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【発明の名称】 ベルトテンショナ機構
【発明者】 【氏名】安原 伸二

【要約】 【課題】可変径プーリを有したベルト無段変速装置において、変速操作のためにベルト張力を調節するベルトテンショナ機構の小形化、コスト低減が困難であった。

【解決手段】本ベルトテンショナ機構1では、駆動ユニット6がワイヤ5を介してテンショナ3のテンショナプーリ4を変位させる。駆動ユニット6は、モータ62と減速機64を介して駆動連結される回動アーム61を有し、回動アーム61には、ワイヤ5の一端5bと引っ張りコイルばね76とが回動軸線70を挟んで互いに反対側に接続されている。引っ張りコイルばね76は、ワイヤ5を引っ張る際にモータ62にかかる負荷の一部を負担でき、モータ62を低出力で、小形、安価なものを利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】巻き掛けられたベルトに対する有効径を変化させることのできる可変径プーリを含む無段変速装置に適用されるベルトテンショナ機構において、上記ベルトに係合するテンショナプーリを変位可能に支持するテンショナと、上記テンショナプーリを長尺の伝動部材を介して変位させてベルト張力を増大させるために伝動部材の一端を引っ張る駆動手段とを備え、この駆動手段は、所定の回動軸線の回りに回動自在な回動アームと、この回動アームを回転駆動するモータと、一端が回動アームに係合され、モータの張力増大方向への駆動を補助するばね手段とを含むことを特徴とするベルトテンショナ機構。
【請求項2】請求項1に記載のベルトテンショナ機構において、上記ばね手段は、引っ張りコイルばねからなり、回動アームは引っ張りコイルばねの一端が係合される第1の端部と、伝動部材の一端が係合される第2の端部とを有し、回動アームの第1の端部と第2の端部との間の中間部に上記回動軸線が配置されることを特徴とするベルトテンショナ機構。
【請求項3】請求項2に記載のベルトテンショナ機構において、上記伝動部材の一端の近傍部分と引っ張りコイルばねの軸線とが、略平行であることを特徴とするベルトテンショナ機構。
【請求項4】請求項2または3に記載のベルトテンショナ機構において、上記回動軸線に沿って見たときに、回動アームの第2の端部と回動軸線とを結ぶ線分が伝動部材に対してなす角度が0〜20度および160〜180度の範囲にそれぞれ対応して、モータが停止するようにしてあることを特徴とするベルトテンショナ機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベルトの張力を調節するベルトテンショナ機構に関する。例えば、ベルトに対する有効径を変化させることのできる可変径プーリを用いたベルト無段変速装置において、その変速操作のためにベルトの張力を調節するものに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】上述のベルト無段変速装置は、例えば、自動車の駆動源によって補機、例えば、カーコンプレッサやオイルポンプ等を駆動する装置に適用される。これにより、補機の回転数を調整して、補機を必要以上の回転数で回転させることを防止できるので、エネルギの無駄な消費や、補機の傷みを抑制することができる。というのは、補機を駆動する従来のベルト伝動装置では、エンジンのクランク軸からプーリおよびベルトを介して一定の変速比で駆動力が伝達されて、クランク軸の回転数の増加とともに各種補機の回転数が増加する。一方で、その回転数の増加とともに各種補機の効率も増加するが、ある回転数以上では逆に効率が低下するからである。
【0003】ところで、上述のベルト無段変速装置には、変速比調整用のテンショナプーリを有するものがある。このテンショナプーリは、ベルトに回転自在に係合し、ベルト張力が増す方向またはベルト張力が減ずる方向へ電動モータ等を含む駆動機構によって駆動され、変位する。これにより、可変径プーリの有効径を変化させて変速するようにしている。
【0004】ところが、テンショナプーリ周辺にスペース上の制約がある場合等では、上述の駆動機構をテンショナプーリの近傍に配置することが困難である。特に、ベルト無段変速装置を補機を駆動する装置に適用した場合には、いわゆるエンジンルーム内に各種補機が密集して配置されているなかで、テンショナプーリ用の駆動機構を配置することは非常に困難である。
【0005】このために、駆動機構とテンショナプーリとの間に介在して駆動連結するワイヤを設けて、テンショナプーリを遠隔操作するベルトテンショナ機構が考えられている。このベルトテンショナ機構では、駆動機構をテンショナの近傍から離れた位置に配置できるので、駆動機構のレイアウトの自由度が高まる。駆動機構は、例えば、駆動源となる電動モータと、この電動モータの出力軸に接続されてワイヤを変位させる減速機とを有している。ワイヤを変位させるために必要な電動モータの出力が大きくなるので、電動モータが高価になり、また大型化する傾向にあった。その結果、ベルトテンショナ機構も高価で大型化していた。
【0006】そこで、減速機の減速比を大きし、且つ電動モータの出力を相対的に小さくすることを通じて、ベルトテンショナ機構の小型化および低価格化を達成することが考えられる。この場合、減速比が大きくなるので、変速動作が遅くなる結果、実用的でない。そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、変速動作を速やかになしつつ、小形で安価なベルトテンショナ機構を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】請求項1に記載の発明の態様は、巻き掛けられたベルトに対する有効径を変化させることのできる可変径プーリを含む無段変速装置に適用されるベルトテンショナ機構において、上記ベルトに係合するテンショナプーリを変位可能に支持するテンショナと、上記テンショナプーリを長尺の伝動部材を介して変位させてベルト張力を増大させるために伝動部材の一端を引っ張る駆動手段とを備え、この駆動手段は、所定の回動軸線の回りに回動自在な回動アームと、この回動アームを回転駆動するモータと、一端が回動アームに係合され、モータの張力増大方向への駆動を補助するばね手段とを含むことを特徴とするベルトテンショナ機構を提供する。
【0008】本態様によれば、例えば、ベルト張力を増大させる時には、モータおよびばね手段は協働して回動アームを回転駆動し、ベルト張力に抗して伝動部材を引っ張り、テンショナプーリを変位させる。一方、ベルト張力を減ずるときには、伝動部材がベルト張力により引っ張られるようにしてモータを駆動すればよいので、このための負荷は小さくて済む。
【0009】ベルト張力を増大させる時には、伝動部材を強く引っ張る必要があるものの、伝動部材を引っ張る力の一部をばね手段により負担しているので、モータにかかる負荷を軽減できる結果、低出力のモータを利用できる。従って、モータを小形で安価なもので済ますことができ、ひいては、ベルトテンショナ機構を小型化、低価格化することができる。
【0010】しかも、低出力のモータを用いても、ばね手段による補助で、伝動部材を引っ張るために回動アームを回転させるトルクを確保できるので、モータの出力軸の回転を過度に減速して回動アームに伝えずに済む結果、速やかな変速動作を実現できる。請求項2に記載の発明の態様は、請求項1に記載のベルトテンショナ機構において、上記ばね手段は、引っ張りコイルばねからなり、回動アームは引っ張りコイルばねの一端が係合される第1の端部と、伝動部材の一端が係合される第2の端部とを有し、回動アームの第1の端部と第2の端部との間の中間部に上記回動軸線が配置されることを特徴とするベルトテンショナ機構を提供する。
【0011】本態様によれば、伝動部材と引っ張りコイルばねとを回動アームに対して同側に配置できるので、駆動手段の外形をまとめてコンパクトにできる結果、駆動手段を狭いスペースに配置することができる。請求項3に記載の発明の態様は、請求項2に記載のベルトテンショナ機構において、上記伝動部材の一端の近傍部分と引っ張りコイルばねの軸線とが、略平行であることを特徴とするベルトテンショナ機構を提供する。
【0012】本態様によれば、引っ張りコイルばねと伝動部材の一端の近傍部分とを接近して配置できるので、駆動手段の外形をより一層コンパクトにできる。請求項4に記載の発明の態様は、請求項2または3に記載のベルトテンショナ機構において、上記回動軸線に沿って見たときに、回動アームの第2の端部と回動軸線とを結ぶ線分が伝動部材に対してなす角度が0〜20度および160〜180度の範囲にそれぞれ対応して、モータが停止するようにしてあることを特徴とするベルトテンショナ機構を提供する。
【0013】本態様によれば、上述の角度範囲に対応してモータが停止するため、ワイヤと引っ張りコイルばねとが干渉することはない。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照しつつ説明する。図1(a),(b)は、本発明の一実施の形態のベルトテンショナ機構およびこれを含む無段変速装置の概略構成を示している。図1(a)は、ベルト2の走行速度に比して可変径プーリ51の回転速度が相対的に遅くなった状態を示し、図1(b)は、ベルト2の走行速度に比して可変径プーリ51の回転速度が相対的に速くなった状態を示している。
【0015】ベルトテンショナ機構1は、巻き掛けられたベルト2に対する有効径を変化させることのできる可変径プーリ51を含む無段変速装置50に適用される。無段変速装置50としては、自動車その他の車両に搭載される駆動源によって補機を駆動するためのベルト式の無段変速装置の他、一般の工作機械等の無段変速装置であってもよい。また、無段変速装置50では、可変径プーリ51を駆動プーリおよび従動プーリの何れに適用してもよく、一つの無段変速装置において、1ないし2つ以上の従動プーリを可変径プーリ51とすることも可能である。ただし、本実施の形態では、無段変速装置50は自動車に搭載され、車両の駆動源の出力軸に連なる回転軸に駆動プーリとなる可変径プーリ51を設けた例に基づいて説明する。
【0016】後に詳述するが、可変径プーリ51は、一対のプーリ主体202,203間に偏心可能に挟持され且つ外周面にベルト2が巻き掛けられる動力伝達リング206を備えている。可変径プーリ51は、動力伝達リング206を、プーリ主体202,203の軸心Kと同心となる位置(図1(a)の状態に相当)と、軸心Kに対して所定量偏心する位置(図1(b)の状態に相当)とに変位させることにより、ベルト2に対する有効径を変化させる。
【0017】無段変速装置50では、無端状のベルト2を、ベルトテンショナ機構1に含まれるテンショナプーリ4、位置が固定されたアイドラプーリ52、可変径プーリ51、および1ないし複数の補機の回転軸に設けられた従動プーリ(図示せず)に対して順次に巻き回している。補機としては、スーパーチャージャー、ファン、オルタネータ、エアコンディショナ用コンプレッサ、パワーステアリング用油圧ポンプおよびウォータポンプ等を例示することができる。
【0018】変速比を調整するためのベルトテンショナ機構1は、ベルト2に係合するテンショナプーリ4を変位可能に支持するテンショナ3と、テンショナプーリ4を長尺の伝動部材としてのワイヤ5を介して変位させてベルト張力を増大させるためにワイヤ5の一端を引っ張る駆動手段としての駆動ユニット6とを有している。駆動ユニット6とテンショナ3との両者の間には、遠隔操作可能に両者を互いに駆動連結するケーブル40が設けられている。
【0019】ケーブル40は、上述のワイヤ5と、このワイヤ5を取り囲む筒状のケーシング21とを有している。ワイヤ5は、所定長さの単一の鋼線材からなる。ワイヤ5は、これよりも短い上述のケーシング21内に収容され、ケーシング21の両端部から、ワイヤ5がそれぞれ延び出している。ケーシング21は、可撓性を有し、内部に収容されたワイヤ5をその延びる方向に変位可能に支持し、ワイヤ5を所定の経路に沿って案内している。ケーシング21の一方の端部側でワイヤ5を引っ張ってここでの露出長が長くなるように変位させると、他方の端部側でのワイヤ5の露出長が短くなり、これにより、ワイヤは変位および力を伝動することができる。
【0020】テンショナプーリ4は、固定部材7に対して変位自在な可動部材8によって回転自在に支持されている。また、ベルト2に張力を付与する方向にテンショナプーリ4を付勢する、例えば、圧縮コイルばねからなる弾性部材9が設けられている。駆動ユニット6は、車両の固定部、例えば、エンジンルーム内でスペースに余裕のある位置に固定されている。駆動ユニット6は、ワイヤ5の端部が連結されて所定の回動軸線70(図9参照)の回りに回動自在な回動アーム61と、この回動アーム61を回転駆動するモータ62と、一端が回動アーム61に係合されてモータ62の張力増大方向への駆動を補助するばね手段63とを有している。モータ62は、駆動源の回転速度に関わる信号S(例えばアイドラプーリ52とクランクシャフトプーリの回転速度を検出する速度センサからの検出信号であってもよい。)を入力するコントローラ55により制御される。
【0021】具体的には、駆動源の回転速度が所定値よりも遅い場合は、図1(a)に示すように、モータ62を駆動し、回動アーム61とワイヤ5とが略直線状につながるような状態にして、テンショナ側でケーシング21からワイヤ5を繰り出させて、駆動プーリとしての可変径プーリ51の有効径を大きくして、補機の回転速度を相対的に速くする。一方、駆動源の回転速度が所定値よりも速い場合は、図1(b)に示すように、回動アーム61とワイヤ5とが折り返し状につながるような状態にして、テンショナ側でケーシング21内へワイヤ5を引き込み、ベルト2をたぐり寄せることにより、可変径プーリ51の有効径を相対的に小さくする。
【0022】本実施の形態では、ワイヤ5を引っ張る負荷の一部を、上述のばね手段63により負担するようにしている。これにより、モータ62にかかる負荷を小さくできるので、モータ62ひいてはベルトテンショナ機構1を小型化、低価格化することができる。以下、各部を詳細に説明する。図7および図9を参照する。
【0023】駆動ユニット6は、上述の回動アーム61、モータ62、および引っ張りコイルばね76からなるばね手段63の他、モータ62の回転力を回動アーム61に伝達する減速機64と、これら各部を支持するための支持部材65とを有している。また、回動アーム61の近傍には、その回動角度を制御するための2つのスイッチ66が設けられている。これらのスイッチ66は、回動アーム61に設けられた操作片に係合することにより動作し、コントローラ55につながる回路をオンオフする。
【0024】支持部材65は、表面部81と裏面部82とを有する略長方形の枠状に形成されている。図7に示すように、支持部材65の長手方向の一端83に回動アーム61が配置され、他端84にケーシング21を固定する固定孔85と、引っ張りコイルばね76を取り付けるピン86とが配置されている。また、図8に示すように、支持部材65の表面部81に、回動アーム61、ばね手段63、ワイヤ5、ピン86等が配置され、裏面部82に、モータ62および減速機64が配置されている。
【0025】モータ62は、一端から突出する回転軸91を有し、この回転軸91の延びる方向に長い形状を有している。モータ62の一端には、減速機64が取り付けられ、モータ62と減速機64とは、回転軸91の延びる方向に並び、支持部材65の長手方向に沿って配置されている。減速機64は、ウォームギヤ機構を有し、これは、モータ62の回転軸91に一体回転可能に設けられたウォーム92と、このウォーム92に噛み合って減速機64の出力軸94と連結されるウォームホイール93とを有している。減速機64の出力軸94は、支持部材65を貫通して表面部81から延び出し、出力軸94の先端に回動アーム61が一体回転可能に嵌合されている。
【0026】回動アーム61は、減速機64の出力軸94の中心軸線を回動軸線70とし、この回動軸線70に直交する方向に延びる長尺部材である。回動アーム61は、引っ張りコイルばね76の一端77が係合される第1の端部71と、ワイヤ5の一端5bが係合される第2の端部72とを有し、回動アーム61の第1の端部71と第2の端部72との間の中間部に回動軸線70が配置される。
【0027】また、引っ張りコイルばね76の軸線79、およびワイヤ5の一端の近傍部分5cは、回動軸線70と直交する方向に平行に延びて配置されている。これにより、回動アーム61が、回動軸線70の回りに回動すると、ワイヤ5の一端の近傍部分5cおよび引っ張りコイルばね76を、これらが延びる方向にそれぞれ引っ張ることができる。
【0028】回動軸線70に沿って見たときに、回動アーム61の第1の端部71と回動軸線70とを結ぶ線分L1は、回動アーム61の第2の端部72と回動軸線70とを結ぶ線分L2の長さに比べて短くされており、ワイヤ5の変位量に比べて、引っ張りコイルばね76のストロークが短くなっているので、コンパクトな引っ張りコイルばね76を利用できる。
【0029】回動アーム61の回動角度範囲D3は、例えば、160度に設定されている。回動角度範囲D3の一端となる第1の回動位置(図7に示す状態)、および他端となる第2の回動位置(図8に示す状態)に対応して、スイッチ66が動作して、モータ62が停止するようにされている。第1の回動位置では、ケーシング21からのワイヤ5の露出長が短くされ、回動軸線70に沿って見たときに、上述の線分L2がワイヤ5の一端の近傍部分5cに対してなす角度D1が160〜180度の範囲で設定されている。本実施の形態では角度D1は略170度とされている。また、第2の回動位置では、ケーシング21からのワイヤ5の露出長が長くされ、回動軸線70に沿って見たときに、上述の線分L2がワイヤ5の一端の近傍部分5cに対してなす角度D2が0〜20度の範囲に設定されている。本実施の形態では角度D2は略10度とされている。
【0030】引っ張りコイルばね76は、回動アーム61の第1の端部71に立設されたピン73と、支持部材65に設けられたピン86との間に、フック状に形成された端部を引っ掛けて引っ張り状態で張設されている。引っ張りコイルばね76は、回動アーム61の回動範囲内で、ワイヤ5の張力増大方向となる回転方向R1に向けて回動アーム61を常に付勢している。引っ張りコイルばね76の付勢力は、第1の回動位置で相対的に強く、第2の回動位置では相対的に弱くなる。
【0031】引っ張りコイルばね76の軸線79とワイヤ5の一端の近傍部分5cとは、略平行に且つ支持部材65の長手方向に沿って配置されている。ケーシング21の一端は、支持部材65の固定孔85に嵌め入れられて固定されている。ケーシング21から延び出したワイヤ5の一端5bは、取付金具67およびピン74とを介して、回動アーム61の第2の端部72に係合されている。取付金具67はワイヤ5の一端5bに固定され、取付金具67の嵌合孔に、回動アーム61の第2の端部72に立設された上述のピン74が回動自在に嵌め込まれている。回動アーム61の回転に伴うピン74の変位が、ワイヤ5を介して、テンショナ3に伝達される。
【0032】次に、図2および図3を参照する。テンショナ3は、車両の駆動源のボディ等に固定される固定部材7と、この固定部材7に直線往復動自在に支持された可動部材8とを有している。この可動部材8は、ベルト2が巻き回されるテンショナプーリ4を回動自在に支持している。固定部材7と可動部材8とによって,テンショナプーリ4をベルト2に張力を与える第1の方向Xとその逆の第2の方向Yに変位可能に支持するための支持部を構成している。また、テンショナ3は、可動部材8を介してテンショナプーリ4を第1の方向Xに付勢する圧縮コイルバネ等からなる上述の一対の弾性部材9を有している。
【0033】可動部材8は、一端にテンショナプーリ4を玉軸受等の転がり軸受10を介して回転自在に支持する支軸11と、この支軸11の他端を貫通させて固定した支持体12と、一端が支持体12に貫通されて固定された一対の支持棒13とを有している。これら一対の支持棒13は、第1の方向Xへ延びており、固定部材7の後述する支持筒部14に内嵌された滑り軸受としてのブッシュ26に挿通されて第1および第2の方向X,Yへの直線往復動を案内されるようになっている。各支持棒13の他端にはフランジ状のストッパ15が設けられ、両ストッパ15に一体的に係合される座板部材16と、固定部材7の後述するブラケット部17との間に弾性部材9がそれぞれ介在している。これにより、一対の弾性部材9は、一対の支持棒13を介して可動部材8およびテンショナプーリ4を一体的に第1の方向Xへ弾性付勢している。
【0034】上記の支軸11の他端および支持体12には、ワイヤ5の他端に固定された大径のエンド部材5aを遊動可能に収容して保持する保持孔18が形成されており、また、支持体12は、保持孔18に連結してワイヤ5を貫通させる貫通孔19を有している。座板部材16は、各支持棒13を貫通させる一対の貫通孔20と、これら一対の貫通孔20間の中央部に、ワイヤ5を進退自在に収容するケーシング21を遊嵌状態で貫通させる貫通孔22とを有している。
【0035】固定部材7は、ねじ23により固定対象物24に固定されるベース部25と、このベース部25のテンショナプーリ4側の端縁から垂直に立ち上がるブラケット部17とを有している。このブラケット部17は、可動部材8の一対の支持棒13をそれぞれ貫通させる一対のブッシュ26を嵌めいれた一対の支持筒部14を第1の方向Xへ延びるように形成している。
【0036】ケーシング21の一端27はブラケット17のケーシング端固定孔28に嵌めいれられ、固定されている。ワイヤ5の他端側が回動アーム61により引かれると、ケーシング21の一端27からのワイヤ5の露出長が減少し、可動部材8とともに、テンショナプーリ4が引っ張られ、ベルト2がたぐり寄せられることになる。
【0037】次に、図4〜図6を参照して、可変径プーリ51について説明する。図4は、可変径プーリ51の断面図である。図4を参照して、可変径プーリ51は、車両の駆動源の出力軸に連なる回転軸201の周囲に軸方向に移動自在な第1および第2の環状のプーリ主体202,203を備えており、これらプーリ主体202,203の互いの対向面にそれぞれ動力伝達面204,205を形成している。これら一対の動力伝達面204,205は互いに逆向きに傾斜したテーパ状にされており、両動力伝達面204,205によって、断面略台形形状の動力伝達リング206が、両プーリ主体202,203の軸心Kに対して偏心可能(図6参照)に挟持されている。
【0038】動力伝達リング206の外周面にはベルト2への伝動面208が形成され、この伝動面208にベルト2が巻き掛けられている。ベルト2には、その周回方向に沿って延びる複数の互いに平行なリブ236が形成され、これらのリブ236とそれぞれ噛み合う複数の周溝237が伝動面208に形成されている。周溝237およびリブ236は、例えば、断面略V字形形状をしている。動力伝達リング206の両側面は、それぞれ対応する動力伝達面204,205と接触してトルクを伝達するテーパ状の動力伝達面209,210を構成している。
【0039】ベルト2はゴム製のものが好ましく、また、動力伝達リング206としては、耐久性に優れ且つ摩擦係数が高い樹脂、例えば、フェノール樹脂に、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維およびグラファイトを配合した樹脂材料を成形してなるものが好ましい。この樹脂材料であれば、高強度で耐摩耗性に優れているにもかかわらず、相手部材への攻撃性が穏やかであり、しかも温度にかかわらず安定した摩擦係数を持つ。また、樹脂材料中における炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維およびグラファイトの含有割合としては、炭素繊維5〜30重量%、芳香族ポリアミド繊維5〜15重量%、グラファイト10〜15重量%の範囲にあることが、耐摩耗性を向上させ、摩擦係数をより安定させる点で好ましい。
【0040】また、可変径プーリ51は、第1および第2のプーリ主体202,203を互いに近づく方向に付勢する付勢手段としてのダイヤフラムスプリング211を有している。このダイヤフラムスプリング211は、回転軸201と連動回転する円板フランジ状の連結部212に複数の軸状部213を介して一体回転可能に連結されている。
【0041】ダイヤフラムスプリング211の内径部214および外径部215は、第1および第2のプーリ主体202,203にそれぞれ一体回転可能に係合されている。これにより、両プーリ主体202,203とダイヤフラムスプリング211が回転軸201と一体に回転するようになっている。駆動プーリである本可変径プーリ51では、回動軸201からダイヤフラムスプリング211、両プーリ主体202,203および動力伝達リング206を介してベルト2へトルクが伝達される。
【0042】図4および図5を参照して、ダイヤフラムスプリング211の内径部214および外径部215には、それぞれ円周等配に配置された放射状の連結溝216,、217が形成されている。また、ダイヤフラムスプリング211の径方向の中間部において、上述した軸状部213を貫通させる複数の支持孔231が円周等配に形成されている。
【0043】第1のプーリ主体202は、円錐状の円板部218と、この円板部218の内周に形成された円筒状のボス部219とを備えている。円板部218は動力伝達面204を形成している。また、ボス部219は回転軸201の周面に滑り軸受としてのブッシュ220を介して軸方向にスライド自在に支持されている。また、第1のプーリ主体202が回転軸201から抜け出すことを防止するために、回転軸201の端部の周溝に嵌め入れられたスナップリングからなるストッパ234が設けられている。
【0044】第2のプーリ主体203は、円錐状の円板部221と、この円板部221の内周に形成された円筒状のボス部222とを備えている。円板部221は動力伝達面205を形成している。また、第2のプーリ主体203のボス部222は、第1のプーリ主体202のボス部219を取り囲み、この第1のプーリ主体202のボス部219によって滑り軸受としてのブッシュ223を介して軸方向にスライド自在に支持されている。
【0045】第2のプーリ主体203の動力伝達面205の背面224の外周縁部には、ダイヤフラムスプリング211の外径部215の複数の連結溝217にそれぞれ嵌め入れられる複数の板状の連結突起233が円周等配で放射状に形成されている。第2のプーリ主体203の背面224がダイヤフラムスプリング211の外径部215によって押圧されて、第2のプーリ主体203が第1のプーリ主体202へ近づく方向に付勢されている。
【0046】第1のプーリ主体202のボス部219は、第2のプーリ主体203のボス部222を貫通して第2のプーリ主体203の動力伝達面205の背面224側へ延びており、ボス部219が第2のプーリ主体203の背面側へ延びる部分を構成している。この背面側ヘ延びる部分としてのボス部219の端部には、この端部とダイヤフラムスプリング211の内径部214とを一体回転可能に連結するための環状の連結部材225が設けられている。
【0047】この連結部材225の内周部はボス部219の端部にねじ結合されて一体回転可能に固定されている。この連結部材225を介して伝達されるトルクがねじ締め方向に働くようにされており、固定が緩むことがないようになっている。連結部材225は、ダイヤフラムスプリング211の内径部214を軸方向に押すための円板状の押圧板部226と、この押圧板部226に円周等配で放射状に形成された複数の連結突起227とを形成している。押圧板部226がダイヤフラムスプリング211の内径部214によって押圧され、連結部材225を介して第1のプーリ主体202が、第2のプーリ主体203へ近づく方向に付勢されている。また、複数の連結突起227は、ダイヤフラムスプリング211の内径部214の複数の連結溝216にそれぞれ嵌め入れられている。
【0048】連結部212は、回転軸201に一体に形成された円板状のフランジ部228と、このフランジ部228の周囲を取り囲んで配置された環状部材229とを含んでいる。フランジ部228の外周面と環状部材229の内周面との間には、両者に例えば、焼き付け等により接合されたゴム等の環状の弾性部材230が介在している。この弾性部材230は、環状部材229とフランジ部228とを弾性的に連結してトルク伝達を可能にすると共に、環状部材229を回転方向に弾性支持することになる。
【0049】また、環状部材229には、この環状部材229を軸方向に貫通する複数の貫通孔235が円周等配に形成され、各貫通孔235には軸状部213が挿通されて固定されている。これら軸状部213がダイヤフラムスプリング211の支持孔231に嵌め入れられ、ダイヤフラムスプリング211と連結部212とを一体回転可能に連結する。
【0050】また、ダイヤフラムスプリング211は内径部214と外径部215とに互いに逆向きの集中荷重を受けた軸対称曲げの状態となるが、このとき各軸状部213によって、支持孔231の位置におけるダイヤフラムスプリング211の軸方向の変位が規制されることから、各軸状部213による支持半径dを所定に設定することにより、内径部214と外径部215とを相等しいストローク量で互いに逆向きに変位させることが可能となる。
【0051】無段変速装置50では、図1(a)に示す状態で、駆動ユニット6の回動アーム61が第1の回動位置で停止し、テンショナ3側でのケーシング21からのワイヤ5の露出長が相対的に長くされ、これに応じた位置にテンショナプーリ4が配置されている。この際、ワイヤ5にはテンショナプーリ4との間に遊びが設けられており、ベルト張力はテンショナプーリ4に第1の方向Xに作用する弾性部材9により与えられる。また、このとき、モータ62は停止している。
【0052】ベルト張力を増大させるときには、モータ62により回動アーム61を回動方向R1に向けて回動させる。このとき、モータ62およびばね手段63は協働して回動アーム61を回転駆動し、ベルト張力に抗してワイヤ5を方向T1に向けて引っ張り、テンショナ側でのケーシング21からのワイヤ5の露出長を短くして、テンショナプーリ4を第1の方向Xに変位させる。このとき、ワイヤ5や回動アーム61に各部から力が作用するが、図1(a)の状態と比べて、ベルト張力が強まる一方で、弾性部材9および引っ張りコイルばね76の付勢力が弱まる。
【0053】そして、図1(b)に示すように、駆動ユニット6の回動アーム61が第2の回動位置で停止し、テンショナ3側でのケーシング21からのワイヤ5の露出長が相対的に短くされ、これに応じた位置にテンショナプーリ4が配置される。これにより、ベルト張力は相対的に強くされる。また、ベルト張力を減ずるときには、引っ張りコイルばね76の付勢力に抗して、モータ62は回動アーム61を回動方向R2に回動させる。このとき、ワイヤ5はテンショナ3側からベルト張力により引っ張られるので、これに追従するようにして、モータ62を駆動すればよく、その結果、モータ62にかかる負荷は小さくて済む。
【0054】このように本実施の形態によれば、ベルト張力を増大させる時には、ワイヤ5を強く引っ張る必要があるものの、ワイヤ5を引っ張る力の一部をばね手段63により負担しているので、モータ62にかかる負荷を軽減できる結果、低出力のモータ62を利用できる。従って、モータ62、減速機64等を小形で安価なもので済ますことができ、ひいては、ベルトテンショナ機構1を小型化、低価格化することができる。
【0055】しかも、低出力のモータ62を用いても、ばね手段63による補助により、ワイヤ5を引っ張るために回動アーム61を回転させるトルクを確保できるので、モータ62の出力軸91の回転を過度に減速して回動アーム61に伝えずに済む結果、速やかな変速動作を実現することができる。また、回動アーム61では、第1の端部71に引っ張りコイルばね76の一端77が係合され、第2の端部72にワイヤ5の一端5bが係合され、第1の端部71と第2の端部72との間の中間部に回動軸線70が配置されている。これにより、ワイヤ5と引っ張りコイルばね76とを回動アーム61に対して同側に配置できるので、駆動ユニット6の外形をまとめてコンパクトにできる結果、駆動ユニット6を狭いスペースに配置することができる。
【0056】特に、ワイヤ5の一端の近傍部分5cと引っ張りコイルばね76の軸線79とが、略平行である場合には、引っ張りコイルばね76とワイヤ5の一端5bの近傍部分5cとを接近して配置できるので、駆動ユニット6の外形をより一層コンパクトにできる。また、回動アーム61に関する上述の角度D1,D2が160〜180度および0〜20度の範囲に対応して、モータ62を停止させている。このため、ワイヤ5と引っ張りコイルばね76とが干渉して損傷することを防止することができる。
【0057】また、ウォームギヤ機構は、小形にして大減速比を得易いので、減速機94の小型化に好ましい。なお、伝動部材としては、単一の鋼線材からなるワイヤ5の他、複数の線材を撚り合わせたものを利用したものや、樹脂材料等の鋼以外の素材を利用したものでもよく、一端が引っ張られることにより他端に力や変位を伝達できる部材であればよい。また、ワイヤ5は、駆動ユニット6およびテンショナ3に、リンク機構等を介して接続されてもよい。
【0058】また、テンショナ3は、上述の構成の他、例えば、可動部材8が固定部材7に対して揺動変位するものや,オートテンショナを別途設ける場合に弾性部材9を省略したもの等、テンショナプーリを変位可能に支持する公知の構成を利用できる。その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年9月2日(1999.9.2)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−74111(P2001−74111A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−248960