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【発明の名称】 ロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置
【発明者】 【氏名】安部 浩也

【氏名】山下 徹

【氏名】斉藤 吉晴

【氏名】山本 吉則

【要約】 【課題】ロックアップクラッチ摩擦材の実際の温度を正確に算出して、その耐久性の評価を正確に行う。

【解決手段】ロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置は、ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を表面温度算出手段B3により算出し、このように算出されたクラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた第1の許容温度とを表面温度比較手段B4により比較し、クラッチ摩擦材の表面温度が第1の許容温度以上となったと判断されたときに、摩擦材温度低下作動手段B5を作動させてクラッチ摩擦材の表面温度を低下させる作動を行わせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン出力軸に連結されるインペラ部材と、変速機入力軸に連結されるタービン部材と、固定保持されるステータ部材と、前記インペラ部材と前記タービン部材とを係脱させるロックアップクラッチとを有してなるロックアップ機構付きトルクコンバータにおいて、前記ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を算出する表面温度算出手段と、前記表面温度算出手段により算出された前記クラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた第1の許容温度とを比較する表面温度比較手段と、前記クラッチ摩擦材の表面温度を低下させる作動を行わせる摩擦材温度低下作動手段とを備え、前記表面温度比較手段により前記クラッチ摩擦材の表面温度が前記第1の許容温度以上となったと判断されたときに、前記摩擦材温度低下作動手段を作動させることを特徴とするロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置。
【請求項2】 エンジン出力軸に連結されるインペラ部材と、変速機入力軸に連結されるタービン部材と、固定保持されるステータ部材と、前記インペラ部材と前記タービン部材とを係脱させるロックアップクラッチとを有してなるロックアップ機構付きトルクコンバータにおいて、前記ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を算出する表面温度算出手段と、前記表面温度算出手段により算出された前記クラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた第2の許容温度とを比較する表面温度比較手段と、前記表面温度比較手段により前記クラッチ摩擦材の表面温度が前記第2の許容温度以上となったと判断された時間を累積記憶する時間累積手段と、前記時間累積手段により累積記憶された累積時間が予め定められた許容時間以上となったときから前記ロックアップクラッチの係合作動を規制する係合作動規制手段とを備えることを特徴とするロックアップクラッチ付きトルクコンバータの制御装置。
【請求項3】 前記第2の許容温度が複数の温度範囲に分けて複数設定され、これら複数の第2の許容温度毎に温度が高くなるほど大きくなる重み付けがなされて複数の累積時間が累積記憶されることを特徴とする請求項2に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータの制御装置。
【請求項4】 前記表面温度算出手段は、前記トルクコンバータ内の作動油温と、前記ロックアップクラッチにおける発熱量とに基づいて前記クラッチ摩擦材の表面温度を演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車の変速機などに用いられるトルクコンバータの制御装置に関し、さらに詳しくは、インペラとタービンとを係脱可能なロックアップ機構を有してなるロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】トルクコンバータは自動車の自動変速機などに用いられているが、トルクコンバータにインペラとタービンとを直結させるロックアップクラッチを設けることが多く、ロックアップクラッチを係合させることにより動力伝達効率を高めて燃費向上が図られている。ところで近年においては、さらなる燃費向上などを目的としてロックアップクラッチを部分的に係合する制御、すなわちロックアップクラッチのスリップ制御を行うことが多くなっている。スリップ制御が行われるとロックアップクラッチの摩擦材からの発熱量は増大するため、クラッチ摩擦材、シール部材等の耐久性が問題となりやすく、これらの耐久性を確保する必要がある。
【0003】このようなことから、従来からクラッチスリップに伴う発熱からロックアップクラッチを保護するため、種々の装置、方法が提案されている。例えば、特開平7−89365号公報には、定速走行制御を行っているときに、クラッチのスリップ量が異常に大きくなったときに、定速走行制御を解除しロックアップクラッチを保護する装置が開示されている。また、特開平10−169771号公報には、トルクコンバータ内の作動油温の上昇率等が異常に高くなったときにエンジンの回転を低下させる制御を行うことが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ロックアップクラッチの耐久という点においてはクラッチ摩擦材の耐久性が最も重要であり、クラッチ摩擦材の耐久性は摩擦材そのものの温度により大きく影響される。従来においては、クラッチのスリップ量、トルクコンバータ油温等に基づいて耐久性を確保する制御が行われていたが、これでは実際のクラッチ摩擦材の温度とは相違する温度に基づく制御になるという問題があった。このため、従来ではクラッチ摩擦材の耐久性の安全率を大きめに設定しておき、クラッチスリップ量、トルクコンバータ油温等に基づく制御でもロックアップクラッチの耐久性を損なわないようにする必要があった。ところが、これによりロックアップクラッチが過剰品質となりコストアップに繋がるなどといった問題があった。
【0005】本発明はこのような問題に鑑みたもので、ロックアップクラッチ摩擦材の実際の温度を正確に算出して、その耐久性の評価を正確に行うことができ、小さな安全率でも十分な耐久性を確保可能なロックアップクラッチ機構付きトルクコンバータの制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的達成のため、本発明に係るロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置は、図1のクレーム対応図に示すように、ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を表面温度算出手段B3により算出し、このように算出されたクラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた第1の許容温度とを表面温度比較手段B4により比較し、クラッチ摩擦材の表面温度が第1の許容温度以上となったと判断されたときに、摩擦材温度低下作動手段B5を作動させてクラッチ摩擦材の表面温度を低下させる作動を行わせるように構成される。
【0007】このような構成によれば、クラッチ摩擦材の表面温度が表面温度算出手段B3により正確に算出されるので、この表面温度がクラッチ摩擦材の耐久性を損ねる温度、すなわち、第1の許容温度以上となったときには、摩擦材温度低下作動手段B5を作動させてクラッチ摩擦材の表面温度を低下させるため、ロックアップクラッチのスリップ制御を行いつつ、その耐久性も確保することが容易となる。なお、摩擦材温度低下作動手段は、例えば、ロックアップクラッチを完全係合させたり、完全解放させたりする作動を行わせる手段であり、この作動制御はロックアップ作動制御装置B6により行われる。
【0008】もう一つの本発明に係るロックアップクラッチ付きトルクコンバータの制御装置は、図2のクレーム対応図に示すように、ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を表面温度算出手段B3により算出し、このように算出されたクラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた第2の許容温度とを表面温度比較手段B11により比較し、クラッチ摩擦材の表面温度が第2の許容温度以上となったと判断された時間を時間累積手段B12により累積記憶し、このように累積記憶された累積時間が予め定められた許容時間以上となったときから係合作動規制手段B13によりロックアップクラッチの係合作動を規制するように構成される。この係合作動規制はロックアップ作動制御装置B6により行われる。
【0009】この装置において第2の許容温度は、ロックアップ制御装置等の故障に起因して発生する摩擦材への軽度の損傷が発生させうる温度である。このような損傷が発生するような温度に長時間さらされると、クラッチ摩擦材は所期の性能を発揮できなくなるため、ロックアップクラッチの係合作動を規制し、安全性を図るものである。なお、このときには、警告灯を点灯させるなどしてロックアップクラッチの交換が必要であることを表示し、早期にロックアップクラッチを交換することを促すのが好ましい。
【0010】なお、上記第2の許容温度を複数の温度範囲に分けて複数設定し、これら複数の第2の許容温度毎に温度が高くなるほど大きくなる重み付けを行って複数の累積時間を累積記憶し、この累積時間に基づいて、ロックアップクラッチの係合作動を行うか否かを判断するのが好ましい。これにより、より正確にロックアップクラッチの損傷程度を把握可能となり、より適切な交換判断などが可能となるという効果がある。
【0011】以上の装置において、表面温度算出手段B3は、図1および図2に示すように、例えば油温センサB1により検出されたトルクコンバータ内の作動油温と、発熱量算出手段B2により算出されたロックアップクラッチにおける発熱量とに基づいてクラッチ摩擦材の表面温度を演算するのが好ましい。これにより、ほぼ正確なクラッチ摩擦材表面温度を求めることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係るロックアップ制御装置CUを備えたロックアップ機構付きトルクコンバータTCを図3に示している。トルクコンバータTCは、コンバータカバー11aを介してエンジン出力軸(図示せず)と繋がるインペラ11と、インペラ11と対向して配設されるとともにタービンハブ12aを介して変速機入力軸(図示せず)と繋がるタービン12と、固定保持されるステータ13とから構成される。タービン12の背面とコンバータカバー11aの内面とに囲まれた空間内にロックアップピストン15が配設されてロックアップ機構が構成されている。この空間はロックアップピストン15により二分割され、コンバータカバー11aとロックアップピストン15に囲まれたロックアップ解放室16と、タービン12とロックアップピストン15に囲まれたロックアップ締結室17とに分けられている。なお、このロックアップピストン15はタービンハブ12aに対して軸方向移動可能で、且つタービンハブ12aと一体回転するように取り付けられている。
【0013】トルクコンバータTC内は、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油が満たされ、エンジンによりインペラ11が回転されるときに発生する作動油の動圧を受けてタービン12が回転駆動される。このとき、インペラ11、タービン12およびステータ13の羽根の作用により、インペラ11からのトルクが増幅されてタービン12に伝達されるが、流体を介する動力伝達であるため、インペラ11とタービン12とが同一回転するような運転条件下においてもある程度の動力伝達ロスが生じる。このような動力伝達ロスを抑えるため、インペラ11とタービン12とが同一回転するような運転条件下で、両者を機械的に直結させて一体回転させるためにロックアップ機構が設けられている。
【0014】ロックアップ機構の作動は、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油圧を制御して、ロックアップ解放室16とロックアップ締結室17内の油圧を制御することにより行われる。例えば、ロックアップ解放室16内の油圧を低下させることによりロックアップ締結室17内の油圧によりロックアップピストン15をコンバータカバー11aの内面に押しつけ、ロックアップピストン15の側面に設けられたクラッチ摩擦材16aとコンバータカバー11aの内面との摩擦によりロックアップピストン15とコンバータカバー11aとを結合させる。この結果、インペラ11とタービン12が係合されて一体回転するロックアップ作動状態となる。これとは逆に、ロックアップ油入口16aからロックアップ解放室16に作動油を供給してロックアップ解放室16内の油圧をロックアップ締結室17内の油圧より高くすると、ロックアップピストン15はコンバータカバー11aの内面から離れてロックアップ解放状態となり、インペラ11とタービン12とは独立して回転可能となり、トルクコンバータTCが作動する状態となる。
【0015】このように、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油圧を制御することにより、ロックアップピストン15とコンバータカバー11aの内面との接触を制御し、ロックアップを作動させたり、解放させたり、さらには、部分係合させたり(これをロックアップクラッチのスリップ制御と称する)することができる。このようなロックアップ制御を行うために、ロックアップ制御装置CUが設けられている。
【0016】ロックアップ制御装置CUは、オイルタンク6内の作動油を供給する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される供給圧を調整する供給圧調整手段4と、供給圧調整手段4により調圧された作動油をロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aに供給する制御を行う油圧回路切替手段3と、ロックアップ油入口16aからロックアップ解放室16に供給される作動油圧を制御する締結力調整手段2と、締結力調整手段2の作動を制御する信号圧を供給する信号圧発生手段1とを備えて構成される。この構成のロックアップ制御装置CUによれば、ロックアップ解放室16内の油圧を締結力調整手段2により調圧制御し、ロックアップ締結室17内の油圧を供給圧調整手段4により調圧制御し、且つ、油圧回路切替手段3による供給油圧の切替制御することにより、ロックアップクラッチの係合作動制御が行われる。
【0017】このようにしてロックアップクラッチの係合作動制御を行う場合(特に、スリップ制御を行う場合)、クラッチ摩擦材16aとコンバータカバー11aの内面との摩擦により発熱が生じ、クラッチ摩擦材16aの耐久性が損なわれるおそれがある。このため、本発明のロックアップ制御装置CUにおいては、ロックアップクラッチ摩擦材16aの温度を演算して、これが過度に高温となることを防止する制御を行うようになっている。この制御を図4以下のフローチャートを参照して説明する。
【0018】この制御では、まずステップS1においてロックアップクラッチLCの負荷計算を行う。この負荷計算は図5に示すフローチャートに従って行われ、まず、スロットル開度センサによりエンジンスロットル開度θTHを検出するとともに、車速センサにより車速Vを検出する(ステップS11)。これら検出値に基づいて、ロックアップスリップ制御における目標スリップ率を算出し(ステップS12)、このような目標スリップ率が得られるようにロックアップクラッチの係合制御を行う(ステップS13)。このとき、エンジン回転数Ne(すなわち、トルクコンバータ入力回転数)と変速機入力回転数Nm(すなわち、トルクコンバータ出力回転数)とを検出する(ステップS14)。
【0019】さらに、ステップS15において、エンジンスロットル開度θTHおよびエンジン回転数Neに基づいて、エンジン出力トルクを推定する。そして、ステップS16において次のようにして、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCと、ロックアップクラッチ差回転ΔNを算出する。
【0020】まず、ロックアップクラッチ差回転ΔNはエンジン回転数Ne(すなわち、トルクコンバータ入力回転数)と変速機入力回転数Nm(すなわち、トルクコンバータ出力回転数)との差であり簡単に求まる。一方、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCについては、ロックアップクラッチがスリップ制御を行っているときは、エンジントルクTeはロックアップクラッチ伝達トルクTLCとトルクコンバータの流体伝達トルクTTCの和であり、次式(1)のように表される。ここで、トルクコンバータの流体伝達トルクTTCは、エンジン回転数Neと変速機入力回転数Nm(または、目標すべり率)から求まるトルクコンバータの容量係数τを用いて次式(2)により求められる。これら式(1)および(2)からロックアップクラッチ伝達トルクTLCが求まる。
【0021】
【数1】
Te = TLC + TTC ・ ・ ・ (1)
TC = τ・(Ne/1000) ・ ・ ・(2)
【0022】このようにしてロックアップクラッチ負荷が演算されると、図4のステップS2に進みトルクコンバータの作動油温TempINを検出する。そして、ステップS3においてロックアップクラッチ摩擦材の温度TempFMを演算する。この演算は図6に示すフローチャートに従って以下のようにして行われる。
【0023】まず、上述のように演算されたロックアップクラッチ伝達トルクTLCとロックアップクラッチ差回転ΔNとを読み込み(ステップS31)、ステップS32においてロックアップクラッチの発熱量QLCを演算する。この演算は、次式(3)により求まる。
【0024】
【数2】
LC = TLC・(π/30)・ΔN・dt ・ ・ ・ (3)
【0025】続いてステップS33においてトルクコンバータ内の作動油温TempINを読み込み、これに基づいて熱収支計算を行い、単位時間当たりのロックアップ摩擦材表面温度と作動油温の温度差上昇率DT/dtを算出する(ステップS34)。この上昇率DT/dtは次式(4)により算出できる。
【0026】
【数3】
LC・(DT/dt)=QLC − k・ΔT ・ ・ ・ (4)
但し、MLC : 摩擦材と摺動する部位の熱容量(J/°C)
k : 作動油による冷却率補正係数(J/(°C・sec))
ΔT : 摩擦材表面温度TempFMと作動油温TempINの温度差(°C)
【0027】なお、式(4)による計算においては、初期条件として、QLC=0およびTempFM=TempINと設定される。また、熱容量MLCおよび補正係数kは、技術計算もしくは実験的に求められる値である。式(4)によれば、ロックアップクラッチ発熱量QLCが同一であっても、摩擦材と摺動する部位の熱容量MLCが大きかったり(例えば、ロックアップクラッチと係合するコンバータカバー11aの板厚が厚い場合等)、補正係数kが大きい場合(例えば、作動油の流量が増加した場合)は、ロックアップクラッチ摩擦材表面温度の上昇率は減少することになる。
【0028】次に、このようして計算された温度差上昇率DT/dtと、前回の計算により求められた摩擦材表面温度TempFMとから、今回の摩擦材表面温度TempFM′を次式(5)から求める。以下、この計算を繰り返して刻一刻変化する摩擦材表面温度を求めることができる。
【0029】
【数4】
TempFM′= TempFM + DT/dt ・ ・ ・ (5)
【0030】以上のようにして現在のロックアップクラッチ摩擦材の表面温度TempFM′が求まると、これを摩擦材に応じて設定される第1許容温度T1、すなわち、摩擦材がこれ以上の温度となったときには摩擦材の耐久性に影響が発生する限界温度と比較する(ステップS4)。現在のロックアップクラッチ摩擦材の表面温度TempFM′が第1許容温度T1未満のときには、ステップS1に戻って上述の計算を継続し、第1許容温度T1以上のときにはステップS5に進み、摩擦材の温度を低下させる制御を行う。この温度低下制御としては、ロックアップクラッチを完全係合させる制御もしくは完全解放させる制御が行われる。これにより、摩擦材が第1許容温度T1以上となることがなくなり、摩擦材の所期の耐久性が確保される。
【0031】なお、以上のようにして計算された摩擦材の表面温度と実際の表面温度とを図9に示すが、この図から分かるように、上記計算によりかなり正確な摩擦材の表面温度を求めることができる。
【0032】もう一つの本発明に係るロックアップ制御を、図7を参照して説明する。この制御においては、まずステップS51においてロックアップクラッチの負荷計算を行う。この計算は、図4のステップS1と同じであるのでその説明は省略する。次にステップS2においてトルクコンバータの作動油温TempINを検出し、ステップS53においてロックアップクラッチ摩擦材の温度TempFMを演算する。この演算は、図4のステップS3と同じであるのでその説明は省略する。
【0033】このようにして現在のロックアップクラッチ摩擦材の表面温度TempFM′が求められると、これを摩擦材に応じて設定される第2許容温度T2と比較する(ステップS54)。この第2許容温度T2はロックアップ制御装置等の故障に起因して発生する摩擦材への軽度の損傷が発生させうる温度であり、摩擦材がこの温度以上となると損傷を受け、このような損傷が累積すると摩擦材の性能が低下して摩擦材の交換が必要となるような温度である。現在のロックアップクラッチ摩擦材の表面温度TempFM′が第2許容温度T2未満のときには、ステップS51に戻って上述の計算を継続し、第2許容温度T2以上のときには、このように第2許容温度T2以上となっている時間を累積計算する。
【0034】そして、ステップS56に進み、このように累積計算された時間が摩擦材の使用限界時間を超えたか否かを判断し、越えていない場合には上記計算を継続するが、越えたときにはステップS57に進みロックアップ作動規制制御を行う。この制御は、ロックアップクラッチの係合を規制するもので、ロックアップクラッチ摩擦材をこれ以上使用させない制御である。なお、このとき同時に警告灯を点灯し、摩擦材が使用限界に達して交換が必要であることを知らせる。
【0035】以上の制御においては、摩擦材表面温度が第2許容温度を超えた時間を累積するだけであるが、摩擦材の温度損傷度合いは、第2許容温度を超える大きさにより異なり、摩擦材の表面温度が高いほど大きい。このため、単に第2許容温度を超えたか否かを判断するだけでなく、第2許容温度以上の温度範囲を複数の温度帯域に分割し、この温度帯域毎に累積時間を求めるとともに温度帯域毎に累積時間に重み付けを行って使用限界か否かの判断を行うようにするのが好ましい。
【0036】この重み付けの例を図8に示している。この例では第2許容温度を換える温度範囲をA1,A2,・・Anに分割し、各温度範囲毎の使用限界H1,H2,・・Hnを設定している。この場合に摩擦材が使用限界に達したか否かの判断は、いずれかの温度範囲において、累積時間がその温度範囲の使用限界に達したか否かを判断して行う。もしくは、各温度範囲A1,A2,・・Anでの累積時間をa1,a2,・・anとした場合に、次式(6)を満たす条件となったときに使用限界に達したと判断しても良い。
【0037】
【数5】
a1/H1+a2/H2+・・+an/Hn=1 ・ ・ ・ (6)
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、クラッチ摩擦材の表面温度が表面温度算出手段により正確に算出され、この表面温度がクラッチ摩擦材の耐久性を損ねる温度、すなわち、第1の許容温度以上となったときには、摩擦材温度低下作動手段を作動させてロックアップクラッチを完全係合させたり完全解放させたりしてクラッチ摩擦材の表面温度を低下させるため、ロックアップクラッチのスリップ制御を行いつつ、その耐久性も確保することが容易である。
【0039】また、もう一つの本発明によれば、クラッチ摩擦材の表面温度が表面温度算出手段により正確に算出され、この表面温度が第2の許容温度以上となってクラッチ摩擦材に損傷が発生する場合には、第2の許容温度以上になった時間を累積記憶し、このように累積記憶された累積時間が予め定められた許容時間以上となったときにはロックアップクラッチの係合作動が規制されるので、クラッチ摩擦材が所期の性能を発揮できなくなったときにロックアップクラッチの係合作動を規制し、安全性を図ることができる。なお、このときには、警告灯を点灯させるなどしてロックアップクラッチの交換が必要であることを表示し、早期にロックアップクラッチを交換することを促すのが好ましい。
【0040】なお、上記第2の許容温度を複数の温度範囲に分けて複数設定し、これら複数の第2の許容温度毎に温度が高くなるほど大きくなる重み付けを行って複数の累積時間を累積記憶し、この累積時間に基づいて、ロックアップクラッチの係合作動を行うか否かを判断するのが好ましい。これにより、より正確にロックアップクラッチの摩擦材の損傷程度を把握可能となり、より適切な交換判断などが可能となる。
【0041】以上の装置において、表面温度算出手段は、トルクコンバータ内の作動油温と、ロックアップクラッチにおける発熱量とに基づいてクラッチ摩擦材の表面温度を演算するのが好ましい。これにより、ほぼ正確なクラッチ摩擦材表面温度を求めることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年8月26日(1999.8.26)
【代理人】 【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
【公開番号】 特開2001−65685(P2001−65685A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−239790