| 【発明の名称】 |
無段変速機の油圧回路構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】殿畑 厚
【氏名】生島 嘉大
【氏名】澤山 稔
|
| 【要約】 |
【課題】油圧回路を簡略化して製造コストを低減できると共に、油圧回路の経路長を短縮化して切換機構の制御レスポンスを向上できる無段変速機の油圧回路構造を提供する。
【解決手段】ケーシング1の取付部1aに対してハウジング部材8のフランジ部8aを重ね合わせて固定し、そのハウジング部材8とサポート部材9とを協調させて内部に前後進切換機構6を収容し、作動油供給源に連結される油路32と油圧ピストン31用のシリンダ38に連結される油路35,36とをフランジ部8aに形成した油溝34を介して連通させると共に、その油溝34をサポート部材9の外周にて閉鎖することにより、作動油供給源から油圧ピストン31までの油圧回路を形成した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速比を無段階に調整可能な無段変速機構、及び油圧にて駆動されて車両の運転状態を切換可能な切換機構をケーシング内に収容してなる無段変速機において、上記切換機構を収納して上記ケーシングに着脱可能に取付けられるハウジング部材と、上記ケーシングに形成され、作動油を上記ハウジング部材に供給する第1の油路と、上記ハウジング部材に形成され、上記第1の油路からの作動油を上記切換機構に供給する第2の油路と、上記ハウジング部材と協調して上記切換機構を収容すると共に、上記第1の油路及び第2の油路の少なくとも一方の開口部分を閉鎖するサポート部材とを備えたことを特徴とする無段変速機の油圧回路構造。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速機に設けられた切換機構に作動油を供給するための油圧回路の構造に関するものある。 【0002】 【関連する背景技術】例えば特開平10−274319号公報に記載された無段変速機では、ケーシング内にプライマリ軸及びセカンダリ軸を平行配置し、そのプライマリ軸に設けたプライマリプーリとセカンダリ軸に設けたセカンダリプーリとの間に無端状のベルトを掛け渡している。プライマリプーリとセカンダリプーリとはそれぞれ固定シーブと可動シーブとから構成され、可動シーブはアクチュエータにより軸方向に移動可能とされている。そして、アクチュエータに供給する油圧等により各シーブの間隔が調整されて、変速比を無段階で変更できるようになっている。無段径に変速されたエンジンの駆動力はディファレンシャルギア等を経て駆動輪側に伝達するようになっている。 【0003】図5は上記公報に記載された前後進切換機構の油圧回路を示す部分断面図であり、図中の101はプライマリ軸を示す。無段変速機のケーシング102はメインケーシング102aとサブケーシング102bを結合して構成され、上記した前後進切換機構103はプライマリ軸101を中心としたカップ状のブレーキサポート104内に組込まれ、ブレーキサポート104はサブケーシング102bに支持された状態でメインケーシング102a内に配置されている。前後進切換機構103の油圧ピストン105への作動油は、メインケーシング102aに配設されたバルブボディにて給排制御されることから、油圧ピストン105側に作動油を供給するためにメインケーシング102aから油圧ピストン105までの油圧回路を形成する必要がある。 【0004】そこで、この無段変速機では、メインケーシング102aに形成した油路106と、ブレーキサポート104に形成した油路107とを、サブケーシング102bに形成した油路108を介して連通させて、バルブボディからの作動油を各油路106〜108を経て油圧ピストン105に導いている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した無段変速機では、メインケーシング102aやブレーキサポート104のみならずサブケーシング102bにも油路108を形成する必要があることから、製造ラインにおいて油路を加工する際の工数が増大し、ひいては製造コストを高騰させてしまうという問題がある。 【0006】又、油圧回路をサブケーシング102b側に迂回させる関係で、必然的にバルブボディから油圧ピストン105までの経路長が長くなってしまう。その結果、前後進切換機構103の制御レスポンスが悪化してしまい、例えば運転者にてシフトレバーがN(ニュートラル)位置からR(リバース)位置に切換えられても、実際に油圧ピストン105が作動して停止から後進への切換が行われるまでに無視できないタイムラグが発生してしまい、ひいては車両の商品価値を損ねる要因にもなりかねない。 【0007】本発明の目的は、油圧回路を簡略化して製造コストを低減できると共に、油圧回路の経路長を短縮化して切換機構の制御レスポンスを向上させることができる無段変速機の油圧回路構造を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明では、変速比を無段階に調整可能な無段変速機構、及び油圧にて駆動されて車両の運転状態を切換可能な切換機構をケーシング内に収容してなる無段変速機において、切換機構を収納してケーシングに着脱可能に取付けられるハウジング部材と、ケーシングに形成され、作動油を上記ハウジング部材に供給する第1の油路と、ハウジング部材に形成され、第1の油路からの作動油を切換機構に供給する第2の油路と、ハウジング部材と協調して切換機構を収容すると共に、第1の油路及び第2の油路の少なくとも一方の開口部分を閉鎖するサポート部材と備えた。 【0009】従って、第1の油路又は第2の油路の開口がサポート部材にて閉鎖されることにより、作動油供給源から回転切換機構までの油圧回路が形成され、作動油供給源の切換動作に応じて回転切換機構が駆動される。そして、このようにサポート部材は、油路の開口部分を閉鎖する蓋としての役割を果たすだけのため、複雑な油路を形成する必要がなく、このサポート部材の製造ラインでの加工工数が減少される。又、サポート部材内の油路を介することなく、ケーシング側からハウジング部材側に油圧回路が直接受け渡されるため、作動油供給源から回転切換機構までの経路長が短縮化される。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明をFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に用いられるベルト式無段変速機の油圧回路構造として具体化した一実施形態を説明する。図1はベルト式無段変速機の断面を示しており、図中の無段変速機の右側にはエンジン(図示なし)が連結されている。無段変速機のケーシング1内にはインプット軸2とプライマリ軸3が同軸上に配置され、インプット軸1の右端はトルクコンバータ4を介してエンジンのクランク軸5に連結されている。インプット軸2の左端は、図示しない遊星歯車機構、前進用クラッチ、後進用クラッチ等からなる前後進切換機構6を介してプライマリ軸3の右端に支承され、プライマリ軸3にはプライマリプーリ7が設けられている。前後進切換機構6は、図中の右方に開口するカップ状のブレーキサポート8内に収容され、このブレーキサポート8の開口部はリアクションシャフトサポート9にて閉鎖されている。 【0011】ここで、本実施形態では、ブレーキサポート8がハウジング部材として機能し、リアクションシャフトサポート9がサポート部材として機能し、前後進切換機構6が切換機構として機能する。ブレーキサポート8の左側外周に形成された嵌合部8bはケーシング1の内壁に嵌合し、又、ブレーキサポート8の右側外周に形成されたフランジ部8aとリアクションシャフトサポート9の外周とは互いに重ねられて、ケーシング1内の取付部1aに対してボルト10にて固定され、その結果、これらのブレーキサポート8とリアクションシャフトサポート9がケーシング1内で位置決め・固定されている。尚、リアクションサポート9の内周は、トルクコンバータ4の図示しないステータを支えるシャフト25、軸受26を介してインプット軸2の右端を支持し、ブレーキサポート8の左側内周は、ベアリング11、プライマリ軸3、軸受27を介してプライマリ軸3の右端、及びインプット軸2の左端を支持する役割を果たしている。 【0012】プライマリプーリ7は、プライマリ軸3に一体形成された固定シーブ7aと、プライマリ軸3上で移動可能に設けられた可動シーブ7bとから構成され、可動シーブ7bは油圧アクチュエータ13により固定シーブ7aに対して接離し得るようになっている。ケーシング1内にはプライマリ軸3に対して平行にセカンダリ軸14が配置され、このセカンダリ軸14にはセカンダリプーリ15が設けられている。前記したプライマリプーリ7と同様に、セカンダリプーリ15は、セカンダリ軸14に一体形成された固定シーブ15aと、セカンダリ軸14上で移動可能に設けられた可動シーブ15bとから構成され、可動シーブ15bは油圧アクチュエータ16により固定シーブ15aに対して接離し得るようになっている。本実施形態では、プライマリプーリ7、セカンダリプーリ15、及び金属ベルト17により無段変速機構が構成されている。 【0013】プライマリプーリ7とセカンダリプーリ15との間には無端状の金属ベルト17が掛け渡され、この金属ベルト17は固定シーブ7a,15aと可動シーブ7b,15bとの間に形成されたV字状の溝18内に挟持されて、プライマリプーリ7の回転をセカンダリプーリ15に伝達するようになっている。プライマリプーリ7とセカンダリプーリ15の可動シーブ7b,15bはそれぞれの油圧アクチュエータ13,16にて常に逆方向に駆動され、それに伴ってプライマリプーリ7とセカンダリプーリ15の一方の有効径が増大すると共に他方の有効径が減少する。プライマリプーリ7の有効径がセカンダリプーリ15の有効径に比較して大のときには、変速比が高速(オーバドライブ)側に移行し、逆にプライマリプーリ7の有効径がセカンダリプーリ15の有効径に比較して小のときには、変速比が低速(ロー)側に移行する。 【0014】セカンダリ軸14上にはトランスファドライブギア20がスプライン結合され、このトランスファドライブギア20は、トランスファ軸21上にスプライン結合されたトランスファドブリンギア22と噛合している。トランスファ軸21上にはピニオンギア21aが一体形成され、このピニオンギア21aはディファレンシャル機構23のファイナルギア23aと噛合し、ディファレンシャル機構23はドライブシャフト24を介して図示しない左右の駆動輪と連結されている。 【0015】図2は前後進切換機構の油圧回路を示す部分断面図であり、この図では、前後進切換機構6を構成する油圧ピストン31を示し、その他の部材は省略している。ケーシング1の取付部1aには図中の左右方向に延びる油路32が形成され、その油路32の左端は、ケーシング1の外側に設けられた図示しない油圧供給源としてのバルブボディに連結され、油路32の右端は取付部1aの右側面に開口している。ブレーキサポート8のフランジ部8aには、ケーシング1側の油路32と連通する油路33が形成され、その油路33の右端はフランジ部8aの右側面に形成された油溝34内に開口している。ブレーキサポート8の左側には内外を貫通する油路35が形成され、その油路35はブレーキサポート8の外周に形成された油路36を介して前記油溝34内と連通している。油路35の外端は球状のプラグ37にて閉塞され、油路35の内端は、ブレーキサポート8内にインプット軸2及びプライマリ軸3を中心として形成された環状のシリンダ38内に開口し、このシリンダ38内に前記した油圧ピストン31が配設されている。 【0016】前記油溝34は、ブレーキサポート8のフランジ部8aに重なったリアクションシャフトサポート9により閉鎖されていることから、結果として油路32、油路33、油溝34、油路36、油路35からなる油圧回路がケーシング1側からブレーキサポート8側に直接受け渡されるように形成されて、バルブボディから供給される作動油に応じてシリンダ38内の油圧が制御されることになる。ここで、本実施形態では、油路32が第1の油路として機能し、油路33、油溝34、油路36、油路35が第2の油路として機能する。 【0017】図示はしないが、油圧ピストン31の右側には後進用ブレーキが設けられ、油圧ピストン31はシリンダ38内の油圧増加に伴って図中の右方に移動してブレーキを係合させ、逆に油圧低下に伴って図示しないスプリングの付勢力で左方に移動してブレーキの係合を解除させる。そして、それに応じて遊星歯車機構の作動状態が切換えられて、対応する動作、例えば停止から後進への切換等が実行される。 【0018】そして、以上の構成から明らかなように、リアクションシャフトサポート9はブレーキサポート8の油溝34を閉鎖する蓋としての役割を果たすだけであり、油圧回路を構成する油路は一切形成されていない。よって、油路32,33,35,36や油溝34の加工はケーシング1とブレーキサポート8に施すだけでよく、図5の従来例のようにサブケーシング102b側(本実施形態ではリアクションシャフトサポート9に該当)にも油路108の形成を要する場合に比較して、製造ラインでの加工工数を減少でき、ひいては製造コストを低減することができる。 【0019】又、従来例のように油圧回路をサブケーシング102b側に迂回させていないため、バルブボディから油圧ピストン31までの経路長が短縮化され、バルブボディ側の切換に呼応して速やかに油圧ピストン31を作動させることができる。よって、例えば運転者にてシフトレバーがN(ニュートラル)位置からR(リバース)位置に切換えられたときには、速やかに停止から後進への切換を完了でき、その制御レスポンスを向上させて、ひいては車両の商品価値を向上させることができる。 【0020】以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、FF車両用の無段変速機の油圧回路構造として具体化したが、適用する車両の形式は限定されず、例えば、FR(フロントエンジン・リアドライブ)車両用の無段変速機の油圧回路構造に具体化してもよい。 【0021】又、上記実施形態では、バルブボディ側の油路33,34と油圧ピストン31側の油路35,36とをフランジ部8aに形成した油溝34を介して連通させ、その油溝34をリアクションシャフトサポート9により閉鎖することで油圧回路を形成したが、リアクションシャフトサポート9を蓋として利用して油圧回路を形成するものであれば、油溝34の箇所の構成はこれに限らない。従って、例えば図3に示すように、油溝34をリアクションシャフトサポート9側に形成してもよい。又、図4に示すように、ケーシング1側に形成した油路41をリアクションシャフトサポート9と関係なく直接ブレーキサポート8の油路42を介して油路43に接続し、その油路43の一端を油圧シリンダ38に連通させると共に,他端のフランジ部8aへの開口部分をリアクションシャフトサポート9を利用して閉鎖するようにしてもよい。図3の場合には、リアクションシャフトサポート9に油溝34を単純な凹部として形成するだけよく、又、図4の場合には、リアクションシャフトサポート9に油路を一切形成する必要がないため、双方共に加工工数を減少でき、且つ、何れの場合もケーシング1側からブレーキサポート8側に油圧回路が直接受け渡されるため、経路長を短縮化できる。 【0022】更に、上記実施形態では、前後進切換機構6に回転の断続機能、及び回転方向の切換機能を共に付与したが、その制御内容はこれに限定されるものではなく、例えば、何れか一方の機能のみを備えさせてもよい。又、前進段を高速/低速に切換えるような副変速機にも適用できる。更に、上記実施形態では、前後進切換機構6が無段変速機構の入力側にある例を示したが、出力側にあっても勿論よい。 【0023】 【発明の効果】以上説明したように本発明の無段変速機の油圧回路構造によれば、サポート部材を蓋として利用することで油圧回路を形成しているため、サポート部材に複雑な油路を形成する必要がなく、製造ラインでの加工工数を減少して製造コストを低減でき、しかも、ケーシング側からハウジング部材側に油圧回路を直接受け渡すため、油圧回路の経路長を短縮化して前後進切換機構の制御レスポンスを向上させることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006286 【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年9月13日(1999.9.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090022 【弁理士】 【氏名又は名称】長門 侃二
|
| 【公開番号】 |
特開2001−82562(P2001−82562A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月27日(2001.3.27) |
| 【出願番号】 |
特願平11−259159 |
|