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【発明の名称】 流体軸受装置
【発明者】 【氏名】園田 孝司

【氏名】浅田 隆文

【氏名】浜田 力

【要約】 【課題】軸受の信頼性を向上でき、しかも製造工程が容易である流体軸受装置を提供する。

【解決手段】固定側のシャーシ2aとスリーブ2bとを一体的に成形して取り付け部2を構成する。スリーブ2bに挿入した回転軸3の一端側にスラスト軸受板5を取り付ける。回転軸3とスリーブ2bの内周面およびスラスト軸受板5との間隙に流体12を充填する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固定側のシャーシに配置されたスリーブに回転自在に支持された回転軸の一端側にスラスト軸受板を取り付けて、前記回転軸とスリーブの内周面および前記スラスト軸受板との間隙に流体を充填した流体軸受装置であって、前記シャーシとスリーブとを一体的に形成して取り付け部を形成した流体軸受装置。
【請求項2】前記スリーブの内周面とこの内周面と対向する回転軸の外周面の少なくとも一方の面に動圧発生溝を形成した請求項1記載の流体軸受装置。
【請求項3】前記スラスト軸受板に前記回転軸をスラスト方向に支持する動圧発生溝を形成した請求項1または請求項2記載の流体軸受装置。
【請求項4】前記スリーブを、前記シャーシと一体的に形成された円筒状部から構成するとともに、前記円筒状部の基端側に前記スラスト軸受板を固定した請求項1〜請求項3のいずれかに記載の流体軸受装置。
【請求項5】前記スリーブ内周面に、銅、ニッケルメッキ、あるいは四フッ化エチレン樹脂等からなる樹脂層を形成した請求項1〜請求項4のいずれかに記載の流体軸受装置。
【請求項6】前記スリーブと前記シャーシとをプレス加工もしくはダイキャスト加工により一体的に形成した請求項1〜請求項5のいずれかに記載の流体軸受装置。
【請求項7】前記スラスト軸受板に前記シャーシに形成されたスラスト軸受板の取り付け部と係合する凸部を設けた請求項1〜請求項6のいずれかに記載の流体軸受装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体軸受装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、デジタル技術分野では、情報(データ)の高記録密度化やデータ転送の高速化が強く要望されている。それに伴って、ハードディスク装置や記録再生装置を備えた情報機器及び映像機器では、ディスク状またはテープ状の記録媒体を回転駆動させるために内蔵したモータの回転精度の向上と高速回転化とが要求されている。
【0003】このような要求を満たすために、従来より、モータの軸受装置として動圧を発生して回転体を支持する動圧型の流体軸受装置が、開発され実用化されている。以下、光ディスクや磁気ディスク等の記録媒体に情報を記録再生する記録再生装置に使用される流体軸受装置を例に挙げて説明する。
【0004】図4、図5は、従来の流体軸受装置を示す。流体軸受装置1cは、固定側としての取り付け部2に配置されたスリーブ13と、このスリーブ13によって回転自在に支持された回転軸3と、回転軸3の一端側に取り付けられたスラスト軸受板5とからなり、回転軸3とスリーブ13の内周面およびスラスト軸受板5との間隙には流体が充填されている。
【0005】詳細には、取り付け部2は、シャーシ2dと回転軸3を挿入する凹部2eとからなり、例えば亜鉛ダイキャスト材やアルミダイキャスト材により形成される。凹部2eの底部には、回転軸3をスラスト方向に支持する円板状のスラスト軸受板5が挿入され、凹部2eの内周部には、その基端部がスラスト軸受板5と接触するように軸受孔13aが形成された円筒状のスリーブ13が圧入や接着等により固定される。スラスト軸受板5は、例えばポリアミドイミド樹脂等の樹脂成形品からなり、スリーブ13は、例えば真鍮などの銅合金により形成される。
【0006】スリーブ13の内周面には、回転軸3をラジアル方向での動圧を発生させるラジアル動圧発生溝4a、4bが形成されており、軸受孔13aには、回転軸3が回転自在に挿入されている。挿入された回転軸3の外周面とスリーブ13の内周面との間には、数μm単位の所定の隙間により構成されたラジアル軸受の隙間部が形成される。
【0007】このラジカル軸受の隙間部と、回転軸3とスラスト軸受板5との間隙には、動圧源となる流体として潤滑剤12が充填される。この流体軸受装置1cをモータとして使用する場合には、凹部2eの外周部にモータステータ6が固定され、回転軸3の上端には、ディスク8を着脱可能に保持して回転駆動する回転支持体7が配置される。回転支持体7のモータステータ6との対向面には、モータロータ9が配置される。
【0008】上記のように構成された流体軸受装置1cでは、モータステータ6に通電されると回転磁界が発生し、モータロータ9に回転トルクが作用して回転支持体7が回転駆動し、それに伴なって回転軸3およびディスク8が回転する。
【0009】回転軸3が回転すると、回転軸3に形成されたラジアル動圧発生溝4a、4bにより潤滑剤12がポンピングされてラジアル方向に圧力(動圧)が発生し、回転軸3とスリーブ13の内周面とが非接触な状態で安定に回転する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の流体軸受装置1cでは、取り付け部2とスリーブ13及びスラスト軸受板5とがそれぞれ別個に構成されているため、装置の部品点数が多く、製造工程が煩雑でコストダウンが図れないという問題がある。
【0011】また、スラスト軸受板5やスリーブ13は、シャーシ2dの凹部2eに圧入して配設する必要があるため、スリーブ13を凹部2eに圧入したときにスリーブ13の軸受孔13aが変形して歪みを生じることがある。そのため、ラジアル軸受の隙間部を高精度に形成できず、所望の軸受精度を得ることができない、あるいは回転軸3とスリーブ13とが当接して回転不能となる。さらに、生じた歪みが大きい場合には、回転軸3をスリーブ13の軸受孔13aに挿入できないことがある。
【0012】さらに、凹部2eへのスリーブ13の圧入を容易にするために、凹部2eの内周面およびスリーブ13の外周面はなめらかな表面となるように面粗度を精度良く仕上げているが、このような表面仕上げを行う工程には時間がかかる上、コスト高となる。その上、流体軸受装置1cに大きな衝撃荷重が加わった場合には、スリーブ13と凹部2eとが互いにずれやすくなり、最悪の場合にはスリーブ13が凹部2eから抜けることがある。
【0013】本発明は前記問題点を解決し、軸受の信頼性を向上でき、しかも製造工程が容易である流体軸受装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の流体軸受装置は、シャーシとスリーブとを一体的に形成することを特徴とする。
【0015】この本発明によると、軸受の信頼性の高い流体軸受装置を少ない部品点数でしかも簡略な製造工程で実現できる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の流体軸受装置は、固定側のシャーシに配置されたスリーブに回転自在に支持された回転軸の一端側にスラスト軸受板を取り付けて、前記回転軸とスリーブの内周面および前記スラスト軸受板との間隙に流体を充填した流体軸受装置であって、前記シャーシとスリーブとを一体的に形成して取り付け部を形成したことを特徴とする。
【0017】この構成によると、軸受の信頼性の高い流体軸受装置を少ない部品点数で、しかも簡略な製造工程で実現できる。本発明の請求項2記載の流体軸受装置は、請求項1において、前記スリーブの内周面とこの内周面と対向する回転軸の外周面の少なくとも一方の面に動圧発生溝を形成したことを特徴とする。
【0018】この構成によると、発生した動圧によって回転軸をラジアル方向に高精度に支持できる。本発明の請求項3記載の流体軸受装置は、請求項1または請求項2において、前記スラスト軸受板に前記回転軸をスラスト方向に支持する動圧発生溝を形成したことを特徴とする。
【0019】この構成によると、発生した動圧によって回転軸をスラスト方向に高精度に支持できる。本発明の請求項4記載の流体軸受装置は、請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、前記スリーブを、前記シャーシと一体的に形成された円筒状部から構成するとともに、前記円筒状部の基端側に前記スラスト軸受板を固定したことを特徴とする。
【0020】この構成によると、スラスト軸受板をシャーシへ容易に取り付けできる。本発明の請求項5記載の流体軸受装置は、請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、前記スリーブ内周面に、銅、ニッケルメッキ、あるいは四フッ化エチレン樹脂等からなる樹脂層を形成したことを特徴とする。
【0021】この構成によると、こすれや摺動による摩耗を抑制して軸受部の耐摩耗性を向上できる。本発明の請求項6記載の流体軸受装置は、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、前記スリーブと前記シャーシとをプレス加工もしくはダイキャスト加工により一体的に形成したことを特徴とする。
【0022】この構成によると、一体的に成形されたスリーブと前記シャーシとが容易に得られる。本発明の請求項7記載の流体軸受装置は、請求項1〜請求項6のいずれかにおいて、前記スラスト軸受板に前記シャーシに形成されたスラスト軸受板の取り付け部と係合する凸部を設けたことを特徴とする。
【0023】この構成によると、スラスト軸受板のシャーシへの取り付けがさらに容易となる。
【0024】以下、本発明の実施の形態を図1〜図3を用いて具体的な実施の形態に基づいて説明する。
【0025】なお、従来例を示す図4、図5と同様の構成をなすものには同一の符号を付けて説明する。
(実施の形態)この実施の形態では、図1に示すように、流体軸受装置1aの取り付け部2を構成するシャーシ2aと、回転軸3を挿入するスリーブ2bとを一体的に成形した点で上記従来例とは異なる。
【0026】流体軸受装置1aを構成する固定側としての取り付け部2は、ベースを構成するシャーシ2aとスリーブ2bとを一体的に形成して構成される。シャーシ2aとスリーブ2bとを一体的に形成する方法としては、例えば、亜鉛ダイキャスト材やSPCC鉄板、あるいは複合金属板等の金属部材を、プレス加工やダイキャスト加工により一体的に形成する方法が挙げられる。また、チクソモールド材料や樹脂を用いて成形加工してもよい。
【0027】シャーシ2aには、流体軸受装置1aを制御する制御回路を含んだプリント回路基板(図示せず)が取り付けられる。また、ボルトに例示される固定部材用の孔が形成されており、この流体軸受装置1aを、例えば記録再生装置などの他の電気機器に固定できる。
【0028】スリーブ2bはシャーシ2aに連なって形成された円筒状部からなり、円筒状部の軸受孔2cに回転軸3が挿入され回転自在に支持される。スリーブ2bの内周面にはラジアル方向の動圧を発生させて回転軸3をラジアル方向に高精度に支持するるラジアル動圧発生溝4a、4bが形成されており、回転軸3の外周面とスリーブ2bの内周面との間には、数μm単位の所定の隙間により構成されたラジアル軸受の隙間部が形成される。
【0029】スリーブ2bの基端部は開口となっており、回転軸3の基端部と対向する位置に回転軸3をスラスト方向に支持する円板状のスラスト軸受板5が取り付けられている。スラスト軸受板5は、例えばポリアミドイミド樹脂等の樹脂成形品からなり、スリーブ2bの基端部側から圧入やかしめ等によって固定される。従って、上記従来例よりもスリーブ2bへのスラスト軸受板5の取り付け作業が容易になる。
【0030】上記のように構成された回転軸3とスリーブ2bの内周面およびスラスト軸受板5との間隙には、動圧源となる流体として潤滑剤12が充填され、流体軸受装置1aが構成される。
【0031】この流体軸受装置1aをモータとして使用する場合には、スリーブ2bの外周部にモータステータ6が固定され、回転軸3の上端には回転支持体7が結合されてディスク8が着脱可能に保持される。回転支持体7のモータステータ6との対向面にはモータロータ9が配置される。
【0032】そして、モータステータ6に通電されると回転磁界が発生し、モータロータ9に回転トルクが作用して回転支持体7が回転駆動し、それに伴なって回転軸3およびディスク8が回転する。
【0033】回転軸3が回転すると、回転軸3に形成されたラジアル動圧発生溝4a、4bにより潤滑油12がポンピングされラジアル方向に圧力(動圧)が発生し、回転軸3とスリーブ2bの内周面とが非接触な状態で安定に回転する。
【0034】このように構成された流体軸受装置1aでは、シャーシ2aとスリーブ2bとが一体的に形成されて取り付け部2が構成されているため、流体軸受装置1aを構成する部品の点数および製造工程数を削減でき、低コスト化が容易に実現できる。
【0035】また、シャーシ2aとスリーブ2bとを一体的に形成することで、上記従来例のようにスリーブ2bを取り付け部2に圧入する必要がなくなり、圧入時に生じる軸受孔2cの変形などを解消でき、高精度な組み立てが実現できる。
【0036】また、流体軸受装置1aに大きい衝撃荷重が加わっても、スリーブ2bとシャーシ2aにずれが生じたり、スリーブ2bが抜けることがなくなる。なお、本発明の流体軸受装置1aは、上記構成に加えて、図2に示すように回転軸3との対向面にスラスト動圧発生溝14が形成されたスラスト軸受板5aを用いてもよい。このようなスラスト軸受板5aを使用すると、発生した動圧によって回転軸3をスラスト方向に高精度に支持できる。
【0037】また、スラスト軸受板5に通気孔を設けて、外部とスリーブ2bの内部空間とを連通する構成としてもよい。このような構成とすると、スリーブ2bの内部にたまっていた空気を通気孔から排気できるため、回転軸3のスリーブ2bへの挿入作業を容易にできる。
【0038】また、図3に示すように、上記構成に加えてスリーブ2bの内周面に樹脂層10を形成した流体軸受装置1bとしてもよい。すなわち、ラジアル動圧発生溝4a,4bが形成されたスリーブ2bの内周面に銅、ニッケルメッキ、あるいは四フッ化エチレン樹脂等を塗布して樹脂層10を形成した構成としてもよい。この樹脂層10は、スリーブ2bの内周面と回転軸3の外周面との間に形成されるラジアル軸受の隙間部に影響を与えないよう形成されていればよい。
【0039】このようにスリーブ2bの内周面に樹脂をコーティングすることで、ラジアル軸受隙間部におけるこすれや摺動による摩耗を抑制でき、軸受部の耐磨耗性を向上させ、軸受の信頼性を向上できる。
【0040】あるいは、スリーブ2bの内周面に樹脂によるコーティングを施した後、ラジアル動圧発生溝4a,4bを形成しても同様の効果が得られる。また、上記説明では、スラスト軸受板5をスリーブ2bの基端部側から圧入やかしめ等によって挿入したが、図3に示すように、スラスト軸受板5の外周縁部に円環状の突出部5bを形成し、この突出部5bをシャーシ2aに形成された凹部11と係合させてもよい。このような突出部5bを設けることで、スラスト軸受板5の取り付け作業をさらに容易に実現できる。
【0041】なお、図3に示す流体軸受装置1bにおいて、金属部材の表面を樹脂コーティングした複合部材にて取り付け部2を形成し、スリーブ2bの内周面にプレス絞り加工等を施してもよい。この構成によっても上記と同様に、ラジアル軸受隙間部におけるこすれや摺動による摩耗を抑制して軸受部の耐磨耗性を向上できる。このように複合部材を用いて流体軸受装置1bを形成する場合には、スリーブ2bの内周面だけでなく、シャーシ2aのスラスト軸受板5との対向面およびシャーシ2aの下側に樹脂層10が形成されていてもよい。
【0042】また、上記説明では、スリーブ2bの内周面にラジアル動圧発生溝4a,4bを形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シャーシ2aとスリーブ2bとが同一材質で一体的に形成されていればラジアル動圧発生溝4a,4bを回転軸3の外周面に設ける、あるいは回転軸3の外周面とスリーブ2bの内周面の両方にラジアル動圧発生溝4a,4bを設けてもよい。さらに、ラジアル動圧発生溝4a,4bを有しない構成でもよい。
【0043】また、上記説明では、動圧源となる流体として潤滑剤12を用いた例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、磁性流体などを用いてもよい。さらに、流体だけでなく気体、例えば空気を用いてもよい。
【0044】さらに、シャーシとスリーブとが一体的に形成されて取り付け部が形成された構成に、■スリーブの内周面とこの内周面と対向する回転軸の外周面の少なくとも一方の面に動圧発生溝を形成する、■スラスト軸受板に回転軸をスラスト方向に支持する動圧発生溝を形成する、■スリーブをシャーシと一体的に形成された円筒状部から構成するとともに、円筒状部の基端側にスラスト軸受板を固定する、■スリーブ内周面に、銅、ニッケルメッキ、あるいは四フッ化エチレン樹脂等からなる樹脂層を形成する、■スリーブとシャーシとをプレス加工もしくはダイキャスト加工により一体的に形成する、■スラスト軸受板にシャーシに形成されたスラスト軸受板の取り付け部と係合する凸部を設けるといった、上記■〜■の構成要件の単数または複数の組み合わせでも、従来に較べて性能の向上を期待できる。
【0045】
【発明の効果】以上のように本発明の流体軸受装置によると、シャーシとスリーブとを一体的に形成することで、流体軸受装置を構成する部品の点数および製造工程数を削減できる。また、シャーシとスリーブとが一体的に形成されているため、スリーブの軸受孔の変形などの歪みを生じることなく高精度に組み立てでき、流体軸受装置に大きい衝撃荷重が加わっても、スリーブとシャーシにずれが生じたりスリーブが抜けることがなくなる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成12年2月28日(2000.2.28)
【代理人】 【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開2001−241431(P2001−241431A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−50362(P2000−50362)