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【発明の名称】 流体動圧軸受及びスピンドルモータ
【発明者】 【氏名】小槫 利春

【氏名】岩城 忠雄

【氏名】竹原 勇

【氏名】後藤 廣光

【氏名】鈴木 隆文

【氏名】花岡 正敏

【氏名】北原 治夫

【要約】 【課題】軸受構成部材を製作する材料の種類に特別な制約を受けないで、且つ負圧が発生しない簡単な構成の流体動圧軸受を提供すること。

【解決手段】流体動圧軸受は、固定シャフト11と、この固定シャフト11を受けるスリーブ12と、スリーブ12の上端に蓋をする円盤状蓋部材13と、固定シャフト11の外周面とスリーブ12の内周面との間に形成された隙間に充填された潤滑油Fとで構成されている。そして、固定シャフト11を、その断面を対称軸が3本の非円形断面の棒部材とすることによって、スリーブ12の内周面との間にラジアル動圧発生用くさび形隙間を等間隔に3つ形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スリーブと、このスリーブに回転自在に嵌合して配設されたシャフトと、これらスリーブとシャフトとの間に形成された微小隙間に充填された潤滑油とからなる流体動圧軸受において、前記シャフトの断面を対称軸が3本の非円形断面とすることによって前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間にラジアル動圧発生用くさび形隙間を等間隔に3つ形成したことを特徴とする流体動圧軸受。
【請求項2】 有底のスリーブと、このスリーブに回転自在に嵌合して配設されたシャフトと、これらスリーブとシャフトとの間に形成された微小隙間に充填された潤滑油とからなる流体動圧軸受において、前記シャフトの断面を対称軸が3本の非円形断面とすることによって前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間にラジアル動圧発生用くさび形隙間を等間隔に3つ形成し、且つ前記シャフトの端面又はこれと対向する前記スリーブの底面にスラスト動圧発生溝を形成したことを特徴とする流体動圧軸受。
【請求項3】 前記シャフトの非円形断面が、前記スリーブの内周面の直径よりもクリアランス分だけ小さい直径の同心円の3本の円弧と、相隣接する円弧の端部を結ぶ3本のL字形線分とからなるものであることを特徴とする請求項1又は2の流体動圧軸受。
【請求項4】 前記シャフトの非円形断面が、前記スリーブの内周面の直径よりもクリアランス分だけ小さい直径の同心円に内接する正三角形の頂点を、前記同心円よりも大径の3本の円弧で結んで形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2の流体動圧軸受。
【請求項5】 ロータ磁石を有するロータと、ステータコイルを有するステータと、ロータをステータに回転自在に支持する軸受とからなるスピンドルモータにおいて、前記軸受は請求項1又は2の流体動圧軸受であることを特徴とするスピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スリーブと、このスリーブに回転自在に嵌合して配設されたシャフトと、これらスリーブとシャフトとの間にラジアル動圧発生用くさび形隙間が形成された流体動圧軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】携帯型電子機器の急速な普及に伴って、その回転駆動源であるスピンドルモータに小型化と軽量化の要求がなされてきた。その結果、スピンドルモータの軸受に広く採用されている流体動圧軸受には更なる小型化と軽量化が要求されるようになった。そこで、図4に示す如く、リング部材3と円柱部材2とからなるフランジ付シャフト1と、このフランジ付シャフト1を受けるスリーブ4と、スラスト押さえ部材としても機能する環状蓋部材5とから構成され、リング部材3の上面と下面にはヘリングボーン溝の如きスパイラルのスラスト動圧発生溝G2がプレスやエッチング等により形成され、且つ円柱部材2の外周面にはヘリングボーン溝の如きラジアル動圧発生溝G1が転造等により形成され、更にこれらの軸受構成部材間に形成された円環状微小隙間RS1、RS2、略円盤状微小隙間RV、円筒状微小隙間RR、及び複数対のスラスト方向循環孔Qには潤滑油が真空注入法により注入され、充填されている流体動圧軸受が開発された。
【0003】ところが、小形化と軽量化の要求に応えるためには、軸受構成部材の寸法が小さくなり、従って軸受隙間を含む微小隙間に封入される潤滑油の量も少なくならざるを得ない。このため、高速回転中に、軸受隙間の端部、即ち図4においては円環状微小隙間RS1とRS2のそれぞれの外端部C1とC2で負圧が生じ、十分な動圧が維持できないという問題が発生した。そこで、リング部材3にスラスト方向循環孔Qを設け、これを潤滑油溜り兼用の潤滑油の循環路として機能させ、この問題を解決した。しかしながら、このような循環孔Qを設けることは、その分だけ加工コストを上げるものであるから、本来は好ましくないものである。そこで、負圧を発生しないスピンドルモータ用軸受として、軸受を焼結多孔質材からなる含油軸受から構成したいわゆるハイブリッド型軸受が着目されてきた。
【0004】特開平3−107612号公報には、軸孔にシャフトを回転自在に支持する焼結含油軸受において、上記軸孔には等角度に配置した3条以上の突出部を形成し、この突出部は上記シャフトとのクリアランスを他の内周面よりも小さくし、上記シャフトと上記突出部の入口側との間にくさび形隙間を形成してなる焼結含油軸受のハイブリッド型軸受が開示されている。
【0005】また、特開平9−200998号公報には、回転シャフトとこの回転シャフトを受ける焼結金属の型成形体の軸受とからなり、軸受内周・回転シャフト外周間の隙間に潤滑剤が介在し、軸受内周面には軸受中心と同心をなして前記隙間の最小部分を決定する同心円弧面と、前記隙間がシャフト回転方向に向かって次第に狭まって前記同心円弧面につながるよう軸受中心から偏心した偏心円弧面とが、それぞれ3つ以上、同心円弧面同志及び偏心円弧面同志で等角度配置になるよう形成され、且つ、これによって前記隙間はくさび形隙間となって、前記回転シャフトの回転と前記くさび形隙間との協動によりラジアル動圧が発生するように構成されたすべり軸受のハイブリッド型軸受が開示されている。
【0006】上記従来のハイブリッド型軸受において、そのラジアル軸受は、材料コストの非常に安い焼結粉末合金、例えば、含油性を有し且つ成形加工が容易な銅ベースの焼結金属粉末を用いて型成形されたドーナツ状型成形体を軸受ハウジングに圧入した後に、このドーナツ状型成形体の内周面に所定の多円弧面及び寸法精度になるようにサイジング加工して製作されている。従って、いずれも、量産性に優れ、低コスト化を図れるものである。
【0007】しかしながら、これら従来のハイブリッド型軸受においては、目つぶし加工がなされていない個所、或いはそれが十分でない個所の焼結孔を通して潤滑油がラジアル軸受隙間から外部に漏れ出してしまい、その分だけ動圧が低下するという問題がある。また、温度上昇や減圧等によって、ラジアル軸受隙間に気泡が発生したり、気泡が膨張したりして、これらの気泡が潤滑油を焼結孔内に入り易くするという好ましくない作用が発生する。更に、加工容易性、低コスト、温度特性等の制約から、利用できる焼結合金粉末の種類が限定されるという問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする第1の課題は、軸受構成部材を製作する材料の種類に特別な制約を受けないで、且つ負圧が発生しない簡単な構成の流体動圧軸受を提供することである。解決しようとする第2の課題は、円滑な高速回転を維持できるスピンドルモータを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題を解決する請求項1の流体動圧軸受を、スリーブと、このスリーブに回転自在に嵌合して配設されたシャフトと、これらスリーブとシャフトとの間に形成された微小隙間に充填された潤滑油とから構成し、そして、前記シャフトの断面を対称軸が3本の非円形断面とすることによって前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間にラジアル動圧発生用くさび形隙間を等間隔に3つ形成した。
【0010】上記第1の課題を解決する請求項2の流体動圧軸受を、有底のスリーブと、このスリーブに回転自在に嵌合して配設されたシャフトと、これらスリーブとシャフトとの間に形成された微小隙間に充填された潤滑油とから構成し、そして、前記シャフトの断面を対称軸が3本の非円形断面とすることによって前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間にラジアル動圧発生用くさび形隙間を等間隔に3つ形成し、且つ前記シャフトの端面又はこれと対向する前記スリーブの底面にスラスト動圧発生溝を形成した。
【0011】上記第1の課題を解決する請求項3の流体動圧軸受を、請求項1又は2の流体動圧軸受において、前記シャフトとして前記スリーブの内周面の直径よりもクリアランス分だけ小さい直径の同心円の3本の円弧と、相隣接する円弧の端部を結ぶ3本のL字形線分とからなる非円形断面の部材を採用した。
【0012】上記第1の課題を解決する請求項4の流体動圧軸受を、請求項1又は2の流体動圧軸受において、前記シャフトとして前記スリーブの内周面の直径よりもクリアランス分だけ小さい直径の同心円に内接する正三角形の頂点を、前記同心円よりも大径の3本の円弧で結んで形成された非円形断面の部材を採用した。
【0013】上記第2の課題を解決する請求項5のスピンドルモータを、ロータ磁石を有するロータと、ステータコイルを有するステータと、請求項1又は2の流体動圧軸受とによって構成した。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係るスピンドルモータの一実施形態は、図1に示す如く、ロータ磁石15を含むロータがステータコイル16を含むステータに、流体動圧軸受によって回転自在に支持されて構成されている。そして、この流体動圧軸受は、本発明に係る流体動圧軸受であって、固定シャフト11と、この固定シャフト11を受けるスリーブ12と、スリーブ12の上側開放端に蓋をする円盤状蓋部材13と、固定シャフト11の外周面とスリーブ12の内周面との間に形成された隙間に充填された潤滑油Fとで構成されている。固定シャフト11はその下端を固定用ネジ18によってモータ基板17に固定されている。ステータコイル16は、モータ基板17に環状に配置されて取り付けられている。多極着磁された環状のロータ磁石15は、ステータコイル16に対向配置され、スリーブ12の外周面の下部に取り付けられている。磁気ディスク等の回転体を載架するハブ14は、スリーブ12に圧入によって外嵌されている。
【0015】本発明に係る流体動圧軸受において、スリーブ12は円筒部材で形成されているのに対し、シャフト11の第1実施形態は、図2に示す如く3本の円弧Aと、相隣接する円弧の端部を結ぶ3本のL字形折れ線Bとから形成された非円形断面を有する棒部材が採用されている。円弧Aはスリーブ2の内周面の直径よりもクリアランスRだけ小さい直径の同心円の円弧であり、またL字形折れ線Bは長さの異なる2本の直線を所定の角度で接続して形成されたものである。従って、このような非円形断面のシャフト11の外周面と、スリーブ12の円筒状内周面との間には、3つのくさび形隙間Wが形成されている。クリアランスRは、流体動圧軸受のサイズ、回転速度、潤滑油の種類によって異なるが、数10〜数100μである。
【0016】本発明に係る流体動圧軸受において、シャフト11の第2実施形態は、図3に示す如く、3本の円弧Dで形成された非円形断面を有する棒部材で形成されている。即ち、このシャフト11には、円筒部材であるスリーブ12の内周面の直径よりもクリアランスRだけ小さい直径の同心円に内接する正三角形の頂点を、前記同心円よりも大径の円弧Dで結んで形成された非円形断面を有する棒部材が採用されている。従って、このような非円形断面のシャフト11の外周面と、スリーブ12の円筒状内周面との間には、3つのくさび形隙間Wが形成されている。
【0017】シャフト11の上端面には、スパイラル状のヘリングボーン溝の如きスラスト動圧発生溝G2が、プレスやエッチング等により形成されている。シャフト11の下側は円柱部とされており、これによってシャフト11の外周面とスリーブ2の内周面との間に一端が大気に開放された所定長さで且つ前記クリアランスと同じ幅の環状の微小隙間が形成されている。この環状の微小隙間は、その開放端側においてシャフト11の外周面とスリーブ12の内周面との間に形成されたテーパー状微小隙間Sとあいまって、毛細管現象と表面張力を利用したキャピラリーシールを構成している。このキャピラリーシールによって、潤滑油Fが外部に漏出することを防止している。
【0018】図2又は図3のシャフト11を、上側開放端を円盤状蓋部材5によって蓋をされたスリーブ2に回転自在に内嵌し、潤滑油Fが真空注入法により充填された図1の流体動圧軸受は、スリーブ12が高速回転すると、等間隔に配置された3つのくさび形隙間Wのそれぞれで潤滑油Fが高速移動し、回転方向の反対側の狭い隙間に押し込まれ、この部分を最大値とする圧力分布の圧力であって、ラジアル方向に向いた圧力が発生する。この圧力分布はシャフト11の中心軸に対して3つ点対称に発生し、且つスリーブの回転と共に回転する。従って、等間隔に配置された3つのくさび形隙間Wと潤滑油Fの協動作用によって、本発明に係る流体動圧軸受はラジアル動圧軸受として機能する。なお、図3に示す第2実施形態のシャフト11によって形成されたくさび形隙間Wは三日月形であるから、このシャフト11を用いた流体動圧軸受は正逆回転可能なラジアル動圧軸受として機能する。また、シャフト1の上端部に形成されているスラスト動圧発生溝G2と潤滑油Fの協動作用によって、本発明に係る流体動圧軸受は、スラスト動圧軸受として機能する。
【0019】本発明に係る流体動圧軸受おいて、対称軸が3本の非円形断面を有するシャフト11もスリーブ12も、金属材料をNCマシーン等によって切削加工して製作される。図1において、スリーブ12は両端開放形円筒部材と、その一方の開放端を塞ぐ円盤状蓋部材13とで有底のスリーブを形成しているが、有底のスリーブを金属部材から切削によって一体に形成してもよい。
【0020】以上、シャフト固定型流体動圧軸受の実施形態について詳細に説明したが、本発明はシャフト回転型流体動圧軸受にも適用できることは勿論である。また、スリーブを一端開放型でなく両端開放型としても、本発明に係る流体動圧軸受を構成することができる。
【0021】
【発明の効果】本発明に係る流体動圧軸受は、金属材料を切削してスリーブとシャフトを製作し、且つシャフトの断面を対称軸が3本の非円形断面とすることによって3つのラジアル動圧発生用くさび形隙間を形成し、且つシャフトの端面にはスラスト動圧発生溝を形成したものであるから、負圧が発生しない簡単な構成の流体動圧軸受を提供することができた。また、本発明に係る流体動圧軸受は、焼結金属粉末の型成形で製作された従来のハイブリッド軸受に比べて、軸受構成部材を製作する材料の種類に特別な制約を受けないという特長を有する。更に、ロータ磁石を有するロータと、ステータコイルを有するステータと、上記流体動圧軸受によって、円滑な高速回転を維持できるスピンドルモータを構成することができた。
【出願人】 【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツルメンツ株式会社
【出願日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【代理人】 【識別番号】100079212
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 義治
【公開番号】 特開2001−241429(P2001−241429A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−49430(P2000−49430)