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【発明の名称】 ベルト式無段変速機の油圧回路
【発明者】 【氏名】水井 浩之

【要約】 【課題】ベルト式無段変速機の油圧回路において、簡単な回路構成で制御回路の故障時にも確実に車両の走行安全性を確保することで、油圧回路の簡素化及び低コスト化を図る。

【解決手段】ソレノイドバルブ81,82の故障時、セカンダリプーリ41への供給油圧を増大することで必要最低限のライン圧を確保し、レギュレータバルブ63の吐出側とプライマリプーリ31とを連通状態に維持して変速比を少なくとも1以下とし、セカンダリプーリ41への供給油圧が所定値以上になったときに、第2排出バルブ90により供給油圧が減少させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力軸側に連結されたプライマリプーリと、出力軸側に連結されて該プライマリプーリに対してピストン受圧面積が同一以下に構成されたセカンダリプーリとの間に、動力伝達を行うベルトが掛け渡され、プライマリシリンダ及びセカンダリシリンダに油圧を給排することで前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリの各溝幅を相対的に変化させて変速させるベルト式無段変速機において、前記セカンダリシリンダへの供給圧を調圧する調圧弁と、該調圧弁を制御する第1電磁弁と、前記調圧弁により調圧された作動油を前記プライマリシリンダへ給排することで前記ベルト式無段変速機の変速比を制御する変速比制御弁と、該変速比制御弁を制御する第2電磁弁と、車両の運転状態に基づいて前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁を作動制御する電磁弁制御手段と、前記各電磁弁あるいは該電磁弁制御手段の少なくとも一方の故障を検出する故障検出手段と、該故障検出手段が故障を検出したときに前記セカンダリシリンダへの供給油圧を増大させると共に前記調圧弁の吐出側と前記プライマリシリンダとが連通状態に維持されるようにするフェールセーフ手段と、前記セカンダリシリンダへの供給油圧と同圧の作動油が供給される作動油経路に配設されて該供給油圧が所定値以上になったときに該供給油圧を減少させる排出弁とを具えたことを特徴とするベルト式無段変速機の油圧回路。
【請求項2】 請求項1記載のベルト式無段変速機の油圧回路において、前記排出弁は、前記調圧弁と前記変速比制御弁との間の作動油経路に配設された第1排出弁と、前記変速比制御弁と前記プライマリシリンダとの間の作動油経路に配設された第2排出弁とを有し、前記第1排出弁の排出設定圧が前記第2排出弁の排出設定圧よりも高く設定されていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧回路。
【請求項3】 請求項1記載のベルト式無段変速機の油圧回路において、前記フェールセーフ手段は、前記第1電磁弁の制御圧を前記調圧弁の一端部側に導く第1作動油経路と、前記調圧弁の他端部側に配設されて前記第1電磁弁からの制御圧がないときに油圧ポンプの吐出圧導入ポートと吐出ポートとを連通するように前記第1電磁弁の制御圧に対抗する付勢力を発生する第1付勢力発生手段とを有する第1フェールセーフ機構と、前記第2電磁弁の制御圧を前記変速比制御弁の一端部側に導く第2作動油経路と、前記変速比制御弁の他端部側に配設されて前記第2電磁弁からの制御圧がないときに前記セカンダリシリンダへの供給油圧導入ポートとプライマリシリンダとを連通するように前記第2電磁弁の制御圧に対抗する付勢力を発生する第2付勢力発生手段とを有する第2フェールセーフ機構とを具えたことを特徴とするベルト式無段変速機の油圧回路。
【請求項4】 請求項1記載のベルト式無段変速機の油圧回路において、前記排出弁の排出経路が潤滑経路に連結されていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧回路。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベルト式無段変速機の油圧回路に関する。
【0002】
【従来の技術】ベルト式無段変速機は、一般に、入力軸に連結されたプライマリプーリと出力軸に連結されたセカンダリプーリとの間にベルトを掛け回し、各プーリのシリンダに油圧を給排することで、プライマリプーリ及びセカンダリプーリの各溝幅を相対的に変化させて変速させるものである。このようなベルト式無段変速機における従来の制御装置としては、例えば、特許第2848177号公報に開示されたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来のベルト式無段変速機の制御装置にあっては、第1及び第2の制御弁の異常時の対応のためだけに、第3の制御弁及び変速制限バルブを別途設けなければならず、部品点数の増加による製品コストが上昇してしまうという問題がある。
【0004】本発明はこのような問題を解決するものであって、簡単な回路構成で制御回路の故障時に確実に車両の走行安全性を確保することで、油圧回路の簡素化及び低コスト化を図ったベルト式無段変速機の油圧回路を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するための請求項1の発明のベルト式無段変速機の油圧回路では、電磁弁あるいは電磁弁制御手段の少なくとも一方の故障を検出したときにセカンダリシリンダへの供給油圧を増大させると共に調圧弁の吐出側とプライマリシリンダとが連通状態に維持されるようにするフェールセーフ手段を設けると共に、セカンダリシリンダへの供給油圧と同圧の作動油が供給される作動油経路に供給油圧が所定値以上になったときにこの供給油圧を減少させる排出弁を設けている。
【0006】従って、故障検出手段が故障を検出したときでも、ライン圧はベルトスリップを防止できる必要最低限に確保され、オイルポンプの駆動ロスを低減できるので、故障時であっても燃費の低減が図れる。また、調圧弁の吐出側とプライマリシリンダとが連通状態に維持されることで、セカンダリシリンダ及びプライマリシリンダに同圧の高い油圧が供給されるが、セカンダリプーリはプライマリプーリに対してピストン受圧面積が同一以下に構成されており、変速比は少なくとも1以下とされ、高速走行中であってもエンジンの過回転が防止される。
【0007】また、請求項2の発明のベルト式無段変速機の油圧回路では、排出弁を、調圧弁と変速比制御弁との間の作動油経路に配設された第1排出弁と、変速比制御弁とプライマリシリンダとの間の作動油経路に配設された第2排出弁とで構成し、第1排出弁の排出設定圧を第2排出弁の排出設定圧よりも高く設定している。
【0008】従って、正常時にバルブスティック等により設定値以上のライン圧が発生した場合であっても、第1排出弁により油圧の低減が可能となる。一方、故障時にライン圧が高圧となった場合でも、第2排出弁により供給油圧が減少するため、不要なライン圧の高圧化が防止される。
【0009】ここで、第2排出弁を変速比制御弁とプライマリシリンダとの間の作動油経路に配設したことで、正常走行時でもプライマリシリンダ側にはこの第2排出弁の排出設定圧以上の油圧は作用しない。プライマリシリンダとセカンダリシリンダとに同一油圧が供給可能となっている無段変速機では、本来発生してはいけないが、何らかの原因で最大ライン圧がプライマリシリンダに作用する場合も想定される。そして、セカンダリプーリに対してプライマリプーリのピストン受圧面積を大きくしているものにおいては、プライマリプーリは最大ライン圧よりも大きい油圧が作用するため、プライマリプーリ側のシール性や強度を向上させる必要があるが、故障時を想定した設計ではコストアップにつながり、妥当ではない。
【0010】本発明では、変速比制御弁とプライマリシリンダとの間に設けられた第2排出弁により高ライン圧化が防止されており、プライマリプーリ側のシール性や強度を第2排出弁の排出設定圧に合わせた適正な設計値とすることができ、高ライン圧化を見越したハイスペックな設計を不要として低コスト化が図れる。
【0011】また、請求項3の発明のベルト式無段変速機の油圧回路では、フェールセーフ手段自体も油圧回路より構成している。従って、フェールセーフ用の特別の制御弁を別途設けることなく、車両の走行安全性を確保することで、油圧回路の簡素化及び低コスト化が図れる。
【0012】また、請求項4の発明のベルト式無段変速機の油圧回路では、排出弁の排出経路を潤滑経路に連結している。従って、電磁弁制御手段の故障時に、調圧弁からの油圧の排出が減少して潤滑不足気味になるが、排出弁から排出される作動油が排出経路を介して潤滑経路に補充されることで、潤滑必要箇所の焼きつきを防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】図1に本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の油圧回路、図2に本実施形態のベルト式無段変速機を適用した車両の駆動装置の概略構成、図3に本実施形態のベルト式無段変速機の概略構成を示す。
【0015】本実施形態のベルト式無段変速機を適用した車両の駆動装置において、図2に示すように、エンジン(内燃機関)11から出力された回転は、トルクコンバータ12及び正転反転切換機構13を介してベルト式無段変速機(CVT)14へ伝達され、このベルト式無段変速機14からフロントデフ15を介して左右の駆動輪16へ伝達されて騒動するようになっている。この正転反転切換機構13は、エンジン11からトルクコンバータ12を介して入力される回転の回転方向を正回転、あるいは逆回転としてベルト式無段変速機14に出力するものであり、リバースブレーキ21とフォワードクラッチ22とを有している。
【0016】また、ベルト式無段変速機構14は、図3に示すように、エンジン11の出力側に連結されたプライマリプーリ31と車両の騒動軸側に連結されたセカンダリプーリ41と両プーリ31,41間に掛け渡されたベルト51等とから構成され、正転反転切換機構13からプライマリシャフト32に入力された回転が、同軸一体のプライマリプーリ31からベルト51を介してセカンダリプーリ41へ入力され、セカンダリシャフト42に出力されるようになっている。
【0017】即ち、プライマリプーリ31は固定シーブ33と可動シーブ34とを有し、可動シーブ34の背面側にプライマリシリンダ31aが形成されている。従って、このプライマリシリンダ31aに油圧を給排することで固定シーブ33に対して可動シーブ34を移動し、プーリの溝幅を可変とすることができる。一方、同様に、セカンダリプーリ41は固定シーブ43と可動シーブ44とを有し、可動シーブ44の背面側にセカンダリシリンダ41aが形成されている。従って、このセカンダリシリンダ41aに油圧を給排することで固定シーブ43に対して可動シーブ44を移動し、プーリの溝幅を可変とすることができる。この場合、セカンダリシリンダ41aのピストンは、プライマリシリンダ31aのピストンに対して受圧面積が1/2程度となっている。
【0018】セカンダリシリンダ41aには、調圧弁としてのレギュレータバルブ63により調圧されたセカンダリ油圧Ps(ライン圧PL)が加えられ、プライマリシリンダ31aには、ライン圧PLが変速比制御バルブ64により調圧されたプライマリ油圧Ppが加えられる。なお、61はオイルパン、62はオイルパン61内を油をレギュレータバルブ63側へ供給するオイルポンプである。
【0019】このセカンダリ油圧Ps(ライン圧PL)及びプライマリ油圧Ppは、電子制御コントロールユニット(ECU)65の指令信号によりそれぞれ設定される。つまり、このECU65には、エンジン回転数センサ(クランク角センサ又はカム角センサ)71、スロットル開度センサ72、プライマリプーリ31の回転速度を検出するプライマリ回転速度センサ73、セカンダリプーリ41の回転速度を検出するセカンダリ回転速度センサ74、ライン圧を検出するライン圧センサ75、車速センサ76、シフトレバーの位置を検出するシフト位置センサ77、プライマリ圧を検出するプライマリ圧センサ78等の各検出信号が入力されるようになっており、ECU65では、これらの検出信号に基づいて各プーリ31,41への油圧供給系のレギュレータバルブ63や変速比制御バルブ64を制御するようになっている。なお、スロットル開度センサ72に代えてエンジン負荷を代表するパラメータ値を検出するセンサを用いてもよい。
【0020】ここで、本実施形態のベルト式無段変速機の油圧回路について説明する。図1に示すように、レギュレータバルブ63は、スプール63a,63bを有し、このスプール63a,63bの間には第1フェールセーフ機構を構成する第1付勢力発生手段としてのスプリング63cが介在されている。変速比制御バルブ64は、スプール64a,64bを有し、スプール64aの一端とハウジングの端面との間に第2フェールセーフ機構を構成する第2付勢力発生手段としてのスプリング64cが介在されると共に、スプール64a,64bの間にはスプリング64dが介在されている。
【0021】そして、レギュレータバルブ63の導入ポート63dは油圧ポンプ62の吐出口に接続され、吐出ポート63eはセカンダリシリンダ41aに接続されると共に変速比制御バルブ64の導入ポート64eに接続され、吐出ポート64fはプライマリシリンダ31aに接続されている。
【0022】第1、第2電磁弁としてのソレノイドバルブ81,82はそれぞれレギュレータバルブ63及び変速比制御バルブ64を制御するものである。即ち、ソレノイドバルブ81は制御圧Pvaをレギュレータバルブ63の一端部側に第1作動油経路83を介して供給する。また、ソレノイドバルブ82は制御圧Pvbを変速比制御バルブ64の一端部側に第2作動油経路84を介して供給する。なお、これらのソレノイドバルブ81,82はノーマルクローズタイプのバルブでECU65によりデューティ制御される。一方、ECU65(電磁弁制御手段、故障検出手段)やソレノイドバルブ81,82の、あるいは各種センサ等の異常が検出されたときには、ソレノイドバルブ81,82への通電を停止する。これにより、セカンダリシリンダ41aへの供給油圧を増大させると共に、変速比制御バルブ64の導入ポート64eと吐出ポート64fとが連通状態に維持される。
【0023】更に、レギュレータバルブ63の吐出ポート63eからセカンダリシリンダ41aへのライン圧経路85の途中から分岐して変速比制御バルブ64の導入ポート64eに接続する分岐経路86には第1排出バルブ87が設けられている。また、変速比制御バルブ64の吐出ポート64fからプライマリプーリ31に接続する作動油経路88には連絡経路89を介して第2排出バルブ90が配設されている。第1排出バルブ87はスプール87aとこの第1排出バルブ87から油が排出されることを阻止する方向にスプール87aを付勢するスプリング87bとを有し、第2排出バルブ90もスプール90aと油が排出されることを阻止する方向にスプール90aを付勢するスプリング90bとを有している。第1排出バルブ87の排出設定圧は第2排出バルブ90の排出設定圧よりも高く設定されている。そして、第2排出バルブ90の排出経路91は図示しない潤滑経路に連結されている。
【0024】なお、図1において、レギュレータバルブ63により調圧されたライン圧はレデューシングバルブ92の導入ポート92aに導かれている。レデューシングバルブ92で調圧された油は吐出ポート92bを介してレギュレータバルブ63、変速比制御バルブ64、各排出バルブ87,90に接続されており、各バルブに一定の制御圧が作用するようになっている。また、各ソレノイドバルブ81,82の元圧にもなっている。
【0025】以下、本実施形態のベルト式無段変速機の作動について説明する。
【0026】ソレノイドバルブ81,82は、車両の運転状態に基づいたECUからの指令によりデューティ制御され、制御圧Pva,Pvbを出力する。レギュレータバルブ63は、制御圧Pva、スプリング63c、レデューシングバルブ92からのレデューシング圧等に応じて、油圧ポンプ62の吐出圧を所定のライン圧PL(セカンダリ油圧Ps)に調圧し、ライン圧経路85に出力する。このライン圧PLは、セカンダリシリンダ41aに供給される。一方、変速比制御バルブ64は、制御圧Pvb、スプリング64c,64d、レデューシングバルブ92からのレデューシング圧等に応じて、ライン圧PLを所定のプライマリ油圧Ppに調圧し、作動油経路88に出力する。ソレノイドバルブ82からの制御圧Pvbが高いとき、スプール64aが図中左方に押動され、ポート64eとポート64fとが遮断されると共に、排出ポート64gが連通し、プライマリシリンダ31aの作動油が排出される。
【0027】逆に、ソレノイドバルブ82の制御圧Pvbが低くなると、変速比制御バルブ82のスプール64aが図中右方に押動され、排出ポート64gが遮断されると共に、ポート64eとポート64fとが徐々に連通され、プライマリシリンダ31aにもセカンダリ油圧Ppが供給される。
【0028】また、ソレノイドバルブ81,82やECU65、各種センサ等が正常時であっても、油中に入ったごみ等によりレギュレータバルブ63にバルブスティック等が発生し、設定値以上のライン圧PLが発生することが考えられるが、分岐経路86に配設した第1排出バルブ87により低減される。即ち、高くなったライン圧PLがスプール87aをスプリング87bのばね圧に抗して図中右方へ移動する。すると、分岐経路86と第1排出バルブ87の排出ポート87cとが連通状態となり、異常に高くなったライン圧PLはこの排出ポート87cを介して減圧されることとなり、ライン圧PLの異常上昇が防止される。
【0029】さて、車両の走行中に、ソレノイドバルブ81が故障、例えば、断線したとすると、ECU65はソレノイドバルブ81の断線を検出し、全ソレノイドバルブの制御を中止する。両ソレノイドバルブ81,82はノーマルクローズタイプのため、制御を中止すると各制御圧Pva,Pvbは0となり、レギュレータバルブ63では、スプール63aがスプリング63cのばね圧により図中左方に移動し、ライン圧PL(セカンダリ油圧Ps)が最大となるように調圧される。
【0030】一方、変速比制御バルブ64では、スプール64aがスプリング64cとレデューシング圧とより図中右方に移動し、ポート64eとポート64fとが連通状態とされ、直接最大ライン圧PLがプライマリシリンダ31aへ作用される。
【0031】しかしながら、作動油経路88の途中から分岐した連絡経路89に第2排出バルブ90が配設されているため、プライマリシリンダ31aへ供給される最大ライン圧はこの第2排出バルブ90のポート90cに作用し、スプリング90bに抗してスプール90aを図中右方へ押す。すると、ポート90cとポート90dとが連通状態となるが、ポート90dは潤滑必要部分に連結された排出ポートであるので、その結果、最大ライン圧はこの第2排出バルブ90により所定圧にまで減圧され、この減圧された油がプライマリシリンダ31aに供給されることとなる。なお、この所定圧はベルト51が滑らない最低必要圧としておく。
【0032】一方、ソレノイドバルブ81の制御中止によりレギュレータバルブ63では、ライン圧PLが最大値となるように調圧されるものの、分岐経路86(ポート64e)と作動油経路88(ポート64f)とが連通状態に維持された変速比制御バルブ64を介して第2排出バルブ90で減圧されるため、セカンダリシリンダ41aへもこの所定圧に減圧されたライン圧PLが供給されることになる。
【0033】また、プライマリシリンダ31aとセカンダリシリンダ41aに同圧のライン圧PLが供給されることになるが、プライマリシリンダ31aのピストン受圧面積をセカンダリシリンダ41aのピストン受圧面積の約2倍に設定しているため、プライマリプーリ31の溝幅の方が狭く、セカンダリプーリ41の溝幅の方が広くなり、変速比はオーバードライブ(OD)に調整される。そのため、例えば、高速走行中に故障しても変速比はODなのでエンジンの過回転が防止できる。
【0034】プライマリシリンダのピストン受圧面積をセカンダリシリンダのピストン受圧面積の約2倍に設定しているタイプの無段変速機において、故障時にライン圧が最大となるように設定されていると、プライマリシリンダ側には最大ライン圧の2倍の圧力が作用することになるため、各シリンダのシール性や各種部品の強度を上げて設計する必要があるが、このような非常事態を想定して設計することは効率が極めて悪く、コストも掛かってしまう。これに対して本実施形態の構成では、故障時に制御を中止することで、フェールセーフ時の制御ロジックを簡素化すると共に、レギュレータバルブ63で調圧される最大ライン圧も第2排出バルブ90で減圧されるため、プライマリプーリ31側の設計スペックも適正値にとどめることができ、コストを抑制できるという効果を奏する。
【0035】更に、ソレノイドバルブ81の故障時にはライン圧を最大とするようにレギュレータバルブ63が作動するため、レギュレータバルブ63から排出される油量が減少して潤滑不足気味になるが、第2排出バルブ90から排出される作動油が排出経路91を介して潤滑経路に補充されるので、焼きつきを防止できるという効果を奏する。
【0036】なお、上述の説明では、車両の走行中に、ソレノイドバルブ81が故障した場合について説明したが、ソレノイドバルブ82が故障した場合、また、ECU65や各種センサ等が故障した場合など、いずれの場合であっても、ソレノイドバルブ81,82の制御が中止され、各制御圧Pva,Pvbを0とするため、作動は前述したものと同様になる。
【0037】
【発明の効果】以上、実施形態において詳細に説明したように請求項1の発明のベルト式無段変速機の油圧回路によれば、故障検出時、セカンダリシリンダへの供給油圧を増大することでベルトスリップを防止できる。また、調圧弁の吐出側とプライマリシリンダとが連通状態に維持されることで、セカンダリシリンダ及びプライマリシリンダに同圧の高い油圧が供給されるが、セカンダリプーリはプライマリプーリに対してピストン受圧面積が同一以下に構成されており、変速比が少なくとも1以下とされ、高速走行中に故障したとしてもエンジンが過回転することなく、エンジンの破損を防止することができ、更に、セカンダリシリンダへの供給油圧が所定値以上になったときには、排出弁により供給油圧を必要最低限にまで減少されるので、ポンプの駆動ロスを減らし、ひいては燃費を向上させることができる。
【0038】また、請求項2の発明のベルト式無段変速機の油圧回路によれば、バルブスティック等により設定値以上のライン圧が発生した場合であっても、第1排出弁により油圧の低減が可能となる。一方、電磁弁、電磁弁制御手段、センサ等の故障時に、調圧弁では最大ライン圧を吐出するものの、第2排出弁で減圧するため、ライン圧のを必要最低限の圧にすることができる。
【0039】また、請求項3の発明のベルト式無段変速機の油圧回路によれば、故障検出時に第1付勢力発生手段によりセカンダリシリンダへの供給油圧が増大され、第2付勢力発生手段により調圧弁の吐出側とプライマリシリンダとが連通状態に維持されることとなり、フェールセーフ用の特別の制御弁を別途設けることなく、車両の走行安全性を確保することで、低コスト化を図ることができる。
【0040】また、請求項4の発明のベルト式無段変速機の油圧回路によれば、電磁弁制御手段の故障時、調圧弁からの油圧の排出が減少して潤滑不足気味になるが、排出弁から排出される作動油が排出経路を介して潤滑経路に補充されることで、焼きつきを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成11年8月25日(1999.8.25)
【代理人】 【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎 (外2名)
【公開番号】 特開2001−65684(P2001−65684A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−237821