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【発明の名称】 流体軸受装置
【発明者】 【氏名】斎藤 浩昭

【氏名】浜田 力

【氏名】淺田 隆文

【要約】 【課題】潤滑剤が高速回転でもスラスト軸受とラジアル軸受の間で分離され下方へ垂れ下がったり、外部へ流出しない、あるいはスラスト軸受の潤滑剤がラジアル軸受へ流出しない流体軸受構造を得る。

【解決手段】内側スラスト動圧溝5と外側スラスト動圧溝6の中間においてフランジ4外周には周溝凹部4Aが、またフランジ4外周に対向するスリーブ10内周面には径大部10Cが設けられ、径大部10Cの、フランジ4外周の周溝凹部4Aに対応する位置のスリーブ10内周には径小部10Dを有することにより潤滑剤が下方へ垂れ下がることを阻止し、潤滑剤の流出、移動を止め、それらに起因するスラスト浮上量の低下を防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一端がベース部材に固定された固定軸と、前記固定軸の固定端部近傍に固定されたフランジ部材と、前記固定軸に回転自在に挿入されたスリーブを有し、前記スリーブに連設されるハブまたは、前記スリーブの一方の端部近傍に固定され、前記フランジ部材に対向かつ近接するスラスト板を有し、前記固定軸の外周面またはスリーブ内周面の少なくともいずれか一方にラジアル動圧溝を有し、前記スラスト板または前記フランジ部材または前記スリーブの軸方向に互いに対向する面の少なくともいずれかにはスラスト動圧溝を有し、これら前記ラジアル動圧溝およびスラスト動圧溝の溝部には潤滑剤が保持され、前記ベース部材にはモータステータが、また前記ハブにはモータロータを有し、前記フランジ部材において、その外周面に周溝凹部が、また、その周溝凹部に対向する前記スリーブ内周面には径大部が設けられ、前記径大部の、前記フランジ外周の周溝凹部に対応する位置の内周面には径小部を有する流体軸受装置。
【請求項2】 スリーブ内周面の径小部には、周溝を有し、この周溝に撥油剤を塗布した請求項1記載の流体軸受装置。
【請求項3】 少なくとも一端がベース部材に固定された固定軸と、前記固定軸の他端部近傍に固定されたフランジ部材と、前記固定軸に回転自在に挿入されたスリーブを有し、前記スリーブに連設されるハブまたは、前記スリーブの一方の端部近傍に固定され、前記フランジ部材に対向かつ近接するスラスト板を有し、前記固定軸の外周面またはスリーブ内周面の少なくともいずれか一方にラジアル動圧溝を有し、前記スラスト板または前記フランジ部材または前記スリーブの軸方向に互いに対向する面の少なくともいずれかにはスラスト動圧溝を有し、これら前記ラジアル動圧溝およびスラスト動圧溝の溝部には潤滑剤が保持され、前記ベース部材にはモータステータが、また前記ハブにはモータロータを有し、前記フランジ部材において、その外周面に周溝凹部が、また、その周溝凹部に対向する前記スリーブ内周面には径大部が設けられ、前記径大部の、前記フランジ外周の周溝凹部に対応する位置の内周面には径小部を有する流体軸受装置。
【請求項4】 スリーブ内周面の径小部には、周溝を有し、この周溝に撥油剤を塗布した請求項3記載の流体軸受装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】近年、ディスク等を用いた記録装置はそのメモリ−容量が増大し、またデ−タの転送速度が高速化しているため、この種の記録装置に用いられるディスク回転装置は高速、高精度回転が必要となり、その回転主軸部には流体軸受装置が用いられている。本発明は、磁気ディスクを回転させながら信号の記録再生を行なうディスク記録装置や、高速回転するビデオテ−プレコ−ダ用回転ヘッド装置等に用いられる動圧型の流体軸受装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下、図7を参照しながら、従来の流体軸受装置の一例について説明する。図7において、ベ−ス部材41には軸42がその一端において固定され、この軸42にスリ−ブ44Aが回転自在に填め合わされている。軸42の端面にはフランジ43が圧入されて固定され、フランジ43に対向してスラスト板45がスリ−ブ44Aに固定されている。軸42の外周面または、スリ−ブ44Aの内周面のいずれか一方には、通常は2組の魚骨状の動圧溝44B、44Cが設けられ、スリ−ブ44Aのフランジ43に対向する面と、フランジ43と、スラスト板45の少なくともいずれかには、螺旋状のまたは魚骨状の動圧溝43A,43Bが設けられ、それぞれの溝部、44B,44C,43A,43Bと、オイルまたは空気の溜り部である44Eには潤滑剤46が注油されて充満している。スリ−ブ44Aにはハブ44が一体的に構成され、ハブ44にはロ−タ磁石48が、またベ−ス部材41にはモ−タステ−タ49が取り付けられている。
【0003】以上のように構成された従来の流体軸受装置について、図7を用いてその動作について説明する。図7において、モ−タステ−タ49に通電がされ、回転磁界が発生すると、ロ−タ磁石48は、ハブ44、スリ−ブ44A、スラスト板45と共に回転体50として一体的に回転を始める。この時魚骨状の動圧溝44B、44Cは潤滑剤46を掻き集めポンピング作用により圧力を発生せしめ、また魚骨状の動圧溝43A、43Bもそれぞれ潤滑剤46を掻き集めこれらの発生圧力により回転体50は軸42及びフランジ43に対し完全非接触状態となり回転する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のような構成では、次の様な問題点がある。図8に示すように、高速回転では動圧溝43Aにおいて潤滑剤46の一部46A,46Bが下方へ垂れ下がり、気液境界面46Cも下へ移動する事があった。また、動圧溝43Bでは潤滑剤46が溢れ出て気液境界面46Dも下へ移動し46E,46Fに示すように余剰油が軸受外へ飛散し、装置を汚すことがあった。
【0005】また、上記構成のモータを倒立設置した場合、あるいは倒立設置したかのような軸上側にフランジ、スラスト板をもつモータ構成の場合は図9に示すように高速回転において動圧溝63Aにおいて潤滑剤66の一部66A,66Bが下方へ垂れ下がり、気液境界面66Cも下へ移動する事があった。また、動圧溝63Bにおいて潤滑剤66の一部66E,66Fが下方へ垂れ下がり気液境界面66Dも下へ移動する事があった。それらの現象が加速すると、軸受浮上量が低下しさらには油切れをおこし動圧溝63Aを損傷する場合があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために本発明の流体軸受装置は、少なくとも一端がケースに固定された固定軸と、固定軸の固定端部近傍又は他端部近傍に固定されたフランジ部材と、固定軸に回転自在に挿入されたスリーブを有し、スリーブに連設されるハブまたはスリーブの一方の端部近傍に固定されフランジ部材に対向かつ近接するスラスト板を有し、固定軸の外周面またはスリーブ内周面の少なくともいずれか一方にラジアル動圧溝を有し、スラスト板またはフランジ部材またはスリーブの軸方向に互いに対向する面の少なくともいずれかにはスラスト動圧溝を有し、これらラジアル動圧溝およびスラスト動圧溝の溝部には潤滑剤が保持され、フランジ部において、その外周面に周溝凹部が、また、その周溝凹部に対向するスリーブ内周面には径大部が設けられ、径大部の、フランジ外周の周溝凹部に対応する位置の内周面には径小部を設けたものである。
【0007】これにより、潤滑剤の流出が無い流体軸受の構成を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態における流体軸受装置について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0009】図1は本発明の第1の実施形態における流体軸受装置の断面図を示している。図1において、軸2は、その一端がベース部材1に固定され、この軸2の固定側近傍にフランジ4と、このフランジ4を貫通してその延長上に下軸部2Aを有し、この軸2の外周には軸受穴10Fを有するスリーブ10が回転自在に填め合わされ、また、フランジ4はスリーブ10の段部10Aに収納されている。またフランジ4の下側の面と下軸部2Aの外周面に対向するスラスト板7がスリーブ10の凹部10Bに固定されている。軸2の外周面またはスリーブ10の内周面のいずれか一方には通常は2組の、例えば魚骨状のラジアル動圧溝3A,3Bが設けられ、スリーブ10の段部10Aの端面とフランジ4の対向面のいずれか一方には魚骨状の内側スラスト動圧溝5が設けられ、またフランジ4と、スラスト板7相互の対向面のいずれか一方には必要に応じて外側スラスト動圧溝6が設けられ、ラジアル動圧溝3A,3B、及び外側スラスト動圧溝6,内側スラスト動圧溝5には潤滑剤11が注油されている。スリーブ10に固定されたハブ9にはモータロータ13が、またベース部材1にはモータステータ12が固定されている。図2においてラジアル動圧溝3B、内側スラスト動圧溝5の間において、軸2には空気溜まり、または油溜まりとなる周溝凹部2Bが設けられている。また、フランジ4において、その外周面に周溝凹部4Aが、また、それに対向するスリーブ段部10Aの内周面の径大部10Cには径小部10Dが設けられている。
【0010】以上のように構成された本発明の第1の実施形態の流体軸受装置について、図1〜図2を用いてその動作について説明する。図1において、モ−タステ−タ12に通電がされ、回転磁界が発生すると、モータロ−タ13は、ハブ9,スリーブ10,スラスト板7と共に回転を始める。この時ラジアル動圧溝3A、3Bは潤滑剤11を掻き集めポンピング作用により圧力を発生しせしめ、また外側スラスト動圧溝6と内側スラスト動圧溝5もそれぞれ潤滑剤11を掻き集めこれらの発生圧力によりモータロータ13,ハブ9,スリーブ10,スラスト板7からなる、回転体16は軸2,フランジ4に対して完全非接触状態となり回転する。図2に従い、本実施形態における流体軸受装置のさらに詳細な動作について説明する。図2は本発明の流体軸受装置が充分な時間安定回転後の状態を示している。内側スラスト動圧溝5の潤滑剤11は径大部10Cから下がろうとする時は、径小部10Dに遮られて堰き止められる。また、フランジ4外周から下がろうとする潤滑剤11はフランジ4の周溝凹部4Aに遮られて堰き止められる。そのため潤滑剤11は、安定に保持される。
【0011】次に、図3にもとづき本発明の第2の実施形態について述べる。図3は本発明の第2の実施形態における流体軸受装置の要部断面図である。軸2に軸受穴10Fを有するスリーブ10を回転自在に填め合わせている。第1実施形態と同様スリーブ10には2組のラジアル動圧溝3A,3Bが設けられ、また、フランジ4において、その外周面に周溝4Aが、また、それに対向するスリーブ段部10Aの内周面の径大部10Cには径小部10Dが設けられている。径小部10Dには撥油剤8が略輪状に塗布されており、径小部10Dには撥油剤8をハケ等を用いて塗布しやすくするための周溝10Eが必要に応じて加工されている。
【0012】以上の本発明の第2の実施形態の流体軸受装置について、図3を用いてその動作を説明する。図示しないモータロータの回転と共にスリーブ10は回転し、2組のラジアル動圧溝3A,3Bは潤滑剤11をかき集めてポンピング圧力を発生し、軸受は浮上して非接触回転する。この時、内側スラスト動圧溝6の潤滑剤11は径大部10Cから下がろうとする時は、径小部10Dと撥油剤8に遮られて垂れ下がらない。このようにして潤滑剤11は内側スラスト動圧溝5と外側スラスト動圧溝6の間で分離され、しかも垂れ下がったり流出する心配がない。
【0013】図4は本発明の第3の実施形態における流体軸受装置の断面図を示している。図4において、軸22は、その一端がベース部材21に固定され、この軸22の固定側他端部近傍にフランジ24と、このフランジ24を貫通してその延長上に上軸部22Aを有し、この軸22の外周には軸受穴30Fを有するスリーブ30が回転自在に填め合わされ、また、フランジ24はスリーブ30の段部30Aに収納されている。またフランジ24の下側の面と上軸部22Aの外周面に対向するスラスト板27がスリーブ30の凹部30Bに固定されている。軸22の外周面またはスリーブ30の内周面のいずれか一方には通常は2組の、例えば魚骨状のラジアル動圧溝23A,23Bが設けられ、スリーブ30の段部30Aの端面とフランジ24の対向面のいずれか一方には魚骨状の内側スラスト動圧溝26が設けられ、またフランジ24と、スラスト板27相互の対向面のいずれか一方には必要に応じて外側スラスト動圧溝25が設けられ、ラジアル動圧溝23A,23B、及び外側スラスト動圧溝25,内側スラスト動圧溝26には潤滑剤31が注油されている。スリーブ30に固定されたハブ29にはモータロータ33が、またベース部材21にはモータステータ32が固定されている。図5においてラジアル動圧溝23A、内側スラスト動圧溝26の間において、軸22には空気溜まり、または油溜まりとなる周溝凹部22Bが設けられている。また、フランジ24において、その外周面に周溝凹部24Aが、また、それに対向するスリーブ段部30Aの内周面の径大部30Cには径小部30Dが設けられている。
【0014】以上のように構成された本発明の第3の実施形態の流体軸受装置について、図4〜図5を用いてその動作について説明する。図4において、モ−タステ−タ32に通電がされ、回転磁界が発生すると、モータロ−タ33は、ハブ29,スリーブ30,スラスト板27と共に回転を始める。この時ラジアル動圧溝23A、23Bは潤滑剤31を掻き集めポンピング作用により圧力を発生しせしめ、また外側スラスト動圧溝25と内側スラスト動圧溝26もそれぞれ潤滑剤31を掻き集めこれらの発生圧力によりモータロータ33,ハブ29,スリーブ30,スラスト板27からなる、回転体36は軸22,フランジ24に対して完全非接触状態となり回転する。図5に従い、本実施形態における流体軸受装置のさらに詳細な動作について説明する。図5は本発明の流体軸受装置が充分な時間安定回転後の状態を示している。外側スラスト動圧溝25の潤滑剤31は、径大部30Cから下がろうとする時は、径小部30Dに遮られて堰き止められる。また、フランジ24外周から下がろうとする潤滑剤31は、フランジ24の周溝24Aに遮られて堰き止められる。そのため潤滑剤31は、安定に保持される。
【0015】次に、図6にもとづき本発明の第4の実施形態について述べる。図6は本発明の第4の実施形態における流体軸受装置の要部断面図である。軸22に軸受穴30Fを有するスリーブ30を回転自在に填め合わせている。スリーブ30には2組のラジアル動圧溝23A,23Bが設けられ、スリーブ段部30A内周には径大部30Cと径小部30Dが設けられている。径小部30Dには撥油剤28が略輪状に塗布されており、径小部30Dには撥油剤28をハケ等で塗布しやすくするための周溝30Eが必要に応じて加工されている。
【0016】以上、本発明第4の実施形態の流体軸受装置について、図6を用いてその動作を説明する。図示しないモータロータの回転と共にスリーブ30は回転し、2組のラジアル動圧溝23A,23Bは潤滑剤31をかき集めてポンピング圧力を発生し、軸受は浮上して非接触回転する。この時、外側スラスト動圧溝25に保持された潤滑剤31は、下に垂れ下がろうとする時、径小部30Dと撥油剤28に堰き止められて垂れ下がらない。このようにして潤滑剤31は外側スラスト軸受25と内側スラスト軸受26の間で分離され、しかも垂れ下がったり流出する心配がない。
【0017】以上のように本発明の各実施形態によれば、高速回転においても外側スラスト軸受と内側スラスト軸受の間で、潤滑剤31が分離でき、外側スラスト軸受側から内側スラスト軸受側へあるいは内側スラスト軸受側から外側スラスト軸受側へ垂れ下がる事がないため、高い信頼性を有する流体軸受装置の構成が得られる。
【0018】
【発明の効果】以上のように本発明の流体軸受装置は、内側スラスト軸受と外側スラスト軸受の動圧発生溝の中間においてフランジ外周には周溝凹部が、またフランジ外周に対向するスリーブ内周には径大部が設けられ、前記径大部の、前記フランジ外周の周溝凹部に対応する位置の内周面には径小部を有し、この径小部が潤滑剤が下方へ垂れ下がることを阻止する働きにより、潤滑剤が高速回転でも内側スラスト軸受と外側スラスト軸受の間で分離され、外部へ流出しない、あるいは一方のスラスト軸受の潤滑剤が他方のスラスト軸受側へ流出せず浮上量の低下しない流体軸受構造を得る事ができる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成11年8月26日(1999.8.26)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【公開番号】 特開2001−65554(P2001−65554A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−239312