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【発明の名称】 油圧作動式変速機における油温調整装置
【発明者】 【氏名】谷澤 正一

【氏名】谷岡 正敏

【氏名】津曲 正幸

【要約】 【課題】寒冷時における油圧作動式変速機の作動油の昇温を促進し、変速機のフリクションロスを低減して燃費性能を向上する。

【解決手段】油圧作動式変速機の油圧回路9に設ける油路14に熱交換器15を介設し、エンジン2の冷却水と作動油との間での熱交換を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに連結される油圧作動式変速機の作動油の油温を調整する装置において、作動油とエンジンの冷却水との間での熱交換を行う熱交換器を設ける、ことを特徴とする油圧作動式変速機における油温調整装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として車両用の油圧作動式変速機に適用される油温調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両用油圧作動式変速機は、エンジンに連結される流体トルクコンバータと、流体トルクコンバータの出力側に設けた、変速用油圧クラッチを有する副変速機とで構成されている。流体トルクコンバータには、その内部空隙の油圧で係合側に押され、流体トルクコンバータ内の背圧室の油圧で解放側に押されるロックアップクラッチが設けられており、内部空隙の油圧と背圧室の油圧との差圧を制御して、ロックアップクラッチを直結状態で係合させたり、滑り状態で係合させるようにしている。
【0003】ここで、ロックアップクラッチを滑り状態で係合させると、摩擦熱で作動油の油温が上昇する。そこで、従来は、流体トルクコンバータからのドレン油をラジエータの背面部分に配設した放熱管を経由して変速機ケース内に戻し、変速機の作動油の油温が上昇することを防止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、変速機の作動油の油温が低温になると、作動油の粘性増加で変速機のフリクションロスが大きくなり、エンジンの燃費性能が悪くなる。然し、従来は、作動油の昇温防止のみに留意しており、外気温が低くなると、作動温の昇温が遅れ、燃費性能に悪影響が及ぶ。
【0005】本発明は、以上の点に鑑み、寒冷時の作動油の昇温を促進して燃費性能を向上し得るようにした油圧作動式変速機における油温調整装置を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく、本発明は、エンジンに連結される油圧作動式変速機の作動油の油温を調整する装置において、作動油とエンジンの冷却水との間での熱交換を行う熱交換器を設けている。
【0007】エンジン冷却水はエンジン始動後早期に昇温し、冷却水との間で熱交換を行うことにより作動油の昇温が促進される。かくて、寒冷時においても作動油は早期に昇温され、変速機のフリクションロスが低減されて、燃費性能が向上する。
【0008】また、作動油の油温が一定温度以上になったときは、エンジン冷却水が冷媒として機能して作動油が冷却され、作動油の過熱も防止される。
【0009】
【発明の実施の形態】図1を参照して、1は車両用の油圧作動式変速機であり、該変速機1は、エンジン2に連結した流体トルクコンバータ3と、流体トルクコンバータ3の出力側に設けた副変速機4とで構成されている。
【0010】副変速機4は、流体トルクコンバータ3に連結される第1入力軸4aと、第1入力軸4aと同期回転する第2入力軸4bと、車両の駆動輪5に差動ギア6を介して連結される出力軸4cとを備え、第2入力軸4bと出力軸4cとの間に前進用の1速及び2速の変速段G1、G2を並設すると共に、第1入力軸4aと出力軸4cとの間に前進用の3速乃至5速の変速段G3、G4、G5と後進段GRとを並設し、これら前進用の変速段に夫々油圧連結要素たる1速乃至5速の各油圧クラッチC1、C2、C3、C4、C5を介設して、該各油圧クラッチの連結により前進用の各変速段を選択的に確立させるようにし、また、後進段GRは5速段G5と5速油圧クラッチC5を共用するものとし、5速段G5と後進段GRとを出力軸4c上のセレクタギア7の図面で左方の前進側と右方の後進側とへの切換動作で選択的に確立させるようにした。尚、第2入力軸4bは、出力軸4c上に設けた3速油圧クラッチC3の入力側の3速段G3用のギア列にギアを介して連結されて、第1入力軸4aと同期回転する。
【0011】1速段G1には、1速油圧クラッチC1とその出力側の1速段G1用のギア列との間に介在させて出力側のオーバー回転を許容するワンウェイクラッチ8が設けられており、更に1速油圧クラッチC1内に1速段G1用のギア列に出力側を直結した1速ホールド油圧クラッチCHを組込み、該油圧クラッチCHの係合により出力側のオーバー回転を許容しない状態、即ちエンジンブレーキを効かせられる状態で1速段G1を確立し得るようにした。
【0012】流体トルクコンバータ3には、コンバータケースの端壁部に係合して流体トルクコンバータ3の入力側と出力側とを連結するロックアップクラッチ3aが内蔵されている。ロックアップクラッチ3aは、流体トルクコンバータ3の内部空隙3bの油圧で係合側に押され、コンバータケースの端壁部とロックアップクラッチ3bとの間の背圧室3cの油圧で解放側に押されるようになっている。
【0013】また、油圧作動式変速機1には油圧回路9が組込まれている。この油圧回路9は、図2に示す如く、変速機ケース内の作動油を吸上げる油圧ポンプ10と、油圧ポンプ10の吐出圧を所定のライン圧に調圧するレギュレータ11と、ライン圧に調圧された作動油を供給する変速制御部12と、レギュレータ11からリークされた作動油を供給するロックアップクラッチ3a用の制御部(以下、LC制御部と記す)13とで構成されている。変速制御部12は、副変速機4の各油圧クラッチCH,C1,C2,C3,C4,C5への給排油を制御して、副変速機4の変速を行うように構成されている。また、LC制御部13は、流体トルクコンバータ3の内部空隙3bと背圧室3cとへの給排油を制御して、ロックアップクラッチ3aを係合させたり解放し、更に、内部空隙3bの油圧と背圧室3cの油圧との差圧を制御して、ロックアップクラッチ3aを直結状態で係合させたり滑り状態で係合させるように構成されている。尚、変速制御部12やLC制御部13は従来公知であり、その詳細な説明は省略する。
【0014】LC制御部13には、流体トルクコンバータ3からドレンされた作動油を変速機ケース内に戻すドレン油路14が接続されており、このドレン油路14に熱交換器15を介設し、作動油とエンジン冷却水との間での熱交換を行うようにしている。
【0015】以下、この熱交換器15についてエンジン2の冷却水回路を含めて説明する。冷却水回路は、エンジン2とラジエータ16との間にウォータポンプ17によって冷却水を強制循環すると共に、低水温時にはサーモスタット18によってラジエータ16をバイパスして冷却水を循環するように構成されている。また、空調ヒータ19用の回路を設け、該回路に介設したヒータバルブ20を開いたとき、エンジン1から流れ出た冷却水の一部が空調ヒータ19を介してウォータポンプ17に戻されるようにしている。更に、空調ヒータ19用の回路と並列に前記熱交換器15用の回路を設け、エンジン1から流れ出た冷却水の一部が熱交換器15を介してウォータポンプ17に戻されるようにしている。
【0016】熱交換器15は、エンジンオイルの冷却に用いるオイルクーラーと同一構造のものであり、図3に示す如く変速機ケース1a上に取付けられている。図中15a,15bは冷却水のインレットホースとアウトレットホースである。
【0017】図4は、外気温が−6.7℃の時にロスアンゼルス4モードと呼ばれる走行モードで車両を走行させたときの、冷却水の水温変化と変速機1の作動油の油温変化と車速変化とを示している。尚、ここでは、エンジン始動後500秒間のCT(Cold Transient)と呼ばれるフェーズでの走行と、続いて900秒間のCS(Cold Stability)と呼ばれるフェーズでの走行と、次に10分間放置後500秒間のHT(Hot Transient)と呼ばれるフェーズでの走行とを行っている。図4から明らかなように、本実施形態の如く熱交換器15を設けると、エンジン始動後に速やかに昇温する冷却水との熱交換により作動油が加温され、熱交換器15を設けないものに比し作動油の昇温が促進される。尚、ロックアップクラッチ3aを滑り状態で係合させると、摩擦熱で作動油が170℃近くまで加熱されることがあるが、冷却水はほぼ90℃以下に保たれるため、加熱された作動油は熱交換器15で冷却され、油温が異常に上昇することはない。
【0018】図5は、上記各フェーズでの燃費(1ガロン当りの走行距離(マイル))を示しており、黒塗りが熱交換器15を設けた場合、白抜きが熱交換器15を設けない場合である。熱交換器15を設けると、燃費がCTのフェーズで0.75%、CSのフェーズで1.0%、HTのフェーズで0.98%向上し、加重平均(WM(Weight Mass))で燃費が0.99%向上することが判明した。
【0019】尚、上記実施形態では、LC制御部13からのドレン通路14に熱交換器15を介設したが、油圧回路9の他の部分に熱交換器15を設けても勿論良い。
【0020】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、寒冷時における作動油の昇温を促進でき、変速機のフリクションロスを低減して燃費性能を向上できる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年9月10日(1999.9.10)
【代理人】 【識別番号】100060025
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 欣一 (外3名)
【公開番号】 特開2001−82590(P2001−82590A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願平11−257295