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【発明の名称】 ブレーキ装置
【発明者】 【氏名】ローラント・マルテイン

【要約】 【課題】性能が改善され、同時に寿命が改善された、ブレーキ装置を提供する。

【解決手段】C/C−SiC材料からなるブレーキディスク2と摩擦パッド3とを備えたブレーキ装置に関する。摩擦リング4だけがC/C−SiC材料からなり、摩擦リングは支持体5に点状に連結されている。摩擦リングを支持体に連結するために、ピンクが設けられ、このピンの頭8が支持体内で半径方向に移動可能に保持され、頭が摩擦リングを受けるためにスリーブ9を備え、支持体と摩擦リングの間に空隙15が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 C/C−SiC材料からなるブレーキディスク(2)と摩擦パッド(3)とを備えたブレーキ装置において、摩擦リング(4)だけがC/C−SiC材料からなり、摩擦リングが支持体(5)に点状に連結されていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】 摩擦リングを支持体に連結するために、ピン(7)が設けられ、このピンの頭(8)が支持体(5)内で半径方向に移動可能に保持され、頭が摩擦リング(4)を受けるためにスリーブ(9)を備え、支持体と摩擦リングの間に空隙(15)が形成されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ装置。
【請求項3】 摩擦リング(4)が伸開線状の冷却通路(19)を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ装置。
【請求項4】 摩擦リング(4)に穴(22)が設けられ、この穴が摩擦リングの外面から冷却通路(19)に延びていることを特徴とする請求項3記載のブレーキ装置。
【請求項5】 摩擦リング(4)が2個の半部(17,18)からなり、この半部が珪化の前に加工され、珪化によって互いに連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項6】 摩擦パッド(3)が60%以上、特に60〜70%の範囲の銅を有する銅焼結材料からなり、グラファイト、フェロクロムおよび鉄の材料のグループからなる1個または複数の混合物を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項7】 摩擦パッド(3)の背面(24)に、断熱手段(25)が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項8】 摩擦パッド(3)を収容するブレーキキャリパの内面に、断熱手段(28)が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維補強されたカーボン−シリコンカーバイド−材料(C/C−SiC材料)からなるブレーキディスクと摩擦パッドとを備えたブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】このようなブレーキディスクを製作するために、炭素繊維補強された炭素からなる成形体(いわゆる圧粉体)に液状シリコンが浸潤され、熱処理が施される。この場合、シリコンが炭素とともにSiCに変換されるので、全体としていわゆるC/C−SiC材料が出来上がる。
【0003】これに関して、ドイツ連邦共和国特許第4438455号公報は、通路と閉じた中空室を備えたC/C−SiCブレーキディスクを製作するための方法を示している。珪化の前に、処理されていないカーボン本体(圧粉体)に中空室と凹部が形成される。更に、2つの半部からなるブレーキディスクが設けられている。この場合、珪化の前に半部に通路と凹部が形成され、そして珪化によって半部が互いに連結される。
【0004】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19727586号公報により、ブレーキディスクとブレーキパッドからなるブレーキユニットが知られている。このブレーキユニットの場合、C/SiC複合セラミックスからなるブレーキディスクは、同じ材料からなるブレーキパッドと組み合わせられている。この場合、ブレーキパッドのC/C前駆体が少なくとも表面近くの範囲において、ブレーキディスクのC/C前駆体よりも大きな密度を有する。しかし、特に珪化された摩擦パートナー(ブレーキディスクとブレーキパッド)の高い表面硬さに基づいて、摩擦状態は不充分である。
【0005】更に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19727587号公報は、ブレーキディスクとブレーキパッドからなるブレーキユニットを開示している。このブレーキユニットの場合、大きな熱負荷に耐える材料、特に短繊維強化されたC/SiCセラミックブレーキディスクからなるブレーキディスクが、有機化合マトリックスを有するブレーキパッドに連結されている。その際、ブレーキディスクは、ディスク表面に対して垂直な熱伝導率が少なくとも20W/mKであるように設計されている。熱伝導率は好ましくは30〜40W/mkの範囲内に調節される。セラミックブレーキディスクと関連して、良好な熱伝導性により、慣用の有機化合ブレーキパッドが使用可能である。しかし、この場合に得られる寿命は不充分である。
【0006】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19727585号公報により、ブレーキディスクとブレーキパッドからなるブレーキユニットが知られている。この場合、ブレーキディスクは大きな熱負荷に耐える材料、特に短繊維強化されたC/SiCセラミック材料からなっている。ブレーキパッドは焼結金属材料またはバインダ相と金属粒子を有する無機化合材料からなっている。焼結金属は、銅、銅合金、鉄または鉄合金と他の添加材からなっている。実施例では、2/3のスチールウールと1/3の銅粉末からなる80〜90重量%の金属が設けられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この技術水準から出発して、本発明の課題は、性能が改善され、同時に寿命が改善された、冒頭に述べたブレーキ装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この課題は本発明に従い、独立請求項の特徴によって解決される。摩擦リングだけがC/C−SiC材料から形成され、摩擦リングが支持体に点状に連結されていることが提案される。このような支持体は別個のブレーキカップでもよいし、ホイールハブでもよい。この構成により、C/C−SiC材料から形状的に比較的に簡単な物体が作られる。この物体の場合、熱の作用を受けても引張り応力が小さい。これによって、C/C−SiC材料における亀裂形成が最小となり、それによって摩擦リングの寿命が長くなるので有利である。更に、支持体との点状の連結により、支持体と摩擦リングの異なる熱膨張によって亀裂が発生しない。なぜなら、このような連結部は軟らかく形成可能であるからである。点状の連結部により、摩擦リングと支持体との間の熱伝達が悪くなるので、支持体の熱負荷が同じである場合、C/C−SiC材料からなる耐熱性の摩擦リングが大きな負荷に耐えることができる。
【0009】本発明の有利な実施形は従属請求項に記載されている。
【0010】摩擦リングを支持体に連結するために、ピンを設けることが提案される。このピンはそれぞれ頭を備え、この頭は例えば支持体の溝内で半径方向に移動可能に保持されている。この固定方法により、一方では、制動時に発生する力の確実な伝達が保証される。他方では、支持体と摩擦リングは熱の作用時に互いに独立して膨張することができるので、熱応力の発生が確実に防止される。更に、摩擦リングを収容するために、スリーブが設けられている。それによって、ピンに設けられる固定要素はスリーブに支持され、摩擦リングに支持されない。この手段により、ピンの固定時に、摩擦リングに誤って力が伝達されることがない。この力は事情によっては摩擦リングを損傷させることになる。更に、この手段により、ピンと摩擦リングの間の連結範囲内に、不所望な熱応力が発生することがない。支持体と摩擦リングの間に設けられた空隙は、摩擦リングと支持体の間の熱伝達を一層低減するので有利である。このような空隙は、ピンの頭に適当な段差部、例えば円板状の段差部が設けられていることによってきわめて簡単に形成される。
【0011】性能を一層高めるために、摩擦リングには伸開線状の冷却通路が設けられている。例えば円筒状の穴として形成された半径方向配置の冷却通路と比べて、この伸開線状の通路は、大きな圧力降下によって、大きな空気流量が得られるという利点がある。更に、ブレーキディスクのジャダーが回避される。なぜなら、冷却通路の間に形成されたリブが摩擦パッドの介入範囲内で摩擦パッドの介入エッジに対して斜めに位置するからである。冷却作用を一層高めるために、摩擦リングに穴を設けることができる。この穴は摩擦リングの表面から軸方向に冷却通路の中央まで延びている。この配置構造は、摩擦リングがC/C−SiC材料からなる場合に、例えばねずみ鋳鉄からなる摩擦リングと同様に、亀裂の形成を心配する必要がないという認識に基づいている。ねずみ鋳鉄からなる摩擦リングはリブを通過する穴だけを備えることができる。冷却通路およびまたは穴を有する摩擦リングは特に、摩擦リングが2つの組み合わせられた半部からなる方法で製作すべきである。この場合、炭素繊維補強されたカーボン(いわゆる圧粉体)からなる成形体の製作の際に既に、冷却通路と場合によっては穴を設けることができる。他の加工、特に切削加工は好ましくは圧粉体で行われる。なぜなら、圧粉体は軟らかく、従って加工しやすいからである。圧粉体の成形時に穴が形成されない場合には、穴は切削加工時に穿孔によって形成可能である。続いて、摩擦リングの両半部が珪化によって互いに連結される。完成した摩擦リングは最少の後加工で済み、例えば要求された表面品質を生じるための摩擦面範囲の仕上げ研磨をするだけでよい。
【0012】摩擦パッドのために好ましくは、60%以上、特に60〜70%の銅の割合を有する銅焼結材料が使用される。この対の摩擦材は広い速度範囲および温度範囲にわたって非常に一定の摩擦係数を有すると共に、低温状態でも高温状態でもきわめて良好な応答性を有する。更に、湿った状態でのブレーキング、腐食しにくさ、熱的な動特性、すなわち冷却速度が良好であるという利点がある。更に、グラファイト、フェロクロムまたは鉄を混合することができる。結合材としては、銅、亜鉛、銀またはこれらの混合物が使用可能である。このような摩擦パッドは組成の変更によって、その特性である熱伝導、温度に関する摩擦状態、摩耗および圧縮状態を、摩擦リングの材料に調和させることができる。この場合、摩擦パッドと摩擦ディスクの寿命が10万km以上の走行距離を達成できるように、摩耗状態が調節可能であるという利点がある。
【0013】性能を更に高めるために、絶縁手段を設けることができ、それによって他のブレーキ系、特にブレーキ液が許容されないように加熱されなくなる。そのために、摩擦パッドの背面に、断熱手段を設けることが提案される。それによって、摩擦パッドとブレーキキャリパの間の接触面での熱の伝達を低減することができる。このような手段は例えば、摩擦パッドの背面のセラミックコーティングまたは摩擦パッドの背面に設けられたサンドイッチ薄板である。輻射熱による熱伝達を低減するために更に、断熱手段をブレーキキャリパに設けることができる。この場合、例えば熱保護フィルムを使用することができる。この熱保護フィルムはブレーキキャリパと反対の側で反射し、ブレーキキャリパ寄りの側で絶縁するようにコーティングされている。この手段は摩擦リング寄りのブレーキキャリパのすべての面に設けることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、図1に示した実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【0015】図1に主要な断面を示したブレーキ装置1は、ブレーキディスク2と2個の摩擦パッド3からなっている。ブレーキディスク2は2つの部分から形成され、ブレーキカップ5に保持された摩擦リング4を備えている。ブレーキパッド3は摩擦リング4に作用し、ブレーキキャリパ6によって摩擦リング4に押し付けられる。
【0016】図2は摩擦リング4の構造と、ブレーキカップ5に対する摩擦リング4の連結を詳細に示している。摩擦リング4はピン7によってブレーキカップ5に連結されている。このピン7は頭8とスリーブ9を備えている。頭8は2つの円板状の部分11,12の間に配置された長方形の段差部10を備えている。この段差部10は溝13内にある。この溝自体は摩擦リング4に対して平行に延びる、ブレーキカップ5のエッジ14に形成されている。ピン7の第2の円板状部分12により、摩擦リング4とブレーキカップ5の間に、空隙15(図1参照)が形成されている。スリーブ9の長さはほぼ摩擦リング4の厚さに等しい。摩擦リング4を固定するためにピン7にねじ込まれているボルト16は、スリーブ9に支持されている。摩擦リング4の厚さに対してスリーブ9の長さを調和させることにより、ボルト16による締付け力は実質的にスリーブ9を介してあるいは摩擦リング4を介して、ピン7の頭8に伝達される。本実施の形態では、ボルト16が実質的にスリーブ9に支持されているので、摩擦リング4は小さな締付け力でピン7に保持される。更に、摩擦リング4からの熱伝達によるボルト16の熱負荷がスリーブ9によって低減される。
【0017】摩擦リング4は2つの半部17,18からなっている。この半部は元々はC/C材料で作られ、珪化(シリコナイジング)によって1つのユニットに互いに連結されている。摩擦リング4内には冷却通路19が設けられている。この冷却通路の間にリブ20が形成されている。元々リブ20の範囲において半部17,18の間に形成された分離継ぎ目21には、製作プロセス中両半部17,18を位置決めするために、段差が形成されている。
【0018】図3の部分断面図から判るように、冷却通路19は伸開線状に形成されている。すなわち、冷却通路の横断面は摩擦リング4の外面の方に向かって連続的に広がっている。冷却通路9のほぼ中央に、それぞれ1列に配置された穴22が設けられている。この穴22によって、摩擦リング4の表面からの熱排出が改善される。なぜなら、冷却通路19内の圧力降下に基づいて、多量の空気が穴22を通過するからである。穴22は更に、水に濡れたときのブレーキディスク1の応答状態を改善するために役立つ。なぜなら、摩擦リング4の表面にある水フィルムが摩擦パッド3によって穴22内に、続いて冷却通路19内に迅速に押しのけられるからである。
【0019】ピン7を収容するために、摩擦リング4の内面に、穴23が設けられている。この穴はブレーキカップ5寄りの摩擦リング4の半部17または両半部17,18にわたって延びることができる。
【0020】摩擦パッド3は60〜70重量%の銅を有する銅焼結材料からなっている。摩擦リング4と摩擦パッド3が非常に耐熱性であるので、摩擦パッドの背面24にはサンドイッチ薄板25が設けられている。このサンドイッチ薄板は摩擦パッド3からブレーキピストン26ひいてはブレーキキャリパ6への熱の伝達を低減する。更に、ブレーキキャリパ6の内面27は熱保護フィルム28を備えている。この熱保護フィルムは摩擦リング4と摩擦パッド3からの熱輻射によるブレーキキャリパ6への熱伝達を低減する。
【出願人】 【識別番号】390009335
【氏名又は名称】ドクトル インジエニエール ハー ツエー エフ ポルシエ アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】DR.ING.H.C.F.PORSCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願日】 平成12年8月25日(2000.8.25)
【代理人】 【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史 (外3名)
【公開番号】 特開2001−107997(P2001−107997A)
【公開日】 平成13年4月17日(2001.4.17)
【出願番号】 特願2000−255510(P2000−255510)