トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 車両用ドラムブレーキのバックプレート
【発明者】 【氏名】櫻井 辰佳

【要約】 【課題】精度の高いラビリンス部用フランジをバックプレートの外周面に、少ない工程で簡単に製作できるようにする。バックプレートの軽量化を図る。バックプレート内部への水滴の浸入を確実に防止する。

【解決手段】ラビリンス部用フランジ14c,14cを含むバックプレート2の外周側を合成樹脂で環状に形成し、この環状外周部14の内側に残された本体部13を金属で形成して、本体部13と環状外周部14とを固着してバックプレート2を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブレーキドラムの環状縁部と共にラビリンス部を構成するフランジを外周面に備えた車両用ドラムブレーキのバックプレートにおいて、少なくとも、前記ラビリンス部用フランジを含むバックプレートの外周部を合成樹脂で形成することを特徴とする車両用ドラムブレーキのバックプレート。
【請求項2】 ブレーキドラムの環状縁部と共にラビリンス部を構成するフランジを外周面に備えた車両用ドラムブレーキのバックプレートにおいて、前記ラビリンス用フランジを含むバックプレートの外周側を合成樹脂で環状に形成し、該環状外周部の内側に残された本体部を金属で形成して、該本体部と環状外周部とを固着して形成することを特徴とする車両用ドラムブレーキのバックプレート。
【請求項3】 前記バックプレート外周の車体下側位置に、前記ラビリンス用フランジを切除した切欠き部を形成し、該切欠き部に、バックプレート外周部近傍に付着した水滴を排出する排水突部を垂設したことを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドラムブレーキのバックプレート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車や自動二輪車等の車両に用いられるドラムブレーキのバックプレートに係り、特にブレーキドラムの環状縁部と共にラビリンス部を構成するフランジを含むバックプレートの外周部分の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車両用ドラムブレーキに用いられるバックプレートは、例えば特開平4−40033号公報に示されるように、鋳鉄やアルミ合金等の金属材で形成されるバックプレートの外周面に複数条のラビリンス用フランジが周設されており、車体取付け時にはフランジの外周側にブレーキドラムの環状縁部が被さって、この環状縁部とラビリンス用フランジとの間に僅かな間隙のラビリンス部が形成される。このラビリンス部は、ブレーキドラムの回転を許容しつつ、バックプレート内部への水の浸入を防止して、制動力の低下や錆の発生を防止するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、バックプレート外周のフランジ部分は、その形状や本体部分との肉厚の差等の理由から、バックプレートの本体部分と同時に成形することが困難であるため、成形型によって外形を成形した後に、細かな溝を削り出しすることによって形成されている。このため、バックプレートの仕上げに複数の加工工程が必要となり、製造に手間や時間が掛かってコスト高なものになっていた。また、バックプレート全体が鋳鉄やアルミ合金等の金属材で形成されるために重量が嵩み、車体のバネ下重量の増大につながるという不具合がある。
【0004】さらに、ラビリンス部にあっては、バックプレートの外周部やフランジ回りに付着した水滴が、フランジを乗り越えてバックプレートの内部へ浸入することがあり、制動力の低下や錆の発生を招く虞がある。
【0005】そこで本発明は、バックプレート外周面のフランジを、少ない工程で精度よく簡便に製作することができ、またバックプレートの軽量化を図りながら、バックプレート内部への水滴の浸入を極力防止することができるドラムブレーキのバックプレートを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、第1発明では、ブレーキドラムの環状縁部と共にラビリンス部を構成するフランジを外周面に備えた車両用ドラムブレーキのバックプレートにおいて、該バックプレートは、少なくとも、前記ラビリンス部用フランジを含むバックプレートの外周部を合成樹脂で形成する。
【0007】また、第2発明では、ブレーキドラムの環状縁部と共にラビリンス部を構成するフランジを外周面に備えた車両用ドラムブレーキのバックプレートにおいて、該バックプレートは、前記ラビリンス用フランジを含むバックプレートの外周側を合成樹脂で環状に形成し、該環状外周部の内側に残された本体部を金属で形成して、該本体部と環状外周部とを固着して形成する。
【0008】さらに、第3発明では、第1発明または第2の発明のバックプレート外周の車体下側位置にラビリンス用フランジを切除した切欠き部を形成し、該切欠き部に、バックプレート外周部近傍に付着した水滴を排出する排水突部を垂設する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を自動二輪用の機械式ドラムブレーキに適用した各形態例を図面に基づいてさらに詳しく説明する。
【0010】図1乃至図4は、本発明の第1形態例を示すもので、ドラムブレーキ1は、図4に示されるように、バックプレート2内に対向配置される弓形のブレーキシュー3及びブレーキシュー4を、ブレーキケーブルに牽引される操作レバー5の回動により拡開して、車輪と一体に回転するブレーキドラムAを制動する機械式ブレーキで、ブレーキシュー3,4は、拡開側の一端部3a,4aがカム部材6に支持され、回動支点となる他端部3b,4bがアンカーピン7に支持されている。バックプレート2の外周側には、ガイドブラケット2aが突設されていて、このガイドブラケット2aに固設した連結ボルト8にトルクロッド(図示せず)が連結される。
【0011】ブレーキシュー3,4は、外周面にライニング9,10がそれぞれ貼着され、カム部材6とアンカーピン7の内側位置でブレーキシュー3,4間に張設されるリターンスプリング11,12の牽引力によって、常時縮径位置に付勢されている。ブレーキシュー3,4は、操作レバー5の操作により回動するカム部材6により、アンカーピン7側の3b,4bを支点に拡開し、ライニング9,10をブレーキドラムAの内周面に摺接させて、制動作用を行う。
【0012】前記バックプレート2は、図1に示されるように、金属製の本体部13の外側に、合成樹脂製の環状外周部14を固着して形成される。本体部13は、環状外周部14を除くバックプレート2の内側形状を、成形型に鋳鉄やアルミ合金等の金属溶湯を鋳込んで成形されるもので、中央にはアクスル挿通ボス部13aが穿設され、該アクスル挿通ボス部13aに円筒状のアクスル軸受15が一体にモールドされている。本体部13の外周側対向位置には、円筒状のカム軸受13bとアンカーピン取付けボス部13cとが一体形成されており、アンカーピン取付けボス部13cにはアンカーピン7が一体にモールドされている。本体部13の外周基端寄りにはガイドフランジ13dが周設されており、該ガイドフランジ13dにて環状外周部14を受けるようにしている。
【0013】環状外周部14は、バックプレート2の外周部分となる環状体14aと、やや厚肉で大径の強度受けフランジ14bと、これよりも薄肉で小径な2条のラビリンス部用のフランジ14c,14cとからなっており、合成樹脂を材料に、金属製の本体部13とは別の専用成形型によって一体に成形される。
【0014】環状外周部14の車体下側位置には、図3に示されるように、強度受けフランジ14bとラビリンス部用フランジ14c,14cとを周方向に切除した切欠き部14dが設けられ、該切欠き部14dに排水突部14eが垂設されている。排水突部14eは、強度受けフランジ14b寄りのラビリンス部用フランジ14cと同じ位置からその両側の周溝14f,14fに跨る幅を持ち、且つラビリンス部用フランジ14c,14cの外径から突出しない大きさの逆三角形に形成されており、ラビリンス部用フランジ14c,14cや周溝14f,14f等のバックプレート外周部やその近傍に付着した水滴を排水突部14eに集めて、該排水突部14eの下端頂部から排出するようにしている。
【0015】上述の環状外周部14は、例えば接着剤を併用しながら金属製の本体部13の外周側に圧入等の固定手段を用いて嵌合され、強度受けフランジ14bを本体部13の座面13eに密着させて本体部13に強固に固着され、前述のバックプレート2を構成する。そして、本体部13と環状外周部14とで構成されたバックプレート2には、カム軸受13bにカム部材6を装着し、該カム部材6の外端に操作レバー5を固着すると共に、カム部材6とアンカーピン7との間にブレーキシュー3,4を組み付けし、両シュー3,4間にリターンスプリング11,12を張設してドラムブレーキ1が構成される。
【0016】このように構成されたドラムブレーキ1は、切欠き部14dを下側に向けて車体に取り付けされ、該ドラムブレーキ1の外側にブレーキドラムAが被着される。バックプレート2のラビリンス部用のフランジ14c,14cの外側には、ブレーキドラムAの環状縁部Aaが被せられ、該フランジ14c,14cと環状縁部Aaとでラビリンス部16を構成して、該ラビリンス部16にてバックプレート2内への水の浸入を防止する。車体下部位置の排水突部14eには、前述の如く、ラビリンス部用のフランジ14c,14cや周溝14f,14f等のバックプレート外周部やその近傍に付着した水滴を排水突部14eに集められ、該排水突部14eの下端頂部から排出されて行く。
【0017】以上のように、本形態例のドラムブレーキ1は、バックプレート2の外側部分である環状外周部14を合成樹脂で成形し、該環状外周部14を除く内側部分の本体部13を金属で成形するので、バックプレート2としての所要の剛性力を金属製の本体部13で確保しつつ、ラビリンス部用のフランジ14c,14cや周溝14f,14f,排水突部14e等の細かな形状を、合成樹脂製の環状外周部14で精度良く容易に一体成形することができる。これにより、切削等の後加工が不要となり、バックプレート2の製造工程を削減できて、製造コストの低減が図れる。さらに、バックプレート2の外側部分に合成樹脂製の環状外周部14を採用したことにより、全体を金属で形成した従来のものに比べて重量が軽くなり、車体のバネ下荷重を低減化を図ることができる。
【0018】また、環状外周部14に設けた排水突部14eが、バックプレート外周部分の水を容易に集めて確実に排出するので、バックプレート2内に水が浸入しにくくなり、制動力の低下や錆の発生を極力防止して、安定した制動力を長期間持続させることができるようになる。
【0019】尚、バックプレートの本体部に環状外周部を固着する手段として、上述の形態例に示した圧入や接着剤以外に、ねじ込みや凹凸嵌合を用いてもよい。
【0020】図5は、本発明の第2形態例を示すもので、バックプレート20は、補強材となる基板21と、該基板21の外側をバックプレートとして所定の肉厚と形状で包む合成樹脂層22とからなっている。合成樹脂層22でモールドする前の基板21には、短円筒状の嵌合孔21a,21b,21cがプレス等の絞り加工によって所定位置に形成されており、嵌合孔21aには円筒状のカム軸受23が、嵌合孔21bにはアンカーピン24が、嵌合孔21cには円筒状のアクスル軸受25が、それぞれ圧入等の連結手段を用いて固着される。カム軸受23やアンカーピン24,アクスル軸受25は、制動時の拡開作動やブレーキドラムAからの制動反力を受ける強度受け部材で、基板21と同様にいずれも金属材料によって形成されている。
【0021】前記合成樹脂層22は、上述のように強度受け部材を固着した基板21を成形型内に収容し、該成形型のキャビティに充填される合成樹脂材料にて、基板21と強度受け部材の外側を一体にモールドしつつ、該合成樹脂材料をバックプレート20としての所定の形状に成形したもので、外周にはラビリンス部用のフランジ20a,20aや周溝20b,20bが一体形成されている。
【0022】本形態例は以上のように、金属製の基板21の外側を合成樹脂層22で一体にモールドしてバックプレート20を形成することにより、第1形態例同様、ラビリンス部用のフランジ21a,21aや周溝21b,21b等の細かな形状を、精度良く容易に一体成形することができ、バックプレート20の製造工程を削減できて、製造コストの低減が図れる。
【0023】また、バックプレート20としての応力を金属製の基板21や強度受け部材で必要充分に確保しつつ、その他のさほど応力のかからない部分を合成樹脂層22で成形するので、第1形態例よりもさらに、バックプレート全体を軽量に形成することができ、車体のバネ下重量を大幅に軽減することができる。
【0024】尚、本発明は、上記形態例で示した自動二輪用の機械式ドラムブレーキ以外に、液圧式ドラムブレーキや自動車用のドラムブレーキに幅広く適用が可能である。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、第1発明によれば、バックプレート外周部のラビリンス部用のフランジや、その間の周溝等の細かな形状を合成樹脂で形成するので、ラビリンス部用のフランジやその間の周溝等の細かな形状を、合成樹脂製の環状外周部で精度良く容易に一体成形することができる。また、従来要していた切削等の後加工が不要となり、バックプレートの製造工程を削減できて、製造コストの低減が図れる。さらに、少なくともラビリンス部用フランジを含むバックプレートの外周側を合成樹脂で形成するので、バックプレート全体を金属で形成した従来のものに比べて重量が軽くなり、車体のバネ下荷重の低減化を図ることができる。
【0026】また、第2発明によれば、バックプレートとしての所要の剛性力は金属製の本体部で確保しながら、第1発明同様に、ラビリンス部用のフランジやその間の周溝等の細かな形状を、合成樹脂製の環状外周部で精度良く容易に一体成形することができ、製造コストの低減が図れるとともに、車体のバネ下荷重の低減化を図ることができるさらに、第3発明によれば、環状外周部に設けた排水突部が、バックプレート外周部分の水を容易に集めて確実に排出するので、バックプレート内に水が浸入しにくくなり、制動力の低下や錆の発生を極力防止して、安定した制動力を長期間持続させることができるようになる。
【出願人】 【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
【出願日】 平成11年12月27日(1999.12.27)
【代理人】 【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦 (外1名)
【公開番号】 特開2001−182763(P2001−182763A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−369108