| 【発明の名称】 |
オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】大内 英男
|
| 【要約】 |
【課題】オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルトの寿命低下を防止し、更にサポート軸受41、41にフレッチング摩耗が発生するのを防止する事を、何れも十分に図る。
【解決手段】一方向クラッチ18を構成する各ばねの弾性定数と、各シールリング47、47の各内輪45、45に対する摺動抵抗と、各サポート軸受41、41の回転抵抗とを、それぞれ所定値以下とする。そして、従動プーリ7aをスリーブ8aに対し、オーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、0.5N・m以下とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オルタネータの回転軸に外嵌固定自在なスリーブと、このスリーブの周囲にこのスリーブと同心に配置した従動プーリと、これらスリーブの外周面の軸方向中間部と従動プーリの内周面の軸方向中間部との間に設け、この従動プーリが上記スリーブに対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ従動プーリとスリーブとの間での回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、この一方向クラッチを軸方向両側から挟む状態で、上記スリーブの外周面と従動プーリの内周面との間に設け、この従動プーリに加わるラジアル荷重を支承しつつこれらスリーブと従動プーリとの相対回転を自在とする1対のサポート軸受とを備えたオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に於いて、これら各サポート軸受をラジアル荷重の他にスラスト荷重も支承自由な玉軸受とすると共に、上記従動プーリを上記スリーブに対し上記所定方向と反対方向に相対回転させる為に必要なトルクを、0.5N・m以下とした事を特徴とするオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、自動車用の発電機であるオルタネータの回転軸の端部に固定し、エンジンのクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリとの間に無端ベルトを掛け渡す事により、上記オルタネータを駆動する為に利用する。 【0002】 【従来の技術】自動車の走行用エンジンを駆動源として、自動車に必要な発電を行なうオルタネータの構造が、例えば特開平7−139550号公報に記載されている。図4は、この公報に記載されたオルタネータ1を示している。ハウジング2の内側に回転軸3を、1対の転がり軸受4、4により、回転自在に支持している。この回転軸3の中間部には、ロータ5と整流子6とを設けている。又、この回転軸3の一端部(図4の右端部)で上記ハウジング2外に突出した部分には、従動プーリ7を固定している。エンジンへの組み付け状態では、この従動プーリ7に無端ベルトを掛け渡し、エンジンのクランクシャフトにより、上記回転軸3を回転駆動自在とする。 【0003】上記従動プーリ7として従来一般的には、単に上記回転軸3に固定しただけのものを使用していた。これに対して近年、無端ベルトの走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には、無端ベルトから回転軸への動力の伝達を自在とし、無端ベルトの走行速度が低下傾向にある場合には、従動プーリと回転軸との相対回転を自在とする、オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が各種提案され、一部で使用されている。例えば、特開昭56−101353号公報、特開平7−317807号公報、同8−61443号公報、同10−285873号公報、特公平7−72585号公報、フランス特許公報FR2726059A1等に、上述の様な機能を有するオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が記載されている。又、一部ではこの様なオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が、実際に使用されている。 【0004】図5は、このうちの特開平10−285873号公報に記載されているオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を示している。このオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、オルタネータ1の回転軸3(図4)に外嵌固定自在なスリーブ8を有する。そして、このスリーブ8の周囲に従動プーリ7aを、このスリーブ8と同心に配置している。そして、これらスリーブ8の外周面と従動プーリ7aの内周面との間に、1対のサポート軸受9、9と一方向クラッチ10とを設けている。このうちのサポート軸受9、9は、上記従動プーリ7aに加わるラジアル荷重を支承しつつ、上記スリーブ8と従動プーリ7aとの相対回転を自在とする。 【0005】又、上記一方向クラッチ10は、上記従動プーリ7aが上記スリーブ8に対して所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、この従動プーリ7aからスリーブ8への回転力の伝達を自在とする。この為、上記一方向クラッチ10を構成し、上記スリーブ8に外嵌固定した内輪11の中間部外周面には、カム面12を形成している。又、このカム面12と上記従動プーリ7aの内周面との間には、複数のローラ13、13を配置している。そして、これら各ローラ13、13と、これら各ローラ13、13を保持する為の保持器14との間に、図示しない複数のばねを設けている。これら各ばねは、上記カム面12と上記従動プーリ7aの内周面との間に形成される円筒状隙間の寸法のうち、直径方向の幅が狭くなった部分に、上記各ローラ13、13をくさび状に食い込ませる方向に、これら各ローラ13、13を弾性的に押圧している。又、この弾力に基づく上記各ローラ13、13を押圧する為のトルクは、4N・m以下としている。 【0006】上述の様に構成する特開平10−285873号公報に記載されたオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置によれば、オルタネータの発電効率を或る程度確保する事ができる。即ち、エンジンを構成するクランクシャフトの回転速度が上昇し、このクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリと上記従動プーリ7aとの間に掛け渡した無端ベルト15の走行速度が上昇傾向にある場合には、上記従動プーリ7aがスリーブ8に対し、所定方向に相対回転する傾向になる。この結果、上記各ローラ13、13が、上記内輪11の外周面と上記従動プーリ7aの内周面との間に形成される円筒状隙間の寸法のうち、直径方向に亙る幅が狭くなった部分にくさび状に食い込んで(ロック状態となって)、上記従動プーリ7aから回転軸3への回転力の伝達を自在とする。これに対して、上記クランクシャフトの回転速度が低下し、上記無端ベルト15の走行速度が低下傾向にある場合には、上記従動プーリ7aが上記スリーブ8に対して、上記所定方向と反対方向に相対回転する。この為、上記各ローラ13、13が上記円筒状隙間のうちの幅が広くなった部分に移動し、これら各ローラ13、13が当該部分で転動自在となって(オーバラン状態となって)、上記従動プーリ7aと回転軸3との相対回転を自在とする。この様にオーバラン状態への移行が行なわれる為、クランクシャフトの回転速度の変動に拘らず、上記オルタネータの回転軸3を、自身の回転慣性力に基づき或る程度高域で回転させ続ける事ができる。この為、上記オルタネータの発電効率を或る程度確保する事ができる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上述の様に構成し作用する特開平10−285873号公報に記載されたオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の場合、未だ発電効率を十分に確保できるとは言えず、しかも、従動プーリ7aと無端ベルト15との擦れ合いに基づく異音の発生や、この無端ベルト15の寿命低下を、十分に防止できない可能性がある。即ち、クランクシャフトは、エンジンのシリンダ内部での間欠的な爆発に基づいて回転駆動される為、完全に円滑な回転運動をするわけではなく、1回転する間でも回転角速度が細かく変動する。この様な回転角速度の変動は、エンジンの低回転時程大きくなる。この結果、上記クランクシャフトの端部に固定した駆動プーリに掛け渡した上記無端ベルト15の走行速度も細かく変動する事になる。従って、オルタネータの発電効率を十分に確保する為には、この様な無端ベルト15の走行速度の細かい変動にもプーリ装置を追従させて、無端ベルト15の走行速度が低下傾向にある場合に、ロック状態からオーバラン状態への移行を速やかに行なわせる必要がある。 【0008】一方、この様に無端ベルト15の走行速度が細かく変動しても、無端ベルト15により従動プーリ7aを介して回転駆動されるオルタネータの回転軸3は、この回転軸3自身並びにこの回転軸3に固定したロータ5や整流子6等の回転慣性力に基づき、それ程急激には変動しない。従って、この無端ベルト15の内周面と従動プーリ7aの外周面とが両方向に擦れ合う傾向となる。この結果、この従動プーリ7aと擦れ合う無端ベルト15に、繰り返し異なる方向の応力が作用して、この無端ベルト15と従動プーリ7aとの間に滑りが発生し、この滑りにより異音が発生し易くなったり、或はこの無端ベルト15の寿命が短くなったりする原因となる。 【0009】尚、上述の様な従動プーリ7aの外周面と無端ベルト15の内周面との摩擦に基づく無端ベルト15の寿命低下は、実際には、走行時に加減速を繰り返す事によっても生じる。即ち、加速時には無端ベルト15側から従動プーリ7a側に駆動力が伝達されるのに対し、減速時には上述の様に慣性に基づいて回転し続けようとする従動プーリ7aに、上記無端ベルト15から制動力が作用する。この制動力と上記駆動力とは、上記無端ベルト15の内周面に対し逆方向の摩擦力として作用するので、やはりこの無端ベルト15の寿命低下の原因となる。特に、トラックの様に排気ブレーキを備えた車両の場合には、アクセルオフ時に於けるクランクシャフトの回転低下の減速度が著しく、上記制動力に基づいて上記無端ベルト15の内周面に加わる摩擦力が大きくなる結果、上記寿命低下が著しい。 【0010】上述の様な種々の不都合を解消すべく、オルタネータ用プーリとして、一方向クラッチを内蔵したプーリを使用する事が、従来から考えられ、一部で使用されているが、上述した特開平10−285873号公報に記載された構造の場合には、一方向クラッチ10を構成する各ローラ13、13を所定方向に押圧する為のトルクが、4N・m以下の範囲と大きい。この為、上記特開平10−285873号公報に記載された構造では、エンジンの回転速度の比較的大きな変動には対応できるが、クランクシャフトの1回転の間に生じる、回転角速度の細かい変動には対応できない可能性がある。この様にプーリ装置をクランクシャフトの回転角速度の細かい変動に対応させる事ができないと、オルタネータの回転軸3の回転を常に高回転域に維持できないだけでなく、上述した様に上記従動プーリ7aと擦れ合う無端ベルト15に、繰り返し異なる方向の応力が作用する。この結果、オルタネータの発電効率を十分に確保したり、或は、無端ベルト15と従動プーリ7aとの間の滑りに基づく異音の発生や、この無端ベルト15の寿命低下を十分に防止できない可能性がある。 【0011】又、上記特開平10−285873号公報に記載されたオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の場合、発電効率を確保する為に、一方向クラッチ10を構成する各ローラ13、13を所定方向に押圧する為のトルクの大きさのみに着目し、このトルク値を4N・m以下にしている。但し、無端ベルト15の走行速度が低下傾向になり、従動プーリ7aをオルタネータの回転軸3に対して、オーバラン状態とする方向に回転させる必要がある場合に、この回転に対する抵抗となるのは、実際には、上記各ローラ13、13を所定方向に押圧する為のトルクだけでなく、一方向クラッチ10の両側に設けた各サポート軸受9、9の転がり回転抵抗や、各サポート軸受9、9の端部に取り付ける等により従動プーリ7aとスリーブ8との間に設けるシール部材の摺動抵抗等がある。従って、上記特開平10−285873号公報に記載された従来構造の場合、従動プーリ7aをオルタネータの回転軸3に対して、オーバラン状態とする方向に回転させるのに必要なトルクが、実際には4N・mよりも大きくなる。この様に上記トルクが大きくなった場合には、オーバラン状態とする方向の回転に対して抵抗となるトルクが、上記回転軸3等の回転慣性力に基づく回転を抑えるので、オルタネータの発電効率を十分に確保したり、或は、無端ベルト15と従動プーリ7aとの間の滑りに基づく異音の発生や、この無端ベルト15の寿命低下を十分に防止する事が、更に難しくなる。 【0012】又、上述した特開平10−285873号公報に記載された構造で、各サポート軸受9、9として玉軸受を用いれば、上記無端ベルト15から加わるラジアル荷重だけでなく、上記従動プーリ7aの取り付け誤差に基づいてこの従動プーリ7aに加わるスラスト荷重も支承する事ができる。従って、上記各サポート軸受9、9としてラジアルニードル軸受を用いる構造の様に、スラスト荷重を支承する為に別の軸受を取り付ける必要はなく、安価な構造になる。但し、上記各サポート軸受9、9として玉軸受を用いた構造の場合には、上記各サポート軸受9、9を構成する各玉の転動面と、内輪軌道及び外輪軌道との接触部は点接触になる。そして、上記各サポート軸受9、9が、上記無端ベルト15を駆動する為の駆動プーリをその端部に固定したクランクシャフトの1回転の間に生じる回転速度の細かい変動に対応できないと、上記接触部で高い面圧を受けた状態で、エンジンの振動を受けながら、上記各玉と内輪及び外輪とが一体になって回転する事になる。この結果、これら各玉の転動面と上記内輪軌道及び外輪軌道との接触部にフレッチング摩耗が生じて、上記各サポート軸受9、9が早期に使用に耐えなくなってしまう。 【0013】これら各サポート軸受9、9として径の大きな玉を組み込んだ玉軸受を使用すれば、上述の様な問題を或る程度解消できる。但し、本発明の対象となるオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の場合には、限られた取付スペースに上記各サポート軸受9、9を組み込むので、これら各サポート軸受9、9として玉軸受を使用する場合には、上記各玉の転動面と上記内輪軌道及び外輪軌道との接触部の接触面圧を小さくする事は困難である。これに対して、上記各サポート軸受9、9としてラジアルニードル軸受を用いる場合には、これら各サポート軸受9、9を構成するニードルの転動面と内輪軌道及び外輪軌道との接触部は線接触になり、上記各サポート軸受9、9として玉軸受を用いた構造よりも、上記接触部の接触面圧を小さくする事ができる。従って、クランクシャフトの1回転の間に生じる回転速度の細かい変動に対応できなくても、上記接触部で発生するフレッチング摩耗は軽微で、特に問題にならない程度で済む。但し、上記各サポート軸受9、9としてラジアルニードル軸受を用いた場合には、これら各サポート軸受9、9によってはスラスト荷重を支承できなくなる為、前述した様に、スラスト荷重を支持する為に別の軸受が必要になる、と言った問題を生じる。本発明は、上述の様な事情に鑑みて、サポート軸受として玉軸受を使用する事により安価に得られる構造で、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルトの寿命低下を防止し、更にサポート軸受の構成部材にフレッチング摩耗が発生する事の防止を、何れも十分に図るべく発明したものである。 【0014】 【課題を解決するための手段】本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、従来から知られているオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置と同様に、オルタネータの回転軸に外嵌固定自在なスリーブと、このスリーブの周囲にこのスリーブと同心に配置した従動プーリと、これらスリーブの外周面の軸方向中間部と従動プーリの内周面の軸方向中間部との間に設け、この従動プーリが上記スリーブに対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ従動プーリとスリーブとの間での回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、この一方向クラッチを軸方向両側から挟む状態で、上記スリーブの外周面と従動プーリの内周面との間に設け、この従動プーリに加わるラジアル荷重を支承しつつこれらスリーブと従動プーリとの相対回転を自在とする1対のサポート軸受とを備える。 【0015】特に、本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に於いては、上記各サポート軸受を、それぞれラジアル荷重の他にスラスト荷重も支承自在な玉軸受としている。これと共に、上記従動プーリを上記スリーブに対し上記所定方向と反対方向に相対回転させる為に必要なトルクを、0.5N・m以下とする。更に、好ましくは、このトルクを、0.3N・m以下とする。 【0016】 【作用】上述の様に構成する本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の場合、従動プーリをスリーブに対し所定方向と反対方向に相対回転させる為に必要なトルクを、0.5N・m以下(好ましくは0.3N・m以下)と小さくしている。この為、エンジンのクランクシャフトの1回転の間に生じる、回転角速度の細かい変動にも十分に対応して、従動プーリに掛け渡した無端ベルトの走行速度が低下傾向にある場合に、速やかに上記従動プーリとオルタネータの回転軸との相対回転を自在とする事ができる。この結果、本発明によれば、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルトの寿命低下を防止し、更にそれぞれが玉軸受であるサポート軸受の構成部材にフレッチング摩耗が発生するのを防止する事を、何れも十分に図れる。 【0017】次に、本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置により、上述の様な効果を得られる根拠を明らかにする為に、本発明の発明者が行なった実験に就いて説明する。先ず、この実験を行なうに際し、従来から一般的に使用されている構造のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に於いて、従動プーリをスリーブに対し所定方向と反対方向(オーバラン状態となる方向)に相対回転させる為に必要な最小トルクを、0.3〜0.6N・mの範囲で変えたものを4種類用意した。実験は、無端ベルトの張力を変えつつ、それぞれのプーリ装置が、クランクシャフトの1回転の間に生じる、回転角速度の細かい変動に追従できるか否かを、ストロボを用いて確認する事により行なった。又、従動プーリの回転速度は、11,500±80r.p.m.とした。そして、クランクシャフトの1回転の間に生じる回転角速度の変動は、駆動プーリとこの駆動プーリを駆動する為の駆動軸との間に、ユニバーサルジョイントを設ける事により与えた。又、オルタネータの電流負荷は、50Aとした。この様にして行なった実験の結果を、次の表1に示す。 【0018】 【表1】
【0019】尚、この表1に於いて、○は、プーリ装置がクランクシャフトの1回転の間に生じる回転角速度の変動に追従できて、従動プーリとスリーブとの間の相対回転が発生した事を、×は、プーリ装置が上記回転角速度の変動に追従できず、従動プーリとスリーブとの間の相対回転が発生しなかった事を、それぞれ示している。この表1に示す実験結果から分かる様に、無端ベルト張力が686N(=70kgf )に設定された場合に、上記回転角速度の変動にプーリ装置が追従できる様にする為には、従動プーリをスリーブに対しオーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、0.5N・m以下に設定する必要がある。尚、一般的に、上記無端ベルト張力は、約686N(=70kgf )に設定されている。一方、実際の自動車用エンジンの場合、無端ベルト張力を初期に686N(=70kgf )に設定していても、この無端ベルト自体に永久変形等の経時変化を生じる事により、この無端ベルトの張力は約294N(=30kgf )に迄低下する可能性がある。従って、この様に無端ベルトの張力が294N(=30kgf )に迄低下しても、プーリ装置が上記回転角速度の変動に追従できる事が好ましい。表1に示す実験結果から分かる様に、無端ベルトの張力が294N(=30kgf )になった場合にも、上記回転角速度の変動にプーリ装置が追従できる様にする為には、従動プーリをスリーブに対しオーバラン状態とする方向に相対回転させる為に必要なトルクを、0.3N・m以下に設定する必要がある。 【0020】又、本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、上述の様に、従動プーリをスリーブに対しオーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクが0.5N・m以下と小さいので、使用時には、上記従動プーリと上記スリーブとの間で必ず相対回転が起きる。この為、各サポート軸受を構成する玉の転動面と内輪軌道及び外輪軌道との接触位置が絶えず変化する。この結果、上記無端ベルトから上記従動プーリに加わる大きなラジアル荷重に基づき、上記各サポート軸受を構成する玉の転動面と内輪軌道及び外輪軌道との接触部の接触面圧が高くても、これら各軌道にフレッチング摩耗が発生する事はなくなり、それぞれが玉軸受である、上記各サポート軸受の耐久性が向上する。これに対して、上記従動プーリをスリーブに対しオーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクが0.5N・mを超える様な、大きなオーバラントルクのプーリ装置の場合には、平均角速度が一定の運転条件では、エンジンの爆発周期に同期した微小角速度変動があっても、上記各サポート軸受を構成する各玉の転動面と内輪軌道及び外輪軌道との接触位置があまり変化せず、これら各玉と内輪及び外輪とが、一体になって回転する。この際、上記各玉の転動面と内輪軌道及び外輪軌道との接触部は、高い面圧を受けた状態で、エンジン等から伝わる微小振動を受けながら回転する。この結果、上記内輪軌道及び外輪軌道フレッチング摩耗が発生し、十分な耐久性を得られない。 【0021】前述した実験結果から分かる様に、本発明の場合には、サポート軸受として玉軸受を使用する事により安価に得られる構造で、クランクシャフトの1回転の間に生じる、回転角速度の細かい変動にも十分対応できる。この結果、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルトの寿命低下を防止し、更にサポート軸受の構成部材にフレッチング摩耗が発生する事の防止を、何れも十分に図れる。 【0022】 【発明の実施の形態】図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、全体を円筒状に形成して、オルタネータの回転軸3(図4参照)の端部に外嵌固定するスリーブ8aと、このスリーブ8aの周囲にこのスリーブ8aと同心に配置した従動プーリ7aとを備える。このうちのスリーブ8aは、上記回転軸3と共に回転自在である。この為に図示の例では、上記スリーブ8aの中間部内周面に雌スプライン部16を形成し、この雌スプライン部16と上記回転軸3の端部外周面に形成した雄スプライン部(図示省略)とを係合自在としている。尚、上記回転軸3とスリーブ8aとの相対回転を防止する為の構造は、スプラインに代えて、ねじ、或は非円筒面同士の嵌合、キー係合等としても良い。 【0023】上述したスリーブ8aの周囲に設ける従動プーリ7aは、その内側に次述するサポート軸受41、41及び一方向クラッチ18を装着する。又、上記従動プーリ7aの外周面には、それぞれが断面V字形である複数本(本例の場合には4本)の凹溝19、19を、互いに平行に且つそれぞれ全周に亙って形成している。この様な従動プーリ7aと図示しない駆動プーリとの間には、内周面に断面V字形で全周に亙って連続するリブを複数本(本例の場合には4本)形成した無端ベルト15(図5参照)を掛け渡す。 【0024】上述の様に構成するスリーブ8aの外周面と上述の様に構成する従動プーリ7aの内周面との間には、それぞれが深溝型の玉軸受である1対のサポート軸受41、41と、ローラクラッチである1個の一方向クラッチ18とを設けている。このうちの1対のサポート軸受41、41は、それぞれ内周面に深溝型の外輪軌道42を有する外輪43と、外周面に深溝型の内輪軌道44を有する内輪45と、上記外輪軌道42と内輪軌道44との間にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けた玉46と、これら各玉46を転動自在に保持する軸受用保持器33と、上記外輪43の両端部内周面と上記内輪45の両端部外周面との間に設けた1対ずつのシールリング47、47とから成る。この様な各サポート軸受41、41は、それぞれの外輪43を上記従動プーリ7aの内周面両端寄り部分に締り嵌めにより内嵌固定し、それぞれの内輪45を上記スリーブ8aの外周面両端寄り部分に締り嵌めにより外嵌固定する事により、上記スリーブ8aの外周面両端寄り部分と従動プーリ7aの内周面両端寄り部分との間に設けている。又、上記各シールリング47、47は、それぞれの外周縁部を各外輪43の端部内周面に固定すると共に、それぞれの内周縁部を各内輪45の端部外周面に摺接させている。 【0025】又、上記スリーブ8aの外周面中間部と従動プーリ7aの内周面中間部との間に、上記一方向クラッチ18を設けている。この一方向クラッチ18を構成する一方向クラッチ用外輪48は、上記1対のサポート軸受41、41を構成する外輪43、43とは別体としている。そして、この一方向クラッチ用外輪48の軸方向両端部に設けた外輪側鍔部27a、27bの内側面を、クラッチ用保持器30の端面に、それぞれ対向させている。又、上記一方向クラッチ18を構成する為、上記スリーブ8aの中間部外周面に一方向クラッチ用内輪20を、締まり嵌めにより外嵌固定している。この一方向クラッチ用内輪20は、軸受鋼等の硬質金属製の板材又はSCM415等の浸炭鋼の板材により全体を円筒状に形成し、外周面は次述するカム面21としている。 【0026】そして、上記一方向クラッチ18は、上記一方向クラッチ用外輪48の中間部内周面と上記一方向クラッチ用内輪20の外周面とを含んで構成している。即ち、この一方向クラッチ用内輪20の外周面の複数個所に、ランプ部と呼ばれ、深さが円周方向一端側(図2の右側)に向かう程大きくなる凹部25、25を、それぞれこの一方向クラッチ用内輪20の軸方向に亙って、円周方向に亙り互いに等間隔で形成して、この一方向クラッチ用内輪20の外周面を前記カム面21としている。この一方向クラッチ用内輪20の外周面と上記一方向クラッチ用外輪48の内周面との間には、円筒状隙間28が形成されるが、この円筒状隙間28の寸法のうち、上記一方向クラッチ用外輪48の直径方向に関する断面高さ寸法は、上記各凹部25、25に対応する部分ではこの円筒状隙間28内に配置する複数個のローラ29の外径よりも大きく、これら各凹部25、25から外れた部分では上記各ローラ29の外径よりも小さい。 【0027】又、上記一方向クラッチ18は、上記一方向クラッチ用外輪48の中間部内周面と上記一方向クラッチ用内輪20の外周面との間に、合成樹脂により籠型円筒状に形成したクラッチ用保持器30と、それぞれが複数ずつのローラ29及びばね39、39とを設けている。このうち、上記クラッチ用保持器30は上記一方向クラッチ用外輪48の内側に、内周面に形成した凸部31、31を、上記一方向クラッチ用内輪20の外周面に形成した凹部25、25に係合させる事により、この一方向クラッチ用内輪20に対する相対回転を不能に装着している。又、上記クラッチ用保持器30の軸方向片面を、前記一方向クラッチ用外輪48の軸方向両端部に設けた外輪側鍔部27a、27bの内側面に対向させて、上記クラッチ用保持器30が軸方向にずれ動く事を防止している。上記複数本のローラ29は、この様なクラッチ用保持器30に形成したポケット32、32の内側に、転動並びに円周方向に亙る若干の変位自在に保持している。 【0028】又、上記各ばね39、39は、上述の様なクラッチ用保持器30を構成する柱部40、40と上記各ローラ29との間に設け、これら各ローラ29を、円周方向に関して同じ方向(図2の左方向)に、弾性的に押圧している。尚、一般的に上記各ばね39は、帯状のばね板をU字形若しくはム字形に押し返して成るステンレス鋼製の板ばね、或は上記保持器と一体に形成した合成樹脂ばねである。 【0029】特に、本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の場合、前記従動プーリ7aを前記スリーブ8aに対し、オーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、約0.25N・m(0.5N・m以下)としている。この為に本例の場合は、一方向クラッチ18を構成する各ばね39、39の弾性定数と、1対ずつのシールリング47、47の各内輪45、45に対する摺動抵抗と、1対のサポート軸受41、41の転がり回転抵抗とを、それぞれ所定値以下としている。この為に本例の場合、上記1対ずつのシールリング47、47の摺動抵抗を小さくすべく、これら各シールリング47、47を構成する弾性材のシールリップの先端縁の前記各内輪45、45に対する締め代を、0〜0.2mm程度の範囲に規制している。 【0030】上述の様に構成する本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、一方向クラッチ18が、一方向クラッチ用外輪48を内嵌固定した従動プーリ7aと回転軸3との間で、所定方向の回転力のみを伝達する。例えば、図2で一方向クラッチ用内輪20が固定で一方向クラッチ用外輪48のみが回転すると仮定すれば、この一方向クラッチ用外輪48が同図の時計方向に回転する場合には、各ローラ29がこの一方向クラッチ用外輪48の内周面から受ける力に基づき、各ばね39、39の弾力に抗して、上記各凹部25、25が深くなった側に変位する傾向になる。そして、上記各ローラ29が、前記円筒状隙間28内で転動可能な状態となって、上記一方向クラッチ用外輪48と一方向クラッチ用内輪20との間で回転力の伝達が行なわれなくなる、所謂オーバラン状態となる。反対に、この一方向クラッチ用外輪48が図2の反時計方向に回転する場合には、上記各ローラ29が、上記一方向クラッチ用外輪48の内周面から受ける力と上記各ばね39、39の弾力とに基づき、図2に二点鎖線で示す様に、上記各凹部25、25が浅くなった側にくさび状に食い込み、上記一方向クラッチ用外輪48と一方向クラッチ用内輪20とを一体的に結合して、これら一方向クラッチ用外輪48と一方向クラッチ用内輪20との間で回転力の伝達を自在とする、所謂ロック状態となる。 【0031】又、本発明の場合には、上記従動プーリ7aをスリーブ8aに対し、オーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、約0.25N・mと小さくしている。従って、上記所定方向を、クランクシャフトの回転方向に関して適正にすれば、このクランクシャフトの回転速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には上記従動プーリ7aから上記回転軸3への回転力の伝達を自在とし、クランクシャフトの回転速度が低下傾向にある場合には速やかに上記従動プーリ7aと回転軸3との相対回転を自在として、オーバラン状態にする事ができる。この結果、クランクシャフトの回転速度の変動に拘らず、オルタネータの回転を十分に高域に維持して、発電効率を確保すると共に、上記従動プーリ7aに掛け渡した無端ベルト15とこの従動プーリ7aとの間の滑りに基づく異音の発生や、この無端ベルト15の寿命の低下を防止する事ができる。 【0032】更に、本例の場合には、上記従動プーリ7aを上記スリーブ8aに対し、オーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、約0.25N・mと小さくしている。この為、エンジンのクランクシャフトの1回転の間に生じる、回転角速度の細かい変動にも十分に対応して、上記無端ベルト15の走行速度が低下傾向にある場合に、速やかに上記従動プーリ7aと回転軸3との相対回転を自在として、オーバラン状態にする事ができる。この結果、本発明によれば、エンジンの回転速度の変動だけでなく、上記回転角速度の細かい変動にも対応する事ができて、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルトの寿命低下を防止できる。更には、前記各サポート軸受41、41を構成する外輪43及び内輪45の外輪軌道42内輪軌道44にフレッチング摩耗が発生する事の防止も、十分に図れる。特に、本例の場合には、クランクシャフトの回転角速度の細かい変動にも対応し易くして、無端ベルト15(図5参照)の張力が約294N(30kgf )に迄低下した場合でも、上記回転角速度の変動に追従して、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルト15の寿命低下を防止し、更に上記フレッチング摩耗の発生を防止する事を、何れも十分に図れる。尚、前述の表1から明らかな通り、上記無端ベルト15の張力をより高く維持できるのであれば、オーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、上述した0.25N・mより多少高く(但し0.5N・m以下)しても良い。 【0033】次に、図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、上述した第1例の場合と異なり、各サポート軸受41a、41aには、従動プーリ7a及びスリーブ8bの軸方向両端に近い側の片端部のみに、シールリング47を設けている。従って、本例の場合には、プーリ装置全体でのシールリング47の摺動抵抗を低減して、上記従動プーリ7aを上記スリーブ8bに対し、オーバラン状態となる方向に相対回転させる為に必要なトルクを、約0.20N・m(0.3N・m以下)と、上述した第1例の場合よりも更に小さくできる。 【0034】従って、本例の構造によれば、無端ベルト15(図5参照)の張力が約294N(=30kgf )よりも更に低下した場合でも、クランクシャフトの回転角速度の細かい変動にも追従して、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルト15の寿命低下を防止し、更にサポート軸受41a、41aを構成する外輪43及び内輪45の外輪軌道42内輪軌道44にフレッチング摩耗が発生する事の防止を、何れも十分に図れる。 【0035】又、本例の場合には、上記スリーブ8bの両端部外周面に、それぞれ小径部49、49を形成している。そして、上記各サポート軸受41a、41aを構成する各内輪45を、上記スリーブ8bの外周面にそれぞれ締り嵌めにより外嵌固定する際に、上記各内輪45の片端面を、上記小径部49、49と中央の大径部51との連続部分である段部50、50に、それぞれ突き当てる事で、上記各サポート軸受41a、41aの上記スリーブ8bに対する軸方向に亙るずれ止めを図っている。その他の構成及び作用に就いては、上述した第1例の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。 【0036】尚、上述した各例の場合、一方向クラッチを、複数個のロック部材としてローラを使用するローラクラッチとした構造に就いて説明した。但し、本発明はこの様な構造に限定するものではなく、一方向クラッチを、複数個のロック部材としてスプラグを使用するスプラグ型の一方向クラッチとした構造に適用する事もできる。 【0037】 【発明の効果】本発明のオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、オルタネータの発電効率を確保すると共に、異音の発生及び無端ベルトの寿命低下を防止し、更にそれぞれが玉軸受であるサポート軸受の構成部材にフレッチング摩耗が発生するのを防止する事を、何れも十分に図れる。この結果、このプーリ装置を組み込んだオルタネータの小型化、低廉化を図りつつ、耐久性の向上を実現できる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004204 【氏名又は名称】日本精工株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年11月4日(1999.11.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087457 【弁理士】 【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−82586(P2001−82586A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月27日(2001.3.27) |
| 【出願番号】 |
特願平11−313772 |
|