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【発明の名称】 プーリユニット
【発明者】 【氏名】藤原 英樹

【氏名】長野 修治

【氏名】門谷 重夫

【氏名】金井 敏和

【氏名】竹島 俊弘

【要約】 【課題】プーリユニットの構成上の無駄を省くこと。

【解決手段】同心状に配設される内外2つの環体1,2の対向環状空間に、一方向クラッチ3を配設するとともに、その軸方向両側にすべり軸受4,4を配設したプーリユニットAにおいて、一方向クラッチ3について、従来一般的に知られる円環状の保持器を、周方向に分離した複数のセパレータ13とし、このセパレータ13を2つのすべり軸受4,4で位置決めさせる構造としている。これにより、保持器要素の贅肉を削減できるようになり、軽量化が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】同心状に配設される内外2つの環体の対向環状空間に、一方向クラッチが配設されるとともに、この一方向クラッチの軸方向両側に前記2つの環体間に作用するラジアル荷重を負担するすべり軸受が配設されるプーリユニットであって、前記一方向クラッチが、円周数カ所にカム面を有する内輪と、内輪に対して同心状に環状空間を介して外装される外輪と、この外輪と前記内輪の各カム面との間に形成されるくさび状空間それぞれに周方向転動可能に1つずつ配設される複数のころと、各ころをくさび状空間の狭い側に個別に押圧する複数の弾性部材と、前記内輪の周方向で隣り合うカム面にまたがる領域に個別に合致当接された状態で前記各弾性部材を個別に保持するとともに前記各ころの周方向転動範囲を規制する複数のセパレータとを有し、前記両すべり軸受が、内側環体に対して圧入により外嵌固定されて前記外輪の内周面をすべり案内するものであり、その外径側に前記一方向クラッチの内輪とで前記セパレータの軸方向端部を径方向から挟持する輪状凸部が形成されている、ことを特徴とするプーリユニット。
【請求項2】請求項1のプーリユニットにおいて、前記外側環体と前記一方向クラッチの外輪とが一体に形成されている、ことを特徴とするプーリユニット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一方向クラッチを備えるプーリユニットに関する。このプーリユニットは、例えば自動車などのエンジンのクランクプーリや、自動車に装備される補機(エアコンディショナ用コンプレッサ、ウォーターポンプ、オルターネータ、冷却ファンなど)のプーリとして利用される。
【0002】
【従来の技術】従来のクランクプーリに用いられるプーリユニットについて、図6に示す。図中、81は軸体、82はプーリ、83は一方向クラッチ、84,84はすべり軸受、85,86はシールである。
【0003】このプーリユニットでは、軸体81にクランクシャフトなどの回転軸が取り付けられ、プーリ82にベルトが巻き掛けられ、一方向クラッチ83によりクランクシャフトの回転変動を吸収させてプーリ82の回転むらを抑制させるようになっている。また、軸体81には、クランクシャフトのねじり振動や曲げ振動を減衰するダンパマス87,88が取り付けられている。
【0004】なお、軸体81に対して一方向クラッチ83およびすべり軸受84,84を圧入により外嵌固定したうえで、これら一方向クラッチ83およびすべり軸受84,84に対してプーリ82を位置決めするようにしている。このプーリ82の位置決めは、一方向クラッチ83およびすべり軸受84,84を、プーリ82の内周面に径方向内向きに設けられる鍔部82aと、プーリ82の開口端にねじ止めされる閉蓋89とにより、軸方向から挟持させることにより行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本願発明者は、プーリユニットの構成上の無駄を省くために、種々な視点から鋭意研究したところ、すべり軸受84と一方向クラッチ83の保持器とを結合できるのではないかと考えるに至った。
【0006】但し、すべり軸受84については、要求される荷重負担能力により異なるが、単純にすべり案内面を幅狭にすることはできない。ここに改良の余地がある。
【0007】このような事情に鑑み、本発明は、プーリユニットの構成上の無駄を省くことを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明にかかるプーリユニットは、同心状に配設される内外2つの環体の対向環状空間に、一方向クラッチが配設されるとともに、この一方向クラッチの軸方向両側に前記2つの環体間に作用するラジアル荷重を負担するすべり軸受が配設されるもので、前記一方向クラッチが、円周数カ所にカム面を有する内輪と、内輪に対して同心状に環状空間を介して外装される外輪と、この外輪と前記内輪の各カム面との間に形成されるくさび状空間それぞれに周方向転動可能に1つずつ配設される複数のころと、各ころをくさび状空間の狭い側に個別に押圧する複数の弾性部材と、前記内輪の周方向で隣り合うカム面にまたがる領域に個別に合致当接された状態で前記各弾性部材を個別に保持するとともに前記各ころの周方向転動範囲を規制する複数のセパレータとを有し、前記両すべり軸受が、内側環体に対して圧入により外嵌固定されて前記外輪の内周面に対して摺接されるものであり、その外径側に前記一方向クラッチの内輪とで前記セパレータの軸方向端部を径方向から挟持する輪状凸部が形成されている。
【0009】請求項2の発明にかかるプーリユニットは、上記請求項1の外側環体と前記一方向クラッチの外輪とを一体に形成したものとしている。
【0010】要するに、本発明では、一方向クラッチについて、従来一般的に知られる円環状の保持器を、周方向に分離して複数のセパレータとし、このセパレータを2つのすべり軸受で位置決めさせる構造としているから、保持器要素の贅肉を削減できるようになり、軽量化が可能になる。しかも、すべり軸受に一方向クラッチ内部に入り込ませる輪状凸部を設けているから、内側環体に対するすべり軸受の嵌め合い部分を可及的に幅狭にしても、すべり軸受のすべり案内面を可及的に幅広にできるようになる。
【0011】また、請求項2の発明では、外側環体と一方向クラッチの外輪とを一体に形成しているから、構成をさらに簡素にできて、径方向寸法を縮小することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0013】図1ないし図5に本発明の一実施形態を示している。図1は、プーリユニットの縦断面図、図2は、図1の(2)−(2)線断面の矢視図、図3は、一方向クラッチの斜視図、図4は、一方向クラッチの一部の平面展開図、図5は、一方向クラッチのセパレータおよびすべり軸受を分離して示す斜視図である。
【0014】図例のプーリユニットAは、自動車エンジンのクランクプーリとして利用されるものであり、内側環体としてのハブ1と、外側環体としてのプーリ2と、一方向クラッチ3と、すべり軸受4,4とを有している。
【0015】ハブ1は、図示しないが自動車エンジンのクランクシャフトに直接または間接的に固定される。このハブ1には、クランクシャフトのねじり振動や曲げ振動を減衰するダンパマス5,6が取り付けられている。
【0016】プーリ2は、ハブ1に対して同心状に外装されるもので、その外周には、クランクシャフトの回転動力を自動車エンジンの補機に対して伝達するためのベルトBが巻き掛けられる波状溝が形成されている。
【0017】一方向クラッチ3は、ハブ1とプーリ2との対向環状空間の軸方向中央に介装されるもので、内輪10と、複数のころ11と、複数の楕円形のコイルバネ12と、複数のセパレータ13とを備え、プーリ2を外輪として利用する形態になっている。
【0018】すべり軸受4,4は、ハブ1とプーリ2との対向環状空間において一方向クラッチ3の軸方向両側に1つずつ配設されており、ハブ1に対して圧入により外嵌固定されてプーリ2の内周面をすべり案内する形態とされる。これらのすべり軸受4,4は、一般的なすべり軸受材料(例えば潤滑性を有する合成樹脂材、銅系金属材など)で形成される他、機械構造用炭素鋼などの鉄系金属材で形成してもよい。
【0019】この実施形態では、一方向クラッチ3において従来一般的に知られる円環状の保持器を、複数のセパレータ13に分割した構造としていることに特徴があるので、以下で説明する。
【0020】内輪10は、上記ハブ1に対して圧入により外嵌されるもので、その外周面の円周数カ所にはプーリ2の内周面との間でくさび状空間を形成するための平坦なキー状のカム面10aが設けられている。
【0021】ころ11は、内輪10のカム面10aとプーリ2の内周面との間に形成するくさび状空間それぞれに1つずつ周方向転動可能に配設される。
【0022】コイルバネ12は、各ころ11を個別にくさび状空間の狭い側(ロック側)へ押圧するものである。
【0023】セパレータ13は、ころ11の周方向転動範囲を規制するとともにコイルバネ12を保持するものであり、上記内輪10の外周において周方向に隣り合うカム面10aそれぞれの間の角張った部分にあてがわれた状態で配設されて、2つのすべり軸受4,4により軸方向ならびに径方向に位置決め拘束されている。このセパレータ13は、平面視ほぼ長方形の合成樹脂材からなり、その外面が所要曲率半径の部分円弧形に形成され、内面が内輪10の隣り合うカム面10a間の角張った部分に合致当接する形状とされている。このセパレータ13において平面視で幅狭な一端面には、コイルバネ12が嵌合装着される突起13aが設けられ、また、平面視で幅広な2つの側面の外面側肩部には、段差部13b,13bが設けられている。なお、突起13aの外面には、コイルバネ12の抜け止め用の微小凸部13cが設けられている。
【0024】そして、すべり軸受4,4は、環状板部4a,4aの片面の外径側領域に軸方向一方に膨出する輪状凸部4b,4bを設けて、上半分断面がほぼ逆さL字形に形成されている。環状板部4a,4aは、セパレータ13の軸方向変位を規制するように、内輪10およびセパレータ13の軸方向外端面に対して当接されている。輪状凸部4b,4bは、セパレータ13の径方向変位を規制するように、セパレータ13の段差部13b,13bに対して係止されることによって内輪10とでセパレータ13を径方向で挟持する。この輪状凸部4b,4bの端面は、各ころ11の端面に摺接可能に沿わされていて、各ころ11のスキューを防止するようにもなっている。
【0025】ところで、プーリ2の内周面における軸方向一端には、径方向内向きに延びる鍔部2aが一体に設けられており、このプーリ2の内周面において軸方向他端側の開口端には、閉蓋7が圧入により抜け止め固定されている。
【0026】これらのプーリ2の鍔部2aと閉蓋7とにより、ハブ1に固定してある一方向クラッチ3およびすべり軸受4,4を軸方向から挟持させるようにすることで、プーリ2をハブ1に対して軸方向で位置決めさせている。
【0027】なお、鍔部2aの内周および閉蓋7の内周には、拡径段差部2b,7aが設けられており、この拡径段差部2b,7aに対してシール8,8が嵌入装着されている。このシール8,8は、一般的に転がり軸受に装着する周知構成のものを利用しており、環状芯金にゴムなどの弾性体を被着し、この弾性体の一部としてハブ1の外周面に対して摺接されるリップを設けた構成になっている。
【0028】次に、上述したような構成のプーリユニットAの動作を説明する。
【0029】ここでのプーリユニットAは、ハブ1に連結されるクランクシャフトの回転変動を吸収できるようになっている。通常、自動車エンジンのクランクシャフトの回転数は、トルク変動に伴い変動するが、この回転変動に応じて、一方向クラッチ3がロック状態とフリー状態とに切り替わることにより、プーリ2がハブ1と同期回転したり、プーリ2自身の回転慣性力により回転する現象となることで、プーリ2の回転変動を抑制する。
【0030】要するに、クランクシャフトおよびハブ1の回転速度がプーリ2よりも相対的に速くなると、一方向クラッチ3のころ11がくさび状空間の狭い側へ転動させられてロック状態となるので、ハブ1とプーリ2とが一体化して同期回転する。しかし、ハブ1の回転速度がプーリ2よりも相対的に遅くなると、一方向クラッチ3のころ11がくさび状空間の広い側へ転動させられてフリー状態となるので、ハブ1からプーリ2への動力伝達が遮断されることになってプーリ2が回転慣性力のみで回転するようになる。このような動作により、プーリ2の回転変動を抑制できる。
【0031】以上説明したプーリユニットAでは、一方向クラッチ3のころ11やコイルバネ12を位置決めするために従来例のような円環状の保持器を用いずに、複数のセパレータ13に分割した構造としているから、保持器要素の贅肉を削減できて、軽量化を達成できるようになる。また、すべり軸受4,4については、上半分ほぼ逆さL字形形状としているから、ハブ1に対するすべり軸受4,4の嵌め合い部分を軸方向寸法の小型化のために幅狭にしても、プーリ2に対するすべり案内面を可及的に幅広にできるようになり、結果的に十分な荷重負担能力を確保できるようになる。
【0032】この他、上記実施形態では、プーリ2の開口端に対して閉蓋7をかしめにより固定する形態にすることにより、従来例のように閉蓋をねじ止めするためのねじ孔をプーリ2に形成せずに済むようにしているから、プーリ2の肉厚を薄くできるようになり、プーリユニットA全体の径方向寸法を縮小できて軽量化を達成できるようになる。さらに、上記実施形態では、プーリ2の鍔部2aの内周にシール8を装着しているから、従来例のように鍔部の外側にシールを設置している場合に比べて、軸方向寸法を短くできるようになる。
【0033】なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
(1) 上記実施形態での一方向クラッチ3は、外輪をプーリ2と一体にした形態になっているが、プーリ2と別体の外輪を備える形態としてもよい。また、上記実施形態において一方向クラッチ3のコイルバネ13については、種々な板ばねや弾性片などで代用することができる。
(2) 上記実施形態では、プーリ2に鍔部2aを一体に設けた例を挙げているが、この鍔部2aを設けずに、プーリ2に周溝を設けて、この周溝に対していわゆるサークリップなどの抜け止めリングを装着するようにしたものも本発明に含む。
(3) 上記実施形態でのシール8については、図示しないが、従来周知の種々な構成のシールを用いることができる。
【0034】
【発明の効果】請求項1および2の発明では、一方向クラッチにおける保持器要素について工夫しているから、軽量化できるようになり、しかも、すべり軸受に前記保持器要素を位置決めさせるように工夫しているから、内側環体に対するすべり軸受の嵌め合い部分を占有スペース削減のために可及的に幅狭にしても、すべり軸受のすべり案内面を可及的に幅広にできて十分な荷重負担能力を確保できるようになった。このように、プーリユニット全体の性能を維持したうえで構成上の無駄を省けるようになった。
【0035】また、請求項2の発明では、外側環体と一方向クラッチの外輪とを一体に形成しているから、構成をさらに簡素にできて、径方向寸法の縮小化に貢献できるようになる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成11年9月10日(1999.9.10)
【代理人】 【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
【公開番号】 特開2001−82584(P2001−82584A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願平11−256999