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【発明の名称】 軸流送風機
【発明者】 【氏名】伊藤 嘉啓

【氏名】桑原 弘毅

【要約】 【課題】簡単な構成により送風騒音の低減と送風量との増大とを共に図る。

【解決手段】回転軸が固定されるボス部2の外周に、複数の翼3を配設する。各翼3は、その送風機半径方向中間部が、そのボス部側の翼根元部3dおよびその反対側の翼先端部3eよりも空気吸込側へ突出するように折曲され、この突出頂部3hから上記翼根元部および翼先端部に向けて内側,外側下り傾斜面3i,3jを形成してなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸が固定されるボス部の外周に、複数の翼を配設する軸流送風機において、上記各翼は、その送風機半径方向中間部が、そのボス部側の翼根元部およびその反対側の翼先端部よりも空気吸込側へ突出するように折曲され、この突出頂部から上記翼根元部および翼先端部に向けて下り傾斜面を形成してなることを特徴とする軸流送風機。
【請求項2】 各翼の突出頂部は、各翼の送風機半径方向全長の20〜80%の範囲内にて形成されていることを特徴とする請求項1記載の軸流送風機。
【請求項3】 各翼は、その突出頂部の稜線が各翼の送風機半径方向全長のほぼ等分位置にて送風機周方向に沿う全幅に亘って円弧状に表われるように折曲形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の軸流送風機。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸流送風機と、この軸流送風機からの送風を自動車用熱交換器に導風するファンケーシングと、を具備していることを特徴とする自動車用熱交換器の冷却ファン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車のラジエータ用冷却ファン、家庭用換気扇や扇風機のファン等の軸流送風機に係り、特に送風騒音の低減と送風量の増大とを共に図った軸流送風機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の軸流送風機のうち、送風騒音の低減を図ったものとしては特公昭63−13040号公報に掲載されたものがある。この軸流送風機は、ボス部に複数の翼を取り付ける取付角を連続的に減少させる領域と、取付角が連続的に増加する領域を各翼に形成している。
【0003】また、他の従来の軸流送風機としては、基本翼形状は周知形状のままで各翼に補助ブレードを設けたり、翼先端部を内方に折り曲げ、あるいはファンの外周に配されるハウジングを末広がり形状に形成したりして翼面上で二次的に派生する気流の改良を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の軸流送風機では、送風騒音の低減と送風量の増大とを共に図ることが容易ではないという課題がある。また、各翼の取付角を連続的に変化させたり、補助ブレードを設ける等により各翼の形状が複雑であるので、これらの軸流ファンを例えばプラスチックスの射出成形により製造する場合に使用される金型が複雑になり、そのために金型が高価になるという課題がある。
【0005】本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は簡単な構成により送風騒音の低減と送風量との増大とを共に図ることができる軸流送風機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、回転軸が固定されるボス部の外周に、複数の翼を配設する軸流送風機において、上記各翼は、その送風機半径方向中間部が、そのボス部側の翼根元部およびその反対側の翼先端部よりも空気吸込側へ突出するように折曲され、この突出頂部から上記翼根元部および翼先端部に向けて下り傾斜面を形成してなることを特徴とする軸流送風機である。
【0007】この発明によれば、各翼がボス部の中心軸周りに回転すると、空気が各翼の負圧から吸い込まれ、この負圧面の突出頂部を境に、その両側の下り傾斜面に沿って流れる斜流を強制的に生ぜしめ、各翼の翼先端外側において正圧面側から負圧面側へ巻き込まれて逆流する空気の巻込みを低減ないし防止することができる。
【0008】したがって、この空気の巻込みの乱流や渦流により発生する送風騒音を低減ないし防止することができると共に、この正圧面側から負圧面側への空気の巻込みを低減ないし防止できる分だけ正圧面側からの送風量もさらに増大させることができ、送風効率を向上させることができる。また、各翼を、その送風機半径方向中間部が空気吸込み側へ突出するように折曲するという簡単な構成であるので、その製造用の金型のコスト低減を図ることができると共に、量産性の向上を図ることができる。
【0009】請求項2の発明は、各翼の突出頂部は、各翼の送風機半径方向全長の20〜80%の範囲内にて形成されていることを特徴とする請求項1記載の軸流送風機である。
【0010】この発明によれば、各翼の突出頂部を、各翼の送風機半径方向全長の20〜80%の範囲内に配置したので、送風騒音の低減と送風量の増大とを共に図ることができる。
【0011】請求項3の発明は、各翼は、その突出頂部の稜線が各翼の送風機、半径方向全長のほぼ等分位置にて送風機周方向に沿う全幅に亘って円弧状に表われるように折曲形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の軸流送風機である。
【0012】この発明によれば、各翼の突出頂部の稜線が各翼の送風機半径方向ほぼ等分位置において送風機周方向に沿う全幅に亘って形成され、各翼のほぼ同位置に形成されているので、ボス部を中心とした左右対称性を全周に亘って向上させることができる。このために、空気の吸込みと送風の対称性も向上させることができるので、送風騒音と送風量の増大をさらに向上させることができる。
【0013】請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸流送風機と、この軸流送風機からの送風を自動車用熱交換器に導風するファンケーシングと、を具備していることを特徴とする自動車用熱交換器の冷却ファンである。
【0014】この発明によれば、請求項1〜3のいずれかに1項記載の軸流送風機を具備しているので、自動車用ラジエータ等の熱交換器の冷却用ファンとしてもこれら発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。これらの図中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0016】図1は図2で示す本発明の一実施形態に係る軸流送風機1の正面図のI−I線に沿う切断部の断面図、図3は図2の背面図である。
【0017】図1〜図3に示すように軸流送風機1は図示しないモータ等の回転軸が挿入されて固定される有底円筒状のボス部2の外周側面に、複数の翼3,3…を周方向に例えば等ピッチ、かつ所定の取付角で一体に取り付けており、これらボス部2と各翼3は例えばプラスチックスの射出成形等により一体に連成されている。
【0018】ボス部2は、複数の翼3を一体に連成する有底円筒状のボス本体部2aと、このボス本体部2aの内底部中央部上に突設されて、図示しないモータ等駆動手段の回転軸を挿入せしめて固定する環状の固定スリーブ2bと、この固定スリーブ2bとボス本体部2aとを一体に連結して強度の補強を図る環状や棒状の複数のリブ2cと、を一体に連成している。
【0019】一方、各翼3は、正面形状がほぼ矩形に形成された翼本体3aを有し、この翼本体3aにおける図2,3中、白矢印で示す送風機回転方向に対する前縁3bと後縁3cとを、その送風機回転方向に沿って円弧状に前傾させる円弧面に形成すると共に、ボス部2の外周側面に一体に取り付けられる翼根元部3dから送風機半径方向外方の翼先端部3eに向けて、送風機周方向に沿う翼幅を翼先端部3eへ行くに従って漸次拡幅して翼本体3aを末広形状に形成している。
【0020】また、図1にも示すように各翼3は、図中太矢印で示す空気の吸込み側に対向する面を負圧面3fに、その裏面側を正圧面3gにそれぞれ形成し、空気を負圧面3側から吸い込み、正圧面3g側から軸方向外方へ送風するようになっている。
【0021】そして、図1に示すように、各翼3は、送風機半径方向ほぼ等分位置の中間部が翼根元部3dと翼先端部3eよりも空気吸込側へ所定量突出するように翼本体3aをほぼくの字状に折曲し、この突出頂部3hと、翼根元部3dおよび翼先端部3eとの各間の翼面に、内側,外側下り傾斜面3i,3jをそれぞれ一体に連成している。このために、図2に示すように各翼3の突出頂部3hの稜線が負圧面3f上の送風機半径方向ほぼ等分位置にて送風機周方向に沿う翼幅の全幅に亘って円弧状に形成され、この各翼3の各突出頂部3hの稜線は送風機回転中心Oからほぼ同一円周上に表わされる。
【0022】したがって、この軸流送風機1が回転駆動されると、図1の太線矢印に示すように空気が負圧面3f側から吸い込まれ、各翼3の負圧面3fの各突出頂部3hから内側と外側下り傾斜面3i,3jをそれぞれ流下する斜流が強制的に発生される。
【0023】そして、この斜流のうち外側傾斜面3jをそれぞれ流下する斜流は、その風速と送風量とを増大させて、各翼先端部3eの外側にて負圧面3f側から正圧面3g側へ送風される。
【0024】このように各外側下り傾斜面3j上を流下して風速と送風量とを共に増大させた送風は、各翼3の翼先端部3e外側にて圧力差により正圧面3gから負圧面3f側へ巻き込まれて逆流する空気の巻込みを低減ないし防止することができる。
【0025】したがって、この空気の巻込みの乱流や渦流により発生する送風騒音を低減することができる。また、この空気の巻込みを低減できる分だけ、さらに送風量を増大させて送風効率を向上させることができる。
【0026】また、各翼3の突出頂部3hの稜線が各翼3の送風機半径方向ほぼ等分位置において送風機周方向に沿う全幅に亘って形成され、各翼3のほぼ同位置に形成されているので、ボス部2を中心とした左右対称性を全周に亘って向上させることができる。このために、空気の吸込みと送風の対称性も向上させることができるので、送風騒音と送風量の増大をさらに向上させることができる。
【0027】なお、上記実施形態では突出頂部3hを各翼3の送風機半径方向ほぼ等分位置に位置させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各翼3の送風機半径方向全長の20〜80%の長さの領域に形成すれば、ほぼ同様の効果を奏することができる。
【0028】図4は、本発明の第2の実施形態に係る自動車のラジエータ用冷却ファン1Aの一部切欠側断面図、図5はその背面図である。この冷却ファン1Aは図示しない自動車の熱交換器の一種である例えばラジエータに空気を送風して冷却するものであり、上記軸流送風機1をファンケーシング11に組み付けることにより構成されている。ファンケーシング11は、両端が開口した偏平角筒状のケーシング本体11aと、このケーシング本体11a内のほぼ中央部に配設される円筒状のベルマウス11bと、このベルマウス11bをケーシング本体11aの内側背面に連結する板状や棒状等の複数のリブ11cと、ベルマウス11bの中央部背面側(吐出口側)に同心状に配設されて軸流送風機1を回転駆動するモータ12を固定せしめる円板状のモータ固定台11dと、このモータ固定台11dの外周に放射状に形成されてこのモータ固定台11dをベルマウス11bとケーシング本体11aの背面に連結する複数の連結リブ11eとを、例えば合成樹脂のモールド成形等により一体に連成している。
【0029】そして、ベルマウス11b内に上記軸流送風機1を同心状に配設し、そのボス部2の固定スリーブ2b内にモータ12の回転軸の先端部を挿入して固定している。
【0030】したがって、このラジエータ用冷却ファン1Aは上記軸流送風機1をファンケーシング11に組み付けているので、この軸流送風機1と同様に送風騒音の低減と送風量の増大とを共に図ることができる。
【0031】図6はこの冷却ファン1Aを図示しない自動車のラジエータに組み付けた状態の送風量と騒音の相互関係を、従来周知のラジエータ用冷却ファンのものと比較して示すグラフである。この図6に示すように本実施形態に係る冷却ファン1Aは、従来の冷却ファンよりも、例えば約600〜900m/hrの送風量の全域に亘って約1〜5dB程度の騒音を低減することができ、特に従来例に比して送風量が増大するに従って騒音低減効果を向上させることができる。
【0032】さらに、図7はこの冷却ファン1Aを図示しない自動車のラジエータに組み付けた状態の消費電力と送風量との相互関係を、上記従来のラジエータ用冷却ファンのものと比較して示すグラフである。この図6に示すように本実施形態に係る冷却ファン1Aは、従来の冷却ファンよりも、例えば約30〜98Wのモータ12の消費電力(回転速度)の全域に亘って約40〜50m/hr程度の送風量を増大させることができる。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、各翼を、その送風機半径方向中間部が翼根元部と翼先端部よりも空気吸込側へ突出するように折曲して、この突出頂部の両側に傾斜面を形成したので、送風騒音の低減と送風量の増大とを共に図ることができる。また、各翼を、その送風機半径方向中間部が空気吸込み側へ突出するように折曲するという簡単な構成であるので、その製造用の金型のコスト低減を図ることができると共に、量産性の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000101916
【氏名又は名称】イオインダストリー株式会社
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開2001−182690(P2001−182690A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−365301