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【発明の名称】 エンジンマウント
【発明者】 【氏名】富樫 千晴

【要約】 【課題】この発明は、エンジンの静荷重を油圧アクチュエータと並列に配設されたラバーマウントによって支持することにより、エンジンの支持状態を大きく変える原因となる油圧の微妙な調整を不要にするエンジンマウントを提供する。

【解決手段】エンジンの静荷重の一部は、取付けプレート5からラバーマウント4、油圧アクチュエータ6のカバー9及びシリンダ8を経る弾性支持経路を介して車体フレーム3に支持される。エンジンの残りの静荷重は、油圧アクチュエータ6のチャンバ17内の油圧に基づいて、先端面11が取付けプレート5に当接したピストン10、チャンバ17内のオイル及びシリンダ8を経る油圧支持経路を介して車体フレーム3に支持される。ラバーマウント4による荷重支持により、ピストン10の変位を抑制するための微妙な油圧調整が不要になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンをラバーマウントと油圧アクチュエータとによって車体フレームに支持するエンジンマウントにおいて、前記エンジンの荷重は、前記ラバーマウントを経る弾性支持経路、及び前記弾性支持経路に対して並列関係にある前記油圧アクチュエータを経る油圧支持経路を介して前記車体フレームに並列に支持されることを特徴とするエンジンマウント。
【請求項2】 前記油圧アクチュエータは、内部に油圧の供給を受けるチャンバが形成されたシリンダを有するアクチュエータ本体と前記シリンダ内に相対移動可能に設けられ且つ前記チャンバ内の油圧の作用を受けて前記エンジンの荷重を支持可能なピストンとから構成され、前記ラバーマウントは、前記アクチュエータ本体と前記エンジン又は前記アクチュエータ本体と前記車体フレームとの間に配置されており、前記弾性支持経路は前記ラバーマウントに直列に前記アクチュエータ本体を経ることを特徴とする請求項1に記載のエンジンマウント。
【請求項3】 前記油圧アクチュエータは前記エンジン側において前記ピストンが挿通可能な開口部を有しており、前記ラバーマウントは前記エンジンと前記アクチュエータ本体との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジンマウント。
【請求項4】 前記ラバーマウントは、前記ピストンの軸線の周りに配置された一つ又は複数のラバー体から構成されていることを特徴とする請求項3に記載のエンジンマウント。
【請求項5】 前記ピストンが挿通される前記アクチュエータ本体の前記開口部には環状ゴムの外周部が加硫接着されており、前記ピストンは前記環状ゴムの内周部に対して加硫接着されているか又はOリングによって密封状態に摺動可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載のエンジンマウント。
【請求項6】 前記チャンバの底部には、前記ピストンの下端部に当接して前記ピストンの下降量を制限するストッパが配設されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のエンジンマウント。
【請求項7】 前記ラバーマウントは前記エンジンに対して取付けプレートを介して取り付けられており、前記ピストンは前記取付けプレートに対して当接することにより前記エンジンの荷重を支持することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のエンジンマウント。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車等の車両においてエンジンを車体に対してラバーマウントと油圧アクチュエータとで支持するエンジンマウントに関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンを車体に取り付けるに際して、エンジンの振動や騒音が車体に伝わらないようにするために、従来から、ラバーマウントと呼ばれる防振ゴムが使用されている。しかし、発生する振動や騒音の大きさはエンジンの運転状態によって違うだけでなく、振動には大きな振動もあれば、細かく速く繰り返す振動もあり、振動の方向も様々であるため、ラバーマウントのみで、エンジンの支持において問題となる現象をすべて解決するということはできない。
【0003】エンジンの支持において問題となる現象には、しゃくり、シェーク、こもり音(車内音)等がある。しゃくりは、急加速時又は急減速時にエンジンのローリング振動及び駆動系のねじり振動により車体が前後方向に振動する現象である。シェークは、例えば、車両が縁石に乗り上げたり、或いは高速走行時に走行路面の凹凸が強制源となってエンジンが上下方向に緩慢に振動し、車体が振動する現象である。しゃくり及びシェークを低減するためには、ラバーマウントのばね定数と減衰係数が大きいことが要求される。一方、こもり音は、エンジンの回転数に同期した次数成分の振動でエンジン及び駆動系の比較的小振幅の振動が原因であって、この振動がラバーマウントを経て車体に伝わり、車室内に共鳴を発生する現象である。こもり音を低減するためには、ラバーマウントのばね定数及び減衰係数を小さくすることが要求される。
【0004】エンジンの支持において、しゃくり、シェーク、こもり音以外にも、エンジンのアイドリング運転時に生じやすいアイドル振動が問題となる。アイドル振動は、エンジンのローリング共振周波数とエンジンの回転数による振動の周波数が一致することにより生じるものであり、特に、横置きエンジン車において問題となる。アイドル振動を低減するには、エンジンのローリング方向の共振周波数を低減するためラバーマウントのばね定数及び減衰係数が小さいことが要求される。
【0005】本特許出願人は、先に、ゴムマウントをエンジンに取り付け、車体側に取り付けられたシリンダと前記シリンダ内に相対移動可能に設けられ且つ前記シリンダに形成されたチャンバに供給される油圧の作用を受けて前記ゴムマウントに変位を与えるピストンからアクチュエータを構成し、電磁バルブで前記チャンバ内の前記油圧を制御し、トルク変動検出手段が検出したエンジンのトルク変動が所定の高周波域に達したときにコントローラからの開閉指令信号による前記油圧の制御を停止して前記ゴムマウントで振動を吸収することにより、主にアイドル振動やアイドリング付近のエンジン回転数における室内音(こもり音)を低減するとともに、高周波成分の振動をアクチュエータの上部に配設したゴムマウントによって吸収して振動及び騒音を低減することを可能にした油圧式ハイブリッドマウント装置を提案している(特願平10−204060号)。
【0006】図5には、従来のエンジンマウントの断面図が示されている。図5に示されたエンジンマウントは、例えば図6に示すような、上記特願平10−204060号に開示されている油圧回路によって制御される。図5に示すエンジンマウント40は、エンジンブラケット2側に配設されたラバーマウント4と、車体フレーム3側に配設された油圧アクチュエータ6とから構成されている。ラバーマウント4は、マウントゴム4aとその端面に取り付けられた端板4d,4eとから構成されており、一側でエンジンブラケット2に取り付けられ、他側には取付けプレート19が取り付けられている。油圧アクチュエータ6は、アクチュエータ本体7と、アクチュエータ本体7に摺動自在に配設されているピストン10とから構成されている。アクチュエータ本体7は、車体フレーム3に取り付けられたシリンダ8と、シリンダ8の開口8aを覆うカバー9とから成る。ピストン10は、シリンダ8内に相対移動可能に設けられており、シリンダ8内のチャンバ17に供給される油圧の作用を受けて取付けプレート19を介してラバーマウント4に加わる荷重を支える。この例では、ピストン10は、ラバーマウント4の取付けプレート19に固定されている。
【0007】シリンダ8は筒状形状を有しており、底部が車体フレーム3に対して力センサ14を介して取り付けられている。カバー9の開口部9bに環状ゴム13の外周部13bが加硫接着されており、ピストン10は環状ゴム13の内周部13aに加硫接着されている。ピストン10は、環状ゴム13の弾性変形によってアクチュエータ本体7に対して相対移動可能である。環状ゴム13は、アクチュエータ本体7内に形成されるチャンバ17内を密封する機能を果たしている。ピストン10は、鍔状のストッパ18を備えており、ストッパ18はカバー9の下面9aと当接可能である。シリンダ8の側壁には後述する油圧回路に接続される連絡管22が接続されている。ピストン10に大きな外力が加わったときに、ピストン10の下端面12がシリンダ8の底面16に当接することで、ピストン10の後退位置が規制され、環状ゴム13の過度の変形が防止される。油圧がチャンバ17に供給されていない状態では、ピストン10は底面16に当接しているが、エンジンが始動すると、チャンバ17内に供給されるオイルによってチャンバ17内の油圧が上昇し、ピストン10の下端面12は底面16から離れ、エンジン荷重はチャンバ17内の油圧で支えられる。エンジンの振動の原因となるトルク変動を検出する場合、力センサ14に代えて、チャンバ17内の油圧を検出する圧力センサ、又はカムパルスのようなエンジン出力軸の2回転に1回の信号をトリガーとして検出するセンサを用いてもよい。
【0008】図6は、図5に示すエンジンマウントに油圧を供給する油圧供給装置の一例を示すブロック図である。図6に示すように、油圧アクチュエータ6への油圧の給排をするための油圧回路は、オイルが収容されているリザーバ20と、リザーバ20からオイルを汲み上げる油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から連絡管22に至る油圧管に配設された保持バルブ23と、連絡管22からA点で接続されリザーバ20に至る油圧管24に配設された減圧バルブ25とから構成されている。保持バルブ23と減圧バルブ25とは、例えば、ON/OFFのデューティ比を変えることにより流量制御を行うことができるソレノイド弁である。油圧源となる油圧ポンプ21は、油圧アクチュエータ6にかかるエンジンの動的荷重の最大値(即ち、静的荷重と動的な荷重変動を加えた荷重)に対応する圧力より高い圧力を発生することができるポンプである。
【0009】油圧アクチュエータ6はエンジンブラケット2からエンジン出力のトルク変動に起因した力を受けるため、油圧アクチュエータ6内に生じる油圧の変動は、車体フレーム3に伝達され、車体側に振動や騒音が伝わることになる。コントローラ26は、力センサ14で検出されたエンジンブラケット2から車体フレーム3へ伝達される力の信号をフィードバック信号として受信し、変動する伝達力に応じた指令信号を保持バルブ23及び減圧バルブ25に出力する。保持バルブ23と減圧バルブ25との開閉は、互いに逆相となるように制御されている。保持バルブ23が閉じる方向にあるときには、減圧バルブ25は開く方向にあり、油圧アクチュエータ6内に供給される油圧は徐々に下降していく。逆に、保持バルブ23が開く方向にあるときには、減圧バルブ25は閉じる方向にあり、油圧アクチュエータ6内に供給される油圧は上昇していく。
【0010】コントローラ26は、保持バルブ23及び減圧バルブ25の開閉を制御して、カムパルス等のエンジン出力軸の2回転に1回の信号をトリガとして、エンジンブラケット2と車体フレーム3との間に生じる力と位相が逆の制御油圧を油圧アクチュエータ6に与える。その結果、制御油圧によってチャンバ17内の油圧変動が相殺され、油圧アクチュエータ6内の油圧は一定となって油圧変動を抑制することができ、車体側フレーム3に対する加振力は低減される。
【0011】エンジンマウント40は、チャンバ17内の油圧が高すぎるとピストン10が上昇してストッパ18がカバー9の下面9aと衝突し、ピストン10の振動がシリンダ8に伝わる。チャンバ17内の油圧が低すぎても、ピストン10が下降して下端面12が底面16に衝突し、ピストン10の振動がシリンダ8に伝わる。このように、エンジンの加振力がエンジンブラケット2を介して油圧アクチュエータ6のシリンダ8とカバー9とに伝達され、アクティブマウントとしての効果を低減している。したがって、油圧アクチュエータ6に与える油圧にはピストン10をカバー9と底面16とに衝突させないような微妙な設定が必要であり、コントローラ26の制御内容を複雑にしている。また、ピストン10と取付けプレート19とが固定されているため、エンジンブラケット2に大きく捩じれる変形が生じると、取付けプレート19を介してピストン10に無理な力が作用し、油圧アクチュエータ6が損傷を受ける可能性がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このように、エンジンの静荷重をすべて油圧アクチュエータで支持しようとすると、エンジン側と油圧アクチュエータのピストンとを連結する必要が生じ、しかも油圧アクチュエータの油圧力によってピストンの位置が大きく変化する。そこで、油圧の大きさによってエンジン側の支持の状態が大きく変化するのを防止するため、エンジンの静荷重の支持を油圧アクチュエータのみに依らないで行う点で解決すべき課題がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は、上記課題を解決することであり、エンジンの静荷重をラバーマウントと油圧アクチュエータとで分担して支持することにより、油圧アクチュエータの油圧の変動によってピストンによるエンジンの荷重の支持状態が大きく変化するのを防止することができるエンジンマウントを提供することである。
【0014】この発明は、エンジンをラバーマウントと油圧アクチュエータとによって車体フレームに支持するエンジンマウントにおいて、前記エンジンの荷重は、前記ラバーマウントを経る弾性支持経路、及び前記弾性支持経路に対して並列関係にある前記油圧アクチュエータを経る油圧支持経路を介して前記車体フレームに並列に支持されることを特徴とするエンジンマウントに関する。
【0015】このエンジンマウントによれば、ラバーマウントが含まれる弾性支持経路と、油圧アクチュエータが含まれる油圧支持経路とは並列関係に配置されているので、油圧アクチュエータのアクチュエータ本体内に形成されたチャンバに供給される油圧に基づく支持力が油圧支持経路を介してエンジンの荷重の一部を支持して車体フレームに伝達し、ラバーマウントによる支持力が弾性支持経路を介してエンジンの残りの荷重を支持して車体フレームに伝達する。従って、油圧アクチュエータの油圧が多少変動しても、ラバーマウントが静荷重の一部を支持しているので、直ちに油圧アクチュエータのピストンに大きな変位が生じることがない。
【0016】このエンジンマウントにおいて、前記油圧アクチュエータは、内部に油圧の供給を受けるチャンバが形成されたシリンダを有するアクチュエータ本体と前記シリンダ内に相対移動可能に設けられ且つ前記チャンバ内の油圧の作用を受けて前記エンジンの荷重を支持可能なピストンとから構成され、前記ラバーマウントは、前記アクチュエータ本体と前記エンジン又は前記アクチュエータ本体と前記車体フレームとの間に配置されており、前記弾性支持経路は前記ラバーマウントに直列に前記アクチュエータ本体を経ている。このような構造とすると、ラバーマウントが支持するエンジンの荷重の一部は、車体フレームに直接伝達されるのではなく、アクチュエータ本体を介して車体フレームに伝達される。エンジンマウントは、ラバーマウントの横方向の広がりがアクチュエータ本体の横断面内に納められるので、横方向にコンパクトになる。
【0017】このエンジンマウントにおいて、前記アクチュエータ本体は前記エンジン側において前記ピストンが挿通可能な開口部を有しており、前記ラバーマウントは前記エンジンと前記アクチュエータ本体との間に配置されている。ラバーマウントが設けられている側に進退することになるピストンのストロークは、ラバーマウントの高さ内に納められ、エンジンマウントは、高さ方向にコンパクトになる。
【0018】このエンジンマウントにおいて、前記ラバーマウントは、前記ピストンの軸線の周りに配置された一つ又は複数のラバー体から構成されている。一つのラバー体とする場合には、断面で見て円形又は多角形状の環状ラバー体とし、複数のラバー体とする場合には、各ラバー体をシリンダの軸線の周りに環状に配置することが好ましい。ラバーマウントのこのような配置により、油圧アクチュエータのピストンに無理な力が作用せず、ラバーマウントと油圧アクチュエータとによるエンジンの支持のバランスがよくなり、エンジンの安定した支持が可能となる。
【0019】前記ピストンが挿通される前記アクチュエータ本体の前記開口部には環状ゴムの外周部が加硫接着されており、前記ピストンは前記環状ゴムの内周部に対して加硫接着されているか又はOリングによって密封状態に摺動可能である。カバーとピストンとの間には環状ゴムを配設して、チャンバを密封状態に形成すると共に、ピストンがカバーを通して進退可能とされている。
【0020】前記チャンバの底部には、前記ピストンの下端部に当接して前記ピストンの下降量を制限するストッパが配設されている。エンジンに作用する荷重が過大になると、ピストンがチャンバ内を大きく下降することがある。チャンバの底部にピストンの下降量を制限するストッパを配設することにより、ピストンの下端部がストッパに当接してそれ以上の下降を阻止する。したがって、ラバーマウントの過大な変形とそうした変形による損傷が防止される。
【0021】前記ラバーマウントは前記エンジンに対して取付けプレートを介して取り付けられており、前記ピストンは前記取付けプレートに対して当接することにより前記エンジンの荷重を支持している。ピストンはエンジン側に固定されておらず単に当接しているだけであるので、エンジンの振動等に起因して大きな変位が生じ、その変位がピストンに作用することがあっても、ピストンはその移動方向に変位するのみであり、ピストンを損傷させる可能性がある捩じりをピストンに生じさせることがない。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明によるエンジンマウントの実施例を説明する。図1はこの発明によるエンジンマウントの一実施例を示す断面図であり、エンジン荷重と油圧とがかかっていない非作動状態を示している。図2は図1に示すエンジンマウントにおいて、ラバーマウントがエンジンの荷重を支持しているが油圧アクチュエータが非作動である状態を示す断面図であり、図3は図1に示すエンジンマウントにおいて、ラバーマウントと油圧アクチュエータとがエンジンの荷重を支持している状態を示す断面図である。図1〜図3に示すこの発明によるエンジンマウントにおいて、図5に示す従来のエンジンマウントに用いられた構成要素及び部位と同等のものには同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】この発明によるエンジンマウント1は、図1に示すように、エンジンをエンジンブラケット2を介してラバーマウント4と油圧アクチュエータ6とで並列に分担して車体フレーム(又はクロスメンバー)3に支持する装置である。油圧アクチュエータ6に圧油を供給するための油圧供給装置は、例えば、図6に示す装置を適用することができる。エンジンマウント1において、油圧アクチュエータ6は、ピストン10がチャンバ17に供給される油圧の作用を受けてエンジンの荷重の一部を支持する。ピストン10は環状ゴム13の内周部13aに対して加硫接着されているか又はOリング(図示せず)によって密封状態に摺動可能である。ピストン10とカバー9との間は、単に両者間の微小隙間によってシールするようにしてもよい。アクチュエータ本体7内に形成されるチャンバ17の底部には、ピストン10の下端部12に当接してピストン10の下降量を制限するストッパ15が配設されている。なお、ストッパ15は、ラバー等の緩衝材から成り、ピストン10がストッパ15に衝突するときの衝撃を吸収する役割も有する。
【0024】ラバーマウント4は、エンジンブラケット2と油圧アクチュエータ6との間に配置されている。詳細には、ラバーマウント4は、エンジンブラケット2側では、エンジンブラケット2に取り付けられた取付けプレート5と油圧アクチュエータ6のカバー9との間に配置されているマウントゴム4aから成る。マウントゴム4aは、取付けプレート5とカバー9とに対しては、それぞれ端板4b,4cを介して取り付けられている。エンジンからエンジンブラケット2を介してラバーマウント4に加わる荷重は、カバー9を介してシリンダ8から車体フレーム3に伝達される。ラバーマウント4は、ピストン10の移動方向の軸線の周りに配置されており、エンジン荷重の支持バランスの観点からすると、一つの環状体又は環状に連なった複数のラバー体から構成することが好ましい。
【0025】エンジンマウント1は、図1に示す状態では、エンジンブラケット2が描かれているが、油圧アクチュエータ6のチャンバ17内には油圧が供給されておらず、エンジン取付け直前のようなエンジン荷重を何ら支持していない自由状態にある。この状態では、ラバーマウント4は自由状態にあり、油圧アクチュエータ6のピストン10は下降した位置にある。ピストン10の下端面12はストッパ15に当接し、且つ先端面11は取付けプレート5の下面5aから離間している。
【0026】エンジン荷重がエンジンブラケット2を介してエンジンマウント1に加わる場合、油圧アクチュエータ6が非作動状態にあるときには、エンジン荷重はラバーマウント4に伝達される。エンジン荷重の一部は、ラバーマウント4から油圧アクチュエータ6のアクチュエータ本体7、即ち、カバー9及びシリンダ8を経る弾性支持経路を介して車体フレーム3に伝達される。このとき、図2に示すように、取付けプレート5がピストン10の先端面11に当接し、ピストン10の下端面12がストッパ15に当接しているので、エンジン荷重の残りはピストン10、ストッパ15を介して車体フレーム3に伝達される。
【0027】エンジンが始動すると、チャンバ17に油圧が供給されて油圧アクチュエータ6が作動状態となる。チャンバ17内の油圧はピストン10の下端面12に作用して、油圧とピストン10の断面積との積で求められる力がピストン10を上昇させる力となる。エンジン荷重は、図3に示すように、ラバーマウント4からラバーマウント4と直列に配置されているアクチュエータ本体7を経る弾性支持経路を介して支えられると共に、油圧アクチュエータ6において先端面11が取付けプレート5の下面5aに当接するピストン10及びチャンバ17内のオイルを介した油圧支持経路を介して車体フレーム3に支えられる。エンジン荷重は、ラバーマウント4によってもその変形量に応じて支持されるので、油圧アクチュエータ6のチャンバ17内の油圧の大きさ及びピストン10の変位には大きな変化が生じず、安定してエンジンを支持することができる。その結果、ピストン10の位置が大きく上下しないようにするための微妙な油圧調整が不要となる。
【0028】上記の実施例では、油圧アクチュエータ6については、ピストン10をエンジン側に設け、シリンダ8を車体フレーム3側に設けると共に、ラバーマウント4については、油圧アクチュエータ6のアクチュエータ本体7とエンジンとの間に配設しているが、この発明によるエンジンマウントは、この実施例として示した配置に限定されるものではないことは明らかである。即ち、油圧アクチュエータ6については、ピストン10を車体フレーム3側に設け、シリンダ8をエンジン側に設けてもよい。また、ラバーマウント4についても、油圧アクチュエータ6の構造に関わらず、油圧アクチュエータ6のアクチュエータ本体7と車体フレーム3との間に配設してもよい。
【0029】図4には、この発明によるエンジンマウントの別の実施例が、断面図として示されている。図4に示す実施例は、図3と同様、エンジン荷重をラバーマウントと油圧アクチュエータとで支持している状態にある。図4に示すエンジンマウント30は、図1〜図3に示すエンジンマウント1における油圧アクチュエータ7の構成要素及び部位と同等の機能を奏するものには同じ符号を付しており、重複する説明を省略する。エンジンマウント30において、油圧アクチュエータ6とで並列に分担して車体フレーム(又はクロスメンバー)3に支持するラバーマウント34は、エンジンブラケット32と車体フレーム3との間に直接配設されている。ラバーマウント34は、ピストン10の移動方向の軸線の周りにおいて、油圧アクチュエータ6の外側を取り囲む状態に配設されている。なお、油圧アクチュエータ6のシリンダ8と車体フレーム3との間に配設された力センサ36は、油圧アクチュエータ6を介して支持するエンジン荷重を検出する。
【0030】ラバーマウント34は、エンジンブラケット32側の取付けプレート35に対して取り付けられた端板34b、車体フレーム3に取り付けられた端板34c、及び両端板34b,34c間に取り付けられたマウントゴム34aから成る。エンジンからエンジンブラケット32を介してラバーマウント34に加わる荷重は、直接に車体フレーム3に伝達される。この実施例では、弾性支持経路は、ラバーマウント34自体で形成されている。また、ラバーマウント34によるエンジン荷重の支持は、図1〜図3に示すエンジンマウント1の場合よりも、油圧アクチュエータ6によるエンジン荷重の支持の一層の外側において行われ、エンジン荷重の支持が一層安定する。エンジン運転時において、チャンバ17に油圧が供給されて油圧アクチュエータ6が作動状態となり、エンジン荷重は、一部がラバーマウント34を介してその変形量に応じて支えられ、残る荷重がチャンバ17内の油圧に基づく力でピストン10、及びアクチュエータ本体7を経る油圧支持経路を介して車体フレーム3に支えられる。エンジンマウント30のその他の作動は、図1〜図3に示すエンジンマウント1と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0031】
【発明の効果】この発明によるエンジンマウントは、上記のように、エンジンと車体フレームとの間において、並列関係にある、ラバーマウントを経る弾性支持経路と油圧アクチュエータを経る油圧支持経路とを介してエンジン荷重を並列に分担して支持しているので、ラバーマウントがその変形量に応じてエンジン荷重の一部を支持しており、油圧アクチュエータの油圧やピストン変位には大きな変化が現れず、ピストンを移動させる原因となるチャンバ内の油圧を微妙に調整する必要がなくなる。また、油圧アクチュエータのピストンとエンジン側の取付けプレートとを固定しないため、エンジン側に大きな変位が生じても、ピストンには捩じるような大きな力が作用せず、ピストンはラバーマウントの変形の範囲内で移動方向に変位するだけであるので、ピストンの耐久性が向上し、油圧アクチュエータの寿命を長期化することができる。
【出願人】 【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月5日(1999.10.5)
【代理人】 【識別番号】100108567
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅夫
【公開番号】 特開2001−108012(P2001−108012A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−284831