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【発明の名称】 車両用継手
【発明者】 【氏名】三木 健二

【氏名】村井 教恭

【要約】 【課題】回転軸の剛性もしくは強度を低下させることなく、回転軸に入力される振動が出力側に伝達されることを抑制する。

【解決手段】インターミディエイトシャフト4とドライブシャフト1とが、等速自在継手5介して動力伝達可能に連結され、かつ、ドライブシャフト1とシャフト18とが等速自在継手19により接続されている車両用継手において、ドライブシャフト1における回転力の入力側に、ドライブシャフト1の曲げ一次振動モードの節C1を設定するバランスウェイト10が、ドライブシャフト10に取り付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸における回転力の入力側および出力側が、入力側伝達部材および出力側伝達部材に接続されている車両用継手において、前記回転軸の入力側または前記出力側の少なくとも一方が、曲げ一次振動の節となるように、前記回転軸に調整錘が取り付けられていることを特徴とする車両用継手。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の動力伝達装置の一部に配置される継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両に搭載されているエンジンの回転力(トルク)は、トランスミッション、プロペラシャフト、ドライブシャフトなどの動力伝達装置を介して車輪に伝達される。これらの動力伝達装置のうち、プロペラシャフトやドライブシャフトなどの回転軸は、回転力の入力側および出力側が、入力側伝達部材および出力側伝達部材に接続された状態で回転し、トルクを伝達するように構成されている。なお、出力側伝達部材は、ナックルアームなどの構成部材に接続されている。このため、エンジンおよびトランスミッションなどのパワープラントからの強制力によって回転軸に曲げ一次振動が発生すると、この振動がナックルアームを介してボデーに伝達され、さらにはドライバーに伝達されて、振動もしくはこもり音、ギャノイズ、エンジンノイズをドライバーに感知させる。
【0003】このようなこもり音は、回転軸の共振周波数を、車両の走行時におけるエンジン回転数の常用域から外すように高く設定すれば低減することができる。これは回転軸を中空化することにより可能であり、このように回転軸を中空化する技術の一例が、特開平6−281010号公報に記載されている。この公報に記載された車両用継手は、駆動軸と従動軸(回転軸)とを等速ジョイントにより連結するとともに、従動軸の端部に小径孔を形成することにより、従動軸の中空化を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報のように構成すれば、回転軸の共振周波数を高くすることができ、こもり音の原因になりにくい。しかしながら、回転軸の中空化は限界がある。すなわち、回転軸の内径をある程度まで大きくすると質量は減るので、共振周波数を高くすることはできるが、回転軸の剛性もしくは強度が低下する。その結果、回転軸の動力伝達機能および耐久性が低下するという別の問題が生じる可能性がある。
【0005】この発明は上記事情を背景としてなされたもので、回転軸の剛性もしくは強度を低下させることなく、回転軸の入力される振動が出力側に伝達されることを抑制することのできる車両用継手を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記目的を達成するためこの発明は、回転軸における回転力の入力側および出力側が、入力側伝達部材および出力側伝達部材に接続されている車両用継手において、前記回転軸の入力側または前記出力側の少なくとも一方が、曲げ一次振動の節となるように、前記回転軸に調整錘が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】この発明によれば、回転軸の曲げ一次振動の節を、回転力の入力側に近づけることができるため、回転軸に対して半径方向の振動が入力された場合でもその振動が出力側に伝達されにくくなる。また、回転軸自体に加工を施す必要がないので、その強度もしくは剛性の低下が抑制される。
【0008】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の車両用継手を図面に基づいて説明する。図2はこの発明の車両用継手をドライブシャフト(言い換えれば継手シャフト)1を含む構成要素に適用した場合の平面図であり、ドライブシャフト1により、デファレンシャル2とアクスルハブ(サスペンションホイール)3とが接続されている。このデファレンシャル2には、エンジン(図示せず)の動力がトランスミッション(図示せず)を経由して入力される。デファレンシャル2はリングギヤ、ピニオンギヤ、サイドギヤなどを備えた公知の構造のものであり、サイドギヤにはインターミディエイトシャフト4が接続されている。このインターミディエイトシャフト4とドライブシャフト1の一端とが等速自在継手5により連結されているとともに、ドライブシャフト1の他端とアクスルハブ3のシャフト18とが等速自在継手19により連結されている。そして、アクスルハブ3には車輪20が取り付けられている。
【0009】図1は、ドライブシャフト1とインターミディエイトシャフト4との連結部分の第1の実施形態を示す図である。等速自在継手5は、有底円筒形状のアウターレース6と円筒形状のインナーレース7とを備えている。アウターレース6はインターミディエイトシャフト4の端部に形成され、インナーレース7はドライブシャフト1の端部に取り付けられている。アウターレース6の内側に円周方向に形成されている突出部6A、およびインナーレース7の外周面には、それぞれボール溝が円周方向に沿って複数形成されているとともに、これらのボール溝によりボール8が保持されている。
【0010】上記構成の等速自在継手5により、ドライブシャフト1とインターミディエイトシャフト4とが連結され、ドライブシャフト1およびインターミディエイトシャフト4を車両に取り付けると、ドライブシャフト1の軸線A1と、インターミディエイトシャフト4の軸線B1とに所定の交差角が設定される。
【0011】また、ドライブシャフト1におけるインターミディエイトシャフト4側の端部には、軸線方向に雌ねじ部9が形成され、この雌ねじ部9に対してバランスウェイト10がねじ込まれている。このバランスウェイト10は、頭部11および雄ねじ部12を有するねじ部材であり、その雄ねじ部12が雌ねじ部9にねじ込まれている。さらに頭部11には、インターミディエイトシャフト4側から見た形状が六角形の締め付け用穴13が形成されている。上記構成のバランスウェイト10は金属材料、例えば鉄により一体成形されている。
【0012】前記ドライブシャフト1は、その軸線方向の所定位置毎に、その直径(つまり太さ)が異なる。すなわち、インターミディエイトシャフト4側の端面14側に大径部15が形成され、この大径部15に対してテーパ部16が接続され、このテーパ部16に小径部17が接続されている。頭部11の外径は、大径部15の外径よりも大きく設定されている。
【0013】一方、等速自在継手19は、シャフト18に接続された円筒形状のアウターレース20と、ドライブシャフト1の端部に固定された円筒形状のインナーレース21と、アウターレース20とインナーレース21との間に保持された複数のボール22とを有している。また、この等速自在継手19も等速自在継手5と同様に構成されているとともに、ドライブシャフト1のアクスルハブ3側の端部にも、前述したバランスウェイト10が取り付けられている。なお、ドライブシャフト1の軸線A1とシャフト18の軸線(図示せず)とには、所定の交差角が設定される。
【0014】ここで、各構成部品の材質や構造形式を説明する。ドライブシャフト1は炭素鋼、炭素鋼鋼管、ボロン鋼などの材料により構成され、アウターレース6,20およびインナーレース7,21は炭素鋼、クロム鋼などの材料により構成され、ボール8,22は軸受鋼などの材料により構成されている。また、等速自在継手5,19の形式としては、クロスグルーブ形、バーフィールド形(ツェッパ形)などを適宜用いることができる。さらに、等速自在継手5,19は、同じ形式のものでもよいし、異なる形式のものでもよい。
【0015】上記のようにして、ドライブシャフト1は長手方向(軸線方向)の両端が、等速自在継手5,19により2点で支持されている。そして、エンジンのトルクがトランスミッションを介してデファレンシャル2に伝達されるとともに、このトルクが等速自在継手5を経由してドライブシャフト1に入力される。具体的には、トルクがアウターレース6からボール8に伝達され、ボール8のトルクがインナーレース7を介してドライブシャフト1に伝達される。ドライブシャフト1に伝達されたトルクは、等速自在継手19を介して車輪20に伝達される。
【0016】このようなトルクの伝達時には、エンジンやトランスミッションなどのパワープラント側におけるエンジンノイズやギヤノイズなどにより、ドライブシャフト1を半径方向に振動させる強制力が入力される。これに対して、この実施形態においては、図3に示すように、ドライブシャフト1の単体の状態における一次曲げ共振モードの節(ノード)C1の位置を、ドライブシャフト1の軸線方向における回転力(トルク)の入力点D1、およびドライブシャフト1から等速自在継手19にトルクが出力される出力点E1側に移動させている。
【0017】具体的には、入力点D1および出力点E1と節C1とが同じ位置に設定されている。すなわち、ドライブシャフト1の両端の半径方向の移動に対する拘束力が少なくなり、いわゆるフリーの状態になっている。このドライブシャフト1の軸線方向における節C1の位置は、バランスウェイト10の質量または締め付け量の少なくとも一方を変更すれば調整することができる。なお、節C1の調整後は、バランスウェイト10とドライブシャフト1とを溶接して軸線方向の相対移動を防止し、節C1を固定する。
【0018】ここで、実施形態の構成とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ドライブシャフト1がこの発明の回転軸に相当し、バランスウェイト10がこの発明の調整錘に相当し、等速自在継手5がこの発明の入力側伝達部材に相当し、等速自在継手19がこの発明の出力側伝達部材に相当する。
【0019】上記構成により、エンジンおよびトランスミッションにより構成されるパワープラントを起振源とする強制力が生し、この強制力がドライブシャフト1に入力されたとしても出力側には伝達されにくくなる。言い換えれば、ボデーに振動が伝達されることを抑制できる。したがって、車両のこもり音、トランスミッションのギヤノイズ、エンジンノイズなどを含むNV(ノイズバイブレーション;騒音・振動)性能の低下を抑制することができる。なお、本出願人らが、車内音のピーク周波数とドライブシャフト共振周波数との関係を実験的に求めたところ、車内音の変化がドライブシャフト共振に支配されていることが確認された。
【0020】また、ドライブシャフト1の軸線方向における節C1の位置の選択により、NV性能の低下を抑制している。したがって、ドライブシャフト1の曲げ強度や剛性、またはねじり強度や剛性が低下することを回避でき、トルク伝達性能および耐久性を向上することができる。
【0021】さらに、ドライブシャフト1の軸線方向における節C1の位置を調整しており、かつ、バランスウェイト10が鉄製であるために、NV性能の低下を抑制する機能が、車両の周囲の温度、エンジンおよびトランスミッションの振動周波数などの条件に影響されにくく、各種の条件変化に関わりなく、安定したこもりNV性能制御機能を発揮できる。そして、ダイナミックダンパをドライブシャフトに取り付けて曲げ共振を抑制する構成の比較例とこの実施形態とを比較すると、ダイナミックダンパはゴムなどの弾性部材を用いているために、その共振抑制機能が温度、振動周波数などの条件により影響されやすく、実際の振動周波数が目的とする振動周波数から外れやすく、振動低減のための効果を得にくい。
【0022】これに対して、この実施形態では、質量体としてのバランスウェイト10をドライブシャフト1の端部に取り付けるのみである。このため、バランスウェイト10の製造精度が高く振動周波数の調整制度が高めることができる。したがって、ドライブシャフト1に強制力が入力された場合に、ドライブシャフト1から出力される振動伝達力を低減することができる。
【0023】さらに、ドライブシャフト1の軸線方向における節C1の位置を調整しているため、ドライブシャフト1の周辺のスペースが狭められることがない。したがって、ドライブシャフト1の周辺に設けられる他の部品、たとえばスタビライザーなどの取り回しが容易になる。
【0024】また、バランスウェイト10の頭部11がインナーレース7の端面14に接触することにより、バランスウェイト10がインナーレース7とドライブシャフト1とを軸線方向に位置決めする機能、つまり、スナップリングと同様の機能を備えている。したがって、部品点数が低減されて車両用継手の軽量化に寄与でき、かつ、その製造コストを抑制することができる。
【0025】さらに、ドライブシャフト1には、インターミディエイトシャフト4側の端部から軸線方向の中央に向けて外径が細くなるように構成されているため、ドライブシャフト1におけるインターミディエイトシャフト4側の端部側を可及的に重くし易くなり、軽量なバランスウェイト10により、節C1と入力点D1および出力点E1とを同じ位置に設定することができる。
【0026】図4は、ドライブシャフト1とインターミディエイトシャフト4との連結部分の第2の実施形態を示す断面図である。第2の実施形態においては、ドライブシャフト1の軸線方向の外径が一定に設定されている点が、第1の実施形態とは異なる。つまり、第2の実施形態においては、ドライブシャフト1の軸線方向の節C1の位置が、バランスウェイト10の質量またはねじ込み量によってのみ調整されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。また、ドライブシャフト1における等速自在継手19側の端部の構成も、図4の等速自在継手5側の端部の構成と同様であるため、その説明を省略する。この第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0027】図5は、ドライブシャフト1とインターミディエイトシャフト4との連結部分の第3の実施形態を示す断面図である。第3の実施形態においては、ドライブシャフト1とバランスウェイト23との結合形態が、第1の実施形態とは異なる。つまり、第3の実施形態においては、ドライブシャフト1の端部に円柱形状の取付孔24が形成されている。またバランスウェイト23は、半球形状の頭部25Aと円柱形状の軸部25とを有している。
【0028】そして、軸部25を取付孔24に圧入することにより、ドライブシャフト1に対してバランスウェイト23が固定されている。第3の実施形態のその他の構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。また、ドライブシャフト1における等速自在継手19側の端部の構成も、図5の等速自在継手5側の端部の構成と同様である。この第3の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得られる。また、第3の実施形態によれば、軸部25を取付孔24に圧入する量を調整することにより、節C1の位置を調整することができる。さらに、軸部25を取付孔24に圧入するだけの作業により、バランスウェイト23をドライブシャフト1に対して固定することができるため、ドライブシャフト1とバランスウェイト23との組み付け作業性が向上する。
【0029】図6は、ドライブシャフト1とインターミディエイトシャフト4との接続部分の構成の第4の実施形態を示す断面図である。第4の実施形態においては、バランスウェイトの構成が第1の実施形態とは異なる。つまり、第4の実施形態においては、バランスウェイトとしていわゆるボルト26が用いられている。このボルト26は、インターミディエイトシャフト4側から見た形状が六角形の頭部27を有している。第4の実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。また、ドライブシャフト1における等速自在継手19側の端部の構成も、図6の等速自在継手5側の端部の構成と同様である。この第4の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得られる。さらに第4の実施形態においては、バランスウェイトとして既存のボルト26を用いることができるため、格別のバランスウェイトを製造する必要がなく、その製造コストを抑制することができる。
【0030】なお、第1の実施形態ないし第4の実施形態は、ドライブシャフトを対象として説明しているが、この実施形態は、トランスミッションとデファレンシャルとの間の動力伝達経路に設けられるプロペラシャフトに適用することもできる。この場合は、プロペラシャフトとトランスミッションおよびデファレンシャルとを2つの連結装置により別々に連結した車両用継手において、調整錘により、プロペラシャフトの軸線方向における曲げ振動の節を、トランスミッション側のトルク入力点側に移動させることになる。この場合、連結装置としては、等速自在継手の他にフックスジョイントを用いることができる。なお、ドライブシャフト1を対象とする実施形態は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車またはFR(フロントエンジンリヤドライブ)車のいずれにも適用することができる。プロペラシャフトを対象とする実施形態は、FR車に適用される。
【0031】上記の具体例に基づいて開示されたこの発明の特徴的な構成を記載すれば以下のとおりである。すなわち、回転軸の軸線方向における第1の所定箇所(入力点)に回転力が入力され前記軸線を中心として回転するとともに、前記回転軸の軸線方向における第2の所定箇所(出力点)から回転力が出力されるように構成されている車両用継手において、前記回転軸の一次曲げ振動の2つの節を、それぞれ前記第1の所定箇所および前記第2の所定箇所側に移動させる調整錘が、前記回転軸に取り付けられていることを特徴とする。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、回転軸の曲げ一次振動の節を、回転軸における回転力の入力側に力側に近づけることができる。このため、回転軸を半径方向に振動させる強制力が回転軸に入力された際に、この振動が出力側に伝達されにくくなり、こもり音を低減することができる。また、回転軸自体に加工を施す必要がないので、その強度もしくは剛性の低下が抑制され、回転軸の動力伝達機能および耐久性を向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年7月6日(1999.7.6)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2001−21003(P2001−21003A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−192221