸が遊星歯車機構のサンギアに、一定変速機構の出力軸が動力循環モードクラッチを介して遊星歯車機構のキャリアにそれぞれ連結されており、遊星歯車機構のリングギアがIVTの出力軸に連結されている。
【0004】このような構成により、動力循環モードクラッチが締結されている場合はIVTの出力軸が無段変速機構の出力回転と一定変速機構の出力回転とを同時に受けて回転することになり、無段変速機構の変速比を変化させればIVTの総変速比を無限大まで無段階に変更することができ、図24に示すように、動力循環モードクラッチを締結する一方、直結モードクラッチを解放することにより、無段変速機構と一定変速機構の変速比の差に応じて、総変速比(以下、IVT比iiでユニット入力軸回転数/ユニット出力軸回転数)を負の値から正の値まで無限大(1/ii=0でギアードニュートラルポイントGNPという)を含んで連続的に変速制御を行う動力循環モードと、動力循環モードクラッチを解放する一方、直結モードクラッチを締結して無段変速機構の変速比(以下、CVT比ic)に応じて変速制御を行う直結モードの2つの運転モードを選択的に使用することができる。
【0005】動力循環モードのギアードニュートラルポイントGNPでは、車両の停止状態を維持することができ、この停止状態からIVT比ii(=CVT比ic)を変更することで発進を行うことができ、従来の自動変速機のようなトルクコンバータ等の発進要素を不要にしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このようなIVTを備えた車両がPレンジやNレンジで停止しているとき、無段変速機構の変速比はギアードニュートラルポイントを実現する値になっているが、この変速比がギアードニュートラルポイントからずれていると、誤って動力が駆動輪に伝わるのを防止するために、動力循環モードクラッチは解放されている。
【0007】この状態から車両を発進させようとして運転者がセレクトレバーをDレンジあるいはRレンジに操作すると、動力循環モードクラッチが締結され、IVT出力軸に動力が伝達される。このとき無段変速機構の変速比がギアードニュートラルポイントを実現する値となっていれば車両は停止状態を維持し、クラッチの回転数差によるショックが生じることもない。
【0008】一方、無段変速機構としてトロイダル型を採用した場合には、入力トルクの変動や各部のガタなどによって変速比が変動するトルクシフトという現象があり、図23に示すように、入力トルクとパワーローラの傾転角(変速比)の関係にヒステリシスが生じてしまい、入力トルク=0となる無負荷のときにギアードニュートラルポイントGNPとなるよう、ステップモータのステップ数を設定しても、図中変動範囲Δφ内でパワーローラの傾転角=実変速比が変動する場合がある。
【0009】このトルクシフトは、後述するように、主に3つの要因に大別でき、まずひとつが、図4において、入力トルクに対してパワーローラ20がオフセットしたときに、ピボットシャフト24の倒れが図中上下方向に発生し、実際のパワーローラ20のオフセット量に対して、ピボットシャフト24の倒れ分だけトラニオン23の軸方向変位量が小さくなって、実際のメカニカルフィードバック量も変化し、このフィードバック量の変化によって、パワーローラ20が余分に傾転することで、変速が過大になってこれがトルクシフトの第1の要因となる。
【0010】第2の要因は、入出力ディスク21、22及びパワーローラ20によってトルク伝達を行うために、ローディングカム装置が入力トルクに応じた挟持圧力を発生し、パワーローラ20は入出力ディスク21、22により、挟持、押圧されており、パワーローラ20は、図4において、入出力ディスク21、22の間から押し出される方向のスラスト力を受ける。ここで、対向するパワーローラ20、20を支持するトラニオン23、23は、ピボットシャフト24を挟んだ上下で、図示しない揺動自在なリンクを介して連結されているため、この連結点を支点にしてトラニオン23は、スラスト力によって変形し、このトラニオン23、32の変形によって、パワーローラ20の傾転角が目標とする傾転角からずれてしまい、これが、トルクシフトの第2の要因となる。
【0011】次に、第3の要因は、トルク伝達を行うために、パワーローラ20は入出力ディスク21、22により、挟持、押圧されているが、入出力ディスク21が出力ディスク22側に押し付けられることにより、ディスクに変形が生じる。
【0012】そして、この変形によって、パワーローラ20と入出力ディスク21、22の接触位置が変化するため、ピボットシャフト24が揺動し、この揺動に応じてトラニオン23が軸方向に変位するために変速が行われる。これが、トルクシフトの第3の要因となっている。
【0013】上記のようなトルクシフトには、次のようなヒステリシスが存在する。
【0014】CVT比がギアードニュートラルポイントGNP近傍にあり、かつ、入力トルクが0を含んで変化する場合では、無段変速機構2への入力トルクの方向が、ギアードニュートラルポイントGNPを境に反転するため、図23に示すように、トルクシフトにヒステリシス領域が生じる。
【0015】トロイダル型の無段変速機構2として、図4に示すようにピボットシャフト24を介してパワーローラ20を支持する場合、ピボットシャフト24の基端とトラニオン23の間には軸受が介装されてピボットシャフト24を揺動自在に支持している。
【0016】この軸受には径方向のガタ(クリアランス)とフリクションがあるため、パワーローラ20に加わるトルクが、これらガタ及びフリクションよりも大きくなるまでピボットシャフト24は揺動しない。
【0017】このため、ギアードニュートラルポイントGNP近傍では、入力トルクの方向が反転してから、ピボットシャフト24まわりのガタ及びフリクションよりも、入力トルクの絶対値が大きくなるまでピボットシャフト24が揺動しないため、トルクシフトにヒステリシスが生じる。
【0018】したがって、図23のように、入力トルクの増大側(負から正へ向かう方向)では、図中T+の線に沿ってパワーローラ20の傾転角が減少する一方、入力トルクの減少側(正から負へ向かう方向)では、図中T−の線に沿ってパワーローラ20の傾転角が増大するヒステリシス領域となる。
【0019】そして、図中T+の線上でギアードニュートラルポイントGNPを維持しようとしても、入力トルク=0のときに取り得る傾転角は、図中変動範囲Δφ(入力トルク=0のとき、傾転角が取り得る値)内で不定となるため、IVT比がギアードニュートラルポイントGNPからずれてしまうという特性を有している。
【0020】しかしながら、上記従来例においては、上述したトロイダル型無段変速機構のトルクシフトのヒステリシスによって、実変速比がギアードニュートラルポイントGNPを実現する変速比からずれていると、IVTの総変速比が無限大とならず、動力循環モードクラッチの締結時に回転数差によるショックが生じてしまい、変速比のずれが大きい場合には、エンジンを停止させてしまうという問題がある。
【0021】また、動力循環モードクラッチの締結時に、運転者が期待する車両の進行方向とは逆側に総変速比がずれていた場合では、期待した進行方向と逆方向のクリープトルクが発生してしまい、運転者に違和感を与える原因となる。例えば、図24において、変速比(CVT比)がギアードニュートラルポイントGNPから後退側(Hi側)にずれていると、運転者がセレクトレバーをNレンジからDレンジに移動させたのにも係わらず後退側のクリープトルクが発生してしまうこととなる。
【0022】本発明は、上記従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、変速比無限大無段変速機において、車両停止時の総変速比が無限大からずれることによるセレクトレバー操作時のショックや違和感を防止することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、前記アクチュエータの位置を一時的に動かした後、ギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動する。
【0024】また、第2の発明は、エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、前記アクチュエータの位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から一時的に動かした後、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動する。
【0025】また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出してアクチュエータの位置を一時的に動かす際に、少なくともトルクシフトによるヒステリシスの大きさに応じた位置までアクチュエータを動かす。
【0026】また、第4の発明は、前記第2または第3の発明において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、車両の進行方向に応じて、前記アクチュエータの駆動方向を設定する。
【0027】また、第5の発明は、前記第4の発明において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジへの操作を検出したときには、前記アクチュエータの駆動位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から、無段変速機構の変速比の大側に予め設定された位置へ向けて駆動した後、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動する。
【0028】また、第6の発明は、前記第4の発明において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからRレンジへの操作を検出したときには、前記アクチュエータの駆動位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から、無段変速機構の変速比の小側に予め設定された位置へ向けて駆動した後、発進の際にギアードニュートラルポイントに対応した位置へ駆動する。
【0029】また、第7の発明は、エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーまたはスイッチの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、入力トルクが0のときにギアードニュートラルポイントを実現する位置へ前記アクチュエータを駆動し、このギアードニュートラルポイントを実現する位置は、前記シフト位置検出手段で設定された進行方向に向けて入力トルクが変化するときに、進行方向に応じたクリープトルクを制御可能な位置に設定される。
【0030】また、第8の発明は、エンジンに連結されたユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをそれぞれ連結するとともに、無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、セレクトレバーまたはスイッチの位置を検出するシフト位置検出手段と、前記無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータと、車両の運転状態に応じて前記アクチュエータを制御することで変速比無限大無段変速機の総変速比を変更する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記変速比制御手段は、前記シフト位置検出手段がNレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置へ前記アクチュエータを駆動する。
【0031】また、第9の発明は、前記第8の発明において、前記変速比制御手段は、前記入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置を、トルクシフトによるヒステリシスの領域の外側またはヒステリシス領域の終点に設定する。
【0032】また、第10の発明は、前記第9の発明において、前記変速比制御手段は、前記入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置を、無段変速機構への入力トルクの方向に応じて設定する。
【0033】
【発明の効果】したがって、第1の発明は、トロイダル型の無段変速機構を用いた変速比無限大無段変速機では、総変速比が無限大となるギアードニュートラルポイント近傍において、無段変速機構の変速比と、無段変速機構に作用するトルクの関係に、トルクシフトに応じたヒステリシスがある。N−DセレクトまたはN−Rセレクトによって車両の発進を行う際に、無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータの位置を一時的に動かしてから、ギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動することで、トルクシフトに起因するヒステリシスで不定となっていた変速比を、ヒステリシスの変動範囲の最小値または最大値に設定して、このヒステリシスによって無段変速機構の変速比がギアードニュートラルポイントからずれるのを確実に防止し、前記従来例のようなセレクトレバー操作時のショックや違和感を防止することができ、変速比無限大無段変速機の発進性能を向上させることが可能となる。
【0034】また、第2の発明は、トロイダル型の無段変速機構を用いた変速比無限大無段変速機では、総変速比が無限大となるギアードニュートラルポイント近傍において、無段変速機構の変速比と、無段変速機構に作用するトルクの関係に、トルクシフトに応じたヒステリシスがある。N−DセレクトまたはN−Rセレクトによって車両の発進を行う際に、無段変速機構の変速比を変更するアクチュエータの位置を、停車中にギアードニュートラルポイントを実現する位置から一時的に動かした後に、ギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動することで、アクチュエータの位置がギアードニュートラルポイントに対応した位置にあるにもかかわらず、トルクシフトに起因するヒステリシスで不定となっていた変速比を、ヒステリシスの変動範囲の最小値または最大値に設定して、このヒステリシスによって無段変速機構の変速比がギアードニュートラルポイントからずれるのを確実に防止し、前記従来例のようなセレクトレバー操作時のショックや違和感を防止することができ、変速比無限大無段変速機の発進性能を向上させることが可能となる。
【0035】また、第3の発明は、NレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出してアクチュエータの位置を一時的に動かす際に、少なくともトルクシフトによるヒステリシスの大きさに応じた位置までアクチュエータを動かしてから、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へアクチュエータを駆動することで、アクチュエータの位置がギアードニュートラルポイントに対応した位置にあるにもかかわらず、トルクシフトに起因するヒステリシスで不定となっていた変速比を、無段変速機構へ入力トルクが加わって発進する際に、ギアードニュートラルポイントを実現する変速比におけるヒステリシスの変動範囲の最小値または最大値に設定して、このヒステリシスによって無段変速機構の変速比がギアードニュートラルポイントからずれるのを確実に防止し、前記従来例のようなセレクトレバー操作時のショックや違和感を防止することができ、変速比無限大無段変速機の発進性能を向上させることが可能となる。
【0036】また、第4の発明は、NレンジまたはPレンジからDレンジあるいはRレンジへの操作を検出すると、車両の進行方向に応じて、前記アクチュエータの駆動方向を設定するため、ギアードニュートラルポイントから前進する場合と後退する場合では、無段変速機構の入力トルクの向きが異なり、したがって、トルクシフトによる変速比の変動方向も異なるから、進行方向に応じてアクチュエータの駆動方向を変更することで、発進の際にギアードニュートラルポイントを確実に実現することができる。
【0037】また、第5の発明は、NレンジからDレンジへの操作によって前進側へ発進する際には、アクチュエータの駆動位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から、無段変速機構の変速比の大側に予め設定された位置へ向けて駆動した後、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動するようにしたため、トルクシフトによるヒステリシスのためギアードニュートラルポイント近傍で不定となっていた無段変速機構の変速比を、確実にギアードニュートラルポイントに設定してから前進側へ発進できるのに加え、アクチュエータを一時的に動かす方向を、無段変速機構の変速比の大側としたので、この変速比の大側はギアードニュートラルポイントから前進側の総変速比となるため、アクチュエータの位置が、発進の際に用いるギアードニュートラルポイントに達する以前に動力循環モードクラッチが締結されたとしても、車両はセレクトレバーで設定された前進側に推進されるため、前記従来例のように、運転者が期待する車両の進行方向とは逆側に駆動力が伝達されるのを確実に防止できる。
【0038】また、第6の発明は、NレンジからRレンジへの操作によって後退側へ発進する際には、アクチュエータの駆動位置をギアードニュートラルポイントに対応した位置から、無段変速機構の変速比の小側に予め設定された位置へ向けて駆動した後、発進の際にギアードニュートラルポイントを実現する位置へ駆動するようにしたため、トルクシフトによるヒステリシスのためギアードニュートラルポイント近傍で不定となっていた無段変速機構の変速比を、確実にギアードニュートラルポイントに設定してから前進側へ発進できるのに加え、アクチュエータを一時的に動かす方向を、無段変速機構の変速比の小側としたので、この変速比の小側はギアードニュートラルポイントから後退側の総変速比となるため、アクチュエータの位置が、発進の際に用いるギアードニュートラルポイントに達する以前に動力循環モードクラッチが締結されたとしても、車両はセレクトレバーで設定された後退側に推進されるため、前記従来例のように、運転者が期待する車両の進行方向とは逆側に駆動力が伝達されるのを確実に防止できる。
【0039】また、第7の発明は、発進の際には無段変速機構の変速比が、入力トルクが0のときにギアードニュートラルポイントとして設定され、かつ、この変速比では進行方向に向けて入力トルクが変化するときに、進行方向に応じたクリープトルクを制御可能に設定されるため、動力循環モードクラッチの締結容量を制御することなどで、高い再現性を持ってクリープトルクの制御を行うことが可能となる。
【0040】また、第8の発明は、発進の際には無段変速機構の変速比が、入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントとして設定されるため、特に、無負荷のときに顕著になる無段変速機構のヒステリシスを回避して、ギアードニュートラルポイントを正確に設定し、動力循環モードクラッチを徐々に締結することで円滑に発進することが可能となる。
【0041】また、第9の発明は、入力トルクが増大した状態でギアードニュートラルポイントを実現する位置を、トルクシフトによるヒステリシスの領域の外側またはヒステリシス領域の終点に設定することで、ヒステリシス領域の影響を受けることなく高い応答性を持って変速制御を行うことが可能となる。
【0042】また、第10の発明は、トルクシフトによるヒステリシスの領域の外側またはヒステリシス領域の終点に設定されてギアードニュートラルポイント実現位置を、無段変速機構の入力トルクの方向、換言すれば、車両の進行方向に応じて設定することにより、前進、後退のそれぞれについて、ヒステリシス領域の影響を受けることなく高い応答性を持って変速制御を行うことが可能となる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0044】図1〜図3は、本発明が適用される変速比無限大無段変速機(以下、「IVT」とする。)の概略構成を示し、ここに示すIVTはいわゆるハーフトロイダル型の無段変速機構2を用いて構成される。
【0045】図1〜図3に示すように、IVTはエンジンのクランクシャフトに連結されるIVT入力軸1(ユニット入力軸)に、変速比を連続的に変更可能な無段変速機構2と、ギア3a、ギア3bから構成された一定変速機構3(減速機)とを並列的に連結し、これらの出力軸4、3cをIVT出力軸6(ユニット出力軸)側で同軸的に配設するとともに、これら出力軸4、3cを遊星歯車機構5で連結したものである。
【0046】無段変速機構2の出力軸4は、スプロケット4a及びチェーン40を介して無段変速機構2の出力スプロケット2aとの間で駆動力の伝達を行い、この出力軸4の一端が遊星歯車機構5のサンギア5aに連結され、他端にはIVT出力軸6と選択的に締結する直結モードクラッチ10が配設される。
【0047】一方、一定変速機構3の出力軸3cは、動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結され、キャリア5bのピニオンに歯合するリングギア5cは、IVT出力軸6に結合される。
【0048】IVTの出力軸6には変速機出力ギア7が設けられ、この変速機出力ギア7が差動ギア8のファイナルギア12と噛み合い、所定の総減速比で差動ギア8と結合した駆動軸11a、11bに駆動力が伝達される。
【0049】無段変速機構2は、2組の入力ディスク21、出力ディスク22で、パワーローラ20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのトロイダル型無段変速機構であり、パワーローラ20は後述するトラニオンで回転自在に支持されている。このトラニオンの傾転角を、後述するステップモータ36(アクチュエータ)のステップ数(回転角=駆動位置)に応じて変化させることにより、無段変速機構2の変速比、さらにはIVTの総変速比を無段階に変化させることができる。
【0050】無段変速機構2の変速比(CVT比)とIVTの総変速比の逆数(1/IVT比)との関係は図24に示すようになる。
【0051】この図に示すように、動力循環モードクラッチ9が締結され、直結モードクラッチ10が解放された動力循環モードでは、無段変速機構2と一定変速機構3の変速比の差に応じて、変速比を前進側、後退側共に無限大(図中のギアードニュートラルポイントGNP)を含んで連続的に変化させることができる。また、動力循環モードクラッチ9が解放され、直結モードクラッチ10が締結され直結モードでは、無段変速機構2の変速比に応じた変速制御を行うことができる。
【0052】トロイダル型の無段変速機構2は、図1に示すように、2組の入力ディスク21、出力ディスク22で、パワーローラ20、20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのハーフトロイダル型で構成され、一対の出力ディスク22の間に介装された出力スプロケット2aは、チェーン40を介してIVT入力軸1、CVT入力軸1bと平行して配置されたIVT出力軸6側の無段変速機出力軸4に形成したスプロケット4aと連結する。
【0053】また、図2に示すように、IVT入力軸1、CVT入力軸1bは、同軸的に配設されるとともに、ローディングカム13を介して回転方向で結合しており、IVT入力軸1はエンジンのクランクシャフトに結合されるとともに、一定変速機構3のギア3aを形成し、CVT入力軸1bは2組の入力ディスク21、21に連結されて、IVT入力軸1からの入力トルクに応じてローディングカム13が発生した軸方向の押圧力によって、パワーローラ20、20を入出力ディスクの間で挟持、押圧する。
【0054】無段変速機構2は、2組の入力ディスク21、出力ディスク22で、パワーローラ20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのトロイダル型無段変速機構であり、パワーローラ20は後述するトラニオン23で回転自在に支持されている。このトラニオン23の傾転角を、後述するステップモータ36のステップ数(回転角)に応じて変化させることにより、無段変速機構2の変速比、さらにはIVTの総変速比を無段階に変化させることができる。
【0055】無段変速機構2の変速比(CVT比)とIVTの総変速比の逆数(1/IVT比)との関係は図24に示すようになる。
【0056】この図24に示すように、動力循環モードクラッチ9が締結され、直結モードクラッチ10が解放された動力循環モードでは、無段変速機構2と一定変速機構3の変速比の差に応じて、変速比を前進側、後退側共に無限大(図中のギアードニュートラルポイント)を含んで連続的に変化させることができる。また、動力循環モードクラッチ9が解放され、直結モードクラッチ10が締結された直結モードでは、無段変速機構2の変速比に応じた変速制御を行うことができる。
【0057】ここで、トロイダル型無段変速機構2の変速機構及びメカニカルフィードバック機構について説明する。
【0058】入出力ディスク21、22に挟持されるとともに、対向する位置に配置されたパワーローラ20、20は、図4に示すように、基端側をトラニオン23、23で揺動自在に支持されるとともに、所定のオフセットを設けたピボットシャフト24、24によってそれぞれ軸支される。なお、ピボットシャフト24の基端側とトラニオン23の間には、ニードルベアリングなどの図示しない軸受が介装される。
【0059】図4において、ピボットシャフト24の基端側を揺動自由に支持するトラニオン23は、下部を油圧シリンダ30に結合して、軸方向へ変位可能かつ軸まわりに回転可能に支持される。なお、複数のトラニオン23のうちの一つの下端には、後述するシフトコントロールバルブ46へ傾転角、すなわち、実変速比(実際のCVT比)とトラニオン23の軸方向変位を合成してフィードバックするためのプリセスカム35が設けられる。
【0060】油圧シリンダ30はピストン31によって画成された上下の油室30A、30Bを備えており、図4に示すように、対向配置されたトラニオン23、23の油圧シリンダ30、30は、油室30A、30Bの配置が相互に逆転するように設定されて、トラニオン23、23は相互に逆方向へ駆動される。なお、トラニオン23、23は、ピボットシャフト24を挟んだ上下で、図示はしないが揺動自在なリンクを介して連結され、トラニオン23、23は相互に逆方向へ変位する。
【0061】このため、油室30Aの油圧を増大すると同時に油室30Bの油圧を低減すると、図中右側のトラニオン23が上昇する一方、図中左側のトラニオン23は下降してパワーローラ20、20はLo側(変速比=大側)へ傾転(トラニオン23の軸回りに変位)して変速が行われ、このとき、パワーローラ20の回転軸20cと入出力ディスクの回転軸1cが一致するように、トラニオン23の軸方向変位に応じてピボットシャフト24は軸線24c回りに揺動するため、パワーローラ20は傾転した状態を維持しながら、回転軸20cを入出力ディスクの回転軸1cに一致させて、駆動力の伝達を行うことができる。
【0062】一方、油室30Aの油圧を低減すると同時に油室30Bの油圧を増大すると、上記とは逆となって、図中右側のトラニオン23が下降する一方、図中左側のトラニオン23は上昇し、パワーローラ20、20はHi側(変速比=小側)へ傾転して変速が行われる。
【0063】そして、プリセスカム35は、図4に示すように、円周方向に所定の傾斜を備えたカム溝またはカム面を備えており、このカム溝またはカム面に揺動自在なフィードバックリンク38の一端が摺接する。
【0064】フィードバックリンク38は、例えば、L字状に形成されるとともに揺動軸39を中心にして揺動自在に支持されており、一端で上記カム溝またはカム面と摺接する一方、他端で変速リンク37の一端と係合し、トラニオン23の回転量、すなわち傾転角と、軸方向変位量を合成して変速リンク37の一端に伝達する。
【0065】この変速リンク37は、図5に示すように、中央部でシフトコントロールバルブ46のスプール46Sの端部と連結する一方、フィードバックリンク38と連結した反対側の端部ではステップモータ36と連結し、変速リンク37はステップモータ36の駆動によってシフトコントロールバルブ46のスプール46Sを軸方向に変位させるとともに、トラニオン23の回動と軸方向変位に応じてシフトコントロールバルブ46を軸方向に変位させる。
【0066】一方、直結モードと動力循環モードを切り換える動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ10は、図2に示すように、遊星歯車機構5を挟んだIVT出力軸6上で同軸的に配設されている。
【0067】動力循環モードクラッチ9は、油室9aに供給されるクラッチ圧(制御圧)Pprcがリターンスプリング9bに対向してピストンを押圧することで締結が行われ、クラッチ圧Pprcの増大に応じてクラッチ容量を増大して解放状態から締結状態に至る。
【0068】同様に直結モードクラッチ10は油室10aに供給されるクラッチ圧Pdcがリターンスプリング10bに対向してピストンを押圧することで締結が行われ、クラッチ圧Pdcの増大に応じてクラッチ容量を増大して解放状態から締結状態に至る。
【0069】なお、これら動力循環モードクラッチ9、直結モードクラッチ10は、セレクトレバーの操作に応動するインヒビタスイッチ84(図3参照)が、ニュートラル位置Nまたはパーキング位置Pのときに、共に解放状態となる一方、前進位置Dにあるときはどちらか一方のクラッチが締結されており、後退位置Rでは動力循環モードクラッチ9が締結され、車両の発進時には、図24に示したように、動力循環モードのギアードニュートラルポイントGNPから変速が開始される。
【0070】IVTの変速制御は、図3に示すように、マイクロコンピュータを主体に構成されたコントロールユニット80によって行われ、IVT入力軸1またはCVT入力軸1bの回転数Ni(=エンジン回転数Ne)を検出する第1回転数センサ81からの出力と、無段変速機出力軸4または出力スプロケット2aの回転数Noを検出する無段変速機出力軸の第2回転数センサ82からの出力と、IVT出力軸6等の回転数から車速VSPを検出する車速センサ83からの出力と、アクセル開度センサ85が検出したアクセルペダルの踏み込み量APSと、図示しないシフトレバーなどの操作に応動するインヒビタスイッチ84からのシフト位置POS等がそれぞれ入力される。なお、IVT入力軸1及びCVT入力軸1bとエンジンは直結されるため、無段変速機構2の入力軸回転数Niとエンジン回転数Neは等価となる。
【0071】コントロールユニット80はこれらの検出値を運転状態として処理し、この運転状態に応じてソレノイド91、92をデューティ制御により駆動することで動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ10を選択的に締結するように信号圧を制御して、動力循環モードと直結モードを切り換える。
【0072】そして、運転状態に応じたIVT比(IVT入力軸1とIVT出力軸6の速度比=総変速比で、以下、IVT比とする)となるようにステップモータ36を駆動することで無段変速機構2の変速比ic(以下、CVT比とする)を制御する。
【0073】なお、インヒビタスイッチ84の検出値POSは、上記したように前進位置をDレンジ、後退位置をRレンジ、ニュートラル位置をNレンジ、パーキング位置をPレンジとする。
【0074】<A.油圧制御>次に、図5を参照しながら油圧制御装置について詳述する。
【0075】まず、油圧制御装置は、油圧ポンプから供給された油圧が、PLソレノイド90の信号圧によって制御されたプレッシャレギュレータ100で所定の圧力に調整され、ライン圧PLとしてライン圧回路101へ供給される。
【0076】そして、ライン圧回路101には、トラニオン23を駆動する油圧シリンダ30への流量と供給方向を制御するシフトコントロールバルブ46が接続され、上記したように、変速リンク37を介してコントロールユニット80に制御されるステップモータ36またはフィードバックリンク38の変位に応じてスプール46Sが変位し、スプール46Sの変位量に応じたライン圧PLを油圧シリンダ30の2つの油室30A、30Bのうちの一方へ供給する。
【0077】また、ライン圧回路101には、動力循環モードクラッチ9を制御するソレノイド92と、直結モードクラッチ10を制御するソレノイド91が配設され、これらソレノイド91、92はコントロールユニット80によってデューティ制御される。
【0078】デューティ制御によって駆動されたソレノイド92からの信号圧に応じて、制御弁94は、マニュアルバルブ60からのライン圧PLを調圧してクラッチ圧Pprcとして動力循環モードクラッチ9へ供給し、締結、解放を行っており、この信号圧の増大によってクラッチ圧Pprcも増大して、動力循環モードクラッチ9は解放状態から締結されるとともに、トルク伝達容量がクラッチ圧Pprcに応じて増大する一方、ソレノイド92からの信号圧が減少するとクラッチ圧Pprcも低下して、制御弁94は動力循環モードクラッチ9の油室9a(図2参照)をドレーン側に接続して解放する。
【0079】同様に、ソレノイド91からの信号圧に応じて、制御弁93はマニュアルバルブ60からのライン圧PLを調圧し、クラッチ圧Pdcとして直結モードクラッチ10へ供給して締結、解放を行っており、ソレノイド91からの信号圧が増大するとクラッチ圧Pdcも増大して解放状態から締結されるとともにトルク伝達容量がクラッチ圧Pdcに応じて増大する一方、信号圧が減少するとクラッチ圧Pdcも低下するため、制御弁93は直結モードクラッチ10の油室10a(図2参照)をドレーン側に接続して解放する。
【0080】このように、上記ソレノイド92、91のデューティ制御によって動力循環モードクラッチ9及び直結モードクラッチ10のうちの一方が締結されて、動力循環モードと直結モードが選択的に切り換えられるとともに、ソレノイド91、92のデューティ比に応じて伝達トルクの制御を行うことができる。
【0081】ここで、シフトコントロールバルブ46は、ライン圧回路101に連通した供給ポート46Pと、油圧シリンダ30の油室30Aと連通したLo側ポート46Lと、油圧シリンダ30の油室30Bと連通したHi側ポート46Hと、2つのドレーンポート46D、46Dが供給ポート46Pを挟んで設けられており、スプール46Sの軸方向変位に応じて、供給ポート46PからLo側ポート46LまたはHi側ポート46Hのうちの一方にライン圧PLが調圧されて供給される一方、他方のポートはドレーンポート46Dと連通する。
【0082】一方、スプール46Sが中立位置にある場合は、供給ポート46P、ドレーンポート46D、Lo側ポート46L及びHi側ポート46Hはそれぞれ封止される。
【0083】この中立位置から図中上方へスプール46Sが変位すると、供給ポート46PとLo側ポート46Lが連通する一方、Hi側ポート46Hがドレーンポート46Dと連通し、供給ポート46Pの開口量と供給ポート46PとLo側ポート46Lの差圧(圧力差)に応じた流量がLo側ポート46Lへ供給される。
【0084】逆に、中立位置から図中下方へスプール46Sが変位すると、供給ポート46PとHi側ポート46Hが連通する一方、Lo側ポート46Lがドレーンポート46Dと連通し、供給ポート46Pの開口量と供給ポート46PとHi側ポート46Hの差圧(圧力差)に応じた流量がHi側ポート46Hへ供給される。
【0085】こうして、供給ポート46Pから油圧シリンダ30の油室30Aまたは30Bの一方へ流れ込む流量と、油室30Aまたは30Bの他方からドレーンポート46Dへ流れ出る流量のバランスに応じて差圧が決まる。
【0086】いま、目標CVT比ticがLo側に変化した場合、ステップモータ36はステップ数Stepを減少して、変速リンク37の一端を図5の上方へ向けて目標CVT比ticに応じて変位させる。
【0087】このときパワーローラ20の傾転角が定常状態にあればプリセスカム35は停止しているため、スプール46Sも上方へ変位して、供給ポート46PとLo側ポート46Lが連通する一方、Hi側ポート46Hがドレーンポート46Dと連通し、供給ポート46PからLo側ポート46Lを介して供給された流量に応じて油室30Aの油圧が上昇する。
【0088】一方、油室30B内の油圧はドレーンポート46Dから排出されて、図4に示す右側のトラニオン23は上昇し、パワーローラ20はトラニオン23の上昇に伴ってCVT比のLo側に傾転して変速を行う。
【0089】そして、上述したように、トラニオン23の軸方向変位量に応じて、ピボットシャフト24が揺動することで、パワーローラ20の回転軸20cは入出力ディスクの回転軸1cと同一平面上に保持される。
【0090】油圧シリンダ30の駆動によって、トラニオン23は軸方向及び軸まわりに変位し、これらトラニオン23の変位はフィードバックリンク38を介して変速リンク37へ伝達され、パワーローラ20のLo側への傾転に応じてフィードバックリンク38は、図5において、変速リンク37の左側端部を下方へ変位させる。
【0091】したがって、上方に変位していたスプール46Sは、中立位置へ向けた下方へ変位し、パワーローラ20の傾転角が目標CVT比ticに一致した時点で、スプール46Sはプリセスカム35に駆動されて再び中立位置へ復帰し、油圧シリンダ30の駆動を停止する。
【0092】こうして、CVT比のLo側へ変速する際には、まず、ステップモータ36によってスプール46Sが駆動されることで、油室30Aへライン圧回路101から作動油が供給される一方、油室30B内の圧油はタンクへ排出されて、トラニオン23が変位することでパワーローラ20の傾転角はLo側へ向かう。
【0093】次に、パワーローラ20の傾転角とトラニオン23の軸方向変位がプリセスカム35、フィードバックリンク38及び変速リンク37を介してシフトコントロールバルブ46へフィードバックされるため、スプール46Sは徐々に中立位置へ復帰して、ステップモータ36が指令した目標CVT比ticとパワーローラ20の傾転角に応じた実CVT比を一致させることができる。
【0094】なお、目標CVT比ticとステップモータ36のステップ数Stepの関係は、図17のように予め設定されたマップなどに基づいて決定される。
【0095】一方、目標CVT比ticがHi側に変化した場合では、上記とは逆方向にステップモータ36等が駆動されて、パワーローラ20がHi側へ傾転する。
【0096】また、コントロールユニット80は、NレンジまたはPレンジが選択された車両の停車中には、動力循環モードクラッチ9を解放してエンジン側と駆動輪側の連結を解除するとともに、ギアードニュートラルポイントGNPを維持するように無段変速機構2の変速比icを調整する(なお、Dレンジを選択した停車中では、動力循環モードクラッチは締結したままである)。
【0097】そして、車両の発進時にはシフトレバーなどに呼応するシフト位置POSと実際のCVT比やエンジン回転数Neに基づいて、ソレノイド92を制御して動力循環モードクラッチ9を徐々に締結しながら、IVT比が運転状態に応じた目標値となるようにステップモータ36の制御を行うものである。
【0098】<B.無段変速機の入力トルク方向>ここで、IVTに採用される無段変速機構2へ入力される駆動力、すなわち入力トルクは、直結モードのときにはエンジンからの入力トルクが入力ディスク21から出力ディスク22へ伝達される。
【0099】しかし、動力循環モードのときには、ギアードニュートラルポイントGNPを境にして前進と後退が切り替わるため、無段変速機構2への入力トルクは、後退時には入力ディスク21から出力ディスク22へトルクが伝達されて、この入力トルクの方向を正方向とすると、前進時には出力ディスク22から入力ディスク21へトルクが伝達されて、入力トルクの方向は負方向となる。
【0100】動力循環モードでは、図6、図7に示すように、遊星歯車機構5へ入力される無段変速機構2と一定変速機構3の出力軸回転速度の差、すなわち、サンギア5aの回転速度と、キャリア5bのピニオンの公転速度の差に応じてIVT出力軸6に結合したリングギア5cの回転方向が決定される。
【0101】いま、図6において遊星歯車機構5を図中右側(無段変速機出力ギア7側)から見ると、図7に示すようになり、図中各回転要素の速度と方向を実線の矢印で、トルクの伝達方向を破線で示し、前進、後退及びギアードニュートラルポイントの様子を、それぞれ(A)、(B)、(C)に示す。
【0102】{B.1 前進}動力循環モードの前進時では、図7(A)に示すように、キャリア5bのピニオンの公転速度がサンギア5aの回転速度よりも大きい場合、すなわち、無段変速機構2のCVT比が、図24に示すギアードニュートラルポイントGNPより大側(Lo側)にあるときは、キャリア5bのピニオンが図中反時計回りに自転するため、リングギア5cは図中反時計回りに回転して、ファイナルギア12は、前進方向に回転する。
【0103】このとき、キャリア5bのピニオンに伝達されたトルクは、リングギア5cとサンギア5aに伝達されるため、図6の実線に示すように、無段変速機構2への入力トルクは、チェーン40を介して出力ディスク22側から入力され、負の方向となる。ちなみに、出力ディスク22から入力ディスク21へ伝達されたトルクは、CVT入力軸1b及びIVT入力軸1から一定変速機構3へ伝達されて、駆動力が循環することになる。
【0104】{B.2 後退}後退時では、図7(B)に示すように、サンギア5aの回転速度がキャリア5bのピニオンの公転速度よりも十分大きい場合、すなわち、無段変速機構2のCVT比が、図24に示すギアードニュートラルポイントGNPよりも小側(Hi側)にあるときで、キャリア5bのピニオンが図中時計回りに自転するため、リングギア5cも図中時計回りに回転して、ファイナルギア12は、後退方向に回転する。
【0105】このとき、サンギア5aに伝達されたトルクは、キャリア5bとリングギア5cに伝達されるため、図6の破線に示すように、無段変速機構2への入力トルクは、入力ディスク21から出力ディスク22へ伝達される正方向となり、サンギア5aを介してキャリア5bに伝達されたトルクは、一定変速機構3を介してCVT入力軸1bから再び入力ディスク21へ循環する。
【0106】{B.3 ギアードニュートラルポイント}一方、図7(C)に示すように、サンギア5aの回転速度とキャリア5bのピニオンの公転速度が、サンギア5aとリングギア5cのギア比に応じた値になると、キャリア5bのピニオンは図中時計回りに自転するが、リングギア5cは停止して、エンジンからのトルクはサンギア5aからキャリア5bへ循環するだけとなり、ファイナルギア12を停止させながらも、無段変速機構2の運転を継続して、このときIVT比は無限大となる。
【0107】<C.トルクシフトのヒステリシス>次に、トロイダル型の無段変速機構2に発生するトルクシフトについて説明する。
【0108】トロイダル型の無段変速機構2では、入力トルクの変動に応じて変速比が変動するトルクシフトという現象が従来から知られており、無段変速機構2の部材の変形等により、パワーローラ20の傾転角がステップモータ36で設定したCVT比からずれるもので、このトルクシフトの要因として、次の3つがあげられる。
【0109】まず、図4において、入力ディスク21にエンジンからのトルクが加わると、このトルクの影響でパワーローラ20は、トルクのかかる方向、すなわち、入力ディスク21の回転方向へ変位して、パワーローラ20の回転軸20cと入出力ディスクの回転軸1cの間にオフセットが生じ、これに伴ってトラニオン23、23は上下動する。この例では、図中右側のトラニオン23が上昇する一方、図中左側のトラニオン23が下降する。
【0110】このため、図中右側のトラニオン23に設けたプリセスカム35がCVT比のLo側(変速比=大側)に移動し、図5に示したように、シフトコントロールバルブ46のスプール46Sを変位させて、油圧シリンダ30に油圧が供給されてパワーローラ20はLo側に傾転する。
【0111】ここで、入力トルクによるトラニオン23の上昇力(または下降力)と、油圧シリンダ30内の差圧が釣り合った状態で、パワーローラ20の回転軸20cと入出力ディスクの回転軸1cのオフセットがなくなって変速が終了する。
【0112】入力トルクに対してパワーローラ20がオフセットしたときには、ピボットシャフト24の倒れが図4の上下方向に発生し、実際のパワーローラ20のオフセットに対して、ピボットシャフト24の倒れ分だけトラニオン23の軸方向変位量が小さくなる。
【0113】これによって、プリセスカム35によるシフトコントロールバルブ46へのフィードバック量が小さくなるため、実際のパワーローラ20のオフセット量に対して油圧シリンダ30で発生する油圧が小さくなって、上記したトラニオン23の上昇力と油圧シリンダ30内の差圧を釣り合わせるためには、実際のトラニオン23の軸方向変位量以上のフィードバック量が必要になり、したがって、このフィードバック量を発生させるためには、パワーローラ20をより傾転させて、さらに変速させることになる。これが、トルクシフトの第1の要因となっている。
【0114】次に、入出力ディスク21、22及びパワーローラ20によってトルク伝達を行うために、図2に示したローディングカム装置13が入力トルクに対応した挟持圧力を発生し、パワーローラ20は入出力ディスク21、22により、挟持、押圧されている。
【0115】このため、パワーローラ20は、図4において、入出力ディスク21、22の間から押し出される方向のスラスト力を受けている。
【0116】ここで、対向するパワーローラ20、20を支持するトラニオン23、23は、上記したように、ピボットシャフト24を挟んだ上下で、図示しない揺動自在なリンクを介して連結されているため、この連結点を支点にしてトラニオン23は、スラスト力によって変形する。
【0117】この変形により、トラニオン23の下端に設けたプリセスカム35の位置が変わり、変速比が変化していない状態でもフィードバックリンク38を介してスプール46Sにフィードバック量が加わってしまい、このスプール46Sの変位に応じて油圧シリンダ30へ油圧が供給され、トラニオン23が軸方向に駆動されて変速することになる。これが、トルクシフトの第2の要因となっている。
【0118】次に、第3の要因は、トルク伝達を行うために、パワーローラ20は入出力ディスク21、22により、挟持、押圧されているが、入出力ディスク21が出力ディスク22側に押し付けられることにより、ディスクに変形が生じる。
【0119】そして、この変形によって、パワーローラ20と入出力ディスク21、22の接触位置が変化するため、ピボットシャフト24が揺動し、この揺動に応じてトラニオン23が軸方向に変位するため、上記と同様に変速が行われる。これが、トルクシフトの第3の要因となっている。
【0120】こうして、トロイダル型無段変速機では、上記3つの要因により、入力トルクに応じて変速比(CVT比)が変動するトルクシフトという現象が生じるのである。
【0121】次に、トルクシフトのヒステリシスについて説明する。
【0122】CVT比がギアードニュートラルポイントGNP近傍にあり、かつ、入力トルクが0を含んで変化する場合では、上記「B.無段変速機の入力トルク方向」で述べたように無段変速機構2への入力トルクの方向が、ギアードニュートラルポイントGNPを境に反転するため、図23に示すように、トルクシフトにヒステリシス領域が生じる。
【0123】なお、図23は、入力トルク=0となる無負荷のときにギアードニュートラルポイントGNPとなるよう、ステップモータ36のステップ数Stepを固定した状態で、無段変速機構2への入力トルクを変化させたものである。
【0124】トロイダル型の無段変速機構2として、図4に示したようなピボットシャフト24を介してパワーローラ20を支持する場合、ピボットシャフト24の基端とトラニオン23の間には、上記したように軸受が介装されてピボットシャフト24を揺動自在に支持している。
【0125】しかしながら、この軸受には径方向のガタ(クリアランス)とフリクションがあるため、パワーローラ20に加わるトルクが、これらガタ及びフリクションよりも大きくなるまでピボットシャフト24は揺動しない。
【0126】このため、ギアードニュートラルポイントGNP近傍では、入力トルクの方向が反転してから、ピボットシャフト24まわりのガタ及びフリクションよりも、入力トルクの絶対値が大きくなるまでピボットシャフト24が揺動しないため、トルクシフトにヒステリシスが生じる。
【0127】したがって、図23のように、入力トルクの増大側(負から正へ向かう方向)では、図中T+の線に沿ってパワーローラ20の傾転角が減少する一方、入力トルクの減少側(正から負へ向かう方向)では、図中T−の線に沿ってパワーローラ20の傾転角が増大するヒステリシス領域となる。
【0128】そして、図中T+の線上でギアードニュートラルポイントGNPを維持しようとしても、入力トルク=0のときに取り得る傾転角は、図中変動範囲Δφ内で不定となるため、IVT比がギアードニュートラルポイントGNPからずれてしまい、前記従来例のように発進時のショックや意図しないクリープトルクが発生する場合がある。
【0129】<D.ヒステリシスの回避>トロイダル型の無段変速機構2を採用した場合では、上記のようなヒステリシス領域が存在するが、図9、図10に示すように、入力トルクが0近傍の領域において、ギアードニュートラルポイントGNPとなり得るステップモータ36のステップ数は、上記ヒステリシスのために図中AstepからBstepの範囲で多数存在することになる。
【0130】そこで、図8に示すように、停車中にギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数をAstepとすると、NレンジまたはPレンジで停車中の際には、ステップモータ36をこのAstepに設定して動力循環モードクラッチ9を解放させる。
【0131】この停車状態から、図示しないシフトレバー等がDレンジへ操作されて前進方向へ発進する際には、実際の傾転角が図中変動範囲Δφ内のいずれかにあるため、一旦、ステップモータ36を車両の進行方向、すなわち、インヒビタスイッチ84の出力POSに応じて予め設定したステップ数だけ送った後、同じく車両の進行方向に応じて予め設定されたステップ数に戻しておく。
【0132】例えば、N−Dセレクトが行われて前進方向へ発進する場合には、ギアードニュートラルポイントGNPを実現する図8のAstepから、ステップモータ36のステップ数をBstep(図中実線)まで一時的に減少させ、動力循環モードの前進側であるCVT比の大側へ一時的に変更し、動力循環モードクラッチ9が締結される以前に、再びステップ数を増大させてAstepへ戻す。
【0133】なお、図17に示したように、ステップモータ36のステップ数は、小さい方がCVT比の大側(Lo側=傾転角は小側)で、ステップ数の大きい方がCVT比の小側(Hi側=傾転角は大側)となる。
【0134】したがって、図8の変動範囲Δφ内で不定となっていた傾転角は、入力トルク=0の状態で、ステップモータ36のステップ数が少なくともステップ数Bstep以下へ移動することにより、パワーローラ20の傾転角は、図中Bstepのヒステリシスによる変動範囲Δφ’の最大値となって、Bstepのヒステリシスうち外周上辺に乗る。
【0135】ここで、ステップ数Astepは、入力トルク=0のときに、変動範囲Δφの最小値で、傾転角がギアードニュートラルポイントGNPとなるように予め設定されており、また、入力トルク=0のときに、ステップ数Bstepの変動範囲Δφの最大値と、ステップ数Astepの変動範囲Δφの最小値が等しくなるように設定されている。
【0136】そして、再びAstepへ復帰すると、パワーローラ20の傾転角は入力トルク=0の線上で、Astepのヒステリシス外周下辺、換言すれば、ステップ数Astepにおける変動範囲Δφの最小値となって、ギアードニュートラルポイントGNPとなるN点に設定されるのである。
【0137】この後、動力循環モードクラッチ9を締結し、ステップ数を小側(CVT比の大側)に送れば、負方向のCVT入力トルクによって、必ずギアードニュートラルポイントGNPから前進側に発進を行うことができ、トロイダル型の無段変速機構2に特有のトルクシフトによる変速比のずれを補償して円滑な発進を可能にし、前記従来例のような変速比のずれによるショックや意図しないクリープを確実に防止することができるのである。
【0138】また、N−Dセレクト直後から、動力循環モードクラッチ9の油室9aに油圧が供給されて徐々に締結されることになるが、この間、上記のようにギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数Astepからトルクシフトによるヒステリシスを補償可能な所定のステップ数Bstepまで減少させてから、再びAstepへ戻すようにしたため、BstepからAstepへ戻る途中に、万一、動力循環モードクラッチ9が締結されたとしても、ステップ数の減少側は、動力循環モードの前進側であるため、運転者の意図した前進方向へ車両を推進でき、前記従来例のように運転者が設定した進行方向とは逆側にトルクが伝達するのを防ぐことができるのである。
【0139】なお、前進側で発進する際に、停車中にギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数Astepから、ステップモータ36を一時的にずらすように駆動するステップ数Bstepは、このBstepにおけるヒステリシスの外周上辺(変動範囲Δφ’の最大値)が、Astepにおけるヒステリシスの外周下辺(変動範囲Δφの最小値)以下のステップ数であればよく、この前進側では、NレンジまたはPレンジでステップ数Astepのヒステリシスの変動範囲Δφ内で不定となっていた傾転角は、ステップ数Bstepへ移動することで、この変動範囲Δφの外側に移動し、再びステップ数Astepへ戻すことで、傾転角をヒステリシスの変動範囲Δφの最小値(入力トルク=0のとき)となるAstepの外周下辺に設定でき、前進側の発進時には、確実にギアードニュートラルポイントGNPを実現することができるのである。
【0140】次に、N−Rセレクトが行われて後退方向へ発進する場合について、図11を参照しながら説明する。
【0141】N−Rセレクトの場合では、ギアードニュートラルポイントGNPを実現する図11のステップ数Astepから、上記N−Dセレクト時とは逆に、ステップモータ36のステップ数を、Astepよりもステップ数の大側(CVT比のHi側)に予め設定されたCstep(図中破線)まで一時的に増大させた後、動力循環モードクラッチ9が締結される以前に、後退方向でギアードニュートラルポイントGNPを実現する所定のステップ数Bstepまで減少させる。
【0142】したがって、NレンジまたはPレンジで停車中に、図11に示すステップ数Astepの変動範囲Δφ内で不定となっていた傾転角は、入力トルク=0の状態でステップモータ36がステップ数の大側に設定されたCstepへ移動することにより、図中Cstepのヒステリシスのうち外周下辺=変動範囲Δφ''の最小値に乗る。
【0143】この後、ステップ数CstepからAstepよりもステップ数の小側に設定されて、車両の後退方向へトルクを伝達する際にギアードニュートラルポイントGNPを実現するBstepまで減少させることで、パワーローラ20の傾転角は、図中Bstepのヒステリシスのうち外周上辺=変動範囲Δφの最大値となるN点に乗る。
【0144】このBstepの外周上辺で、変動範囲Δφ’の最大値は、CVT入力トルクが正方向(動力循環モードの後退側)へ増大するときに、ギアードニュートラルポイントGNPを通るため、この後、動力循環モードクラッチ9を締結して、ステップ数を大側(CVT比の小側)へ送っていけば、正方向のCVT入力トルクによって、必ずギアードニュートラルポイントGNPから後退方向へ発進を行うことができ、後退時においてもトロイダル型の無段変速機構2に特有のトルクシフトによる変速比のずれを補償して円滑な発進を可能にし、前記従来例のような変速比のずれによるショックや意図しないクリープを確実に防止することができるのである。
【0145】また、N−Rセレクト直後から、動力循環モードクラッチ9の油室9aに油圧が供給されて徐々に締結されることになるが、この間、上記のようにギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数Astepから、一旦、ステップ数の大側のCstepまで増大させてから、トルクシフトによるヒステリシスを補償可能な所定のステップ数Bstepまで減少させるようにしたため、CstepからBstepへ戻る途中に、万一、動力循環モードクラッチ9が締結されたとしても、Astepよりもステップ数の増大側は、動力循環モードの後退側であるため、運転者の意図した後退方向へ車両を推進でき、前記従来例のように運転者が設定した進行方向とは逆側にトルクを伝達するのを防ぐことができるのである。
【0146】ここで、後退側へ発進する際にステップモータ36を一時的に駆動するステップ数Cstepは、上記のようにAstepよりもステップ数の小側のBstepへ移動させる場合、このステップ数Cstepにおけるヒステリシスの外周下辺=変動範囲Δφの最小値が、最終的に移動するBstepにおけるヒステリシスの外周上辺=変動範囲Δφの最大値よりも、少しでもステップ数の大側にあればよく、ステップ数Astepのときにヒステリシスの変動範囲Δφで不定となっていた傾転角は、ステップ数CstepからBstepへ移動する際に、必ずBstepにおけるヒステリシスの外周上辺(変動範囲Δφ’の最大値)に乗って、後退側でのギアードニュートラルポイントGNPを実現することができるのである。
【0147】こうして、動力循環モードクラッチ9が締結される以前に、ギアードニュートラルポイントGNPとなる予め設定したステップ数Astepから、車両の進行方向に応じてヒステリシスの大きさに応じた変動範囲Δφの外側までステップモータ36を、一時的に駆動した後、進行方向に応じて設定されたステップ数へ移動することで、パワーローラ20の傾転角は、ギアードニュートラルポイントGNPに対応したAstepの変動範囲Δφの外側に設定され、この後、再び進行方向に応じて設定されたステップ数AstepまたはBstepに戻されることで、傾転角は入力トルク=0のときに変動範囲Δφの最小または最大値のいずれか一方に設定されて、確実にギアードニュートラルポイントGNPから発進することが可能となる。
【0148】なお、上記図11では、NレンジまたはPレンジでギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数をAstepとした場合を示したが、停車中にステップ数BstepでギアードニュートラルポイントGNPを実現するようにしてもよく、この場合では、N−Rセレクトが行われると、BstepからAstepまで、一旦ステップ数を増大させた後に、再びBstepへ戻してから動力循環モードクラッチ9を締結すればよく、上記と同様にして、トルクシフトのヒステリシスを回避して確実にギアードニュートラルポイントGNPから発進を行うことができ、かつ、ステップモータ36のステップ数を増減させている間に、万一、動力循環モードクラッチ9が締結されても、後退側にトルクを伝達して、運転者の意図した後退方向へ車両を推進でき、前記従来例のように運転者が設定した進行方向とは逆側にトルクを伝達するのを防ぐことができるのである。
【0149】次に、コントロールユニット80で行われる上記発進制御の一例について、図12〜図14のフローチャートを参照しながら以下に詳述する。
【0150】なお、各フローチャートは、セレクト操作から動力循環モードクラッチ9が完全に締結されるまでの間において所定時間毎、例えば、10msec毎等に実行されるもので、図12は全体の概略を示し、図13はセレクト操作に応じたステップモータ36の制御を示すサブルーチンで、また、図14のフローチャートは、同じく、セレクト操作に応じた動力循環モードクラッチ9の締結制御を示す。
【0151】まず、図12のステップS30では、インヒビタスイッチ84からのシフト位置POSを読み込んでから、ステップS31で、シフト位置POSがN−DセレクトまたはN−Rセレクトが行われた場合には、ステップモータ36のステップ数を一時的に増減するよう制御する。
【0152】そして、ステップS32では、N−DセレクトまたはN−Rセレクトが行われた場合、動力循環モードクラッチ9を徐々に締結するための油圧制御を行う。
【0153】次に、図13に示すステップモータ36の制御は、まず、ステップS40でNレンジまたはPレンジにあるか否かを判定し、NまたはPレンジにあれば、ステップS42へ進んで停車中の処理を行う一方、N−D(P−D)セレクトまたはN−R(P−R)セレクトが行われた場合には、ステップS44移行へ進んで、発進開始の変速制御を行う。
【0154】ステップS42の停車中の処理では、ステップモータ36のステップ数Stepを、予め設定したギアードニュートラルポイントGNPとなるステップ数Snに設定した後、タイマーtc1を0にクリアして処理を終了する。
【0155】なお、ギアードニュートラルポイントGNPに対応したステップ数Snは、例えば、上記図8〜図12に示したステップ数Astep等に設定される。
【0156】そして、発進開始のステップS44では、セレクト操作がDレンジがRレンジのいずれかを判定して、DレンジであればステップS45へ進んで、制御周期当たりの増減量ΔSTPを予め設定した負の値、例えば、−1に設定し、CVT比が一時的に大側となるように設定する。
【0157】一方、Dレンジでない場合には、ステップS46へ進んでセレクト操作がRレンジであるかを判定し、RレンジであればステップS47へ進んで、制御周期当たりの増減量ΔSTPを予め設定した正の値、例えば、+1に設定し、CVT比が一時的に大側となるように設定する。
【0158】なお、増減量ΔSTPは、ステップモータ36のステップ数StepとCVT比が図17のように設定されている場合の一例である。
【0159】次に、ステップS48で、タイマーtc1を制御周期Δt(ここでは、10msec)に応じてインクリメントした後、ステップS49では、タイマーtc1の経過時間が予め設定した値Time_a以下であるかを判定し、タイマーtc1がTime_a以下の場合には、上記図8、図11のように、現在のステップ数Snのヒステリシスに応じた変動範囲Δφの外側にシフトする時間であると判定して、ステップS50へ進む。
【0160】ステップS50では、上記ステップS45またはS47で設定した増減量ΔSTPを加算して車両の進行方向に応じてステップモータ36のステップ数Stepを変更して処理を終了する。
【0161】一方、ステップS49の判定で、タイマーtc1が予め設定した値Time_aを超えた場合には、ステップ51以降へ進んで、ステップ数を進行方向に応じてギアードニュートラルポイントGNPに対応したステップ数Snへ復帰するよう制御する。なお、N−Rセレクト時では、復帰するステップ数Snは、例えば、上記図11に示したステップ数Bstepに設定される。
【0162】すなわち、ステップS51では、ステップモータ36のステップ数Stepから制御周期毎に上記増減量ΔSTPを減算し、ステップS52、S53においてステップモータ36のステップ数StepがSnを超えた後には、ステップ数をギアードニュートラルポイントGNPに対応したSnに復帰させて処理を終了する。
【0163】次に、発進時に行う動力循環モードクラッチ9の締結制御は、図14のステップS60で、N−DセレクトまたはN−Rセレクトが行われたか否かを判定し、インヒビタスイッチ84の出力POSがNレンジまたはPレンジとなる停車中では、ステップS61へ進んで、動力循環モードクラッチ9へ供給する油圧指令値(以下、クラッチ圧とする)Pprcを0に設定するとともに、ステップS62で、N−DセレクトまたはN−Rセレクトからの経過時間を測定するタイマーtc2を0にリセットする。
【0164】一方、N−DセレクトまたはN−Rセレクトが検出されたステップS63では、経過時間に応じたクラッチ締結制御を行うため、タイマーtc2を制御周期に応じてインクリメントした後、ステップS64では、タイマーtc2の値が第1の所定時間TIME1を経過したか否かを判定し、所定時間TIME1未満であれば、セレクト操作直後であると判定してステップS65へ進む一方、所定時間TIME1を経過していればステップS66へ進む。
【0165】セレクト操作直後のステップS65では、動力循環モードクラッチ9へ供給するクラッチ圧Pprcを、所定のプリチャージ圧(中込圧)PRS#PREとなるように設定して処理を終了する。
【0166】動力循環モードクラッチ9は、NレンジまたはPレンジのときにはクラッチ圧Pprcがほぼ0であるため、図2に示したように、スプリング9bに押圧されて図中右側へ押し付けられて、押圧部材9cがディスク9dから離れて解放状態となっている。そこで、図15または図16に示すように、指令値をプリチャージ圧PRS#PREまで上昇させて、迅速に油室9aへ圧油を供給するが、指令値がプリチャージ圧PRS#PREとなっても、動力循環モードクラッチ9は締結力を発生せず、実際の油圧は図15、図16の破線のように緩やかに上昇して、後述するリターン圧PRS#RMPへ向かう。
【0167】なお、上記変速制御の経過時間Time_aは、この第1の所定時間TIME1よりも小さい値に設定される。
【0168】次に、第1の所定時間TIME1を経過したステップS66では、タイマーtc2の値が第2の所定時間TIME2を経過したか否かを判定し、所定時間TIME2未満であれば、プリチャージ終了と判定してステップS67へ進む一方、所定時間TIME2を経過していればステップS68へ進む。
【0169】プリチャージ終了のステップS67では、動力循環モードクラッチ9へ供給するクラッチ圧Pprcを、所定のリターン圧(中込圧)PRS#RTNとなるように設定して処理を終了する。なお、このリターン圧PRS#RTNは、ピストン9pがスプリング9bに対抗してディスク9dを押圧し、締結力を発生する臨界圧力である。
【0170】一方、第2の所定時間TIME2を経過したステップS68では、タイマーtc2の値が第3の所定時間TIME3を経過したか否かを判定し、所定時間TIME3未満であれば、ステップS69へ進む一方、所定時間TIME3を経過していれば、ステップS72へ進んで、クラッチ圧Pprcを予め設定した油圧PRS#MAXへ上昇させて、入力トルクに応じてクラッチの締結を行い、以降通常走行中の締結力制御を行う。また、変速制御は所定時間TIME3を経過した後には、通常の変速制御、すなわち、車速と入力トルクなどの運転状態に応じたIVT比となるようにCVT比の制御が行われる。
【0171】ステップS69からS71では、クラッチ圧Pprcをリターン圧PRS#RTNから予め設定した棚圧PRS#LMTへ向けて、所定の増分値PRS#RMPずつランプ状に上昇させる。ここで、棚圧PRS#LMTは、動力循環モードクラッチ9が完全に締結される油圧である。
【0172】したがって、上記ステップS69〜S71では、動力循環モードクラッチ9へ供給するクラッチ圧Pprcが、所定の増分値PRS#RMPに応じて、リターン圧PRS#RTNから棚圧PRS#LMTへ向けて徐々に増大し、動力循環モードクラッチ9の締結力は次第に大きくなり、伝達トルクを徐々に増大させてエンジンのストールを防止しながら車両の発進を円滑に行う。
【0173】運転者がN−Dセレクト操作を行った上記所定時間TIME1からTIME3の間では、図15に示すように、動力循環モードクラッチ9に供給するクラッチ圧Pprcを徐々に増大させることで、円滑に発進を行うことができ、各所定時間TIME1〜TIME3の期間に設定される油圧の関係は、図示のように、PRS#RTN<PRS#PRE<PRS#LMT<PRS#MAXとして設定され、また、セレクト操作直後の時間T=0から締結が終了する時間TIME3までは、例えば、1秒程度に設定される。
【0174】そして、ヒステリシスを回避するための変速制御は、クラッチ圧Pprcがプリチャージ圧PRS#PREに設定されている経過時間TIME1未満の経過時間Time_a以内で、CVT比の一時的な増減を行った後、クラッチ圧Pprcがリターン圧PRS#RTNから棚圧PRS#RMPへ向けて上昇(ランプ制御)を開始する時間TIME2までに、ギアードニュートラルポイントGNPに対応したステップ数Sn(=Astep)に復帰すればよい。なお、プリチャージの時間TIME1は、例えば、30〜50msec等に設定される。
【0175】したがって、N−Dセレクトの前進時には図15のように、プリチャージ期間中に、CVT比が一旦大側(ステップ数は小側)へシフトした後、ギアードニュートラルポイントGNPに応じたステップ数Snへ復帰してから動力循環モードクラッチ9の締結力を発生させるようにしたため、上述したように、トルクシフトのヒステリシスによるギアードニュートラルポイントGNPの変動を確実に防止しながら発進を行うことができ、無段変速機構2にトロイダル型を採用したIVTの発進性能を向上させることが可能となるのである。
【0176】同様に、N−Rセレクトの後退時には図16のように、プリチャージ期間中に、CVT比が一旦小側(ステップ数は大側)へシフトした後、ギアードニュートラルポイントGNPに応じたステップ数Sn(=Bstep)へ復帰してから動力循環モードクラッチ9の締結力を発生させるようにしたため、トルクシフトのヒステリシスによるギアードニュートラルポイントGNPの変動を確実に防止しながら発進を行うことができ、無段変速機構2にトロイダル型を採用したIVTの発進性能を向上させることが可能となるのである。
【0177】なお、上記実施形態では、クラッチ圧Pprcの制御を優先して行ったが、図示はしないが、変速比の一時的な増減が終了してギアードニュートラルポイントGNPとなるステップ数Snに復帰するのを待ってから、クラッチ圧Pprcの制御を行ってもよく、同様の作用効果を得ることができ、さらに、増減するステップ数の最大値を大きく設定すれば、ヒステリシスによるギアードニュートラルポイントGNPの変動をより確実に防止できる。
【0178】図18は、第2の実施形態を示し、前記第2実施形態におけるCVT比の一時的な増減を止めて、ヒステリシス領域の外側の位置でギアードニュートラルポイントGNPとなるようにステップ数Snを設定したものである。
【0179】この場合、動力循環モードクラッチ9の締結を開始した直後からトルクTi1を伝達することになり、発進時のショックを緩和するためには、上記図15、図16に示した所定時間TIME2からTIME3までのランプ制御を緩やかに行えばよく、トルクシフトのヒステリシスによるギアードニュートラルポイントGNPの変動を確実に防止しながら発進を行うことができ、無段変速機構2にトロイダル型を採用したIVTの発進性能を向上させることが可能となるのである。
【0180】図19、図20は第3の実施形態を示し、前記第1実施形態の図8に示した、ステップ数Bstepで前進側の発進を行う一方、ステップ数Astepで後退側の発進を行うようにしたものである。なお、ステップ数AstepとBstepの関係は前記第1実施形態と同様で、Astepにおける変動範囲Δφの最小値が、Bstepにおける変動範囲Δφの最大値に等しく設定されている。
【0181】前記第1実施形態と同様に、ギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数をAstepとし、NレンジまたはPレンジの際には、ステップモータ36をこのAstepに設定して動力循環モードクラッチ9を解放させる。
【0182】まず、N−Dセレクトが行われて前進方向へ発進する場合には、図19に示すように、ギアードニュートラルポイントGNPを実現する図19のAstepから、ステップモータ36のステップ数をBstep(図中実線)まで減少させ、動力循環モードの前進側であるCVT比の大側へ変更してから、動力循環モードクラッチ9を締結して発進を行う。
【0183】ステップ数Astepの変動範囲Δφ内で不定となっていた傾転角は、入力トルク=0の状態で、ステップモータ36のステップ数が少なくともステップ数Bstepへ移動することにより、図中Bstepのヒステリシスによる変動範囲Δφ’の最大値となって、必ずBstepのヒステリシスうち外周上辺のN点に設定される。
【0184】この後、動力循環モードクラッチ9の締結容量を制御しながら、ステップ数を小側(CVT比の大側)に送れば、負方向のCVT入力トルクによって、必ずギアードニュートラルポイントGNPから前進側に発進を行うことができ、トロイダル型の無段変速機構2に特有のトルクシフトによる変速比のずれを補償して円滑な発進を可能にし、前記従来例のような変速比のずれによるショックや意図しないクリープを確実に防止することができるのである。
【0185】そして、ステップ数Bstepからの前進に際して、ステップ数を図中B1に減少した状態では、動力循環モードクラッチ9の締結力を徐々に増大させることにより、傾転角とトルクの関係は、図中D1からD2、D3へ順次変化して、前進方向への伝達トルクを徐々に増大させることができ、ブレーキペダルを踏み込んで停車している場合では、この伝達トルクがクリープトルクとなるため、ステップ数を小側に送りながら動力循環モードクラッチ9の締結力を制御することで、クリープトルクの制御を行うことができる。
【0186】また、図中点D3の傾転角から徐々に動力循環モードクラッチ9を解放すれば、傾転角とトルクの関係は、図中D3からD2、D1へ順次変化して、クリープトルクを動力循環モードクラッチ9の締結力に応じて減少させることができる。すなわち、各ステップ数毎にクリープトルクの制御を高い再現性を持って行うことが可能となるのである。
【0187】次に、N−Rセレクトが行われて後退方向へ発進する場合について、図20を参照しながら説明する。
【0188】N−Rセレクトの場合では、図20に示すように、ギアードニュートラルポイントGNPを実現する図20のAstepから、ステップモータ36のステップ数をBstep(図中一点鎖線)まで減少させ、動力循環モードの前進側であるCVT比の大側へ変更し、再び、ステップ数Astepへ戻すことで、停車中に、ステップ数Astepの変動範囲Δφ内で不定となっていた傾転角は、入力トルク=0の状態で、ステップモータ36のステップ数が少なくともステップ数Bstepへ移動した後に、Astepへ戻すことにより、傾転角が図中Astepのヒステリシスによる変動範囲Δφの最小値となって、必ずAstepのヒステリシスうち外周下辺のN点に設定される。
【0189】この後、動力循環モードクラッチ9の締結容量を制御しながら、ステップ数を大側(CVT比の小側)に送れば、正方向のCVT入力トルクによって、必ずギアードニュートラルポイントGNPから後退側に発進を行うことができ、トロイダル型の無段変速機構2に特有のトルクシフトによる変速比のずれを補償して円滑な発進を可能にし、前記従来例のような変速比のずれによるショックや意図しないクリープを確実に防止することができるのである。
【0190】そして、ステップ数Astepからの後退に際して、ステップ数をA1に設定した状態では、動力循環モードクラッチ9の締結力を徐々に増大させることにより、傾転角とトルクの関係は、図中点D1からD2、D3へ順次変化して、後退方向への伝達トルクを徐々に増大させることができ、ブレーキペダルを踏み込んで停車している場合では、この伝達トルクがクリープトルクとなるため、ステップ数を大側に送りながら動力循環モードクラッチ9の締結力を制御することで、クリープトルクの制御を行うことができる。
【0191】また、図中D3の傾転角から徐々に動力循環モードクラッチ9を解放すれば、傾転角とトルクの関係は、図中D3からD2、D1へ順次変化して、クリープトルクを動力循環モードクラッチ9の締結力に応じて減少させることができる。すなわち、各ステップ数毎にクリープトルクの制御を高い再現性を持って行うことが可能となるのである。
【0192】図21、図22は第4の実施形態を示し、ヒステリシス領域の終点で発進を行うようにしたものである。
【0193】まず、図21のN−Dセレクトについて説明すると、NまたはPレンジの停車中では、前記第1実施形態と同様に、ステップ数AstepでギアードニュートラルポイントGNPを実現している。
【0194】そして、N−Dセレクトが行われて前進方向へ発進する場合には、図21に示すように、ステップ数Astepから、ステップモータ36のステップ数をEstep(図中破線)まで減少させた後、ステップ数Dstepまで増大させてから、動力循環モードクラッチ9を締結して発進を行う。
【0195】ステップ数Astepの変動範囲内で不定となっていた傾転角は、入力トルク=0の状態で、ステップモータ36のステップ数がEstepへ減少した後、Dstepまで戻すことにより、図中Dstepのヒステリシスによる変動範囲Δφの最小値となって、必ずDstepのヒステリシスのうち、外周下辺のNb点に設定される。
【0196】ここで、ステップ数Dstepは、入力トルクが負の領域で、ヒステリシス領域の終点(図中N点)が、ギアードニュートラルポイントGNPとなるように設定されている。
【0197】一方Nb点は、傾転角がギアードニュートラルポイントGNPよりも動力循環モードの前進側(ステップ数の小側)にずれている。
【0198】このとき、動力循環モードクラッチ9を徐々に締結すると、車両は停止しているため、IVT比はギアードニュートラルポイントGNPにならざるを得ず、傾転角はステップ数Dstepの外周下辺をたどって、図中Nb点からNc点を経て、予めギアードニュートラルポイントGNPに設定されたN点へ移動する。
【0199】すなわち、締結容量を制御することで、ヒステリシス領域を避けて、確実にギアードニュートラルポイントGNPから発進することができるのである。
【0200】そして、このN点からステップ数を減少させれば、確実に前進側へ発進させることができるのである。
【0201】例えば、図中DstepからEstepへステップ数を減少させれば、傾転角は、図中N点からNd点へ移動して、トルクシフトによるヒステリシスの影響を受けることなく変速制御を行うことができる。
【0202】ここで、前記第1実施形態の図8のように、ステップ数Astepから前進側へ発進する場合では、図21において、点Naから傾転角の制御を行うことになる。
【0203】前進側へステップ数を減少させていくと、ヒステリシスによって、トルクに対する傾転角の変化割合が増大する急傾斜部Xがあるため、この区間Xではステップモータ36を急速に動かさなければ、傾転角がGNPよりも後退側へ入ってしまう場合がある。
【0204】これに対して、図21のように、ステップ数DstepのN点では、既に急傾斜部となっている区間Nc−Nを過ぎてから発進を行うため、ステップ数と入力トルクに応じてステップモータ36の速度を決定すればよく、上記のように、急傾斜部Xに応じてステップモータ36の駆動速度を増大させる必要がない。
【0205】次に、N−Rセレクトが行われて後退方向へ発進する場合について、図22を参照しながら説明する。
【0206】この図22では、NまたはPレンジの停車中では、ステップ数BstepでギアードニュートラルポイントGNPを実現している。
【0207】停車中にギアードニュートラルポイントGNPを実現する図21のBstepから、ステップモータ36のステップ数をGstep(図中破線)まで増大させ、動力循環モードの後退側であるCVT比の小側へ変更し、再び、ステップ数Fstepへ戻すことで、停車中に、ステップ数Bstepの変動範囲内で不定となっていた傾転角は、入力トルク=0の状態で、ステップモータ36のステップ数が少なくともステップ数Gstepへ移動した後に、Fstepへ戻すことにより、傾転角は図中Fstepのヒステリシスによる変動範囲Δφの最大値となって、必ずFstepのヒステリシスうち外周上辺のNb点に設定される。
【0208】ここで、ステップ数Fstepは、入力トルクが正の領域で、ヒステリシス領域の終点(図中N点)が、ギアードニュートラルポイントGNPとなるように設定されている。
【0209】一方、図中Nb点は、傾転角がギアードニュートラルポイントGNPよりも動力循環モードの後退側(ステップ数の大側)にずれている。
【0210】このとき、動力循環モードクラッチ9を徐々に締結すると、車両は停止しているため、IVT比はギアードニュートラルポイントGNPにならざるを得ず、傾転角はステップ数Fstepの外周上辺をたどって、図中Nb点からNc点を経て、予めギアードニュートラルポイントGNPに設定されたN点へ移動する。
【0211】すなわち、締結容量を制御することで、ヒステリシス領域を避けて確実にギアードニュートラルポイントGNPから発進することができるのである。
【0212】そして、このN点からステップ数を増大させれば、確実に後退側へ発進させることができるのである。
【0213】例えば、図中FstepからGstepへステップ数を増大させれば、傾転角は、図中N点からNr点へ移動して、トルクシフトによるヒステリシスの影響を受けることなく変速制御を行うことができる。
【0214】この場合も、上記前進時と同様に、ステップ数FstepのN点では、既に急傾斜部となっている区間Nc−Nを過ぎているため、ステップ数と入力トルクに応じてステップモータ36の速度を決定すればよく、上記のように、急傾斜部Xに応じてステップモータ36の駆動速度を増大させる必要がない。
【0215】こうして、発進の際に、ギアードニュートラルポイントGNPを実現するステップ数DstepまたはFstepを、ヒステリシス領域の終点または外側に設定し、入力トルクの方向=発進方向に応じて設定することにより、ヒステリシス領域の影響を受けることなく、発進開始からの変速制御を行うことが可能となり、特に、ステップモータ36の応答性が低下する低油温時などでは、上記ヒステリシス領域内の急傾斜部Xによる速度の上昇を考慮する必要がないため、小型のステップモータ36を用いても十分な応答速度を得ることができ、変速制御の応答性向上と、装置の小型軽量化を推進することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年5月31日(2000.5.31)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−82595(P2001−82595A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願2000−161750(P2000−161750)