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【発明の名称】 電磁クラッチ
【発明者】 【氏名】河田 稔

【氏名】谷垣 龍平

【要約】 【課題】作動中の振動、およびその振動音が小さい電磁クラッチを提供する。

【解決手段】電磁クラッチ1は、外側筒部2a、内側筒部2b、および両筒部2a,2bの一端部を結合するフランジ部2cにより二重円筒形状に形成されたクラッチロータ2、ロータ2の一端部に対向して配置されるアーマチュア3、ロータ2の環状溝部10に内設されてロータ2とアーマチュア3とを磁気的に離接させる磁界14を発生する励磁体としての環状励磁コイル4などから構成される。磁界14によりフランジ部2cのアーマチュア接触面13の外周部側に発生し、かつ各6個の外側ブリッジ部8a〜8fおよび内側ブリッジ部9a〜9fに支持された第2磁極部12bを、アーマチュア3から離れる向きに段差15をつけて形成したので、アーマチュア3とフランジ部2cとが接触しても第2磁極部12bは殆ど加振されず、ロータ2の自励振動およびその振動音を抑制できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内外筒部の一端部間に複数のブリッジ部を介してフランジ部を一体に設けて二重円筒形状に形成されているクラッチロータと、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に対向して、これらに接離可能に配置されているアーマチュアと、前記クラッチロータの環状溝部に内設されて、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に前記アーマチュアを磁気吸引する磁界を発生させる励磁体とを具備する電磁クラッチにおいて、前記フランジ部のアーマチュア対向面のうち外周部側もしくは内周部側の少なくとも一方を、前記励磁体を励磁した際に前記アーマチュアと非接触となるように、前記クラッチロータの軸方向に沿って前記アーマチュアから離れる向きに段差をつけて形成したことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】 前記段差が前記アーマチュア対向面の外周部側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項3】 内外筒部の一端部間に複数のブリッジ部を介してフランジ部を一体に設けて二重円筒形状に形成されているクラッチロータと、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に対向して、これらに接離可能に配置されているアーマチュアと、前記クラッチロータの環状溝部に内設されて、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に前記アーマチュアを磁気吸引する磁界を発生させる励磁体とを具備する電磁クラッチにおいて、前記フランジ部のアーマチュア対向面のうち外周部側もしくは内周部側の少なくとも一方に、10μm以下の凹凸を設けたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項4】 前記凹凸が前記アーマチュア対向面の外周部側に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁クラッチ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車用の空調機器などに用いられる電磁クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】電磁力により動力の伝達、もしくは非伝達を選択して行なうことができる電磁クラッチ101は、例えば、図7に示すように、図示しない外部駆動源により回転駆動されるクラッチロータ102、このクラッチロータ102の一端面に対向して配置されたアーマチュア103、クラッチロータ102とアーマチュア103とを磁気的に接続する環状励磁コイル104、およびこの環状励磁コイル104が内設される環状フィールド105などから構成されている。
【0003】クラッチロータ102は、図9に示すように、同心円かつ有底の二重円筒形状に形成されており、外側筒部102a、内側筒部102b、および外側筒部102aと内側筒部102bとを連結するフランジ部102cなどから構成されている。このクラッチロータ102のフランジ部102cは、クラッチロータ102のアーマチュア103と対向し合う側の端部に設けられており、アーマチュア103との摩擦面としての接触面を形成している。
【0004】また、このクラッチロータ102のフランジ部102cには、図8に示すように、それぞれ6個ずつの円弧形状に形成されている外側スリット106a,106b,106c,106d,106e,106f、および内側スリット107a,107b,107c,107d,107e,107fが、径方向に沿って2列に配列されて、かつ、周方向に沿って等間隔に離間されて設けられている。
【0005】また、隣接する外側スリット106aと外側スリット106bとの間、外側スリット106bと外側スリット106cとの間、外側スリット106cと外側スリット106dとの間、外側スリット106dと外側スリット106eとの間、外側スリット106eと外側スリット106fとの間、外側スリット106fと外側スリット106aとの間には、それぞれ外側ブリッジ部108a〜108fが個別に設けられている。このように、外側スリット106a,106b,106c,106d,106e,106fのそれぞれの間に、外側ブリッジ部108a,108b,108c,108d,108e,108fを設けることにより、フランジ部102cの外周部側が外側筒部102aの一端部に一体に支持されている。
【0006】同様にして、隣接する内側スリット107aと内側スリット107bとの間、内側スリット107bと内側スリット107cとの間、内側スリット107cと内側スリット107dとの間、内側スリット107dと内側スリット107eとの間、内側スリット107eと内側スリット107fとの間、内側スリット107fと内側スリット107aとの間には、それぞれ内側ブリッジ部109a〜109fが個別に設けられている。このように、内側スリット107a,107b,107c,107d,107e,107fのそれぞれの間に、内側ブリッジ部109a,109b,109c,109d,109e,109fを設けることにより、フランジ部102c内周部側が内側筒部102bの一端部に一体に支持されている。
【0007】アーマチュア103は、図示しない外部電源により後述する環状励磁コイル104に電流を流すことにより、環状励磁コイル104が発生する電磁力によって、図7に示すように、クラッチロータ103の一端面に引き付けられる。また、環状励磁コイル104に流れている電流の流れを切ることにより、アーマチュア103はクラッチロータ103の一端面から、ばね113の力によって引き離される。
【0008】環状励磁コイル104は、図7に示すように、後述する環状フィールド105に収納されて、外側筒部102a、内側筒部102b、およびフランジ部102cなどから形成されているクラッチロータ102の環状溝部110に取り付けられている。
【0009】環状フィールド105は、図7に示すように、同心円かつ有底の二重円筒形状に形成されており、その開口端側が前述したクラッチロータ102のフランジ部102cと対向するように、クラッチロータ102の環状溝部110に取り付けられる。前述した環状励磁コイル104は、この環状フィールド105に、その開口端側から嵌め込まれて収納された後、環状フィールド105とともに、クラッチロータ102の環状溝部110に内設される。
【0010】以上説明した構成からなる電磁クラッチ101は、これが有する環状励磁コイル104に電流が流されて励磁状態となり、磁界を発生させ、クラッチロータ102とアーマチュア103とが磁気的に接続されている状態においては、図7中点線で示すように、磁気回路を形成している。
【0011】具体的には、環状励磁コイル104に電流が流されることにより発生した磁束は、環状フィールド105の内部から、環状フィールド105とクラッチロータ102の外側筒部102aとの間の第1空隙111aを通過して、外側筒部102aの内部に進入する。この外側筒部102aの内部に進入した磁束は、外側筒部102aの内部から、クラッチロータ102とアーマチュア103との間の第2空隙111bを通過して、アーマチュア103の内部に進入する。このアーマチュア103の内部に進入した磁束は、アーマチュア103の内部から、アーマチュア103とクラッチロータ102のフランジ部102cとの間の第3空隙111cを通過して、フランジ部102cの内部に進入する。このフランジ部102cの内部に進入した磁束は、フランジ部102cの内部から、フランジ部102cとアーマチュア103との間に形成されて、かつ、前述した第3空隙111cよりも内側に位置する第4空隙111dを通過して、再びアーマチュア103の内部に進入する。このアーマチュア103の内部に進入した磁束は、アーマチュア103の内部から、アーマチュア103とクラッチロータ102の内側筒部102bとの間の第5空隙111eを通過して、内側筒部102bの内部に進入する。この内側筒部102bの内部に進入した磁束は、内側筒部102bの内部から、内側筒部102bと環状フィールド105との間の第6空隙111fを通過して、環状フィールド105の内部に進入する。以上のような経路を経て環状フィールド105の内部に戻った磁束は、環状フィールド105の内部において、前述した環状励磁コイル104が発生している磁束と合流することによって、閉じた磁気回路を形成する。
【0012】また、クラッチロータ102とアーマチュア103とは、前述した励磁状態になると、それらの対向し合っている面の一部同士が互いに接触し合う。これにより、この電磁クラッチ101を作動させると、クラッチロータ102とアーマチュア103とが互いに磁気的に接続されて両者が一体的に回転し、動力の伝達が行なわれる。また、この逆に、環状励磁コイル104の励磁状態を解くと、クラッチロータ102からアーマチュア103が離れて動力の伝達が断たれる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】クラッチロータ102とアーマチュア103とが、互いに磁気的に接続、かつ接触し合うそれぞれの面のうち、クラッチロータ102側の面を、図8および図9に示すように、クラッチロータ102の径方向に沿って、その外側から内側に向かって順番に、第1磁極部112a、第2磁極部112b、第3磁極部112c、第4磁極部112dと称する。
【0014】前述した構成のクラッチロータ102においては、第2磁極部112bは、前述した6箇所の外側ブリッジ部108a,108b,108c,108d,108e,108fによって支持されている。これと同様に、第3磁極部112cは、前述した6箇所の内側ブリッジ部109a,109b,109c,109d,109e,109fによって支持されている。また、第1磁極部112aおよび第4磁極部112dのそれぞれは、クラッチロータ102の周方向に沿って、それらの全面で支持されている。この構成によれば、第2磁極部112bおよび第3磁極部112cは、第1磁極部112aおよび第4磁極部112dに比べて、その剛性が低い。
【0015】また、第2磁極部112bおよび第3磁極部112cは、6箇所の外側ブリッジ部108a,108b,108c,108d,108e,108f、および6箇所の内側ブリッジ部109a,109b,109c,109d,109e,109fによって支持されているとともに、薄肉に形成されているフランジ部102cの一部である。この薄肉のフランジ部102cは、これが形成および加工される際にスプリングバック現象を起こし易く、その厚み方向に波打ったうねり形状に形成され易い。
【0016】さらに、第2磁極部112bおよび第3磁極部112cは、前述したように、剛性が低く、かつ、うねっているため、この電磁クラッチ101の作動中にクラッチロータ102とアーマチュア103とが磁気的に接続された際に、アーマチュア103側の接触面との接触面圧が高くなり易い。
【0017】よって、この電磁クラッチ101は、その作動中に第2磁極部112bおよび第3磁極部112cにおいてフランジ部102cの振動が大きくなり、それにともなって振動音が大きくなる。
【0018】よって、本発明が解決しようとする課題は、作動中の振動が少なく、かつ、その振動音が小さい電磁クラッチを得ることにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明に係る電磁クラッチは、内外筒部の一端部間に複数のブリッジ部を介してフランジ部を一体に設けて二重円筒形状に形成されているクラッチロータと、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に対向して、これらに接離可能に配置されているアーマチュアと、前記クラッチロータの環状溝部に内設されて、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に前記アーマチュアを磁気吸引する磁界を発生させる励磁体とを具備する電磁クラッチにおいて、前記フランジ部のアーマチュア対向面のうち外周部側もしくは内周部側の少なくとも一方を、前記励磁体を励磁した際に前記アーマチュアと非接触となるように、前記クラッチロータの軸方向に沿って前記アーマチュアから離れる向きに段差をつけて形成したことを特徴とするものである。この発明を実施するにあたり、前記段差が前記アーマチュア対向面の外周部側に形成されている構成とするとよい。
【0020】また、前記課題を解決するために、本発明に係る電磁クラッチは、内外筒部の一端部間に複数のブリッジ部を介してフランジ部を一体に設けて二重円筒形状に形成されているクラッチロータと、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に対向して、これらに接離可能に配置されているアーマチュアと、前記クラッチロータの環状溝部に内設されて、前記内外筒部の一端部および前記フランジ部に前記アーマチュアを磁気吸引する磁界を発生させる励磁体とを具備する電磁クラッチにおいて、前記フランジ部のアーマチュア対向面のうち外周部側もしくは内周部側の少なくとも一方に、10μm以下の凹凸を設けたことを特徴とするものである。この発明を実施するにあたり、前記凹凸が前記アーマチュア対向面の外周部側に形成されている構成とするとよい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態に係る電磁クラッチ1を、図1〜図3に基づいて説明する。
【0022】電磁クラッチ1は、二重円筒形状に形成されており、図示しない外部駆動源によって回転駆動される入力部としてのクラッチロータ2と、このクラッチロータ2の一端部に対向して配置されているアーマチュア3と、クラッチロータ2とアーマチュア3とを磁気的に接続したり、あるいは切り離したりする磁界14を発生させる励磁体としての環状励磁コイル4と、この環状励磁コイル4を収納する環状フィールド5とを具備している。
【0023】クラッチロータ2は、図1および図3に示すように、同心の二重円筒形状に形成されている。このクラッチロータ2は、円筒形状に形成されている外側筒部2a、この外側筒部2aよりも小径の円筒形状に形成されている内側筒部2b、および外側筒部2aの一端部(外周磁極)と内側筒部2bの一端部(内周磁極)とを一体に結合するように、内側筒部2bの一端部から外側に張り出して設けられているフランジ部2c(中間磁極)などから構成されている。また、このクラッチロータ2のフランジ部2cは、クラッチロータ2の一端部としての後述するアーマチュア3と対向し合う側の端部に設けられており、そのアーマチュア3と対向する側面には、アーマチュア対向面としてのアーマチュア接触面13(摩擦面とも称される。)が形成されている。
【0024】このクラッチロータ2は、中空の円筒形状に形成されているクラッチベース16の外周部に、軸受17を介して回転自在に取り付けられている。また、このクラッチロータ2は、電磁クラッチ1の入力部であり、外側筒部2aの外周部には、外部駆動源に接続されている図示しない無端ベルトがずれることなく巻き掛けられるように係合溝18が設けられている。これにより、クラッチロータ2は、無端ベルトを介して、外部駆動源によって回転駆動される。
【0025】このクラッチロータ2のフランジ部2cには、図2に示すように、このフランジ部2cを貫通してクラッチロータ2の外側と後述する環状溝部10とを連通する、複数個の外側スリット部6a,6b,6c,6d,6e,6f、および内側スリット部7a,7b,7c,7d,7e,7fが設けられている。6個の各外側スリット部6a,6b,6c,6d,6e,6fは、フランジ部2cの周方向に沿って湾曲した長円形状に形成されているとともに、フランジ部2cの周方向に沿って互いに等間隔に離間させられてフランジ部2cの全周にわたって断続的に同一円周上に位置するように設けられている。また、6個の各内側スリット部7a,7b,7c,7d,7e,7fは、6個の各外側スリット部6a,6b,6c,6d,6e,6fよりも内周側において、フランジ部2cの周方向に沿って湾曲した長円形状に形成されているとともに、フランジ部2cの周方向に沿って互いに等間隔に離間させられてフランジ部2cの全周にわたって断続的に同一円周上に位置するように設けられている。したがって、6個の各外側スリット部6a,6b,6c,6d,6e,6fと、6個の各内側スリット部7a,7b,7c,7d,7e,7fとは、フランジ部2cの径方向に沿って、互いに離間させられて半径の異なる2列の同心円周上に位置するように設けられている。
【0026】隣接する外側スリット部6aと外側スリット部6bとの間、外側スリット部6bと外側スリット部6cとの間、外側スリット部6cと外側スリット部6dとの間、外側スリット部6dと外側スリット部6eとの間、外側スリット部6eと外側スリット部6fとの間、外側スリット部6fと外側スリット部6aとの間には、複数のブリッジ部として、それぞれ外側ブリッジ部8a〜8fが個別に設けられている。このように、外側スリット部6a,6b,6c,6d,6e,6fのそれぞれの間に、外側ブリッジ部8a,8b,8c,8d,8e,8fを設けることにより、フランジ部2cの外周部側が外側筒部2aの一端部に一体に支持されている。
【0027】同様にして、隣接する内側スリット部7aと内側スリット部7bとの間、内側スリット部7bと内側スリット部7cとの間、内側スリット部7cと内側スリット部7dとの間、内側スリット部7dと内側スリット部7eとの間、内側スリット部7eと内側スリット部7fとの間、内側スリット部7fと内側スリット部7aとの間には、複数のブリッジ部として、それぞれ内側ブリッジ部9a〜9fが個別に設けられている。このように、内側スリット部7a,7b,7c,7d,7e,7fのそれぞれの間に、内側ブリッジ部9a,9b,9c,9d,9e,9fを設けることにより、フランジ部2cの内周部側が内側筒部2bの一端部に一体に支持されている。
【0028】以上説明したように、フランジ部2cは、この電磁クラッチ1の作動中にクラッチロータ2とアーマチュア3とが互いに接触し合う際に、クラッチとしての機能を果たせるだけの強度を保持できるように、各外側ブリッジ部8a,8b,8c,8d,8e,8f、および各内側ブリッジ部9a,9b,9c,9d,9e,9fを介して支持されつつ、外側筒部2aの一端部と内側筒部2bの一端部とを一体に結合している。
【0029】アーマチュア3は、図1に示すように、クラッチロータ2の一端面と略同程度の内径および外形からなる薄肉の円環形状に形成されている。それとともに、アーマチュア3は、クラッチロータ2およびクラッチベース16と同一軸線上においてクラッチロータ2のフランジ部2cのアーマチュア接触面13に対向して配置されている。また、アーマチュア3は、クラッチロータ2の軸方向に沿って往復移動することにより、アーマチュア接触面13に対して離接可能に設定されている。
【0030】アーマチュア3の内側には、クラッチロータ2から伝達される駆動力を図示しない外部の被駆動装置に伝達する出力軸としての回転軸19が、クラッチロータ2、アーマチュア3、およびクラッチベース16と同一軸線上に設けられている。それとともに、アーマチュア3の内側には、この回転軸19に固定され一体に回転するハブ20が配置されている。このハブ20の外周部21には、アーマチュア3に一体に取り付けられて、後述する環状励磁コイル4が励磁されていない状態において、アーマチュア3をクラッチロータ2のフランジ部2cのアーマチュア接触面13から引き離す向きに付勢するばね部材22が固定されている。
【0031】アーマチュア3は、図示しない制御部および外部電源を介して後述する環状励磁コイル4に電流を流すことにより、励磁された環状励磁コイル4が発生する磁界14の電磁力によって、前述したばね部材22の付勢力に抗してクラッチロータ2のアーマチュア接触面13に引き寄せられる。アーマチュア3がアーマチュア接触面13に当接することにより、その進行を止められた状態を磁気的な接続状態と称する。アーマチュア3は、図1において、その磁気的な接続状態を示されている。この磁気的な接続状態において、アーマチュア3は回転駆動されているクラッチロータ2とともに回転する。アーマチュア3は、ばね部材22によってハブ20に固定されているので、アーマチュア3が回転すると、ハブ20およびハブ20と一体に回転する回転軸19が回転駆動される。これにより、外部駆動源によって回転駆動されるクラッチロータ2の回転が、回転軸19を介して被駆動装置に伝達される。また、アーマチュア3は、環状励磁コイル4に流れている電流が切られて励磁状態から解放されることにより磁界14が消され、その電磁力がなくなった際には、アーマチュア接触面13から引き離されるように設定されている。この場合、アーマチュア3は回転駆動されるクラッチロータ3とは一体に回転しない。これにより、外部駆動源によって回転駆動されるクラッチロータ2の回転は、被駆動装置に伝達されない。
【0032】環状励磁コイル4は、図1に示すように、後述する環状フィールド5に収納されて、外側筒部2a、内側筒部2b、およびフランジ部2cなどから形成されているクラッチロータ2の環状溝部10に内設されている。この環状励磁コイル4は、制御部および外部電源を介して所定の流量に調節された電流を流されることにより、クラッチロータ2とアーマチュア3とを所定の強さで磁気的に接続させる磁界14を発生する。これにより、クラッチロータ2とアーマチュア3とは、クラッチロータ2のフランジ部2cのアーマチュア接触面13上において互いに接触して摩擦し合う。クラッチロータ2とアーマチュア3とが、互いに摩擦し合う際に発生される摩擦抵抗によって、回転駆動されているクラッチロータ2の回転駆動力がアーマチュア3に伝達される。これにより、クラッチロータ2の回転駆動力が、アーマチュア3を介して被駆動装置に伝達される。
【0033】環状フィールド5は、図1に示すように、有底かつ同心の二重円筒形状に形成されている。この環状フィールド5は、その開口端側が前述したクラッチロータ2のフランジ部2cと対向するように、クラッチロータ2の環状溝部10に取り付けられる。前述した環状励磁コイル4は、この環状フィールド5に、その開口端側から嵌め込まれて収納された後、環状フィールド5とともに、クラッチロータ2の環状溝部10に内設される。
【0034】以上説明した構成からなる電磁クラッチ1は、これが有する環状励磁コイル4に電流が流されて励磁されることにより磁界14が発生され、クラッチロータ2とアーマチュア3とが磁気的に接続されている励磁状態においては、その磁界14は、図1中点線で示すように、磁気回路を形成している。
【0035】具体的には、電流が流されることにより励磁状態にされた環状励磁コイル4が発生する磁界の一部としての磁力線14は、環状フィールド5の内部から、環状フィールド5とクラッチロータ2の外側筒部2aとの間の第1空隙11aを通過して、外側筒部2aの内部に進入する。この外側筒部2aの内部に進入した磁力線14は、外側筒部2aの内部から、クラッチロータ2とアーマチュア3との間の第2空隙11bを通過して、アーマチュア3の内部に進入する。このアーマチュア3の内部に進入した磁力線14は、アーマチュア3の内部から、アーマチュア3とクラッチロータ2のフランジ部2cとの間の第3空隙11cを通過して、フランジ部2cの内部に進入する。このフランジ部2cの内部に進入した磁力線14は、フランジ部2cの内部から、フランジ部2cとアーマチュア3との間に形成されて、かつ、前述した第3空隙11cよりも内側に位置する第4空隙11dを通過して、再びアーマチュア3の内部に進入する。このアーマチュア3の内部に進入した磁力線14は、アーマチュア3の内部から、アーマチュア3とクラッチロータ2の内側筒部2bとの間の第5空隙11eを通過して、内側筒部2bの内部に進入する。この内側筒部2bの内部に進入した磁力線14は、内側筒部2bの内部から、内側筒部2bと環状フィールド5との間の第6空隙11fを通過して、環状フィールド5の内部に進入する。以上の説明した経路を経ることにより、環状フィールド5の内部に戻った磁力線14は、環状フィールド5の内部において、前述した環状励磁コイル4が発生している磁力線14と合流することによって、閉じた磁気回路を形成している。
【0036】また、環状励磁コイル4に電流を流して励磁状態にさせ、磁界14を発生させることにより、クラッチロータ2とアーマチュア3とを磁気的に接続する。この励磁状態において、接触面13上には、図2および図3に示すように、その径方向に沿って外周部側から内周部側に向けて磁界14がクラッチロータ2の内部とアーマチュア3の内部とを交互に出入りする向きにともなって、複数の円環形状の磁極部が生じる。本実施形態においては、接触面13の径方向に沿って、その外周部側から内周部側に向かって順番に、第1磁極部12a、第2磁極部12b、第3磁極部12c、第4磁極部12dの4つの磁極部が生じる。また、本実施形態においては、図2および図3に示すように、それら4つの磁極部のうち、フランジ部2cの径方向において各外側スリット部6a,6b,6c,6d,6e,6f、および各内側スリット部7a,7b,7c,7d,7e,7fによって挟まれている第2磁極部12bおよび第3磁極部12cのうち、外周部側の第2磁極部12bを内周部側の第3磁極部12cよりも、クラッチロータ2の軸方向に沿ってアーマチュア3から離れる向きに段差15をつけて形成した。
【0037】すなわち、第2磁極部12bを、アーマチュア接触面13上の第1磁極部12a、第3磁極部12c、および第4磁極部12dよりも、クラッチロータ2の軸方向に沿ってアーマチュア3から離れる向きにずらして配置した。この段差15のずらした大きさは、電磁クラッチ1の作動中に、環状励磁コイル4が励磁されて回転駆動されているクラッチロータ2とアーマチュア3とが磁気的な接続状態となって互いに当接し合い、アーマチュア3によってクラッチロータ3のフランジ部2cが加振されて振動しても、第2磁極部12bがアーマチュア3と接触し合わない程度に設定されている。
【0038】以上説明した構成からなる電磁クラッチ1によれば、この電磁クラッチ1の作動中に、回転駆動されているクラッチロータ2とアーマチュア3とが磁気的に接続されて互いに接触しても、クラッチロータ2のフランジ部2cのアーマチュア接触面13上の一磁極部である第2磁極部12bとアーマチュア3とが接触しない。これにより、外側ブリッジ部8a,8b,8c,8d,8e,8f、および内側ブリッジ部9a,9b,9c,9d,9e,9fで支持されている剛性の低いフランジ部2cが、アーマチュア3と接触し合うことにより加振されて振動しても、第2磁極部12bがアーマチュア3とぶつかり合うおそれがない。これにより、クラッチロータ2とアーマチュア3との間の摩擦抵抗を所定の大きさに保持しつつ、第2磁極部12bへの加振力を殆どなくすことができる。よって、この電磁クラッチ1のクラッチとしての機能を低下させることなく、クラッチロータ2の振動(ロータ自励振動)を抑制でき、ひいては、そのロータ自励振動による振動音を抑制できる。
【0039】次に、本発明の第2の実施の形態に係る電磁クラッチ31を、図4〜図6に基づいて説明する。
【0040】この第2実施形態の電磁クラッチ31は、そのクラッチロータ32が有しているフランジ部32cの形状が、前述の第1実施形態のフランジ部2cの形状と異なっているだけで、その他の構成、作用、および効果はすべて同じである。よって、その異なっている部分だけについて説明し、その他のすべての説明は省略する。また、図面についても、同一の図面は省略し、本実施形態のクラッチロータ32の特徴をよく理解することのできる図面のみを示し、これら図4〜図6において、前述の第1実施形態と同一部分には同一符号を付してある。
【0041】本実施形態の電磁クラッチ31は、これが有する図示しない環状励磁コイルの励磁状態において、図4中打点部で示すように、クラッチロータ32が有しているフランジ部32cのアーマチュア接触面13上に発生する環状の第2磁極部12bの全周にわたって、その表面に図示しない凹凸が設けられている。その凹凸の大きさ(あるいは、表面粗さおよびうねり許容差とも称される。)は、10μm以下に形成されている。それとともに、第2磁極部12bは、図5に示すように、第1磁極部12a、第3磁極部12c、および第4磁極部12dと同一面上に配設されている。
【0042】この第2実施形態の電磁クラッチ31は、以上説明した点以外は、すべて第1実施形態の電磁クラッチ1と同じであるので、この第2実施形態の電磁クラッチ31を用いることにより、本発明の課題を解決できるのは勿論であるが、前記構成のクラッチロータ32を備えた第2実施形態は、以下の点で優れている。
【0043】第2磁極部12bを、アーマチュア接触面13上において、第1磁極部12a、第3磁極部12c、および第4磁極部12dと同一面上に配設することにより、クラッチロータ32と図示しないアーマチュアとの間の摩擦抵抗を失うおそれが殆どない。それとともに、第2磁極部12bの表面の凹凸の大きさを、その全周にわたって10μm以下に形成することにより、クラッチロータ2とアーマチュアとの間の摩擦抵抗を殆ど失うことなく、かつ、それらの間のなじみを向上できるので、クラッチロータ2とアーマチュアとの接触状態のがたつきを抑制できる。よって、クラッチロータ2とアーマチュアとの間の摩擦抵抗と滑り易さとをバランス良く保持しつつ、第2磁極部12bの振動音を抑制できる。
【0044】具体的には、図6に示すように、第2磁極部12bの表面の凹凸の大きさが10μmを越えると、その大きさにともなって電磁クラッチ1の作動中におけるクラッチロータ2とアーマチュアとが磁気的に接続された状態の作動音(ロータ自励振動音)が次第に増大する。これとは逆に、第2磁極部12bの表面の凹凸の大きさが10μm以下に形成すると、前記作動音を84dB以下に抑制できることが確認できた。
【0045】なお、本発明の電磁クラッチは、前述した第1および第2の実施形態には制約されない。例えば、クラッチロータ2のアーマチュア接触面13上からずらして配設する磁極部は、第2磁極部12bではなくともよく、フランジ部2c上の第3磁極部12cでも構わない。同様に、アーマチュア接触面13上の表面をより滑らかに形成する磁極部は、第2磁極部12bではなくともよく、フランジ部32c上の第3磁極部12cでも構わない。また、クラッチロータ2とアーマチュア3との間の摩擦抵抗を所定の大きさに保持しつつ、ロータ自励振動および、その振動音を抑制できるならば、クラッチロータ2,32の接触面13上の一部をずらして配設したり、あるいは、より滑らかに形成する代りに、このアーマチュア接触面13を有するフランジ部2c全体をより滑り易い材質で形成してもよく、あるいは、フランジ部2cのアーマチュア接触面13をより滑り易い材質でコーティングしても構わない。
【0046】
【発明の効果】本発明に係る電磁クラッチによれば、クラッチロータのフランジ部のアーマチュア対向面のうち外周部側もしくは内周部側の少なくとも一方を、クラッチロータの軸方向に沿ってアーマチュアから離れる向きに段差をつけて形成した。これにより、この電磁クラッチが備える励磁体が励磁状態となり、磁界を発生させてアーマチュアをフランジ部に磁気吸引した際、フランジ部のアーマチュア対向面の一部はアーマチュアと非接触状態を保持できる。よって、この電磁クラッチの作動中に、アーマチュアとフランジ部とが互いに接触し合うことにより発生する摩擦抵抗を軽減できるので、アーマチュアからフランジ部へ加振される力の大きさを軽減でき、フランジ部の振動、およびその振動音を抑制できる。この発明において、段差をフランジ部のアーマチュア対向面の外周部側に形成した構成によれば、アーマチュアとフランジ部との間の摩擦抵抗をより軽減できるので、この電磁クラッチの作動中におけるフランジ部の振動、およびその振動音をより抑制できる。
【0047】また、本発明に係る電磁クラッチによれば、クラッチロータのフランジ部のアーマチュア対向面のうち外周部側もしくは内周部側の少なくとも一方に、10μm以下の凹凸を設けた。これにより、この電磁クラッチが備える励磁体が励磁状態となり、磁界を発生させてアーマチュアをフランジ部に磁気吸引した際、フランジ部のアーマチュア対向面の一部はアーマチュアとより円滑に接触できる。よって、この電磁クラッチの作動中に、アーマチュアとフランジ部とが互いに接触し合うことにより発生する摩擦抵抗を軽減できるので、アーマチュアからフランジ部へ加振される力の大きさを軽減でき、フランジ部の振動、およびその振動音を抑制できる。この発明において、凹凸をフランジ部のアーマチュア対向面の外周部側に形成した構成によれば、アーマチュアとフランジ部との間の摩擦抵抗をより軽減できるので、この電磁クラッチの作動中におけるフランジ部の振動、およびその振動音をより抑制できる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年1月14日(2000.1.14)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
【公開番号】 特開2001−200861(P2001−200861A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−6577(P2000−6577)