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【発明の名称】 変速比無限大無段変速機の変速制御装置
【発明者】 【氏名】城 新一郎

【氏名】川邊 武俊

【氏名】村本 逸朗

【氏名】成田 靖史

【氏名】酒井 弘正

【氏名】西尾 元治

【要約】 【課題】運転者に違和感を与えることなく、動力循環モードと直結モードを切り換えながら急変速を可能にする。

【解決手段】目標IVT比へ向けて変速する際に、直結モードと動力循環モードを切り換える場合には、CVT比icの変化方向に基づいて、IVT比iiの変化方向を維持するように、直結モードクラッチと動力循環モードクラッチの切り換え制御と、無段変速機のCVT比icの制御を順次行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速比を連続的に変更可能な無段変速機と一定変速機とをユニット入力軸にそれぞれ連結するとともに、無段変速機と一定変速機の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、運転状態に応じて前記動力循環モードクラッチと直結モードクラッチを選択的に締結して、総変速比が無限大を含んで動力を伝達する動力循環モードと、無段変速機の出力に応じて動力を伝達する直結モードとを切り換えるクラッチ切換制御手段と、車両の運転状態に応じて目標総変速比を設定するとともに、動力循環モードと直結モードの2つの運転モードのうち、いずれかを設定する目標総変速比設定手段と、前記目標総変速比と運転モードに基づいて、無段変速機の変速比が予め設定した目標変速比となるように制御する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の変速制御装置において、目標総変速比へ変速する際に、運転モードの切り換えが必要か否かを判定するモード切り換え判定手段と、無段変速機の変速比の変化方向を判定する変速比変化方向判定手段と、目標総変速比へ向けて変速する際に、運転モードの切り換えが必要な場合には、変速比の変化方向に基づいて、前記総変速比の変化方向を維持するように、前記クラッチ切換制御手段と変速比制御手段の動作順序を決定するモード切換制御手段とを備えたことを特徴とする変速比無限大無段変速機の変速制御装置。
【請求項2】 前記モード切換制御手段は、クラッチ切換制御手段と変速比制御手段の動作を、一方の制御が終了した後に他方の制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の変速比無限大無段変速機の変速制御装置。
【請求項3】 前記モード切換制御手段は、目標総変速比と実総変速比の偏差を演算する偏差算出手段を備え、この偏差が予め設定した値以上の場合には、前記クラッチ切換制御手段及び変速比制御手段をともに動作させることを特徴とする請求項1に記載の変速比無限大無段変速機の変速制御装置。
【請求項4】 前記モード切換制御手段は、前記動力循環モードクラッチと直結モードクラッチの伝達トルクをそれぞれ推定する伝達トルク推定手段を備え、目標総変速比へ向けて変速する際に、クラッチ切換制御手段から動作させるときには、前記総変速比の変化方向がアップシフトの場合、動力循環モードクラッチの前記伝達トルクがゼロとなってから、変速比制御手段を動作させる一方、前記総変速比の変化方向がダウンシフトの場合、直結モードクラッチの伝達トルクがゼロとなってから、変速比制御手段を動作させることを特徴とする請求項1に記載の変速比無限大無段変速機の変速制御装置。
【請求項5】 前記変速比制御手段は、アクチュエータを介して無段変速機の変速比を制御するとともに、前記モード切換制御手段は、前記目標総変速比の変化に基づいてアクチュエータの目標駆動速度を求める目標駆動速度算出手段を備えて、目標総変速比へ向けて変速する際に、変速比制御手段から動作させるときには、前記目標駆動速度がアクチュエータの駆動速度限界に達したときにクラッチ切換制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の変速比無限大無段変速機の変速制御装置。
【請求項6】 前記モード切換制御手段は、無段変速機の変速比の変化方向が小側の場合には、クラッチ切換制御手段から動作させる一方、無段変速機の変速比の変化方向が大側の場合には、変速比制御手段から動作させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の変速比無限大無段変速機の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両などに採用される変速比無限大無段変速機の変速制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から車両の変速機として、ベルト式やトロイダル型の無段変速機が知られており、このような無段変速機の変速領域をさらに拡大するために、無段変速機に一定変速機と遊星歯車機構を組み合わせて変速比を無限大まで制御可能とする変速比無限大無段変速機が知られており、例えば、特開平10−267116号公報などがある。
【0003】これは、エンジンに連結される変速比無限大無段変速機のユニット入力軸に、変速比を連続的に変更可能なハーフトロイダル型の無段変速機構と、一定変速機構(減速機構)を並列的に連結するとともに、これらの出力軸を遊星歯車機構で結合したもので、無段変速機構の出力を遊星歯車機構のサンギアに、一定変速機構の出力軸は動力循環モードクラッチを介して遊星歯車機構のキャリアに連結される。
【0004】サンギアと連結した無段変速機の出力軸は、直結モードクラッチを介して変速比無限大無段変速機の出力軸であるユニット出力軸と選択的に結合される一方、遊星歯車機構のリングギアもユニット出力軸に結合される。
【0005】このような変速比無限大無段変速機では、図12に示すように、動力循環モードクラッチを締結する一方、直結モードクラッチを解放することにより、無段変速機構と一定変速機の変速比の差に応じて、総変速比(以下、IVT比iiでユニット入力軸回転数/ユニット出力軸回転数)を負の値から正の値まで無限大(1/ii=0でギアードニュートラルポイントGNPという)を含んで連続的に変速制御を行う動力循環モードと、動力循環モードクラッチを解放する一方、直結モードクラッチを締結して無段変速機構の変速比(以下、CVT比ic)に応じて変速制御を行う直結モードを選択的に使用することができる。
【0006】なお、図12においては、縦軸をIVT比iiの逆数として、CVT比icと前後進の関係を連続的に表示した。
【0007】そして、動力循環モードと直結モードの切り換えは、動力循環モードと直結モードで総変速比が一致する回転同期点RSP(Revolution Synchronous Point)で行い、ショックを生じることなく動力循環モードクラッチと直結モードクラッチの締結、解放を行うことが可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例にあっては、キックダウン変速や足離しアップシフトなどの迅速な変速を行う場合、変速の途中に回転同期点RSPがある場合には、一旦、CVT比icを回転同期点RSPに固定した状態で、動力循環モードクラッチと直結モードクラッチの切り換えを行うため、IVT比iiを急速に変更することができないという問題があった。
【0009】また、急変速を可能にするため、動力循環モードと直結モードクラッチを半クラッチにした状態で切り換えを行う場合、現在のIVT比iiと目標とするIVT比iiによっては、IVT比iiのアップシフトとダウンシフトの方向が、CVT比icのアップシフトとダウンシフトの方向と一致しない場合があるため、クラッチの切り換えとCVT比icの制御によっては、運転者に違和感を与える場合がある。
【0010】例えば、図12に示すように、回転同期点RSPを挟んで、図中直結モードのA点から動力循環モードのB点へダウンシフトを行う場合について考えると、IVT比は図中iiaからiibへ増大するが、このときのCVT比は図中icaからicbへ減少し、CVT比icはアップシフトすることになる。
【0011】このとき、まず、クラッチの切り換えを行うと、図中直結モードのA点から動力循環モードのC点へ移動し、CVT比はA点に対応したicaを維持しながら、IVT比はiiaからiicへ増大する。
【0012】次に、CVT比をicaから目標とするIVT比iibに対応したicbへアップシフトすれば、図中A点、C点、B点へ移動し、常にIVT比はダウンシフト側へ変化する。
【0013】これに対して、まず、CVT比をA点に対応したicaから、目標とするIVT比iibに対応したicbへアップシフトした後に、クラッチの切り換えを行うと、IVT比は直結モードでiiaからiidに減少してアップシフトとなってから、動力循環モードに移行してIVT比はiibへダウンシフトすることになり、図13の一点鎖線にも示すように、目標とするIVT比iiの変化方向はダウンシフトでありながら、IVT比iiは一旦Hi側(小側)へアップシフトした後に、Low側(大側)へダウンシフトすることになって、運転者に違和感を与えることになる。
【0014】また、図12において、回転同期点RSPを挟んで、図中A点からCVT比がLow側(大側)となるB’点へダウンシフトする場合について考えると、まず、CVT比をA点に対応したicaから、目標とするIVT比iib’に対応したCVT比icb’へダウンシフトした後に、クラッチの切り換えを行えば、IVT比は、図中A点から、D’点を経てB’点に移動して、IVT比iiは常にダウンシフト側へ変化することができる。
【0015】これに対して、クラッチの切り換えを行ってから、CVT比の変速を行うと、IVT比iiは、図14の一点鎖線で示すように、図中A点からC点へダウンシフトした後、C点からB’点に向けてアップシフトすることになってしまい、運転者に違和感を与えることになる。
【0016】さらに、図12において、回転同期点RSPを挟んで、図中直結モードのD点から動力循環モードのB’点へダウンシフトを行う場合について考えると、IVT比は図中iidからiib’へ増大するが、このときのCVT比は図中icbからicb’へ増大し、CVT比icもダウンシフトすることになる。
【0017】このとき、まず、CVT比をD点に対応したicbから、目標とするIVT比iib’に対応したCVT比icb’へダウンシフトした後に、クラッチの切り換えを行えば、IVT比iiは、図中D点からD’点を経てB’点に移動して、IVT比iiは常にダウンシフト方向へ変化することができる。
【0018】しかし、図15に示すように、目標IVT比の変化速度が速い場合、上記のように、D点、D’点、B’点と変速すると、直接D点からB’点へ変速する場合に比して遠回りとなり、アクチュエータの駆動速度に依存する実際のIVT比の変化速度が、目標IVT比の変化に追いつかない場合がある。
【0019】一方、直接D点からB’点へ変速する場合では、CVT比icの制御とクラッチの切り換え制御を同時に行わなければならず、マイクロコンピュータなどを採用した制御装置の演算負荷が高くなるという問題がある。
【0020】これに対して、上記したように、D点、D’点、B’点と変速する場合では、CVT比icの制御とクラッチの切り換え制御を別々に行うため、制御装置の演算負荷が低く、高速で高性能なマイクロコンピュータを必要としないという利点はあるが、目標IVT比への追従性という点では、上述のような問題を残してしまう。
【0021】なお、回転同期点RSPを挟んで、IVT比iiをアップシフトする場合でも同様の問題が発生する。
【0022】そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、運転者に違和感を与えることなく、動力循環モードと直結モードを切り換えながら総変速比を急速に変更可能にすることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、変速比を連続的に変更可能な無段変速機と一定変速機とをユニット入力軸にそれぞれ連結するとともに、無段変速機と一定変速機の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、運転状態に応じて前記動力循環モードクラッチと直結モードクラッチを選択的に締結して、総変速比が無限大を含んで動力を伝達する動力循環モードと、無段変速機の出力に応じて動力を伝達する直結モードとを切り換えるクラッチ切換制御手段と、車両の運転状態に応じて目標総変速比を設定するとともに、動力循環モードと直結モードの2つの運転モードのうち、いずれかを設定する目標総変速比設定手段と、前記目標総変速比と運転モードに基づいて、無段変速機の変速比が予め設定した目標変速比となるように制御する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の変速制御装置において、目標総変速比へ変速する際に、運転モードの切り換えが必要か否かを判定するモード切り換え判定手段と、無段変速機の変速比の変化方向を判定する変速比変化方向判定手段と、目標総変速比へ向けて変速する際に、運転モードの切り換えが必要な場合には、変速比の変化方向に基づいて、前記総変速比の変化方向を維持するように、前記クラッチ切換制御手段と変速比制御手段の動作順序を決定するモード切換制御手段とを備える。
【0024】また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記モード切換制御手段は、クラッチ切換制御手段と変速比制御手段の動作を、一方の制御が終了した後に他方の制御を開始する。
【0025】また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記モード切換制御手段は、目標総変速比と実総変速比の偏差を演算する偏差算出手段を備え、この偏差が予め設定した値以上の場合には、前記クラッチ切換制御手段及び変速比制御手段をともに動作させる。
【0026】また、第4の発明は、前記第1の発明において、前記モード切換制御手段は、前記動力循環モードクラッチと直結モードクラッチの伝達トルクをそれぞれ推定する伝達トルク推定手段を備え、目標総変速比へ向けて変速する際に、クラッチ切換制御手段から動作させるときには、前記総変速比の変化方向がアップシフトの場合、動力循環モードクラッチの前記伝達トルクがゼロとなってから、変速比制御手段を動作させる一方、前記総変速比の変化方向がダウンシフトの場合、直結モードクラッチの伝達トルクがゼロとなってから、変速比制御手段を動作させる。
【0027】また、第5の発明は、前記第1の発明において、前記変速比制御手段は、アクチュエータを介して無段変速機の変速比を制御するとともに、前記モード切換制御手段は、前記目標総変速比の変化に基づいてアクチュエータの目標駆動速度を求める目標駆動速度算出手段を備えて、目標総変速比へ向けて変速する際に、変速比制御手段から動作させるときには、前記目標駆動速度がアクチュエータの駆動速度限界に達したときにクラッチ切換制御を開始する。
【0028】また、第6の発明は、前記第2または第3の発明において、前記モード切換制御手段は、無段変速機の変速比の変化方向が小側の場合には、クラッチ切換制御手段から動作させる一方、無段変速機の変速比の変化方向が大側の場合には、変速比制御手段から動作させる。
【0029】
【発明の効果】したがって第1の発明は、動力循環モードクラッチを締結する一方、直結モードクラッチを解放することにより、無段変速機と一定変速機の変速比の差に応じて、総変速比(ユニット入力軸回転数/ユニット出力軸回転数)を負の値から正の値まで無限大(=ギアードニュートラルポイント)を含んで連続的に変速制御を行う動力循環モードと、動力循環モードクラッチを解放する一方、直結モードクラッチを締結して無段変速機の変速比に応じて変速制御を行う直結モードを選択的に使用する変速比無限大無段変速機では、動力循環モードにおいては総変速比の変速方向と変速比の変化方向が異なる。
【0030】目標総変速比へ変速する際に、動力循環モードクラッチと直結モードクラッチの切り換えが必要なときには、総変速比の変化方向を維持するように、クラッチの切り換え制御と、無段変速機の変速比制御の順序を決定するようにしたため、総変速比が目標総変速比へ向けて変化する途中で、変化方向が逆転するのを確実に防止して運転者に違和感を与えることなく迅速に変速を行うことができる。
【0031】また、第2の発明は、クラッチの切り換え制御と無段変速機の変速比制御を順次行うのに加えて、一方の制御が終了してから、他方の制御を行うようにしたため、動力循環モードの直結モードの切り換えを、両者の運転モードでユニット出力軸の回転数が一致する回転同期点以外で行って、キックダウン変速や足離しアップシフトなどの急変速に追従しながら、総変速比の変化方向が変動するのを確実に防いで、運転者に違和感を与えることがない。
【0032】さらに、クラッチの切り換え制御と変速比制御を同時に行うことがないため、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置の演算負荷を低減できる。
【0033】また、第3の発明は、総変速比を変化させる際に、運転モードの切り換えが必要なときには、偏差算出手段から出力される目標総変速比と実総変速比の偏差が、予め設定した値以上となったときには、アクチュエータの駆動速度限界などにより目標総変速比に対して実総変速比が遅れており、運転性の悪化を招くと判断し、クラッチの切り換え制御と無段変速機の変速比制御を同時に行うことで、モード切換制御手段で最初に制御すると選択した制御(先行制御)に加えて、もう一方の制御(以後、後発制御)も開始され、後発制御が先行制御の遅れを補い、先行制御による偏差の拡大を、後発制御が補償することができ、目標総変速比への追従性能が向上し、さらに、アクチュエータ駆動速度限界を超えた速い目標値の変化に対応できるようになるため、キックダウンなどの急変速をより高速に行うことが可能となって、運転性を向上させることができる。
【0034】また、第4の発明は、動力循環モードと直結モードの切り換えを行いながら総変速比を変化させる際に、クラッチ切換制御を先行させる場合では、総変速比の変化方向がアップシフトでは動力循環モードクラッチの伝達トルクがゼロになるまで、また、総変速比の変化方向がダウンシフトでは直結モードクラッチの伝達トルクがゼロになるまで、それぞれ変速制御の開始を待たせる。モード切換制御手段がクラッチ切換制御を先行させると判断するのは、無段変速機の変速比がアップシフトするモード切換であり、このとき、直結モードのときでは総変速比の変化方向がアップシフトとなり、動力循環モードのときでは総変速比の変化方向がダウンシフトとなる。
【0035】例えば、総変速比の変化方向がダウンシフトの場合を考えると、直結モードクラッチの伝達トルクがゼロになっていないときに、無段変速機の変速比制御を開始した場合、まだ直結モードの影響が残っているために、無段変速機の変速比がアップシフトであるため、総変速比の変化方向も直結モードクラッチに引きずられてアップシフトしてしまう可能性があり、総変速比の変化方向に対して逆変速が起きる可能性がある。
【0036】したがって、開放側のクラッチの伝達トルクがゼロになったとき、すなわち開放側のクラッチが開放された後に変速制御を開始することにより、逆変速の発生を確実になくせるので、逆変速による変速の違和感が無くなり、かつ、先行制御が終了してから後発制御を開始するモード切換よりも素早い変速が可能となる。
【0037】また、第5の発明は、動力循環モードの直結モードの切り換えを行いながら総変速比を変化させる際に、変速比制御を先行させる場合、アクチュエータの目標駆動速度が駆動速度限界に達するまで、クラッチ切換制御の開始を待たせる。
【0038】すなわち、駆動速度限界未満では、アクチュエータの駆動速度には余裕があるため、変速初期などにアクチュエータが目標駆動速度で動作できないことによって発生した偏差が所定値以上になっていたとしても、この偏差を変速制御アクチュエータが補償できる余裕を持っており、また、回転数検出センサ異常等により総変速比と実総変速比の偏差を所定値以上と誤判断した場合に、不必要に同時制御を開始してしまうことを避けることができる。そして、アクチュエータの目標駆動速度が駆動速度限界に達したときに、変速比制御だけではこれ以上偏差の補償ができないと判断して、クラッチ切換制御も開始する。よって、変速遅れを誤判断することによる同時制御の開始を避けることができ、変速制御の余力がある状態では変速比制御のみを行い、マイクロコンピュータなどで構成された制御装置の演算負荷を軽くすることができる。
【0039】また、第6の発明は、動力循環モードの直結モードの切り換えを行いながら総変速比を変化させる際に、無段変速機の変速比の変化方向が小側の場合には、クラッチ切換制御手段、変速比制御手段の順で動作させ、大側の場合には変速比制御手段、クラッチ切換制御手段の順で動作させることにより、無段変速機の変速方向にかかわらず、総変速比の変化方向を維持して迅速に変速を行うことが可能となる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0041】図1は、ハーフトロイダルで構成されたダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機構2を用いて変速比無限大無段変速機を構成した一例を示す。
【0042】図1において、変速比無限大無段変速機はエンジンのクランクシャフト(図示せず)に連結されるユニット入力軸1に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構2と、ギア3a、ギア3bから構成された一定変速機構3(減速機)とを並列的に連結し、これらの出力軸4、3cをユニット出力軸6側へ配設するとともに遊星歯車機構5で連結したものである。
【0043】無段変速機構出力軸4はユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在に支持され、無段変速機構2の出力スプロケット2a、チェーン4b及びスプロケット4aを介して連結されており、無段変速機構出力軸4の一端を遊星歯車機構5のサンギア5aに結合し、他端を直結モードクラッチ10に結合する。
【0044】ギア3bと結合した一定変速機構3の出力軸3cも、ユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在に支持され、動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結されており、遊星歯車機構5のリングギア5cは、変速比無限大無段変速機の出力軸であるユニット出力軸6に結合される。
【0045】そして、ユニット出力軸6の図中右側には、変速機出力ギア7が設けられ、この変速機出力ギア7がディファレンシャルギア8のファイナルギア12と歯合し、ディファレンシャルギア8に結合する駆動軸11は、無段変速機構2の変速比(以下、CVT比icとする)に応じた総変速比(ユニット入力軸回転数/ユニット出力軸回転数=総変速比で、以下、IVT比iiとする)で駆動力が伝達される。
【0046】無段変速機構2は、2組の入力ディスク21、出力ディスク22で、パワーローラ20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティで構成され、パワーローラ20は図示しないトラニオンに回転自在に支持されている。そして、このトラニオンの回転角(傾転角という)を、図2に示すステップモータ36のステップ数に応じて変化させることにより、無段変速機構2のCVT比icと、IVT比iiを無段階に変化させることができる。
【0047】無段変速機構2のCVT比icと、変速比無限大無段変速機全体のIVT比iiの逆数(1/IVT比ii)との関係は、前記従来例と同様に、図12示すようになる。
【0048】この図12において、動力循環モードクラッチ9を締結する一方、直結モードクラッチ10を解放した動力循環モードでは、無段変速機構2と一定変速機構3の変速比の差に応じて、IVT比iiを前進側、後進側共に無限大(図中ギアードニュートラルポイントGNP)を含んで連続的に変化させることができる。
【0049】また、動力循環モードクラッチ9を解放する一方、直結モードクラッチ10を締結する直結モードでは、無段変速機構2のCVT比icに応じた変速制御を行うことができる。
【0050】図2は、変速比無限大無段変速機の制御系を含めたブロック図を示す。
【0051】マイクロコンピュータを主体に構成された変速制御コントロールユニット80には、ユニット入力軸1の回転数Niを検出する入力軸回転数センサ81からの出力、無段変速機構2の出力軸回転数Noを検出する出力軸回転数センサ82からの出力、ユニット出力軸6の回転数No2等から車速VSPを検出する車速センサ83からの出力、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ85からの出力、アクセルペダルの踏み込み量APSを検出するアクセル操作量センサ84からの出力等がそれぞれ入力される。
【0052】なお、入力軸回転数Niに代えて、エンジンのクランク角センサ(図示せず)から得られるエンジン回転数Neを入力するようにしてもよく、また、車速VSPは、ユニット出力軸6の回転数No2に所定の定数を乗じたものとする。
【0053】変速制御コントロールユニット80は、これら各種センサの検出値を運転状態として処理し、アクセル踏み込み量APSと車速VSPに基づいて、図7に示すような変速マップから、目標入力軸回転数tNiを求めて目標IVT比tii0を決定するとともに、運転状態に応じてソレノイド91、92を駆動することで動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ10を選択的に締結し、動力循環モードと直結モードを切り換える。
【0054】なお、動力循環モードクラッチ9の制御は、例えば、ソレノイド91をデューティ制御することにより、締結力を連続的に変更し、同様に、直結モードクラッチ10は、ソレノイド92をデューティ制御することにより、締結力を連続的に変更して、締結及び解放と半クラッチ状態の制御を行う。
【0055】ここで、変速制御コントロールユニット80で行われる変速制御の一例について、図3〜図6のフローチャートを参照しながら以下に詳述する。なお、この制御は、所定時間毎、例えば、10msec毎等に実行される。
【0056】まず、図3のステップS1では、上記各センサが検出した入力軸回転数Ni、出力軸回転数No、車速VSP、アクセル踏み込み量APSなどの運転状態を示す値を読み込む。
【0057】そして、ステップS2では、アクセル踏み込み量APSと車速VSPより、図7に示すマップに基づいて、目標入力軸回転数tNiの演算を求めてから、車速センサ83が検出したユニット出力軸回転数No2で目標入力軸回転数tNiを除したものを、到達IVT比tiiとして演算し、さらに、この到達IVT比tiiに、ローパスフィルタなどによって遅れを持たせた目標IVT比tii0(目標総変速比)を演算する。なお、到達IVT比tiiは、最終的に変速を行う目標値で、目標IVT比tii0は、制御周期毎にステップモータ36を追従させる過渡的な目標値である。
【0058】同時に、図7のマップに破線で示したモード切換線より、アクセル踏み込み量APSと車速VSP対応した目標入力軸回転数tNiの運転モードtModeが、動力循環モードまたは直結モードのどちらとなるかを判定して、目標運転モードtModdsとして設定する。
【0059】なお、図7のマップは、アクセル踏み込み量APSをパラメータとして、車速VSPに応じた目標入力軸回転数tNiを予め設定しいたもので、さらに、図中一点鎖線で示したモード切換線によって、目標入力軸回転数tNiと車速VSPに応じた運転モードModeを予め設定したもので、図中モード切換線の左側の領域が動力循環モードを、同じく、モード切換線の右側が直結モードの領域を示す。
【0060】次に、ステップS3では、検出した入力軸回転数Niとユニット出力軸回転数No2の比から実際のIVT比rii(実総変速比)を、rii=Ni/No2として演算するとともに、現在の運転モードrModeが、図7、図12のマップや、ソレノイド91、92の駆動状態に応じて動力循環モードまたは直結モードのどちらにあるかを判定する。
【0061】一方、ステップS4では、ステップS2で求めた目標IVT比tii0に基づいて、図16のマップから目標CVT比tic(目標変速比)を求める。
【0062】そして、ステップS5では、検出した無段変速機構2の入力軸回転数Niと出力軸回転数Noから、実際のCVT比ric(実変速比)を、ric=Ni/Noとして演算する。
【0063】次に、ステップS6では、モード切換制御フラグFmcが1にセットされているか否かを判定し、既にセットされていればステップS10以降のモード切換制御を実行する一方、モード切換制御フラグFmcが0であれば、ステップS7へ進んで、モード切換を行うか否かの判定を行う。
【0064】すなわち、上記ステップS2で求めた目標運転モードtModeと、ステップS3で求めた現在の運転モードrModeが一致していれば、モード切換制御を行う必要がないため、ステップS9へ進んで、CVT比icの制御を行って到達IVT比tiiへ向けて変速を行う。
【0065】一方、目標運転モードtModeと現在の運転モードrModeが異なる場合には、動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ10の切り換えを行う必要があるので、ステップS8へ進んで、モード切換制御フラグFmcを1にセットした後、図4のステップS11へ進む。
【0066】また、上記ステップS6の判定で、モード切換制御フラグFmcが1にセットされている場合には、モード切換制御を行っている途中であるため、ステップS10へ進んで、UP時制御フラグFupが1にセットされているか否かを判定する。
【0067】このUP時制御フラグFupが1であれば、目標CVT比ticはアップシフト(変速比が小側への変速)となるため、図4のステップS13に進む一方、UP時制御フラグFupが0の場合には、後述するように、他方のDOWN時制御フラグFdownが1にセットされているため、図4のステップS17に進む。
【0068】上記ステップS8で、モード切換制御フラグFmcを1にセットした後のステップS11では、モード切換制御を開始するため、上記ステップS5で求めた実CVT比ricと、ステップS4で求めた目標CVT比ticの大小関係から、CVT比icの変化がアップシフトとダウンシフトのどちらになるかを判定する。
【0069】すなわち、実CVT比ricよりも目標CVT比ticの方が小さければ、アップシフトであるためステップS12へ進む一方、実CVT比ricよりも目標CVT比ticの方が大きければ、ダウンシフト(変速比が大側への変速)であるためステップS16へ進む。
【0070】CVT比がアップシフトとなるステップS12では、UP時制御フラグFupを1にセットした後、ステップS13へ進んで、後述するように、クラッチの切り換えを行った後に、変速比制御を行う。
【0071】そして、ステップS14では、クラッチ切換制御フラグFcとCVT比制御フラグFicが共に0となってリセットされていれば、クラッチの切り換えとCVT比の制御がすべて終了したと判定してステップS15へ進み、UP時制御フラグFupを0にリセットした後にステップS20へ進む。
【0072】一方、クラッチ切換制御フラグFcとCVT比制御フラグFicのうちの一方が1のときには、まだアップシフト時のモード切換制御が終了していないため、そのまま処理を終了する。
【0073】また、上記ステップS11の判定で、CVT比がダウンシフトとなるステップS16では、DOWN時制御フラグFdownを1にセットした後、ステップS17へ進んで、後述するように、変速比制御を行った後に、クラッチの切り換え制御を行う。
【0074】そして、ステップS18では、クラッチ切換制御フラグFcとCVT比制御フラグFicが共に0となってリセットされていれば、CVT比の制御とクラッチの切り換えがすべて終了したと判定してステップS19へ進み、DOWN時制御フラグFdownを0にリセットした後にステップS20へ進む。
【0075】一方、クラッチ切換制御フラグFcとCVT比制御フラグFicのうちの一方が1のときには、まだダウンシフト時のモード切換制御が終了していないため、そのまま処理を終了する。
【0076】上記ステップS15、S19で、UP時制御フラグFupまたはDOWN時制御フラグFdownをリセットした後には、ステップS20へ進み、モード切換制御フラグFmcを0にリセットして、変速比の制御と、クラッチの切り換え制御が終了する。
【0077】次に、上記図4のステップS13で行われる、CVT比のアップシフト時のモード切換制御について、図5のサブルーチンを参照しながら以下に詳述する。
【0078】まず、図5のステップS21では、クラッチ切換制御フラグFcが1にセットされていれば、ステップS24のクラッチ切換制御へ進む一方、0にリセットされている場合には、ステップS22へ進む。
【0079】ステップS22では、CVT比制御フラグFicが1にセットされていれば、ステップS28のCVT比制御へ進む一方、0にリセットされている場合には、第1回目のループであるため、ステップS23へ進んで、クラッチ切換制御フラグFcを1にセットしてからステップS24へ進み、まず、クラッチの切換制御を行う。
【0080】ステップS24で行われるクラッチの切換制御は、ソレノイド91、92の駆動により行われ、例えば、動力循環モードから直結モードへ移行する場合では、動力循環モードクラッチ9を徐々に解放して半クラッチ状態としながら、直結モードクラッチ10を徐々に締結して半クラッチ状態とし、この後、直結モードクラッチ10を締結してから動力循環モードクラッチ9を解放する。
【0081】次に、ステップS25では、クラッチの切り換えが終了したか否かを判定し、切り換えが終了していなければ、そのままサブルーチンを終了する一方、切り換えが終了していれば、ステップS26へ進んでクラッチ切換制御フラグFcを0にリセットしてから、ステップS27でCVT比制御フラグFicを1にセットしてサブルーチンを終了する。
【0082】なお、切り換え終了の判定は、図12に示したように、CVT比icを固定した状態でIVT比iiのみが変化するため、例えば、同一のCVT比icaで動力循環モードのIVT比iicから、直結モードのIVT比iiaに変化したことを判定すればよい。
【0083】一方、ステップS28のCVT比制御では、上記図3のステップS4で求めたHi側(小側)の目標CVT比ticとなるように、ステップモータ36を駆動し、ステップS29で、実CVT比ricが目標CVT比ticとなるまで、ステップS28の処理を繰り返す一方、実CVT比ricが目標CVT比ticに一致すると、ステップS30でCVT比制御フラグFicを0にリセットしてサブルーチンを終了する。
【0084】したがって、CVT比icがアップシフトとなるモード切換制御では、まず最初に、クラッチの切換制御を完了させて運転モードを変更し、その後、CVT比icをHi側(小側)へ向けて変速することになる。
【0085】すなわち、図12において、図中A点からB点へIVT比iiをダウンシフトする場合、まず、CVT比をicaに固定した状態で、締結するクラッチを直結モードクラッチ10から動力循環モードクラッチ9に切り換えて、IVT比をiiaからiicにダウンシフトする。
【0086】次に、ステップモータ36を駆動して、CVT比icaをicbまで減少させてアップシフトすると、IVT比はiicからさらにiibまでLow側(大側)に変速し、A点、C点、B点と、順次ダウンシフトすることになり、図13の実線に示したように、IVT比iiの変化方向を維持して理想的に変速を行うことができ、前記従来例のように、変速中にIVT比iiの変化方向が逆転することがなく、常時IVT比iiの変化方向を維持することが可能となって、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0087】あるいは、図12において、図中C点からD点へIVT比iiをアップシフトする場合、まず、CVT比をicaに固定した状態で、締結するクラッチを動力循環モードクラッチ9から直結モードクラッチ10に切り換えて、IVT比をiicからiiaにアップシフトする。
【0088】次に、ステップモータ36を駆動して、CVT比icaをicbまで減少させてアップシフトすると、IVT比はiiaからさらにiidまでHi側(小側)に変速し、図中C点、A点、D点と、順次アップシフト方向に変化することになり、前記従来例のように、変速中に変速の方向が逆転することがなく、常時IVT比iiの変化方向を維持することが可能となって、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0089】次に、上記図4のステップS17で行われる、CVT比のダウンシフト時のモード切換制御について、図6のサブルーチンを参照しながら以下に詳述する。
【0090】まず、図6のステップS32では、CVT比制御フラグFicが1にセットされていれば、ステップS37のCVT比制御へ進む一方、0にリセットされている場合には、ステップS32へ進む。
【0091】ステップS32では、クラッチ切換制御フラグFcが1にセットされていれば、ステップS34のクラッチ切換制御へ進む一方、0にリセットされている場合には、第1回目のループであるため、ステップS33へ進んで、CVT比制御フラグFicを1にセットしてからステップS37へ進み、まず、CVT比icの制御を行う。
【0092】ステップS37で行われるCVT比の制御では、上記図3のステップS4で求めたLow側(大側)の目標CVT比ticとなるように、ステップモータ36を駆動し、ステップS38で、実CVT比ricが目標CVT比ticとなるまで、ステップS37の処理を繰り返す一方、実CVT比ricが目標CVT比ticに一致すると、ステップS39でCVT比制御フラグFicを0にリセットした後に、ステップS40でクラッチ切換制御フラグFcを1にセットしてからサブルーチンを終了する。
【0093】一方、ステップS34で行われるクラッチの切換制御は、ソレノイド91、92の駆動により行われ、例えば、直結モードから動力循環モードへ移行する場合では、直結モードクラッチ10を徐々に解放して半クラッチ状態としながら、動力循環モードクラッチ9を徐々に締結して半クラッチ状態とし、この後、動力循環モードクラッチ9を締結してから直結モードクラッチ10を解放する。
【0094】次に、ステップS35では、クラッチの切り換えが終了したか否かを判定し切り換えが終了していなければ、そのままサブルーチンを終了して、ステップS34の処理を繰り返して実行する一方、切り換えが終了していれば、ステップS36へ進んでクラッチ切換制御フラグFcを0にリセットしサブルーチンを終了する。
【0095】したがって、CVT比icがダウンシフトとなるクラッチ切換制御では、まず最初に、CVT比icをLow側(大側)へ向けて変速させておき、次に、クラッチの切換制御を行うことになる。
【0096】すなわち、図12において、図中A点からB’点へIVT比iiがダウンシフトする場合では、まず、ステップモータ36を駆動して、CVT比icaをicb’まで増大させてダウンシフトを行うと、IVT比はiiaからiid’までLow側(大側)に変速する。
【0097】次に、CVT比をicb’に固定した状態で、締結するクラッチを直結モードクラッチ10から動力循環モードクラッチ9へ切り換えると、IVT比はiid’からiib’にダウンシフトし、図中A点、D’、B’点と、順次ダウンシフトすることになり、前記従来例のように、変速中に変速の方向が逆転することがなくなって、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0098】あるいは、図12において、図中C点からD’点へIVT比iiがアップシフトする場合では、まず、ステップモータ36を駆動して、CVT比icaをicb’まで増大させると、IVT比はiicからiib’までHi側(小側)にアップシフトする。
【0099】次に、CVT比をicb’に固定した状態で、締結するクラッチを動力循環モードクラッチ9から直結モードクラッチ10へ切り換えると、IVT比はiib’からiid’にアップシフトし、図中C点、B’、D’点と、順次アップシフトすることになり、前記従来例のように、変速中に変速の方向が逆転することがなくなって、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0100】以上説明したように、回転同期点RSPを挟んでIVT比iiを迅速に変化させるときには、CVT比icの変速方向によって、クラッチ切換制御とCVT比icの制御の順序を次のように設定する。
【0101】
【表1】

すなわち、運転状態の変化によって、IVT比iiの変化方向が決定されるが、このとき現在のCVT比icに対する目標CVT比ticの大小関係に応じて、クラッチ切換制御とCVT比制御の順序を変更することにより、IVT比iiの変化方向を維持することで、運転者に違和感を与えることなく、クラッチの切換を行って、迅速な変速を行うことが可能となり、変速比無限大無段変速機の運転性を向上させることが可能となるのである。
【0102】また、クラッチ切換制御と無段変速機2の変速比制御を順次行うのに加えて、一方の制御が終了してから、他方の制御を行うようにしたため、動力循環モードの直結モードの切り換えを、両者の運転モードでユニット出力軸の回転数が一致する回転同期点以外で行って、キックダウン変速や足離しアップシフトなどの急変速に追従しながら、IVT比iiの変化方向が変動するのを確実に防ぐことができるのである。
【0103】図8〜図11は、第2の実施形態を示し、前記第1実施形態の図4に示したステップS13で行われるCVT比のアップシフト時のモード切換制御と、ステップS17で行われるCVT比のダウンシフト時のモード切換制御について、それぞれ、CVT比制御とクラッチ切換制御のタイミングを変更したもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0104】以下、図8、図9のサブルーチンを参照しながら詳述する。
【0105】まず、図8のステップS121では、クラッチ切換制御フラグFcが1にセットされていれば、ステップS122のクラッチ切換制御へ進む一方、0にリセットされている場合には、ステップS132へ進む。
【0106】ステップS122で行われるクラッチの切換制御は、上記ソレノイド91、92の駆動により行われ、例えば、動力循環モードから直結モードへ移行する場合では、動力循環モードクラッチ9を徐々に解放して半クラッチ状態としながら、直結モードクラッチ10を徐々に締結して半クラッチ状態とし、この後、直結モードクラッチ10を締結してから動力循環モードクラッチ9を解放する。
【0107】次に、ステップS123では、クラッチの切り換えが終了したか否かを判定し、切り換えが終了していなければ、ステップS126に進む一方、切り換えが終了していれば、ステップS124へ進んでクラッチ切換制御フラグFcを0にリセットしてから、ステップS125でCVT比制御フラグFicを1にセットした後にステップS126へ進む。
【0108】なお、切り換え終了の判定は、開放側のクラッチ油圧(アップシフト時では動力循環モードクラッチ9の油圧≒伝達トルク)がリターンスプリング相当油圧kPrtn以上となり、かつ、締結側のクラッチとの回転差がゼロになったときとする。
【0109】クラッチの構造上、油圧がリターンスプリング相当圧kPrtn以下のときは、クラッチはトルクを伝達できないため、伝達トルクはゼロである。
【0110】次に、ステップS126で、CVT比制御フラグFicが1にセットされていれば、CVT比icとクラッチ制御を同時に制御中であるため、ステップS132へ進んでCVT比制御を実行し、CVT比制御フラグFicが0のときにはクラッチ制御のみを行っている状態であるため、ステップS127へ進んで、実IVT比riiが目標IVT比tii0に追従できているかを判定する。
【0111】ステップS127では、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrが、所定値kerrより大きいときは、実IVT比riiが目標IVT比tii0に対して大きく遅れていると判断してステップS128へ進み、そうでなければ、目標値から大きく遅れていないため、計算負荷を低く保つためにCVT変速制御は開始せず(CVT比制御フラグFic=0のまま)にサブルーチンを終了する。
【0112】ステップS128では、目標IVT比tii0と実IVT比riiから、IVT比がアップシフト状態か否かを判断し、アップシフトならばステップS129へ、ダウンシフトならばステップS130へ進む。
【0113】ここでは、同時制御の開始を望まれているが、開放側のクラッチ油圧(動力循環モードクラッチ9の油圧)が完全に抜けて、開放側の伝達トルクがゼロになっていない状態でCVT比制御を始めてしまうと、開放側クラッチの引きずりのために逆変速が発生する可能性がある。
【0114】そこで、ステップS129、S130で、開放側クラッチの伝達トルクを発生させる開放側クラッチ油圧の指令値がリターンスプリング相当圧kPrtn以下になったかを調べ、リターンスプリング相当圧kPrtn以下のときは伝達トルクはゼロであると推定してステップS131へ進み、CVT比制御を開始するためにCVT変速制御フラグFicを1にセットした後に、ステップS132で、CVT比制御をクラッチ制御と同時に実行する。
【0115】開放側クラッチ油圧の指令値がリターンスプリング相当圧kPrtnより大きいときは伝達トルクはゼロではないと推定して、CVT比制御は開始せずにサブルーチンを終了する。
【0116】次に、ステップS132で行われるCVT比の制御では、上記図3のステップS4で求めたLow側(大側)の目標CVT比ticとなるように、ステップモータ36を駆動し、ステップS133で、実CVT比ricが目標CVT比ticとなるまで、ステップS132の処理を繰り返す一方、実CVT比ricが目標CVT比ticに一致すると、ステップS134でクラッチ切換制御フラグFcを1にリセットし、ステップS135でCVT比制御フラグFicを0にリセットしてからサブルーチンを終了する。
【0117】したがって、CVT比icがアップシフトとなるモード切換制御では、まず最初に、クラッチの切換制御を開始し、その後、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrが所定値kerrより大きく、変速が遅れていると判断すると、CVT比制御も開始させ、クラッチの切り換え制御とCVT比icの制御を同時に実行することで素早い変速が可能となる。
【0118】この判断基準である偏差IVTerrを比較する所定値kerrは、実験などにより求めたもので、違和感の無い運転性が確保されるときの、過渡的な目標値(目標IVT比tii0)と実際の総変速比riiのずれの限界値であり、過渡的な目標値との偏差がこの値を超えると変速の違和感を感じる。
【0119】すなわち、図12において、図中A点からB点へIVT比iiをダウンシフトする場合、まず、CVT比をicaに固定した状態、で、締結するクラッチを直結モードクラッチ10から動力循環モードクラッチ9に徐々に切り換えて、実IVT比をA点からC点へ向かって変更し(IVT比iiaからiic)、その途中の図中E点で偏差IVTerrが所定値kerrを超え、開放側クラッチの伝達トルクもゼロになったため、CVT比制御も開始し、CVT比はicaからicbへ向かって変化するため、E点からB点へ向かって変速し、したがって、C点へ遠回りすることなく、IVT比は図13の実線に示したように、iiaからiibにIVT比iiの変化方向を維持して理想的に変速を行うことができ、前記従来例のように、変速中にIVT比iiの変化方向が逆転することがなく、常時IVT比iiの変化方向を維持することが可能となり、さらに速い目標値の変化に対しても追従性が良好となるため、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0120】あるいは、図12において、図中C点からD点へIVT比iiをアップシフトする場合、まず、CVT比をicaに固定した状態で、締結するクラッチを動力循環モードクラッチ9から直結モードクラッチ10に徐々に切り換えて、偏差が所定値kerrを超え、動力循環モードクラッチの油圧指令値がリターンスプリング圧kPrtnを下回ったところでCVT比制御も開始する。
【0121】そして、ステップモータ36を駆動して、CVT比icaをicbまで減少させてアップシフトすると、IVT比はiicからiidまでHi側(小側)に素早く変速し、図中C点、E点、D点と、順次アップシフト方向に変化することになり、前記従来例のように、変速中に変速の方向が逆転することがなく、常時IVT比iiの変化方向を維持しながら迅速な変速が可能となって、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0122】次に、上記図4のステップS17で行われる、CVT比のダウンシフト時のモード切換制御の他の一例について、図9のサブルーチンを参照しながら以下に詳述する。
【0123】まず、図9のステップS141では、CVT比制御フラグFicが1にセットされていれば、ステップS142のCVT比制御へ進む一方、0にリセットされている場合には、ステップS151のクラッチ切換制御へ進む。
【0124】ステップS142で行われるCVT比の制御では、上記図3のステップS4で求めたLow側(大側)の目標CVT比ticとなるように、ステップモータ36を駆動し、ステップS143で、実CVT比ricが目標CVT比ticとなるまで、ステップS142の処理を繰り返す一方、実CVT比ricが目標CVT比ticに一致すると、ステップS144でCVT比制御フラグFicを0にリセットし、ステップS145でクラッチ切換制御フラグFcを1にセットする。
【0125】また、CVT比制御中でも、ステップS146でクラッチ切換制御フラグFcが1であり、すなわち同時制御中であるならば、S151へ進んでクラッチ切換制御を実行する。
【0126】ステップS146でクラッチ切換制御フラグFcが0ならば、同時制御中ではないが、ステップS147で目標IVT比tii0と実際のIVT比riiの偏差IVTerrの大きさを調べ、この偏差IVTerrが所定値kerrより大きいと、目標IVT比tii0に対し実際のIVT比iiが大きく遅れている可能性がある。
【0127】そこで、ステップS148でステップモータ目標駆動速度vStpを算出し、ステップS149で、このステップモータ目標駆動速度vStpがステップモータ36の駆動速度限界vmaxを超えていれば、変速制御のみではこれ以上偏差の補償ができないと判断して、ステップS150へ進み、クラッチ切換制御フラグFcを1にセットして、変速制御とクラッチ切換制御との同時制御に移行する。
【0128】なお、ステップモータ目標駆動速度vStpは、IVT比とステップモータステップ数の関係を示す図10のマップで、目標IVT比tii0からステップ数を求め、前回値との差を制御周期で除することで求める。
【0129】また、ステップS149で、ステップモータ目標駆動速度vStpがステップモータ36の駆動速度限界vmaxを超えていなければ、ステップモータ36に変速制御で偏差を補償する余裕があるため、まだクラッチ切り換え制御との同時制御には開始せずにサブルーチンを終了する。
【0130】ステップS151で行われるクラッチの切換制御は、ソレノイド91、92の駆動により行われ、例えば、直結モードから動力循環モードへ移行する場合では、直結モードクラッチ10を徐々に解放して半クラッチ状態としながら、動力循環モードクラッチ9を徐々に締結して半クラッチ状態とし、この後、動力循環モードクラッチ9を締結してから直結モードクラッチ10を解放する。
【0131】次に、ステップS152では、クラッチの切り換えが終了したか否かを判定し切り換えが終了していなければ、そのままサブルーチンを終了して、ステップS151の処理を繰り返して実行する一方、切り換えが終了していれば、ステップS153へ進んでクラッチ切換制御フラグFcを0にリセットし、同時にステップS154でCVT比制御フラグFicを0にリセットし、サブルーチンを終了する。
【0132】したがって、CVT比icがダウンシフトとなるモード切換制御では、まず最初に、CVT比icをLow側(大側)へ向けて変速させておき、その後、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrが所定値kerrより大きく、変速が遅れていると判断すると、クラッチの切換制御も開始されることになる。
【0133】すなわち、図12において、図中D点からB’点へIVT比iiがダウンシフトする場合では、まず、ステップモータ36を駆動して、CVT比icbをicb’まで増大させてダウンシフトを行うと、IVT比はiidからiib’に向かってLow側(大側)に変速する。
【0134】このとき、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrが所定値kerrより大きいときは、変速が遅れていると判断して、クラッチ切換制御も開始し、CVT変速比制御とクラッチ切換制御を同時に行う。
【0135】そして、同時制御により、図中D点、A点、B’点と変速することになり、D’点を通過する遠回りをせずに、A点からB’点へ直接ダウンシフトすることで、前記従来例のように、変速中に変速の方向が逆転することがなく、かつ迅速な変速が可能となり、違和感のない急、変速を実現することが可能となる。
【0136】あるいは、図12において、図中B点からD’点へIVT比iiがアップシフトする場合では、まず、ステップモータ36を駆動して、CVT比icbをicb’に向かって増大させる。
【0137】そして、目標IVT比と実IVT比の偏差IVTerrが所定値kerrより大きくなると、クラッチ切換制御も開始することで、図中B点、C点、D’点、と変速することになり、B’点を通過する遠回りをせずに、C点からD’点へ直接アップシフトすることになり、前記従来例のように、変速中に変速の方向が逆転することがなく、素早い変速が可能となり、違和感のない急変速を実現することが可能となる。
【0138】さらに、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrが所定値kerrより大きくなったとき、あるいは、ステップモータ36の目標駆動速度vStpが駆動速度限界vmaxを超えたときから、同時制御に移行するようにしたため、変速制御コントロールユニット80の演算が過大になるのを防ぎ、マイクロコンピュータに要求される演算性能を抑制して製造コストの上昇を抑えながらも、回転同期点RSPを挟んだ変速を迅速に行うことが可能となるのである。
【0139】すなわち、図11に示すように、時刻T0からIVT比iiのダウンシフトを行う場合では、ステップモータ36は時刻T2で目標駆動速度に達するが、変速を開始した、時刻T0からT2までの間は、目標値どおりの速度で変速できていないことになり、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrは広がる。
【0140】したがって、時刻T1で同時制御を開始する所定値kerrを超えるが、このときの偏差IVTerrは初期応答遅れによるものであり、ステップモータ36の駆動速度には余裕があるので、目標駆動速度vStpが上昇した時刻T2からT3で偏差IVTerrは解消されている。
【0141】その後、時刻T4になると、目標駆動速度vStpがステップモータ36の駆動速度限界vmaxを超えてしまい、以後、変速制御のみでは偏差IVTerrの補償ができずに頬に広がるが、時刻T5で偏差IVTerrが所定値kerrに達すると、同時制御の開始によってクラッチ切換制御が開始され、偏差IVTerrを解消しながら到達IVT比tiiへ向けて迅速な変速を実現できるのである。
【0142】また、図12において、図中D点からB’点へダウンシフトする場合では、まず、点DからD’への変速を開始する。
【0143】しかし、目標IVT比tii0の変化(=変速速度)が、図15に示したように速く、この変速速度に対してステップモータ36の駆動速度が遅い場合、目標IVT比tii0(図中実線)に対して実IVT比rii(図中一点鎖線)が追いつかない状況が発生する。
【0144】そこで、目標IVT比tii0と実IVT比riiの偏差IVTerrが所定値kerrを超えて、目標値に対して実IVT比riiが大きく遅れていると判定したときに、クラッチ切換制御も同時に開始する。
【0145】例えば、図12において、点DからD’への変速中に、図中A点で偏差が所定値kerrを超えたとすると、クラッチ切換制御も開始されて、変速制御とクラッチ切換制御が同時に実行されることで、図12のA点からB’点へ変速し、D点に遠回りすることなく、D点、A点、B’点という経路で変速が行われる。
【0146】したがって、クラッチ切換制御が変速制御の遅れを補い、ステップモータ36の駆動速度が遅い場合にはクラッチ切換制御が補助することになって、目標値への追従性を向上させることができる。
【0147】さらに、より速い目標IVT比tii0の変化に対応できるようになるため、キックダウンなどの急変速を素早く行うことができるため、運転性を向上させることができる。
【0148】上記効果は、図12のB’点からD点へのアップシフトのように、クラッチ切換制御を開始してから、変速制御を同時に行う場合でも同様の効果を得ることができる。
【0149】なお、上記実施形態においては、到達IVT比tiiから目標IVT比tii0、目標CVT比ticを求めたが、到達IVT比tiiから最終的な目標とするCVT比を求め、このCVT比にローパスフィルタをかけたものを、過渡的な目標CVT比としてもよい。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年5月11日(2000.5.11)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−74131(P2001−74131A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願2000−138161(P2000−138161)