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【発明の名称】 焼きバメによって結合された組立て部品、及びスピンドルモータ
【発明者】 【氏名】福島 喜好

【氏名】三澤 正樹

【要約】 【課題】取付け用貫通孔が穿設された第1円筒状部材と前記取付け用貫通孔に嵌合する第2円筒状部材とが焼きバメによって結合された組立て部品において、これら両部材の焼きバメによる結合部に切削油剤が侵入しないようにすること。

【解決手段】取付け用貫通孔Hが穿設された第1円筒状部材6と取付け用貫通孔Hに嵌合する第2円筒状部材4とが焼きバメによって結合された組立て部品において、第1円筒状部材6の取付け用貫通孔Hの内周面の両方の端部に環状突起P1とP2を予め形成し、第2円筒状部材4を取付け用貫通孔Hに挿入して焼きバメした。これによって、第1円筒状部材6と第2円筒状部材4の結合部の両方の端部Q1とQ2には環状突起P1とP2による隙間のない強固な環状の当接部が形成された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】取付け用貫通孔が穿設された第1円筒状部材と前記取付け用貫通孔に嵌合する第2円筒状部材とが焼きバメによって結合された組立て部品において、前記第1円筒状部材と前記第2円筒状部材の結合部の両方の端部に環状突起がそれぞれ設けられていることを特徴とする組立て部品。
【請求項2】前記2つの環状突起が前記第1円筒状部材の取付け用貫通孔の内周面に予めそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1の組立て部品。
【請求項3】前記2つの環状突起が第2円筒状部材の外周面に予めそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1の組立て部品。
【請求項4】前記環状突起の一つが前記第1円筒状部材の取付け用貫通孔の内周面又は第2円筒状部材の外周面の一方に、且つ前記環状突起の他方が前記第1円筒状部材の取付け用貫通孔の内周面又は第2円筒状部材の外周面の他方に予めそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1の組立て部品。
【請求項5】モータ基板と、円筒状回転部材と固定シャフトを具備した軸受と、取付け用貫通孔によって前記軸受の円筒状回転部材に固着された円筒状ハブ部材と、ステータコイルと、前記ステータコイルとの間の電磁相互作用によって回転力を発生させるロータ磁石とを具備して構成されたスピンドルモータにおいて、前記円筒状ハブ部材と前記円筒状回転部材は焼きバメによって結合され、且つその結合部の両方の端部に環状突起がそれぞれ設けられていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項6】前記2つの環状突起が前記円筒状ハブ部材の取付け用貫通孔の内周面に予めそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5のスピンドルモータ。
【請求項7】前記2つの環状突起が前記円筒状回転部材の外周面に予めそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5のスピンドルモータ。
【請求項8】前記環状突起の一つが前記円筒状ハブ部材の取付け用貫通孔の内周面又は前記円筒状回転部材の外周面の一方に、且つ前記環状突起の他方が前記円筒状ハブ部材の取付け用貫通孔の内周面又は前記円筒状回転部材の外周面の他方に予めそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5のスピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2個の円筒状部材が焼きバメによって結合された組立て部品、及びこのような組立て部品を具備するスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】図7に要部の斜視図で示すコンピュータのハードディスクドライブ等に内蔵されるスピンドルモータ1は、動圧軸受または転がり軸受によって、ロータがステータに回転自在に支持されたものである。ロータの一部を構成するハブはハードディスクDを載せるフランジ部を備えたアルミニウム製の円筒状部材であり、同じくロータの一部を構成する軸受の回転部に固着されている。軸受がシャフト固定型である場合、軸受の回転部はステンレス製の円筒部材である。軸受の回転部は、動圧軸受においては回転スリーブである。アルミニウム製ハブの取付け用貫通孔にステンレス製の回転スリーブが嵌合し、両部材は一体に結合されている。そして、この両部材の嵌合は焼きバメによって行われている。
【0003】焼きバメは、アルミニウム製ハブの温度をホットプレートや高周波加熱で200℃前後に上げて孔寸法を広げ、そこにステンレス製の回転スリーブを挿入し、この状態で自然冷却させて行う。自然冷却によってアルミニウム製ハブが収縮し、アルミニウム製ハブとステンレス製の回転スリーブは一体化され所定の強度の結合がなされる。焼きバメの工程が終了した後は、焼きバメによって一体に結合された組立て部品であるアルミニウム製ハブとステンレス製の回転スリーブは組んだ状態で、組加工即ち最終の仕上げ加工が施される。
【0004】ところで、組加工時には切削油剤が使用される。このため、切削油剤がアルミニウム製ハブとステンレス製の回転スリーブの間、即ちこれら両部材の焼きバメの結合部にしばしば侵入する。これは、主として、加熱と自然冷却とによってアルミニウム製ハブの取付け用貫通孔の内周面が微小ではあるが歪むためである。特に、軸方向の両端部と中心部とでは自然冷却の度合いが異なるから、アルミニウム製ハブの取付け用貫通孔の内周面の歪みは円周方向よりも軸方向が遥かに大きい。線膨張係数が小さいステンレス製の回転スリーブは、焼きバメによる歪みはアルミニウム製ハブに比べるとかなり小さい。主として、このようなアルミニウム製ハブの歪みによって、アルミニウム製ハブの取付け用貫通孔の内周面とステンレス製の回転スリーブの外周面との間には数ミクロンオーダーの微小な隙間が生じるのである。
【0005】この微小な隙間に侵入した切削油剤は、加工後に脱脂洗浄を行っても完全には除去できない。切削油剤が残存している加工物、即ちアルミニウム製ハブとステンレス製の回転スリーブの組立て部品を備えたスピンドルモータは、コンピュータのハードディスクドライブに内蔵されるスピンドルモータとしては採用できないものである。残存している切削油剤が滲み出して、ハードディスクを汚染し、ハードディスクドライブの機能を損なうからである。
【0006】シャフト固定型動圧軸受を採用したスピンドルモータについて上述したが、シャフト固定型転がり軸受を採用したスピンドルモータについても同様である。即ち、シャフト固定型転がり軸受において、2個の円筒状部材が焼きバメによって結合された組立て部品、即ちアルミニウム製ハブの取付け用貫通孔に焼きバメによって嵌合される円筒状部材はステンレス製の回転スリーブである。焼きバメによって、アルミニウム製ハブの取付け用貫通孔の内周面とステンレス製の回転スリーブの外周面との間には数ミクロンオーダーの微小な隙間が生じる。従って、シャフト固定型転がり軸受を採用したスピンドルモータについても、上述した如き残存切削油剤に起因する問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする第1の課題は、取付け用貫通孔が穿設された第1円筒状部材と前記取付け用貫通孔に嵌合する第2円筒状部材とが焼きバメによって結合された組立て部品において、第1円筒状部材と第2円筒状部材の間、即ちこれら両部材の焼きバメによる結合部に切削油剤が侵入しないようにすることである。
【0008】解決しようとする第2の課題は、モータ基板と、円筒状回転部材と固定シャフトを具備した軸受と、取付け用貫通孔によって前記軸受の円筒状回転部材に固着された円筒状ハブ部材と、ステータコイルと、前記ステータコイルとの間の電磁相互作用によって回転力を発生させるロータ磁石とを具備して構成されたスピンドルモータであって、前記円筒状ハブ部材と前記円筒状回転部材が焼きバメによって結合されたスピンドルモータにおいて、前記円筒状ハブ部材と前記円筒状回転部材が焼きバメの結合部に加工時の切削油剤が侵入しないようにすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題を解決するために、取付け用貫通孔が穿設された第1円筒状部材と前記取付け用貫通孔に嵌合する第2円筒状部材とが焼きバメによって結合された組立て部品において、前記第1円筒状部材と前記第2円筒状部材の結合部の両方の端部に環状突起をそれぞれ設けた。より具体的に特定すれば、前記2つの環状突起は前記第1円筒状部材の取付け用貫通孔の内周面、又は前記第2円筒状部材の外周面に予めそれぞれ形成されている。或いは、前記環状突起の一つが前記第1円筒状部材の取付け用貫通孔の内周面又は第2円筒状部材の外周面の一方に、且つ前記環状突起の他方が前記第1円筒状部材の取付け用貫通孔の内周面又は第2円筒状部材の外周面の他方に予めそれぞれ形成されている。
【0010】上記第2の課題を解決するスピンドルモータを、モータ基板と、円筒状回転部材と固定シャフトを具備した軸受と、取付け用貫通孔によって前記軸受の円筒状回転部材に固着された円筒状ハブ部材と、ステータコイルと、前記ステータコイルとの間の電磁相互作用によって回転力を発生させるロータ磁石とで構成し、前記円筒状ハブ部材と前記円筒状回転部材の結合部の両方の端部に環状突起をそれぞれ設け、これら両部材を焼きバメによって結合して組立てた。より具体的に特定すれば、前記2つの環状突起は前記円筒状ハブ部材の取付け用貫通孔の内周面、又は前記円筒状回転部材の外周面に予めそれぞれ形成されている。或いは、前記環状突起の一つは前記円筒状ハブ部材の取付け用貫通孔の内周面又は前記円筒状回転部材の外周面の一方に、且つ前記環状突起の他方は前記円筒状ハブ部材の取付け用貫通孔の内周面又は前記円筒状回転部材の外周面の他方に予めそれぞれ形成されている。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に係る組立て部品は、取付け用貫通孔が穿設された第1円筒状部材と取付け用貫通孔に嵌合する第2円筒状部材とが焼きバメによって結合された組立て部品である。取付け用貫通孔Hが穿設された第1円筒状部材6は、例えば、図1に半分にカットした斜視図で且つ図2に縦断面図で示す如く、円筒部6aとフランジ部6bからなるアルミニウム製の円筒状部材である。そして、取付け用貫通孔Hの両方の端部には、環状突起P1とP2が切削等によってそれぞれ形成されている。環状突起P1とP2は、環状段差或いは環状ステップとも呼べるもので、第1円筒状部材のサイズによって異なるが、その高さは数μから数100μ程度、その幅は数100μから数mm程度である。
【0012】図1及び図2に示す如き第1円筒状部材6に焼きバメされる第2円筒状部材4は、例えば、図3に示す如くその外周面は平坦なステンレス製の円筒状部材である。このようにして準備された第1円筒状部材6と第2円筒状部材4の焼きバメ工程において、先ずアルミニウム製の第1円筒状部材6はホットプレートや高周波加熱で200℃前後に加熱されて取付け用貫通孔Hの孔寸法を広げられる。次に、孔寸法が広げられた取付け用貫通孔Hに第2円筒状部材4を挿入し、この状態で自然冷却させる。自然冷却によってアルミニウム製の第1円筒状部材6は収縮し、アルミニウム製の第1円筒状部材6とステンレス製の第2円筒状部材4は、図4に示す如く一体化され所定の強度の結合がなされる。焼きバメ工程が終了した後は、焼きバメによって一体に結合された組立て部品であるアルミニウム製の第1円筒状部材6とステンレス製の第2円筒状部材は組んだ状態で、組加工即ち最終の仕上げ加工が施される。図4において、Q1とQ2は、焼きバメによる結合部の両方の端部を示す。
【0013】上述した如く、本発明に係る組立て部品は、取付け用貫通孔Hが穿設された第1円筒状部材6と取付け用貫通孔Hに嵌合する第2円筒状部材4とが焼きバメによって結合された組立て部品において、第1円筒状部材6と第2円筒状部材4の当接面の端部には環状突起P1とP2がそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。焼きバメによって、第1円筒状部材6の取付け用貫通孔の内周面と第2円筒状部材4の外周面は当接面の結合部を形成するが、最も強固に当接する部分は結合部の両方の端部Q1とQ2である。図1及び図2に示す如く、第1円筒状部材6の取付け用貫通孔Hには、結合部の両方の端部Q1とQ2に対応する部分に環状突起P1とP2がそれぞれ形成されているからである。
【0014】焼きバメによる加熱と自然冷却によって、第1円筒状部材6の取付け用貫通孔Hの内周面の両方の端部に形成されている環状突起P1とP2も歪むが、その軸方向の歪みは無視できるほどであり、且つその円周方向の歪みは生じても均等である。このため、結合部の両方の端部Q1とQ2において第1円筒状部材6と第2円筒状部材4は強固に且つ隙間なく当接する。言わば、焼きバメによって結合された第1円筒状部材6と第2円筒状部材4の結合部は、その両方の端部にOリングのシールが施されたような構造となっているのである。
【0015】ところで、第1円筒状部材6の取付け用貫通孔Hの焼きバメによる結合部の両端Q1とQ2に対応する部分のみに環状突起P1とP2がそれぞれ設けられた実施例を説明したが、環状突起P1とP2は第2円筒状部材4に設けてもよいし、或いは第1円筒状部材6と第2円筒状部材4の両方に設けてもよい。第2円筒状部材4のみに設ける場合には、第2円筒状部材4の外周面の結合部の両端Q1とQ2に対応する部分に環状突起P1とP2がそれぞれ設けられる。また、第1円筒状部材6と第2円筒状部材4の両方に設ける場合には、環状突起P1は第1円筒状部材6の取付け用貫通孔Hの結合部の一端Q1に対応する部分に、且つ環状突起P2は第2円筒状部材4の外周面の結合部の他端Q2に対応する部分にそれぞれ設けられる。又は、環状突起P1は第2円筒状部材4の外周面の結合部の一端Q1に対応する部分に、且つ環状突起P2は第1円筒状部材6の取付け用貫通孔Hの結合部の他端Q2に対応する部分にそれぞれ設けられる。
【0016】次に、この組立て部品を円筒状ハブ部材を第1円筒状部材6とし円筒状回転部材を第2円筒状部材4として構成したことを特徴とするスピンドルモータを図5及び図6の実施例について説明する。先ず、図5に示す軸固定型スピンドルモータ1は、流体動圧軸受によってロータがステータに回転自在に支持されたもので、流体動圧軸受は固定シャフト2並びにリング部材3との間に軸受隙間を含む微小隙間を形成する上下2段の円筒状内周面を有するステンレス製の回転スリーブ4、及び回転スリーブ4の上部開口に蓋をする円盤状蓋部材5とから構成されている。固定シャフト2はモータ基板9に取付け用ネジ10によって固定されている。ステンレス製の回転スリーブ4は前記円筒状回転部材である。
【0017】そして、固定シャフト2の下側外周面にはヘリングボーン溝の如きラジアル動圧発生溝G1が、又リング部材3の上下表面にはスパイラル溝の如きスラスト動圧発生溝G2がそれぞれ形成されている。数10μから数100μ程度の微小隙間には、潤滑油Fが封入されている。アルミニウム製の円筒状ハブ部材6は、図1及び図2に示す如く、その内周面の両方の端部に環状突起P1とP2が予め形成されている。アルミニウム製の円筒状ハブ部材6とステンレス製の回転スリーブ4とは、組立ての段階で焼きバメによって結合された組立て部品を構成する。ロータ磁石7はロータの一部を構成する回転スリーブ4の外周面に取付けられている。ロータ磁石7はロータの一部を構成する円筒状ハブ部材6に取付けてもよい。ロータ磁石7との相互電磁作用によって回転力を発生させるステータコイル8は、ステータの一部を構成するモータ基板9に取付けられている。
【0018】図6に示す軸固定型スピンドルモータ1は、転がり軸受によってロータがステータに回転自在に支持されたもので、転がり軸受は固定シャフト2と磁性体の回転スリーブ4との間に設けられたボールベアリング11と12、環状のラビリンスキャップ13、及び磁性流体シール14とから構成されている。固定シャフト2はモータ基板9に取付け用ネジ10によって固定されている。磁性体の回転スリーブ4は前記円筒状回転部材である。
【0019】アルミニウム製の円筒状ハブ部材6は、図1及び図2に示す如く、その内周面の両方の端部に環状突起P1とP2が予め形成されている。アルミニウム製の円筒状ハブ部材6とステンレス製の回転スリーブ4とは、組立ての段階で焼きバメによって結合された組立て部品を構成する。ロータ磁石7はロータの一部を構成する回転スリーブ4の外周面に取付けられている。ロータ磁石7はロータの一部を構成する円筒状ハブ部材6に取付けてもよい。ロータ磁石7との相互電磁作用によって回転力を発生させるステータコイル8は、ステータの一部を構成するモータ基板9に取付けられている。
【0020】
【発明の効果】本発明により、2つの円筒状部材の焼きバメによる結合部の両端で、隙間の無い強固な環状の結合部を形成することができた。従って、取付け用貫通孔が穿設された第1円筒状部材と前記取付け用貫通孔に嵌合する第2円筒状部材とが焼きバメによって結合された組立て部品において、第1円筒状部材と第2円筒状部材の焼きバメによる結合部の両方の端部に隙間のない強固な環状の結合部が形成されるから、第1円筒状部材と第2円筒状部材の間、即ちこれら両部材の焼きバメによる結合部に切削油剤が侵入しないようにすることができた。
【0021】また、円筒状ハブを第1円筒状部材とし且つ円筒状回転部材を第2円筒状部材として上記の組立て部品を構成したことを特徴とするスピンドルモータにおいても、円筒状ハブと円筒状回転部材の焼きバメによる結合部の両方の端部に隙間のない強固な環状の結合部が形成されるから、円筒状ハブと円筒状回転部材との間、即ちこれら両部材の焼きバメによる結合部に切削油剤が侵入しないようにすることができた。このような構成のスピンドルモータ又はこれを駆動源とするハードディスクドライブにおいては、部品加工時の切削油剤は全く残存しないから、切削油剤に起因するトラブルを除去することができた。
【出願人】 【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツルメンツ株式会社
【出願日】 平成11年12月24日(1999.12.24)
【代理人】 【識別番号】100079212
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 義治
【公開番号】 特開2001−182750(P2001−182750A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−368084