トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ボールねじおよび駆動装置
【発明者】 【氏名】信朝 雅弘

【要約】 【課題】ボール径とねじ溝のリードの関係による制限にかかわらずに、任意の減速または増速機能が得られるものとする。これに伴い、ボールねじ使用機器の部品点数の削減、組立工数の削減等が図れるようにする。

【解決手段】このボールねじ1は、ねじ軸2に互いに仕様の異なる2種類のねじ溝5,6を形成し、各々のねじ溝5,6に対応する一対のナット3,4を設けたものとする。2種類のねじ溝5,6は、互いに巻き方向が同じでリードが異なるものであっても、また巻き方向が異なるものであっても良い。片方のナット3は、固定側部材11に固定し、もう片方のナット4はスライド側部材15に固定する。ねじ軸2に連結したモータ12は、支持用スライダ14を介して固定側部材11に進退自在に設置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ねじ軸の外径面と、このねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面とに、それぞれ螺旋状のねじ溝が設けられ、前記ねじ軸およびナットのねじ溝の間に複数のボールを介在させたボールねじにおいて、前記ねじ軸の外径面に互いに巻き方向、およびリードの少なくとも一方が異なる2種類のねじ溝を形成し、各々のねじ溝に対応するねじ溝をそれぞれ有する一対のナットを設けたことを特徴とするボールねじ。
【請求項2】 前記2種類のねじ溝は、互いに巻き方向が同じでリードが異なるものとし、前記一対のナットのうちの一方のナットは固定側の部材に結合され、他方のナットはスライド側の部材に結合され、前記ねじ軸は回転駆動される請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】 前記2種のねじ溝は、互いに巻き方向が逆方向であり、前記一対のナットのうちの一方のナットは固定側の部材に結合され、他方のナットはスライド側の部材に結合され、前記ねじ軸は回転駆動される請求項1に記載のボールねじ。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のボールねじと、このボールねじのねじ軸に連結された回転駆動源とを備えるボールねじ使用直線駆動装置。
【請求項5】 前記ボールねじにおける2種類のねじ軸を別体とし、これら2本のねじ軸を互いに連結自在とした請求項4に記載のホールねじ使用直線駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電動射出成形機や電動プレスなど、従来は油圧シリンダを用いていたような高荷重を受ける用途を、電動機駆動に置き換える場合、あるいは高速位置決めの用途などに応用できるボールねじ、およびこれを用いた直線駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ボールねじの用途には、大きくは、工作機械に代表される位置決めの用途と、電動射出成形機に代表される回転力を直線力に変換する用途とがある。後者の場合は、モータの回転力をボールねじのねじ軸またはナットに伝え、この力を直線移動力に変換している。ボールねじの一般的な軸回転の駆動形態を図5に示す。通常、同図に示すように、モータ51の回転を2個のプーリ52,53とタイミングベルト54の組み合わせにより減速し、ボールねじ55のねじ軸56に伝える。これは、減速することで、より大きな推力を得るためである。ねじ軸56の軸端には、アキシアル荷重を受けるためのベアリング58(通常、アンギュラベアリングやテーパローラベアリング)が取付けられる。ベアリング58は、機械ベース60に設置される。同図は、アンギュラベアリングを4列で使用したものである。ナット57には、円筒状の駆動ラム59が取付けられており、その端面59aに、荷重を加える部材、例えば射出形成機の射出部や型締め部(図示せず)を取付ける。モータ51が回転することで、ボールねじ55のナット57が直線駆動され、ラム59の端面59aに荷重を加えることができる。その反力は、軸端のベアリング58で支持される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ボールねじ55は、高負荷を得るために、軸径と比較し大きなボールを用いることが一般的である。しかし、ボールねじ55のリードは、必ずボール径よりも小さくする必要がある。推力を上げるためには、ボールねじ55のリードを小さくするのが効果的であるが、ボール径とリードの制約のために最小のリードが決定されてしまう。また、この構造では、減速用のプーリ52,53やタイミングベルト54が必要で、さらにベアリング58も必要になる。このように、ボールねじ55の他に種々の部品が必要なため、部品点数が増えるという課題がある。さらに、ベアリング58の取付部となる機械ベース60は、高精度の嵌合を持った印籠結合でなければならず、ベアリング58の組付けに際しても、正面、背面合わせ等、所定の予圧を得るには工数が必要であった。
【0004】この発明の目的は、ボール径とねじ溝のリードの関係による制限にかかわらずに、任意の減速または増速機能が得られ、これに伴い、ボールねじ使用機器の部品点数の削減、組立工数の削減等が図れるボールねじを提供することである。この発明の他の目的は、高い減速機能を得ることができて、別途に減速用機器等を設けることなく、高荷重を負荷でき、ボールねじ使用機器の部品点数の削減、組立工数の削減が図れるボールねじを提供することである。この発明の他の目的は、一般的なボールねじの限界DN値による送り速度よりも速い送り速度が実現できるボールねじを提供することてある。この発明のさらに他の目的は、増減速用の部品や、ねじ軸の軸端支持用の軸受が削減できて、部品点数の削減、組立工数の削減等が図れるボールねじ使用直線駆動装置を提供することである。この発明のさらに他の目的は、増減速比の変更を容易とすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明のボールねじは、ねじ軸の外径面と、このねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面とに、それぞれ螺旋状のねじ溝が設けられ、前記ねじ軸およびナットのねじ溝の間に複数のボールを介在させたボールねじにおいて、前記ねじ軸の外径面に互いに仕様の異なる2種類のねじ溝を形成し、各々のねじ溝に対応するねじ溝をそれぞれ有する一対のナットを設けたことを特徴とする。仕様の異なる2種類のねじ溝は、互いに巻き方向、およびリードの少なくとも一方が異なる2種類のねじ溝とする。この構成によると、ねじ軸に巻き方向またはリードの異なる2種類のねじ溝を設け、各々のねじ溝に対応する一対のナットを設けたため、2種類のねじ溝の巻き方向やリードの組み合わせにより、ボール径とねじ溝のリードの関係による制限にかかわらずに、任意の減速または増速機能が得られる。これに伴い、ボールねじ使用機器の部品点数の削減、組立工数の削減等が図れる。また、片方のナットを固定側の部材に設置することで、ねじ軸の軸端のアキシアル荷重を支持する軸受が不要となり、これによりボールねじ使用機器のより一層の部品点数の削減、組立工数の削減等が図れる。
【0006】この発明のボールねじにおいて、前記2種類のねじ溝は、互いに巻き方向が同じでリードが異なるものとし、前記一対のナットのうちの一方のナットは固定側の部材に結合され、他方のナットはスライド側の部材に結合されるものとしても良い。前記ねじ軸は回転駆動されるものとする。この構成の場合、ねじ軸の1回転で、2種類のねじ溝のリードの差だけスライド側の部材が前進または後退する。そのため、大きな減速比が得られて、高荷重に対応でき、駆動源とねじ軸との間に減速機構を設けることが不要となる。また、2種類のねじ溝のリードの組み合わせを任意に変えることで、減速比を自由に選択できる。
【0007】この発明のボールねじにおいて、前記2種類のねじ溝は、互いに巻き方向が逆方向であり、前記一対のナットのうちの一方のナットは固定側の部材に結合され、他方のナットはスライド側の部材に結合され、前記ねじ軸は回転駆動されるものとしても良い。この構成の場合、ねじ軸の1回転で、2種類のねじ溝のリードの和だけスライド側の部材が前進または後退する。そのため、単独のボールねじの限界DN値(限界の直径×回転数の値)による送り速度よりも速い送り速度が実現でき、最高で2倍までの送り速度が得られる。また、2種類のねじ溝のリードの組み合わせを任意に変えることで、減速比ないし増速比を自由に選択できる。
【0008】この発明のボールねじ使用直線駆動装置は、この発明の上記いずれかの構成のボールねじと、このボールねじのねじ軸に連結された回転駆動源とを備えるものである。このボールねじ使用直線駆動装置によると、この発明のボールねじの特長を効果的に生かし、増減速用の部品や、ねじ軸の軸端支持用の軸受が削減できて、部品点数の削減、組立工数の削減等が図れる。
【0009】この発明のボールねじ使用直線駆動装置において、前記ボールねじにおける2種類のねじ軸を別体とし、これら2本のねじ軸を互いに連結およびその連結の解除を自在としても良い。この構成の場合、2本のねじ軸を組替えて、ねじ溝のリードの組み合わせを任意に変えることで、減速比を自由に選択することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態を図1と共に説明する。同図は、この発明の一実施形態にかかるボールねじを使用した直線駆動装置の破断側面図である。同図の例は、減速して使用する場合の例を示す。ボールねじ1は、1本のねじ軸2と、一対のナット3,4とを備える。ねじ軸2は、互いに仕様の異なる2種類のねじ溝5,6を各々外径面に形成したねじ軸部分2a,2bを軸方向に並んで有しており、各ナット3,4は、各々のねじ軸部分2a,2bの外周に遊嵌して配置されている。各ナット3,4は、ねじ軸2の各ねじ溝5,6に対応するねじ溝7,8が各々形成されている。これらねじ軸2のねじ溝5,6とナット3,4のねじ溝7,8の間に、多数のボール9が介在している。ナット3,4には、ねじ軸2との間でボール9を無限に循環させる循環部(図示せず)を有している。この循環部は、いわゆるリターンチューブ式、コマ式、ガイドプレート式等のいずれの形式のものであっても良い。また、ナット3,4は、他の部品への取付用のフランジ3a,4aを一端の外周に有している。
【0011】片方のねじ溝5,7と、もう片方のねじ溝6,8との仕様の違いは、リードの違いとされ、片方(図の右側)のねじ溝5,7のリードL1の方が、もう片方(図の左側)のねじ溝6,8のリードL2よりも大きくされている。ねじ溝5,7と、ねじ溝6,8の巻き方向は同じである。
【0012】このリードの大きい方のナット3は、機械ベース等となる固定側部材11に固定する。このとき、ナット3のフランジ3aを固定側部材11に取付けるだけのため、従来のねじ軸の軸端支持に採用されていたベアリングが挿入される印籠加工は不要である。ねじ軸2の固定端側(右端)は、回転駆動源であるモータ12に継手13を介して直結されている。モータ12は、支持用スライダ14を介して、固定側部材11にねじ軸2の軸方向に進退自在に設置さている。支持用スライダ14は、固定側部材11に対して、進退自在であって、モータ12の回転に対する回り止めが可能なものであれば良く、高精度は不要である。この例では、支持用スライダ14は、モータ設置部14aと軸状の複数本のガイド部14bとでなり、各ガイド部14bが固定部材11に設けられたガイド孔11aに進退自在に嵌挿されている。リードの小さい方のナット4には、スライド側部材15が取付けられている。スライド側部材15は、先端面が荷重支持面15aとなる駆動ラムであり、円筒状ととされ、ナット4のフランジ4aに取付けられている。スライド側部材15はガイド手段(図示せず)で進退自在に支持されており、ナット4を回転止めしている。
【0013】上記構成の動作を説明する。ねじ軸2をモータ12で1回転させると、固定側部材11に対してねじ軸2がナット3のリードL1分だけ、図中左方向に移動する。ここで、ナット4はスライド側部材15で回転止めされているため、ねじ軸2に対してリードL2分だけ図中右方向に移動する。すなわち、ナット3が取付けられたている固定側部材11に対して、スライド側部材15の端面である荷重支持面15aは、L1−L2分だけ左方向に移動することになる。なお、図中、mL1,mL2は、各々ねじ軸2がm回転したときの移動量を示し、m回転でmL1−mL2=mLだけ移動することになる。例えば、ナット3のリードを25mmとして、ナット4のリード4を20mmとすると、このリードの差分5mmだけ、スライド側部材15は固定側部材11に対して左方向に駆動されることになる。リードが20mmのボールねじを用いた場合、従来のものでは、プーリやギヤを使った1:4の減速を行う必要があったが、この実施形態ではボールねじ1のみで減速が可能である。また、見かけ上の送りから得られるリード5mmでは、ボールねじのボールの径は5mm以下、例えば1/8”(φ3.175)の制約が従来はあったものが、最大20mm、例えば5/8”(φ15.875)の大径ボール9(リード5mmの5倍径のボール)が使用でき、負荷容量をかせぐことが可能となる。
【0014】図2は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、ねじ軸2に設けた2か所のねじ部2a,2bにそれぞれ設けられるねじ溝5,6は、互いに巻き方向が逆のものとしてある。これに対応して、ナット3,4のねじ溝7,8も互いに巻き方向が逆方向とされている。片方のねじ溝5,7のリードL1と、もう片方のねじ溝6,8のリードL2は、互いに同じであっても良く、また異ならせても良い。図2の実施形態における上記の他の構成は、図1の実施形態と同じであるため、対応部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0015】この実施形態の場合、モータ12が一回転すると、スライド側部材15は、お互いのリードL1,L2の合計L1+L2=Lだけ左方向に移動できる。図中、mL1,mL2は、各々ねじ軸2がm回転したときの移動量を示し、m回転でmL1−mL2=mLだけ移動することになる。各々のナット3,4の最高回転数をnとすると、従来n×(リード)で限界であったスライド側部材15の進退速度を、最高2倍まで速めるるとができる。
【0016】なお、前記各実施形態では、ねじ軸2を全体が一体の単独部品としたが、例えば図3に示すように、ねじ軸2の互いに異なる仕様のねじ溝5,6(図1)を形成した部分を各々別体のねじ軸2A,2Bとし、これらねじ軸2A,2Bを互いに連結解除自在に連結しても良い。同図の例では、両ねじ軸2A,2Bは、各々一端にフランジ2Aa,2Baを設け、これらフランジ2Aa,2Baを互いに合わせてボルト等の結合部品(図示せず)で着脱自在に結合している。図3の例は、ねじ軸2を2本のねじ軸2A,2Bで形成したことの他は、図1の実施形態と同じである。また、図3の例は、ねじ軸2を2本のねじ軸2A,2Bで形成したことの他を、図2の実施形態と同じとしても良い。
【0017】図4は、図3の実施形態において、スライド側部材15を進退自在に案内するガイド17を設けたものである。ガイド17は、軸状に形成されて、固定側部材11に設けられたものであり、スライド側部材15に設けられたガイド孔15bに進退自在に嵌合している。なお、図1および図2の実施形態では、スライド側部材15を進退自在に案内するガイド手段の図示を省略したが、そのガイド手段として、図4の例と同様なガイド17を用いても良い。
【0018】
【発明の効果】この発明のボールねじは、ねじ軸の外径面に互いに巻き方向およびリードの少なくとも一方が異なる2種類のねじ溝を形成し、各々のねじ溝に対応するねじ溝をそれぞれ有する一対のナットを設けたため、ボール径とねじ溝のリードの関係による制限にかかわらずに、任意の減速または増速機能が得られ、これに伴い、ボールねじ使用機器の部品点数の削減、組立工数の削減等を図ることができる。2種のねじ溝を、互いに巻き方向が同じでリードが異なるものとし、前記一対のナットのうちの一方のナットを固定側の部材に結合し、他方のナットをスライド側の部材に結合し、前記ねじ軸を回転駆動するものとした場合は、高い減速機能を得ることができて、別途に減速用機器等を設けることなく、高荷重を負荷でき、ボールねじ使用機器の部品点数の削減、組立工数の削減が図れる。2種のねじ溝を、互いに巻き方向が逆方向であり、前記一対のナットのうちの一方のナットを固定側の部材に結合し、他方のナットをスライド側の部材に結合し、前記ねじ軸を回転駆動するものとした場合は、一般的なボールねじの限界DN値による送り速度よりも速い送り速度が実現できる。この発明のボールねじ使用直線駆動装置は、この発明のボールねじと、そのねじ軸に連結された回転駆動源とを備えるものであるため、増減速用の部品や、ねじ軸の軸端支持用の軸受が削減できて、部品点数の削減、組立工数の削減等が図れる。前記ボールねじにおける2種類のねじ軸を別体とし、これら2本のねじ軸を互いに連結およびその連結の解除を自在とした場合は、増減速比の変更を容易に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
【出願日】 平成11年7月6日(1999.7.6)
【代理人】 【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士 (外1名)
【公開番号】 特開2001−21019(P2001−21019A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−191555