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【発明の名称】 トランスミッション
【発明者】 【氏名】長崎 通亮

【氏名】矢野 和彦

【要約】 【課題】従来のトランスミッションを多段に変速できるように構成するには大きなミッションケースとする必要があり、割りプーリー式無段変速装置を用いたトランスミッションは中立を出すのが困難であった。

【解決手段】遊星歯車装置3と二つの無段変速装置4・5をミッションケース内に配置し、入力軸20からの動力を二つの無段変速装置4・5それぞれに入力させ、一の無段変速装置4の出力は遊星歯車装置3のサンギア61に伝達され、他の無段変速装置5の出力は遊星歯車装置3のリングギア63に伝達され、遊星歯車装置3のプラネタリギア62・62・・・を枢支するキャリア24より出力軸26に動力を伝達するように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊星歯車装置と二つの無段変速装置をミッションケース内に配置し、入力軸からの動力を二つの無段変速装置それぞれに入力させ、一の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のサンギアに伝達され、他の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のリングギアに伝達され、遊星歯車装置のプラネタリギアを枢支するキャリアより出力軸に動力を伝達するように構成したことを特徴とするトランスミッション。
【請求項2】 上記二つの無段変速装置を、割りプーリーとベルトを用いた無段変速装置としたことを特徴とする請求項1記載のトランスミッション。
【請求項3】 上記割りプーリーの有効径の変更を油圧制御により行うことを特徴とする請求項2記載のトランスミッション。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項記載のトランスミッションにおいて、変速操作手段を「中立」位置とした場合は、上記二つの無段変速装置は、サンギア及びリングギアの回転数がプラネタリギアが公転しないような関係となるよう、その変速比を制御することを特徴とするトランスミッション。
【請求項5】 遊星歯車装置と一対のクラッチと二つの無段変速装置とをミッションケース内に配置し、入力軸からの動力をそれぞれのクラッチの入力側に伝達し、一のクラッチの出力側は二つの無段変速装置それぞれの入力側に連動連結させ、一の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のサンギアに伝達され、他の無段変速装置の出力は遊星歯車のリングギアに伝達され、遊星歯車装置のプラネタリギアを枢支するキャリアより出力軸に動力を伝達するように構成し、他のクラッチの出力側は上記無段変速装置を介さずに上記出力軸に連動連結させたことを特徴とする請求項1記載のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変速ショックが小さく、前進と後進の切換え操作がスムーズに行えるトランスミッションの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、トラクタやコンバイン等の農業作業車等の変速装置として、歯車式変速装置や油圧式無段変速装置等を使用して、走行速度や作業速度を変更する技術は公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、歯車摺動式変速装置の場合、変速軸上に歯車とスライダが必要となり、この変速歯車に対して従動側の軸と歯車も必要となるため、変速段数が多くなるほどミッションケースも大きくなり、コンパクト化が難しく、また、変速ショックを小さくするためにはクラッチの操作に熟練を要していたのである。また、油圧式無段変速装置は、変速ショックこそ低減できるが、油圧ポンプと油圧モータとを流体接続する構成であるために、作動油の漏れが生じて、伝動効率が悪かったのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】即ち、請求項1においては、遊星歯車装置と二つの無段変速装置をミッションケース内に配置し、入力軸からの動力を二つの無段変速装置それぞれに入力させ、一の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のサンギアに伝達され、他の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のリングギアに伝達され、遊星歯車装置のプラネタリギアを枢支するキャリアより出力軸に動力を伝達するように構成したものである。
【0006】請求項2においては、上記二つの無段変速装置を、割りプーリーとベルトを用いた無段変速装置としたものである。
【0007】請求項3においては、上記割りプーリーの有効径の変更を油圧制御により行うものである。
【0008】請求項4においては、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項記載のトランスミッションにおいて、変速操作手段を「中立」位置とした場合は、上記二つの無段変速装置は、サンギア及びリングギアの回転数がプラネタリギアが公転しないような関係となるよう、その変速比を制御するものである。
【0009】請求項5においては、遊星歯車装置と一対のクラッチと二つの無段変速装置とをミッションケース内に配置し、入力軸からの動力をそれぞれのクラッチの入力側に伝達し、一のクラッチの出力側は二つの無段変速装置それぞれの入力側に連動連結させ、一の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のサンギアに伝達され、他の無段変速装置の出力は遊星歯車のリングギアに伝達され、遊星歯車装置のプラネタリギアを枢支するキャリアより出力軸に動力を伝達するように構成し、他のクラッチの出力側は上記無段変速装置を介さずに上記出力軸に連動連結させたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施例に係るトランスミッションのスケルトン図、図2は同じく歯車の噛み合いを示す側面模式図、図3は図2におけるX−X断面図である。図4は同じくY−Y断面図である。図5は同じくZ−Z断面図である。また、図6はトランスミッションの外観をあらわす正面図、図7は同じく側面図である。
【0011】このトランスミッション1は車両用の変速装置とされ、図3乃至図5に示すように、ミッションケース2内に遊星歯車装置3と、動力伝達用の複数の軸及び歯車、第一・第二の割りプーリー式無段変速装置4・5、並びに、左右の車軸を差動的に結合するデフ装置7が収納される構成としている。ミッションケース2は図3から図6までに示すように、左右に複数分割されたケース2a・2b・2cを接合して構成されている。このようにミッションケース2内に変速機構や減速機構やデフ装置をまとめて収納することにより、ミッションケース2をコンパクトに構成している。
【0012】前記ミッションケース2の中央位置には、図2に示すように左右方向に第一伝動軸21が横支され、該第一伝動軸21と平行に、第二伝動軸22・第三伝動軸23・第四伝動軸24・第五伝動軸25・出力軸26が左右方向に支架される。第一から第五までの伝動軸21・22・23・24・25は、図2に示す如く出力軸26を中心にその周囲に配置されるようにしており、入力軸20及び第一伝動軸21は出力軸26の直上方に位置させている。
【0013】第一伝動軸21の一端側(本実施例においては左端側、図3における紙面右側)には入力軸20が同一軸線上に配置されてミッションケース2より外方へ突出され、図外のエンジンと接続されて動力が入力される。該入力軸20のミッションケース2内側の端部には筒状のクラッチケース30の一端が固設され、該クラッチケース30の内部において上記第一伝動軸21の一端を支持している。また図3に示すように、第一伝動軸21の上記クラッチケース30内側の端部においてはその外周にクラッチボス32を一体的に固定し、該クラッチボス32上に摩擦板33・33・・・を設ける一方、上記クラッチケース30の内面に摩擦板34・34・・・を内嵌し、該摩擦板33・34が交互に配置されるようにしている。
【0014】第一伝動軸21の中途部上には歯車35が遊嵌され(図3)、該歯車35と一体的に形成された筒状のボス部35aが前記クラッチケース30内に挿入され、該ボス部35a上に摩擦板36・36・・・が外嵌され、対向するクラッチケース30内面に摩擦板37・37が内嵌されて、摩擦板36・37を交互に配置している。そして、前記摩擦板33・34と摩擦板36・37の間の第一伝動軸21上に複動ピストン38が配置されている。
【0015】前記第一伝動軸21は中空の軸とされ、該中空部分には中空のパイプ軸39が挿嵌され、該第一伝動軸21の内周面とパイプ軸39の外周面との間を前記ピストン38を左方(図3における右方)に押動するための制御油路90とし、このパイプ軸39内部を前記ピストン38を右方(図3における左方)に押動するための制御油路91としている。制御油路90の一端はミッションケース2に設けたポートBと連通し、前記制御油路91の一端はポートAと連通している。第一伝動軸21の後部上には歯車43が相対回転不能に固定されている。これにより、クラッチケース30内の左半部には第一油圧クラッチ11が構成され、右半部には第二油圧クラッチ12が構成され、二つのポートA・Bのうちいずれか一に圧油を供給することにより、対応する油圧クラッチ(11又は12)が択一的に係合されて、上記歯車43又は歯車35を選択的に駆動できるようにしている。
【0016】更に、上記第一伝動軸21と平行に第二伝動軸22が支持され(図4)、該第二伝動軸22上には、割りプーリー式の無段変速装置である上記第一無段変速装置4の、原動側の割りプーリー41が配設される。この割りプーリー41は二つの半部41a・41bよりなり、半部41aは第二伝動軸22に一体的に形設され、他の半部41bは該第二伝動軸22に相対回転不能かつ軸方向摺動自在に設けられる。上記半部41aの外周面には歯車79が形設され、該歯車79は上記第一伝動軸21上の歯車43と噛合されている。上記半部41bを軸方向に押動するために、第二伝動軸22内には制御油路49が穿設されてあり(図4)、該制御油路49の端部はポートCと連通されている。従って、該ポートCに圧油が入力されると、該半部41bが他側の半部41aに対し近接する方向に押動され、割りプーリー41の有効径が増大されるようになっている。
【0017】また、上記第二伝動軸22と平行に第五伝動軸25が支持されて、該第五伝動軸25上には、上記第一無段変速装置4の、従動側の割りプーリー42が配設される(図3・図4)。この割りプーリー42は上記原動側の割りプーリー41の構成と略同様であって、第五伝動軸25に一体的に形成される半部42aと、該第五伝動軸25に相対回転不能かつ軸方向摺動自在に設けられる半部42bとからなる。また、該半部42bを軸方向に押動するための制御油路50が第五伝動軸25内に形設され、該油路50の一端はポートDと連通されている。従って、該ポートDに圧油が入力されると、該半部42bが他側の半部42aに対し近接する方向に押動され、割りプーリー42の有効径が増大されるようになっている。
【0018】このような構成の割りプーリー41・42間にベルト44が巻回されることにより、第二伝動軸22と第五伝動軸25とを連結する第一無段変速装置4を構成しており、両ポートC・Dへの圧油の供給、供給停止、又は圧力の変更を行うことにより、その変速比を無段に変更することができるようにしている。この変速された回転は、後述の遊星歯車装置3のサンギア61に入力される。
【0019】また更に、上記第一伝動軸21と平行に第三伝動軸23が支持され、該第三伝動軸23上には、割りプーリー式の無段変速装置である上記第二無段変速装置5の、原動側の割りプーリー51が配設される。この割りプーリー51は二つの半部51a・51bよりなり、半部51aは第三伝動軸23に一体的に固定され、他の半部51bは該第三伝動軸23に相対回転不能かつ軸方向摺動自在に設けられる。上記半部51aの外周面には歯車80が形設され、該歯車80は上記第一伝動軸21上の歯車43と噛合されている。上記半部51bを軸方向に押動するために、第三伝動軸23内に制御油路59を形設しており、該油路59の端部はポートEと連通されている。従って、該ポートEに圧油が入力されると、該半部51bが他側の半部51aに対し近接する方向に押動され、割りプーリー51の有効径が増大されるようになっている。
【0020】また、上記第三伝動軸23と平行に第四伝動軸24が支持されて、該第四伝動軸24上には、上記第二無段変速装置5の、従動側の割りプーリー52が配設される。この割りプーリー52は上記原動側の割りプーリー51の構成と略同様であって、第四伝動軸24に一体的に形成される半部52aと、該第四伝動軸24に相対回転不能かつ軸方向摺動自在に設けられる半部52bとからなる。また、該半部52bを軸方向に押動するための制御油路60が第四伝動軸24内に形設され、該油路60の一端はポートFと連通されている。従って、該ポートFに圧油が入力されると、該半部52bが他側の半部52aに対し近接する方向に押動され、割りプーリー52の有効径が増大されるようになっている。
【0021】このような構成の割りプーリー51・52間にベルト54が巻回されることにより、第三伝動軸23と第四伝動軸24とを連結する第二無段変速装置5を構成しており、両ポートE・Fへの圧油の供給、供給停止又は圧力変更を行うことにより、その変速比を無段に変更することができるようにしている。上記第四伝動軸24上には出力ギア71が相対回転不能に固定され、上記変速された回転が該出力ギア71を介して、後述の遊星歯車装置3に入力されるように構成している。
【0022】上述のクラッチケース30の外周面にはポンプ出力ギア73が形設され、また、上記第三伝動軸23と同一軸線上にポンプ軸27が支持され、該ポンプ軸27にはポンプ駆動ギア70が一体的に形設されて上記ポンプ出力ギア73と噛合され、該ポンプ軸27には油圧ポンプ6が配設されて、該油圧ポンプ6は上記のポートA・B・C・D・E・Fに必要に応じて圧油を供給するようにしている。
【0023】次に、上述の遊星歯車装置3について説明する。即ち、この遊星歯車装置3は、第五伝動軸25上に一体的に固設されるサンギア61と、サンギア61の周囲に複数配置され該サンギア61に噛合するプラネタリギア62・62・・・と、該プラネタリギア62に噛合するインターナルギアをその内周面に刻設するリングギア63と、第五伝動軸25の端部に回転自在に支持され、その側面に上記プラネタリギア62を回転自在に支持するキャリア64とにより構成される。上記キャリア64には複数本の支軸65・65・・・が放射状に等間隔で突設され、該支軸65の一端は該キャリア64に固定され、他端は同一軸心上に配置した円板状の支持プレート66に固設される。上記支軸65上には、上記プラネタリギア62を回転自在に支持するための支持パイプ67が外嵌され、回転自在に支持される。該支持パイプ67は大径部分と小径部分とを有し、該小径部分に上述のプラネタリギア62を外嵌して回転自在に支持し、大径部分においては上記リングギア63の内周面を支持して、遊動仲介輪としての役割をも兼ねることとしている。リングギア63は、キャリア64及び上記支持プレート66に挟まれた位置に配設され、両者64・66によりその軸方向変位を規制される。リングギア63の外周面のギア77は、上記第四伝動軸24上の出力ギア71と噛合される。また、上記キャリア64の外周面にもギア78が刻設されて、該ギア78は、第一伝動軸21上に支持された上記歯車35と噛合される。
【0024】上記キャリア64の前端には出力軸26が同一軸心上に一体形設され、該出力軸26上には出力ギア72が相対回転不能に固定される。そして、該出力軸26と平行に左右の車軸10L・10Rが支持されてその外端をミッションケース2外に突出させて、両車軸10L・10Rの間にはデフ装置7が設けられて、両車軸10L・10Rを差動的に連結している。該デフ装置7のリングギア81は上述の出力ギア72に噛合される。この構成により、上記出力軸26の回転が、該出力軸26上の出力ギア72→デフ装置7のリングギア81と伝達されて、車軸10L・10Rが駆動されるのである。
【0025】この構成による動力伝達の様子について説明する。即ち、上述のポートAに圧油を供給すると、上記第一油圧クラッチ11が係合されて、入力軸20に入力されたエンジン動力がクラッチケース30→クラッチボス32→第一伝動軸21と伝達されて、歯車43を駆動する。この歯車43は歯車79・歯車80の二者に噛合しているので、該歯車43の動力は両歯車79・80に分岐されて入力される。歯車79の動力は、第二伝動軸22→第一無段変速装置4→第五伝動軸25と伝達されて、遊星歯車装置3のサンギア61に入力され、該サンギア61を正回転させる。この第二伝動軸22、第一無段変速装置4、第五伝動軸25とにより、サンギアを無段変速して駆動するための第一の伝動経路T1が構成される。一方、歯車80の動力は第三伝動軸23→第二無段変速装置5→第四伝動軸24と伝達されて、最終的には出力ギア71から、上記遊星歯車装置3のリングギア63に入力され、該リングギア63を正回転させる。この第三伝動軸23、第二無段変速装置5、第四伝動軸24とにより、リングギアを無段変速して駆動するための第二の伝動経路T2が構成される。
【0026】遊星歯車装置3のプラネタリギア62・62・・・は、上記サンギア61、及び、上記リングギア63内周面に一体形設されたインターナルギアに、同時に噛合されている。従って、該プラネタリギア62には、第二伝動軸22→第五伝動軸25と伝達される際に第一無段変速装置4にて無段変速された動力、及び、第三伝動軸23→第四伝動軸24と伝達される際に第二無段変速装置5にて無段変速された動力の両者が入力される。上記サンギア61の正回転はプラネタリギア62を正方向に公転させる作用を行う一方、上記リングギア63の正回転はプラネタリギア62を逆方向に公転させる作用を行わせる。従って、プラネタリギア62を枢支する上記キャリア64の回転方向及び速度は、サンギア61、リングギア63それぞれの正回転の速度の大きさに応じて差動的に定まり、該キャリア64の回転が出力ギア72・デフ装置7を介して車軸10L・10Rに伝達されて、該車軸10L・10Rを駆動するのである。
【0027】ここで、上記サンギア61の回転速度は、第一無段変速装置4の変速比、即ちポートC・ポートDに供給される作動油の油圧によって定まり、上記リングギア63の回転速度は、第二無段変速装置5の変速比、即ちポートE・ポートFに供給される作動油の油圧によって定まる。上記ポートA・B・C・D・E・Fにはそれぞれ配管を介して図外の切換弁や比例弁と接続され、これらのバルブは図外の主変速レバーの操作によって切り換えられるようにし、前記油圧ポンプ6からの圧油が送油されるようになっている。従って、主変速レバーの操作により、ポートC・D・E・Fへの作動油の供給や供給停止や油圧の変更を介して、第一及び第二無段変速装置4・5の変速比を変更する制御を行って、キャリア64の回転方向及び回転速度を任意に変更することができるようにしている。
【0028】また、上記ポートBに圧油を供給した場合は、上述の第一油圧クラッチ11は係合が解除されるとともに、上述の第二油圧クラッチ12が係合され、歯車35が駆動される。ここで遊星歯車装置3のキャリア64はギア78により直接上記歯車35と噛合されているので、該キャリア64は上述の無段変速装置4・5等を介さず歯車35により直接駆動され、車軸10L・10Rが駆動されることとなる。
【0029】次に、この機構を用いた変速の様子について概説する。即ち、エンジンを始動する前は、油圧ポンプ6が駆動されず、ポートA及びBには圧油が供給されないので、第一・第二の油圧クラッチ11・12は係合が解除されている。また、上記主変速レバーは「中立」位置とされている。この状態からエンジンを駆動するとともに、ポートAへ圧油を送油すると、第一油圧クラッチ11が係合して歯車43が駆動され、該歯車43に噛合される歯車79・80が回転される。ここで上述のように主変速レバーは「中立」位置とされ、また、この「中立」位置である場合は、ポートC及びEには圧油が供給されない一方、ポートD及びFには圧油が供給されるようにバルブが設定されている。従って、第一及び第二の無段変速装置4・5はともに、原動側の割りプーリー(41・51)の有効径が最小で、従動側の割りプーリー(42・52)の有効径が最大である状態となっている。この歯車79の回転は上述の第一の伝動経路T1を介してサンギア61に入力され、歯車80の回転は上述の第二の伝動経路T2を介してリングギア63に入力される。
【0030】ここで、上記のように、第一及び第二の無段変速装置4・5が、ともに原動側の割りプーリー(41・51)の有効径が最小で、従動側の割りプーリー(42・52)の有効径が最大である状態となっているときは、上記サンギア61に入力された動力がプラネタリギア62を正方向へ公転させる作用(以下「正方向公転作用」)と、リングギア63に入力された動力がプラネタリギア62を逆方向へ公転させる作用(以下「逆方向公転作用」)とがつりあって、プラネタリギア62は自転は行うが公転は行わない状態となるように、無段変速装置4・5の変速比やサンギア61、リングギア63、インターナルギア62の歯数等を設定している。従ってこの場合はプラネタリギア62は公転しないから、キャリア64は駆動されず、車軸10L・10Rは駆動されない(中立状態)。
【0031】次に、オペレータが変速レバーを、上述の「中立」位置から「前進」側に傾動操作した場合の作動について説明する。即ち、変速レバーが「前進」側に傾倒された場合は、バルブが切り換えられて、ポートCへの圧油の供給が開始されてその油圧は変速レバーの傾動操作量に応じて増加するようにする一方、ポートDは減圧されてその油圧は変速レバーの傾動操作量に応じて減少するようにする。尚、ポートE及びFは上述の中立の場合と同様であって、ポートEには圧油が供給されない一方、ポートFには圧油が供給されるように構成される。従って、第一無段変速装置4の変速比が変更されてサンギア61が増速され、該サンギアによる前進公転作用が増大してリングギア63による後進公転作用を上回るから、プラネタリギア62は前進方向に公転されてキャリア64が前進方向に駆動され、上述の中立状態が破れて車両は前方へ走行するのである。ここで、車両の増速は、変速レバーの位置に応じた速度まで無段的に行われる。例えば、変速レバーを「前進三速」位置においた場合は、最終的には車両が三速相当の速度に達するまで、増速が徐々に行われることとなる。この増速の度合い(加速度)は、例えば、ポートC・ポートDへの圧油の供給回路に絞りを設けることで、調整することが可能である。
【0032】更に変速レバーが「高速前進」位置まで傾動された場合は、ポートA及びポートCへの圧油の供給が停止され、代わりに上記ポートBへの圧油の供給が開始されるように、バルブが切り換えられる。従って、上記第一油圧クラッチ11の係合が解除されて歯車43が駆動されなくなって、サンギア61及びリングギア63の駆動が停止される一方、第二油圧クラッチ12が嵌入して歯車35が駆動され、該歯車35にギア78を介して連動連結されるキャリア64が直接的に駆動され、車軸10L・10Rは前進方向に高速で駆動され、車両は四速相当の高速で前進走行を行う。
【0033】尚、この場合は、第一・第二の無段変速装置4・5はフリーとなり、係合が解除された第一油圧クラッチ11は同一方向にほぼ同一回転数にて空転するから、出力の損失を低減することができる。即ち、二つの油圧クラッチ11・12の入力側が同時に駆動されており、変速時の回転方向が変わらないから、変速時のショックが大きく、ロスを小さくすることができるのである。
【0034】一方、オペレータが変速レバーを、上述の「中立」位置から「後進」側に傾動操作した場合の作動について説明する。即ち、変速レバーが「後進」側に傾倒された場合は、バルブが切り換えられてポートEへの圧油の供給が開始され、ポートFへの圧油の供給は解除(減圧)される。尚、ポートC及びポートDは上述の中立の場合と同様であって、ポートCには圧油の供給が供給されない一方、ポートDには圧油が供給されるように構成される。従って、第二無段変速装置5の変速比が変更されてリングギア63が増速され、該リングギア63による後進公転作用がサンギア61による前進公転作用を上回るので、プラネタリギア62は後進方向に公転されてキャリア64が後進方向に駆動され、車両は後方へ走行する。尚、本実施例のようにトランスミッション1を車両に用いる場合は、後進の場合は一定速度以下に車速を制限するのが一般である。このために本実施例では、第二無段変速装置5の原動側の割りプーリー51に規制環99を嵌合して、該割りプーリー51の有効径の最小値を一定値以上となるように設定して、上記目的を達成している。
【0035】次に、車両を減速する構成の一例について説明する。即ち、例えば、変速レバーが「前進三速」位置におかれてあり、上述のようにポートCに圧油が供給され、ポートDには圧油の供給が解除されて、車両が三速相当の速度まで増速された状態であったとする。この状態から変速レバーが「二速」に操作された場合、ポートCを減圧し、ポートDに圧油の供給を再開する方法(即ち第一変速装置4の変速比を変更する方法)でも減速を行わせることができるが、ポートC及びポートDの状態はそのままで、ポートEに圧油を供給し、ポートFへの圧油の供給を解除する方法(即ち第二変速装置5の変速比を変速する方法)によっても、減速を行わせることができるのである。即ち、第一無段変速装置4によりサンギア61が増速された状態を維持したまま、第二無段変速装置5の変速比の変更によりリングギア63を増速するように構成することで、プラネタリギア62の公転速度を減少させて、車両の減速を達成することができるのである。
【0036】尚、以上に示すトランスミッションの構成は一例であって、この構成に限るものではない。例えば、以下に説明する変形例のように構成することもできる。以下、この構成を説明する。図8は変形例に係るトランスミッションのスケルトン図、図9は同じく歯車の噛み合いを示す側面模式図、図10は図9におけるX−X断面図、図11は同じくY−Y断面図、図12は同じくZ−Z断面図である。また、図13はトランスミッションの外観をあらわす正面図、図14は同じく側面図である。
【0037】以下、この変形例に係るトランスミッション1' の具体的な構成を説明する。即ち、図10から図12までに示すように、ミッションケース2内に遊星歯車装置3と、動力伝達用の複数の軸及び歯車、第一・第二の割りプーリー式無段変速装置4・5が収納される構成としている。ミッションケース2は図10から図13までに示すように、左右に複数分割されたケース2a・2b・2cを接合して構成されている。
【0038】このトランスミッション1' の動力伝達の構成は上述のトランスミッション1と略同様であるが、主に各伝動経路のレイアウトにおいて多少異なる点を有する。以下、この異なる点を中心に説明する。即ち、この変形例に係るトランスミッション1' は、ミッションケース2内部にデフ装置を配設する構成とせず、また出力軸26は、入力軸21と反対側の側面に設けられている。更に、油圧ポンプを駆動するために設けられていたポンプ駆動軸(図1に示す符号27)やポンプ出力ギア、ポンプ駆動ギア(同符号73、70)が省略され、代わりに入力軸20の中途部位に油圧ポンプ6を配設するようにしている(図8・図10)。更には、第一伝動軸21上の歯車43に噛合する歯車は、上述のトランスミッション1のように割りプーリーの半部に一体的に設けたギアとせずに、軸に別途設けた平歯車としている(図8・図10・図11に示す符号79・80)。そして、両無段変速装置4・5の割りプーリー(41・42・51・52)を配設する位置は、上述のトランスミッション1においては入力軸20と反対側であったのが、このトランスミッション1' においては入力軸20寄りの位置としている。
【0039】また、遊星歯車装置3のプラネタリギア62を枢支するキャリア64は、該プラネタリギア62を挟んで入力軸20に対して反対側の位置に配置され、該キャリア64に一体的に形設される出力軸26が入力軸20と反対側の側面からミッションケース2外方へ突出される。また、該遊星歯車装置3のサンギア61を駆動する第五伝動軸25は、上述のトランスミッション1とは反対側、即ち、該サンギア61より入力軸20寄りの位置に支持され、該第五伝動軸25に配設される、第一無段変速装置4の従動側の割りプーリー41も、サンギア61より入力軸20寄りの位置にて配設される。
【0040】この変形例に係るトランスミッション1' は以上のように構成されるが、このトランスミッション1' による変速の方法は、上記したトランスミッション1の変速の方法とまったく同様である。即ち、ポートAに圧油が供給されているときは、ポートC・D・E・Fへの圧油の供給及び供給解除を行うことで、第一・第二の無段変速装置4・5の変速比を変更して、プラネタリギアの正方向公転作用及び逆方向公転作用の大きさを変更して、差動的に駆動される上記キャリア64の回転方向及び回転速度を制御し、これによって得られた回転が出力軸26から出力されるのである。また、ポートBに圧油が供給されているときは、第一伝動軸21上の歯車35により遊星歯車装置3のキャリア64が直接的に駆動されて、該駆動力が出力軸26から出力されることとなる。
【0041】以上に本発明の実施例を説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0042】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0043】即ち、請求項1に示す如く、遊星歯車装置と二つの無段変速装置をミッションケース内に配置し、入力軸からの動力を二つの無段変速装置それぞれに入力させ、一の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のサンギアに伝達され、他の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のリングギアに伝達され、遊星歯車装置のプラネタリギアを枢支するキャリアより出力軸に動力を伝達するように構成したので、二つの無段変速装置を用いてキャリアを差動的に駆動することで、きめ細かい変速制御を容易に行うことができ、またミッションケースのコンパクト化が容易である。
【0044】請求項2に示す如く、上記二つの無段変速装置を、割りプーリーとベルトを用いた無段変速装置としたので、両者の出力を相殺させることによって中立を出す機構であるから、中立を出すことが容易行える。即ち、割りプーリー式の無段変速装置を一つのみ用いた場合においては、エンジンが駆動しているときは常時回転しているので中立を出すことが難しかったが、本発明においては二つの割りプーリー式の無段変速装置の出力を差動的に取り出すことで変速を行うので、中立を出すことが容易にできるのである。従って、中立状態から駆動への切り換え(例えば車両に用いた場合は、停止から発進への切り換え)が、特別な熟練を要さずスムーズに行えることとなる。
【0045】請求項3に示す如く、上記割りプーリーの有効径の変更を油圧制御により行うので、該油圧制御を行うための回路に絞りを一度設定しておけば、無段変速装置の変速比の変更制御が容易にかつ安定して行える。即ち、簡単な操作でスムーズな変速が可能となるのである。
【0046】請求項4に示す如く、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項記載のトランスミッションにおいて、変速操作手段を「中立」位置とした場合は、上記二つの無段変速装置は、サンギア及びリングギアの回転数がプラネタリギアが公転しないような関係となるよう、その変速比を制御するので、中立を出すことが容易にできる。
【0047】請求項5に示す如く、遊星歯車装置と一対のクラッチと二つの無段変速装置とをミッションケース内に配置し、入力軸からの動力をそれぞれのクラッチの入力側に伝達し、一のクラッチの出力側は二つの無段変速装置それぞれの入力側に連動連結させ、一の無段変速装置の出力は遊星歯車装置のサンギアに伝達され、他の無段変速装置の出力は遊星歯車のリングギアに伝達され、遊星歯車装置のプラネタリギアを枢支するキャリアより出力軸に動力を伝達するように構成し、他のクラッチの出力側は上記無段変速装置を介さずに上記出力軸に連動連結させたので、無段変速と歯車式変速の切り換えが容易に行える構成である。また、二つのクラッチの入力側が同時に駆動されて、上記切換え時にもクラッチの回転方向が正逆反転される構成でないため、変速時のショックを小さくでき、出力の損失も低減できる。
【出願人】 【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
【出願日】 平成11年9月17日(1999.9.17)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開2001−82573(P2001−82573A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願平11−263139