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【発明の名称】 トルクコンバータのストッパ構造
【発明者】 【氏名】菊輪 好太郎

【要約】 【課題】変速機の性能試験のためにトルクコンバータを回転させた時、金属摩耗粉がオイルポンプや油圧回路に入り込むのを防止したトルクコンバータのストッパ構造を提供する。

【解決手段】トルクコンバータ1を収容する収容部内側壁を構成するポンプボデー9に、トルクコンバータ1の反ドライブプレート3側の外側面1fと当接可能な当接部9aを形成し、ドライブプレート3と締結される前のトルクコンバータ1の反ドライブプレート側への動きを規制した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】トルクコンバータを収容する収容部内側壁に、トルクコンバータの反ドライブプレート側の外側面と当接可能な当接部を形成し、ドライブプレートと締結される前のトルクコンバータの反ドライブプレート側への動きを規制したことを特徴とするトルクコンバータのストッパ構造。
【請求項2】上記当接部は、トルクコンバータのポンプインペラと対面する部位に固定されたポンプボデーの加工基準面であることを特徴とする請求項1に記載のトルクコンバータのストッパ構造。
【請求項3】上記当接部に当接可能なトルクコンバータの部位は、ポンプインペラの羽根部の外側面であることを特徴とする請求項1または2に記載のトルクコンバータのストッパ構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトルクコンバータのストッパ構造、詳しくはドライブプレートと締結される前のトルクコンバータの反ドライブプレート側への動きを規制するストッパ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にトルクコンバータ1は、図1に示すようにエンジンの出力軸2に固定されたドライブプレート3とボルト4によって締結され、これによってエンジントルクがトルクコンバータ1のポンプインペラ1aに伝達される。そして、ポンプインペラ1aからステータ1bを介してタービンランナ1cへトルクが伝達され、さらにタービンランナ1cと接続された変速機の入力軸5へと伝達される。
【0003】ドライブプレート3と締結された後のトルクコンバータ1の軸方向位置はドライブプレート3によって規定されるが、ドライブプレート3と締結される前のトルクコンバータ1の軸方向位置は一定せず、トルクコンバータ1のポンプインペラ1aといずれかの固定部品とが当接することにより押し込み方向の位置が規制される。
【0004】ポンプインペラ1aの内径部にはポンプインペラシャフト1dが固定されており、このシャフト1dがオイルポンプ6の駆動ギヤ6aの内径部とスプライン嵌合し、オイルポンプ6を駆動している。通常は、図2に示すようにポンプインペラシャフト1dの先端が駆動ギヤ6aの内径側に位置するステータシャフト7に当接することで、トルクコンバータ1の押し込み位置を規制している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】変速機はエンジンと連結される前に性能試験を行なう必要があり、トルクコンバータ1を高速で回転させる。ところが、ステータシャフト7は変速機ケース8に固定された固定部品であるから、ポンプインペラシャフト1dの先端とステータシャフト7の間には相対回転が生じ、金属摩耗粉が発生する。この摩耗粉の発生箇所はオイルポンプ6の近傍にあるので、摩耗粉がオイルポンプ6に噛み込んだり、変速機の油圧回路に入り込んだりして、動作不良を発生させる可能性があった。
【0006】そこで、本発明の目的は、変速機の性能試験のためにトルクコンバータを回転させた時、金属摩耗粉がオイルポンプや油圧回路に入り込むのを防止したトルクコンバータのストッパ構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、トルクコンバータを収容する収容部内側壁に、トルクコンバータの反ドライブプレート側の外側面と当接可能な当接部を形成し、ドライブプレートと締結される前のトルクコンバータの反ドライブプレート側への動きを規制したことを特徴とするトルクコンバータのストッパ構造を提供する。
【0008】トルクコンバータを変速機に組み込むと、トルクコンバータの反ドライブプレート側の外側面がトルクコンバータを収容する収容部内側壁の当接部に当接し、トルクコンバータの押し込み位置を規制する。この状態で、性能試験を行なうためにトルクコンバータを高速で回転させても、ポンプインペラシャフトの先端とステータシャフトとが摺接せず、金属摩耗粉が発生しない。一方、トルクコンバータの外側面は当接部と摺接するが、たとえ摺接によって金属摩耗粉が発生しても、オイルポンプとは隔離された大気中にあるので、摩耗粉がオイルポンプや油圧回路に入り込む心配がなく、作動不良を招くことがない。
【0009】請求項2のように、当接部を、ポンプインペラと対面する部位に固定されたポンプボデーの加工基準面とした場合には、変速機ケースやポンプボデーに格別な加工を必要としないとともに、ポンプボデーの加工基準面であるから位置が安定し、部品ばらつきなどによってポンプインペラシャフトの先端がステータシャフトなどの固定部品と誤って接触することがない。
【0010】請求項3のように、当接部に当接するトルクコンバータの部位を、ポンプインペラの羽根部の外側面とした場合には、ポンプインペラの羽根部の外側面は強度の大きな部分であるから、トランスミッションに無理な荷重がかからないという利点がある。
【0011】
【発明の実施の形態】図3は本発明の一例を示す。図3において、図1と同一部品には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例のトルクコンバータ1の内部には、ロックアップクラッチ1eが内装されている。変速機ケース8の内面には、オイルポンプ6を保持したポンプボデー9が固定されており、ポンプボデー9は変速機ケース8とともにトルクコンバータ1を収容する収容部内側壁を構成している。
【0012】ポンプボデー9のトルクコンバータ1と対向する側面には、トルクコンバータ1方向に突出した当接部9aが周方向に複数個突設されている。この当接部9aは、ポンプボデー9とポンプカバー10との合わせ面9bを決定する加工基準面となっており、機械加工されている。当接部9aは、ドライブプレート3に締結された状態のトルクコンバータ1のポンプインペラ1aの羽根部の外側面1fに対して所定の隙間D1 を開けて対向している。なお、この外側面1fは周方向に平滑な面に構成されている。
【0013】上記トルクコンバータ1と当接部9aとの隙間D1 は、ポンプインペラシャフト1dの先端とステータシャフト7との隙間D2 より小さく設定されている。なお、隙間D2 以外に、トルクコンバータ1とその右側側面と対面する変速機ケース8またはポンプボデー9との隙間は、上記隙間D1 より大きい。
【0014】ドライブプレート3と締結される前のトルクコンバータ1の反ドライブプレート側への動きは、トルクコンバータ1の外側面1fが当接部9aに当接することにより規制される。この状態で、トルクコンバータ1を性能試験のために回転させた時、トルクコンバータ1の外側面1fが当接部9aと摺接するが、ポンプインペラシャフト1dとステータシャフト7とが摺動することはない。そのため、オイルポンプ6の付近で金属摩耗粉が発生するのが防止され、金属摩耗粉がオイルポンプ6に噛み込んだり、変速機の油圧回路に入り込むことはない。
【0015】なお、トルクコンバータ1の外側面1fと当接部9aとが摺接することで金属摩耗粉が発生する可能性はあるが、たとえ発生しても、その発生箇所はオイルシール11によってオイルポンプ6および油圧回路と隔離された大気中にあるため、金属摩耗粉が油圧回路に入り込む恐れがない。
【0016】また、トルクコンバータ1を回転させると、その内圧が上昇するため、トルクコンバータ1は全体的にポンプボデー9から離れる方向へ移動する。その結果、トルクコンバータ1の外側面1fが当接部9aに摺接している時間は比較的短く、しかもトルクコンバータ1の外側面1fは周方向に平滑な面であるから、金属摩耗粉の発生は非常に少ない。
【0017】本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。上記実施例では、ポンプインペラ1aの羽根部の外側面1fとポンプボデー9の当接部9aとを当接させたが、ポンプインペラ1aの内径側の外側面1gとポンプボデー9の対向部9cとを当接させてもよい。ただ、トルクコンバータ1はその外周部でポンプインペラ1aとフロントカバー部1hとが溶接されているので、ポンプインペラ1aの内径側の強度はさほど高くない。これに対し、実施例のようにポンプインペラ1aの羽根部の外側面1fは溶接部1iの近傍に位置するので、剛性が高く、当接部9aと当接した時の溶接部1iにかかる負荷が小さいという利点がある。本発明にかかる当接面はポンプボデー9に限らず、変速機ケース8の内面に形成してもよい。また、当接面は周方向に複数個突設したものに限らず、周方向に連続したリブであってもよいし、単一の突起であってもよい。
【0018】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、トルクコンバータを収容する収容部内側壁に、トルクコンバータの反ドライブプレート側の外側面と当接可能な当接部を形成し、ドライブプレートと締結される前のトルクコンバータの反ドライブプレート側への動きを規制したので、性能試験のためにトルクコンバータを高速で回転させても、ポンプインペラシャフトがステータシャフトなどの固定部品とが接触せず、オイルポンプの付近で金属摩耗粉が発生しない。そのため、摩耗粉がオイルポンプや油圧回路に入り込む心配がなく、作動不良を確実に防止できる。
【出願人】 【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
【出願日】 平成11年9月16日(1999.9.16)
【代理人】 【識別番号】100085497
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 秀隆
【公開番号】 特開2001−82574(P2001−82574A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願平11−261378