| 【発明の名称】 |
差動装置を備えた最終減速装置のブリーザ構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】関 文三
【氏名】千田 明生
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】ハウジング52の内周面に、差動装置50に向かって延びる複数個のオイル止めリブ52g,52h,52j,52kを設けて、差動装置50で掻き上げたオイルがブリーザ室92に向かうことを阻止するようにし、且つ、隣り合うオイル止めリブ52g,52h,52j,52k同士の間隔を不揃いにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングの上部をブリーザ室とし、このブリーザ室と外部とをブリーザパイプで連通させるとともに、ハウジング内に差動装置を回転自在に収納した最終減速装置において、前記ハウジングの内周面に、差動装置に向かって延びる複数個のオイル止めリブを設けて、差動装置で掻き上げたオイルが前記ブリーザ室に向かうことを阻止するようにし、且つ、隣り合うオイル止めリブ同士の間隔を不揃いにしたことを特徴とする差動装置を備えた最終減速装置のブリーザ構造。 【請求項2】 前記オイル止めリブは、溜まったオイルが流下するように上面を下り勾配にし、下面は、上昇するオイルを直に受け止める受け面とすることで、上・下面の形状を異ならせたことを特徴とする請求項1記載の差動装置を備えた最終減速装置のブリーザ構造。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はコストアップを抑え、静粛性や耐久性を向上させ、更に、オイル持出しを防止するのに好適な差動装置を備えた最終減速装置のブリーザ構造に関する。 【0002】 【従来の技術】歯車、軸受、潤滑油等を収納する歯車箱では、温度上昇による内圧の変化をなくすために歯車箱の上部に連通管状のブリーザ構造を設けて、歯車箱の内圧と大気圧とを常に等しくし、内圧の上昇によりシール部分からのオイル洩れ等を防ぐ。このようなブリーザ構造としては、例えば、実公昭57−51940号公報「最終減速機」に記載されたものが知られている。 【0003】上記技術には、同公報の第4図に示される通り、リアカバー5の内側にリブ8,8A等で囲まれる空間にエアブリーザ9の空気導通孔9Aを臨ませ、ハイポイドギヤ1の回転により飛散したオイルが空気導通孔9A及びリブ8Aの上面に届かないようにリアカバー5にシュラウド10を設けた最終減速機が記載されている。 【0004】また、同公報の第5図に示される通り、ハウジング4とリアカバー5との間に介在させたパッキン6の一部を突出させてオイルが空気導通孔9A及びリブ8Aの上面に届かないようにした最終減速機の別の実施例が記載されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記技術では、リアカバー5にシュラウド10を取付ける場合、シュラウド10及びこのシュラウド10を取付けるためのボルト等が部品として増え、コストアップとなる。また、パッキン6の一部を突出させる場合、薄く剛性の小さいパッキンが振動しやすくなり、静粛性や耐久性の面で劣る。 【0006】更に、ハイポイドギヤ1が高速に回転すると、飛散するオイルの速度及びオイル量が増加し、リブ8Aとシュラウド10との隙間、又はリブ8Aとパッキン6の延長部との隙間から空気導通孔9Aやリブ8A上面に至るオイルが多くなることが考えられる。 【0007】そこで、本発明の目的は、差動装置を備えた最終減速装置において、コストアップを抑え、静粛性や耐久性を向上させることができ、更に、差動装置の回転数が増加しても外部へのオイル持出しを防止することができるブリーザ構造を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1は、ハウジングの上部をブリーザ室とし、このブリーザ室と外部とをブリーザパイプで連通させるとともに、ハウジング内に差動装置を回転自在に収納した最終減速装置において、前記ハウジングの内周面に、差動装置に向かって延びる複数個のオイル止めリブを設けて、差動装置で掻き上げたオイルが前記ブリーザ室に向かうことを阻止するようにし、且つ、隣り合うオイル止めリブ同士の間隔を不揃いにしたことを特徴とする。 【0009】差動装置で掻き上げたオイルがブリーザ室に向かうことをハウジングの内周面に設けた複数個のオイル止めリブで阻止するようにし、且つ、隣り合うオイル止めリブ同士の間隔を不揃いにすることで、差動装置の回転数が高速になるにつれて、隣り合うオイル止めリブの距離の大きい箇所から小さい箇所へオイルを溜める場所を変化させ、阻止するオイルの容積を次第に小さくする。 【0010】ハウジングにオイル止めリブを設けることで、ハウジングにオイル止めのための他部品を取付ける必要がなくなり、部品数の増加を抑えることができるとともに、振動による音や破損等が発生しない。また、隣り合うオイル止めリブ同士の間隔を不揃いにすることで、差動装置の回転数が高速になるにつれて、阻止するオイルの容積を次第に小さくすることができ、ブリーザ室へ向かうオイルの阻止を確実に行うことができる。 【0011】請求項2は、オイル止めリブを、溜まったオイルが流下するように上面を下り勾配にし、下面は、上昇するオイルを直に受け止める受け面とすることで、上・下面の形状を異ならせたものとしたことを特徴とする。 【0012】下り勾配にしたオイル止めリブ上面を溜まったオイルが流下し、受け面としたオイル止めリブ下面で上昇するオイルを受け止める。 【0013】この結果、オイル止めリブの上面にオイルが溜まらず、また、オイル止めリブの下面でオイルの流れを阻止するので、オイルをハウジング内の下部に留めておくことができる。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。図1は本発明に係る最終減速装置を搭載した鞍乗型車両の斜視図であり、鞍乗型車両10は、車体フレーム11に回転自在に取付けたハンドル12と、このハンドル12に図示せぬステアリング装置を介して操舵可能に連結するとともに車体フレーム11に図示せぬアームを介して上下動可能に取付けた前輪13,14(符号13は左前輪、符号14は右前輪)と、車体フレーム11の上部に取付けたシート15と、このシート15の下方に配置したエンジン及び変速機からなるパワーユニット16と、このパワーユニット16で後述する動力伝達機構を介して前輪13,14とともに駆動する後輪17,18(符号17は左後輪、符号18は右後輪(不図示))とからなる。 【0015】21は動力伝達機構の構成要素の一つである最終減速装置としてのフロントファイナルアセンブリであり、後述する差動装置を内蔵し、左前輪13と右前輪14との間に介在させた装置である。なお、22はフロントバンパ、23はアンダカバー、24はフロントフェンダ、25はヘッドランプ、26はリヤフェンダ、27はマフラである。 【0016】図2は本発明に係る最終減速装置を搭載した鞍乗型車両の動力伝達機構を示す斜視図であり、動力伝達機構30は、パワーユニット16の下部から前方に延ばしたフロントプロペラシャフト31と、このフロントプロペラシャフト31の先端に連結したフロントファイナルアセンブリ21と、このフロントファイナルアセンブリ21の左右に連結したフロントドライブシャフト32,33と、これらのフロントドライブシャフト32,33のそれぞれの先端に連結したハブ34,35と、パワーユニット16の下部から後方に延ばしたリヤプロペラシャフト36と、このリヤプロペラシャフト36の後端に連結したリヤファイナルアセンブリ37と、このリヤファイナルアセンブリ37の左右に貫通したリヤドライブシャフト38と、このリヤドライブシャフト38のそれぞれの先端に連結したハブ42,43とからなる。なお、45,46,47はリヤプロペラシャフト36及びリヤドライブシャフト38の左右をそれぞれ覆うチューブ、48はチューブ45,47を支持する支持部材である。ハブ34,35,42,43は、それぞれ図1に示した左前輪13、右前輪14、左後輪17、右後輪18を取付ける部材である。 【0017】図3は本発明に係る差動装置の分解斜視図であり、フロントファイナルアセンブリ21は、差動装置としてのデファレンシャルケース組立体50と、このデファレンシャルケース組立体50をベアリング51,51を介して回転自在に収納するハウジング52と、このハウジング52に後方からベアリング53を介して挿入するドライブピニオン54と、このドライブピニオン54をハウジング52に回転自在に取付けるベアリング55と、このベアリング55の抜け止めを行うロックナット56と、ドライブピニオン54の端部に取付けるジョイント58とからなる。 【0018】ここで、52aはハウジング本体、52bはハウジングカバー、61,61はオイルシール、62,63はボルト、64,64はスペーサ、65はメンテナンス穴用プラグ、66はOリング、67はスペーサ、68はオイルシール、69はOリングである。 【0019】図4は本発明に係る差動装置の分解斜視図であり、デファレンシャルケース組立体50は、デファレンシャルケース71と、このデファレンシャルケース71内に収納する収納部品72とからなる。デファレンシャルケース71は、筒状のケース本体73と、このケース本体73の一方の開口部に取付ける左キャップ部(後述する。)にリングギヤ75aを一体成形したリングギヤ付きキャップ75と、ケース本体73の他方の開口部に取付ける右キャップ76とからなる。 【0020】収納部品72は、デファレンシャルケース71と一体的に回転する二種類の入力側ブロック77・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。),78・・・と、これらの入力側ブロック77・・・,78・・・を相対滑り可能に挟み込むとともに各ブロックとの摩擦力で独立して回転することができる左・右出力側カム81,82と、これらの左・右出力側カム81に隣接させたスラストベアリング83,83と、スラストワッシャ84,84と、皿ばね85とからなる。なお、スラストベアリング83,83は省いてもよい。 【0021】図5は図2の5−5線断面図である。フロントファイナルアセンブリ21は、左キャップ部74にリングギヤ75aを一体成形してリングギヤ付きキャップ75とし、リングギヤ付きキャップ75の内側に皿ばね85、スラストワッシャ84及びスラストベアリング83を介して左出力側カム81を配置し、リングギヤ付きキャップ75にボルト87でケース本体73を取付け、このケース本体73内に左出力側カム81に接するように入力側ブロック77・・・,78・・・を周方向に並べ、これらの入力側ブロック77・・・,78・・・に接するように右出力側カム82を配置し、この右出力側カム82にスラストベアリング83、スラストワッシャ84を介して右キャップ76を隣接させるとともに、この右キャップ76をケース本体73に取付けることで、デファレンシャルケース組立体50を組立てた装置である。 【0022】また、フロントファイナルアセンブリ21は、ハウジング本体52aのジャーナル部52cにベアリング51を介してリングギヤ付きキャップ75の円筒部75bを取付け、ハウジングカバー52bのジャーナル部52dにベアリング51を介して右キャップ76の円筒部76aを取付けるとともにハウジング本体52aにハウジングカバー52bをボルト62・・・(図3参照),63・・・(1個のみ図示)で取付けることで、ハウジング52を組立て、且つハウジング52内にデファレンシャルケース組立体50を回転自在に取付けた装置である。 【0023】更に、フロントファイナルアセンブリ21は、ハウジング本体52aの後部円筒部52e内にベアリング53を介してドライブピニオン54の先端部54aを取付けるとともに、後部円筒部52eにベアリング55を介してドライブピニオン54の中間部54bを取付けることでリングギヤ75aにドライブピニオン54を噛み合わせ、後部円筒部52eの内周部にロックナット56をねじ込んでベアリング55の抜け止めを図り、ドライブピニオン54の後端部にジョイント58を取付け、後部円筒部52eの内周部とジョイント58との間にオイルシール68を介在させた装置である。 【0024】入力側ブロック77,78は、それぞれ凸部77a,78aを備え、ケース本体73の内面に形成した軸方向溝73a・・・,73b・・・にそれぞれ凸部77a,78aを嵌合させることでケース本体73と一体的に回転することができるようにした部材である。 【0025】左・右出力側カム81,82は、円筒部81a,82aにそれぞれフロントドライブシャフト32,33をスプライン結合することで、左・右前輪13,14(図1参照)に駆動力を伝える部材である。ドライブピニオン54は、ジョイント58にフロントプロペラシャフト31(図2参照)をスプライン結合することで、パワーユニット16(図1参照)からの駆動力をデファレンシャルケース組立体50へ伝える部材である。 【0026】以上説明したように、本発明のデファレンシャルケース組立体50は、デファレンシャルケース71の一部である左キャップ部74にリングギヤ75aを一体成形したものであることを特徴とする。 【0027】上記構成により、従来のような、ケースとリングギヤとが別体であったものに比べて、デファレンシャルケース71の左キャップ部74にリングギヤ75aを一体成形して一部品とし、また、従来の締結用ボルトが不要となるため、部品数を減らすことができるととも成形が容易になり、製造コストを下げることができる。 【0028】図6(a)〜(c)は本発明に係る差動装置の入力側ブロックを説明する説明図である。(a)はデファレンシャルケース組立体50からリングギヤ付きキャップ75(図5参照)及び左出力側カム81を外して内部を見た状態を示す。入力側ブロック77,78は、それぞれ凸部77a,78aをケース本体73の内面の軸方向溝73a・・・,73b・・・に嵌合させるようにして周方向に2個ずつ交互に並べたものである。 【0029】(b)はケース本体73と、このケース本体73に噛み合う入力側ブロック77とを示す(a)の要部拡大図である。軸方向溝73aは略台形状の溝であり、また、凸部77aは軸方向溝73aの形状に略相似な形状とした部分である。ここで、凸部77aの上部幅をL1とする。 【0030】(c)はケース本体73と、このケース本体73に噛み合う入力側ブロック78とを示す(a)の要部拡大図である。軸方向溝73bは略台形状の溝であり、また、凸部78aは軸方向溝73bの形状に略相似な形状とした部分である。ここで、凸部78aの上部幅をL2とすると、この上部幅L2は、(b)で示した上部幅L1とは異なる、即ちL1≠L2である。(b),(c)では、L1>L2であるが、L1<L2でもよい。また、軸方向溝73bは溝底に突起73cを備え、凸部78aは上面に前述の突起73cに対応する窪み78bを備える。 【0031】図7(a),(b)は本発明に係る差動装置を備えたフロントファイナルアセンブリのブリーザ構造を説明する説明図であり、(a)は図2の7矢視図、(b)は(a)のb−b線断面図である。(a)において、フロントファイナルアセンブリ21は、ハウジングカバー52bの上部にハウジング52内と外部とを連通するブリーザパイプとしてのブリーザジョイント91を備える。 【0032】(b)において、ハウジングカバー52bは、上部を膨出させることでブリーザ室92を形成し、このブリーザ室92の上部の壁にブリーザジョイント91を取付けたものである。 【0033】また、ハウジングカバー52bは、ブリーザ室92より下方の内面に、デファレンシャルケース組立体50の回転軸に略平行に延ばし、不等間隔に配置した複数のオイル止めリブ52g,52h,52j,52kを形成したものであり、これらのオイル止めリブ52g,52h,52j,52kをデファレンシャルケース組立体50のケース本体73に近接させるようにしたものである。ここで、車両が前進する時のデファレンシャルケース組立体50の回転方向を正転方向とし、図の矢印の方向とする。 【0034】オイル止めリブ52g,52h,52j,52kはそれぞれ、ブリーザ室92から遠い側の下面としての壁LW・・・をハウジングカバー52b内面からほぼ垂直に立ち上げるとともに隅部RA・・・の円弧半径r1を小さくし、ブリーザ室92から近い側の壁UW・・・を円弧状に形成し、これらの壁UW・・・の円弧半径r2を大きく、即ちr2>r1にしたものである。 【0035】オイル止めリブ52gは、デファレンシャルケース組立体50を挟んでオイル止めリブ52h,52j,52kを設けたハウジングカバー52bの内面とは反対側の内面に形成したものである。オイル止めリブ52g,52h,52j,52kの隣り合うそれぞれの間隔は、角度でC1,C2,C3であり、これらは、C1>C2>C3の関係にある。 【0036】これらの角度C1,C2,C3の大小関係は、隣り合うオイル止めリブ52g,52h,52j,52kの間にそれぞれ溜めることのできるオイルの容積の大小をも表す。即ち、オイル止めリブ52g,52h間のオイル容量>オイル止めリブ52h,52j間のオイル容量>オイル止めリブ52j,52k間のオイル容量となる。 【0037】即ち、本発明のデファレンシャルケース組立体50を備えたフロントファイナルアセンブリ21のブリーザ構造は、ハウジング52の上部をブリーザ室92とし、このブリーザ室92と外部とをブリーザジョイント91で連通させるとともに、ハウジング52内にデファレンシャルケース組立体50を回転自在に収納したフロントファイナルアセンブリ21において、ハウジング52の内周面に、デファレンシャルケース組立体50に向かって延びる複数個のオイル止めリブリブ52g,52h,52j,52kを設けて、デファレンシャルケース組立体50で掻き上げたオイルがブリーザ室92に向かうことを阻止するようにし、且つ、隣り合うオイル止めリブ52g,52h同士の間隔、隣り合うオイル止めリブ52h,52j同士の間隔及び隣り合うオイル止めリブ52j,52k同士の間隔を不揃いにしたことを特徴とする。 【0038】上記構成により、ハウジング52にオイル止めリブ52g,52h,52j,52kを設けることで、ハウジング52にオイル止めのための他部品を取付ける必要がなくなって、部品数が増加せず、コストアップを抑えることができるとともに、ハウジング52にオイル止めリブ52g,52h,52j,52kを一体的に形成したので、ハウジング52が振動したとしても、オイル止めリブ52g,52h,52j,52kが共振したり、破損等が発生したりすることはない。 【0039】また、本発明のデファレンシャルケース組立体50を備えたフロントファイナルアセンブリ21のブリーザ構造は、オイル止めリブ52g,52h,52j,52kを、溜まったオイルが流下するように上面としての壁UWを下り勾配にし、下面としての壁LWは、上昇するオイルを直に受け止める受け面とすることで、壁UW,LWの形状を異ならせたものとしたことを特徴とする。 【0040】図8(a)〜(d)は本発明に係る差動装置の入力側ブロック及び出力側カムを周方向に展開した展開図(模式図)であり、(a)〜(d)は、時間の経過に伴って、右出力側カム82に対して左出力側カム81が図の左方向へ相対的に移動する各過程を示す。(a)において、入力側ブロック77は、展開した形状が六角形であり、入力側ブロック78とは、展開した形状が図で左右逆の関係にある。 【0041】左出力側カム81は、起伏のあるカム面81bを有し、このカム面81bは、左第1斜面81cと左第2斜面81dとを交互に連結した面である。右出力側カム82は、起伏のあるカム面82bを有し、このカム面82bは、右第1斜面82cと右第2斜面82dとを交互に連結した面である。ここで、S1,S2は右出力側カム82の一部を基準とした基準線である。 【0042】(b)は、(a)に対して、入力側ブロック77が周方向(図の左方向)に力を受けた時に、右出力側カム82の側から左出力側カム81の側へ距離V1だけ移動するとともに、右出力側カム82が相対的に入力側ブロック77と反対の方向(図の右方向)へ距離H1だけ移動し、左出力側カム81が右出力側カム82に対して相対的に左方向へ距離M1だけ移動した状態を示す。 【0043】(c)は、(a)に対して、入力側ブロック77が周方向(図の左方向)に力を受けた時に、右出力側カム82の側から左出力側カム81の側へ距離V2だけ移動するとともに、右出力側カム82が相対的に入力側ブロック77と反対の方向へ距離H2だけ移動し、左出力側カム81が右出力側カム82に対して相対的に左方向に距離M2だけ移動した状態を示す。 【0044】(d)は、(a)に対して、入力側ブロック77が周方向(図の左方向)に力を受けた時に、右出力側カム82の側から左出力側カム81の側へ距離V3だけ移動するとともに、右出力側カム82が相対的に入力側ブロック77と反対の方向へ距離H3だけ移動し、左出力側カム81が右出力側カム82に対して相対的に左方向に距離M3だけ移動した状態を示す。 【0045】以上説明した入力側ブロック77で代表されるように、入力側ブロック77・・・,78・・・は、左出力側カム81と右出力側カム82とで移動速度、即ち回転数に差が生じた場合に、左・右出力側カム81,82との間にそれぞれ摩擦力を発生させながら相対移動、即ち、相対回転する。左出力側カム81と右出力側カム82とで回転数に差が生じない場合は、入力側ブロック77・・・,78・・・及び左・右出力側カム81,82は相対回転せず、一体的に回転する。 【0046】以上に述べた差動装置の作用を次に説明する。図9(a),(b)は本発明に係る差動装置の作用を説明する作用図である。(a)は図8(a)に示した入力側ブロック77(最も左側のもの)及び左・右出力側カム81,82の拡大図であり、左出力側カム81の左第1斜面81cの傾き角をθ、右出力側カム82の右第1斜面82cの傾き角をθとする。 【0047】(b)において、入力側ブロック77に左向きの力Fが作用し、例えば、左出力側カム81が高速で回転し、右出力側カム82が低速で回転して、左出力側カム81と右出力側カム82とで回転数差が発生した場合について説明する。この時、入力側ブロック77が、左出力側カム81の左第1斜面81cを、この斜面81cに垂直な力Nで押付け、右出力側カム82の右第1斜面82cを、この斜面82cに垂直な力Nで押付けるとすると、この力Nの左向きの成分はそれぞれNsinθとなる。 【0048】また、入力側ブロック77に対して左出力側カム81が相対的に左方向へ移動する場合、入力側ブロック77と左第1斜面81cとで発生する摩擦力はμNとなり、この摩擦力μNの右向きの成分はμNcosθ、即ち左向きの成分としては−μNcosθとなる。従って、入力側ブロック77から左出力側カム81に作用する左向きの力はNsinθ−μNcosθとなる。 【0049】一方、入力側ブロック77に対して右出力側カム82が相対的に右方向へ移動する場合、入力側ブロック77と右第1斜面82cとで発生する摩擦力はμNとなり、この摩擦力μNの左向きの成分はμNcosθとなる。従って、入力側ブロック77から右出力側カム82に作用する左向きの力はNsinθ+μNcosθとなる。 【0050】以上より、左出力側カム81と右出力側カム82とで回転数差が発生した場合には、高速で回転する左出力側カム81に発生する力に比較して、低速で回転する右出力側カム82に発生する力が大きくなる。左出力側カム81と右出力側カム82とに作用する左向きの力の比は、(Nsinθ−μNcosθ):(Nsinθ+μNcosθ)=(sinθ−μcosθ):(sinθ+μcosθ)となり、摩擦係数μ及び傾き角θで変化する。上記した比は、最終的には、左前輪と右前輪とに分配される駆動トルク比となる。 【0051】以上の図4で説明したように、本実施の形態は、デファレンシャルケース組立体50を、リングギヤ75aの回転に伴って周方向に移動する複数の入力側ブロック77,78と、これらのブロック77,78を相対滑り可能に挟み込むとともに各ブロック77,78との摩擦力で独立して回転することができる2つの左・右出力側カム81,82と、これらの入力側ブロック77,78及び左・右出力側カム81,82を収納するデファレンシャルケース71とから構成した。 【0052】上記構成により、2つの出力側カム81,82の回転数により入力側ブロック77,78と出力側カム81,82の相対滑りにより変化する摩擦力の方向によって所定の比率で異ならせて駆動トルクを出力側カム81,82へ分配することができる。従って、路面の摩擦係数の変化によって一部の車輪の駆動力が小さくなったとしても、他の車輪の駆動力が低下せず、総駆動力を確保することができて、走破性を高めることができる。 【0053】次に差動装置を備えた鞍乗型車両の直進時の駆動力配分について説明する。図10(a),(b)は本発明に係る差動装置を備えた鞍乗型車両の直進時の駆動力配分を説明する作用図である。なお、図中の黒塗り矢印の長さは駆動力の大きさに対応する。(a)において、直進走行中に、後輪17,18がぬかるみMu等の摩擦係数の小さい路面に載った場合、後輪17,18にスリップが発生して駆動力D1,D1は矢印で示すように小さくなるが、前輪13,14が摩擦係数の大きな路面に載っていれば、前輪13,14に矢印で示すような大きな駆動力D2,D2が発生する。 【0054】(b)において、直進走行中に、前輪13,14のうちの、例えば右前輪14と後輪17,18とがぬかるみMu等の摩擦係数の小さい路面に載った場合、右前輪14の駆動力D3、後輪17,18の駆動力D4,D4はそれぞれ矢印で示すように小さくなるが、左前輪13が摩擦係数の大きな路面に載っていれば、左前輪13とスリップの発生した右前輪14とに回転数差が発生し、フロントファイナルアセンブリ21の作用によって、左前輪13に矢印で示すような大きな駆動力D5が発生する。 【0055】次に差動装置を備えた鞍乗型車両の操舵力について説明する。図11(a),(b)は本発明に係る差動装置を備えた鞍乗型車両の操舵力を説明する作用図である。なお、図中の黒塗り矢印の長さは駆動力の大きさに対応し、白抜き矢印の長さは走行時の抵抗力の大きさに対応する。(a)において、本発明の鞍乗型車両では、操舵力を軽減するために前輪13,14に対して後輪17,18の回転数をわずかに高める。これにより、直進走行中には、後輪17,18の駆動力D6,D6は黒塗り矢印で示すように大きくなるが、前輪13,14の駆動力D7,D7は黒塗り矢印で示すように小さくなるとともに、前輪13,14に白抜き矢印で示すような抵抗力R1,R1が発生する。 【0056】(b)において、走行中に前輪13,14を操舵した場合には、前輪13,14に対して後輪17,18の回転数をわずかに高めたことと、フロントファイナルアセンブリ21の作用により、内輪となる前輪13に発生する抵抗力R2が外輪となる前輪14に発生する抵抗力R3よりも大きくなり、操舵力を軽減することができる。 【0057】図12は差動装置を備えた車両の操舵力の比較例を説明する作用図であり、この差動装置は、操舵する前輪の左右輪の駆動力の配分を等しくする形式の装置である。なお、図中の黒塗り矢印の長さは駆動力の大きさに対応し、白抜き矢印の長さは走行時の抵抗力の大きさに対応する。車両100は、パワーユニット101の駆動力をフロントシャフト102を介して差動装置103に伝え、更に、この差動装置103から左右のフロントドライブシャフト104,105を介して前輪106,107に伝える。また、パワーユニット101の駆動力をリヤシャフト108を介して差動装置111に伝え、更に、この差動装置111から左右のリヤドライブシャフト112,113を介して後輪114,115に伝える。 【0058】上記車両100では、前輪106,107側と後輪114,115側とは回転数差がなく、差動装置103は駆動力配分を等しくするものなので、操舵時に左右の前輪106,107の駆動力Dr,Drは等しくなり、また、前輪106,107に対して後輪114,115の回転数をわずかに高めたとしても、左右の前輪106,107に作用する抵抗力Re,Reは等しくなり、何等操舵力の低減に寄与しない。 【0059】以上の図11(b)で説明したように、本実施の形態では、フロント側の左・右車輪13,14間にデファレンシャルケース組立体50を搭載した不整地等を走行するための鞍乗型車両10において、デファレンシャルケース組立体50を、左・右車輪13,14間で回転数に差が生じた時に左右で各車輪13,14へ所定の比率で異ならせて駆動トルクを分配する装置にした。 【0060】上記構成により、旋回時には、低速の内輪に高速の外輪より大きな駆動トルクを分配することができ、これによって、内輪に外輪より大きな抵抗力を発生させることができるため、より旋回性を高めことができて、より操舵力を軽減することができる。従って、操作性の一層の向上を図ることができる。 【0061】以上に述べたフロントファイナルアセンブリのブリーザ構造の作用を次に説明する。図13(a),(b)は本発明に係る差動装置を備えたフロントファイナルアセンブリのブリーザ構造の作用を説明する作用図である。(a)において、デファレンシャルケース組立体50が矢印で示すように正転した場合、ハウジング52内のオイルは、デファレンシャルケース組立体50の回転に伴ってデファレンシャルケース組立体50外周面とハウジングカバー52b内面との間を反時計回りに流れようとするが、オイル止めリブ52h,52j,52kによってオイルの流れが阻止される。 【0062】即ち、デファレンシャルケース組立体50の回転数が低い場合には、オイルのほとんどをオイルの流れの上流に位置するオイル止めリブ52hで阻止して、ハウジングカバー52bの下部、即ち、2つのオイル止めリブ52g,52h間に溜める。 【0063】デファレンシャルケース組立体50の回転数が更に高くなると、デファレンシャルケース組立体50とオイル止めリブ52hとの隙間をオイルが多く通過するようになるが、この通過したオイルを今度はオイル止めリブ52jで阻止して、2つのオイル止めリブ52h,52j間で溜める。 【0064】また更に、デファレンシャルケース組立体50の回転数が高くなると、デファレンシャルケース組立体50とオイル止めリブ52jとの隙間をオイルが多く通過するようになるが、この通過したオイルを今度はオイル止めリブ52kで阻止して、オイル止めリブ52j,52k間で溜めるようになり、オイルがブリーザ室92に流入するのを防ぐことができる。 【0065】このように、複数のオイル止めリブ52g,52h,52j,52kを設けたことで、デファレンシャルケース組立体50の回転数の広い範囲でオイルを阻止することができる。また、隣りとの間隔が異なるオイル止めリブ52g,52h,52j,52kを設けたことで、等間隔にするよりも、オイルの流れのより上流側で多くのオイルを阻止し、且つ溜めることができ、下流側でのオイルを阻止する量を小さくすることができて、特に、オイル止めリブ52j,52k間からオイルがオーバーフローしにくく、ブリーザ室92へ届くことを防止することができる。 【0066】更に、オイル止めリブ52h,52j,52kのブリーザ室92から遠い側の壁LW・・・を急激に立ち上げ、且つ隅部RA・・・の円弧半径を小さくしたことで、オイルを確実に阻止することができる。 【0067】(b)において、デファレンシャルケース組立体50が矢印で示すように正転方向とは逆の方向に回転、即ち逆転した場合、ハウジング52内のオイルは、デファレンシャルケース組立体50の回転に伴ってデファレンシャルケース組立体50外周面とハウジングカバー52b内面との間を時計回りに流れる。 【0068】この時、オイル止めリブ52h,52j,52kのブリーザ室92に近い側の壁UW・・・を下り勾配とし、円弧半径を大きくしたことで、各オイル止めリブ52h,52j,52kに近付いたオイルをスムーズにデファレンシャルケース組立体50とオイル止めリブ52h,52j,52kとの各隙間に導くことができ、オイルをハウジングカバー52bの下部側に流すことができる。 【0069】そして、ハウジングカバー52bの下部側に至ったオイルは、矢印で示すように、時計回りに流れながら遠心力でデファレンシャルケース組立体50側からハウジングカバー52b側へ移動するため、オイル止めリブ52gの壁LWでオイルを効果的に阻止することができる。 【0070】以上(a),(b)で説明したように、デファレンシャルケース組立体50の正転時には、デファレンシャルケース組立体50の回転数が高速になるにつれて、阻止するオイルの容積を次第に小さくすることができ、ブリーザ室92へ向かうオイルの阻止を確実に行うことができる。従って、フロントファイナルアセンブリの外部へのオイル持出しを防止することができる。 【0071】また、デファレンシャルケース組立体50の正転時には、受け面としたオイル止めリブ52h,52j,52kのそれぞれの壁LWで上昇するオイルを受け止め、オイルの流れを阻止することができるので、オイルをハウジング52内の下部に留めておくことができる。 【0072】一方、デファレンシャルケース組立体50の逆転時には、下り勾配にしたオイル止めリブ52h,52j,52kのそれぞれの壁UWを溜まったオイルが流下し、壁UWにオイルが溜まらず、このオイルを、受け面としたオイル止めリブ52gの壁LWで受け止めてオイルの流れを阻止することができる。 【0073】従って、上記正転時及び逆転時ともに、ブリーザ室92にオイルが届かず、オイルがブリーザジョイント91を介してフロントファイナルアセンブリの外部へ流出するのを防止することができる。これにより、フロントファイナルアセンブリの寿命をより延ばすことができる。 【0074】 【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1の差動装置を備えた最終減速装置のブリーザ構造は、ハウジングの上部をブリーザ室とし、このブリーザ室と外部とをブリーザパイプで連通させるとともに、ハウジング内に差動装置を収納した最終減速装置において、前記ハウジングの内周面に、複数個のオイル止めリブを設けて、差動装置で掻き上げたオイルが前記ブリーザ室に向かうことを阻止するようにし、且つ、隣り合うオイル止めリブ同士の間隔を不揃いにしたので、ハウジングにオイル止めリブを設けることで、ハウジングにオイル止めのための他部品を取付ける必要がなくなって、部品数を増加させず、コストアップを抑えることができるとともに、振動による音や破損等が発生しない。 【0075】また、隣り合うオイル止めリブ同士の間隔を不揃いにすることで、差動装置の回転数が高速になるにつれて、阻止するオイルの容積を次第に小さくすることができ、ブリーザ室へ向かうオイルの阻止を確実に行うことができる。従って、最終減速装置の外部へのオイル持出しを防止することができる。 【0076】請求項2の差動装置を備えた最終減速装置のブリーザ構造は、オイル止めリブの上面を下り勾配にし、下面をオイルの受け面としたので、オイル止めリブの上面にオイルが溜まらず、また、オイル止めリブの下面でオイルの流れを阻止するため、オイルをハウジング内の下部に留めておくことができる。従って、ブリーザ室にオイルが届かず、オイルがブリーザパイプを介して最終減速装置の外部へ流出するのを防止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年9月2日(1999.9.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067356 【弁理士】 【氏名又は名称】下田 容一郎
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| 【公開番号】 |
特開2001−74127(P2001−74127A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月23日(2001.3.23) |
| 【出願番号】 |
特願平11−249376 |
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