| 【発明の名称】 |
等速自在継手 |
| 【発明者】 |
【氏名】後藤 竜宏
【氏名】石黒 重好
【氏名】吉田 和彦
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| 【要約】 |
【課題】耐久性及び強度の向上【解決手段】 トリポード部材20および外側継手部材10の接触面の直下には、浸炭窒化焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭窒化層)形成され、その表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40の範囲内に規制されている。また、ローラアッセンブリを構成する支持リング32、ローラ34、およびニードルローラ36の接触面の直下には、窒化焼入れ焼戻しによる表層部(窒化層)形成され、その表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40の範囲内に規制されている。
【解決手段】トリポード部材20および外側継手部材10の接触面の直下には、浸炭窒化焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭窒化層)形成され、その表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40の範囲内に規制されている。また、ローラアッセンブリを構成する支持リング32、ローラ34、およびニードルローラ36の接触面の直下には、窒化焼入れ焼戻しによる表層部(窒化層)形成され、その表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40の範囲内に規制されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の各脚軸にそれぞれ装着されたローラ機構とを備え、前記ローラ機構は、前記脚軸に対して首振り揺動自在で、前記ローラ案内面に沿って外側継手部材の軸線と平行な方向に案内されるローラを有する等速自在継手において、少なくとも1つの構成部品の表層部における残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40であることを特徴とする等速自在継手。 【請求項2】 前記構成部品が炭素含有量0.15〜0.40wt%の鋼で形成され、前記表層部が浸炭層である請求項1記載の等速自在継手。 【請求項3】 前記構成部品が炭素含有量0.15〜0.40wt%の鋼で形成され、前記表層部が浸炭窒化層である請求項1記載の等速自在継手。 【請求項4】 前記構成部品が炭素含有量0.95〜1.10wt%の鋼で形成され、前記表層部が窒化層である請求項1記載の等速自在継手。 【請求項5】 前記ローラ機構が、前記ローラ案内面に案内されるローラと、前記脚軸の外周面に外嵌されて前記ローラを回転自在に支持する支持リングとを有し、前記支持リングの内周面は円弧状凸断面であり、前記脚軸の外周面は縦断面においてはストレート形状で、横断面においては継手の軸線と直交する方向で前記支持リングの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で前記支持リングの内周面との間にすきまを形成するようになっている請求項1〜4の何れかに記載の等速自在継手。 【請求項6】 前記脚軸の横断面が、継手の軸線と直交する長軸をもった略楕円形である請求項5記載の等速自在継手。 【請求項7】 前記ローラ機構が、前記ローラ案内面に案内されるローラと、前記脚軸の外周面に外嵌されて前記ローラを回転自在に支持する支持リングとを有し、前記脚軸の外周面は凸球状であり、前記支持リングの内周面は円筒状又は円錐状である請求項1〜4の何れかに記載の等速自在継手。 【請求項8】 前記ローラ機構が、前記ローラ案内面に案内される外側ローラと、前記脚軸に回転自在に支持され、前記外側ローラの内周面に嵌合された内側ローラとを有し、前記内側ローラの外周面は凸球状であり、前記外側ローラの内周面は前記内側ローラの外周面との接触位置で脚軸先端側に向いた負荷分力を発生させる形状になっている請求項1〜4の何れかに記載の等速自在継手。 【請求項9】 前記外側ローラの内周面が脚軸先端側に向かって漸次縮径した円錐状である請求項8記載の等速自在継手。 【請求項10】 少なくとも前記接触面に微小な凹部が無数にランダムに形成されている請求項1〜4の何れかに記載の等速自在継手。 【請求項11】 少なくとも前記接触面に化成処理被膜を下地層とする固体潤滑被膜が形成されている請求項1〜4の何れかに記載の等速自在継手。 【請求項12】 少なくとも前記接触面に常温浸硫処理が施されている請求項1〜4の何れかに記載の等速自在継手。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車や各種産業機械等の動力伝達装置に使用される等速自在継手に関し、特にトリポード型等速自在継手に関するものである。 【0002】 【従来の技術】例えば、自動車のエンジンから車輪に回転動力を伝達する動力伝達装置の一要素として(ドライブシャフトやプロペラシャフトの連結用継手として)、トリポード型等速自在継手が用いられている。 【0003】トリポード型等速自在継手は、一般に、内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有し、各脚軸にそれぞれローラを回転自在に配設したトリポード部材とを主体として構成される。トリポード部材の脚軸と外側継手部材のローラ案内面とがローラを介して回転方向に係合することにより、駆動側から従動側に回転トルクが等速で伝達される。また、各ローラが脚軸に対して回転しながらローラ案内面上を転動することにより、外側継手部材とトリポード部材との間の相対的な軸方向変位や角度変位が吸収されると同時に、外側継手部材とトリポード部材とが作動角を取りつつ回転トルクを伝達する際の、回転方向位相の変化に伴う、各脚軸のローラ案内面に対する軸方向変位が吸収される。 【0004】トリポード型等速自在継手としては、上記ローラを複数のニードルローラを介して脚軸の円筒状外周面に装着したものもあるが、外側継手部材とトリポード部材とが作動角をとりつつ回転トルクを伝達する際、脚軸の傾きに伴って各ローラとローラ案内面とが互いに斜交した関係になるので、両者の間に滑りが生じ、その際の摺動抵抗によって各ローラの円滑な転動が妨げられて誘起スラストが大きくなるという問題がある。また、各ローラとローラ案内面との間の摺動抵抗によって、外側継手部材とトリポード部材とが軸方向に相対変位する際のスライド抵抗が大きくなるという問題がある。 【0005】そこで、ローラとローラ案内面との斜交状態を解消して、誘起スラストやスライド抵抗の低減を図るため、脚軸に対するローラの首振り揺動を自在とする機構(ローラ機構)を備えたトリポード型等速自在継手が種々提案され、実用化されている。この種のトリポード型等速自在継手として、例えば、ローラ案内面に案内される外側ローラと、脚軸の外周面に複数のニードルローラを介して回転自在に支持された内側ローラとを備えた構成が知られている。この構成はさらに以下の■〜■の態様に大別することができる。 【0006】■外側ローラの外周面を凸球状(曲率中心が脚軸の軸線上にある「真球面」、曲率中心が脚軸の軸線から外径側にオフセットされている、いわゆる「トーラス面」の双方を含む。)、内周面を円筒状、内側ローラの外周面を凸球状とし、外側ローラの円筒状の内周面と内側ローラの凸球状の外周面との間の滑りによって、外側ローラの首振り揺動を自在としたもの(特公平3−1529号等)。 【0007】■外側ローラの外周面を凸球状(真球面、トーラス面の双方を含む。)、内周面を内側ローラの外周面と線接触する形状、内側ローラの外周面を凸球状とし、外側ローラの内周面と内側ローラの凸球状の外周面との間の滑りによって、外側ローラの首振り揺動を自在とし、かつ、誘起スラストやスライド抵抗を一層低減するため、外側ローラの内周面を内側ローラの外周面との接触位置で脚軸先端側に向いた負荷分力を発生させる形状としたもの(特開平9−14280号等)。 【0008】■ローラ案内面を平坦面、外側ローラの外周面を円筒状、内周面を凹球状、内側ローラの外周面を凸球状とし、外側ローラの凹球状の内周面と内側ローラの凸球状の外周面との間の滑りによって、外側ローラの首振り揺動を自在としたもの(特願平8−4073号、特願平8−138335号)。 【0009】■上記■の構成に加え、ローラ案内面と脚軸の軸線とを作動角が0°の状態で互いに非平行としたもの(特開平11−13779号)。 【0010】また、この種のトリポード型等速自在継手として、■脚軸の外周面を凸球状に形成すると共に、ローラを複数のニードルローラを介して支持リングに組み付けてローラアッセンブリを構成し、支持リングの円筒状の内周面を脚軸の凸球状の外周面に外嵌した構成が知られている(特公平7−117108号、特許2623216号等)。この構成によれば、支持リングの円筒状の内周面と脚軸の凸球状の外周面との間の滑りによって、ローラを含むローラアッセンブリの首振り揺動が自在となる。 【0011】さらに、本出願人は、この種のトリポード型等速自在継手における誘起スラストやスライド抵抗を一層効果的に低減するため、■ローラ案内面に案内されるローラと、脚軸の外周面に外嵌されてローラを回転自在に支持する支持リングとを有し、支持リングの内周面は円弧状凸断面であり、脚軸の外周面は縦断面においてはストレート形状で、横断面においては継手の軸線と直交する方向で支持リングの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で支持リングの内周面との間にすきまを形成するようになっている構成について既に出願している(特願平11−059040号)。この構成によれば、支持リングの円弧状凸断面の内周面と脚軸のストレート形状の外周面との間の滑りによって、ローラを含むローラアッセンブリの首振り揺動が自在となる。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述したようなローラ機構を備えたトリポード型等速自在継手において、構成部品の転動疲労寿命を高め、また割れ等に対する強度を高めることにより、現状のサイズを維持したままより耐久性や強度に優れたトリポード型等速自在継手を提供し、また、現状品と同等以上の耐久性や強度を確保しつつよりコンパクトなトリポード型等速自在継手を提供しようとするものである。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため、本発明は、内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有するトリポード部材と、トリポード部材の各脚軸にそれぞれ装着されたローラ機構とを備え、ローラ機構は、脚軸に対して首振り揺動自在で、ローラ案内面に沿って外側継手部材の軸線と平行な方向に案内されるローラを有する等速自在継手において、少なくとも1つの構成部品の表層部における残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40である構成を提供する。 【0014】一般に、転がり接触面の代表的な疲労形態としてフレーキング(疲れ剥離)がある。すなわち、転がり運動に伴う繰返し応力が接触面に加わると転走部に亀裂が発生し、それがフレーキングに進展して転動疲労寿命に至ることが知られている。多くの実験と経験から、フレーキングの最初の起点である亀裂の多くは、接触面から少し内部に入った部分に発生することが観察されている。また、潤滑剤中に金属摩耗粉等の異物が混入しやすい条件下では、異物噛み込みによる圧痕を起点とする剥離、潤滑油膜が不十分なために生じるピーリングやスミアリング、およびこれらを起点とする割れ(表面起点型損傷)によって、接触面が本来的なフレーキングと同様の損傷形態を呈して転動疲労寿命に至ることが観察されている。後者の場合、接触面の転動疲労寿命は、清浄な潤滑剤による潤滑条件下に比べて短くなる。 【0015】一方、この種の等速自在継手は、構成部品の接触面の表面あらさが通常の転がり軸受に比べて大きく、しかもローラが脚軸に対して首振り揺動する際に、ローラ機構の支持リングと脚軸との接触部、あるいは、ローラ機構の内側ローラと外側ローラとの接触部などに滑りが生じる。そのため、接触部での摩耗粉の発生があり、これが潤滑剤中に混入し、接触面に噛み込まれて、圧痕の生成や潤滑油膜の形成阻害の要因となり、上記の表面起点型損傷が生じ易い傾向にある。 【0016】本発明によれば、少なくとも1つの構成部品の表層部における残留オーステナイト量γR(vol%)を20≦γR≦40の範囲内に規制したので、表層部の亀裂敏感性が改善され、上記の表面起点型損傷が生じにくくなる。これは次の理由による。すなわち、残留オーステナイトは硬度が比較的低く(素材中の炭素含有量によっても異なるが、例えばHv300程度である。)、接触面に異物噛み込みによる圧痕が形成されても、表層部中に分散したオーステナイト粒が圧痕周縁で容易に塑性変形して、表層部での応力集中を緩和し、亀裂伝播を遅延させる。また、残留オーステナイトは、表層部に加わる変形エネルギーによって、マルテンサイト変態を起こして硬化する。そのため、表層部に残留オーステナイトを適正量含ませることにより、表層部の亀裂敏感性を改善し、上記の表面起点型損傷の発生を抑制して、転動疲労寿命を向上させることができる。表層部の残留オーステナイト量γRが20vol%未満であると、表層部の亀裂敏感性を十分に改善することができず、逆に表層部の残留オーステナイト量γRが40vol%を越えても、亀裂敏感性の改善はそれ以上期待できない一方、表面硬さが低下し、却って転動疲労寿命を低下させてしまう結果となる。従って、表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)は、20≦γR≦40の範囲内とするのが良い。尚、本発明における表層部は、構成部品の少なくとも接触面の直下に形成すれば良く、接触面の直下にのみ表層部を形成した構成、接触面およびその周辺の表面の直下に表層部を形成した構成、構成部品の全表面の直下に表層部を形成した構成を含む。 【0017】例えば、外側継手部材、トリポード部材、及びローラ機構を構成する部品のうち少なくとも一つを、炭素含有量0.15〜0.40wt%の鋼で形成すると共に、浸炭焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭層)、あるいは、浸炭窒化焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭窒化層)を形成し、かつ、表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)を20≦γR≦40の範囲内に規制した構成とすることができる。この構成によれば、当該構成部品の表層部は亀裂敏感性が改善されて、転動疲労に対する耐久性に優れた組織になる一方、芯部は靭性をもった組織になる。従って、当該構成部品は高い転動疲労寿命と割れ強度等を兼ね備えたものとなる。特に、浸炭窒化焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭窒化層)を形成した構成では、この効果が顕著である。すなわち、表層部に適切な条件での窒素を複合させると、窒素の侵入により残留オーステナイトや基地(マトリックス)のマルテンサイトが熱に対して安定となり、熱変化しにくい組織になり、転動疲労に対する高い耐性や割れ等に対する高い強度が得られる。また、トリポード部材の脚軸の基端部やセレーション部は、トルク伝達時に捩り応力が集中し、しかもこれらの部分は通常非研削の状態で残されるため、捩り疲労が問題となるが、浸炭窒化層を形成することにより焼入れ性が改善され、これら部位の表面硬さが上昇して、捩り疲労強度も向上する。 【0018】例えば、ローラ機構を構成する部品のうち少なくとも一つを、炭素含有量0.95〜1.10wt%の鋼で形成すると共に、接触面の直下に窒化焼入れ焼戻しにより表層部に窒化層(窒素を多く固溶した層)を形成し、かつ、表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)を20≦γR≦40の範囲内に規制した構成とすることができる。上述した構成と同様に、当該構成部品の表層部の亀裂敏感性が改善されて、転動疲労強度に優れた組織になると同時に、内部にまで均等に焼きが入るので、高荷重下での変形が少なくなる利点がある。従って、当該構成部品は高い転動疲労寿命と耐荷重変形性等を兼ね備えたものとなる。 【0019】上記構成において、外側継手部材およびトリポード部材のうち少なくとも一方の軟化抵抗特性値Rを、705<R≦820、好ましくは710≦R≦815の範囲内に規制するのが望ましい。これは、以下の理由による。 【0020】一般に、鋼材料の疲労強度が表面硬さと相関のあることは良く知られており、鋼材料に熱処理等を施して表面硬化層を形成し、その表面硬化層の表面硬さを管理することによって、所要の疲労強度を確保することが行われている。しかしながら、本出願人による実験の結果では、疲労強度は表面硬さよりも、表面から所定深さまでの領域の軟化抵抗特性(ある程度の高温になっても材料が軟化し難い性質)とより密接な相関を有することが認められた。そして、この軟化抵抗特性は、所定表面から深さ0.5mm以内の領域での最高硬さによって正しく評価することができ(軟化抵抗特性値R)、この軟化抵抗特性値Rを疲労強度の評価指数として使用できることが分かった。ここで、「軟化抵抗特性値R」は、構成部品を焼入れした後に200°C×2時間の焼戻しを行って、表面から0.5mm以内の領域での最高ビッカース硬さHvの値として表す。この軟化抵抗特性値Rを所定範囲内に規制することにより、構成部品の転動疲労寿命を高め、また捩り疲労等に対する強度を高めることができる。 【0021】本発明の等速自在継手のローラ機構として、ローラ案内面に案内されるローラと、脚軸の外周面に外嵌されてローラを回転自在に支持する支持リングとを有し、支持リングの内周面は円弧状凸断面であり、脚軸の外周面は縦断面においてはストレート形状で、横断面においては継手の軸線と直交する方向で支持リングの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で支持リングの内周面との間にすきまを形成するようになっている構成を採用することができる。この構成では、ローラ及び支持リングを含むローラアッセンブリが、脚軸に対して、ユニットとして首振り揺動する。ここで、首振揺動とは、脚軸の軸線を含む平面内で、脚軸の軸線に対して支持リングおよびローラの軸線が傾くことをいう。 【0022】脚軸の横断面形状について、継手の軸線と直交する方向で支持リングの内周面と接触するとともに継手の軸線方向で支持リングの内周面との間にすきまを形成するような形状とは、言い換えれば、トリポード部材の軸方向で互いに向き合った面部分が相互方向に、つまり、仮想円筒面よりも小径側に退避している形状を意味する。その一つの具体例として略楕円形が挙げられる。「略楕円形」には、字義どおりの楕円形の他、一般に卵形、小判形等と称される形状も含まれる。 【0023】従来円形であった脚軸の断面形状を上記の形状としたことにより、継手が作動角をとったとき、ローラアセンブリの姿勢を変えることなく、脚軸が外側継手部材に対して傾くことができる。しかも、脚軸の外周面と支持リングとの接触楕円が従来の横長から点に近づくため(図1(C)参照)、ローラアセンブリを傾けようとする摩擦モーメントが低減する。したがって、ローラアセンブリの姿勢が常に安定し、ローラがローラ案内面と平行に保持されるため円滑に転動することができる。これにより、スライド抵抗の低減ひいては誘起スラストの低減に寄与する。 【0024】なお、ローラアセンブリは脚軸と外側継手部材との間に介在してトルクを伝達する役割を果たすものであるが、この種の等速自在継手におけるトルクの伝達方向は常に継手の軸線に直交する方向であるため、当該トルクの伝達方向において脚軸と支持リングとが接していることでトルクの伝達は可能であり、継手の軸線方向において両者間にすきまがあってもトルク伝達に支障を来すことはない。 【0025】上記構成において、支持リングの内周面の母線を、中央部の円弧部と両端部の逃げ部とで構成することができる。円弧部の曲率半径は、2〜3°程度の脚軸の傾きを許容できる大きさとするのが好ましい。また、支持リングとローラの間に複数の転動体を配置して支持リングとローラを相対回転自在とすることができ、その転動体として、ニードルローラを用いることができる。さらに、ローラの外周面を球状(真球面又はトーラス面)に形成し、このローラの球状外周面を外側継手部材のローラ案内面とアンギュラコンタクトさせた構成とすることができる。ローラとローラ案内面とをアンギュラコンタクトさせることにより、ローラが振れにくくなってその姿勢が一層安定するため、ローラが外側継手部材の軸方向に移動する際にローラ案内面上をより少ない抵抗で円滑に転動する。かかるアンギュラコンタクトを実現するための具体的な構成として、ローラ案内面の断面形状をテーパ形状またはゴシックアーチ形状とすることが挙げられる。 【0026】また、本発明の等速自在継手のローラ機構として、ローラ案内面に案内されるローラと、脚軸の外周面に外嵌されて前記ローラを回転自在に支持する支持リングとを有し、脚軸の外周面は凸球状であり、支持リングの内周面は円筒状又は円錐状である構成を採用することができる。この構成では、ローラ及び支持リングを含むローラアッセンブリが、脚軸に対して、ユニットとして首振り揺動する。 【0027】さらに、本発明の等速自在継手のローラ機構として、ローラ案内面に案内される外側ローラと、脚軸に回転自在に支持され、外側ローラの内周面に嵌合された内側ローラとを有し、内側ローラの外周面は凸球状であり、外側ローラの内周面は内側ローラの外周面との接触位置で脚軸先端側に向いた負荷分力を発生させる形状になっている構成を採用することができる。この構成では、外側ローラが、脚軸に対して首振り揺動する。ここで、首振揺動とは、脚軸の軸線を含む平面内で、脚軸の軸線に対して外側ローラの軸線が傾くことをいう。 【0028】より具体的には、外側ローラの内周面の形状として、本出願人による特開平9−14280号に示された種々の形状を採用することができる。すなわち、外側ローラの内周面の形状として、脚軸先端側に向かって漸次縮径した円錐状、脚軸の外周面の母線中心に対して脚軸基端側にオフセットされた点を母線中心とする凹球面(特開平9−14280号、第3図の形状)、脚軸の外周面の母線中心に対して脚軸先端側にオフセットされた点を母線中心とする凸球面(特開平9−14280号、第4図の形状)、脚軸先端側に向かって縮径した円錐テーパ面と凸球面との合成面(特開平9−14280号、第5図の形状)、円筒面と凸球面との合成面(特開平9−14280号、第6図の形状)等、種々の形状を採用することができる。但し、製造工程を簡略化できる観点から、外側ローラの内周面は脚軸先端側に向かって漸次縮径した円錐状とするのが好ましい。その場合、支持体の内周面の傾斜角を0.1°〜3°、好ましくは0.1°〜1°の範囲内の値に設定するのが、誘起スラストを効果的に低減、安定化する観点から望ましい。 【0029】以上の構成において、構成部品の接触面には、微小な凹部を無数にランダムに形成しても良い。接触面に形成された微小凹部が油溜りの役割を果たし、接触面における油膜形成が促進されるので、潤滑性が改善され、接触面の転動疲労寿命が向上する。微小凹部は、例えば大きさ数10μm程度、深さ1μm程度のものである。接触面の研磨条件を変えることにより、任意の大きさ、深さ、数の微小凹部を形成することが可能である。尚、接触面にのみ選択的に微小凹部を形成することが困難な場合は、その構成部品の接触面の周辺部を含めて、あるいは全表面に微小凹部を形成しても良い。 【0030】また、構成部品の接触面には、化成処理被膜を下地層とする固体潤滑被膜を形成しても良い。固体潤滑被膜により、接触面の摩擦抵抗が軽減され、潤滑性が改善されるので、接触面の転動疲労寿命が向上する。下地層となる化成処理被膜は、固体潤滑被膜の接触面に対する密着性を高める目的で形成される。化成処理被膜としては、例えばりん酸マンガン処理被膜、りん酸鉄処理被膜、りん酸亜鉛処理被膜等を挙げることができる。また、固体潤滑被膜としては、二硫化モリブデン被膜、PTFE被膜等を挙げることができる。尚、処理前の接触面(母材表面)の表面粗さは処理後の効果に影響するので、適度な油溜りの作用が得られるように、接触面の表面粗さを、Ra0.2〜0.8に仕上げ加工しておくのが望ましい。また、接触面にのみ選択的に被膜処理を施すことが困難な場合は、その構成部品の接触面の周辺部を含めて、あるいは全表面に被膜処理を施しても良い。 【0031】また、構成部品の接触面には、常温浸硫処理を施しても良い。浸硫処理は、鋼の表面に硫黄を浸透させ、硫化鉄を生成させる表面処理法である。浸硫処理を施すことにより、表面の摩擦抵抗が軽減されるので、初期なじみ性が改善され、転動疲労寿命の向上になる他、NVH特性も安定する。また、常温浸硫処理によれば、例えば30〜40°C×10〜30分の条件で処理を行うので、表面硬化層の硬さ低下も起こらない。処理前の接触面の表面粗さは処理後の効果に影響するので、適度な油溜りの作用が得られるように、接触面の表面粗さを、Ra0.2〜0.8に仕上げ加工しておくのが望ましい。 【0032】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明する。 【0033】図1および図2は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1(A)は継手の横断面を示し、図1(B)は脚軸に垂直な断面を示し、図1(C)は支持リングの横断面を示し、図2は作動角(θ)をとった状態の継手の縦断面を示している。 【0034】図1に示すように、等速自在継手は外側継手部材10とトリポード部材20とを主体として構成され、連結すべき2軸の一方が外側継手部材10と連結され、他方がトリポード部材20と連結される。 【0035】外側継手部材10は内周部に軸方向に延びる3本のトラック溝12を有する。各トラック溝12の円周方向で向かい合った側壁にそれぞれローラ案内面14が形成されている。トリポード部材20は半径方向に突設した3本の脚軸22を有し、各脚軸22にはローラ34が取り付けてあり、このローラ34が外側継手部材10のトラック溝12内に収容される。ローラ34の外周面34aはローラ案内面14に適合する凸曲面である。 【0036】ここでは、ローラ34の外周面34aは脚軸22の軸線から半径方向に離れた位置に曲率中心を有する円弧を母線とする凸曲面であり、ローラ案内面14の断面形状はゴシックアーチ形状であって、これにより、ローラ34の外周面34aとローラ案内面14とがアンギュラコンタクトをなす。図1(A)に、2つの当たり位置を一点鎖線で示してある。球状のローラ外周面に対してローラ案内面14の断面形状をテーパ形状としても両者のアンギュラコンタクトが実現する。このようにローラ34の外周面34aとローラ案内面14とがアンギュラコンタクトをなす構成を採用することによって、ローラが振れにくくなるため姿勢が安定する。なお、アンギュラコンタクトを採用しない場合には、たとえば、ローラ案内面14を軸線が外側継手部材10の軸線と平行な円筒面の一部で構成し、その断面形状をローラ34の外周面34aの母線に対応する円弧とすることもできる。 【0037】脚軸22の外周面22aに支持リング32が外嵌している。この支持リング32とローラ34とは複数のニードルローラ36を介してアッセンブリ(ユニット化)され、相対回転可能なローラアセンブリを構成している。すなわち、支持リング32の円筒形外周面を内側軌道面とし、ローラ34の円筒形内周面を外側軌道面として、これらの内外軌道面間にニードルローラ36が転動自在に介在する。図1(B)に示されるように、ニードルローラ36は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれている。符号33,35で示してあるのは、ニードルローラ36の抜け落ち止めのためにローラ34の内周面に形成した環状溝に装着した一対のワッシャである。 【0038】脚軸22の外周面22aは、縦断面{図1(A)}で見ると脚軸22の軸線と平行なストレート形状であり、横断面{図1(B)}で見ると、長軸が継手の軸線に直交する楕円形状である。脚軸の断面形状は、トリポード部材20の軸方向で見た肉厚を減少させて略楕円状としてある。言い換えれば、脚軸の断面形状は、トリポード部材の軸方向で互いに向き合った面が相互方向に、つまり、仮想円筒面よりも小径側に退避している。 【0039】支持リング32の内周面32cは円弧状凸断面を有する。すなわち、内周面32cの母線が半径rの凸円弧である{図1(C)}。このことと、脚軸22の断面形状が上述のように略楕円形状であり、脚軸22と支持リング32との間には所定のすきまが設けてあることから、支持リング32は脚軸22の軸方向での移動が可能であるばかりでなく、脚軸22に対して首振り揺動自在である。また、上述のとおり支持リング32とローラ34はニードルローラ36を介して相対回転自在にアッセンブリ(ユニット化)されているため、脚軸22に対し、支持リング32とローラ34がユニットとして首振り揺動可能な関係にある。ここで、首振りとは、脚軸22の軸線を含む平面内で、脚軸22の軸線に対して支持リング32およびローラ34の軸線が傾くことをいう(図2参照)。 【0040】この種の従来継手の場合、脚軸の外周面が全周にわたって支持リングの内周面と接するため、接触楕円が円周方向に延びた横長形状を呈する。そのため、外側継手部材に対して脚軸が傾くとき、脚軸の動きに伴って支持リングを、延いてはローラを傾かせるように作用する摩擦モーメントが発生する。これに対し、図1に示した実施の形態では、脚軸22の横断面が略楕円状で、支持リング32の内周面32cの横断面が円弧状凸断面であることから、図1(C)に破線で示すように、両者の接触楕円は点に近いものとなり、同時に面積も小さくなる。したがって、ローラアセンブリ(32、34、36)を傾かせようとする力が従来のものに比べると非常に低減し、ローラ34の姿勢の安定性が一層向上する。 【0041】上記構成において、トリポード部材20は炭素含有量0.15〜0.40wt%の鋼材料から、鍛造加工→機械加工→浸炭窒化焼入れ焼戻し→脚軸22の外周面22aの研削加工という主要工程を経て製造される。トリポード部材20の表面の直下には、浸炭窒化焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭窒化層)が形成され、その表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40の範囲内に規制されている。尚、表層部(浸炭窒化層)は少なくとも脚軸22の外周面22aの直下に形成すれば良い。また、この実施形態において、完成後のトリポード部材20における脚軸22の外周面22aやその他の表面を基準とする軟化特性抵抗値Rは、705<R≦820、好ましくは710≦R≦810の範囲内に規制されている。 【0042】尚、上記工程中の浸炭窒化焼入れ焼戻しに代えて、浸炭焼入れ焼戻しを採用し、浸炭焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭層)の残留オーステナイト量γR(vol%)を20≦γR≦40の範囲内に規制しても良い。 【0043】外側継手部材10は炭素含有量0.15〜0.40wt%の鋼材料から、鍛造加工→機械加工→浸炭窒化焼入れ焼戻し→軸部10a{図2(A)参照}の研削加工という主要工程を経て製造される。浸炭窒化焼入れ焼戻しに代えて、浸炭焼入れ焼戻しを採用することもできる。その他の事項はトリポード部材20に準じるので、重複する記載を省略する。 【0044】ローラアッセンブリを構成する支持リング32、ローラ34、およびニードルローラ36は、炭素含有量0.95〜1.10wt%の鋼材料、例えばSUJ2等の軸受鋼から、鍛造加工→機械加工→窒化焼入れ焼戻し→研削加工という主要工程を経て製造される。また、これら構成部品の表面の直下には、窒化焼入れ焼戻しにより表層部に窒化層(窒素を固溶した層)形成され、その表層部の残留オーステナイト量γR(vol%)が20≦γR≦40の範囲内に規制されている。尚、これら構成部品の材料、製造工程、その他の事項は、上述したトリポード部材20や外側継手部材10に準じたものとしても良い。 【0045】また、トリポード部材20、外側継手部材10、支持リング32、ローラ34、ニードルローラ36の接触面には、前述した微小凹部、化成処理被膜を下地層とする固体潤滑被膜を形成しても良い。また、常温浸硫処理を施しても良い。 【0046】さらに、上述した主要工程を経た後、トリポード部材20の脚軸22の外周面22a、基端部、およびセレーション部(又はスプライン部)のうち少なくとも1個所、外側継手部材10のローラ案内面14および軸部10a(特にセレーション部又はスプライン部)のうち少なくとも一個所にショットピーニング処理を施しても良い。ショットピーニング処理を施すことにより、表面組織が微細化されると共に、表面に残留圧縮応力が発生する。そのため、転動疲労寿命や捩り疲労に対する強度が向上する。また、ショット粒の高い衝突エネルギーにより、表層部の残留オーステナイトがマルテンサイト変態を起こす。これにより、残留圧縮応力がさらに増加し、同時に微小ディンプルが形成されて油溜りとなり、耐摩耗性の向上、転動疲労寿命や捩り疲労強度の向上に一層効果的である。特に、残留オーステナイト量が多い浸炭窒化層ではその傾向が顕著である。 【0047】この実施形態の等速自在継手は、構成部品の材料、表層部の性状が最適化され、転動疲労寿命の向上や割れ等に対する強度向上が図られている結果、現状の同サイズの等速自在継手と比較して、優れた耐久性や強度を有する。また、現状品と同等以上の耐久性や強度を確保しつつ、よりコンパクト化を図ることが可能である。 【0048】図3および図4は、本発明の第2の実施の形態を示している。この第2の実施の形態は、支持リング32の内周面32cの母線が、上述の第1の実施の形態では単一の円弧で形成されているのに対して、中央の円弧部32aとその両側の逃げ部32bとの組合せで形成されている点でのみ相違する。逃げ部32bは、図3(C)のように作動角(θ)をとったときの脚軸22との干渉を避けるための部分であり、円弧部32aの端から支持リング32の端部に向かって徐々に拡径した直線または曲線で構成する。ここでは、逃げ部32bを円錐角α=50°の円錐面の一部とした場合を例示してある。円弧部32aは、支持リング32に対する脚軸22の2〜3°程度の傾きを許容するため、たとえば30mm程度の大きな曲率半径(r)とする。トリポード型等速自在継手では、機構上、外側継手部材10が1回転するときトリポード部材20は外側継手部材10の中心に対して3回振れ回る。このとき符号e{図2(A)}で表わされる偏心量は作動角(θ)に比例して増加する。そして、3本の脚軸22は120°ずつ離間しているが、作動角(θ)をとると、図2(B)に示すように、図の上側に表われている垂直な脚軸22を基本として考えると、他の2本の脚軸22は、一点鎖線で示す作動角0のときのそれらの軸線からわずかに傾く。その傾きは作動角(θ)がたとえば約23°のとき2〜3°程度となる。この傾きが支持リング32の内周面32cの円弧部32aの曲率によって無理なく許容されるため、脚軸22と支持リング32との接触部における面圧が過度に高くなるのを防止することができる。なお、図2(B)は、図2(A)の左側面から見たトリポード部材20の3本の脚軸22を模式的に図示したもので、実線が脚軸を表わしている。 【0049】この実施形態の等速自在継手も、構成部品の材料、表層部の性状が最適化され、転動疲労寿命の向上や割れ等に対する強度向上が図られている結果、現状の同サイズの等速自在継手と比較して、優れた耐久性や強度を有する。また、現状品と同等以上の耐久性や強度を確保しつつ、よりコンパクト化を図ることが可能である。 【0050】図5および図6は、本発明の第3の実施形態を示している。尚、図5は、継手の作動角が0°で、かつ、継手に回転トルクが負荷されていない時の状態を示している。 【0051】この実施形態のトリポード型等速自在継手は、連結すべき二軸の一方に結合される外側継手部材1と、他方に結合されるトリポード部材2とを備えている。 【0052】外側継手部材1は概ねカップ状の外観をなし、軸方向に延びる3本のトラック溝1aが内周部の円周等配位置に形成されている。各トラック溝1aの両側には、それぞれローラ案内面1a1が設けられている。 【0053】トリポード部材2は半径方向に突出した3本の脚軸2aを円周等配位置に有する。各脚軸2aの外周面2a1は凸球状に形成され、その外周面2a1に、支持リング3、複数のニードルローラ4、およびローラ5をアッセンブリしたローラアッセンブリAが装着されている。 【0054】図5(B)に拡大して示すように、ローラアッセンブリAは、支持リング3の円筒状の外周面3aとローラ5の円筒状の内周面5aとの間に複数のニードルローラ4を転動自在に介装し、ローラ5の内周面5aに嵌着した一対のスナップリング6によって、支持リング3およびニードルローラ4の両端を係止して、ローラ5に対する支持リング3およびニードルローラ4の軸方向移動(脚軸2aの軸線Z方向への移動)を規制したものである。支持リング3の両端面およびニードルローラ4の両端面と、一対のスナップ支持リング6との間には僅かなアキシャル隙間δがある。図面では、アキシャル隙間δの大きさを実際よりもかなり誇張して示している。また、支持リング3の端面とスナップ支持リング6との間のアキシャル隙間と、ニードルローラ4の端面とスナップ支持リング6との間のアキシャル隙間とは、設計上、同じ値に設定する場合もあるし、異なる値に設定する場合もあるが、図面では両者の場合を区別することなくアキシャル隙間δとして示している。さらに、支持リング3の外周面3aおよびローラ5の内周面5aとニードルローラ4の転動面との間には僅かなラジアル隙間がある。 【0055】支持リング3の内周面3bは、脚軸2aの球状の外周面2a1に嵌合される。この実施形態において、支持リング3の内周面3bは脚軸2aの先端側に向かって漸次縮径した円錐状で、脚軸2aの外周面2a1と線接触する。これにより、ローラアッセンブリAの脚軸2aに対する首振り揺動が許容される。支持リング3の内周面3bの傾斜角αは、例えば0.1°〜3°、好ましくは0.1°〜1°と僅かなものであり、この実施形態ではα=0.5°に設定している。図面では、内周面3bの傾斜の度合をかなり誇張して示している。 【0056】ローラ5の外周面5bの母線は、脚軸2aの中心から外側にオフセットされた点を中心とする円弧である。 【0057】この実施形態において、外側継手部材1のローラ案内面1a1の断面形状は、2円弧状(ゴシックアーチ状)になっている。そのため、ローラ案内面1a1とローラ5の外周面5bとは2点p、qでアンギュラコンタクトする。アンギュラコンタクト点p、qは、ローラ5の外周面5bの中心を含み、脚軸2aの軸線Zと直交する中心線に対して、軸線Z方向に等距離だけ反対側に離れた位置にある。尚、ローラ案内面1a1の断面形状は、V字状または放物線状等でも良い。また、この実施形態において、トラック溝1aに、ローラ案内面1a1と近接して肩面1a2が設けられ、この肩面1a2によってローラ5の脚軸先端側の端面5cが案内される。 【0058】支持リング3の内周面3bが脚軸先端側に向かって漸次縮径した円錐状になっているため、この継手に回転トルクが負荷されると、図6に示すように(内周面3bの傾斜の度合いを図5よりもさらに誇張して示している。)、支持リング3の内周面3bと脚軸2aの外周面2a1との接触位置Sに脚軸先端側に向いた負荷分力Fが発生する。この負荷分力Fは、支持リング3およびニードルローラ4を脚軸先端側に押し上げるように作用して、支持リング3およびニードルローラ4を、脚軸先端側のワッシャ6に押し付けた状態にする。そのため、支持リング3の内周面3bと脚軸2aの外周面2a1との接触位置Sが安定する。また、この負荷分力Fは、支持リング3およびニードルローラ4を介して、ローラ5を脚軸先端側に押し上げるように作用して、ローラ案内面1a1に対するローラ5の姿勢を安定させる。このような接触位置Sの安定化とローラ5の姿勢安定化とが相俟って、誘起スラストが効果的に低減され、また安定化される。尚、支持リング3の内周面3bは円筒状にしても良い。 【0059】外側継手部材1、トリポード部材2、ローラアッセンブリAを構成する部品(支持リング3、ニードルローラ4、ローラ5)の材料、製造工程、表層部の性状、その他の事項は第1の実施形態に準じるので説明を省略する。 【0060】図7は、本発明の第4の実施形態を示している。尚、図7は、継手の作動角が0°の時の状態を示している。 【0061】図7に示すように、この実施形態の等速自在継手は、連結すべき二軸の一方に結合される外側継手部材1’と、他方に結合されるトリポード部材2’とを備えている。外側継手部材1’は概ねカップ状の外観をなし、軸方向に延びる3本のトラック溝1a’が内周部の円周等配位置に形成されている。各トラック溝1a’の両側には、それぞれローラ案内面1a’1が設けられている。トリポード部材2’は半径方向に突出した3本の脚軸2a’を円周等配位置に有する。各脚軸2a’の円筒状の外周面には、複数のニードルローラ7’を介して内側ローラ3’が回転自在に嵌合され、さらにその外側に外側ローラ4’が回転自在に嵌合されている。 【0062】図7(B)に拡大して示すように、ニードルローラ7’および内側ローラ3’は、それらの一端が脚軸2a’の先端部に装着された抜け止めリング8’と止め輪9’によって係止され、他端が脚軸2a’の基端部に装着されたワッシャ10’によって係止され、脚軸2a’の軸線Z方向への移動が規制されている。実際には、ニードルローラ7’および内側ローラ3’と、抜け止めリング8’およびワッシャ10’との間には僅かなアキシャル隙間δ’がある。図面では、アキシャル隙間δ’の大きさが実際よりもかなり誇張されている。また、脚軸2a’の外周面および内側ローラ3’の内周面3a’とニードルローラ7’との間には僅かなラジアル隙間がある。内側ローラ3’の内周面3a’は円筒状、外周面3b’は凸球状である。この実施形態において、外周面3b’の母線は、内側ローラ3’の半径中心O2’から所定量だけ外側にオフセットされた点O1’を中心とする半径r1の円弧である。半径r1は、外周面3b’の最大半径r2よりも小さい。 【0063】外側ローラ4’は、内側ローラ3’の外周面3b’に嵌合される。この実施形態において、外側ローラ4’の内周面4a’は脚軸2a’の先端側に向かって漸次縮径した円錐状で、内側ローラ3’の外周面3b’と線接触する。これにより、外側ローラ4’の脚軸2a’に対する首振り揺動が許容される。内周面4a’の傾斜角は例えば0.1°〜3°と僅かなものであり、この実施形態では0.3°〜0.7°に設定している。図面では、内周面4a’の傾斜がかなり誇張されている。外側ローラ4’の外周面4b’の母線は、点O1’よりもさらに外側にオフセットされた点O3’を中心とする半径r3の円弧である。 【0064】この実施形態において、外側継手部材1’のローラ案内面1a’1の断面形状は、2円弧状(ゴシックアーチ状)になっている。そのため、ローラ案内面1a’1と外側ローラ4’の外周面4b’とは2点p’、q’でアンギュラコンタクトする。アンギュラコンタクト点p’、q’は、外側ローラ4’の外周面4b’の中心O3’を含み、脚軸2a’の軸線Zと直交する中心線に対して、軸線Z方向に等距離だけ反対側に離れた位置にある。尚、ローラ案内面1a’1の断面形状は、V字状または放物線状等でも良い。 【0065】外側ローラ4’の内周面4a’が脚軸先端側に向かって漸次縮径した円錐状になっているため、図7(C)に示すように、内側ローラ3’の外周面3b’との接触位置S’に脚軸先端側に向いた負荷分力Fが発生する。この負荷分力Fは、外側ローラ4’を脚軸先端側に押し上げるように作用して、非負荷側のローラ案内面1a’1におけるB部の接触面圧を低減する。また、接触位置S’には、負荷分力Fの反力として脚軸基端側(同図で下側)に向いた力が発生する。この反力は、内側ローラ3’を脚軸基端側に押し下げるように作用して、内側ローラ3’およびニードルローラ7’の脚軸2a’に対する軸方向移動を抑制する。その結果、図7(b)に示すように、内側ローラ3’およびニードルローラ7’は下側のワッシャ10’に押し付けられた状態になり、アキシャル隙間δ’に起因する接触位置S’の変動が抑制される。このような非負荷側のローラ案内面1a’1におけるB部の接触面圧低減と、接触位置S’の安定化とが相俟って、誘起スラストが効果的に低減され、また安定化される。尚、外側ローラ4’の内周面4a’は円筒状にしても良い。 【0066】外側継手部材1’、トリポード部材2’、ローラ機構を構成する部品(内側ローラ3’、外側ローラ4’、ニードルローラ7’)の材料、製造工程、表層部の性状、その他の事項は第1の実施形態に準じるので説明を省略する。 【0067】尚、本発明は、以上に説明した構成の等速自在継手に限らず、例えば、ローラ案内面を平坦面、外側ローラの外周面を円筒状、内周面を凹球状、内側ローラの外周面を凸球状とし、外側ローラの凹球状の内周面と内側ローラの凸球状の外周面との間の滑りによって、外側ローラの首振り揺動を自在とした等速自在継手(特願平8−4073号、特願平8−138335号)、さらにローラ案内面と脚軸の軸線とを作動角が0°の状態で互いに非平行とした等速自在継手(特開平11−13779号)にも同様に適用することができる。 【0068】 【実施例】第1の実施形態の等速自在継手において、トリポード部材に浸炭窒化焼入れ焼戻しによる表層部(浸炭窒化層)を形成して、転動疲労寿命試験を行った。表層部の残留オーステナイト量(vol%)を20未満、20、22、25、28、30、35、40、40超としたものを各種類ごとに複数個づつ製作し(資料No18〜26)、それらを等速自在継手に組み込み、動力循環式耐久試験にて、同一条件下で運転した。そして、脚軸の外周面の損傷(剥離、摩耗等)が一定度合を超えた運転時間を寿命とし、各種類ごとにワイブル評価を行った。その結果を表1にまとめて示す。評価項目の◎は目標時間を十分満足できたもの、○は目標時間を満足できたもの、△は目標時間を満足できなかったものを表している。 【0069】 【表1】
【0070】表1に示す結果より、表層部の残留オーステナイト量γRを20vol%以上、40vol%以下に規制することにより、良好な転動疲労寿命が得られ、特に25vol%以上、35vol%以下の範囲で好ましい結果が得られることが確認できた。 【0071】尚、上記はトリポード部材について行った試験の結果であるが、外側継手部材、ローラ機構を構成する部品(ローラ、ニードルローラ)等の他の構成部品についても同様の結果が得られた。また、第2、第3、第4の実施形態の等速自在継手においても同様の結果が得られた。これらの試験結果の記載は省略する。 【0072】下記の表2、表3は、トリポード部材について行った他の試験の結果を示している。まず、主要成分含有量が種々異なる鋼材料を用いてトリポード部材を形成し(試料No1〜No17)、950°C×8時間の浸炭焼入れの後、200°C×2時間の焼戻しを行って、脚軸の外周面の軟化特性抵抗値R(外周面から深さ0.5mm以内の領域での最高ビッカース硬さHv)を実測した。その結果を表2に示す。尚、脚軸の外周面には、浸炭焼入れ焼戻しの後、研削加工を施してあり、上記の「深さ0.5mm」は研削加工後の表面を基準にしている。つぎに、各試料について、耐久性、鍛造加工性を評価した。その内、6種類の試料に対する評価と軟化抵抗特性値R(Hv)の実測値および推測値(推測値については後述する)との関係を表3に示す。評価項目の◎は目標特性を十分満足できたもの、○は目標特性を満足できたもの、△は目標特性を満足できなかったものを表している。 【0073】 【表2】
【0074】 【表3】
【0075】表3に示す結果より、浸炭焼入れ焼戻し品の場合、軟化特性抵抗値Rを705<R≦820、好ましくは710≦R≦815の範囲内に規制することにより、耐久性および鍛造加工性ともに満足できる結果が得られることが確認できた。軟化特性抵抗値Rが705以下であると、耐久性の点で好ましい結果が得られず、また軟化特性抵抗値Rが820を越えると鍛造加工性の点で好ましい結果が得られない。 【0076】一方、芯部の硬さを左右する母材の炭素含有量は、疲労強度確保の観点から、0.15〜0.40wt%の範囲内とするのが好ましい。母材の炭素含有量が0.15wt%よりも低くなると、浸炭に要する時間が長くなってしまうと同時に、芯部の硬さが不足し、満足する疲労強度が得られない。逆に、炭素含有量が0.4wt%よりも多くなると、芯部の硬さが上昇し、靭性が著しく低下し、同時に歪みも増加する。 【0077】以上により、トリポード部材および外側継手部材のうち少なくとも一方を炭素含有量0.15〜0.40wt%の鋼で形成し、かつ、軟化抵抗特性値Rを705<R≦820、好ましくは710≦R≦815の範囲内に規制することが望ましく、これにより、表層部の残留オーステナイト量γRの適正化と相俟って、耐久性や強度を向上させ、同時に鍛造加工性も確保することができる。さらに、軟化抵抗特性値Rを上記範囲に規制することにより、材料の焼入れ性も良くなり、従来よりも深焼きが可能となるので、疲労強度等の向上に一層効果的である。 【0078】上述した軟化抵抗特性値Rは、実測によって求めても良いが、以下に示す回帰式(a)を用いて比較的精度良く推定することができる。 R(推定値)=713.4+{20.7×Si(%)}+{12.3×Mn(%)}+{6.4×Ni(%)}− {14.8×Cr(%)}+{159.0×Mo(%)} ・・・(a) 上記回帰式(a)は、表2に示す17種類の試料(試料No1〜No17)の軟化特性抵抗値R(実測値)と各試料の主要成分元素含有率(wt%)との重回帰分析を行って求めたものである。この例では、主要成分元素としてSi、Mn、Ni、Cr、Moを選定し、炭素Cについては浸炭によりどの試料も含有率が均等になるため、変数から除外している。 【0079】表3に示すように、上記回帰式(a)に求めた軟化特性抵抗値Rの推定値は、実測値と良く近似しており、この推定値Rを705<R≦820、好ましくは710≦R≦815の範囲内に規制することにより、耐久性および鍛造加工性を簡易にかつ比較的精度良く評価することが可能となる。 【0080】尚、トリポード部材、外側継手部材、その他の構成部品に浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻しを行う場合、表1に示す鋼材料の他、表4に示す種々の鋼材料を使用することができる。 【0081】 【表4】
【0082】尚、ローラ機構を構成する部品に窒化焼入れ焼戻しを行う場合、高炭素クロム鋼を用いることができ、より具体的には表5に示す種々の軸受鋼を用いることができる。 【0083】 【表5】
【0084】 【発明の効果】本発明によれば、構成部品の材料、表層部の性状が最適化され、転動疲労寿命、特に摩耗粉等の異物噛み込みによる表面起点型損傷に対する耐性が向上するので、現状のサイズを維持したままより耐久性や強度に優れたトリポード型等速自在継手を提供し、また、現状品と同等以上の耐久性や強度を確保しつつよりコンパクトなトリポード型等速自在継手を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000102692 【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年1月13日(2000.1.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064584 【弁理士】 【氏名又は名称】江原 省吾 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−200859(P2001−200859A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月27日(2001.7.27) |
| 【出願番号】 |
特願2000−4801(P2000−4801) |
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