| 【発明の名称】 |
車両用自動変速機の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】高橋 徹
【氏名】鈴木 忠裕
【氏名】山田 公明
|
| 【要約】 |
【課題】自動変速機の油圧連結要素の油圧を該要素に対応する変速制御弁を介して調圧する変速用電磁弁を備える自動変速機の制御装置において、変速用電磁弁の開度を変化させて該電磁弁内の異物を除去するクリーニング作業を車両の走行中に油圧連結要素の油圧に影響を与えずに行い得られるようにする。
【解決手段】ライン圧を最大設定圧Pmaxより減圧するライン圧制御モード時に、その時点で確立されている変速段用の油圧連結要素に対応する変速制御弁を全開状態とするのに必要な最小の信号圧よりも高い信号圧を出力する範囲で変速用電磁弁の開度を変化させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速用の複数の油圧連結要素を有する車両用自動変速機の制御装置であって、複数の油圧連結要素に対応する複数の変速制御弁と、これら変速制御弁に対応する複数の変速用電磁弁とを備え、各油圧連結要素の油圧を、対応する変速制御弁により、油圧源からのライン圧を元圧として、対応する変速用電磁弁からの信号圧に応じて調圧するものにおいて、非変速時に、その時点で確立されている変速段用の油圧連結要素に対応する所定の変速制御弁を全開状態とするのに必要な最小の信号圧よりも高い信号圧を出力する範囲で該所定の変速制御弁に対応する変速用電磁弁の開度を変化させる制御手段を設けることを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。 【請求項2】 ライン圧を車両の運転状態に応じて可変する調圧手段を設け、非変速時であって、且つ、調圧手段によりライン圧を最大設定圧よりも減圧するライン圧制御モード時に、前記制御手段による変速用電磁弁の開度変化を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、変速用の複数の油圧連結要素を有する車両用自動変速機の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の制御装置として、複数の油圧連結要素に対応する複数の変速制御弁と、これら変速制御弁に対応する複数の変速用電磁弁とを備え、各油圧連結要素の油圧を、対応する変速制御弁により、油圧源からのライン圧を元圧として、対応する変速用電磁弁からの信号圧に応じて調圧するようにしたものが知られている。このものでは、各油圧連結要素の油圧を車載コンピュータから成るコントローラにより各変速用電磁弁を介してダイレクトに制御でき、変速ショックの低減を図る上で有利である。 【0003】また、ライン圧を可変する調圧手段を設け、クルーズ走行時等にライン圧を減圧して油圧源の駆動負荷を軽減し、燃費性を向上させるようにしたものも知られている。 【0004】ところで、上記の如く油圧連結要素の油圧を変速用電磁弁からの信号圧に応じて制御するものでは、異物の噛込みによる変速用電磁弁の制御性の悪化が商品性上大きな問題となる。 【0005】変速用電磁弁に侵入した異物は該弁を開くことで除去できる。そこで、ニュートラルレンジやパーキングレンジにおいて、変速用電磁弁を間歇的に開弁させて、異物を除去するクリーニング作業を行うようにしたものも従来知られている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記従来例のものでは、走行レンジで走行中はクリーニング作業が行われず、異物の噛込みに対するタフネス性を向上させる上で問題になっている。 【0007】本発明は、以上の点に鑑み、走行中にクリーニング作業を油圧連結要素の油圧に影響を与えることなく実行し得るようにして、異物の噛込みに対するタフネス性を向上させた車両用自動変速機の制御装置を提供することを課題としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく、本発明は、変速用の複数の油圧連結要素を有する車両用自動変速機の制御装置であって、複数の油圧連結要素に対応する複数の変速制御弁と、これら変速制御弁に対応する複数の変速用電磁弁とを備え、各油圧連結要素の油圧を、対応する変速制御弁により、油圧源からのライン圧を元圧として、対応する変速用電磁弁からの信号圧に応じて調圧するものにおいて、非変速時に、その時点で確立されている変速段用の油圧連結要素に対応する所定の変速制御弁を全開状態とするのに必要な最小の信号圧よりも高い信号圧を出力する範囲で該所定の変速制御弁に対応する変速用電磁弁の開度を変化させる制御手段を設けている。 【0009】上記範囲で変速用電磁弁の開度を変化させることにより、油圧連結要素の油圧に影響を与えることなく変速用電磁弁内の異物を除去できる。そして、走行中に変速用電磁弁の開度変化によるクリーニング作業が行われるため、クリーニング作業の実行頻度が高くなり、異物の噛込みに対するタフネス性が向上する。 【0010】また、ライン圧を車両の運転状態に応じて可変する調圧手段を設け、調圧手段によりライン圧を最大設定圧よりも減圧すれば、変速制御弁を全開状態にして油圧連結要素の油圧をライン圧に等しくするのに必要な信号圧が低下し、上記範囲が広くなって、変速用電磁弁の開度変化量を大きく取ることができ、クリーニング効果が向上する。そのため、ライン圧を車両の運転状態に応じて可変する調圧手段を設ける場合は、非変速時であって、且つ、調圧手段によりライン圧を最大設定圧よりも減圧するライン圧制御モード時に、前記制御手段による変速用電磁弁の開度変化を実行することが望ましい。 【0011】 【発明の実施の形態】図1を参照して、1は車両用の自動変速機であり、該変速機1は、図外のエンジンに流体トルクコンバータを介して連結される入力軸1aと車両の駆動輪に図外のデフギアを介して連結される出力軸1bとの間に第1乃至第3の3個の遊星ギア21,22,23を配置した、前進6段後進1段の変速を行う遊星ギア式変速機で構成されている。 【0012】各遊星ギア21,22,23は、サンギア2aと、リングギア2bと、両ギア2a,2bに噛合するピニオン2cと、ピニオン2cを軸支するキャリア2dとで構成されており、第1遊星ギア21のサンギア2aを入力軸1aに連結すると共に、第3遊星ギア23のキャリア2dを出力軸1bに連結している。また、第1遊星ギア21のリングギア2bを変速機1のケーシング1cに連結して回り止めすると共に、第2と第3の両遊星ギア22,23のサンギア2a,2a同士を連結し、更に、第2遊星ギア22のキャリア2dと第3遊星ギア23のリングギア2bを連結し、このリングギア2bをケーシング1cに反力受けとしてのワンウェイクラッチ3を介して連結している。 【0013】変速機1には、油圧連結要素として、入力軸1aを第2と第3の両遊星ギア22,23のサンギア2a,2aに連結する第1クラッチC1と、入力軸1aを第2遊星ギア22のキャリア2dに連結する第2クラッチC2と、第1遊星ギア21のキャリア2dを第2遊星ギア22のリングギア2bに連結する第3クラッチC3と、第2遊星ギア22のリングギア2bをケーシング1cに連結する第1ブレーキB1と、第3遊星ギア23のリングギア2bをケーシング1cに連結する第2ブレーキB2とが設けられている。 【0014】以上の構成により、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とを連結させたとき1速段が確立され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とを連結させたとき2速段が確立され、第1クラッチC1と第3クラッチC3とを連結させたとき3速段が確立され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とを連結させたとき4速段が確立され、第2クラッチC2と第3クラッチC3とを連結させたとき5速段が確立され、第2クラッチC2と第1ブレーキB1とを連結させたとき6速段が確立され、第3クラッチC3と第2ブレーキB2とを連結させたとき後進段が確立される。 【0015】これらクラッチC1,C2,C3とブレーキB1,B2は図2に示す油圧回路によって作動制御される。この油圧回路には、油圧源4と、マニュアル弁5と、各クラッチC1,C2,C3や各ブレーキB1,B2への給排油を個別に制御する第1乃至第5の5個の変速制御弁61〜65と、各変速制御弁61〜65を個々に制御する第1乃至第5の5個の変速用電磁弁71〜75とが設けられている。 【0016】マニュアル弁5は、図外のセレクトレバーの操作に連動して、パーキングレンジたる「P」位置と、後進レンジたる「R」位置と、ニュートラルレンジたる「N]位置(図示の位置)と、前進走行用の自動変速レンジたる「D」位置と、前進走行用の手動変速レンジたる「M」位置との計5位置に切換えられるようになっている。「D」位置及び「M」位置では、エンジンで駆動される油圧源4に連なる油路L1が油路L2に接続されて、レギュレータ8で所定のライン圧に調圧された圧油が油路L2に供給され、該油路L2を介して第2クラッチC2用の第2変速制御弁62に常時給油されると共に、油路L2に後記詳述するフェイルセーフ弁9を介して接続される油路L3を介して第1クラッチC1用の第1変速制御弁61と、第1ブレーキB1用の第4変速制御弁64と、第2ブレーキB2用の第5変速制御弁65とに給油される。尚、第3クラッチC3用の第3変速制御弁63には油路L1を介してマニュアル弁5とは無関係に常時給油される。 【0017】また、第1乃至第3クラッチC1,C2,C3及び第1ブレーキB1の夫々に連なる油路L4,L5,L6,L7は第1乃至第4の各変速制御弁61,62,63,64に直結されているが、第2ブレーキB2に連なる油路L8は第5変速制御弁65に連なる油路L8aとマニュアル弁5に連なる油路L9とにシャトル弁10を介して選択的に接続されるようになっている。該油路L9はマニュアル弁5の「R」位置で油路L1に接続され、かくて、「R」位置では、第2ブレーキB2が常時連結し、第3変速制御弁63からの給油による第3クラッチC3の連結で後進段が確立される。 【0018】各変速制御弁61〜65は、該各変速制御弁61〜65を左方の給油位置側に押圧する油室6aと、右方の排油位置(図示の位置)側に押圧する油室6bと、油室6bに収納したばね6cとを備えており、各変速制御弁61〜65の油室6aに対応する各変速用電磁弁71〜75からの信号圧を該各変速用電磁弁71〜75に連なる各油路L10〜L14を介して入力すると共に、各変速制御弁61〜65の油室6bに該各変速制御弁61〜65の下流側の油圧を入力し、各変速制御弁61〜65の下流側の油圧、即ち、各油圧連結要素C1,C2,C3,B1,B2の油圧を各変速用電磁弁71〜75からの信号圧に応じて調圧し得るように構成されている。 【0019】各変速用電磁弁71〜75は、そのソレノイド7aへの通電電流値に応じた信号圧を出力するリニアソレノイド弁で構成されており、車載コンピュータから成るコントローラ11により各変速用電磁弁71〜75のソレノイド7aへの通電を制御している。尚、各変速用電磁弁71〜75には、油路L1に接続したモジュレータ弁12からのモジュレータ圧(ライン圧より低い一定圧)が入力されており、全開状態で出力される信号圧はモジュレータ圧になる。 【0020】マニュアル弁5の「D」位置及び「M」位置では、全ての変速制御弁61〜65に給油可能となり、第1と第5の変速用電磁弁71,75からの信号圧を高くすると、第1と第5の変速制御弁61,65を介して第1クラッチC1と第2ブレーキB2とに給油されて1速段が確立され、第1と第4の変速用電磁弁71,74からの信号圧を高くすると、第1と第4の変速制御弁61,64を介して第1クラッチC1と第1ブレーキB1とに給油されて2速段が確立され、第1と第3の変速用電磁弁71,73の信号圧を高くすると、第1と第3の変速制御弁61,63を介して第1と第3のクラッチC1,C3に給油されて3速段が確立され、第1と第2の変速用電磁弁71,72の信号圧を高くすると、第1と第2の変速制御弁61,62を介して第1と第2のクラッチC1,C2に給油されて4速段が確立され、第2と第3の変速用電磁弁72,73の信号圧を高くすると、第2と第3の変速制御弁62,63を介して第2と第3のクラッチC2,C3に給油されて5速段が確立され、第2と第4の変速用電磁弁72,74の信号圧を高くすると、第2と第4の変速制御弁62,64を介して第2クラッチC2と第1ブレーキB1とに給油されて6速段が確立される。 【0021】そして、「D」位置では、コントローラ11により車両の走行状態に応じて各変速用電磁弁71〜75を制御して、1速乃至6速の自動変速を行い、「M」位置では、図外のアップシフトスイッチとダウンシフトスイッチの操作によりコントローラ11を介して各変速用電磁弁71〜75を制御し、アップシフトスイッチやダウンシフトスイッチがオンされる度にアップシフトやダウンシフトを行う。また、変速時には、変速に際して連結される油圧連結要素の油圧の昇圧と、変速に際して連結解除される油圧連結要素の油圧の降圧とを変速ショックを生じないように対応する変速用電磁弁で適切に制御する。 【0022】ここで、第1と第4と第5の変速用電磁弁71,74,75は常閉型、第2と第3の変速用電磁弁72,73は常開型に構成されており、「D」位置及び「M」位置での各変速段の確立時における変速用電磁弁71〜75のソレノイド7aへの通電状態と油圧連結要素C1〜C3,B1,B2の連結状態を示すと、図3の通りになる。尚、図中〇印は油圧連結要素が連結していることを示し、×印は油圧連結要素が解放されていることを示す。 【0023】ところで、同時に3個以上の油圧連結要素が連結したり、同時に2個の油圧連結要素が連結される場合であっても第3クラッチC3と第1ブレーキB1とが連結すると、共噛みを生じて変速機1がロック状態となり、また、前進走行中に第3クラッチC3と第2ブレーキB2とが連結すると後進段が確立されて、変速機1やエンジンに無理がかかる。 【0024】そこで、本実施形態では、第1乃至第5の変速制御弁61〜65を所定の1つの変速段、例えば、5速段を確立する第2と第3のクラッチC2,C3に対応する第2と第3の変速制御弁62,63から成る第1グループと、他の連圧連結要素C1,B1,B2に対応する第1と第4と第5の変速制御弁61,64,65から成る第2グループとにグループ分けし、第2グループの変速制御弁61,64,65に連なる油路L3と給油路たる油路L2との間にフェイルセーフ弁9を介設し、同時に連結してはならない複数の油圧連結要素に同時に給油される状態となるフェイル時に、第2グループの変速制御弁61,64,65への給油を停止して、上記の不具合を防止できるようにしている。 【0025】フェイルセーフ弁9は、油路L2と油路L3とを接続する左方の開位置とこの接続を断つ右方の閉位置(図示の位置)とに切換自在であり、フェイルセーフ弁9の右端の油室9aに油路L1からのライン圧を入力して、フェイルセーフ弁9を開位置側に押圧している。また、フェイルセーフ弁9に、これを閉位置側に押圧する4個の油室9b,9c,9d,9eを設け、油室9bに油路L6から第3クラッチC3の油圧、油室9cに油路L7から第1ブレーキB1の油圧、油室9dに油路L8aから第2ブレーキB2の油圧を夫々入力すると共に、油室9eに後記詳述する合成信号弁13を介して油路L1からのライン圧を入力し、更に、ばね9fでフェイルセーフ弁9を閉位置側に付勢している。そして、油室9b,9c,9d,9eのうち何れか2個の油室に入力される油圧が所定圧以上になったとき、これら油圧による押圧力とばね9fの付勢力との合力が油室9aに入力されるライン圧による押圧力を上回って、フェイルセーフ弁9が閉位置に切換えられるようにしている。前記合成信号弁13は、油路L1を油室9eに接続する右方の開位置(図示の位置)とこの接続を断つ左方の閉位置とに切換自在であり、合成信号弁13の右端の油室13aに油路Llからのライン圧を入力して該弁13を開位置側に押圧し、更に、合成信号弁13にこれを閉位置側に押圧する2個の油室13b,13cを設けて、油室13bに油路L5から第2クラッチC2の油圧、油室13cに油路L4から第1クラッチC1の油圧を夫々入力すると共に、ばね13dで合成信号弁13を閉位置側に付勢し、第1と第2の両クラッチC1,C2が共に連結する状態(4速段の状態)になったとき、油室13b,13cに入力される油圧による押圧力とばね13dの付勢力との合力が油室13aに入力されるライン圧による押圧力を上回って、合成信号弁13が開位置に切換えられるようにしている。 【0026】かくて、第1と第2の両クラッチC1,C2が共に連結したときフェイルセーフ弁9の油室9eにライン圧が入力され、この状態で他の油圧連結要素C3,B1,B2の何れか1つにでも給油されると、フェイルセーフ弁9が閉位置に切換わり、また、第1と第2の両クラッチC1,C2の一方のみが連結し、或いは、両クラッチC1,C2が共に解放されていて油室9eにライン圧が入力されていない状態でも、他の油圧連結要素C3,B1,B2のうちの2個以上に共に給油されると、フェイルセーフ弁9が閉位置に切換わる。そして、フェイルセーフ弁9の閉位置への切換えで油路L2と油路L3との接続が断たれ、結局、フェイル時には第2グループの変速制御弁61,64,65への給油が停止され、対応する油圧連結要素C1,B1,B2が解放される。 【0027】また、フェイルセーフ弁9の閉位置で該弁9を介して油路L2に接続される油路L15を設け、フェイルセーフ弁9の油室9bに、第3クラッチC3に連なる油路L6と油路L15とをシャトル弁141を介して接続すると共に、フェイルセーフ弁9の油室9cに、第1ブレーキB1に連なる油路L7と油路L15とをシャトル弁142を介して接続している。かくて、フェイル時にフェイルセーフ弁9が一旦閉位置に切換わると、油路L15を介して油室9b,9cに油路L2からのライン圧が入力され、第2グループの変速制御弁61,64,65への給油停止で対応する油圧連結要素C1,B1,B2の油圧が低下しても、フェイルセーフ弁9は閉位置に保持され、フェイルセーフ弁9のチャタリングが防止される。 【0028】フェイル時にフェイルセーフ弁9が閉位置に切換えられても、第1グループの第2変速制御弁62と第3変速制御弁63とには、夫々、給油路たる油路L2と油路L1とが接続されているため、第2クラッチC2と第3クラッチC3とを連結させて5速段を確立することができる。然し、第2変速用電磁弁72や第3変速用電磁弁73の制御不良で第2変速制御弁62や第3変速制御弁63を給油位置側に切換えられなくなると、即ち、常開型たる第2、第3変速用電磁弁72,73のオン故障(ソレノイドに通電され続ける故障)でこれら電磁弁72,73から高圧の信号圧を出力できなくなると、第2、第3クラッチC2,C3に給油不能となって5速段を確立できなくなる。 【0029】そこで、本実施形態では、第2と第3の各変速制御弁62,63にこれを給油位置側に押圧する第2の油室6dを設けて、油室6dに前記油路L15を接続し、フェイルセーフ弁9の閉位置では、給油路たる油路L2からのライン圧が油路L15を介して油室6dに入力され、各変速制御弁62,63が強制的に給油位置に切換保持されるようにしている。かくて、フェイル時にフェイルセーフ弁9が閉位置に切換えられると、第2と第3の両クラッチC2,C3に強制的に給油され、5速段が確実に確立される。 【0030】また、断線等によるシステムダウンで全ての変速用電磁弁71〜75への通電が停止されると、常開型たる第2と第3の両変速用電磁弁72,73の信号圧のみが高くなり、第2と第3の両変速制御弁62,63を介して第2と第3の両クラッチC2,C3に給油されて5速段が確立される。然し、5速段だけでは発進や低速走行が困難になるため、システムダウン時に、「D」位置では5速段を確立し、「M」位置では5速段より低速の変速段、例えば、3速段を確立し、「D」と「M」のレンジ切換操作で5速と3速とに変速し得るようにすることが望まれ、そのためには、「M」位置で第2クラッチC2に代えて第1クラッチC1を連結させることが必要になる。 【0031】そこで、本実施形態では、第2変速用電磁弁72に連なる油路L11を第2変速制御弁62の油室6aと第1変速制御弁61の油室6aとに選択的に接続する切換弁15を設け、システムダウン時、「D」位置では、油路L11を第2変速制御弁62の油室6aに接続し、第2変速用電磁弁72からの高圧の信号圧で該第2変速制御弁62を給油位置に切換えて第2クラッチC2を連結させ、「M」位置では、油路L11を第1変速制御弁61の油室6aに接続し、該第1変速制御弁61を給油位置に切換えて第1クラッチC1を連結させるようにしている。 【0032】切換弁15は、第1変速用電磁弁71に連なる油路L10と第2変速用電磁弁72に連なる油路L11とを夫々第1変速制御弁61の油室6aと第2変速制御弁62の油室6aとに接続する右方の第1切換位置(図示の位置)と、これら接続を断って油路L11を第1変速制御弁61の油室6aに接続する左方の第2切換位置とに切換自在であり、切換弁15をばね15aで第1切換位置側に付勢している。また、切換弁15に、これを第1切換位置側に押圧する左端の油室15bと、第2切換位置側に押圧する右端の油室15cとを設け、油室15bに、マニュアル弁5の「D」位置で油路L1に接続され、「M」位置で大気開放される油路L16を接続すると共に、油室15cに油路L11から分岐した油路L17を介して第2変速用電磁弁72からの信号圧を入力している。かくて、「D」位置では、油室15bに油路L1からのライン圧が入力され、システムダウンで第2変速用電磁弁72からの信号圧が最高圧(モジュレータ圧)になっても、切換弁15は第1切換位置に保持されるが、「M」位置では、油室15bが油路L16を介して大気開放されるため、システムダウンで第2変速用電磁弁72からの信号圧が最高圧になると、切換弁15が第2切換位置に切換えられ、上記の如く第1変速制御弁61が給油位置に切換えられて第1クラッチC1が連結し、3速段が確立される。 【0033】ところで、「M」位置における4速段以上の高速段での高速走行中にシステムダウンを生じて3速段にダウンシフトされると、エンジンの過回転を生ずる可能性がある。そこで、本実施形態では、前記油路L17に、該油路L17を開通する右方の開位置(図示の位置)と該油路L17を遮断する左方の閉位置とに切換自在な開閉弁16を介設している。そして、該開閉弁16をばね16aで開位置側に押圧すると共に、開閉弁16の右端の油室16bに、3速段より低速の変速段、例えば、2速段の確立時に係合する第1ブレーキB1に連なる油路L7を接続し、2速段の確立時に第1ブレーキB1の油圧により開閉弁16がばね16aに抗して閉位置に切換えられるようにしている。また、開閉弁16には、閉位置で油路L2に連通する環状溝16cが形成されており、この環状溝16cの左側のランド径を右側のランド径より大きくし、開閉弁16が一旦閉位置に切換えられると、油路L2から環状溝16cに入力されるライン圧により左右のランド径差分の左方への押圧力が作用して、この押圧力により第1ブレーキB1の油圧の如何に係わらず開閉弁16が閉位置に保持されるようにしている。 【0034】以上の構成によれば、「D」位置及び「M」位置で発進して2速段が確立されたところで開閉弁16が閉位置に切換えられ、以後、「D」位置及び「M」位置である限り開閉弁16は閉位置に保持され、切換弁15の油室15cに第2電磁弁72からの信号圧は入力されなくなる。かくて、「M」位置でシステムダウンを生じても切換弁15は第2切換位置に切換わらず、システムダウン時は5速段が確立され、高速走行中のシステムダウンで3速段にダウンシフトすることはない。また、開閉弁16が閉位置に切換保持されても、「N」位置にすれば、油路L2が大気開放されるため、開閉弁16はばね16aの付勢力で開位置に復帰する。かくて、システムダウン時、一旦「N」位置にしてから「M」位置にすれば、切換弁15が第2切換位置に切換えられて上記の如く3速段が確立され、「D」と「M」のレンジ切換操作で5速と3速に変速できる。 【0035】「R」位置では、上記の如く第2ブレーキB2が常時連結され、第3変速制御弁63からの給油による第3クラッチC3の連結で後進段が確立される。 【0036】また、本実施形態では、変速用電磁弁71〜75とは別にレギュレータ8用の電磁弁17を設け、該電磁弁17の出力側の油路L18の油圧によりレギュレータ8を非リーク側に押圧し、レギュレータ8と電磁弁17とでライン圧を可変する調圧手段を構成している。電磁弁17は、モジュレータ圧を入力する常開型のオンオフ式電磁弁で構成されており、電磁弁17のソレノイド17aへの通電をコントローラ11でデューティ制御するようにしている。ソレノイド17aへの通電デューティ比を0%、即ち、ソレノイド17aへの通電を停止すると、レギュレータ8はばね8aと油路L18からのモジュレータ圧とで非リーク側に押され、ライン圧はばね8aとモジュレータ圧との合計押圧力で規定される最大設定圧Pmaxになるが、通電デューティ比を増加させると、油路L18の油圧が減少してライン圧が減圧される。 【0037】ライン圧を最大設定圧Pmaxよりも減圧するライン圧制御モードは、「P」「N」位置の全域で実行されると共に、「D」「M」位置における所定の運転領域、即ち、車速Vとエンジンの実スロットル開度θとをパラメータとして定められる図4のモード切換特性線aよりもスロットル開度が低い領域での非変速時に実行される。尚、この特性線aは各変速段毎に設定される。「D」「M」位置でのライン圧制御モードでは、変速機の入力トルクからその時点で確立されている変速段用の各油圧連結要素が分担するトルクを算出し、この分担トルクを伝達するのに必要な各油圧連結要素の油圧を求め、各油圧連結要素の必要油圧のうち最大の油圧を目標圧として、ライン圧がこの目標圧になるように電磁弁17をデューティ制御する。このようにライン圧制御モードを実行することでクルーズ走行時の油圧源4の駆動負荷が軽減され、燃費性が向上する。 【0038】ところで、非変速時はその時点で確立されている変速段用の油圧連結要素に対応する変速制御弁を全開状態にして、油圧連結要素の油圧をライン圧に維持するが、ライン圧が減圧されると、変速制御弁を閉じ側に押圧する力が減少するため、変速制御弁に入力する変速用電磁弁からの信号圧が比較的低くても変速制御弁は全開状態となる。 【0039】そこで、本実施形態では、「D」「M」位置におけるライン圧制御モード時に、その時点で確立されている変速段用の油圧連結要素に対応する変速制御弁を全開状態とするのに必要な最小の信号圧よりも高い信号圧を出力する範囲でこの変速制御弁に対応する変速用電磁弁(1速時は第1と第5の変速用電磁弁71,75、2速時は第1と第4の変速用電磁弁71,74、3速時は第1と第3の変速用電磁弁71,73、4速時は第1と第2の変速用電磁弁71,72、5速時は第2と第3の変速用電磁弁72,73、6速時は第2と第4の変速用電磁弁72,74)の開度を変化させて、変速用電磁弁71〜75内の異物を除去するクリーニング作業を行うようにしている。 【0040】このクリーニング作業は制御手段たるコントローラ11により図5(A)に示すプログラムに従って実行される。これを詳述するに、先ず、S1のステップでライン圧制御モード時か否かを判別し、ライン圧制御モード時でなければ、S2のステップに進んで減算式の第1タイマの残り時間T1を所定の設定時間YT1にセットした後、S3のステップに進み、その時点で確立されている変速段用の油圧連結要素に対応する所定の変速制御弁を制御する変速用電磁弁の開度を全開開度まで増加させる。 【0041】ライン圧制御モード時は、S4のステップに進んで第1タイマの残り時間T1が零になったか否かを判別し、T1≠0であればS5のステップに進み、前記変速用電磁弁の開度を、前記所定の変速制御弁を全開状態とするのに必要な最小の信号圧を出力する必要最小開度に減少させ、次にS6のステップで減算式の第2タイマの残り時間を所定の設定時間YT2にセットする。 【0042】T1=0になったときは、S7のステップで第2タイマの残り時間T2が零になったか否かを判別し、T2≠0であればS3のステップに進んで前記変速用電磁弁の開度を増加させ、T2=0になったとき、S8のステップでT1をYT1にセットした後、S5以下のステップに進んで前記変速用電磁弁の開度を減少させる。 【0043】かくて、ライン圧制御モード時は、図5(B)に示す如く、前記変速用電磁弁の開度がYT1の時間減少し、その後YT2の時間増加するように繰返し変化する。尚、本実施形態では、変速用電磁弁の開度をS3のステップで全開開度に増加させ、S5のステップで必要最小開度に減少させているが、全開開度と必要最小開度との間で上限側と下限側のしきい値を設定し、変速用電磁弁の開度をS3のステップで上限側しきい値まで増加させ、S5のステップで下限側しきい値まで減少させるようにしても良い。 【0044】尚、「P」「N」位置では、全ての変速制御弁61〜65へのライン圧の供給が停止されるため、各変速制御弁61〜65が全開状態となっても各油圧連結要素は解放されたままになる。そこで、「P」「N」位置では、全ての変速用電磁弁71〜75について全開開度と全閉開度とへの開度変化によるクリーニング作業を行う。 【0045】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、車両の走行中に油圧連結要素の油圧に影響を与えることなくクリーニング作業を行うことができ、クリーニング作業の実行頻度が高くなって、異物の噛込みに対するタフネス性が向上する。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年7月7日(1999.7.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100060025 【弁理士】 【氏名又は名称】北村 欣一 (外3名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−21024(P2001−21024A) |
| 【公開日】 |
平成13年1月26日(2001.1.26) |
| 【出願番号】 |
特願平11−193016 |
|