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【発明の名称】 動力伝達用ゴムベルト
【発明者】 【氏名】稲垣 忠弘
【課題】トルクの低下、応力緩和性及び走行安定性等のベルトの特性を向上すると共に長期の走行安定性を実現した動力伝達用ゴムベルトを提供する。

【解決手段】張力を付与するための芯糸を有さない動力伝達用の無端ゴムベルトであって、ゴム硬度がJIS Aで80°以上の高硬度ゴム材料で形成された上層部11と、前記高硬度ゴム材料よりゴム硬度が相対的に低い低硬度ゴム材料で形成された下層部12とからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 張力を付与するための芯糸を有さない動力伝達用の無端ゴムベルトであって、ゴム硬度がJIS Aで80°以上の高硬度ゴム材料で形成された上層部と、前記高硬度ゴム材料よりゴム硬度が相対的に低い低硬度ゴム材料で形成された下層部とからなることを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【請求項2】 請求項1において、前記下層部の重量が全体の重量の50%以下であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【請求項3】 請求項1又は2において、前記高硬度ゴム材料のゴム硬度がJIS Aで80°〜95°であると共に前記下層部を形成する低硬度ゴム材料のゴム硬度がJIS Aで40°〜80°であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【請求項4】 請求項1〜3の何れかにおいて、前記高硬度ゴム材料と前記低硬度ゴム材料とに含まれる可塑剤の含有量の差が10%以内であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【請求項5】 請求項1〜4の何れかにおいて、前記高硬度ゴム材料のヤング率が1000〜5000g/mm2であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【請求項6】 請求項1〜5の何れかにおいて、前記低硬度ゴム材料の摩擦係数が1.2以上であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【請求項7】 請求項1〜6の何れかにおいて、前記上層部と前記下層部との間に伸縮性を有する芯体を有することを特徴とする動力伝達用ゴムベルト。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種オーディオ機器、OA機器等に用いられる動力伝達用ゴムベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】各種オーディオ機器、OA機器等には、駆動源の回転力を従動側に伝達するために、動力伝達用ゴムベルトが用いられる。かかる動力伝達用ゴムベルトは、駆動側プーリーおよび従動側プーリーに巻き掛けられ、駆動側プーリーの回転力を従動側プーリーに伝達する。
【0003】このような動力伝達用ゴムベルトにおいては、導電側の回転力を確実に従動側に伝達するために、高張力で形成してトルクの低下、応力緩和性及び走行性を向上した動力伝達用ゴムベルトが所望されている。
【0004】このような動力伝達用ゴムベルトは、ゴム材料のみで形成すると必要なヤング率が得られず上述したようなベルト特性が得られないという問題がある。
【0005】このような問題を解決するために、ゴム部材の芯体として糸を用いて高張力を実現した動力伝達用ゴムベルトが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、芯体として糸を用いた動力伝達用ゴムベルトでは、糸のほつれ、ゴム部材との接着力不足、寸法誤差による張力及びトルクのばらつき及び蛇行走行などの発生によって走行に障害が発生するという問題がある。
【0007】また、このような動力伝達用ゴムベルトは、糸の応力緩和性が大きく、長期使用の際には、走行安定性に欠けるという問題がある。
【0008】本発明はこのような事情に鑑み、トルクの低下、応力緩和性及び走行安定性等のベルトの特性を向上すると共に長期の走行安定性を実現した動力伝達用ゴムベルトを提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の第1の態様は、張力を付与するための芯糸を有さない動力伝達用の無端ゴムベルトであって、ゴム硬度がJIS Aで80°以上の高硬度ゴム材料で形成された上層部と、前記高硬度ゴム材料よりゴム硬度が相対的に低い低硬度ゴム材料で形成された下層部とからなることを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0010】本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記下層部の重量が全体の重量の50%以下であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0011】本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記高硬度ゴム材料のゴム硬度がJIS Aで80°〜95°であると共に前記下層部を形成する低硬度ゴム材料のゴム硬度がJIS Aで40°〜80°であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0012】本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記高硬度ゴム材料と前記低硬度ゴム材料とに含まれる可塑剤の含有量の差が10%以内であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0013】本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記高硬度ゴム材料のヤング率が1000〜5000g/mm2であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0014】本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記低硬度ゴム材料の摩擦係数が1.2以上であることを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0015】本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記上層部と前記下層部との間に伸縮性を有する芯体を有することを特徴とする動力伝達用ゴムベルトにある。
【0016】本発明の動力伝達用ゴムベルトは、高硬度ゴム材料と低硬度ゴム材料とを複合し、上層部の高硬度ゴム材料で高張力を得ると共に下層部の低硬度ゴム材料でプーリーとの間の摩擦力を得るものであるため、高トルク及び走行安定性を達成できるものである。
【0017】本発明の動力伝達用ゴムベルトの一例を図1に示す。なお、図1は、動力伝達用ゴムベルトの平面図及び断面図である。
【0018】図示するように、本発明の動力伝達用ゴムベルト10は、外周面側に設けられた上層部11と、内周面側に設けられた下層部12と、上層部11及び下層部12に挟持される芯体13とで形成されている。
【0019】この動力伝達用ゴムベルト10の上層部11は、高硬度のゴム材料で形成される。このゴム材料は、JIS Aで80°以上の高硬度ゴム材料を用いるのが好ましく、さらに、JIS Aで80°〜95°の高硬度ゴム材料を用いるのがより好ましい。
【0020】ここで、上層部11は、ベルト全体の高張力を得るためのものであり、ヤング率が1000〜5000g/mm2であるのが望ましい。ヤング率がこれより小さいと十分な張力を得ることができず、逆にこれより大きいとプーリー間への装着が困難になり好ましくない。
【0021】一方、下層部12は、上層部11を形成するゴム材料より低硬度のゴム材料で形成される。この下層部12を形成するゴム材料は、JIS Aで40°〜80°の中低硬度のゴム材料を用いるのが好ましい。
【0022】かかる下層部12は、プーリーとの間の必要な摩擦力を得るためのものであり、摩擦係数が1.2以上であることが好ましい。摩擦力がこれより小さいと高トルクの伝達ができず好ましくないからである。
【0023】このように上層部11及び下層部12のそれぞれの機能を十分に発揮させるためには、下層部12の重量が全体の重量の50%以下であるのが好ましい。高張力で高トルク伝達を実現するためである。
【0024】さらに、上層部11を形成する高硬度ゴム材料と、下層部12を形成する低硬度ゴム材料とは、接着剤等で接着せずに同時加硫で接合するのが好ましいので、同種のゴム材料とするのが望ましい。一方、長期に亘って接触しているので、可塑剤の含有率が大きく異なると可塑剤の移行が生じて反り等の問題が生じる。したがって、前記高硬度ゴム材料と前記低硬度ゴム材料とに含まれる可塑剤の含有量の差が10%以内であるのが好ましい。高硬度ゴム材料として、ジアリルフタレートプレポリマーを添加して高硬度且つ高ヤング率化を図ったポリウレタンを用い、低硬度ゴム材料としてジアリルフタレートプレポリマーを添加しないポリウレタンを用いるのが好ましいが、ゴム材料はこれに限定されるものではない。
【0025】また、芯体13は、伸縮性のある、例えば編物などの芯体材料が用いられている。この芯体材料としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が用いられる。
【0026】このような芯体13は、張力を付与するものではないが、ベルト自体の亀裂が発生し始めてもその成長を防止することができるため、長期に亘って安定した走行を実現することができる。
【0027】この上層部11及び下層部12のゴム材料と、芯体層部の芯体材料を所望の配合で金型により成形し、研磨及び切断することにより動力伝達用ゴムベルトが形成される。
【0028】このような動力伝達用ゴムベルトは、芯糸を用いずに高張力が実現でき、高トルクの維持、応力緩和性及び走行安定性を向上できる。
【0029】なお、本発明の動力伝達用ゴムベルトの断面形状は特に限定されず、断面形状が矩形であっても円形あるいは楕円であってもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】(実施例1)上層部にJIS Aで90°のジアリルフタレートプレポリマー添加ポリウレタン、下層部にJIS Aで75°のポリウレタンを用い、芯体としてナイロンからなる編物を用いた。製造方法は、下層部を形成するための生ゴム層の上に芯体を被せてこの上に上層部を形成し、両層を同時加硫し、研磨及び切断することによって図1に示す動力伝達ゴム材料を得た。
【0032】ここで、動力伝達用ゴムベルトの上層部の重量が70%、下層部の重量が30%とした。
【0033】(比較例1及び2)比較のため、上層部及び下層部にJIS Aで75°のポリウレタン、芯体としてポリエーテルの繊維(PET)を用いた比較例1の動力伝達用ゴムベルトを得た。
【0034】また、上層部及び下層部にJIS Aで90°のポリウレタン、芯体としてナイロンからなる編物を用いた比較例2の動力伝達用ゴムベルトを得た。
【0035】(試験例1)この実施例1と比較例1及び2との動力伝達用ゴムベルトのトルク変化、耐熱応力緩和性及び走行性の試験を行った。
【0036】トルク変化は、高温雰囲気内で放置したときのトルクの変化量を求める試験を行った。具体的には、小径糸入りベルト回転試験機に各動力伝達用ゴムベルトをセットして、回転させずに65℃の雰囲気内に放置する。そして、この初期トルク及び12時間後、24時間後のトルク値をトルクゲージで測定してトルクの変化量を求めた。
【0037】このときの試験結果を図2に示す。
【0038】図2に示す試験結果から、実施例1の動力伝達用ゴムベルトではトルクの変化量が小さく、安定して使用できるのに対して、比較例1及び2の動力伝達用ゴムベルトではトルクの変化量が非常に大きく安定性に欠けていることが分かる。
【0039】また、応力緩和性の試験は、まず、引っ張り試験機を用いて1.4kgの荷重をかけ、そのときの軸間距離を求めた。
【0040】次に、軸径をφ10mmとし、動力伝達用ゴムベルトを引っ張り試験治具にかけ、70℃の雰囲気下で72時間放置した。
【0041】次に、初めに求めた軸間距離まで張力試験器を用いて伸張し、その際の荷重F72(kg)を求めた。
【0042】その後、低下率Rを下記式に従って求めた。
【0043】
【数1】R=((F72/1.4)−1)×100【0044】このときの試験結果を図3に示す。
【0045】図3(a)に示す試験結果から、実施例1は張力の変化量が小さく、安定しているのに対して、比較例1は張力の低下率が非常に大きく安定性に欠けることが分かる。
【0046】また、図3(b)に示す試験結果から、実施例1及び比較例1はほぼ同じの摩擦係数を示しているが、比較例2は摩擦係数が低くなっており、トルクの低下の原因となる。
【0047】走行性の試験は、蛇行試験を行った。具体的には、小径糸入りベルト回転試験器に動力伝達用ゴムベルトをセットし、走行してプーリーに対するベルトの偏り、蛇行等が発生していないか目視により確認する試験をそれぞれ実施例1、比較例1及び2のサンプル100本に対して行った。
【0048】このときの試験結果(蛇行、寄り発生本数)を下記表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】この表1に示す試験結果から、実施例1及び比較例2の動力伝達用ゴムベルトは、蛇行が見られず走行が安定しているのに対して、比較例1の動力伝達用ゴムベルトは、蛇行が見られ、安定性に欠けることが分かる。
【0051】このように一連の試験結果から、実施例1の動力伝達用ゴムベルトが回転トルク、走行性及び長期安定性の全てにおいて優れていることが分かる。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の動力伝達用ゴムベルトは、高硬度のゴム材料で形成した上層部とこれに対して低硬度のゴム材料で形成した下層部とで形成するようにしたため、トルクの低下を防止すると共に応力緩和性及び走行安定性を向上することができる。また、長期使用に対しても耐久性を向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000242426
【氏名又は名称】北辰工業株式会社
【出願日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【代理人】 【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
【公開番号】 特開2001−289281(P2001−289281A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−102125(P2000−102125)