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【発明の名称】 摩擦ローラ式変速装置
【発明者】 【氏名】内藤 甲矢雄

【要約】 【課題】従来のこの種の変速装置に比して、同等の性能を有してトルク容量を増大させることのできる摩擦ローラ式変速装置を提供する。

【解決手段】太陽ローラ1と外輪2との間に形成される環状空間3内に、2個の大径遊星ローラ4a,4bと2個の小径遊星ローラ4c,4dを配置し、そのうち少なくとも1個の小径遊星ローラ4dを含む2個の遊星ローラをウェッジローラとして、環状空間3内で当該空間3の周方向に移動可能に支持することにより、遊星ローラ数を多くしてトルク容量を増大させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の回転軸と同軸に固定された太陽ローラと、その第1の回転軸と平行で、かつ、当該第1の回転軸に対して偏心して設けられた第2の回転軸に固定された外輪と、上記太陽ローラと外輪との間に形成される環状空間内に回動自在に配置され、太陽ローラ外周面と外輪内周面の双方に転がり接触する複数の遊星ローラを備えるとともに、その遊星ローラのうち少なくとも1つの遊星ローラを、上記環状空間内で当該空間の周方向に移動可能に支持されてなるウェッジローラとし、他の遊星ローラをガイドローラとした摩擦ローラ式変速装置において、 上記遊星ローラを、大径および小径のローラ各2個ずつの合計4個の遊星ローラによって構成するとともに、そのうちの小径のローラの少なくとも1個を含む2個の遊星ローラがウェッジローラとして上記環状空間内で当該空間の周方向に移動自在に支持されていることを特徴とする摩擦ローラ式変速装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽ローラとこれに対して偏心して配置された外輪との間に形成される径方向寸法(幅寸法)が一様でない環状空間内に、複数の遊星ローラを回動自在に配置して、太陽ローラおよび外輪に対する各遊星ローラの摩擦によって、回転運動を減速もしくは増速して伝達する摩擦ローラ式変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】摩擦ローラ式変速装置においては、一般に、太陽ローラと外輪とを偏心させて配置するとともに、その太陽ローラの外周面と外輪の内周面の間に、3個の遊星ローラを配置し、そのうちの1個もしくは2個をウェッジローラ、他をガイドローラとして、これらの遊星ローラと太陽ローラ並びに外輪との摩擦による接線力によって、太陽ローラおよび外輪のうちの一方の回転運動を他方に減速もしくは増速しつつ伝達する。
【0003】1個のウェッジローラを備えた摩擦ローラ式変速装置においては、図4に軸直交断面図を例示するように、入力軸または出力軸である第1の回転軸の軸端部に対して同軸に太陽ローラ41を固定し、その第1の回転軸に対して偏心して設けられた出力軸または入力軸である第2の回転軸の軸端部に、太陽ローラ41を囲むように外輪42を固定することにより、太陽ローラ41と外輪42との間に径方向寸法(幅寸法)が周方向に一様でない環状空間43を形成するとともに、その環状空間内43に、太陽ローラ41の外周面および外輪42の内周面の双方に転がり接触するように3個の遊星ローラ44a,44b,44cを回動自在に配置する。各遊星ローラ44a,44b,44cのうち、1個の遊星ローラ44aは環状空間43の径方向寸法が大きい側に配置されて大径のローラとされ、残りの2個の遊星ローラ44bおよび44cは環状空間内の径方向寸法が小さい側に配置されて小径のローラとされる。
【0004】そして、各遊星ローラ44a〜44cのうちの1個の遊星ローラ44cを、自己の軸心の回りに回動自在で、かつ、その軸心を環状空間内43で周方向に移動自在に配置することによって、その遊星ローラ44cをウェッジローラとするとともに、他の遊星ローラ44a,44bはそれぞれの軸心の回りに回動自在で、かつ、その軸心を環状空間43内で移動不能に配置したガイドローラとする。このような構成により、例えば第1の回転軸を入力軸とした場合、太陽ローラ41の図中矢印Aで示す向きへの回転時に各遊星ローラ44a〜44cがそれぞれ矢印Bで示す向きに回転し、その際、ウェッジローラとしての遊星ローラ44cに矢印Cで示す向きへの力が作用し、この遊星ローラ44cが環状空間43内で狭い空間側に移動する。これにより、遊星ローラ44cが太陽ローラ41と外輪42の間に食い込んで楔作用を発揮し、その楔作用により太陽ローラ41または外輪42が組付け隙間ないしは弾性変形により径方向に若干変位することで、他の遊星ローラ44a,44bと太陽ローラ41並びに外輪42との間の接触圧も高くなり、太陽ローラ41と各遊星ローラ44a〜44c間、および各遊星ローラ44a〜44cと外輪42間の摩擦力によって、太陽ローラ41の回転を外輪42に対して減速しつつ伝達する。なお、このときの減速比は(太陽ローラ41の外径/外輪42の内径)となる。また、外輪42が固定される第2の回転軸を入力軸とする場合には、上記と同等の動作によって、外輪42の回転を太陽ローラ41に対して増速しつつ伝達し、この際の増速比は(外輪42の内径/太陽ローラ41の外径)となる。
【0005】以上のような1個のウェッジローラを備えた摩擦ローラ式変速装置では、各ローラないしは外輪の回転の向きが図4に示した向きの場合にのみ、ウェッジローラ44cが楔作用を発揮して回転を伝達するが、逆向きの回転に際しては回転の伝達機能を有さず、太陽ローラ41と外輪42とは相対的に空転する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、以上のような摩擦ローラ式変速装置においては、伝達可能な最大のトルク、つまりトルク容量は、太陽ローラと各遊星ローラ間、および外輪と各遊星ローラ間における摩擦に起因する接線力によって決まり、その各接線力を増大させるためには、トラクション係数を増大させたり、あるいは法線力を増大させる等の対策が考えられるが、いずれも自ずと限度がある。本発明の目的は、従来に比してトルク容量を増大させることのできる摩擦ローラ式変速装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解7するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の摩擦ローラ式変速装置は、第1の回転軸と同軸に固定された太陽ローラと、その第1の回転軸と平行で、かつ、当該第1の回転軸に対して偏心して設けられた第2の回転軸に固定された外輪と、上記太陽ローラと外輪との間に形成される環状空間内に回動自在に配置され、太陽ローラ外周面と外輪内周面の双方に転がり接触する複数の遊星ローラを備えるとともに、その遊星ローラのうち少なくとも1つの遊星ローラを、上記環状空間内で当該空間の周方向に移動可能に支持されてなるウェッジローラとし、他の遊星ローラをガイドローラとした摩擦ローラ式変速装置において、上記遊星ローラを、大径および小径のローラ各2個ずつの合計4個の遊星ローラによって構成するとともに、そのうちの小径のローラの少なくとも1個を含む2個の遊星ローラがウェッジローラとして上記環状空間内で当該空間の周方向に移動自在に支持されていることによって特徴づけられる。
【0008】本発明は、太陽ローラと外輪との間の環状空間内に配置される遊星ローラを、従来に比して増やすことにより、その増やした分だけ従来に比してトルク容量を増大させようとするものである。
【0009】すなわち、本発明においては、太陽ローラと外輪との偏心により径方向寸法が周方向に一様でない環状空間内に、その環状空間の径方向寸法が大きい側に配置される大径の2個の遊星ローラと、同じく径方向寸法が小さい側に配置される小径の2個の遊星ローラの合計4個の遊星ローラを配置する。そして、その4個の遊星ローラのうち、少なくとも1個の小径の遊星ローラを含む2個の遊星ローラを環状空間内で周方向に移動自在としてウェッジローラとする。
【0010】ここで、以上0構成において、回転伝達方向が一方向のみでいい場合には、その方向への回転時に環状空間内で狭い空間側に移動する向きの力が作用する1個の小径の遊星ローラと1個の大径の遊星ローラをウェッジローラとすることにより、3個の遊星ローラを備えて、そのうちの1個の遊星ローラをウェッジローラとする従来の摩擦ローラ式変速装置と、また、回転伝達方向を両方向とする場合には、2個の小径の遊星ローラをウェッジローラとすることにより、同じく3個の遊星ローラを備えて、そのうちの2個の遊星ローラををウェッジローラとする従来の摩擦ローラ変速装置と、それぞれ同等の機能を有しながら、そのトルク容量を単純計算で4/3倍とすることができる。
【0011】
【発明の実1の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態の軸直交断面図であり、図2はそのI−I断面図である。
【0012】太陽ローラ12第1の回転軸S1の軸端部に固定されてされており、この太陽ローラ1を囲むように配置された外輪2は、第1の回転軸S1に対して平行で、かつ、図1において上下方向にΔだけ偏心した第2の回転軸S2の軸端部に固定され、これにより、太陽ローラ1の外周面と外輪2の内周面との間には、偏心量Δに起因して径方向寸法(幅寸法)が周方向に一様でない、つまり図1において上方側の径方向寸法が下方側の径方向寸法よりも大きい環状空間3が形成されている。
【0013】外輪2の第23回転軸S2に対する固定機構は、特に限定されるものではないが、この例においては、外輪2の形状を、一端部に円盤部21を一体形成したカップ状とし、その円盤部21を第2の回転軸S2の軸端に固着している。また、外輪2の外側はハウジング本体6aとハウジング蓋体6bとからなるハウジング6によって覆われており、第2の回転軸S2はその一端部がハウジング6内部の外輪2に固着され、かつ、ハウジング本体6aに対して軸受7を介して回動自在に支持された状態で、その他端部がハウジング6外に突出している。また、太陽ローラ1はハウジング蓋体6bに対して軸受8を介して回動自在に支持された状態で、その一端部がハウジング6の外方に突出して第1の回転軸S1の軸端部に固着されている。
【0014】太陽ローラ1と外輪2の間に形成される環状空間3内には、4個の遊星ローラ4a,4b,4cおよび4dがそれぞれ回動自在に配置されている。各遊星ローラ4a,4b,4cおよび4dは、太陽ローラ1および外輪2の各中心を通り、かつ、第1の回転軸S1と第2の回転軸S2との偏心方向、つまり上下方向に伸びる線Vを中心として、その左右両側に略対称に配置されており、環状空間3内でその径方向寸法が大きい上側に配置されている2個の遊星ローラ4a,4bは、環状空間3でその径方向寸法が小さい下側に配置されている2個の遊星ローラ4c,4dよりも直径が大となっており、これにより、全ての遊星ローラ4a,4b,4cおよび4dの外周面が、それぞれ太陽ローラ1の外周面と外輪2の内周面の双方に転がり接触するようになっている。なお、上側2個の大径の遊星ローラ4a,4bについては、以下、大径遊星ローラ4a,4bと称し、下側2個の小径の遊星ローラについては、以下、小径遊星ローラ4c,4dと称する。
【0015】各遊星ローラ5a,4b,4cおよび4dは、それぞれ支軸5a,5b,5cおよび5dにニードルローラベアリング等の軸受9を介して回動自在に支承されており、その各支軸5a,5b,5cおよび5dは、その一端がハウジング蓋体6bに支持され、他端がハウジング6内でハウジング蓋体6bに対して固着された支持板10に支持されている。ハウジング蓋体6bは、各遊星ローラ4a,4b,4cおよび4dに干渉しない部位において外輪2の円盤部21側に柱状に突出する突起部61が形成されており、支持板10はその突起部61に対してネジ等によって固着されている。
【0016】さて、以上の各遊星ローラ4a,4b,4cおよび4dのうち、この例においては1個の大径ローラ4bと1個の小径ローラ4dを回転自在に支承する支軸5bおよび5dは、ハウジング蓋体6bおよび支持板10に対してルーズに支持されている。すなわち、ハウジング蓋体6bおよび支持板10に支軸5bおよび5dを支承すべく形成された孔が、支軸5bおよび5dの直径よりも所定寸法だけ大きくなっており、これにより、大径遊星ローラ4bと小径遊星ローラ4dは、環状空間3の周方向に移動可能となって、これらがウェッジローラを構成し、他の大径遊星ローラ4aと小径遊星ローラ4cはその支軸5a,5cが環状空間3内で移動不能のガイドローラを構成している。また、ウェッジローラを構成する大径遊星ローラ4bおよび小径遊星ローラ4dを支承する支軸5bおよび5dは、後述する回転伝達動作を確実なものとするために、それぞれ圧縮コイルばね等の付勢手段11によって、環状空間3内で狭い空間側、つまり図1において矢印Cで示す向きに付勢されている。
【0017】以上の本発明7実施の形態は、例えば第1の回転軸S1を入力軸とし、第2の回転軸S2を出力軸として、第1の回転軸S1の回転を減速しつつ第2の回転軸S2に伝達するのであるが、その伝達が可能な回転方向は、図1において矢印Aで示す向きのみであり、その逆向きの回転に対しては、第1と第2の回転軸S1とS2は相互に空転する。
【0018】すなわち、第8の回転軸S1の回転によって太陽ローラ1が矢印Aで示す向きに回転すると、その太陽ローラ1に対して転がり接触している4個の遊星ローラ4a〜4dが矢印Bで示す向きに回転し、ウェッジローラとしての大径遊星ローラ4bおよび小径遊星ローラ4dには矢印Cで示す向きへの力が作用する。これにより、大径遊星ローラ4bおよび小径遊星ローラ4dは太陽ローラ1と外輪2との間に食い込み、楔作用を発揮してこれら両者に対する接触圧が高くなる。同時に、その楔作用により太陽ローラ1もしくは外輪2が組付け隙間または弾性変形により径方向に変位し、ガイドローラである他の大径遊星ローラ4aおよび小径遊星ローラ4cについても、太陽ローラ1および外輪2に対する接触圧が高くなり、太陽ローラ1と各遊星ローラ4a〜4d、各遊星ローラ4a〜4dと外輪2との摩擦による接線力により、第1の回転軸S1の回転が減速されつつ第2の回転軸2に伝達される。そして、このときに伝達可能な最大トルク、つまり摩擦ローラ式変速装置としてのトルク容量は、トルクの伝達に寄与する遊星ローラ数が従来の3個から4個に増えた分だけ増大する。
【0019】次に、本発明を正・逆いずれの回転をも伝達可能な摩擦ローラ式変速装置に適用した実施の形態について述べる。図3はその軸直交断面図である。この例における特徴は、環状空間3内で下側に配置されている2個の小径遊星ローラ4cおよび4dをウェッジローラとするとともに、上側に配置されている2個の大径遊星ローラ4aおよび4bをガイドローラとした点にあり、他の構成については先の例と同等である。
【0020】すなわち、ウエッジローラとしての小径遊星ローラ4c,4dを支承する支軸5c,5dは、ハウジング蓋体6bおよび支持板10に対して先の例と同様にルーズに支持されているとともに、これらの支軸5c,5dは、回転伝達動作を確実なものとするために、付勢手段11によって環状空間3内で狭い空間側、つまり、支軸5cについては図3に矢印F′で示す向きに、支軸5dについては同じく矢印Fで示す向きに付勢されている。また、ガイドローラとしての大径遊星ローラ4a,4bを支承する支軸5a,5bについては、ハウジング蓋体6bおよび支持板10に対して移動不能に支持されている。
【0021】以上の実施の形態において、例えば第1の回転軸S1を入力軸として、第2の回転軸S2を出力軸としたとき、第1の回転軸S1およびその軸端に固着された太陽ローラ1が図3において矢印Dで示す向きに回転したとき、各遊星ローラ4a〜4dは図中矢印Eで示す向きに回転するとともに、一方のウェッジローラとしての小径遊星ローラ4dに矢印Fで示す向きの力が作用して同方向に移動し、太陽ローラ1と外輪2との間に食い込んで楔作用を発揮し、先の例と同様に、太陽ローラ1と各遊星ローラ4a〜4d、各遊星ローラ4a〜4dと外輪2との間の摩擦による接線力によって、太陽ローラ1のD方向への回転が減速されつつ外輪2に伝達される。
【0022】一方、太陽ロ2ラ1が矢印D′の向きに回転したときには、各遊星ローラ4a〜4dは矢印E′で示す向きに回転するとともに、他方のウェッジローラとしての小径遊星ローラ4cに矢印F′で示す向きの力が加わって同方向に移動し、太陽ローラ1と外輪2との間に食い込んで楔作用を発揮し、同様にして太陽ローラ1のD′方向への回転が減速されつつ外輪2に伝達される。
【0023】なお、以上の3実施の形態においては、太陽ローラ1が固着される第1の回転軸S1を入力軸とし、外輪2が固着される第2の回転軸S2を出力軸として、第1の回転軸S1の回転を減速しつつ第2の回転軸S2に伝達する例について述べたが、第2の回転軸S2を入力軸とし、第1の回転軸S1を出力軸として用いてもよく、この場合、第2の回転軸S2の回転が増速されつつ第1の回転軸S1に伝達される。
【0024】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、太陽ローラと外輪との間に形成される環状空間内に、2個の大径遊星ローラと2個の小径遊星ローラを配置し、そのうち少なくとも1個の小径遊星ローラを含む2個の遊星ローラをウェッジローラとして環状空間の周方向に移動可能とし、他をガイドローラとして環状空間内で移動不能とする構成の採用により、従来のこの種の変速装置と同等の機能を持たせながらも、太陽ローラと外輪間で伝達可能な最大トルク、つまり変速装置としてのトルク容量を、従来に比して増大させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年8月30日(1999.8.30)
【代理人】 【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
【公開番号】 特開2001−65653(P2001−65653A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−242850