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【発明の名称】 歯車とラックとの噛み合い構造及び動作補助装置
【発明者】 【氏名】寺田 芳明

【氏名】山田 洋志

【氏名】和田 隆平

【要約】 【課題】ラックと歯車との噛み合い時にずれた位置同士の歯が互いに干渉せず、しかも正規位置でのラック及び歯車の噛み合い強度をある程度確保し、さらに部品加工や組み立ても容易となる歯車とラックとの噛み合い構造及びこの構造を備えた動作補助装置を提供する。

【解決手段】駆動源の駆動力により回転する歯車36と、この歯車36に係合離脱可能に配置され、歯車36の係合状態時の回転により所定方向に直線移動するラック51との噛み合い構造において、歯車36とラック51とが噛合するときの最初の歯をそれぞれ1番目の歯36a1,51a1としたとき、歯車36の回転方向における1番目の歯36a1が、ラックの2番目以降のラック歯51aと軸方向に重なる位置を通過可能とし、この通過後にラック51の1番目のラック歯51a1と係合することにより、歯車36とラック51との噛み合いが始まるようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動源の駆動力により回転する歯車と、この歯車に係合離脱可能に配置され、上記歯車の係合状態時の回転により所定方向に直線移動するラックとの噛み合い構造において、上記歯車と上記ラックとが噛合するときの最初の歯をそれぞれ1番目の歯としたとき、上記歯車の回転方向における1番目の歯が、上記ラックの2番目以降のラック歯と軸方向に重なる位置を通過可能とし、この通過後に上記ラックの1番目のラック歯と係合することにより、上記歯車と上記ラックとの噛み合いが始まることを特徴とする歯車とラックとの噛み合い構造。
【請求項2】 前記歯車を円周方向の一部のみに歯を有する切り欠き歯車とし、この切り欠き歯車の1番目の歯を、2番目以降の歯より軸方向に短く形成し、前記ラックの1番目のラック歯を、2番目以降のラック歯より軸方向に長く形成したことを特徴とする請求項1記載の歯車とラックとの噛み合い構造。
【請求項3】 前記歯車の同軸上には、前記歯車よりも外径の大きい平歯車が前記歯車と一体的に形成されていると共に、この平歯車で前記駆動源側の駆動力を受けるようにし、かつ前記ラックが上記平歯車の一部に重なる位置に配置されることを特徴としている請求項1または2記載の歯車とラックとの噛み合い構造。
【請求項4】 駆動源の駆動力によってスライド移動して、開閉部材に直接または間接的に当接可能な突き出し部材を有し、上記突き出し部材のスライド動作により上記開閉部材の動作を補助する動作補助装置であって、上記突き出し部材にはラックが形成され、このラックと上記駆動源側に配置された最終歯車との噛み合い構造が、請求項1から3のうちのいずれか1項記載の噛み合い構造となっていることを特徴とする動作補助装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、係脱自在な歯車とラックとの噛み合い構造、及び冷蔵庫等に設置された旋回式の扉や引き出しの前面等の開動作を補助するための動作補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】旋回式の扉や引き出し等のついた家電製品や家具などにおいて、扉や引き出しの前面を筐体本体側にマグネットなどの磁気的作用を利用して保持させるものがある。このような扉や引き出し(以下、開閉部材という)は、閉じる寸前にマグネットの磁気吸引力により筐体本体側に吸引されるため、小さな力で確実に閉めることができ、また、閉まった状態では一定の閉じ力で閉じ状態が保持される。したがって、多少の振動などがあっても自然に扉や引き出しが開いてしまうというような不都合も解消できることから多くの製品に適用されている。
【0003】このような一定の閉じ力により閉じられている開閉部材は、通常では、それほど苦にならずに開けられるが、たとえば、両手に物を持っていて、僅かな力で開閉部材を開けようとするような場合、簡単には開かないことが生じる。また、腕力や握力等の落ちた高齢者にとっては操作性が良いとはいえない。
【0004】この種の開閉部材は、閉じ状態を確実に保持するという要素と、容易な開操作が可能という両方の要素を満たす必要があるが、確実な閉じ状態の保持という観点から考えると、或る程度の閉じ力を持たせる必要性は否めない。したがって、一定以上の閉じ力を持ちながら、容易に開けられるような開閉機構とすることが望まれる。
【0005】そこで、操作を少しでも容易なものとするための装置として、本出願人は、特開平4−17548号公報記載のモータアクチュエーターを開発した(図6参照)。このモータアクチュエーターは、モータ101と、モータ101の駆動力を減速して伝達する減速機構102と、この減速機構102の最終段のピニオン103に噛合するラック104を有するロッド105と、ロッド105の位置を検出するための位置検出手段106と、これらの部材を収納するケース107と、を有している。
【0006】このモータアクチュエーターは、扉(図示省略)に設けたスイッチ機構にユーザーが触れると、モータ101が通電され、モータ101の駆動力によりロッド105を前方へスライド移動させるようになっており、このロッド105の前方へのスライド移動を利用して、前方に配置される扉の開動作を補助するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような図6に示したモータアクチュエーターでは、扉の開動作を補助した後、前方にロッドが残ったままになっていると、ユーザーが扉を閉めた際に、扉に押されてロッドがケース内に戻ってくる。そのため、ロッドの戻り方向へのスライド移動によって、減速輪列が無理に回転しようとし、減速輪列の各歯車を破損してしまうおそれが生じる。
【0008】そのため、このような装置では、減速輪列にスリップ機構を備えたり、あるいは駆動力が一方向(ロッドを前進させる方向)にのみ伝達されるクラッチ機構を備えたりすることが考えられる。これらを組み込めば、前方へ残っているロッドがケース内へ押し戻されたとしても、組み込んだスリップ機構部分等で歯車等が空回り等することにより、押し込まれた力が逃げて、減速輪列やモータ等の内部機構を傷めないものとなる。
【0009】しかしながら、スリップ機構やクラッチ機構を設けることにより、ロッドの戻り方向のスライド移動時の歯車損傷問題に対応するようにしたとしても、扉を閉める度に扉とロッドが衝突し、ロッドもしくは扉の内側を損傷する危険性は避けることができない。
【0010】上述のモータアクチュエーターでは、このような問題に対処すべく、モータを逆回転させてロッドを元の位置へ戻す制御をおこなっている。すなわち、ロッド105が所定位置まで前方へスライド移動すると、これを位置検出手段106で検知する。そして、この検知に基づいて制御回路(図示省略)の駆動制御によりモータ101を停止させる。その後、モータ101を逆回転させることにより、ロッド105を逆方向にスライド移動させ、ロッド105が元の位置まで戻す。
【0011】しかしながら、このような制御を行うため、上述のモータアクチュエーターは、ロッド105の位置を検出するための位置検出手段106と、この位置検出手段106による位置検出の結果に基づきモータ101を双方向回転させるための駆動回路(図示省略)を備えている。そのため、部品点数が多くなると共に、構造が複雑化してしまい、装置全体が大型化してしまう。これらの問題は、高級品や大型装置に組み込む場合は大きな問題とはならないが、低価格商品や小型の商品に組み込む場合は、大きな欠点となってしまう。
【0012】さらに、上述のモータアクチュエーターは、ロッド105を原点位置に戻す際には、必ずモータ101の駆動力を必要とする。そのため、ロッド105が飛び出してしまっている状態で停電になったり、その状態で回路的損傷が生じた場合は、手動等によりロッド105をケース107内に押し戻すこととなるが、モータ101のロータへ伝わる力は増速関係となるため、モータ101への負荷が極めて大きくなり、簡単には押し戻すことができない。仮に、強引に押し戻すとすると、上述のように歯車輪列中の歯車を破損してしまう。これを避けるためスリップ機構やクラッチ機構を設けると、やはり部品点数の増大、構造の複雑化、装置の大型化を招いてしまう。
【0013】なお、上述の欠点、すなわちロッド105を元の位置に戻すためにモータ101を逆回転させる構成とした際の種々の欠点を回避するために、モータ101を一方向へ所定量駆動した後、ピニオン103とラック104との噛み合いを外すような構成とすることも考えられる。このような構成とする場合は、上述のピニオン103のように外周全周に歯が設けられた歯車を最終段に備えるのではなく、歯を外周の一部にのみ設ける、いわゆる切り欠き歯車113をラック114との噛み合い部分に備えるようにする(図7参照)。これにより、切り欠き歯車113が所定角度回転すると、ラック114との噛み合いが外れる。このため、噛み合いが外れた後は、ロッド115が外力により元の位置に戻されても、ラック114が切り欠き歯車113の歯113aと干渉せず、その力がモータ側に伝達されないため、手動等で容易にロッド115を元の位置へ戻すことができる。
【0014】しかしながら、このような構成とする場合、噛み合いを外した後、再噛み合いをする際に、1つずれた位置同士の歯となる、切り欠き歯車113の先頭(一番目)の歯113a1とラック114の先頭から2番目の歯114a2とが干渉してしまい、噛み合い位置がずれたりあるいはスムーズに動作しないという問題が生じる。そのため、図7に示すように、ラック114の先頭から2番目の歯114a2を先端部分を斜めにカットした特殊形状の歯とし、上述したずれた位置同士の歯の干渉が起こらない構造とする必要が生じる。
【0015】その結果、正規の噛み合い歯となる、切り欠き歯車113とラック114との2番目の歯113a2,114a2同士の歯丈方向の噛み合い寸法が少なくなり、噛み合い強度が低下するという問題が生じる。加えて、ラック114の歯114a2の先端形状及び寸法、及びラック114に対する切り欠き歯車113の位置精度等の各精度を非常に高くする必要が生じる。このため、部品加工や組み立て等のコストが高騰するという問題が生じる。
【0016】本発明の目的は、ラックと歯車との噛み合い時にずれた位置同士の歯が互いに干渉せず、しかも正規位置でのラック及び歯車の噛み合い強度をある程度確保し、さらに部品加工や組み立ても容易となる歯車とラックとの噛み合い構造及びこの構造を備えた動作補助装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため、本発明は、駆動源の駆動力により回転する歯車と、この歯車に係合離脱可能に配置され、歯車の係合状態時の回転により所定方向に直線移動するラックとの噛み合い構造において、歯車とラックとが噛合するときの最初の歯をそれぞれ1番目の歯としたとき、歯車の回転方向における1番目の歯が、ラックの2番目以降のラック歯と軸方向に重なる位置を通過可能とし、この通過後にラックの1番目のラック歯と係合することにより、歯車とラックとの噛み合いが始まるようにしている。
【0018】そのため、図7に示すように2番目のラック歯の先端形状を特殊な形状とする必要がなく、歯幅方向における寸法を他の歯と同寸法に構成することが可能となる。この結果、2番目のラック歯と歯車の2番目の歯との噛み合い強度がある程度確保されることとなる。加えて、ラック歯の部品加工が容易なものとなると共に、歯車のラックに対する位置精度もそれ程高くする必要がなくなり組み立ても容易なものとなる。
【0019】また、他の発明は、上述の歯車とラックとの噛み合い構造に加えて、歯車を円周方向の一部のみに歯を有する切り欠き歯車とし、この切り欠き歯車の1番目の歯を、2番目以降の歯より軸方向に短く形成し、ラックの1番目のラック歯を、2番目以降のラック歯より軸方向に長く形成している。そのため、ラックと切り欠き歯車との噛合を解除でき、ラックを元の位置へ手動等で容易に戻すことができる。しかも、切り欠き歯車の1番目の歯が、ラックの1番目のラック歯と確実に係合し始める。その結果、他の歯同士もそれぞれ精度良く噛み合うこととなる。
【0020】また、他の発明は、上述の歯車とラックとの噛み合い構造に加えて、歯車の同軸上には、歯車よりも外径の大きい平歯車が歯車と一体的に形成されていると共に、この平歯車で駆動源側の駆動力を受けるようにし、かつラックが平歯車の一部に重なる位置に配置されている。そのため、制御上、ラックと歯車との位置検出が必要となる場合は、歯車と一体的に回転する平歯車とラックとが重なって配置されているため、容易に位置検出を行わせることが可能な位置関係となっている。
【0021】また、本発明の動作補助装置は、駆動源の駆動力によってスライド移動して、開閉部材に直接または間接的に当接可能な突き出し部材を有し、突き出し部材のスライド動作により開閉部材の動作を補助する動作補助装置であって、突き出し部材にはラックが形成され、このラックと駆動源側に配置された最終歯車との噛み合い構造が、請求項1から3のうちのいずれか1項記載の噛み合い構造となっている。そのため、モータの逆回転駆動等の動作回路が不要で、しかも手動等により突き出し部材を元の位置に戻す動作後の再噛み合い時において上述の各作用を備えた動作補助装置となる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態における歯車とラックとの噛み合い構造及び動作補助装置について図1から図5を用いて説明する。なお、本実施の形態では、本発明の歯車とラックとの噛み合い構造を動作補助装置に用いた例について説明するが、本発明は動作補助装置だけでなく、他の装置に用いてもよい。
【0023】動作補助装置1は、図1及び図2に示すように、DCモータ(以下、単にモータという)2と、モータ2の駆動力を伝達する歯車輪列3と、歯車輪列3を介して入力されるモータ2の駆動力によってスライド移動して扉等の開閉部材4に当接可能な突き出し部材5と、スライド移動後の突き出し部材5を原点位置に復帰させる復帰手段としてのコイルバネ6と、突き出し部材5を所定量移動させた後モータ2の駆動停止を行うためのスイッチ信号を発生させるスイッチ部7と、これらの各部を内部に収納するケース8と、を有している。
【0024】モータ2は、ケース8内に形成されたモータ保持部21内に保持されている。このモータ保持部21は、モータ2を取り囲むように形成されており、モータ2の入力端子接続用の端板21aと、モータ2の側方に沿うように設けられたモータ2の振動を抑えるための緩衝材21bと、モータ2の出力軸22側の端板21cとを備えている。モータ2の出力軸22は、モータ保持部21の端板21cに形成された穴からケース8の内部空間内に突出している。なお、モータ2は、ケース8外に設けられた制御装置(図示省略)によって一方向にのみ回転駆動されるように制御されており、歯車輪列3を介して突き出し部材5を開方向のみに動作させるものとなっている。そのため、本実施の形態の制御装置は、モータ2を反対方向へ駆動するための回路を必要としないものとなっている。
【0025】モータ2の出力軸22のモータ保持部21から突出している部分には、歯車輪列3の一部を構成するウォーム34が連結板34aを介して一体回転可能に取り付けられている。そのため、モータ2の駆動力は、ウォーム34を介して歯車輪列3側に減速されて伝わるようになっている。なお、ウォーム34の先端部分は、ケース8の側壁内側に形成された軸受け部23に回転自在に支承されている。歯車輪列3は、このウォーム34と、ウォーム34に噛合する第1歯車部31と、この第1歯車部31に噛合する第2歯車部32と、この第2歯車部32に噛合する第3歯車部33から構成されている。
【0026】第1歯車部31は、ケース8に両端を支持された金属製の軸24に回転自在に支持されており、ウォーム34と噛合する大径の受け歯車31aと、第2歯車部32の受け歯車32aと噛合する小径の送り歯車31bから構成されている。これらの受け歯車31aと送り歯車31bとは、一体的に形成されている。
【0027】第2歯車部32は、突き出し部材5の動作中に、万が一、突き出し部材5に対してケース8内に押し込む方向、あるいはケース8から引き出される方向に無理な力が働いた場合、その力を逃がす働きをするための構成を有している。すなわち、第2歯車部32は、第1歯車部31の送り歯車31bと噛合する受け歯車32aと、第3歯車部33の受け歯車となる平歯車35と係合する送り歯車32bと、受け歯車32aと送り歯車32bとの間に挟まれたSUS製のプレート32cと、受け歯車32aと送り歯車32bとをプレート32cを挟んだ状態で一体化すると共に過負荷対策のためのクラッチバネ32dとから構成されている。
【0028】受け歯車32aは、送り歯車32bと同軸上に重ねて配置されている。受け歯車32aは、ケース8に両端を回転自在に支承された回転軸25と送り歯車32bとの間で、クラッチバネ32dによって送り歯車32b方向に付勢されている。また、送り歯車32bは、回転軸25と一体的に設けられている。
【0029】このように構成された第2歯車部32は、通常の動作においては、受け歯車32aがクラッチバネ32dの付勢力によって送り歯車32b側へ押し付けられ、受け歯車32aと送り歯車32bとがプレート32cを挟んだ状態で一体的に回転するようになっている。そして、受け歯車32aが第1歯車部31の回転を受けると、この回転が送り歯車32bから第3歯車部33に減速しながら伝達される。
【0030】なお、受け歯車32aと送り歯車32bとは、上述したようにクラッチバネ32dの付勢力によって一体化されている。このため、所定のトルク以下の回転力が伝達されてきた場合は、受け歯車32aと送り歯車32bとが一体的に回転する。しかしながら、伝達されてきた回転力が所定のトルク以上の場合、クラッチバネ32dが滑ってその回転力が伝達されず、受け歯車32aと送り歯車32bとは一体的には回転しないようになっている。
【0031】この構成によって、開閉部材4が手動等によって閉方向(図1において矢示B方向)に動作され、突き出し部材5が図1における矢示C方向、すなわちケース8の内方に動作した場合、この突き出し部材5の動作によって第3歯車部33の平歯車35が矢示E方向に回転し、その力が送り歯車32bに伝わり送り歯車32bが逆回転したとしても、この回転力が所定トルク以上のものの場合は受け歯車32aに伝達されないものとなる。
【0032】また、突き出し部材5を手前側に引っ張る等して、突き出し部材5が無理な力で図1における矢示D方向、すなわちケース8の外方に動作した場合、この突き出し部材5の動作によって第3歯車部33の平歯車35が矢示F方向に回転し、その力が送り歯車32bに伝わり送り歯車32bが回転したとしても、この回転力が所定のトルク以上のものの場合は受け歯車32aに伝達されないものとなる。すなわち、開閉部材4が強い力で閉じられたり、突き出し部材5を手前側に無理な力で引っ張ったとしても、送り歯車32bが空回りし、各歯車の歯先等が損傷してしまうことが防止される。なお、このような第2歯車部32の過負荷防止機構は、制御装置の故障により突き出し部材5の駆動制御が不能になった際に、飛び出し位置で停止してしまった突き出し部材5を、原位置に戻す場合にも効果を発揮するものとなる。
【0033】第3歯車部33は、ケースに形成された軸支持部に回転中心軸の両端が回転自在に支持されており、第2歯車部32の送り歯車32bと噛合する大径の平歯車35と、この平歯車35と同軸上に設けられた本発明の歯車となる小径の切り欠き歯車36から構成されている。これらの平歯車35と切り欠き歯車36とは、一体的に形成されている。
【0034】平歯車35は、第2歯車部32の送り歯車32bからモータ2の駆動力を受ける第3歯車部33の受け歯車となっており、第2歯車部32の回転を受けて切り欠き歯車36と一体的に回転するものとなっている。この平歯車35の切り欠き歯車36が設けられた側の面には、モータ2への電力の供給を停止させるためのスイッチ信号をスイッチ部7に出力させるため、スイッチ部7を動作させるカム溝35aが形成されている。なお、スイッチ部7の構成に関しては、後述する。
【0035】切り欠き歯車36は、歯車輪列3の最終段となっており、モータ2の駆動力によって一方向にのみ回転するようになっている。この切り欠き歯車36は、突き出し部材5に形成されたラック51のラック歯51aに係合離脱可能となっている。以下に、この切り欠き歯車36とラック51との噛み合い構造について詳細に説明する。
【0036】切り欠き歯車36は、外周の一部にのみラック歯51aと係合する歯36aが形成されており、他の部分には歯が形成されていない。そのため、切り欠き歯車36は、歯36aが形成されている部分がラック51に対向している際には、歯36aがラック歯51aと係合するが、歯36aが形成されていない部分がラック51に対向している際には、ラック歯51aとの係合関係が絶たれるようになっている。
【0037】なお、切り欠き歯車36の歯36aとラック51のラック歯51aとの噛み合いは、常に同じ歯同士が噛み合うようになっている。すなわち、図3に示すように、切り欠き歯車36の回転方向における1番目の歯36a1は、ラック51のスライド移動方向における1番目のラック歯51a1と噛み合うようになっている。
【0038】図3及び図4に示すように、切り欠き歯車36の1番目の歯36a1は、2番目以降の他の歯36aより軸方向に短く形成されている。このため、切り欠き歯車36とラック51との噛み合いが始まる際、1番目の歯36a1は2番目のラック歯51a2にぶつからずにラック歯51a2の軸方向に重なる位置を通過し、この通過後、1番目のラック歯51a1と当接すると共に、続く2番目の歯36a2が2番目のラック歯51a2に当接することができるようになっている。
【0039】すなわち、円形状の切り欠き歯車36と直線状のラック51とを噛み合わせる際、各歯同士を深く確実に噛み合わせようとすると、円形の切り欠き歯車36の歯36aの回転軌道L内にラック51の移動方向における先頭から2番目のラック歯51a2が配置されてしまう。そのため、切り欠き歯車36の1番目の歯36a1がラック51の1番目のラック歯51a1にぶつかる前に、2番目のラック歯51a2にぶつかってしまい、スムーズに噛み合わないという問題が生じる。そのため、従来は、図7に示すように、2番目のラック歯51a2の先端を削り、切り欠き歯車36の1番目の歯36a1がぶつからないようにしているが、このようにすると2番目同士の歯の噛み合い効率が良くない。
【0040】したがって、本発明の噛み合い構造では、切り欠き歯車36及びラック51の各歯の歯丈寸法を他の歯と同じものとし、切り欠き歯車36の1番目の歯36a1がラック51の2番目のラック歯51a2の軸方向に重なる位置を通過できるようにし、さらに通過後にラック51の1番目のラック歯51a1と係合することによって、切り欠き歯車36とラック51との噛み合い位置を調節するようにしている。
【0041】一方、突き出し部材5に形成されたラック51は、上述の切り欠き歯車36と係合離脱自在に配置されており、切り欠き歯車36の歯36aと同数のラック歯51aを有している。このラック51のスライド移動方向における1番目のラック歯51a1は、2番目以降のラック歯51aより軸方向に長く形成されている。そのため、1番目のラック歯51a1は、他の歯36aより短く形成され、2番目のラック歯51a2の軸方向に重なる位置を通過してきた切り欠き歯車36の1番目の歯36a1が当接できるようになっている。そして、この1番目のラック歯51a1は、2番目のラック歯51a2の図2における下側を通過した切り欠き歯車36の1番目の歯36a1を突き当てることにより、切り欠き歯車36とラック51との噛み合い位置を決めるためのものとなっている。
【0042】そして、このように1番目の歯36a1,51a1同士が突き当たった後、切り欠き歯車36がさらに図1において矢示F方向に回転すると、歯36aとラック歯51aとが順に噛み合いながら、ラック51が徐々に前方(図1において矢示D方向)へ直線移動させられる。なお、このとき、同時に噛み合う歯数は、このスライド移動に必要な数、例えば3つとなっている。
【0043】このようなラック51が形成された突き出し部材5は、ラック51が歯車輪列3の最終段の切り欠き歯車36の歯部と係合し、モータ2の駆動力を受けることにより、ケース8内に形成されたガイドレール10(図2参照)に案内されて、図1において矢示D方向にスライド移動するようになっている。この突き出し部材5は、長尺状部材で形成されており、後端近傍に上述のラック51が形成されている。そして、このラック51が形成されている部分は、切り欠き歯車36と一体的に形成された平歯車35の一部と重なるように配置されている。なお、このラック51を平歯車35の一部と重なる構成とすると、例えば、磁石等を用いてラック51と第3歯車部33との位置検出手段を構成する場合に、その磁石等を配置し易いものとなる。
【0044】また、図1に示すように、突き出し部材5の後端近傍部分には、凹部52aを備えた係止部52が設けられており、凹部52aに板状バネ15の先端が係合するようになっている。これにより、突き出し部材5がケース8内で確実に保持される。さらに、突き出し部材5の後端とケース8との間には、突き出し部材5がコイルバネ6の付勢力によって原点位置に復帰する際のケース8に対する衝撃を和らげるための緩衝材83が配置されている。
【0045】突き出し部材5は、モータ2の駆動力を受けて係止部52の板状バネ15への係止を乗り越え、矢示D方向にスライド移動することによって、先端部分がケース8から外部へ突出するようになっている。このケース8から突出する部分には、上述した開閉部材4が配置されている。すなわち、この突き出し部材5は、モータ2の駆動力で外方(図1において矢示D方向)へスライド移動することにより、開閉部材4に当接し開閉部材4を開方向(図1において矢示A方向)に突き出すものとなっている。
【0046】なお、突き出し部材5の途中部分から先端部分にかけての部位は、ケース8に形成されたガイド筒11内に収納されており、上述のモータ2の駆動によって先端部分がガイド筒11から外部へ突出するようになっている。この突き出し部材5の配置に関しては、突き出し部材5と開閉部材4との配置関係、及びモータ2の始動時から突き出し部材5を開閉部材4へ当接させるまでの時間制御の関係等、種々の関係により適宜変更可能である。
【0047】また、動作補助装置1は、突き出し部材5と切り欠き歯車36との係合が外れた際、突き出し部材5をスライド移動前の位置(原点位置)に復帰させるための圧縮型のコイルバネ6をケース8内に備えている。このコイルバネ6は、突き出し部材5の動作により圧縮され、その圧縮状態で突き出し部材5のラック51と切り欠き歯車36との係合が外れると、弾性エネルギーを発揮して突き出し部材5を原点位置に復帰させる。なお、原点位置まで戻された突き出し部材5は、係止部52が板状バネ15に係止され、ケース8内の原点位置で保持されることとなる。
【0048】さらに、ケース8内には、突き出し部材5と切り欠き歯車36との係合が外れ、モータ2の駆動力が突き出し部材5へ伝達されない状況となった際に、モータ2への電力の供給を断つためのスイッチ信号を出力するスイッチ部7が備えられている。このスイッチ部7は、平歯車35に形成されたカム溝35aに係合するガイドピン71eを備えたガイド片71cを有するスイッチ片部71と、スイッチ片部71を全体的に図1において矢示H方向へ回動させるためのバネ72と、スイッチ片部71のスイッチ片71aと接触するタクトスイッチ73と、から構成されている。そして、突き出し部材5と切り欠き歯車36との係合が外れたタイミングで、ガイドピン71eがカム溝35aの広幅部35cの外側に、バネ72の図1における矢示G方向への付勢力により移動すると、これによりスイッチ片71aが矢示H方向に回動しタクトスイッチ73に接触する。この動作により、モータ2を駆動停止させるための停止信号を出力する。
【0049】平歯車35のカム溝35aは、溝幅の狭い狭幅部35bと、溝幅の広い広幅部35cから構成されており、ガイド片71cの嵌まり込んでいる位置が狭幅部35bから広幅部35cに切り換わる際に上述のタクトスイッチ73の入力がなされる。なお、この駆動停止用にスイッチ信号が出力されるタイミングは、切り欠き歯車36とラック51との係合が外れた後、この切り欠き歯車36が再びラック51に係合してしまうほど回転する前であればいつでもよい。
【0050】なお、このように駆動停止した後、再び動作補助装置1に駆動開始の信号が入力され、モータ2の駆動が開始されると、この駆動途中でガイド片71cの嵌まり込んでいる位置が逆に広幅部35cから狭幅部35bに切り換わることとなる。この場合は、タクトスイッチ73に接触した状態のスイッチ片71aがタクトスイッチ73から引っ張りバネ72の付勢力に抗して引き離されるが、この際特に信号が出力される訳ではなく、この動作は次の信号出力に備える準備動作となっている。
【0051】なお、引っ張りバネ72は、圧縮方向に付勢力を有し、一端がケース8に立設された支持軸17に係止され他端が上述のスイッチ片部71の係合片71bに係止されている。そのため、引っ張りバネ72は、係合片71bを常時矢示G方向に引っ張ることによって、スイッチ片部71を矢示H方向へ回動させる力を備えている。また、タクトスイッチ73は、スイッチ片部71が矢示H方向へ回動することによってスイッチ片71aが接触可能な位置に配置されている。このタクトスイッチ73は、回路基板74上に配置されており、モータ2を停止させる駆動停止信号を生成するものとなっている。
【0052】上述したように構成された動作補助装置1は、例えば、図5に示すような筐体としての冷蔵庫92のフレーム93の扉94と対向する位置に取り付けられる。すなわち、この動作補助装置1は、冷蔵庫92の扉94の開放を補助するための装置となっている。なお、扉94は、冷蔵庫92に形成された冷蔵室95の開放端部分を開放/閉塞するためのものとなっており、冷蔵室95の開放端の一部に一端が回動自在に支持されている。すなわち、上述した実施の形態における開閉部材4に相当するものが、扉94となっている。この扉94の他端には、吸着マグネット96が備えられており、閉塞時に冷蔵庫92本体の冷蔵室95の開放端の一部に磁気的作用を利用して扉94を吸着保持させるためのものとなっている。動作補助装置1は、この吸着保持に抗して扉94を前方へ押し出すために冷蔵庫92に取り付けられる。
【0053】このように冷蔵庫92に取り付けられた動作補助装置1は、例えば、冷蔵庫92の扉94の前面に設けられた把手97に、ユーザーが手を触れると駆動スイッチが入力するようになっている。そのため、ユーザーが把手に手を触れると、扉94が吸着保持されない位置まで前方へ押し出され、その後軽い力で扉94を開放することができるようになっている。
【0054】なお、コイルバネ6がケース8に引っ掛かる等して、突き出し部材5が原点位置に復帰せず途中位置で停止してしまったとしても、突き出し部材5のラック51が切り欠き歯車36と係合していないため、扉94を閉めたり手動等によって容易に突き出し部材5を原点位置に復帰させることができる。
【0055】また、突き出し部材5の前方への駆動が終了し切り欠き歯車36とラック51との係合が外れた後、さらに若干切り欠き歯車36を同方向に回転させると、スイッチ部7のガイド片71cが平歯車35のカム溝35aに案内されて図1における矢示H方向に回動する。すなわち、ガイド片71cの嵌まり込んでいる位置が、カム溝35aの狭幅部35bから広幅部35cに切り換わることによって、スイッチ部7のスイッチ片部71が引っ張りバネ72の引っ張り方向(矢示G方向)への付勢力により矢示H方向に回動する。これにより、スイッチ片部71のスイッチ片71aが、タクトスイッチ73に接触する。このため、タクトスイッチ73からモータ2を駆動停止するためのスイッチ信号が出力され、制御装置の制御によりモータ2への電力の供給が停止される。この結果、モータ2の駆動による第1、第2及び第3歯車部31,32,33の回転は停止する。
【0056】なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施の形態では、動作補助装置1を冷蔵庫92に取り付けたが、特にこれに限定されるものではなく、他の筐体、例えば、箪笥や机等のスライド式の引き出しを有するものや、金庫等の旋回式の扉を有するものに取り付けても良い。
【0057】また、本実施の形態では、突き出し部材5を、開閉部材4に直接当接可能なものとしているが、突き出し部材5は、何らかの部材を介し間接的に開閉部材4に当接可能なものとしてもよい。
【0058】また、上述の実施の形態の動作補助装置1では、切り欠き歯車36とラック51との係合が外れた後、スイッチ片71aをタクトスイッチ73に接触させることによりモータ2を駆動停止させる信号を出力させ、切り欠き歯車36の回転を停止させるようにしたが、他の方法により係合が外れた後のタイミングでモータ2を停止させるようにしてもよい。
【0059】例えば、モータ2に流れる電流値の変化を利用して、係合が外れた後のタイミングでモータ2を停止させるようにしてもよい。すなわち、モータ2に流れる電流値は、起動時電流が一番高い。次いで、突き出し部材5が扉94を押している間も高い。なお、突き出し部材5を扉94方向へ突き出させている間は、コイルバネ6の付勢力に抗してモータ2を駆動させているため、モータ2への負荷は徐々に高まることとなり、モータ2へ流れる電流値もこれに伴って徐々に上昇することとなる。そして、扉94を押し切った後、切り欠き歯車36とラック51との係合が外れると、モータ2にかかる負荷は一気に小さくなるため、モータ2に流れる電流値も一気に小さくなる。この電流値の変化を利用することにより、係合が外れたタイミングでモータ2への電力の供給を停止するようにしてもよい。
【0060】また、さらには、このように電流値の変化を利用するのではなく、例えば、把手97への接触により入力された動作補助装置1のオン時を測定基準時として、その後のモータ2の駆動時間を制御する等、他の制御方法によってモータ2の停止時を設定して、切り欠き歯車36を所定位置で停止させるようにしても良い。
【0061】また、さらに本実施の形態では、円周の一部に歯を有する切り欠き歯車36と後端にラック歯51aを有するラック51との噛合について説明したが、全周に歯を有する歯車や全長に渡ってラック歯を有するラックとしても良い。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の歯車とラックとの噛み合い構造によれば、歯車の1番目の歯が、ラックの2番目以降のラック歯と軸方向に重なる位置を通過可能とし、この通過後にラックの1番目のラック歯と係合することにより、歯車とラックとの噛み合いが始まるようにしているため、歯車及びラック歯をそれぞれ同じ歯丈とすることが可能となり、互いの噛み合いを確実なものとすることができる。その結果、係合状態を解いた後のラックと歯車との再噛み合い時にずれた位置同士の歯が互いに干渉せず、しかも正規位置でのラック及び歯車の噛み合い強度をある程度確保することが可能となる。また、ラック歯の先端部分を特殊な形状とする必要がなく、部品加工や組み立ても容易なものとすることが可能となる。
【0063】また、本発明の動作補助装置によれば、上述の噛み合い構造を備えており、係合が外れた後の再噛み合いがスムーズに行われることとなる。そのため、モータの逆回転して突き出し部材を元の位置に戻しておくための動作回路やそれに付随する構成が不要となるため、低コストでしかも動作の安定性の良い動作補助装置とすることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000002233
【氏名又は名称】株式会社三協精機製作所
【出願日】 平成11年9月8日(1999.9.8)
【代理人】 【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
【公開番号】 特開2001−74116(P2001−74116A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−253782