トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 樹脂被覆摺動材およびその製造方法
【発明者】 【氏名】新藤 剛

【氏名】佐藤 光則

【要約】 【課題】潤滑面に油が乏しい状況でも、潤滑成分であるPbを使用しない環境に配慮した高潤滑性能を有する樹脂被覆摺動材およびその製造方法を提供する。

【解決手段】本発明の樹脂被覆摺動材10は、裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層12と、多孔質金属焼結層12中に一部が含浸される状態で被着形成した表面樹脂層13とを備え、表面樹脂層13は、1〜10体積%の酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とよりなるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層と、前記多孔質金属焼結層中に一部が含浸される状態で被着形成した表面樹脂層とを備え、該表面樹脂層は、1〜10体積%の酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とよりなることを特徴とする樹脂被覆摺動材。
【請求項2】 前記表面樹脂層は、さらに、5〜15体積%の炭素繊維を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項3】 前記表面樹脂層は、さらに、5〜15体積%の炭素繊維と、1〜5体積%の固体潤滑剤とを有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項4】 前記表面樹脂層は、さらに、1〜5体積%の固体潤滑剤を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項5】 前記酸化錫は、酸化第二錫からなり、平均粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項6】 前記炭素繊維は、ピッチ系の炭素繊維で、繊維径が10〜18μm、繊維長が30〜180μmであるごとを特徴とする請求項2または請求項3に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項7】 前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデンおよび、分子量60万以下の低分子量四フッ化エチレン樹脂のうち少なくとも1つで構成し、平均粒径がl0μm以下であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項8】 前記四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂は、四フッ化エチレン樹脂と、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体およびまたは四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体とが単一の粉末粒子として一体に共凝析された樹脂粉末であり、この樹脂共凝析粉末は、四フッ化エチレン樹脂を70〜95重量%含み、平均粒径が300〜600μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂被覆摺動材。
【請求項9】 裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層に対し、酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物または、酸化錫と、炭素繊維と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物または、酸化錫と、炭素繊維と、固体潤滑剤と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物を含浸して被覆焼成し樹脂被覆摺動材を製造するとき、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂として前記樹脂共凝析粉末を使用し、該樹脂共凝析粉末の少なくとも表面に有機溶剤を主成分として含む溶液を湿潤させた後に、前記樹脂共凝析粉末に前記酸化錫または、前記酸化錫と前記炭素繊維または、前記酸化錫と前記炭素繊維と前記固体潤滑剤を付着させ、前記青銅の多孔質金属焼結層に対し含浸被覆後に焼成被着することを特徴とする樹脂被覆摺動材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩擦摩耗特性に優れた鉛フリーの樹脂被覆摺動材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、四フッ化エチレン樹脂は、自己潤滑性に優れ摩擦係数が低く、さらに、耐熱性、耐薬品性をも有することから、軸受などの摺動材に広く使用されている。
【0003】この四フッ化エチレン樹脂を被覆した摺動材は、耐摩耗性に劣るため、摺動材の使用用途に応じ、充填材として機械的特性に優れた他の樹脂や、展延性に優れた鉛、鉛合金などの低融点物質、潤滑性に優れた黒鉛や二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤が添加され、この欠点を補っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した各種の摺動材は、異なった多くの使用条件、例えば、乾燥条件または油潤滑条件下においては、摩擦係数が低く、要求性能を発揮するが、摺動の耐久性が十分とは言い難いという問題がある。
【0005】さらに、近年、環境面からPbの使用が規制される動きとなり、Pbの不使用が要求されているという問題がある。
【0006】本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、潤滑面に油が乏しい状況でも、潤滑成分であるPbを使用しない環境に配慮した高潤滑性能を有する樹脂被覆摺動材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の樹脂被覆摺動材は、裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層と、前記多孔質金属焼結層中に一部が含浸される状態で被着形成した表面樹脂層とを備え、該表面樹脂層は、1〜10体積%の酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)を主成分とする樹脂とより構成した。 また、前記表面樹脂層は、さらに、5〜15体積%の炭素繊維を有することとした。
【0008】また、前記表面樹脂層は、さらに、5〜15体積%の炭素繊維と、1〜5体積%の固体潤滑剤とを有することとした。 また、前記表面樹脂層は、さらに、1〜5体積%の固体潤滑剤を有することとした。
【0009】また、前記酸化錫は、酸化第二錫からなり、平均粒径を1〜10μmとした。
【0010】また、前記炭素繊維は、ピッチ系の炭素繊維で、繊維径を10〜18μm、繊維長を30〜180μmとした。
【0011】また、前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデンおよび、分子量60万以下の低分子量四フッ化エチレン樹脂のうち少なくとも1つで構成し、平均粒径をl0μm以下とした。
【0012】また、前記四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂は、四フッ化エチレン樹脂と、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)およびまたは四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)とが単一の粉末粒子として一体に共凝析された樹脂粉末であり、この樹脂共凝析粉末は、四フッ化エチレン樹脂を70〜95重量%含み、平均粒径を300〜600μmとした。
【0013】さらに、本発明の樹脂被覆摺動材の製造方法は、裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層に対し、酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物または、酸化錫と、炭素繊維と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物または、酸化錫と、炭素繊維と、固体潤滑剤と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物を含浸して被覆焼成し樹脂被覆摺動材を製造するとき、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂として前記樹脂共凝析粉末を使用し、該樹脂共凝析粉末の少なくとも表面に有機溶剤を主成分として含む溶液を湿潤させた後に、前記樹脂共凝析粉末に前記酸化錫または、前記酸化錫と前記炭素繊維または、前記酸化錫と前記炭素繊維と前記固体潤滑剤を付着させ、前記青銅の多孔質金属焼結層に対し含浸被覆後に焼成被着することとした。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】まず、本発明に関わる第1実施例の樹脂被覆摺動材10につき説明する。図1は、本発明に関わる第1実施例の樹脂被覆摺動材10の断面を模式的に示す図である。11は鋼板などの裏金、12は青銅の多孔質金属焼結層、13は表面樹脂層、14は酸化錫の酸化第二錫粒子を示す。青銅の多孔質金属焼結層12は、鋼板などの裏金11の上に青銅の合金粉を散布し、その後焼結してCu−10%Snの多孔質金属焼結層を形成したものである。樹脂被覆摺動材10は、この青銅の多孔質金属焼結層12に、酸化第二錫粒子14を付着させた四フツ化エチレン樹脂と四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(以下PTFE+FEP)との樹脂共凝析粉末を青銅の多孔質金属焼12に含浸させ、表面樹脂層13を被着したものである。
【0016】なお、この樹脂共凝析粉末は、四フツ化エチレン樹脂と、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体とを混合するようにすることも、四フツ化エチレン樹脂と、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重体と四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体とを混合するようにすることもでき、以下に述べる実施例2、3についても同様である。
【0017】樹脂被覆摺動材10により形成された軸受は、オイル潤滑条件やドライ条件で使用されなじみ運転で初期のなじみ摩耗が行われると、表面樹脂層13の表面に酸化第二錫粒子14が露出するが、マトリクスであるPTFE+FEPが酸化第二錫粒子14の表面に移着し摩擦係数の上昇を抑えて安定する。酸化第二錫粒子14は耐摩耗性に優れ荷重を支えると共に、PTFE+FEPが本来持っている低摩擦性を引き出すことができ、表面樹脂層13は、摩擦摩耗試験で後述するが、低摩耗、低摩擦で耐久性のある潤滑特性が得られることとなる。
【0018】本発明の樹脂被覆摺動材10の製造方法は、鋼板など(銅メッキ付き鋼板も含む)の裏金11の上に青銅の合金粉を散布後焼結して青銅の多孔質金属焼結層12を被着形成し、PTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に有機溶剤を含む溶液を湿潤させた後に、この樹脂共凝析粉末に酸化第二錫粒子14を付着させ、青銅の多孔質金属焼結層12上に散布し、ロールなどで含浸被覆後に焼成被着し、表面樹脂層13を形成するものである。
【0019】酸化第二錫粒子14は、PTFE+FEPの耐摩耗性を改善するために添加するが、平均粒径を1〜10μmとしているため、平均粒径300〜600μmの湿潤させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に付着させ、これを多孔質金属焼結層12の上に散布した後ロールで含浸被覆して表面樹脂層13を形成する場合、均一に分散することができる。
【0020】次に、本発明に関わる第2実施例の樹脂被覆摺動材20につき説明する。
【0021】図2は、本発明に関わる第2実施例の樹脂被覆摺動材20の断面を模式的に示す図である。21は鋼板などの裏金、22は青銅の多孔質金属焼結層、23は表面樹脂層、24は酸化錫の酸化第二錫粒子、25は炭素繊維(ピッチ系、以下同様)を示す。 青銅の多孔質金属焼結層22は、第1実施例と同様に、鋼板などの裏金21の上に青銅の合金粉を散布し、その後焼結してCu−10%Snの多孔質金属焼結層を形成したものである。樹脂被覆摺動材20は、この青銅の多孔質金属焼結層22に、酸化第二錫粒子24と炭素繊維25とを付着させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末を含浸し、表面樹脂層23を被着したものである。
【0022】樹脂被覆摺動材20により形成された軸受は、第1実施例と同様に、オイル潤滑条件やドライ条件で使用されなじみ運転で初期のなじみ摩耗が行われると、表面樹脂層23の表面に酸化第二錫粒子24と炭素繊維25とが露出するが、マトリクスであるPTFE+FEPが酸化第二錫粒子24と炭素繊維25との表面に移着し摩擦係数の上昇を抑えて安定する。酸化第二錫粒子24と炭素繊維25とは耐摩耗性に優れ荷重を支えると共に、PTFE+FEPが本来持っている低摩擦性を引き出すことができ、表面樹脂層23は、摩擦摩耗試験で後述するが、特にドライ条件でより低摩耗、低摩擦で耐久性のある潤滑特性が得られることとなる。
【0023】本発明の樹脂被覆摺動材20の製造方法は、第1実施例と同様に、鋼板など(銅メッキ付き鋼板も含む)の裏金21の上に青銅の合金粉を散布後焼結して青銅の多孔質金属焼結層22を被着形成し、PTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に有機溶剤を含む溶液を湿潤させた後に、この樹脂共凝析粉末に酸化第二錫粒子14と炭素繊維25とを付着させ、青銅の多孔質金属焼結層22上に散布し、ロールなどで含浸被覆後に焼成被着し、表面樹脂層23を形成するものである。
【0024】酸化第二錫粒子24は、第1実施例と同様に、PTFE+FEPの耐摩耗性を改善するために添加するが、平均粒径を1〜10μmとしているため、平均粒径300〜600μmの湿潤させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に酸化第二錫粒子24を付着させ、これを多孔質金属焼結層22の上に散布した後ロールで含浸被覆して表面樹脂層23を形成する場合、均一に分散することができる。
【0025】炭素繊維25は、PTFE+FEPの耐摩耗性を改善するために添加するが、繊維径を10〜18μm、繊維長さを30〜180μmとしているため、平均粒径300〜600μmの湿潤させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に酸化第二錫粒子24と共に付着させ、これを多孔質金属焼結層22の上に散布した後ロールで含浸被覆して表面樹脂層23を形成する場合、炭素繊維25が軸受面に対し垂直になったり繊維同士が絡みあうことなく、軸受面に対し平行に並ぶようにすることができる。
【0026】さらに、本発明に関わる第3実施例の樹脂被覆摺動材30につき説明する。
【0027】図3は、本発明に関わる第3実施例の樹脂被覆摺動材30の断面を模式的に示す図である。31は鋼板などの裏金、32は青銅の多孔質金属焼結層、33は表面樹脂層、34は酸化第二錫粒子、35は炭素繊維(ピッチ系、以下同様)、36は固体潤滑剤を示す。
【0028】青銅の多孔質金属焼結層32は、第1、第2実施例と同様に、鋼板などの裏金31の上に青銅の合金粉を散布し、その後焼結してCu−10%Snの多孔質金属焼結層を形成したものである。樹脂被覆摺動材30は、この青銅の多孔質金属焼結層32に、酸化第二錫粒子34と炭素繊維35と固体潤滑剤36とを付着させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末を含浸し、表面樹脂層33を被着したものである。
【0029】樹脂被覆摺動材30により形成された軸受は、第1、第2実施例と同様に、オイル潤滑条件やドライ条件で使用されなじみ運転で初期のなじみ摩耗が行われると、表面樹脂層33の表面に酸化第二錫粒子34と炭素繊維35とが露出するが、マトリクスであるPTFE+FEPと、固体潤滑剤36とが酸化第二錫粒子34と炭素繊維35との表面に移着して混合皮膜を形成し、摩擦係数の上昇を抑えて安定する。酸化第二錫粒子34と炭素繊維35とは耐摩耗性に優れ荷重を支えると共に、PTFE+FEPが本来持っている低摩擦性を引き出すことができ、表面樹脂層33は、摩擦摩耗試験で後述するが、固体潤滑剤36の付着により特にドライ条件でさらに低摩耗、低摩擦で耐久性のある潤滑特性が得られることとなる。
【0030】本発明の樹脂被覆摺動材30の製造方法は、第1、第2実施例と同様に、鋼板など(銅メッキ付き鋼板も含む)の裏金31の上に青銅の合金粉を散布後焼結して青銅の多孔質金属焼結層32を被着形成し、PTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に有機溶剤を含む溶液を湿潤させた後に、この樹脂共凝析粉末に酸化第二錫粒子34と炭素繊維35と固体潤滑剤36とを付着させ、青銅の多孔質金属焼結層32上に散布し、ロールなどで含浸被覆後に焼成被着し、表面樹脂層33を形成するものである。
【0031】酸化第二錫粒子34は、第1、第2実施例と同様に、PTFE+FEPの耐摩耗性を改善するために添加するが、平均粒径を1〜10μmとしているため、平均粒径300〜600μmの湿潤させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に付着させ、これを多孔質金属焼結層32の上に散布した後ロールで含浸被覆して表面樹脂層33を形成する場合、均一に分散することができる。
【0032】炭素繊維35は、第2実施例と同様に、PTFE+FEPの耐摩耗性を改善するために添加するが、炭素繊維35は繊維径を10〜18μm、繊維長さを30〜180μmとしているため、平均粒径300〜600μmの湿潤させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末の表面に酸化第二錫粒子34と固体潤滑剤36と共に付着させ、これを多孔質金属焼結層32の上に散布した後ロールで含浸被覆して表面樹脂層33を形成する場合、炭素繊維35が軸受面に対し垂直になったり繊維同士が絡みあうことなく、軸受面に対し平行に並ぶようにすることができる。
【0033】固体潤滑剤36は、PTFE+FEPの耐摩耗性を改善するために添加するが、黒鉛、二硫化モリブデン(以下MoS2)および、分子量60万以下の低分子量PTFEなどから、これらの平均粒径を10μm以下とし添加するため、PTFE+FEPに付着させ均等に混合した皮膜を形成することができる。
【0034】なお、第3の実施例では、樹脂被覆摺動材30は、青銅の多孔質金属焼結層32に、酸化第二錫粒子34と炭素繊維35と固体潤滑剤36とを付着させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末を含浸し、表面樹脂層33を被着した例について述べたが、青銅の多孔質金属焼結層32に、酸化第二錫粒子34と固体潤滑剤36とを付着させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末を含浸し、表面樹脂層を被着し、特にドライ条件でさらに低摩耗、低摩擦で耐久性のある潤滑特性を得ることもできる。
【0035】次に、本発明の樹脂被覆摺動材10、20、30および比較例の試供品によりオイル潤滑条件とドライ条件とで行った摩擦摩耗試験につき述べる。
【0036】オイル潤滑条件の摩擦摩耗試験は、1.試験機 鈴木式摩擦摩耗試験機2.荷重 4.9MPa3.速度 5m/mim4.時間 4時間5.潤滑 ショックアブソーバオイル6.油温 70℃7.相手軸 材質;S45C、粗さ;Ra0.2、硬さ;HRc≒55で行い、また、ドライ条件の摩擦摩耗試験は、1.試験機 鈴木式摩擦摩耗試験機2.荷重 0.74MPa3.速度 120m/mim4.時間 1時間5.潤滑 ドライ6.油温 常温7.相手軸 材質;S45C、粗さ;Ra0.2、硬さ;HRc≒55で行った。
【0037】表1は、試供品No.1〜17の組成成分と試験結果を示す。試供品No.1〜14は、Cu−10%Snの青銅の多孔質金属焼結層12、22、32に、表面樹脂層13、23、33を形成したものである。表面樹脂層13、23、33は、予め定めた体積%のPTFE+10%FEPと、予め定めた体積%の酸化第二錫粒子14、24、34と、予め定めた体積%の炭素繊維25、35と、予め定めた体積%の固体潤滑剤36(MoS2、黒鉛または低分子PTFE)の組成より形成した。
【0038】試供品No.1〜5は第1実施例の試供品を示し、試供品No.6〜9および試供品No.15は第2実施例の試供品を示し、試供品No.10〜14は第3実施例の試供品を示し、試供品No.16、17は比較例の試供品を示す。試供品No.1〜17のオイル潤滑条件とドライ条件の試験結果のデータは表1の右側に示す。
【0039】図4は、第1実施例(試供品No.1〜5)のオイル潤滑条件での摩擦摩耗試験の試験結果をグラフで示すもので、図4(A)は、酸化錫(酸化第二錫粒子14)添加量に対する摩耗量のグラフを示し、図4(B)は、酸化錫(酸化第二錫粒子14)添加量に対する摩擦係数のグラフを示す。
【0040】図5は、第1実施例(試供品No.1〜5)のドライ条件での摩擦摩耗試験の試験結果をグラフで示すもので、図5(A)は、酸化錫(酸化第二錫粒子14)添加量に対する摩耗量のグラフを示し、図5(B)は、酸化錫(酸化第二錫粒子14)添加量に対する摩擦係数のグラフを示す。
【0041】表1および図4、5により、試供品No.1〜5の試験結果につき説明する。酸化錫が添加されない場合(試供品No.16、17)には、オイル潤滑条件とドライ条件共に、摩耗量は大きく、1体積%未満では耐摩耗性が不十分で添加効果は現れず摩耗量が増加して耐摩耗性が低下していることが分かる。また、10体積%をこえると、オイル潤滑条件では、PTFE+FEPの酸化錫への移着が不充分となり一部酸化錫が潤滑面に露出するため、摩擦係数が増加し、ドライ条件では、PTFE+FEPが酸化錫を保持する力が弱くなり耐摩耗性は低下し、摩耗量が増加していることが分かる。酸化錫の添加量が1〜10体積%の範囲ではオイル潤滑条件とドライ条件共に、摩擦係数も摩耗量も全般的に低い範囲にある。
【0042】従って、オイル潤滑条件とドライ条件に於いて、酸化錫の添加は、1〜10体積%で低摩耗、低摩擦であり、また、摩擦摩耗試験は前記した試験条件の試験時間行ったものであり耐久性も十分あると言える。
【0043】また、早期に軸受面と軸とのなじみ摩耗は完了し、表面樹脂層13は耐久性のある潤滑が得られ、安定した摺動が行われていた。以上、第1実施例の樹脂被覆摺動材10は、Pbを使用することなく、低摩耗、低摩擦で耐久性のある潤滑性能にすることができる。
【0044】図6は、第2実施例(試供品No.6〜9)のオイル潤滑条件での摩擦摩耗試験の試験結果をグラフで示すもので、図6(A)は、炭素繊維添加量に対する摩耗量のグラフを示し、図6(B)は、炭素繊維添加量に対する摩擦係数のグラフを示す。
【0045】図7は、第2実施例(試供品No.6〜9)のドライ条件での摩擦摩耗試験の試験結果をグラフで示すもので、図7(A)は、炭素繊維添加量に対する摩耗量のグラフを示し、図7(B)は、炭素繊維添加量に対する摩擦係数のグラフを示す。
【0046】表1および図6、7により、試供品No.6〜9の試験結果につき説明する。オイル潤滑条件に於いては、炭素繊維の添加が15体積%をこえるとPTFE+FEPの炭素繊維への移着が充分行われず一部炭素繊維が潤滑面に露出するので、摩擦係数が増加している。また、ドライ条件においては、摩擦係数と摩擦量共に、5%未満では炭素繊維の添加量が少なくて添加効果は現れず、摩耗量が増加し、耐摩耗性が不十分で、摩擦係数も増加している。炭素繊維の添加量が5〜10%の範囲では摩擦係数と摩擦量共に、オイル潤滑条件とドライ条件で低く、特に、オイル潤滑条件下での性能を損なうことなくドライ条件での摩擦摩耗特性を改善しており、ドライ条件で第1実施例より低い。
【0047】従って、オイル潤滑条件とドライ条件に於いて炭素繊維の添加は、5〜15体積%で低摩耗、低摩擦であることが分かり、摩擦摩耗試験は前記した試験条件の試験時間行ったものであり耐久性も十分あると言える。
【0048】また、早期に軸受面と軸とのなじみ摩耗は完了し、表面樹脂層23は耐久性のある潤滑が得られ、安定した摺動が行われていた。
【0049】以上、第2実施例の樹脂被覆摺動材20は、Pbを使用することなく、低摩耗、低摩擦であり、特にドライ条件で第1実施例の試験結果より低摩耗、低摩擦であり、また、耐久性もある潤滑性能にすることができる。
【0050】表1により、特にグラフでは示さないが、第3実施例(試供品No.10〜14)の試験結果につき説明する。1〜5体積%の固体潤滑剤の組成混入により、オイル潤滑条件とドライ条件共に、摩擦係数が低くなっており、特にドライ条件で第2実施例よりさらに摩擦係数と摩耗量が全般的に低くなっている。また、PTFE+FEPの換りにPTFEを使用した試供品No.15の摩耗量はオイル潤滑条件とドライ条件共に大きい。固体潤滑剤の添加は1%未満では添加効果はなく、5体積%をこえるとオイル潤滑条件とドライ条件共に、耐摩耗性は低下する。1〜5体積%の範囲でオイル潤滑条件とドライ条件共に、低摩耗、低摩擦であり、特にドライ条件で第2実施例より低摩耗、低摩擦である。
【0051】従って、固体潤滑剤を1〜5体積%混入することにより、より低摩耗、低摩擦となり、摩擦摩耗試験は前記した試験条件の試験時間行ったものであり耐久性も十分あると言える。
【0052】また、試供品No.10〜14は、早期に軸受面と軸とのなじみ摩耗は完了し、表面樹脂層23は耐久性のある潤滑が得られ、摩擦係数には変動が見られない安定した摺動が行われていた。
【0053】以上、第3実施例の樹脂被覆摺動材30は、Pbを使用することなく、低摩耗、低摩擦であり、特にドライ条件で第2実施例の試験結果より低摩耗、低摩擦であり、また、耐久性もある潤滑性能にすることができる。
【0054】また、第3の実施例は、前記したごとく、青銅の多孔質金属焼結層32に、酸化第二錫粒子34と固体潤滑剤36とを付着させたPTFE+FEPの樹脂共凝析粉末を含浸し、表面樹脂層を被着する場合も、固体潤滑剤を1〜5体積%混入することにより、特にドライ条件で低摩耗、低摩擦で耐久性もある潤滑特性にすることができる。
【0055】なお、上記樹脂被覆摺動材10、20、30は、オイル潤滑とドライ(無潤滑)に使用する例に付いて述べたが、これに限定されることなくグリース付など各種の摺動用途に使用することができる。
【0056】
【発明の効果】本発明の樹脂被覆摺動材は、裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層と、前記多孔質金属焼結層中に一部が含浸される状態で被着形成した表面樹脂層とを備え、該表面樹脂層は、1〜10体積%の酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とより構成したため、耐摩耗性に優れた酸化錫が荷重を支えると共に、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂が持っている低摩擦性を引き出すことができ、表面樹脂層は、Pbを使用することなく、低摩耗、低摩擦で耐久性のある潤滑性能にすることができる。
【0057】また、前記表面樹脂層は、さらに、5〜15体積%の炭素繊維を有することとしたため、低摩耗、低摩擦で、特にドライ条件でより低摩耗、低摩擦であり、また、耐久性もある潤滑性能にすることができる。
【0058】また、前記表面樹脂層は、さらに、5〜15体積%の炭素繊維と、1〜5体積%の固体潤滑剤とを有することとしたため、低摩耗、低摩擦で、特にドライ条件でさらに低摩耗、低摩擦であり、また、耐久性もある潤滑性能にすることができる。 また、前記表面樹脂層は、さらに、1〜5体積%の固体潤滑剤を有することとしたため、低摩耗、低摩擦で、特にドライ条件でさらに低摩耗、低摩擦であり、また、耐久性もある潤滑性能にすることができる。
【0059】また、前記酸化錫は、酸化第二錫からなり、平均粒径を1〜10μmとしたため、表面樹脂層に均一に分散することができ、耐摩耗性を改善することができる。
【0060】また、前記炭素繊維は、ピッチ系の炭素繊維で、繊維径を10〜18μm、繊維長を30〜180μmとしたため、炭素繊維が軸受面に対し垂直になったり繊維同士が絡みあうことなく、軸受面に対し平行に並ぶようにすることができ、耐摩耗性を改善することができる。
【0061】また、前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデンおよび、分子量60万以下の低分子量四フッ化エチレン樹脂のうち少なくとも1つで構成し、平均粒径をl0μm以下としたため、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂に付着させ均等に混合した皮膜を形成することができ、摩擦性を改善することができる。
【0062】また、前記四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂は、四フッ化エチレン樹脂と、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体およびまたは四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体とが単一の粉末粒子として一体に共凝析された樹脂粉末であり、この樹脂共凝析粉末は、四フッ化エチレン樹脂を70〜95重量%含み、平均粒径を300〜600μmとしたため、酸化錫と炭素繊維を均等に付着することができ、耐摩耗性を改善することができる。
【0063】さらに、本発明の樹脂被覆摺動材の製造方法は、裏金上に被着形成した青銅の多孔質金属焼結層に対し、酸化錫と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物または、酸化錫と、炭素繊維と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物または、酸化錫と、炭素繊維と、固体潤滑剤と、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂とからなる混合物を含浸して被覆焼成し樹脂被覆摺動材を製造するとき、四フッ化エチレン樹脂を主成分とする樹脂として前記樹脂共凝析粉末を使用し、該樹脂共凝析粉末の少なくとも表面に有機溶剤を主成分として含む溶液を湿潤させた後に、前記樹脂共凝析粉末に前記酸化錫または、前記酸化錫と前記炭素繊維または、前記酸化錫と前記炭素繊維と前記固体潤滑剤を付着させ、前記青銅の多孔質金属焼結層に対し含浸被覆後に焼成被着することとしたため、樹脂被覆摺動材を的確・容易に製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000102902
【氏名又は名称】エヌデーシー株式会社
【出願日】 平成11年11月8日(1999.11.8)
【代理人】 【識別番号】100077827
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 弘男
【公開番号】 特開2001−132756(P2001−132756A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−316786