| 【発明の名称】 |
差動制限装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】木村 拓夫
|
| 【要約】 |
【課題】予圧付与部材によるイニシャルトルクに影響されずに噛合反力による差動制限トルクの迅速な発生を可能にするとともに、単純な隙間調整機能を有する差動制限装置を提供することを目的とする。
【解決手段】デフケース1と少なくとも一方のサイドギヤ4との間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材6を介設した差動制限装置において、サイドギヤ4とともに回転する前記予圧付与部材6が前記サイドギヤ4の背面にテーパ面にて当接するとともに、円周上にて分割されて拡開方向にばね付勢されたことを特徴とするもので、ピニオンギヤ3とサイドギヤ4、5との間の噛合反力により生じる差動制限トルクは、予圧付与部材6の側端面と外周面に分力されて作用して差動制限トルクを発生させる面積を飛躍的に増大させて充分な差動制限トルクが得られる他、側端面に作用する差動制限トルクは、予圧によるイニシャルトルクとは無関係に作用するので、時間的な遅れがなく迅速に噛合反力による差動制限トルクを発生させることが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 デフケースの回転駆動力を互いに傘歯噛合する差動歯車を介して前記デフケースの回転軸上に配置された左右のサイドギヤにトルク配分して伝達する差動装置であって、前記デフケースと少なくとも一方のサイドギヤとの間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材を介設した差動制限装置において、サイドギヤとともに回転する前記予圧付与部材が前記サイドギヤの背面にテーパ面にて当接するとともに、円周上にて分割されて拡開方向にばね付勢されたことを特徴とする差動制限装置。 【請求項2】 前記デフケースと他方のサイドギヤとの間にコーンワッシャを介設したことを特徴とする請求項1に記載の差動制限装置。 【請求項3】 前記予圧付与部材とデフケース内端面との間に軸方向隙間調整手段を介設したことを特徴とする請求項1または2に記載の差動制限装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、デフケースの回転駆動力を互いに傘歯噛合する差動歯車を介して前記デフケースの回転軸上に配置された左右のサイドギヤにトルク配分して伝達する差動装置に係り、前記デフケースとサイドギヤとの間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材を介設した差動制限装置に関する。 【0002】 【従来の技術】デフケースの回転駆動力を互いに傘歯噛合する差動歯車を介して前記デフケースの回転軸上に配置された左右のサイドギヤにトルク配分して伝達するいわゆるベベル式差動装置であって、前記デフケースとサイドギヤとの間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材を介設した差動制限装置としては種々の形式のものが採用されている。そのようなものの典型的な例として、図4に示すものや、図6に示した特公昭46−8206号公報に開示されたものがある。図4に示した例は、デフケース11の回転駆動力をピニオン軸12を介して互いに傘歯噛合する差動歯車(ピニオンギヤ13、左右のサイドギヤ14、15)を介して前記デフケース11の回転軸上に配置された左右のサイドギヤ14、15にトルク配分して伝達する差動装置であって、デフケース11とサイドギヤ14、15との間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材として皿ばね19、19を介設したものである。予圧付与部材である皿ばね19の存在によって、常時、デフケース11とサイドギヤ14、15との間に皿バネによる所定の軸方向の制動力が作用して差動制限トルク(イニシャルトルク)が発生する。 【0003】また、図6に示した例は、デフケース21の回転駆動力をピニオン軸22を介して互いに傘歯噛合する差動歯車(ピニオンギヤ23、左右のサイドギヤ24、25)を介して前記デフケース21の回転軸上に配置された左右のサイドギヤ24、25にトルク配分して伝達する差動装置であって、左右のサイドギヤ24、25間に介設された予圧付与部材であるばね28によって、コーン部材26、27を介してデフケース21と一体のコーンワッシャ29、30との間に所定の制動力を得て差動制限トルクを発生させるものである。 【0004】このような構成の差動制限装置によって、通常の直進走行時にはエンジンからの駆動力によりデフケースからの所定の駆動力を受けてピニオンギヤと噛合する左右の各サイドギヤに均等にその駆動力が伝達される。その際、左右の駆動輪の走行抵抗がほぼ同じであり、ピニオンギヤは静止状態にて噛合反力にて各サイドギヤを離反させ、デフケースとの間を一体化させて、強固な駆動力が得られる。また、走行中の軽度のスリップ時には、予圧付与部材によって発生したイニシャルトルクにより適度の差動制限力が得られる。さらに、車両が泥濘地等の悪路に遭遇して片輪空転等により過剰な差動作用が発生しようとした場合にも、予圧付与部材による予圧がピニオンギヤとサイドギヤとの間の噛合反力を効果的に助長し、左右のサイドギヤを離反させてデフケースの内壁面との間に差動制限力を発生させて、低速車輪側にも駆動力が伝達され、悪路での脱出性能を向上させることができるものである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の差動制限装置にあっては、予圧付与部材としての皿ばね19は、デフケース11の内端面とサイドギヤ14、15の背面との間に配設されているため、ピニオンギヤ13とサイドギヤ14、15との間の噛合反力により発生するスラスト力すなわち差動制限トルク(図5(A)の実線)は、皿ばね19による予圧分だけ押しつぶす間(時刻Tまで)の時間的な遅れが生じることは免れなかった。また、後者の差動制限装置にあっては、予圧付与部材であるばね28のイニシャルトルクおよびピニオンギヤ23とサイドギヤ24、25との間の噛合反力により発生する差動制限トルクの調整をする場合には、コーン部材26、27とコーンワッシャ29、30との間の隙間を適正に選定する必要があるが、これらの間の摺接面はテーパ状錘面であるため、設計時の計算が複雑であった。 【0006】そこで、本発明は、前記差動制限装置の諸課題を解決して、予圧付与部材によるイニシャルトルクに影響されずに噛合反力による差動制限トルクの迅速な発生を可能にするとともに、単純な隙間調整機能を有する差動制限装置を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】そこで本発明は、デフケースの回転駆動力を互いに傘歯噛合する差動歯車を介して前記デフケースの回転軸上に配置された左右のサイドギヤにトルク配分して伝達する差動装置であって、前記デフケースと少なくとも一方のサイドギヤとの間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材を介設した差動制限装置において、サイドギヤとともに回転する前記予圧付与部材が前記サイドギヤの背面にテーパ面にて当接するとともに、円周上にて分割されて拡開方向にばね付勢されたことを特徴とするものである。また本発明は、前記デフケースと他方のサイドギヤとの間にコーンワッシャを介設したことを特徴とするものである。また本発明は、前記予圧付与部材とデフケース内端面との間に軸方向隙間調整手段を介設したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とするものである。 【0008】 【実施の形態】以下、本発明の差動制限装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明の差動制限装置の第1実施の形態を示すもので、図1(A)は全体断面図、図1(B)はA断面図、図2は図1(A)のB部拡大図である。図1(A)に示すように、デフケース1は袋状の右デフケース1Bとこれを蓋状に閉塞して締結される左デフケース1Aとから構成され、図示省略の入力軸からリングギヤ等を介して伝達されてくる駆動力により回転される。デフケース1の回転駆動力は、ピニオン軸2を介してピニオンギヤ3に伝達され、これらピニオンギヤ3の左右から傘歯噛合するところの前記デフケースの回転軸上に配置された左右のサイドギヤ4、5にトルク配分されて伝達される。ピニオンギヤ3は右デフケース1Bに直交して固定されたピニオン軸2に回転自在に軸支され、右デフケース1Bの内周面との間に介設されたインナーデフケース7の内周の球面にピニオンギヤ3の背面の球面が摺接される。 【0009】本発明では、前記デフケース1と少なくとも一方のサイドギヤ(図示の例では左サイドギヤ)4との間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材である摺動駒6が介設される。この場合、前記デフケース1と他方のサイドギヤ5との間にはコーンワッシャ10が介設される。該コーンワッシャ10は無端リング状で前記摺動駒6と対称で略同形状を呈し、摺動駒6と同様の介設形態が採られる。また、コーンワッシャ10に代えて、該他方のサイドギヤ5側にも予圧付与部材である摺動駒6が介設されてもよいものである。この場合は、予圧を付与するために配設されるばねの付勢力は小さくて済む。予圧付与部材である摺動駒6は、サイドギヤ4とともに回転するように構成され、サイドギヤ4の背面の凸錐面4Cに摺動駒6の内周の凹錐面6Cがテーパ面にて当接される。 【0010】図1(A)のA断面図である図1(B)に示すように、円周上にて第1分割片6Aと第2分割片6Bとに分割(図示の例では略直径上で2分割されるが、それ以上の数に分割されてもよい。)された摺動駒6は、前記サイドギヤ4とともに回転する構成として、サイドギヤ4の背面に径方向のラグ4A、4Aが突設されるとともに、摺動駒6の各分割片6A、6Bの内周面には前記ラグ4Aに対応して整合するラグ溝6D、6Dが刻設されており、これらラグ4Aにラグ溝6Dが係止される。前記摺動駒6の各分割片6A、6Bの対向面間に、これら各分割片6A、6Bを拡開方向にばね付勢する予圧ばね8、8が介設される。したがって、予圧ばね8による制動力すなわち差動制限トルクは径方向に作用して、摺動駒6の外周面6E(図2参照)と右デフケース1Bの内周面との間に発生することになる。 【0011】このように構成されているので、少なくともサイドギヤ4とともに回転する前記予圧付与部材6における分割片6A、6Bが、予圧ばね8により拡開方向に付勢されて右デフケース1Bの内周面との間の制動力により所定の差動制限トルクが常時発生し、走行中の軽度のスリップ時等においても安定した駆動力を確保して安全に走行することを可能にする。また、デフケース1に大きな駆動力が作用すると、ピニオンギヤ3と左右のサイドギヤ4、5との間の噛合反力によって、各サイドギヤ4、5が軸方向外側に移動し、各サイドギヤ4、5の背面の凸錐面と摺動駒6(あるいはコーンワッシャ10)の凹錐面との間のカム作用によって、摺動駒6は軸方向に押圧されるとともに、径方向にも押圧される。 【0012】かくして、図2に示すように、ピニオンギヤ3とサイドギヤ4、5との間の噛合反力により生じる差動制限トルクは、左デフケース1Aの内端面と接する摺動駒6の側端面6Fと、右デフケース1Bの内周面と接する摺動駒6の外周面6Eに分力されて作用することになり、差動制限トルクを発生させる面積を飛躍的に増大させて充分な差動制限トルクが得られる他、制動面の増大によって制動面の面圧が低くなり、耐久性が向上する。径方向の摺動駒6の外周面6Eに作用する差動制限トルクは前述した予圧ばね8によるイニシャルトルクと同方向であり、補完的に付加される。 【0013】また、軸方向の摺動駒6の側端面6Fに作用する差動制限トルクは、前述した予圧ばね8によるイニシャルトルクとは無関係に作用することになるので、図5(B)に示すように、時間的な遅れがなく迅速に噛合反力による差動制限トルクを発生させることが可能となる。さらに、摺動駒6はサイドギヤの少なくとも一方側に介設するだけでも充分なインシャルトルクを発生させることができるので、その場合は部品点数を削減できて低コストとなる。さらにまた、摺動駒6の高さ(径方向)や厚み(軸方向)を変更するだけで単純に隙間調整が可能となる。 【0014】図3は本発明の差動制限装置の第2実施の形態を示すもので、図1(A)のB部拡大図に相当する断面図である。本実施の形態では、前記第1実施の形態のものにおける予圧付与部材とデフケース内端面との間に軸方向隙間調整手段を介設したことを特徴とする。図1(B)にて説明したものと同じ予圧付与部材である摺動駒6の側端面6Fと左デフケース1Aの内端面との間に、軸方向隙間調整手段であるスラストワッシャ9を介設したものである。スラストワッシャ9は耐磨耗性を有し、制動力による差動制限トルクを発生させるために所定の摩擦係数を有する。かくして、本実施の形態では、より単純な形状のスラストワッシャ9の採用により、軸方向厚みの異なるものを適宜選択して組み付けることにより隙間調整がより単純化されて、発生させる差動制限トルクの調整がより簡単となる。 【0015】以上、本発明の実施の形態を述べてきたが、本発明の趣旨の範囲内で、デフケースの形状、ピニオン軸の形式すなわちピニオンギヤの数、差動歯車の形式、分割形態を含む予圧付与部材の形状、形式およびそのサイドギヤへの係止形態ならびに予圧ばねの介設形態、コーンワッシャおよびスラストワッシャの形状等については適宜選定できる。 【0016】 【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明は、デフケースの回転駆動力を互いに傘歯噛合する差動歯車を介して前記デフケースの回転軸上に配置された左右のサイドギヤにトルク配分して伝達する差動装置であって、前記デフケースと少なくとも一方のサイドギヤとの間を所定のトルクにて制動する予圧付与部材を介設した差動制限装置において、サイドギヤとともに回転する前記予圧付与部材が前記サイドギヤの背面にテーパ面にて当接するとともに、円周上にて分割されて拡開方向にばね付勢されたことにより、ピニオンギヤとサイドギヤとの間の噛合反力により生じる差動制限トルクは、予圧付与部材の側端面と外周面に分力されて作用して差動制限トルクを発生させる面積を飛躍的に増大させて充分な差動制限トルクが得られる他、制動面の増大によって制動面の面圧が低くなり、耐久性が向上する上、外周面に作用する差動制限トルクは予圧によるイニシャルトルクと同方向であり、補完的に付加される。また、側端面に作用する差動制限トルクは、前述した予圧によるイニシャルトルクとは無関係に作用するので、時間的な遅れがなく迅速に噛合反力による差動制限トルクを発生させることが可能となる。 【0017】また、前記デフケースと他方のサイドギヤとの間にコーンワッシャを介設した場合は、予圧付与部材をサイドギヤの少なくとも一方側に介設するだけでも充分なインシャルトルクを発生させることができる利点をそのままに、やや複雑な構造の予圧付与部材と振り分けて単純な構造のコーンワッシャを配置することで、部品点数の削減による低コストが実現できる。さらに前記予圧付与部材とデフケース内端面との間に軸方向隙間調整手段を介設した場合は、より単純な形状のスラストワッシャ等の軸方向隙間調整手段の採用により、軸方向厚みの異なるものを適宜選択して組み付けることにより隙間調整がより単純化されて、発生させる差動制限トルクの調整がより簡単となる。このように、本発明によれば、予圧付与部材によるイニシャルトルクに影響されずに噛合反力による差動制限トルクの迅速な発生を可能にするとともに、単純な隙間調整機能を有する差動制限装置が提供される。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000225050 【氏名又は名称】栃木富士産業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年9月2日(1999.9.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102565 【弁理士】 【氏名又は名称】永嶋 和夫
|
| 【公開番号】 |
特開2001−74123(P2001−74123A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月23日(2001.3.23) |
| 【出願番号】 |
特願平11−248172 |
|