トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 動圧軸受およびその製造方法
【発明者】 【氏名】小林 康裕

【氏名】藤井 義樹

【氏名】高橋 毅

【要約】 【課題】開放側から潤滑剤が漏れ出るのを防いで、耐久性を向上できる動圧軸受およびその製造方法を提供する。

【解決手段】軸部5とフランジ部6とからなるシャフト2を、相対回転自在にハウジング1に嵌合させる。ハウジング1は、一方の端部に開口7が形成されたスリーブ4と、スリーブ4の他方の端部に取り付けられたプレート3とを有する。開口7側のフランジ部6の端面6bには動圧溝8を形成する。この動圧溝8は、径方向外側よりも径方向内側の方が深くなっている。つまり動圧溝8において、開口7に近い位置における溝の深さの方が、開口7から離れた位置における溝の深さよりも深くなっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングにシャフトが相対回転自在に嵌合され、上記ハウジングまたはシャフトの少なくとも一方に動圧溝が形成された動圧軸受において、上記動圧溝のうち開放側に位置する溝の深さを密閉側に位置する溝の深さをよりも深くしたことを特徴とする動圧軸受。
【請求項2】 請求項1の発明の動圧軸受の製造方法であって、上記動圧溝を形成すべき箇所に電極を対向させ、上記開放側から密閉側に向って電解液を流すと共に、上記電極に通電することを特徴とする動圧軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動圧軸受およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、動圧軸受としては、軸部とフランジ部とからなるシャフトと、このシャフトが相対回転自在に嵌合されたハウジングとを備え、そのハウジングとシャフトとの間の潤滑剤に対して動圧を発生する動圧溝をフランジ部の軸方向の両端面に一定の深さで形成したものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記動圧軸受では、ハウジングからシャフトの端部が外部に突出していて、このシャフトの突出している側、つまり開放側からハウジングとシャフトとの間の潤滑剤が外部に漏れ出してしまうという問題がある。このように、潤滑剤が外部に漏れると動圧が発生しなくなって、ハウジングとシャフトの摩擦が増大して、耐久性が低下するという問題がある。
【0004】そこで、本発明の目的は、開放側から潤滑剤が漏れ出るのを防いで、耐久性を向上できる動圧軸受およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1の発明の動圧軸受は、ハウジングにシャフトが相対回転自在に嵌合され、上記ハウジングまたはシャフトの少なくとも一方に動圧溝が形成された動圧軸受において、上記動圧溝のうち開放側に位置する溝の深さを密閉側に位置する溝の深さをよりも深くしたことを特徴としている。
【0006】上記請求項1の発明の動圧軸受によれば、上記ハウジングとシャフトとの間に潤滑剤を充填し、ハウジングに対してシャフトを回転させると、動圧溝のポンピング作用で潤滑剤に動圧が発生する。このとき、開放側の動圧溝の深さを密閉側の動圧溝よりも深くし、深い溝のポンピング作用が大きく、浅い溝のポンピング作用が小さいから、開放側から密閉側へつまり内部方向に潤滑剤を引き込むような力が作用して、潤滑剤が開放端から流出するのが防止される。その結果、常に、十分な動圧を発生させることができて、ハウジングとシャフトとの摩耗が増大せず、耐久性を向上させることができる。なお、上記シャフトに対してハウジングが回転する場合も同様の効果を奏する。
【0007】また、請求項2の動圧軸受の製造方法は、請求項1の発明の動圧軸受の製造方法であって、上記動圧溝を形成すべき箇所に電極を対向させ、上記開放側から密閉側に向って電解液を流すと共に、上記電極に通電することを特徴としている。
【0008】上記請求項2の発明の動圧軸受の製造方法によれば、上記電極と、動圧溝を形成すべき箇所との間に開放側から密閉側に向って電解液を流しながら、電極に通電して動圧溝を形成する。このとき、上流側つまり開放側で溶出した不純物が電解液に混じって下流側(密閉側)に流れて行くため、上流側に比べて下流側では電解液の清浄度が低くなってしまう。そのため、上流側の電解作用の方が下流側よりも高くなり、上流側の溝の深さの方が下流側よりも深くなる。このようにして、開放側に位置する溝の深さが深く、密閉側に位置する溝の深さが浅い、潤滑剤の漏れが発生しにくい動圧軸受を簡単に製造できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の動圧軸受およびその製造方法を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0010】(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態の動圧軸受の模式断面図である。この動圧軸受は、図1に示すように、軸部5とフランジ部6とからなるシャフト2と、このシャフト2が相対回転自在に嵌合されたハウジング1とを備えている。また、上記ハウジング1は、軸方向の一端の開口7をなすスリーブ4と、このスリーブ4の軸方向の他端の開口を塞ぐプレート3とを有する。
【0011】また、上記シャフト2のフランジ部6は、開口7側の端面6bに形成されたアキシャル方向支持用の動圧溝8を有している。なお、図面において、動圧溝8の深さは1000倍以上に誇張して描かれている。この動圧溝8のうち開放側(径方向内側)に位置する溝8aの深さは、密閉端側(径方向外側)に位置する溝8bの深さよりも深くなっている。つまり、径方向内側の溝8aから径方向外側の溝8bに向かって漸次浅くなるように動圧溝8を形成して、開口7に近い位置の溝8aを、開口7から離れた位置の溝8bよりも深くしている。また、上記プレート3側のフランジ部6の端面6aには、図示しないが、径方向外側の方が径方向内側よりも深いアキシャル方向支持用の動圧溝を形成している。
【0012】上記構成の動圧軸受において、ハウジング1とシャフト2との間に潤滑剤を充填し、ハウジング1に対してシャフト2を回転させると、動圧溝8のポンピング作用で潤滑剤に動圧が発生し、この動圧によりシャフト2が軸方向に支持される。このとき、深い溝の方が浅い溝よりもポンピング作用が大きいため、潤滑剤が深い溝8aから浅い溝8bに向って移動する。したがって、上記動圧溝8において、開口7に近い位置の溝8aの深さを、開口7から離れた位置の溝8bよりも深くしたことで、開放側から密閉側へつまり内部方向に潤滑剤を引き込むような力が作用して、潤滑剤が開口7から流出するのが防止される。その結果、常に、十分な動圧を発生させることができて、ハウジング1とシャフト2との摩耗が増大せず、耐久性を向上させることができる。
【0013】また、上記動圧溝8は次のようにして形成するのが好ましい。
【0014】まず、図2に示すように、動圧溝を形成すべき箇所すなわちフランジ部26の端面26aに電極が対向するように、絶縁体21,21を有する電極工具22を配置する。そして、上記フランジ部26に連なる軸部25側から端面26aと絶縁体21,21間の電極との間に電解液を流しながら電極工具22に通電すると、フランジ部26の一部が電解作用により溶出して動圧溝が形成される。このとき、上流側(径方向内側)で溶出した不純物および水素が電解液に混じって下流側(径方向外側)に流れるため、径方向内側に比べて径方向外側では電解液の清浄度および電導度が低くなってしまう。そのため、上記フランジ部26において、径方向内側の電解作用の方が径方向外側よりも高くなり、径方向内側の溝の方が径方向外側よりも深くなる。このようにして、上記端面26aの径方向内側に位置する溝の深さが深く、端面26aの径方向外側に位置する溝の深さが浅い、潤滑剤の漏れが発生しにくい動圧軸受を簡単に製造できる。
【0015】上記実施形態では、ハウジング1に対してシャフト2が回転してる場合について説明したが、シャフト2に対してハウジング1が回転する場合も同様の効果を奏する。
【0016】また、上記実施形態では、アキシャル方向支持用の動圧溝8をフランジ部6の端面6a,6bに形成していたが、その端面6a,6bが対向するプレート3の軸受面3aおよびスリーブ4の軸受面4aにアキシャル方向支持用の動圧溝を形成してもよい。
【0017】また、上記実施形態では、スリーブ4の軸方向の他端の開口をプレート3で塞いでいたが、図3に示すように、貫通穴31を有するプレート33をスリーブ4の軸方向の他端に取り付けてもよい。この場合に用いるシャフト32は、貫通穴31,開口7に挿通される軸部35と、この軸部35に嵌合して固定したフランジ部36とからなる。また、上記プレート33側のフランジ部36の端面36aには、径方向内側の溝38aの方が径方向外側の溝38bよりも深くなっている動圧溝38を形成すると共に、スリーブ4側のフランジ部36の端面36bにも、径方向内側の溝38aの方が径方向外側の溝38bよりも深くなっている動圧溝38を形成している。より詳しくは、径方向内側の溝38aから径方向外側の溝38bに向って漸次深さが浅くなるように、動圧溝38,38を端面36a,36bに形成している。
【0018】このように、径方向内側に位置する溝38aが径方向外側に位置する溝38bの深さよりも深くなっていることによって、開口7および貫通穴31からの潤滑剤の流出が防止されて、本実施形態と同様の効果を奏する。なお、上記動圧溝38をフランジ部36の端面36a,36bに形成する代わりに、その端面36a,36bが対向するプレート33の軸受面33aおよびスリーブ4の軸受面4aにアキシャル方向支持用の動圧溝を形成してもよいのは言うまでもない。
【0019】また、上記実施形態では、軸部5とフランジ部6とからなるシャフト2を用いたが、単なる棒状のシャフトを用いてもよい。
【0020】(第2実施形態)図4は本発明の第2実施形態の動圧軸受の模式断面図である。この動圧軸受は、図4に示すように、シャフト42と、このシャフト42が相対回転自在に嵌合されたハウジング41とを備えている。また、上記ハウジング41は、軸方向の一端の開口47をなすスリーブ44と、このスリーブ44の軸方向の他端に取り付けられ、貫通穴51が形成されたプレート43とを有している。
【0021】上記シャフト42は、開口47,貫通穴51に挿通される軸部45と、この軸部45に嵌合させて固定したフランジ部46とからなる。上記軸部45の周面45aとスリーブ44の内周面44bとは対向し、ラジアル方向支持用の動圧溝48,48を内周面44bに形成している。この動圧溝48のうち開放側(軸方向外側)に位置する溝48aの深さは、密閉端側(軸方向内側)に位置する溝48bの深さよりも深くなっている。つまり、軸方向外側の溝48aから軸方向内側の溝48bに向かって漸次浅くなるように動圧溝48を形成して、開口47に近い位置の溝48aを、開口47から離れた位置の溝48bよりも深くしている。また、上記フランジ部46には、図示しないが、図3の動圧溝38,38と同様のアキシャル方向支持用の動圧溝を端面46a,46bに形成している。
【0022】上記構成の動圧軸受は、第1実施形態の動圧軸受と同様の効果を奏すると共に、上記動圧溝48,48において、開口47から離れた位置に形成された溝の深さより、開口47に近い位置に形成された溝の深さの方が深いことで、開口47近傍の潤滑剤により大きな内部方向への力が作用し、開口47からの液漏れがより確実に防止される、したがって、耐久性をより向上させることができる。
【0023】また、上記動圧溝48の形成は次のようにして行うのが好ましい。
【0024】まず、図5に示すように、絶縁体61,61がスリーブ54の内周面54aに対向するように、その絶縁体61,61間に電極を有する棒状の電極工具62を配置する。そして、上記内周面54aと電極の間に電解液を流しながら、電極工具62に通電すると、スリーブ54の一部が電解作用により溶出する。このとき、上流側つまり軸方向外側で溶出した不純物および水素が電解液に混じって下流側(軸方向内側)に流れて行くため、軸方向外側に比べて軸方向内側では電解液の清浄度および電導度が低くなってしまう。そのため、上記スリーブ54において、軸方向外側の電解作用の方が軸方向内側よりも高くなり、軸方向外側の溝の方が径方向内側よりも深くなる。このようにして、上記内周面54aの軸方向外側(開放側)で溝の深さが深く、内周面54aの軸方向内側(密閉側)で溝の深さが浅い、潤滑剤の漏れが発生しにくい動圧軸受を簡単に製造できる。
【0025】上記実施形態では、上記スリーブ44の内周面44bにラジアル方向支持用の動圧溝48,48を形成したが、軸部45の周面45aにラジアル方向支持用の動圧溝を形成してもよい。
【0026】また、上記実施形態では、アキシャル方向支持用の動圧溝をフランジ部46の端面46a,46bに形成したが、その端面46a,46bが対向するプレート43の軸受面43aおよびスリーブ44の軸受面44aに動圧溝を形成してもよい。
【0027】また、上記実施形態では、軸部45とフランジ部46とからなるシャフト42を用いたが、単なる棒状のシャフトを用いてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の発明の動圧軸受は、開放側の動圧溝の深さを密閉側の動圧溝よりも深くし、深い溝のポンピング作用が大きく、浅い溝のポンピング作用が小さいから、開放側から密閉側へつまり内部方向に潤滑剤を引き込むような力が作用して、潤滑剤が開放端から流出するのが防止されて、耐久性を向上させることができる。
【0029】請求項2の発明の動圧軸受およびその製造方法は、上流側の電解作用の方が下流側よりも高くなり、上流側の溝の深さの方が下流側よりも深くなるから、開放側に位置する溝の深さが深く、密閉側に位置する溝の深さが浅い、潤滑剤の漏れが発生しにくい動圧軸受を簡単に製造できる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成12年1月13日(2000.1.13)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2001−200837(P2001−200837A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−4549(P2000−4549)