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【発明の名称】 液圧テンショナ
【発明者】 【氏名】多田 直純

【要約】 【課題】液圧テンショナにおいて、エアベントディスクの誤組みを防止する。

【解決手段】チャンバ20を有するハウジング2と、チャンバ20内にスライド自在に挿入された中空のプランジャ3と、プランジャ3を突出方向に付勢するスプリング4と、プランジャ3の内部に設けられたエアベントディスク10とから液圧テンショナ1を構成する。エアベントディスク10は、ディスク状の第1,第2の部分11,12を有する。第1の部分11には、通気用流路としての溝13および貫通孔15が形成されている。第2の部分12には、中央に形成された穴16と、中心から放射状に延びかつ外周面に開口する複数の溝17とが形成されている。第2の部分12の外径dは、プランジャ先端部31の開孔31aの内径よりも小さくなっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 チェーンに緊張力を作用させるための液圧テンショナであって、チャンバを有するハウジングと、前記チャンバ内にスライド自在に挿入されるとともに、開孔が形成された先端部を有する中空のプランジャと、前記プランジャを突出方向に付勢する付勢部材と、前記プランジャの内部に設けられた通気装置とを備え、前記通気装置が、ディスク状の第1および第2の部分から構成され、前記第1の部分が、通気用流路が形成された第1の主面を有し、前記第2の部分が、前記第1の主面と逆側の第2の主面に設けられ、前記プランジャの開孔径よりも大きな外径を有するとともに、中心軸方向の穴およびこれに連通して中心軸方向と交差する方向に延びかつ外周面に開口する流路を有している、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項2】 請求項1に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気装置の前記第1の部分の外径が前記プランジャの内径よりもわずかに小さくなっている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項3】 請求項1に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気装置の前記第1の部分の外径が前記プランジャの内径と実質的に等しく、前記第1の部分の外周には、前記通気用流路の始端と連絡する中心軸方向の溝が形成されている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項4】 請求項1に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気用流路が、その始端から終端に至るまで遠回りの道筋を有している、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項5】 請求項4に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気用流路が螺旋形状を有している、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項6】 請求項4に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気用流路が、少なくとも90度折れ曲がる複数の直線状部分から構成されている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項7】 請求項1に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気装置の前記第2の部分の外周面に開口する流路が、中心から放射状に延びている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項8】 請求項7に記載の液圧テンショナにおいて、前記流路が、前記第2の部分の端面に形成された溝である、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項9】 請求項1に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気装置が、前記付勢部材の付勢力により前記プランジャの先端側に付勢されている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項10】 請求項9に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気装置がプレッシャーリリーフバルブ組立体と一体的に組み立てられ、前記プレッシャーリリーフバルブ組立体が、前記付勢部材により前記プランジャの先端側に付勢されるとともに、前記通気装置の前記第1の部分の中央部に、前記第2の部分の中心軸方向の穴と連通する貫通孔が形成されている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項11】 請求項10に記載の液圧テンショナにおいて、前記通気装置の前記第2の部分の外径部分が、前記プレッシャーリリーフバルブ組立体の一端に形成された穴に挿入されるようになっている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項12】 請求項1に記載の液圧テンショナにおいて、前記ハウジング内には、前記チャンバを外部の加圧流体源に接続するための流路がさらに設けられている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【請求項13】 請求項12に記載の液圧テンショナにおいて、前記チャンバと前記流路との間には、前記チャンバ内への流体の流れを許容しかつ逆方向への流体の流れを阻止するチェックバルブが設けられている、ことを特徴とする液圧テンショナ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのカムシャフト等を駆動するチェーンやベルトに適正な緊張力を作用させるための液圧テンショナに関し、詳細には、通気装置の誤組みを防止するための液圧テンショナの構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】液圧テンショナは、一般に、ハウジングと、ハウジングに形成された穴にスライド自在に挿入されたプランジャと、プランジャを常時突出方向に付勢するばねとから主として構成されている。そして、ハウジング内部において、ハウジング内壁面とプランジャとによりチャンバが形成されており、該チャンバに外部の油圧供給源から作動油が供給されて、該チャンバ内に油圧が作用するようになっている。
【0003】ところで、液圧テンショナにおいては、チャンバ内の作動油中に空気が混入する場合があり、このような場合、空気が可圧縮性流体であることから、チェーンやベルトの張力が増加した際に混入空気が圧縮されてプランジャが後退し、その結果、チェーンやベルトにばたつきが生じることになる。
【0004】そこで、このような問題を解消すべく、特開平7−158703号公報に示すような液圧テンショナが提案されている。この液圧テンショナは、通気装置として機能するディスクをプランジャ内部に有している。ディスクの表面には、たとえば螺旋状の溝が形成されており、溝の始端はディスク表面の外周側に配置され、終端はディスク表面の中央部に配置されている。
【0005】図10は、上記公報に示された液圧テンショナのプランジャ先端部分を拡大して示している。同図において、プランジャ100の先端には開孔100aが形成されており、プランジャ100の内部に形成された穴100bには、ディスク110が挿入されている。ディスク110の一方の主面(上面)には、螺旋状の溝110aが形成されており、またディスク110の外周面の一部には、中心軸方向に延びかつ溝110aの始端と連絡する溝110bが形成されている。
【0006】このような液圧テンショナにおいては、チャンバ内に混入した空気は、ディスク110の外周の溝110bから螺旋状の溝110aを通り、プランジャ100の開孔100aを通って作動油とともに大気中に漏出する。また、このとき、ディスク110の主面に形成された溝110aが螺旋形状をしていることから、チャンバ内の作動油がテンショナ外部に過剰に漏出するのが抑制されている。
【0007】ところで、液圧テンショナの組立後の製品検査においては、チャンバ内に作動油を供給してチャンバ内に油圧を作用させ、このとき、プランジャ先端の開孔から微量の作動油が漏出するのを確認して、良品のチェックを行っている。
【0008】しかしながら、上記従来の液圧テンショナでは、通気装置として機能するディスク110が単純な円盤形状をしていることから、図11に示すように、ディスク110を上下逆に組み込むことが可能である。このような誤組みの場合、チャンバ内に混入した空気については、ディスク110の螺旋状の溝110aがプランジャ100の開孔100aと連通していないことから、テンショナ外部に排出されないことになる。
【0009】その一方、この誤組みの液圧テンショナについて、上記と同様の手法で製品検査を行うと、チャンバ内の作動油は、ディスク110の外周の溝110bを通り、さらにディスク主面とプランジャとの間の隙間を通ってテンショナ外部に漏出し得る。したがって、このような誤組みの場合においても、製品が良品と判断される可能性がある。
【0010】本発明は、このような従来の問題点を解消すべくなされたもので、通気装置の誤組みを防止することができる液圧テンショナを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る液圧テンショナは、チャンバを有するハウジングと、前記チャンバ内にスライド自在に挿入されるとともに、開孔が形成された先端部を有する中空のプランジャと、前記プランジャを突出方向に付勢する付勢部材と、前記プランジャの内部に設けられた通気装置とを備え、前記通気装置が、ディスク状の第1および第2の部分から構成され、前記第1の部分が、通気用流路が形成された第1の主面を有し、前記第2の部分が、前記第1の主面と逆側の第2の主面に設けられ、前記プランジャの開孔径よりも大きな外径を有するとともに、中心軸方向の穴およびこれに連通して中心軸方向と交差する方向に延びかつ外周面に開口する流路を有していることを特徴としている。
【0012】請求項2の発明に係る液圧テンショナは、請求項1において、前記通気装置の前記第1の部分の外径が前記プランジャの内径よりもわずかに小さくなっているることを特徴としている。
【0013】請求項3の発明に係る液圧テンショナは、請求項1において、前記通気装置の前記第1の部分の外径が前記プランジャの内径と実質的に等しく、前記第1の部分の外周には、前記通気用流路の始端と連絡する中心軸方向の溝が形成されていることを特徴としている。
【0014】請求項4の発明に係る液圧テンショナは、請求項1において、前記通気用流路が、その始端から終端に至るまで遠回りの道筋を有していることを特徴としている。
【0015】請求項5の発明に係る液圧テンショナは、請求項4において、前記通気用流路が螺旋形状を有していることを特徴としている。
【0016】請求項6の発明に係る液圧テンショナは、請求項4において、前記通気用流路が、少なくとも90度折れ曲がる複数の直線状部分から構成されていることを特徴としている。
【0017】請求項7の発明に係る液圧テンショナは、請求項1において、前記通気装置の前記第2の部分の外周面に開口する流路が中心から放射状に延びていることを特徴としている。
【0018】請求項8の発明に係る液圧テンショナは、請求項7において、前記流路が、前記第2の部分の端面に形成された溝であることを特徴としている。
【0019】請求項9の発明に係る液圧テンショナは、請求項1において、前記通気装置が、前記付勢部材の付勢力により前記プランジャの先端側に付勢されていることを特徴としている。
【0020】請求項10の発明に係る液圧テンショナは、請求項9において、前記通気装置がプレッシャーリリーフバルブ組立体と一体的に組み立てられ、前記プレッシャーリリーフバルブ組立体が、前記付勢部材により前記プランジャの先端側に付勢されるとともに、前記通気装置の前記第1の部分の中央部に、前記第2の部分の中心軸方向の穴と連通する貫通孔が形成されていることを特徴としている。
【0021】請求項11の発明に係る液圧テンショナは、請求項10において、前記通気装置の前記第2の部分の外径部分が、前記プレッシャーリリーフバルブ組立体の一端に形成された穴に挿入されるようになっていることを特徴としている。
【0022】請求項12の発明に係る液圧テンショナは、請求項1において、前記チャンバを外部の加圧流体源に接続するための流路が前記ハウジング内にさらに設けられていることを特徴としている。
【0023】請求項13の発明に係る液圧テンショナは、請求項12において、前記チャンバと前記流路との間に、前記チャンバ内への流体の流れを許容しかつ逆方向への流体の流れを阻止するチェックバルブが設けられていることを特徴としている。
【0024】請求項1の発明に係る液圧テンショナの組立ての際には、通気装置の通気用流路が形成された第1の主面をプランジャ先端側に向けた状態で、通気装置をプランジャ内に組み込むようにする。
【0025】この正規の組立て状態の場合には、製品検査においてチャンバ内に流体を供給してチャンバ内に圧力を作用させると、チャンバ内の流体は、通気装置の第1の主面の通気用流路を通り、プランジャ先端部の開孔を通ってテンショナ外部に微量排出される。また、チャンバ内に混入した空気は、通気装置の第1の主面の通気用流路を通り、プランジャ先端部の開孔を通って大気中に漏出する。
【0026】これに対して、通気装置の第2の主面側に配置された第2の部分をプランジャ先端側に向けた状態で、すなわち、通気装置の上下を逆にしてプランジャ内に誤って組み込んだ場合には、通気装置の第2の部分の外径部分がプランジャの開孔径よりも大きいため、通気装置の第2の主面とプランジャ先端部の内壁面との間に隙間が形成される。
【0027】したがって、この場合には、製品検査においてチャンバ内に流体を供給してチャンバ内に圧力を作用させると、チャンバ内の流体は、通気装置の第2の部分の外周面の開口から流路内に流入し、さらに中心軸方向の穴を通って、プランジャ先端部の開孔からテンショナ外部に多量に排出される。
【0028】このように、通気装置を誤組みした場合には、製品検査時にプランジャ先端部の開孔から流出される流体の量が多くなることによって、正規に組み立てられた良品と区別することができる。これにより、通気装置の誤組みを防止することができる。
【0029】請求項2の発明では、通気装置の第1の部分の外径がプランジャの内径よりもわずかに小さくなっているので、通気装置をプランジャ内に組み込んだ際には、通気装置の第1の部分の外径部分とプランジャの内径部分との間に隙間が形成される。これにより、チャンバ内に混入した空気は、この隙間を通って通気装置の第1の主面側に移動し、第1の主面の通気用流路を通って外部に排出される。
【0030】請求項3の発明では、通気装置の第1の部分の外径がプランジャの内径と実質的に等しいので、通気装置をプランジャ内に組み込んだ際、通気装置の第1の部分の外径部分がプランジャの内径部分に隙間なく嵌合する。また、この場合、通気装置の第1の部分の外周には、通気用流路の始端と連絡する中心軸方向の溝が形成されている。したがって、チャンバ内に混入した空気は、この溝を通って通気装置の第1の主面側に移動し、第1の主面の通気用流路を通って外部に排出されることになる。
【0031】請求項4の発明では、通気用流路がその始端から終端に至るまで遠回りの道筋を有しているので、チャンバ内から漏出する流体の流れを制限して、漏出流量を抑制することができる。
【0032】通気用流路は、請求項5の発明に記載されているように、螺旋形状を有していてもよく、また請求項6の発明に記載されているように、少なくとも90度折れ曲がる複数の直線状部分から構成されていてもよい。なお、請求項6の場合には、折れ曲がり角が90度以上の角度、たとえば180度を含んでいる。
【0033】請求項7の発明では、通気装置の第2の部分の外周面に開口する流路が中心から放射状に延びている。この通気装置の上下を逆にしてプランジャ内に誤って組み込んだ場合、製品検査の際にチャンバ内に流体が供給されてチャンバ内に圧力が作用したとき、チャンバ内の流体は、放射状の流路から中心軸方向の穴に入り、プランジャ先端部の開孔からテンショナ外部に多量に排出されることになる。
【0034】通気装置の第2の部分の外周面に開口する流路は、請求項8の発明に記載されているように、第2の部分の端面に形成された溝であってもよい。
【0035】請求項9の発明では、通気装置が付勢部材の付勢力によりプランジャの先端側に付勢されている。これにより、正規の組立時において、通気装置の第1の主面をプランジャ先端部の内壁面に密に接触させることができる。
【0036】請求項10の発明では、通気装置がプレッシャーリリーフバルブ組立体に組み付けられ、プレッシャーリリーフバルブ組立体が付勢部材によりプランジャの先端側に付勢されるとともに、通気装置の第1の部分の中央部に、第2の部分の中心軸方向の穴と連通する貫通孔が形成されている。
【0037】これにより、チャンバ内部が高圧になったときには、このプレッシャーリリーフバルブの作動によって、通気装置の第2の部分の中心軸方向の穴および第1の部分の貫通孔を介して、チャンバ内の流体をテンショナ外部に流出させることができる。その結果、チャンバ内が異常に高圧になるのを防止することができる。また、通気装置がプレッシャーリリーフバルブ組立体と一体的に組み立てられていることにより、液圧テンショナ全体をコンパクトに構成できる。
【0038】請求項11の発明では、通気装置の第2の部分の外径部分がプレッシャーリリーフバルブ組立体の一端に形成された穴に挿入されているので、液圧テンショナ全体をさらにコンパクトに構成できる。
【0039】請求項12の発明では、チャンバを外部の加圧流体源に接続するための流路がハウジング内に設けられるので、外部の加圧流体源からの流体はこの流路を通ってチャンバ内に供給されることになる。
【0040】請求項12の発明では、チャンバと流路との間にチェックバルブが設けられるので、加圧流体源からチャンバ内部に向かう流体の流れが許容される一方、逆方向の流体の流れが阻止されている。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施態様による液圧テンショナの断面図、図2は図1の一部拡大図、図3はエアベントディスクの断面図、図4は図3の右側面図、図5は図3の左側面図、図6,図7はエアベントディスクの作動を説明するための図である。
【0042】図1に示すように、液圧テンショナ1は、ハウジング2と、ハウジング2に形成された穴2a内にスライド自在に挿入された中空のプランジャ3と、プランジャ3を穴2aから突出する方向に付勢するスプリング4とから主として構成されている。
【0043】ハウジング2内において、穴2aの内壁面およびプランジャ3の内壁面等からチャンバ20が形成されている。プランジャ3の先端部31の中央部には、開孔31aが形成されている。
【0044】ハウジング2内部のチャンバ底壁側には、ボールチェックバルブ6が設けられている。このボールチェックバルブ6は、チャンバ20内への流体の流れを許容するとともに、逆方向の流体の流れを阻止するために設けられている。またハウジング2には、チャンバ20を外部の加圧流体源(図示せず)に接続するための流路7が設けられている。
【0045】プランジャ3の内部において先端部31側には、プレッシャーリリーフバルブ組立体5が設けられている。このプレッシャーリリーフバルブ組立体5は、チャンバ20内の液圧が所定の最大値を超えたときに、チャンバ20内から流体が流出するのを許容するためのものである。
【0046】プレッシャーリリーフバルブ組立体5には、通気装置としてのエアベントディスク10が一体的に組み込まれている。スプリング4のばね力は、プレッシャーリリーフバルブ5およびエアベントディスク10を介してプランジャ3に作用しており、このスプリング4のばね力の作用により、プレッシャーリリーフバルブ組立体5,エアベントディスク10およびプランジャ先端部31は、互いに密に接触している。
【0047】次に、プレッシャーリリーフバルブ組立体5およびエアベントディ ク10を拡大したものを図2に示す。
【0048】図2に示すように、プレッシャーリリーフバルブ組立体5は、両端に開孔51a,51bが形成されたバルブハウジング51と、バルブハウジング51内に固定されたプラグ部材52と、バルブハウジング51内に形成されたシート面51cに当接し得るボール53と、ボール53をシート面51c側に付勢するバルブスプリング54とを備えている。
【0049】図2および図3に示すように、エアベントディスク10は、各々ディスク状の第1,第2の部分11,12を有している。第1の部分11の主面11aには、通気用流路として、螺旋形状の溝13が形成されている(図5参照)。
【0050】図5に示すように、溝13の始端13aは先細り形状をしており、終端13bは、中央に形成された座ぐり穴14に接続されている。第1の部分11の中央には、座ぐり穴14と連通する貫通孔15が形成されている。
【0051】エアベントディスク10の第2の部分12は、第1の部分11の主面11aと逆側の主面11bに設けられている。エアベントディスク10のプレッシャーリリーフバルブ組立体5への組込み時には、エアベントディスク10の第2の部分12がプレッシャーリリーフバルブ組立体5のバルブハウジング51の開孔51a内に挿入されており、これにより、全体がコンパクトに構成されている。また第2の部分12の外径d(図4)は、プランジャ先端部31の開孔31aの内径よりも大きくなっている。第2の部分12の中央には、第1の部分の貫通孔15と連通する穴16が形成されている。
【0052】第2の部分12の端面には、図4に明確に示されるように、穴16に連通して放射状に延びかつ第2の部分12の外周面に開口する流路としての複数の溝17が形成されている。
【0053】また、エアベントディスク10の第1の部分11の外径D(図4)は、プランジャ3の穴径よりも若干小さくなっており、図2に示すように、プランジャ3内への組込み時には、プランジャ内壁面との間にクリアランスcが形成されるようになっている。
【0054】次に、本実施態様の作用効果について説明する。運転中には、スプリング4のばね力およびチャンバ20内の液圧によりプランジャ3が突出して、その先端部31が図示しないチェーンに当接し、該チェーンに緊張力が作用する。このとき、チェーンからプランジャ3に作用するハウジング内方への力が、スプリング4のばね力およびチャンバ20内の液圧によるハウジング外方への力と釣り合っている。
【0055】チェーンの緊張力が増加すると、チェーンからプランジャ3に作用するプランジャ縮退方向の力が増加する。プランジャ3が縮退方向に押圧されると、チャンバ20内の液圧が増加するが、このとき、ボールチェックバルブ6により、チャンバ20内から流体が流出するのが阻止される。そして、チャンバ20内の液圧が所定の最大値を超えると、プレッシャーリリーフバルブ組立体5のバルブが開き、チャンバ20からの流体の流出を許容する。
【0056】このプレッシャーリリーフバルブ組立体5の作動時には、チャンバ20内の液圧の作用により、ボール53がバルブスプリング54のばね力に抗してシート面51cから離れる側に移動する。すると、チャンバ20内の流体は、ボール53とシート面51cとの間の隙間を通って、バルブハウジング51内に進入し、さらに、バルブハウジング51とプラグ部材52との間の隙間(図示せず)を通って、エアベントディスク10側に移動する。
【0057】そして、エアベントディスク10の穴16,貫通穴15および座ぐり穴14を通り、さらに、プランジャ先端部31の開孔31aを通ってテンショナ外部に流出する。このようにして、チャンバ20内の液圧が減少する。
【0058】次に、チャンバ20内の流体中にエアが混入した場合には、この混入エアは、プランジャ3の内径部分と、プレッシャーリリーフバルブ組立体5のバルブハウジング51の外径部分およびエアベントディスク10の外径部分との間の隙間から、エアベントディスク10の溝13の始端13aに流入し、該溝13を通って終端14bに移動し、さらに、プランジャ先端部31の開孔31aを通って作動油とともに大気中に漏出する。
【0059】このとき、エアベントディスク10の主面11aに形成された溝13が螺旋形状をした遠回りの道筋を有していることから、チャンバ20内の流体がテンショナ外部に過剰に漏出するのが抑制されている。
【0060】次に、この液圧テンショナ1の製品検査において、チャンバ20内に流体を供給してチャンバ20内に圧力を作用させると、チャンバ20内の流体は、混入エアの流出の場合と同様に、プランジャ3の内径部分と、プレッシャーリリーフバルブ組立体5のバルブハウジング51の外径部分およびエアベントディスク10の外径部分との間の隙間から、エアベントディスク10の溝13の始端13aに流入し、該溝13を通って終端14bに移動し、さらに、プランジャ先端部31の開孔31aを通って大気中に微量排出される(図6参照)。
【0061】その一方、エアベントディスク10の第2の部分12をプランジャ先端側に向けた状態で、すなわち、エアベントディスク10の上下を逆にしてプランジャ3内に誤って組み込んだ場合には、エアベントディスク10の第2の部分12の外径部分がプランジャ先端部31の開孔31aよりも大きいため、図7に示すように、エアベントディスク10の第2の主面11bとプランジャ先端部31の内壁面との間に隙間が形成される。
【0062】したがって、この場合には、製品検査においてチャンバ20内に流体を供給してチャンバ20内に圧力を作用させると、チャンバ20内の流体は、プランジャ3の内径部分とエアベントディスク10の外径部分との間の隙間を通って、エアベントディスク10の第2の部分12の外周面の開口から溝17内に流入し、さらに中心軸方向の穴12,貫通孔15および座ぐり穴14を通り、プランジャ先端部31の開孔31aからテンショナ外部に多量に排出される。
【0063】このように、エアベントディスク10を誤組みした場合には、製品検査時にプランジャ先端部31の開孔31aから流出される流体の量が多くなることによって、正規に組み立てられた良品と区別することができる。これにより、エアベントディスク10の誤組みを防止することができる。
【0064】なお、前記実施態様では、エアベントディスク10の第1の部分11の外径Dがプランジャ3の穴径よりも若干小さくなっている例を示したが、これとは異なり、エアベントディスク10の第1の部分11の外径Dをプランジャ3の穴径と実質的に等しくするとともに、第1の部分11の外周に中心軸方向に延びる溝を形成するようにしてもよい。
【0065】この場合には、エアベントディスク10をプランジャ3内に組み込んだ際、エアベントディスク10の第1の部分11の外径部分がプランジャ3の内径部分に隙間なく嵌合する。そして、チャンバ20内に混入した空気は、第1の部分11の外周の溝を通ってエアベントディスク10の第1の主面11a側に移動し、第1の主面11aの通気用流路を通って外部に排出されることになる。
【0066】また、前記実施態様では、通気用流路としての溝13が螺旋形状を有している例を示したが、溝13の道筋は、これには限定されず、図8および図9に示すように、少なくとも90度折れ曲がる複数の直線状部分から構成されていてもよい。なお、これらの図において、前記実施態様と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0067】図8に示すエアベントディスク10′の場合には、溝13′が、その始端13′aから終端13′bに至るまで、折れ曲がり角度90°の複数の直線状部分から構成されている。また、エアベントディスク10′の外周には、溝13′の始端13′aに接続する中心軸方向(紙面垂直方向)の溝18が形成されている。
【0068】図9に示すエアベントディスク10″の場合には、溝13″が、その始端13″aから終端13″bに至るまで、折れ曲がり角度90°および180°の複数の直線状部分から構成されている。また、エアベントディスク10′の外周には、図8と同様の溝18が形成されている。
【0069】図8および図9のいずれの場合においても、チャンバ3内に混入した空気は、エアベントディスク外周の溝18から主面11a側の溝13′または13″に流入し、該溝を通ってテンショナ外部に排出される。
【0070】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る液圧テンショナによれば、プランジャ内部に通気装置を設けるとともに、該通気装置を、通気用流路が形成された第1の部分と、プランジャ先端部の開孔径よりも大きな外径を有するとともに、中心軸方向の穴および外周面に開口する流路が形成された第2の部分とから構成するようにしたので、通気装置を誤組みした場合には、製品検査時にチャンバ内に液圧を作用させた際に、通気装置の第2の部分の流路および中心軸方向の穴を介してチャンバ内の流体がテンショナ外部に多量に漏れることになり、これにより、製品の良品と不良品のチェックが可能になって、通気装置の誤組みを防止できるようになる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000113447
【氏名又は名称】ボーグ・ワーナー・オートモーティブ株式会社
【出願日】 平成11年7月6日(1999.7.6)
【代理人】 【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
【公開番号】 特開2001−21013(P2001−21013A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−191218