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【発明の名称】 シャフト駆動車両の出力軸構造
【発明者】 【氏名】成田 識

【氏名】大久保 健司

【要約】 【課題】

【解決手段】クランク軸を車体の前後方向へ配設した縦置きエンジンを搭載する4輪駆動仕様の4輪バギー車において、出力軸20を本体部51と前輪接続部52に分割する。4輪駆動仕様時には、本体部51の前端部55に形成された雄スプライン56と前輪接続部52の後端61に形成された雌スプライン62とをスプライン結合し、前輪接続部52の先端側67を前ケースカバー31の出口64から前方へ突出させて前輪プロペラ軸と連結する。一方、2輪駆動仕様の場合は、前輪接続部52を省略するだけで本体部51をそのまま共用でき、かつ、前ケースカバー31も出口64の貫通穴65を形成せずに鋳造時の壁のままで残せばよいので、前ケースカバー31のみに対して4輪駆動仕様時に若干の穴開け加工を要するだけで他のケース部材には変更がなく、パワーユニットケースの殆どを共用可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの出力を前輪側と後輪側の双方へ伝達するための出力軸を備えたシャフト駆動車において、前記出力軸を前輪側軸部と後輪側軸部とに分離・結合自在に分割したことを特徴とするシャフト駆動車両の出力軸構造。
【請求項2】 上記前輪側軸部と後輪側軸部の結合をスプライン結合としたことを特徴とする請求項1に記載したシャフト駆動車両の出力軸構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は4輪駆動車等のシャフト駆動車両における出力軸構造に係り、特に前後輪駆動と後輪駆動との仕様変更を容易にできるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】特開平8−25979号には、クランク軸を車体の前後方向へ向けて配設したエンジン(以下、縦置きという)を搭載して前後の4輪をシャフト駆動する4輪バギー車が示されている。この動力伝達構造はパワーユニットケースの下部を前後に貫通する出力軸を設け、その前端をパワーユニット外前方で前輪側プロペラ軸へ連結して前輪を駆動し、後端をパワーユニット外後方で後輪側プロペラ軸へ連結して後輪を駆動するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで上記構造の場合、パワーユニットケースを貫通する出力軸を設けているため、後輪駆動仕様の車両には、出力軸及びパワーユニットケースを共用できず、後輪駆動用及び前後輪駆動用のものをそれぞれ専用に製造しなければならない。そこで本願発明は、これらの共用化の実現を主たる目的とする。
【0004】そのうえ、従来のように全長を一本の軸部材で形成した出力軸の場合は、長軸となるので長さ方向において3ヶ所以上の軸受部を必要とする場合がある。仮に3ヶ所で軸受けする場合には、両端の軸受部のジャーナル径は、中央に配置するベアリングの内径より小さくなければ組付けが不可能となる。したがって、両端のベアリングサイズは中央に配置するベアリングサイズに影響を受ける。逆に、両端のベアリングを要求されるサイズに設定した場合は、中間に配置するベアリングはさらに内径の大きなものに設定する必要があり、この場合には出力軸と隣り合う軸や周辺に配置する部品との距離を大きなものにしなければならないという制約が発生する。
【0005】このためパワーユニットをコンパクトに設計したいという本来的な要求があるにもかかわらず、この要請を達成困難となる可能性がある。また、長い出力軸は軸振れを防ぐために高精度の軸受部が複数必要となるから、この軸受部を形成するために製造上でも厳しい精度で管理しなければならず、出力軸が長ければ長い程この精度維持が難しくなる。しかもこのような高精度の軸受部を得るには、出力軸の製造工程として、素材作成、軸受部等の荒加工、熱処理、曲がり矯正、軸受部研磨、再矯正の各工程が必要となり、工程数が極めて多くなってしまう。そこで本願発明は係る問題点の解決を併せて目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本願におけるシャフト駆動車両の出力軸構造に関する第1の発明は、エンジンの出力を前輪側と後輪側の双方へ伝達するための出力軸を備えたシャフト駆動車両において、前記出力軸を前輪側軸部と後輪側軸部とに分離・結合自在に分割したことを特徴とする。
【0007】第2の発明は、上記第1の発明において、上記前輪側軸部と後輪側軸部の結合をスプライン結合としたことを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】第1の発明によれば、出力軸を前輪側軸部と後輪側軸部とに2分割したので、前後輪駆動の場合には、前輪側軸部と後輪側軸部を併用して両軸を結合することにより、前輪と後輪を同時駆動できる。後輪駆動の場合は前輪側軸部を結合せずに後輪側軸部単独で使用して後輪のみを駆動する。これにより、後輪駆動及び前後輪駆動のいずれでも後輪側軸部を共用化でき、かつパワーユニットケースも僅かの加工を加えるだけで共用できる。したがって、前後輪駆動と後輪駆動との間における仕様変更を容易にできる。
【0009】第2の発明によれば、前輪側軸部と後輪側軸部をスプライン結合としたので、両軸の結合と分離が容易かつ迅速になる。そのうえ、前輪側軸部と後輪側軸部の接続部で、雄スプライン近傍の軸部外周を軸受けすることによりジャーナル径を小さくでき、その結果、出力軸と変速機側との軸間距離を小さくすることができるため、パワーユニット全体をコンパクト化できる。また、出力軸を分割することにより、各分割部を短くできるからそれだけ製造時の精度管理を緩和でき、製造が容易になる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面にに基づいて、不整地走行車両である4輪バギー車に適用された一実施例を説明する。図1は4輪駆動仕様の出力軸構造を示す図、図2は車体要部の側面図、図3はパワーユニットの伝動機構部分を示す縦断面図、図4は2輪駆動(後輪駆動)仕様における図1と同様の図である。
【0011】まず図2において、この4輪バギー車は車体フレーム1の前後へそれぞれ左右一対づつの前輪2及び後輪3を備え、車体フレーム1の中央部にエンジンと変速機を備えたパワーユニット4が支持されている。このパワーユニット4はクランク軸5を車体の前後方向へ向けて配置する縦置き形式である。
【0012】車体フレーム1は上下に略平行するアッパーパイプ6とロアーパイプ7の間をフロントパイプ8及びリヤパイプ9並びに補強パイプ10で連結し、さらに数種の補助パイプ11,12,13等で補強したものである。また、図中の符号14はハンドル軸、15はハンドル、16は燃料タンク、17は鞍乗り型シート、18はオイルクーラーである。
【0013】この4輪バギー車は4輪駆動式であり、パワーユニット4の下部にクランク軸5と平行に設けられている出力軸20の前端は、前輪プロペラ軸21の後端へ接続し、前輪ギヤケース22を介して前輪車軸23を駆動する。
【0014】一方、出力軸20の後端は、後輪プロペラ軸24の前端へ接続し、後輪ギヤケース25を介して後輪車軸26を駆動する。後輪プロペラ軸24はリヤスイングアーム27内に収容されており、リヤスイングアーム27は後端を後輪ギヤケース25へ連結し、前端をリヤパイプ9に設けられたピボットプレート28へピボット軸29により揺動自在に支持されている。
【0015】図3はパワーユニット4の伝動機構部分につき、その構成各軸を結んで平行に切断した縦断面を概略表示するものであり、パワーユニット4を構成するクランクケース30の前側は前ケースカバー31で覆われ、後部側は後ケースカバー32で覆われ、これらでパワーユニットケースを構成している。また、クランクケース30の上部にはシリンダブロック33、シリンダヘッド34及びシリンダヘッドカバー35が取付けられ、シリンダヘッド34の吸気口へは気化器36が接続され、さらにこの気化器36にはエアクリーナー37が接続されている。シリンダヘッド34の排気口には排気管38が接続されている。
【0016】クランクケース30は前後へ2分割された前ケース30aと後ケース30bからなり、これら前ケース30aと後ケース30bの間にクランク軸5が支持されている。図中の符号40はクランク軸5の一端に設けられた公知の遠心クラッチ機構からなる発進クラッチ、41は他端側に設けられたACG、42はコンロッド、43はピストンである。
【0017】次に、出力軸20の構造を説明する。図3の出力軸20は4輪駆動部仕様時における状態を示し、図1はその前部側のみを拡大した断面図である。これらの図に示すように、出力軸20はクランクケース30内に設けられた変速機44の変速出力を前輪2及び後輪3へ伝達するための軸部材である。
【0018】変速機44は公知の常時噛み合い式変速機であり、クランク軸5と平行に配設されるメイン軸45とカウンタ軸46を備え、メイン軸45の一端に変速クラッチ47を設けてクランク軸5から伝達される駆動力をメイン軸45へ断続させるとともに、メイン軸45とカウンタ軸46の間に常時噛み合う多数の変速ギヤ列48を設け、その変速出力をカウンタ軸46の一端に設けられたファイナルドライブギヤ49から出力軸20上のファイナルドリブンギヤ50へ出力するようになっている。
【0019】出力軸20は、後輪側軸部に相当する本体部51と、前輪側軸部に相当する前輪接続部52とに前後へ2分割され、本体部51は、前後2ヶ所の軸受部を有し、それぞれでボールベアリング53及びニードルベアリング54によりクランクケース30側へ回転自在に支持されている。
【0020】本体部51の軸方向端部のうち前側は、大径のストッパ段部51a(図1)より前方側がボールベアリング53の軸受穴を貫通して前方へ突出する前端部55をなし、その外周には雄スプライン56(図4)が形成されている。後方のニードルベアリング54の軸受穴からに後方へ突出する部分であるギヤ取付部57の外周にはスプラインを介してファイナルドリブンギヤ50が一体回転するように取付けられている。
【0021】本体部40の後端部は、後ケースカバー32に設けられた後方へ筒状に突出する出口58を貫通してさらに後方へ突出し、その突出する後端59の外周には雄スプラインが形成され、これと結合する雌スプラインが内周に形成された後輪プロペラ軸24側のジョイントと一体回転可能に連結している。
【0022】一方、前輪接続部52はその後端61が大径部をなし、その軸心部に後方へ向かって開放する嵌合穴が設けられ、さらにその内周に雌スプライン62が形成されており、ボールベアリング53より前方に形成された筒状のハウジング空間60内において、本体部51の前端55を後端61の嵌合穴へ嵌合し、前端55の外周に形成された雄スプライン56とスプライン結合することにより本体部51と連結している。
【0023】前輪接続部52の中間部には大径部63が設けられ、この大径部63より前方部分は、リヤカバー31の前面に前方へ突出形成された出口64の貫通穴65内を貫通して前方へ突出するとともに、この貫通穴65内にて、ニードルべアリング66により軸受けされ、このとき大径部63がストッパーとなる。
【0024】出口64を貫通して前方へ突出する前端67は、その外周に雄スプライン68が形成されており、この部分を内周に雌スプラインが形成されている前輪プロペラ軸21のジョイントと嵌合することにより(図3)、前輪接続部52がスプライン結合で前輪プロペラ軸24と一体回転可能に連結する。
【0025】次に、本実施例の作用を説明する。前後輪(4輪)駆動仕様の場合には、本体部51の前端55をボールベアリング53の軸受穴へ通してハウジング空間60内へ突出させ、その外周を前輪接続部52の後端61の軸心に形成された嵌合穴へ嵌合し、前端55の外周に形成されている雄スプライン56と後端61内周に形成された雌スプライン62とをスプライン結合させることにより、前輪接続部52を本体部51をはめ合いにより一体回転可能に連結して出力軸20を形成する。
【0026】さらに、前輪接続部52の前端67を前ケースカバー31の出口64から前方へ突出させ、前輪プロペラ軸21のジョイントとスプライン結合すると前輪駆動系が完成する。また、本体部51の後端59を後輪プロペラシャフト24のジョイントとスプライン結合により連結させて後輪駆動系を完成させる。
【0027】これにより、パワーユニット4の出力は、本体部51及び前輪接続部52からなる出力軸20及び前輪プロペラ軸21、前輪ギヤボックス22を介して前輪2へ伝達され、前輪2を駆動できる。同時に本体部51及びこれを連結する後輪プロペラシャフト24を介して後輪3を駆動するので、前後輪計4輪の前後輪駆動が可能となる。
【0028】一方、2輪駆動(後2輪駆動)仕様の場合には、前輪接続部52を取付ず、かつ出口64に貫通穴65(図1)を設けない。すなわち図4は、この状態を示し、出口64に前輪接続部52を貫通させて軸受けするための貫通穴を形成せず、この貫通穴相当部分を閉鎖壁69とする。閉鎖壁69は前ケースカバー31を鋳造等によって製造するとき製造当初に一体形成される部分であり、4輪駆動仕様にするとき後加工で除去する部分であるが、この部分を除去せずに残しておけばよい。
【0029】これにより、前輪接続部52を接続しないだけで、出力軸20は本体部51のみを使用し、後輪3のみを駆動する後2輪駆動となる。したがって、前輪接続部52の着脱により、駆動形式の変更ができる。そのうえパワーユニットケースについては、4輪駆動仕様時において出口64部分に貫通穴65を形成し、2輪駆動仕様時にはこの貫通穴65を設けずに閉鎖壁69として残しておくだけでよいので、4輪駆動仕様の際若干の後加工を施すだけであり、殆ど共用可能となる。したがって、4輪駆動と2輪駆動の仕様変更が簡単になる。
【0030】そのうえ、出力軸20が全体として長軸となることにより、長さ方向において3ヶ所で軸受けすることを必要としても、本体部51と前輪接続部52に分割してスプライン結合するようにしたので、嵌合時に内側となる細径の雄スプライン形成側部分である前端55を中央のボールベアリング53の軸受穴へ通して軸受けすれば、ジャーナル径を小さくできるため、中央のボールベアリング53のサイズを小さくできる。
【0031】実際に中央のボールベアリング53部分におけるジャーナル径は、前端側のニードルベアリング66部分と同程度であり、かつ後端側のニードルベアリング54部分のジャーナル径よりは明らかに著しく小さい。このため、中央のボールベアリング53は両端のベアリングサイズに影響を与えず、かつ逆に、両端のベアリングを要求のサイズに設定した場合でもあまり内径を大きくせずに組付けが可能となる。
【0032】ゆえに、出力軸20全体が長軸となりベアリング3点による支持方法を採らざるを得ない構造となっても、出力軸20と隣り合うカウンタ軸46並びに周辺に配置する部品との距離を大きなものにしなくてすむため、パワーユニット4全体をコンパクトに設計することができる。
【0033】しかも、クランクケース30の前ケース30aと後ケース30bの間に本体部51を配設し、その前端55をニードルベアリング54からハウジング空間60内へ突出させた状態で前輪接続部52を取付けできる。この場合、前輪接続部52は前ケースカバー31の取付に先立って予め前端55へ結合させておくか、前ケースカバー31へそのニードルベアリン66から前端67を突出させた状態で予め小組してから前ケースカバー31を前ケース30a前面へ取付けるとき同時に取付けるようにすることができる。
【0034】したがって、組み立て作業が容易となる。また、パワーユニット4が車体フレーム1に搭載されている状態でメンテナンスを行うときも、前ケースカバー31や前輪接続部52だけを取り外せば足りる場合があり、この場合は本体部51や後ケースカバー32を取り外したり、クランクケース30の分解等をする必要がなくなるから、メンテナンス作業が容易になる。
【0035】そのうえ、軸振れを防止するため厳しい精度で管理しなければならず、かつ製造上も精度維持が難しく、複数回の矯正処理を施さなければならないことがある軸受部を複数有する長い出力軸20であっても、これを比較的短い本体部51と前輪接続部52に分割して個々に製造できるので、素材作成、軸受部の荒加工、熱処理、曲がり矯正、軸受部研磨、再矯正と多くの工程が必要になるが、本実施例によれば、熱処理後と軸受部研磨後の矯正処理を廃止できる可能性がある。さらに矯正によるクラックなどの問題を未然に防ぐことができる。
【0036】なお、本願発明は上記実施例に限定されず種々に変形や応用が可能であり、例えば、前後輪駆動の自動2輪車に対して適用することもできる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年9月3日(1999.9.3)
【代理人】 【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
【公開番号】 特開2001−74027(P2001−74027A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−250060