| 【発明の名称】 |
可変径プーリ用スタビライザ |
| 【発明者】 |
【氏名】魚田 雅史
|
| 【要約】 |
【課題】可変径プーリの動力伝達リングの振動を抑制するために、異物に対して密封できるスタビライザを利用する場合、動力伝達リング等が傷み易い。
【解決手段】本スタビライザ3では、ベース4に立設した支軸5に回動アーム6のボス20を回動自在に、且つ軸方向に遊びを持って移動自在に支持する。ボス20の端面24,25と、支軸5に取り付けられたストッパ9とナット10との端面38,39との間に隙間28,29が形成され、隙間の総和量が適切な遊び量を確保する。回動アーム6は付勢部材8により付勢されつつローラ7を動力伝達リング206の外周面に押圧する。ボス20の両端の内周面26にシール部材17が設けられ、軸受ブッシュ16を密封する。調整機構により隙間量を調節でき、振動を防止できる最適な遊び量を確保できる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】可変径プーリの一対のプーリ主体間に偏心可能に挟持される動力伝達リングの振動を抑制するスタビライザにおいて、上記動力伝達リングの軸心に平行に延び、ベースに取り付けられる支軸と、第1および第2の端部を有し、支軸の周りに回動自在に支持されるボスを第1の端部に有する回動アームと、この回動アームの第2の端部に回動自在に支持され、動力伝達リングの外周面に摺接するローラと、このローラが動力伝達リングの外周面を押圧する方向に回動アームを付勢する付勢部材と、ボスの一対の端面との間に隙間を設けてそれぞれ対向すると共に支軸の軸方向に位置決めされた一対の対向部材とを備え、各対向部材と対応するボスの端面との間の隙間の総和量だけ、回動アームが支軸の軸方向に遊びを持って変位できるようにしてあり、ボスの軸方向の両端の内周面にそれぞれ設けられた一対のシール部材によって、ボスの内周面と支軸の外周面との間が密封されていることを特徴とするスタビライザ。 【請求項2】請求項1に記載のスタビライザにおいて、上記少なくとも一方の対向部材の支軸に対する取付位置を調整可能としてあることを特徴とするスタビライザ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、プーリに巻き掛けられたベルトの有効径を変化させることができる可変径プーリの振動を抑制するスタビライザに関する。特に、可変径プーリの一対のプーリ主体間に偏心可能に挟持されてベルトと係合する動力伝達リングの振動を抑制するためのスタビライザに関する。 【0002】 【従来の技術】上述の可変径プーリとして、近年、互いの間にV溝を区画し互いに軸方向に相対移動自在な一対のプーリ主体、これらプーリ主体を相対的に近づける方向に付勢する弾性部材、および上述のプーリ主体間に偏心可能に挟持され且つ外周面にベルトが係合される動力伝達リングを含むタイプのものが提供されている。このタイプのものでは、動力伝達リングをプーリ主体に対して同心に配置した状態と、動力伝達リングをプーリ主体の軸心に対して偏心させた状態との間で、動力伝達リングを変位させることで、ベルトを可変径プーリに対する所定の有効径とすることができる。 【0003】動力伝達リングは、偏心時に、周方向の一点のみでプーリ主体と接触することとなるので、動力伝達リングの回動軸線はプーリ主体に対して平行度を維持し難く、倒れ易い傾向にある。また、動力伝達リングは、プーリ主体に対して同心となるように弾性部材によって付勢されているので、ベルトの張力変動に応じて径方向に振動する。このような動力伝達リングの径方向振動や、動力伝達リングの回動軸線の倒れを防止するためにスタビライザが設けられている。 【0004】このスタビライザとしては、例えば、動力伝達リングの外周面に接触するローラと、このローラを変位可能且つ回転自在に支持する回動アームと、ローラを弾力的に動力伝達リングの外周面に押圧するための弾性部材とを有するものがある。回動アームは、一端にローラを支持しつつ、他端にボスを有し、このボスが支軸と回動自在に嵌合して、回動アームは支軸の周りに揺動自在に支持されている。これにより、ローラが動力伝達リングの偏心移動に対して追従するようになっている。 【0005】従来、ローラおよびこれを支持する回動アームは、支軸の軸方向に関する位置を固定されていたため、動力伝達リングの外周面のベルト係合用の断面V字形形状の周溝が摩耗し易いという欠点があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本願発明者は、回動アームのボスの両端面に隙間を設けて対向する一対の対向部材を設け、回動アームを支軸の軸方向に、遊びを持って移動可能とすることを考えた。このようなスタビライザでは、回動アームの遊び量が大き過ぎると、動力伝達リングの回動軸線が倒れるような振動を抑制する効果が弱まる。一方、遊び量が小さ過ぎると、動力伝達リングの周溝が摩耗し易くなる。このため、遊び量が最適量に設定されることが必要である。 【0007】ところで、可変径プーリが自動車に利用される場合には、いわゆるエンジンルーム内に配置されるが、スタビライザにも泥水等の異物が付着し易くなる。支軸と回動アームとの嵌合し合う部分に異物が侵入すると、回動アームがスムーズに揺動できなくなる虞がある。そこで、回動アームのボスの両端面と、これらに対応する対向部材の端面との間の隙間にそれぞれ、シール部材である弾性部材からなるOリングを密着状態で挟み込むことを考えた。 【0008】しかしながら、これでは、Oリングが圧縮される分しか実質的な遊び量を確保できないので、実質的な遊び量が小さくなってしまう。その結果、例えば、ローラおよび動力伝達リングの周面が摩耗し易くなる結果、スタビライザや動力伝達リングの長寿命化が困難であった。そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、異物の侵入を防止しつつ、長寿命化できる可変径プーリ用スタビライザを提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段および発明の効果】請求項1に記載の発明の態様は、可変径プーリの一対のプーリ主体間に偏心可能に挟持される動力伝達リングの振動を抑制するスタビライザにおいて、上記動力伝達リングの軸心に平行に延び、ベースに取り付けられる支軸と、第1および第2の端部を有し、支軸の周りに回動自在に支持されるボスを第1の端部に有する回動アームと、この回動アームの第2の端部に回動自在に支持され、動力伝達リングの外周面に摺接するローラと、このローラが動力伝達リングの外周面を押圧する方向に回動アームを付勢する付勢部材と、ボスの一対の端面との間に隙間を設けてそれぞれ対向すると共に支軸の軸方向に位置決めされた一対の対向部材とを備え、各対向部材と対応するボスの端面との間の隙間の総和量だけ、回動アームが支軸の軸方向に遊びを持って変位できるようにしてあり、ボスの軸方向の両端の内周面にそれぞれ設けられた一対のシール部材によって、ボスの内周面と支軸の外周面との間が密封されていることを特徴とするスタビライザを提供する。 【0010】本態様によれば、回動アームの遊び量を確保するための上述の隙間内にシール部材を配置しないので、隙間の全体を遊び領域として活用できる結果、遊び量を隙間の総和量と同等に、適切な遊び量で十分に確保できる。従って、回動アームを介してローラは動力伝達リングに無理なく追従できるので、ローラ、動力伝達リング等が傷み難く、これらの長寿命化を図ることができる。また、シール部材は、シール機能を十分に果たせる位置に配置されるので、隙間からの泥水等の異物がボスの内周面と支軸の外周面との間に侵入することを防止できる。 【0011】請求項2に記載の発明の態様は、請求項1に記載のスタビライザにおいて、上記少なくとも一方の対向部材の支軸に対する取付位置を調整可能としてあることを特徴とするスタビライザを提供する。本態様によれば、可変径プーリやスタビライザの現物に応じて、対向部材および回動アームの端面同士の間隔を調節することができるので、動力伝達リングの挙動を安定させるのに最適な遊び量に調節できる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施の形態である可変速プーリ装置の概略構成を示す正面図であり、図1(a)および図1(b)とに異なる状態を示す。本可変速プーリ装置Aは、一対のプーリ主体202,203間に偏心可能に挟持され且つベルト2が外周面に巻き掛けられた動力伝達リング206を有してベルト2に対する有効径を変化させることのできる可変径プーリ51と、動力伝達リング206の振動を抑制するスタビライザ3とを有している。 【0013】本可変速プーリ装置Aは、複数のプーリ(図示せず)と、そのプーリ間に巻き掛けられたベルト2とを有するベルト伝動装置において、少なくとも一つのプーリに適用することができる。後に詳述するが、可変径プーリ51は、動力伝達リング206を、プーリ主体202,203の軸心Kと同心となる位置(図1(b)の状態に相当)と、軸心Kに対して所定量偏心する位置(図1(a)の状態に相当)とに所定の偏心方向D1に沿って変位させることにより、ベルト2に対する有効径を変化させる。 【0014】偏心方向D1は、ベルト2が動力伝達リング206に巻き掛けられた状態に応じて予め設定される。この偏心方向D1は、プーリ主体202,203の軸心Kの方向と直交する方向であり、ベルト2が動力伝達リング206から延び出す2つの方向の間に形成される角を二分する方向であり、例えば、図1では左右方向となる。プーリ主体202,203の軸心Kに対して、動力伝達リング206の偏心方向D1となる側にスタビライザ3が配置されている。 【0015】スタビライザ3は、取付のための固定部材としてのベース4と、このベース4に取り付けられて動力伝達リング206の軸心K2と平行に(プーリ主体202,203の軸心Kに対しても平行になる。)延びる支軸5と、この支軸5の周りに回動自在に支持される回動アーム6と、この回動アーム6に回動自在に支持されて動力伝達リング206の外周面となる伝動面208に摺接するローラ7と、このローラ7が動力伝達リング206の外周面を押圧する方向に回動アーム6を付勢する付勢部材8とを有している。 【0016】回動アーム6は、支軸5の延びる方向に直交する方向に長い形状を有し、その両端部となる第1の端部21および第2の端部22を有している。回動アーム6は、第1の端部21にボス20を有し、このボス20が支軸5の周りに回動自在に支持されている。また、回動アーム6の第2の端部22には回転軸12が立設されて、ローラ7を回動自在に支持している。スタビライザ3では、回動アーム6が回動するのに伴うローラ7の変位方向と、動力伝達リング206の偏心方向D1とがほぼ一致するようにして配置されている。付勢部材8は、動力伝達リング206の外周面をローラ7が弾力的に押圧するように、回動アーム6を図1で反時計回りとなる、動力伝達リング206を偏心させる向きと逆向きに回動付勢している(矢印D5参照)。これにより、ローラ7が、動力伝達リング206の偏心方向に沿う変位や、径方向の振動に追従しつつ、スタビライザ3が動力伝達リング206の振動を抑制することができる。 【0017】また、本実施の形態では、スタビライザ3は、図2に示すように、回動アーム6のボス20の一対の端面24,25との間に隙間28,29を設けてそれぞれ対向すると共に支軸5の軸方向に位置決めされた一対の対向部材としてのストッパ9およびナット10を有し、各対向部材と対応するボス20の端面24,25との間の隙間28,29の総和量だけ、回動アーム6が支軸5の軸方向(以下軸方向という。矢印D3参照。)に遊びを持って変位できるようにしてある。これにより、回動アーム6が支軸5の軸方向に十分に変位でき、ローラ7や動力伝達リング206に無理がかからなくされている。 【0018】また、ボス20の軸方向の両端の内周面26にそれぞれ設けられた一対のシール部材17によって、隙間28,29の全体を遊び領域として確保しつつ、ボス20の内周面26と支軸5の外周面44との間が、その間に介在するシール部材17により密封されている。以下、詳細に説明する。支軸5の一方の端部には、ストッパ9が固定され、また、他方の端部寄りには2つのナット10,11がねじ込まれている。回動アーム6のボス20は、ストッパ9およびナット10の間に配置されている。 【0019】支軸5は、ストッパ9と、ナット10との間に、ボス20が嵌合されている上述の外周面44を有している。外周面44は円周面からなり、この円周面は、軸方向に関してボス20よりも長く形成されている。これにより、ボス20が外周面44に沿って軸方向変位可能且つ支軸5の回りに回動可能とされている。支軸5では、ストッパ9の端面38およびナット10の端面39は、ボス20の端面24,25と対向して配置されている。ストッパ9の端面38およびボス20の端面24の間に、隙間28が形成され、ナット10の端面39およびボス20の端面25の間に、隙間29が形成されている。また、ボス20が軸方向に変位することにより、ストッパ9の端面38およびナット10の端面39は、対応するボス20の端面24,25とそれぞれ当接可能とされている。また、ベース4が2つのナット10,11によって挟持されることにより、支軸5とベース4とが互いに固定されている。 【0020】支軸5の他方の端部寄りには、図3の要部拡大図に示すように、外周面44とつながりナット10がねじ込まれる雄ねじ40と、雄ねじ41と段差面45を介してつながり外周面44よりも小径の円周面からなりベース4の取付孔49に嵌合される外周面43と、外周面43につながりナット11がねじ込まれる雄ねじ41とが形成され、これらの各部は、同心に形成されている。また、上述のナット10,11と、雄ねじ40,41とが、ベース4に対する支軸5の取付位置を調整する調整機構を構成している。 【0021】この調整機構により、ストッパ9とベース4との間の軸方向に沿う距離を異ならせることができる。上述の距離を短くする場合には、支軸5の段差面45をベース4の一面31と当接させ、ナット11を雄ねじ41にねじ込むことにより、ナット11を一面31の裏側の面32に当接させる(図3に示す状態)。この状態では、ナット10の端面33をベース4の一面31に当接させておく。また、上述の距離を長くする場合には、支軸5の段差面45とベース4の一面31との間に間隔を空けた状態で、雄ねじ40にねじ込んだナット10の端面33とベース4の一面31とを当接させ、ナット11を雄ねじ41にねじ込むことにより、この一面31の裏側の面32にナット11を当接させる。 【0022】また、調整機構は、支軸5に対する対向部材であるナット10の取付位置を調整可能としている。すなわち、雄ねじ40に対するナット10のねじ込み位置を異ならせる場合に、ベース4の一面31にナット10を当接させることにより、ナット10が緩むことなく、ねじ込み位置を異ならせることができる。なお、ナット10の取付位置を調整する構成は、上述の調整機構の他、公知の構成を利用してもよい。 【0023】図2に戻って説明する。回動アーム6は、上述の第1の端部21から第2の端部22にかけて延びる長尺の腕部および第1の端部21に立設された筒部を含むアーム部材14と、アーム部材14の筒部の両端面に設けられた一対のスクレーパ15と、筒部の内周面27に配置された一対の軸受ブッシュ16とを有している。また、アーム部材14の筒部には、内周面27よりも大径の上述の内周面26が形成され、この内周面26に、軸受ブッシュ16を軸方向の両側から挟むようにして上述の一対のシール部材17が取り付けられている。一対のシール部材17と回動アーム6とは一体的なユニットに構成されている。 【0024】回動アーム6のボス20は、アーム部材14の筒部と、一対のスクレーパ15と、一対のブッシュ16とにより構成され、一対のスクレーパ15の遠い側にある端面がボス20の端面24,25をそれぞれ形成している。シール部材17は、内周面26により形成される環状溝内に収容されている。シール部材17は、例えば、Oリングからなり、Oリングの外周面と筒部の内周面26との間を固定状態で密封し、Oリングの内周面と、この内周面に摺接する支軸5の外周面44との間を相対回動可能且つ相対移動可能な状態で密封する。なお、シール部材17としては、Oリングの他、断面X字形状の環状弾性部材からなるXリング等の、支軸5に嵌まり軸方向の相対移動および軸周りの相対回動を許容しつつ、軸方向について密封する公知の部材を利用できる。 【0025】一対のシール部材17は、ボス20の軸方向の両端に配置され、ボス20内部に配置されている軸受ブッシュ16と支軸5との嵌合部に、外部から隙間28,29を通じて異物が侵入することを防止する。軸受ブッシュ16は、筒状部材であり、一対が軸方向に間隔を空けて配置されている。軸受ブッシュ16の内周面は、支軸5の外周面44に、相対回動可能且つ軸方向移動可能に嵌合されている。また、軸受ブッシュ16の外周面は、アーム部材14の内周面27に圧入されている。 【0026】スクレーパ15は、樹脂製の板状の環状部材であり、その内周部が支軸5の外周面44と摺接することにより、外周面44に付着している異物を除去する。また、スクレーパ15は、シール部材17を取り付けるための環状溝を区画するための、ボス20の端面部としても機能している。付勢部材8は、つるまきばねからなる。つるまきばねは、その一端でストッパ9に係止され、ボス20の外周を取り囲むように巻回され、他端で回動アーム6のアーム部材14の腕部に係止されている。付勢部材8は、その付勢力が回動アーム6を介してローラ7に伝わり、ローラ7が動力伝達リング206の外周面を押圧するように、取り付けられている。なお、付勢部材8としては、つるまきばね以外のばねやゴム材等の弾性部材でもよい。 【0027】ローラ7は、軸受13を介して回転軸12に支持されている。ローラ7は回転軸12に対して軸方向に位置決めされて取り付けられている。ローラ7の外周面には、周方向に延びる複数の周溝47が形成されている。この周溝47は、動力伝達リング206の伝動面208に形成された周溝237に係合するようになっており、断面略V字形状に形成されている。また、軸受13は、ローラ7の端面に固定された一対の蓋48により異物の侵入を防止されている。 【0028】次に、図5〜図7を参照して、可変径プーリ51について説明する。可変径プーリ51は、図5の断面図に示すように、車両の駆動源の出力軸に連なる回転軸201の周囲に軸方向に移動自在な第1および第2の環状のプーリ主体202,203を備えており、これらプーリ主体202,203の互いの対向面にそれぞれ動力伝達面204,205を形成している。これら一対の動力伝達面204,205は互いに逆向きに傾斜したテーパ状にされており、両動力伝達面204,205によって、断面略台形形状の動力伝達リング206が、両プーリ主体202,203の軸心Kに対して偏心可能(図7参照)に挟持されている。 【0029】動力伝達リング206の外周面にはベルト2への伝動面208が形成され、この伝動面208にベルト2が巻き掛けられている。ベルト2には、その周回方向に沿って延びる複数の互いに平行なリブ236が形成され、これらのリブ236とそれぞれ噛み合う複数の周溝237が伝動面208に形成されている。リブ236および周溝237は、例えば、断面略V字形形状をしている。動力伝達リング206の両側面は、それぞれ対応する動力伝達面204,205と接触してトルクを伝達するテーパ状の動力伝達面209,210を構成している。 【0030】ベルト2はゴム製のものが好ましく、また、動力伝達リング206としては、耐久性に優れ且つ摩擦係数が高い樹脂、例えば、フェノール樹脂に、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維およびグラファイトを配合した樹脂材料を成形してなるものが好ましい。この樹脂材料であれば、高強度で耐摩耗性に優れているにもかかわらず、相手部材への攻撃性が穏やかであり、しかも温度にかかわらず安定した摩擦係数を持つ。また、樹脂材料中における炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維およびグラファイトの含有割合としては、炭素繊維5〜30重量%、芳香族ポリアミド繊維5〜15重量%、グラファイト10〜15重量%の範囲にあることが、耐摩耗性を向上させ、摩擦係数をより安定させる点で好ましい。 【0031】また、可変径プーリ51は、第1および第2のプーリ主体202,203を互いに近づく方向に付勢する付勢手段としてのダイヤフラムスプリング211を有している。このダイヤフラムスプリング211は、回転軸201と連動回転する円板フランジ状の連結部212に複数の軸状部213を介して一体回転可能に連結されている。ダイヤフラムスプリング211の内径部214および外径部215は、第1および第2のプーリ主体202,203にそれぞれ一体回転可能に係合されている。これにより、両プーリ主体202,203とダイヤフラムスプリング211が回転軸201と一体に回転するようになっている。例えば、本可変径プーリ51を駆動プーリに適用する場合では、回動軸201からダイヤフラムスプリング211、両プーリ主体202,203および動力伝達リング206を介してベルト2へトルクが伝達される。 【0032】図5および図6を参照して、ダイヤフラムスプリング211の内径部214および外径部215には、それぞれ円周等配に配置された放射状の連結溝216,、217が形成されている。また、ダイヤフラムスプリング211の径方向の中間部において、上述した軸状部213を貫通させる複数の支持孔231が円周等配に形成されている。第1のプーリ主体202は、円錐状の円板部218と、この円板部218の内周に形成された円筒状のボス部219とを備えている。円板部218は動力伝達面204を形成している。また、ボス部219は回転軸201の周面に滑り軸受としてのブッシュ220を介して軸方向にスライド自在に支持されている。また、第1のプーリ主体202が回転軸201から抜け出すことを防止するために、回転軸201の端部の周溝に嵌め入れられたスナップリングからなるストッパ234が設けられている。 【0033】第2のプーリ主体203は、円錐状の円板部221と、この円板部221の内周に形成された円筒状のボス部222とを備えている。円板部221は動力伝達面205を形成している。また、第2のプーリ主体203のボス部222は、第1のプーリ主体202のボス部219を取り囲み、この第1のプーリ主体202のボス部219によって滑り軸受としてのブッシュ223を介して軸方向にスライド自在に支持されている。 【0034】第2のプーリ主体203の動力伝達面205の背面224の外周縁部には、ダイヤフラムスプリング211の外径部215の複数の連結溝217にそれぞれ嵌め入れられる複数の板状の連結突起233が円周等配で放射状に形成されている。第2のプーリ主体203の背面224がダイヤフラムスプリング211の外径部215によって押圧されて、第2のプーリ主体203が第1のプーリ主体202へ近づく方向に付勢されている。 【0035】第1のプーリ主体202のボス部219は、第2のプーリ主体203のボス部222を貫通して第2のプーリ主体203の動力伝達面205の背面224側へ延びており、ボス部219が第2のプーリ主体203の背面側へ延びる部分を構成している。この背面側ヘ延びる部分としてのボス部219の端部には、この端部とダイヤフラムスプリング211の内径部214とを一体回転可能に連結するための環状の連結部材225が設けられている。 【0036】この連結部材225の内周部はボス部219の端部にねじ結合されて一体回転可能に固定されている。この連結部材225を介して伝達されるトルクがねじ締め方向に働くようにされており、固定が緩むことがないようになっている。連結部材225は、ダイヤフラムスプリング211の内径部214を軸方向に押すための円板状の押圧板部226と、この押圧板部226に円周等配で放射状に形成された複数の連結突起227とを形成している。押圧板部226がダイヤフラムスプリング211の内径部214によって押圧され、連結部材225を介して第1のプーリ主体202が、第2のプーリ主体203へ近づく方向に付勢されている。また、複数の連結突起227は、ダイヤフラムスプリング211の内径部214の複数の連結溝216にそれぞれ嵌め入れられている。 【0037】連結部212は、回転軸201に一体に形成された円板状のフランジ部228と、このフランジ部228の周囲を取り囲んで配置された環状部材229とを含んでいる。フランジ部228の外周面と環状部材229の内周面との間には、両者に例えば、焼き付け等により接合されたゴム等の環状の弾性部材230が介在している。この弾性部材230は、環状部材229とフランジ部228とを弾性的に連結してトルク伝達を可能にすると共に、環状部材229を回転方向に弾性支持することになる。 【0038】また、環状部材229には、この環状部材229を軸方向に貫通する複数の貫通孔235が円周等配に形成され、各貫通孔235には軸状部213が挿通されて固定されている。これら軸状部213がダイヤフラムスプリング211の支持孔231に嵌め入れられ、ダイヤフラムスプリング211と連結部212とを一体回転可能に連結する。また、ダイヤフラムスプリング211は内径部214と外径部215とに互いに逆向きの集中荷重を受けた軸対称曲げの状態となるが、このとき各軸状部213によって、支持孔231の位置におけるダイヤフラムスプリング211の軸方向の変位が規制されることから、各軸状部213による支持半径dを所定に設定することにより、内径部214と外径部215とを相等しいストローク量で互いに逆向きに変位させることが可能となる。 【0039】スタビライザ3の動作を図4の模式図を参照して説明する。動力伝達リング206の回動軸線K2が倒れようとすると、プーリ主体202,203により挟持された動力伝達リング206の部分は、軸方向に殆ど変位せず、その一方で、この部分に対して軸心K2を挟んだ反対側の部分が軸方向に変位するようになる。この変位に追従して、スタビライザ3のローラ7および回動アーム6が軸方向に移動する(この状態を図4(a)に一点鎖線で図示した。)。 【0040】そして、回動アーム6のボス20の端面24,25がナット10やストッパ9に当接すると、それ以上に回動アーム6が移動することが防止される。その結果、動力伝達リング206の回動軸線K2の倒れも規制される。このとき、シール部材17が支軸5の外周面44に摺動するのに伴う摩擦力や、付勢部材8のつるまきばねが軸方向に伸び縮みするときの弾性復元力が、回動アーム6のボス20の軸方向の振動を抑制する。 【0041】このように本実施の形態によれば、回動アーム6の遊び量を確保するための上述の隙間28,29内にシール部材17を配置しないので、隙間28,29の全体を遊び領域として活用できる結果、遊び量を、隙間28,29の総和量と同等の、振動抑制および長寿命化にとって適切な遊び量で十分に確保できる。従って、回動アーム6を介して支持されたローラ7は動力伝達リング206に無理なく追従できるので、ローラ7、動力伝達リング206等が傷み難く、これらの長寿命化を図ることができる。 【0042】また、ボス20の軸方向の両端のシール部材17は、異物の侵入経路となる隙間28,29に隣接しつつ、シール対象となる軸受ブッシュ16やこれと嵌まる支軸5の外周面44を両側から挟んで隙間28,29に対して密封するので、隙間28,29からの泥水等の異物が軸受ブッシュ16等に侵入することを防止でき、回動アーム6の遊びや回動が確実に維持される。ところで、同仕様の可変径プーリ51およびスタビライザ3を用いる場合であっても、可変径プーリ51の動力伝達リング206の振動の挙動によっては、上述の遊び量を異ならせて、可変径プーリ51やスタビライザ3の現物に応じた適切な遊び量とする必要がある場合がある。また、隙間28,29の総和量が適切に確保されているとしても、スタビライザ3と可変径プーリ51との取付位置によっては、回動アーム6の遊び量を十分に確保できない場合がある。 【0043】そこで、本実施の形態では、図4(b)に示すように、対向部材としてのナット10の支軸5に対する取付位置を調整機構により調整可能としているので、可変径プーリ51やスタビライザ3の現物に応じて、対向部材および回動アーム6の端面同士の間隔を調節することにより、隙間28,29の総和量を、動力伝達リング206の振動を安定させるのに最適な遊び量に調節できる。また、可変径プーリ51とスタビライザ3とを組み付けた状態で、現物に合わせて、回動アーム6の遊びの中心位置(回動アーム6の軸方向の両方向への適切な遊び量がそれぞれ等しくなる回動アーム6の軸方向位置であり、回動軸線K2が倒れていない状態に対応する。)と、隙間の中心位置(隙間28の幅と隙間29の幅とが等しくなる回動アーム6の軸方向位置)とを調整機構により合わせて、回動アーム6の遊び量を適切且つ確実に得ることができる。 【0044】ここで、調整機構は、支軸5に対するナット10の取付位置を調整可能としていたが、これには限定されない。例えば、ボス20の両側にある両対向部材であるストッパ9およびナット10の取付位置をともに調整可能としてもよく、要は、少なくとも一方の対向部材の支軸5に対する取付位置を調整可能としてあればよい。ところで、スタビライザ3のローラ7の材質には、従来、繊維強化フェノール樹脂製の動力伝達リング206に対してアルミニウムが利用されていた。この場合、スタビライザ3のローラ7が高速回転する動力伝達リング206の伝動面208に摺接する間に、動力伝達リング206に損傷が生じる場合がある。また、動力伝達リング206の損傷を防止するために、ローラ7を軟質材料で形成する場合には、ローラ7自身の異常摩耗が生じる虞がある。 【0045】このようなローラ7自身の異常摩耗が生じず且つ動力伝達リング206の損傷も生じないように、ローラ7および動力伝達リング206の材質を選定するのが、可変速プーリ装置Aの長寿命化を図るうえで好ましい。一方では、動力伝達リング206の材質としては、ベルト2およびプーリ主体202,203との関係により、例えば、上述の繊維強化フェノール樹脂が好ましい。従って、繊維強化フェノール樹脂製の動力伝達リング206に対応して、スタビライザ3のローラ7の材質を適切に選定する必要がある。 【0046】そこで、本実施の形態では、動力伝達リング206およびスタビライザ3が共に傷み難く、長寿命化できる可変径プーリ用スタビライザ3を提供するべく、ローラ7を以下のように構成している。ローラ7は、フェノール樹脂を含む動力伝達リング206に対して、80HRM(ロックウェル硬さMスケール)を超えて100HV(ビッカース硬さ)未満の範囲内の硬さの材質を含む。この範囲内の硬さの材質としては、ポリアミド66を例示できる。この材質により形成されたローラ7の部分が、動力伝達リング206と接するようにされている。 【0047】上述の硬さの範囲内のローラ7を利用することにより、動力伝達リング206にローラ7を摺接させたときに、ローラ7および動力伝達リング206がともに傷み難くできる。ここで、ローラ7の硬さが80HRM以下の場合にはローラ7が摩耗する虞があり、また、ローラ7の硬さが100HV以上の場合には動力伝達リング206が摩耗する虞があることから、ローラ7の硬さが80HRMを超えて100HV未満の範囲内とされるのが、摩耗の防止の点で好ましい。 【0048】特に、ローラ7の硬さが動力伝達リング206の硬さよりも低くされる場合には、動力伝達リング206はローラ7に比べて相対的に硬くなって、摩耗し難くなるので、動力伝達リング206の摩耗を確実に防止することができる。なお、ローラ7は、周溝47を有していたが、周溝を有しない円周面からなる外周面を有するものに、上述の硬度範囲の材質を適用しても、同様の効果を得られる。また、回動アーム6の構造が異なる構成でもよく、要は動力伝達リング206に転がり接触するローラ7に適用できる。 【0049】その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001247 【氏名又は名称】光洋精工株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年9月2日(1999.9.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075155 【弁理士】 【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−74112(P2001−74112A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月23日(2001.3.23) |
| 【出願番号】 |
特願平11−248961 |
|