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【発明の名称】 トロイダル型無段変速機
【発明者】 【氏名】大野 誉洋

【要約】 【課題】トロイダル型無段変速機において、ローラの円板からの脱落を防止してシステムの信頼性を向上すること。

【解決手段】入力円板と出力円板との間のトロイダル状間隙にまたがるローラ9を介して牽引力を伝える。ローラ9を回転自在に支持するキャリッジ11を介して油圧シリンダ17からローラ9に力を与え、この力をローラ9が受けるトルク伝達反力とバランスさせる。キャリッジ11がその第2の部分16の軸線53回りに回転する角度を、変速に必要な所要の範囲に、回り止め機構Aによって規制する。回り止め機構Aは第2の部分16に形成された軸50と、この軸50を遊びを持って嵌め入れるスリット52とを有する。スリット52は油圧シリンダ17の回転規制された内シリンダケース27の延設部51に設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】入力円板と出力円板の間に形成されるトロイド状間隙にまたがって配置される回転子と、この回転子を回転自在に支持するキャリッジと、キャリッジの端部を軸方向に移動自在に支持すると共に、回転子が受けるトルク伝達反力に抗する力をキャリッジを介して与える油圧シリンダとを備え、キャリッジと油圧シリンダの固定部との間に、キャリッジの軸線周りの回転を回転子の変速領域に対応する範囲内に規制する回り止め機構を設けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】請求項1記載のトロイダル型無段変速機において、上記回り止め機構は、キャリッジの径方向に突出する軸と、油圧シリンダのシリンダケースに延設された延設部に形成されて軸を遊嵌させるスリットとを含むことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入力円板と出力円板の間のトロイダル状間隙に介在する回転子の向きを、所望の変速比が得られるように油圧で制御するトロイダル型無段変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のトロイダル型無段変速機のバリエータでは、位置可変の複数群の回転子が、互いに反対方向に回転する入力用及び出力用の同軸円板の対向する面に形成された一部トロイド状の対応する軌道面間で牽引力を伝えるものである。入力円板及び出力円板は、動力源に連なる入力軸を挿通させる中心孔を有しており、入力円板が入力軸に一体回転可能に連結されると共に、出力円板が入力軸に回転自在に支持されている。
【0003】上記の入力円板から出力円板に伝えられる回転速度は、回転子の位置が変わると変化する。すなわち、回転子が相対的に高い半径位置で入力円板と接触すると共に、相対的に低い半径位置で出力円板と接触する場合、出力円板は入力円板よりも早く回転し、バリエータは高ギヤ比に設定される。一方、回転子が相対的に低い半径位置で入力円板と接触すると共に、相対的に高い半径位置で出力円板と接触する場合、出力円板は入力円板よりも遅く回転し、バリエータは低ギヤ比に設定される。
【0004】通例、回転子はその支軸に直交する方向へ延びるキャリッジによって回転自在に支持されており、トーラスの中心円を含む平面に対してキャリッジの軸線が所定のキャスタ角を持って傾斜するようにしてある。また、入力円板と出力円板は油圧シリンダにより互いに近づけられる方向に付勢されている一方、回転子もこれを支持するキャリッジを介して油圧シリンダにより円板の軌道面に押し付けられる方向に付勢されている。そして、これら油圧シリンダが発生する油圧を制御することにより、回転子が受けるトルク伝達力にバランスする力を、キャリッジを介して回転子に与える。これにより、入力円板のトルクに対する出力円板のトルクが釣り合うようにローラ角度が変化し、適切なトルク比に維持する。
【0005】実際には、各種の必須パラメータ(例えば、操作者の要求、エンジン負荷、エンジン速度、及び最終出力速度等)の種々の組み合わせに関して、ローラが受ける固有のトルク負荷があるので、制御システムは、すべての必須パラメータを表す入力を受け取り、入力円板と出力円板のトルク比を適切に保つ時、ローラが受けるトルク反力に合致した適切な油圧を油圧シリンダ内で設定するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、車両の動力源であるエンジン等が逆回転した場合に、システムが不安定になって変速制御が正常に働かなくなり、その結果、円板に対する回転子の角度が過大になり、回転子が円板から飛び出してシステムが機能しなくなるおそれがある。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は回転子の円板からの脱落を防止してシステムの信頼性を向上することができるトロイダル型無段変速機を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的を達成するための課題解決手段として、請求項1記載の発明は、入力円板と出力円板の間に形成されるトロイド状間隙にまたがって配置される回転子と、この回転子を回転自在に支持するキャリッジと、キャリッジの端部を軸方向に移動自在に支持すると共に、回転子が受けるトルク伝達反力に抗する力をキャリッジを介して与える油圧シリンダとを備え、キャリッジと油圧シリンダの固定部との間に、キャリッジの軸線周りの回転を回転子の変速領域に対応する範囲内に抑制する回り止め機構を設けたことを特徴とするものである。
【0008】本発明では、キャリッジの回転できる範囲を規制することにより、回転子の移動領域を変速領域内にとどめているので、回転子が円板から脱落するような不具合の発生を未然に防止することができ、システムの信頼性を向上できる。請求項2記載の発明は、請求項1において、上記回り止め機構は、キャリッジの径方向に突出する軸と、油圧シリンダのシリンダケースに延設された延設部に形成されて軸を遊嵌させるスリットとを含むことを特徴とするものである。本発明では、簡単な構造にてシステムの信頼性を向上することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1の実施の形態のトロイダル型無段変速機の要部の模式的断面図である。図1では、共通の軸線1を中心として回転可能な入力円板2と出力円板3を示しており、入力円板2はシャフト4を介して動力源5によって駆動される。各円板2,3にはそれぞれレース6,7が形成されており、これらレース6,7の表面は共通の軸線1を有する仮想トーラスの輪郭部の一部に一致している。トーラスの輪郭の他の部分8は破線で示されている。
【0010】回転子としてのローラ9は、円板2,3間のトロイド状間隙Sにまたがっており、レース6,7と接触して回転することによって、円板2,3間に牽引力を伝達する。ローラ9は軸線10を中心として回転するようにキャリッジ11内の転がり軸受によって回転自在に支持されている。ローラ9は通常3個で、軸線1を中心とする等角度距離に設けられているが、図1ではそのうち2つのローラのみを示してある。
【0011】キャリッジ11とローラ9が矢印12で示されるように傾斜することによって向きを変えて、入力円板2から出力円板3へ伝えられる変速比が変化する。ローラ9が入力円板2のレース6と比較的小さい半径で接触し、且つ出力円板3のレース7と比較的大きな半径で接触した場合には、変速機は低い変速比となる。逆に、ローラ9がレース6及びレース7とそれぞれ比較的大きな変速比及び比較的小さな変速比で接触したときには、出力円板3は入力円板2よりも高速で回転し、変速機は高い変速比となる。
【0012】次いで、ローラ9とこれを支持するキャリッジ11の要部を示す概略図である図2を参照して、キャリッジ11はローラ9と一体回転する支軸13を回転自在に支持するための転がり軸受14を取り付けた第1の部分15と、この第1の部分15に固定された中空のリンクシャフトの形態を呈する第2の部分16とを含んでいる。第2の部分16は油圧シリンダ17内で移動自在なピストン18に連結されている。油圧シリンダ17はピストン18がローラ9に及ぼす力を制御し、この力がローラ9が受けるトルク反力とバランスするようになっている。
【0013】そして、本実施の形態の特徴とするところは、キャリッジ11のリンクシャフトとしての第2の部分16に、径方向に突出する例えば一対の軸50を設け、各軸50を、油圧シリンダ17の固定側部分である内シリンダケース27に延設された延設部51の対応するスリット52に、遊びを設けて嵌め入れてあり、これにより、図3に示すように、キャリッジ11の第2の部分16の軸線53回りの回動を所要の角度範囲Bに規制する回り止め機構Aを構成している点にある。このようにキャリッジ11の回動角度を規制することにより、ローラ9の変位を変速に必要な範囲にとどめ、これにより、ローラ9の各円板2,3からの飛び出しを確実に防止している。
【0014】第1の部分15は、ローラ9の両端面に対して所定の隙間を設けて対向する一対の対向板19,20を有しており、これら対向板19,20同士はローラ9の周面9aの一部に所定の隙間を設けて対向する端板21で互いに連結されている。この端板21がリンクシャフトとしての第2の部分16の端部に固定されている。また、端板21には、圧送ポンプ(図示せず)によって中空シャフトからなる第2の部分16の内部の通路22を通して強制潤滑方式で送られる潤滑油をローラ9の周面9aに供給するためのポート23が開口されている。
【0015】また、第1の部分15はローラ9の両側にそれぞれ支軸13の両端を挿通させるボス部24を有し、各ボス部24と対応する支軸13の端部との間にそれぞれ転がり軸受14が介在している。油圧シリンダ17は、本バリエータの固定構造25に固定される外シリンダケース26と、この外部ハウジング26内に収容される筒状の内部ライナとしての内シリンダケース27とを有している。
【0016】外シリンダケース26は筒状部28と環状の端壁29とを有し、内シリンダケース27は筒状部30と環状の端壁31とを有している。内シリンダケース27の内周面がピストン18を摺動させるようになっている。端壁29および31は互いにピストン18を挟んだ反対側に配置されている。両端壁29,31と内シリンダケース27の筒状部30により区画されるシリンダ室は、ピストン18を挟んで互いに対向する一対のチャンバ32,33に分割されている。各チャンバ32,33は対応する油圧ポンプ34,35および対応する圧力制御弁36,37に接続されている。圧力制御弁36,37を操作することによって、ポンプ34,35からチャンバ32,33に送給される作動油の圧力を変更して、ピストン18がローラ9に及ぼす力を制御し、この力がローラ9が受けるトルク反力とバランスするようにしている。
【0017】内シリンダケース27は、外部ハウジング26の筒状部28の内周溝に嵌め入れられたスナップリング38によって軸方向の変位が規制されている。また、内シリンダケース27の筒状部30の先端に形成された凹部39に、外シリンダケース26の端壁29の内面に形成された突部40が係合することにより、内シリンダケース27の外シリンダケース26に対する回転が規制されている。また、内シリンダケース27は端壁31の内周縁部に筒状部30と反対側へ延びるスリーブからなる上述した延設部51を有しており、この延設部51は、後述するスリーブ43の周面に沿っている。延設部51には軸方向に延びる一対のスリット52が対向位置に形成されており、各スリット52には、キャリッジ11の第2の部分16から径方向に突出形成された一対の軸50がそれぞれ嵌め入れられている。スリット52は軸線53に沿う方向への軸50の移動は許容する。
【0018】キャリッジ11の第2の部分16の端部には一部球面状の外面を有するワッシャ41が固定されており、このワッシャ41は、ピストン18のディスク状コア42の一部球面状の支持孔56に嵌め合わされて球面支持されている。ディスク状コア42は一対のスリーブ43,44の端部のフランジ部45,46内に収められ圧入固定されている。各スリーブ43,44は端壁29,31の中心孔を貫通している。47,48は端壁29,31の中心孔に設けられて、スリーブ43,44との間を封止するシールである。49はピストンリングを構成する環状のシールである。
【0019】ピストン18は内シリンダケース27内での単純な前後運動に制限され、ピストン18と油圧シリンダ18の軸線は一致するようになっているが、キャリッジ11の端部がワッシャ41を介して球面支持されているので、ローラ9の中心54が湾曲経路55に追従することが可能となっている。この経路は第1図の仮想トーラスの中心円の円周の部分に対応している。本実施の形態によれば、回り止め機構Aによってキャリッジ11の回転できる範囲を規制することにより、ローラ9の移動領域を変速領域内にとどめているので、ローラ9が入力円板2および出力円板3から脱落するような不具合の発生を未然に防止することができ、システムの信頼性を向上できる。しかも、これを、キャリッジ11から突出する軸50を延設部51のスリット52に嵌め入れるだけの簡単な構造にて達成することができる。
【0020】なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、軸50の数は1または複数であれば良い。キャリッジ11の回動を規制するための部分は、油圧シリンダ17の固定側部分であれば、どの部分であっても良い。その他、キャリッジ側にスリットを設け、油圧シリンダの固定側部分に軸を設けるようにすること等、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年9月6日(1999.9.6)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−74114(P2001−74114A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−251890