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【発明の名称】 揺動ピストン形圧縮機及びこれを用いた冷凍装置
【発明者】 【氏名】香曽我部 弘勝

【氏名】早瀬 功

【氏名】大島 健一

【氏名】川南 茂也

【氏名】幸野 雄

【要約】 【課題】揺動ピストン形圧縮機及び冷凍装置において、コストダウンを図り、かつ小型で高性能及び高信頼性にすること。

【解決手段】密閉容器3内に低圧用圧縮要素4と高圧用圧縮要素5とを有する圧縮要素1を配置し、ローラ4b1、5b1及びベーン4b2、5b2が一体に形成された揺動ピストン4b、5bを用い、密閉容器3内は高圧用圧縮要素5の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、高圧用圧縮要素5の作動室側と油供給側とに間欠的に連通する油ポケット21を介して潤滑油20を間欠的に供給する給油機構を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮要素の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記高圧用圧縮要素の作動室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記作動室側に潤滑油を間欠的に供給する給油機構を設けたことを特徴とする揺動ピストン形圧縮機。
【請求項2】 密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンと有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内を前記ローラと共に吸込室及び圧縮室とに区画し、前記密閉容器内は前記圧縮要素の吸込圧力と吐出圧力の中間圧力にすると共に、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給する給油機構を設けたことを特徴とする揺動ピストン形圧縮機。
【請求項3】 横長の密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して横に連結して配置し、前記圧縮要素は、低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有すると共に、この各圧縮要素を前記駆動軸に横に併設し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する油ポケットを前記ベーンに形成して前記潤滑油を前記吸込室側に間欠的に供給する給油機構を設けたことを特徴とする揺動ピストン形圧縮機。
【請求項4】 横長の密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して横に連結して配置し、前記圧縮要素は、低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有すると共に、この各圧縮要素を前記駆動軸に横に併設し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する角部切欠を前記ベーンに形成して前記潤滑油を前記吸込室側に間欠的に供給する給油機構を設けたことを特徴とする揺動ピストン形圧縮機。
【請求項5】 密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンと有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内を前記ローラと共に吸込室及び圧縮室とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記低圧用圧縮要素の吐出部から前記高圧用圧縮要素の吸込部を結ぶ流路を設けたことを特徴とする揺動ピストン形圧縮機。
【請求項6】 密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンと有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内を前記ローラと共に吸込室及び圧縮室とに区画し、前記密閉容器内を前記低圧用圧縮要素の吐出圧力にすると共に、前記低圧用圧縮要素の吐出部から前記高圧用圧縮要素の吸込部を結ぶ流路の途中に油分離機構を設けたことを特徴とする揺動ピストン形圧縮機。
【請求項7】 圧縮機、凝縮器、減圧機構及び蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記ピストン形圧縮機は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記高圧用圧縮要素の作動室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記作動室側に潤滑油を間欠的に供給する給油機構を設けたことを特徴とする冷凍装置。
【請求項8】 圧縮機、凝縮器、減圧機構及び蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給して前記冷凍サイクル内の油循環率が0.1重量%〜1.0重量%にする給油機構を設けたことを特徴とする冷凍装置。
【請求項9】 圧縮機、凝縮器、減圧機構及び蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンと有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内を前記ローラと共に吸込室及び圧縮室とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記冷凍サイクル内の油循環率が0.1重量%〜1.0重量%にするように前記低圧用圧縮要素の吐出部から前記高圧用圧縮要素の吸込部を結ぶ流路を設けたことを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】 圧縮機、凝縮器、冷蔵室用減圧機構、冷蔵室用蒸発器、冷凍室用減圧機構及び冷凍室用蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機は、横長の密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して横に連結して配置し、前記圧縮要素は、低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有すると共に、この各圧縮要素を前記駆動軸に横に併設し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記低圧用圧縮要素の吐出圧力にすると共に、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する油ポケットを介して前記底部の潤滑油側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給して前記冷凍サイクル内の油循環率が0.1重量%〜1.0重量%にする給油機構を設け、前記凝縮器は前記高圧用圧縮要素の吐出側に連通し、前記冷蔵室用減圧機構と冷蔵室用蒸発器は、直列に接続されて前記凝縮器の出口側と前記高圧用圧縮要素の吸込側との間に設け、前記冷凍室用減圧機構と冷凍室用蒸発器は、直列に接続されて前記凝縮器の出口側と前記低圧用圧縮要素の吸込側との間に設けたことを特徴とする冷凍装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、揺動ピストン形圧縮機及びこれを用いた冷凍装置に係り、特に、低圧用圧縮要素高圧用圧縮要素を有する揺動ピストン形圧縮機と冷蔵庫、空気調和機等の冷凍サイクルを有する冷凍装置とに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来の密閉型二段回転圧縮機としては、特開昭50−72205号公報に記載されたものがある(従来技術1)。
【0003】この従来技術1のものは、ロータとベーンが別体であり、密閉容器内の圧力を冷媒の凝縮圧力と蒸発圧力の中間圧力に保つようにしており、潤滑油中に垂下した吸油管の上端を高圧圧縮機構の吸入管内に開口し、高圧圧縮機構のロータの回転によるハウジング内の負圧を利用して、冷媒ガスを吸入すると共に吸油管より潤滑油を引き上げて高圧圧縮機構内に導くようにしたものである。
【0004】また、従来のロータリ圧縮機としては、特開平7−301190号公報に記載されたものがある(従来技術2)。
【0005】この従来技術2のものは、潤滑状態の厳しい代替フロンを用いた場合でも、ベーンとローラの接触部における摩擦・摩耗の問題を解決するために、密閉容器内に、固定子及び回転子を有する電動要素と、この電動要素により駆動されるクランク軸、このクランク軸の偏心部に回転自在に嵌合されたローラ、このローラに先端を接して往復運動し、シリンダ内を吸入室と圧縮室に仕切るベーン、及び前記クランク軸を軸支し、かつ前記シリンダの両端開口を閉塞する端板を有する主軸受及び副軸受で形成される圧縮要素を収納し、ベーンが最もシリンダの外方向に移動したときをクランク軸回転角の0°として、この回転角90°近傍において、シリンダの吸入室の中に密閉容器内にたまった潤滑油をベーンとローラの接触部に向かって供給する油供給手段を備え、そして、密閉容器内が圧縮要素で圧縮された吐出圧力となっており、ベーンがこの吐出圧力及びスプリングにより押圧されてローラに接触するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術1のものは、高圧圧縮機構への給油が配管経路の微小な圧力差を駆動力とするため、給油量の安定性を欠くという問題がある。そして、高圧圧縮機構に過大に給油された場合には、冷凍サイクル中に油が流出し、熱交換器の伝熱性能の低下や圧縮機の密閉容器内の油不足による潤滑不良を招くおそれがある。
【0007】また、従来技術1のものは、別体のベーンとローラが接触するようになっているために、ベーンとローラの接触部の摩耗を全くなくすことはできないという問題があると共に、ローラにベーンを押し付けるためにスプリングを用いているので、コストアップを招くものである。
【0008】一方、従来技術2のものは、別体のベーンとローラが接触するようになっているために、この部分に油を供給する油供給手段を設けたとしても、ベーンとローラの接触部の摩耗を全くなくすことはできないという問題がある。
【0009】また、従来技術2のものは、ローラにベーンを押し付けるために密閉容器内を高温、高圧の吐出圧力にしているので、次のような問題を有するものである。即ち、電動要素が高温で加熱されることにより、コイルが温度上昇し、信頼性が低下すると共に、モータ効率を高めることが難しい。また、高圧のローラ内面から低圧の吸入室内への差圧による漏れ込み油が過剰となりやすく、圧縮機の性能が低下するおそれがある。そして、高圧下で冷媒が油中に溶解しやすくなるので、多量の冷媒を必要としてコストアップを招き、特に可燃性炭化水素系冷媒を用いた場合にはこの漏洩時の漏洩量が増加すると共に、軸受部に供給した油から冷媒が発泡することによって潤滑性能が低下し、これにより信頼性低下を招くおそれがある。さらには、密閉容器の耐圧を高めるために、厚い密閉容器を用いることによる重量増加及びコストアップを招くものである。
【0010】さらに、従来技術2のものは、一段圧縮であるために、圧縮比が大きい、例えば冷凍用の条件下では圧縮比の小さい条件(空気調和機用等)に比べ圧縮性能が低下する問題がある。
【0011】本発明の目的は、コストダウンが図れ、かつ小型で高性能及び高信頼性の揺動ピストン形圧縮機及び冷凍装置を得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮要素の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記密閉容器内の圧力より高い圧力に圧縮する前記圧縮要素の作動室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記作動室側に潤滑油を間欠的に供給する給油機構を設けたことにある。
【0013】本発明の第2の特徴は、前記密閉容器内を前記圧縮要素の吸込圧力と吐出圧力の中間圧力にすると共に、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給する給油機構を設けたことにある。
【0014】本発明の第3の特徴は、横長の密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して横に連結して配置し、前記圧縮要素は、低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有すると共に、この各圧縮要素を前記駆動軸に横に併設し、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する油ポケットを前記ベーンに形成して前記潤滑油を前記吸込室側に間欠的に供給する給油機構を設けたことにある。
【0015】本発明の第4の特徴は、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する角部切欠を前記ベーンに形成して前記潤滑油を前記吸込室側に間欠的に供給する給油機構を設けたことにある。
【0016】本発明の第5の特徴は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンと有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内を前記ローラと共に吸込室及び圧縮室とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記低圧用圧縮要素の吐出部から前記高圧用圧縮要素の吸込部を結ぶ流路を設けたことにある。
【0017】本発明の第6の特徴は、前記密閉容器内を前記低圧用圧縮要素の吐出圧力にすると共に、前記低圧用圧縮要素の吐出部から前記高圧用圧縮要素の吸込部を結ぶ流路の途中に油分離機構を設けたことにある。
【0018】本発明の第7の特徴は、圧縮機、凝縮器、減圧機構及び蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して連結して配置し、前記圧縮要素は低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有し、前記各圧縮要素は両端面を閉塞されるシリンダとローラ及びベーンが一体の揺動ピストンとを有し、前記揺動ピストンは前記シリンダ内に揺動を伴う公転可能に配置し、前記ベーンは前記シリンダ内の作動室を吸込室側と圧縮室側とに区画し、前記密閉容器内は前記高圧用圧縮機の吐出圧力より低い圧力に保持すると共に、前記高圧用圧縮要素の作動室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記作動室側に潤滑油を間欠的に供給する給油機構を設けたことにある。
【0019】本発明の第8の特徴は、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と油供給側とに間欠的に連通する油収納部を介して前記油供給側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給して前記冷凍サイクル内の油循環率が0.1重量%〜1.0重量%にする給油機構を設けたことにある。
【0020】本発明の第9の特徴は、圧縮機、凝縮器、減圧機構及び蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機は、横長の密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを駆動軸を介して横に連結して配置し、前記圧縮要素は、低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素とを有すると共に、この各圧縮要素を前記駆動軸に横に併設し、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する油ポケットを介して前記底部の潤滑油側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給して前記冷凍サイクル内の油循環率が0.1重量%〜1.0重量%にする給油機構を設けたことにある。
【0021】本発明の第10の特徴は、圧縮機、凝縮器、冷蔵室用減圧機構、冷蔵室用蒸発器、冷凍室用減圧機構及び冷凍室用蒸発器を配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機は、前記高圧用圧縮要素のシリンダ内の吸込室側と前記密閉容器の底部の潤滑油側とに間欠的に連通する油ポケットを介して前記底部の潤滑油側から前記吸込室側に潤滑油を間欠的に供給して前記冷凍サイクル内の油循環率が0.1重量%〜1.0重量%にする給油機構を設け、前記凝縮器は前記高圧用圧縮要素の吐出側に連通し、前記冷蔵室用減圧機構と冷蔵室用蒸発器は、直列に接続されて前記凝縮器の出口側と前記高圧用圧縮要素の吸込側との間に設け、前記冷凍室用減圧機構と冷凍室用蒸発器は、直列に接続されて前記凝縮器の出口側と前記低圧用圧縮要素の吸込側との間に設けたことにある。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各実施例を図を用いて説明する。なお、第2実施例以降の実施例においては第1実施例と重複する説明を省略する。また、各実施例の図における同一符号は同一物又は相当物を示す。
【0023】まず、本発明の第1実施例の揺動ピストン形圧縮機を図1から図6を参照して説明する。図1は本発明の第1実施例の揺動ピストン形圧縮機の縦断面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図、図4は図1の揺動ピストン形圧縮機の給油機構の動作説明図、図5は図1の揺動ピストン形圧縮機に用いる油ポケットを付設した揺動ピストンの異なる変形例を示す斜視図、図6は冷凍サイクルの油循環率と成績係数COPの関係を示す性能特性図である。
【0024】図1で明らかなように、密閉容器3は、横長筒状に形成され、本体筒部及びその両側の蓋部より構成されている。密閉容器3内には、圧縮要素1、電動要素2及び駆動軸6等が収納されている。このように、密閉容器3を横長筒状とすることにより、圧縮機を冷蔵庫の背面機械室に配置する場合等において、収納性を良好なものとすることができる。電動要素2は、ステータ2aとロータ2bを備え、ステータ2aが密閉容器3に固着され、ロータ2bがステータ2a内で回転可能に配置されている。また、圧縮要素1は、低圧用圧縮要素4と高圧用圧縮要素5を備え、主軸受9を介して密閉容器3に固着されている。
【0025】各圧縮要素4、5は、円筒形状の内周面を持つシリンダ4a、5aと、このシリンダ内周面に沿って揺動を伴う公転運動する揺動ピストン4b、5bとを有する。シリンダ4a、5aの両端面部は中間に仕切り板8を挟んで、駆動軸6の軸支持を兼ねた主軸受9と副軸受10により閉塞されている。
【0026】揺動ピストン4b、5bは、円筒形状のローラ4b1、5b1と板状のベーン4b2、5b2がそれぞれ一体的に成形されており、電動要素2から延びる駆動軸6の偏心軸部6a、6bにより駆動される。 このようにローラ4b1、5b1とベーン4b2、5b2が一体的に成形されることにより、従来のようなローラ4b1、5b1とベーン4b2、5b2との接触部の摩耗をなくすことができると共に、ローラ4b1、5b1の背面を高圧で押圧する必要がなくなり、密閉容器3内を高圧下におく必要をなくすことができる。また、ベーン4b2、5b2は、シリンダ4a、5a内を吸込室側と吐出室側に区画している。
【0027】電動要素2と圧縮要素1は駆動軸6を介して連結されている。駆動軸6は、低圧用圧縮要素4の偏心軸部6aと高圧用圧縮要素5の偏心軸部6bの位相が180°ずれている。また、低圧用圧縮要素4と高圧用圧縮要素5は低圧用圧縮要素4が電動要素2側になるように軸方向に隣りあって併設されている。このように、低圧用圧縮要素4と高圧用圧縮要素5が軸方向に隣り合って併設されているので、仕切り板8を兼用でき、圧縮機をより小型のものとすることができる。
【0028】シリンダ4a、5aの円筒状内周面の外側かつ下側には、この円筒状内周面の中心軸と平行な中心軸を持つ第1の円筒孔部4a1、5a1が連通して形成されている。ベーン4b2、5b2は、円筒孔部4a1、5a1内に挿入され、この円筒孔部4a1、5a1の中心軸を中心として揺動かつ進退運動するように両側が滑動部材7を介して支持されている。
【0029】この第1の円筒孔部4a1、5a1の外側かつ下側には、円筒孔部4a1、5a1の中心軸と平行な中心軸を持つ第2の円筒孔部4a2、5a2が連通して設けられている。ベーン4b2、5b2の先端部は円筒孔部4a2、5a2内に挿入され、揺動かつ進退運動する。円筒孔部4a2、5a2は、密閉容器3の底部に位置することとなり、潤滑油20で満たされることになる。なお、ベーン4b2、5b2の先端部は、孔部4a2、5a2の中で運動し、シリンダ4a、5aと干渉することはない。
【0030】吐出弁装置11は、主軸受9の端面に配設され、主軸受9に形成された低圧用圧縮要素4の吐出口(図示せず)を開閉する。吐出マフラー12は、低圧用圧縮要素4の吐出サイレンサとして機能するように、吐出弁装置11を覆うように吐出側に配置され、密閉容器3内に連通する吐出口を有している。これにより、密閉容器3内は中間圧力に保持される。吐出弁装置13は、副軸受10の端面に配設され、副軸受10に形成された高圧用圧縮要素5の吐出口(図示せず)を開閉する。副軸受10と吐出カバー14で高圧用圧縮要素5の吐出空間が区画されている。この吐出空間は吐出パイプ18に連通している。
【0031】副軸受10の底部には潤滑油20を駆動軸6の摺動部等に供給するための空間10bが形成されている。この空間10bは、流体ダイオード10aを介して密閉容器3内に連通し、一側が円筒孔部4a2、5a2に連通し、他側が駆動軸6の摺動部等への経路に連通されている。流体ダイオード10aは、潤滑油20が密閉容器3内の空間側から流体ダイオード10a側に流入しやすく、その逆方向には流出しづらく形成されたものである。また、円筒孔部5a2は、一側が仕切り板8により閉塞され、他側が空間10bに連通された閉塞空間を構成する。給油カバー14aは、吐出カバー14の外側に装着されて送油路を形成する。この送油路は、一側が吐出カバー14の連通路を介して空間10bに連通され、他側が吐出カバー14の連通路を介して駆動軸6の給油孔に連通している。
【0032】密閉容器3内の潤滑油20は、高圧用圧縮要素5のベーン5b2が円筒孔部5a2内で進退運動することにより、円筒孔部5a2内の容積が変動し、流体ダイオード10aを介して空間10b内に吸い込まれ、給油カバー14aで形成される送油路を介して駆動軸6の給油孔に供給され、駆動軸6の摺動部等に供給される(図1の点線矢印参照)。このように、ベーン5b2の進退運動及び流体ダイオード10aを利用することにより、簡単な構成で、潤滑油20を駆動軸6の摺動部等に供給することができる。
【0033】低圧用圧縮要素4の吸込パイプ15は密閉容器3の底部を貫通して低圧用圧縮要素4の吸込側に連通されている。また、吐出パイプ16は、中間圧力になっている密閉容器3内と連通し、密閉容器3から外側に延びて中間冷却器19に接続されている。高圧用圧縮要素5の吸込パイプ17は、一側が中間冷却器19に接続され、他側が高圧用圧縮要素5の吸込側に連通している。このように、中間冷却器19は低圧用圧縮要素4の吐出パイプ16と高圧用圧縮要素5の吸込パイプ17間に配設される。高圧用圧縮要素5の吐出パイプ18は、密閉容器3を貫通して冷凍サイクルの凝縮器に連通される。
【0034】油収納部を形成する油ポケット21は、高圧用圧縮要素5の作動室内に間欠的に潤滑油20を給油するために、揺動ピストン5bの吸込み側のベーン5b2の側面部に形成されている。この給油機構の詳細は後述する。
【0035】以上の構成において、電動要素2により駆動軸6が回転すると、揺動ピストン4b、5bは偏心軸部6a、6bにより公転運動を行う。図2及び図3から明らかなように、揺動ピストン4b、5bのローラ4b1、5b1は、一体となったベーン4b2、5b2が常に偏心軸部6a、6bの中心を向くように揺動運動を行いながらその中心が公転運動する。これにより、ベーン4b2、5b2はシリンダ4a、5aの円筒孔部4a1、5a1の中心軸に向かった進退運動と該中心軸周りの揺動運動を行うが、ベーン4b2、5b2とシリンダ4a、5aの円筒孔部4a1、5a1との間の隙間のシールは滑動部材7が挿入されることにより保たれる。
【0036】従って、低圧用圧縮要素4と高圧用圧縮要素5のシリンダ4a、5a、揺動ピストン4b、5b、滑動部材7及びシリンダの両端開口を閉塞する仕切り板8、主軸受9、副軸受10により作動空間である圧縮室が形成され、揺動ピストン4b、5bの公転運動により作動流体の圧縮作用が行われる。作動ガスは、図1に矢印で示すように、吸込パイプ15を通って低圧用圧縮要素4のシリンダ4a内に入り、駆動軸6の回転によって揺動ピストン4bがほぼ一定半径の揺動を伴う公転運動をすることにより圧縮され、主軸受9の端板に配設された吐出弁装置11を通り、吐出マフラー12を通って密閉容器3内に吐き出される。密閉容器3内に吐出された作動ガスは、吐出パイプ16から外部に出て中間冷却器19により放熱して冷やされた後、吸込パイプ17を通って高圧用圧縮要素5のシリンダ5a内に入り、揺動ピストン5bが揺動を伴う公転運動をすることによりさらに圧縮され、副軸受10の端板に配設された吐出弁装置13を通って吐出カバー14により密閉区画された吐出空間に入り、ここから吐出パイプ18を通って密閉容器3外部の冷凍サイクルに流出する。
【0037】次に、本発明に関わる圧縮機の潤滑機構について説明する。電動要素2により駆動軸6が回転すると、低圧用圧縮要素4及び高圧用圧縮要素5で上記のように作動ガスの圧縮運転が行われ、密閉容器3内の圧力は吐出圧力と吸込圧力の中間の圧力、この実施例では低圧用圧縮要素4の吐出圧力となる。
【0038】圧縮機の駆動軸6の摺動部等の潤滑(外部潤滑)を説明する。高圧用圧縮要素5の揺動ピストン5bのベーン5b2が進退運動することにより、潤滑油20中に浸かったベーン5b2の背面空間(孔部5a2の空間)の容積が変化することを利用した給油ポンプ作用による。すなわち、流体ダイオード10aの流路形状は潤滑油20の貯油部からベーン5b2の背面空間方向に向かって断面積が減少するテーパ形状にしてあり、貯油部から入ってくる流れ(順流)の通路抵抗に比べ貯油部に出て行く流れ(逆流)の通路抵抗が大きくなるようにしてある。このため、ベーン5b2の進退運動により背面空間の容積が増大している時に流体ダイオード10aを通って貯油部からこの空間に流入する潤滑油の量に比べ、背面空間の容積が減少している時に流体ダイオード10aを通って貯油部に逆戻りする潤滑油の量は少なく、その差が給油カバー14aの送油路を通って駆動軸6の中心まで供給される油量となる。駆動軸6の中心に達した油は駆動軸6内部に形成された給油穴(破線で図示)を通って副軸受10、主軸受9及び偏心軸部6a、6bの各軸受摺動部に供給される。
【0039】圧縮要素作動室内の潤滑である内部潤滑を説明する。低圧用圧縮要素4の内部潤滑では、作動室内に供給される油量は、密閉容器3内の中間圧力と作動室の吸込室側の圧力との差圧により漏れる量となり、その漏れの駆動力となる圧力差が密閉容器内の圧力が吐出圧力の場合に比べて小さくなるため、揺動ピストン4bの端面部等の隙間を通って作動室内に漏れ込む油量を少なくすることができ性能向上が図れる。
【0040】また、高圧用圧縮要素5の内部潤滑は、差圧に依らずに揺動ピストン5bの吸込み側のベーン5b2の側面部に形成された油ポケット21による容積型ポンプ作用で間欠給油されるものである。図4を用いてこの油ポケット21の給油動作を説明する。図4は駆動軸6が90°ずつ回転した時の高圧用圧縮要素5の揺動ピストン5bの運動を示したものである。
【0041】図4(a)が揺動ピストン5bのベーン5b2が最もシリンダ5aの外側に突き出した状態で、この状態を駆動軸6の回転角(クランク角)θ=0°とする。この状態ではベーン5b2の側面部に形成された油ポケット21は孔部5a2内の潤滑油20中に開口しており、油ポケット21内の空間は潤滑油20で満たされる。ここから駆動軸6が時計周りに90°回転したのが図4(b)の状態であり、図4(a)で内部に潤滑油20を取り込んだ油ポケット21は滑動部材7によりその開口部を塞がれている。さらに90°回転(θ=180°)したのが図4(c)であり、油ポケット21はシリンダ5a内の吸込室内に開口し、ガスと液の密度差により油ポケット21内の潤滑油20は吸込室内に噴出し作動ガスと置換される。ここからさらに90°回転(θ=270°)したのが図4(d)の状態であり、内部に作動ガスを取り込んだ油ポケット21は滑動部材7によりその開口部を塞がれている。さらに90°回転すると最初の図4(a)の状態に戻り、油ポケット21内の作動ガスは潤滑油20と置換され再び油ポケット21内の空間は潤滑油20で満たされる。以上の動作を繰り返すことにより高圧用圧縮要素5の作動室内に所定量の潤滑油20を確実に供給することができる。
【0042】この高圧用圧縮要素5の内部潤滑における潤滑油20の供給量は、油ポケット21の容積を変えることにより容易に変えることができ、これにより各々の圧縮要素の最適油量に制御することができ、性能信頼性を向上することができる。そして、図5(a)ではベーン5b2の側面中央部に長円形状の油ポケット21を形成しているが、油ポケット21の形状や形成位置はこれに限定されるものではなく、例えば、図5(b)のように端面の角部を一部切欠く形で形成してもよい。このような形状にすることにより、粉末冶金等で揺動ピストン5bを成形する際に油ポケット21aも一体で組込み成形することが可能となり機械加工が簡略化されるとともに高圧用圧縮要素5の組立ての際の目印になり、油ポケットを逆向きに取付けるといった揺動ピストン5b組立ての誤りを防止することができる。なお、ここでは油ポケット21の形成位置を揺動ピストン5bのベーン5b2の吸込作動室側の側面部としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、高圧用圧縮要素5の吸込作動室内に、密閉容器内の潤滑油貯溜部と高圧用圧縮要素の吸込作動室内とを交互に行き来する油ポケットであればその形成位置や形状によらない。これにより作動室のシールに必要な潤滑油を差圧に依らずに間欠的な動作で適正に供給する給油機構が実現される。
【0043】上述したように構成することにより、密閉容器3内を吐出圧力より低い圧力とすることができ、密閉容器3内を低温、低圧の圧力にしているので、次のような効果を有するものである。即ち、電動要素の温度を下げることができ、信頼性及びモータ効率を向上することができる。また、高圧用圧縮要素4への給油量を適量に容易に設定でき、圧縮機の性能を向上することができる。そして、低い圧力下で冷媒が油中に溶解しづらくなり、冷媒封入量を低減できてコストダウンを図ることができ、特に可燃性炭化水素系冷媒を用いた場合には漏洩時の冷媒漏洩量の低減による安全性の向上を図ることができると共に、軸受部に供給した油から冷媒が発泡することによる潤滑性能の低下を抑制でき、これらにより信頼性を高めることができる。さらには、密閉容器3の耐圧を下げて板厚の薄い密閉容器3を用いることによる重量低減及びコストダウンを図ることができる。
【0044】なお、この実施例においては、密閉容器3内を低圧用圧縮要素4の吐出圧力になるように構成しているが、低圧用圧縮要素4の吸込圧力になるように構成しても良く、その場合には、低圧用圧縮要素4の内部潤滑にも高圧用圧縮要素5の内部潤滑と同様な給油機構を形成すればよく、密閉容器3内の圧力がさらに低くなることにより、性能向上及び信頼性の向上を図ることができる。
【0045】さて、これまで、円筒形状のローラ4b1、5b1と板状のベーン4b2、5b2が一体となった揺動ピストン4b、5bが内面円筒形状のシリンダ4a、5a内でほぼ一定半径の揺動を伴う公転運動をすることにより作動ガスを圧縮する揺動ピストン形回転圧縮機構の性能上最適な内部潤滑の供給油量については明らかにされていなかった。そこで、本発明者らはこれを明らかにすべく、密閉容器内の圧力が吸込圧力と同じ状態で前述の図4で説明した油ポケット21による間欠給油方式により作動室内に油を供給し、この油ポケットの体積を種々変化させて圧縮機性能との関係を実験により調べた。図6に実験結果の例を示す。
【0046】図6は、冷凍サイクル中の油循環率(冷媒中の油の質量割合で、JIS B8606の附属書Dに記載されている方法による測定値)と圧縮機の成績係数COP(=冷凍能力/消費電力)の関係を示す性能特性図である。ここで、冷媒はR134aであり、実験条件は冷蔵庫の通常運転状態に相当する吸入圧力Ps--=0.095MPa、吐出圧力Pd=1.043MPa、回転速度n=3000min-1である。圧縮機の成績係数COPは密閉容器3内の圧力が吐出圧力でその吐出圧力と吸込圧力の差圧によって供給される油で内部潤滑される時のCOPを1.0(一点鎖線で図示)とした時の比率で表している。
【0047】この図6から明らかなように、油循環率0.1重量%未満では内部潤滑の給油量が不足して作動室のシール性が低下するために吐出圧力と吸込圧力の差圧で内部潤滑される場合よりも性能低下し、油循環率0.1重量%以上の給油量を確保することにより、吐出圧力と吸込圧力の差圧で内部潤滑される場合よりも性能向上できる。一方、油循環率の上限は冷凍サイクル特性において、熱交換器の管内熱伝達率や圧力損失といった伝熱性能が悪化しない範囲に決められる。通常、その上限値は1.0重量%である。油循環率が1.0%を超えて増加すると、冷蔵庫の場合は冷却器の蒸発温度が上昇して冷却性能が低下しはじめる。
【0048】以上より、揺動ピストン形回転圧縮機の性能上好適な内部潤滑の油量は、冷凍サイクルの油循環率にして、0.1重量%から1.0重量%の範囲にあることが明らかになった。従って、高圧用圧縮要素5の作動室内に、密閉容器3内の潤滑油貯溜部と高圧用圧縮要素5の作動室内とを交互に行き来する油ポケット21により間欠的に潤滑油を供給する給油機構を設けることにより、差圧に依らずに容積型ポンプの作用で適正量の油を確実に供給できるため、性能信頼性を向上することができる。さらに、この給油機構により冷凍サイクル中の油循環率(冷媒中の油の質量割合)を圧縮機の性能が最適となる0.1重量%から1.0重量%の範囲になるように給油量を制御することが可能なため、熱交換器の伝熱性能を向上でき、圧縮機の信頼性も確保されて、高性能で高信頼性の揺動ピストン形圧縮機及び冷凍装置を提供することができる。
【0049】次に、本発明の第2実施例を図7及び図8を用いて説明する。図7は本発明の第2実施例による揺動ピストン形圧縮機の縦断面図、図8は図7の要部拡大図である。
【0050】この第2実施例は、高圧用圧縮要素5の内部潤滑のための給油量を冷凍サイクルの油循環率が0.1%から1.0%の範囲内に保持する方法として、低圧用圧縮要素4の内部潤滑に用いられた油を利用するものである。即ち、低圧用圧縮要素4には密閉容器3内の中間圧力と作動室内の圧力との差圧により潤滑油が内部潤滑用に供給され、その潤滑油が冷媒と共に吐出されるので、この潤滑油を高圧用圧縮要素5の吸込側に導いて高圧用圧縮要素5の内部潤滑に利用するものである。
【0051】前述の第1実施例の場合には、低圧用圧縮要素4で圧縮された作動ガスは、密閉容器3内に吐出されるため、低圧用圧縮要素4の内部潤滑に供給され作動ガスと一緒に吐出された潤滑油は、この密閉容器3内の空間で流速が急激に減少することにより作動ガスから分離され、高圧用圧縮要素5の吸込ガス中に含まれる油分はほとんどなくなってしまう。そこで、第2実施例では、低圧用圧縮要素4の吐出ガス中の潤滑油の分離効率を低下させることにより、高圧用圧縮要素5の吸込ガス中に内部潤滑に必要な油分を含ませ、高圧用圧縮要素5の内部潤滑のための給油機構を省くものである。具体的には、低圧用圧縮要素4の吐出パイプ16は、密閉容器3内に直接開口させず、主軸受9に形成された吐出通路9aを通して吐出マフラー12内の吐出空間に連通している。この吐出マフラー12の下部に密閉容器3内に連通する油戻し穴12aが設けられている。従って、主にこの吐出マフラー12の内容積を変化させることにより油分離効率を変化することができるため、高圧用圧縮要素5の内部潤滑に必要な、冷凍サイクルの油循環率が0.1%から1.0%の範囲になるように制御することができる。しかも、高圧用圧縮要素5の内部潤滑に必要以上の油が低圧用圧縮要素4から吐出された場合には、吐出マフラー12内で分離され、油戻し穴12aから密閉容器3内の潤滑油20の貯溜部にこの余分の油は戻されることになる。
【0052】尚、上述した低圧用圧縮要素4の吐出し部と高圧用圧縮要素5の吸込み部を結ぶ流路の途中に設けた油分離機構と、最初の実施形態で述べた潤滑油貯溜部と高圧用圧縮要素の作動室内とを交互に行き来する油ポケットにより高圧用圧縮要素5の作動室に間欠的に油を供給する給油機構の二つを同時に組み合せて用いることも可能である。
【0053】以上述べた実施例では、横置きの揺動ピストン形圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電動要素2を密閉容器3内の上部に、圧縮要素1を密閉容器3の下部に配設した縦置きの揺動ピストン形圧縮機にも適用できる。縦置き型の場合には、駆動軸6の下端が潤滑油20中に浸かる構成になるため圧縮機の外部潤滑として駆動軸の回転による遠心ポンプ作用が使え、ベーン5b2の進退運動を利用した給油機構よりもより簡便な構造にすることができる。
【0054】また、揺動ピストン形圧縮機の低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素の押しのけ容積(理論吸込み容積)については特に言及しなかったが、一般に、吐出圧力Pd、吸込圧力Psとしたときに圧縮動力が最小になる中間圧力Pmは、各段の圧力比が等しくなる条件から Pm=√(Ps×Pd)となることが知られており、この中間圧力Pmに実質的に等しく設定できるように低圧用圧縮要素と高圧用圧縮要素の押しのけ容積を決めることが望ましい。
【0055】次に、本発明の第3実施例を図9を用いて説明する。図9は本発明の第3実施例による冷凍装置の構成図である。この第3実施例は家庭用冷凍冷蔵庫に適用した例である。
【0056】この冷凍装置の冷凍サイクルは、前述の第1実施例で説明した本発明の圧縮機30、熱を放熱する凝縮器31、サイクル内に残留している水分を吸着するドライヤ32、キャピラリチューブ等で構成される冷蔵室用減圧機構35、庫内を冷却する冷蔵室用蒸発器33、液冷媒の一時貯溜のためのタンクであるヘッダ37、キャピラリチューブ等で構成される冷凍室用減圧機構36、冷凍室用蒸発器34、及び液冷媒の一時貯溜のためのタンクであるヘッダ38を配管にて連通したものである。この冷凍サイクルにおいて、冷蔵室用減圧機構35、冷蔵室用蒸発器33及びヘッダ37は、直列に接続され、一側が凝縮器31側に接続され、他側が揺動ピストン形圧縮機の高圧用圧縮要素5の吸込側に接続されている。また、冷凍室用減圧機構36、冷凍室用蒸発器34及びヘッダ38は、直列に接続され、一側が凝縮器31側に接続され、他側が揺動ピストン形圧縮機の低圧用圧縮要素4の吸込側に接続されている。ファン31aは凝縮器31aを外気と強制的に熱交換させるものであり、ファン33aは冷蔵室用蒸発器33を冷蔵室空気と強制的に熱交換させるものであり、ファン34aは冷凍室用蒸発器34を冷凍室空気と強制的に熱交換させるものである。なお、破線39は冷蔵室、40は冷凍室を示す。
【0057】而して、圧縮機30を起動することにより、各圧縮要素4、5のシリンダと揺動ピストン間で作動流体の圧縮作用が行われる。圧縮された高温・高圧の作動ガスは、実線矢印で示すように、高圧用圧縮要素5の吐出パイプ18から凝縮器31に流入してファン31aの送風作用で放熱・液化し、それぞれ減圧機構35、36で絞られ、断熱膨張して低温・低圧となり、冷蔵室用蒸発器33とファン33aで冷蔵室39内の熱を吸熱し、冷凍室用蒸発器34とファン34aで冷凍室40内の熱を吸熱してガス化した後、各々のヘッダ37、38を通り、冷蔵室用蒸発器33をでた作動ガスは高圧用圧縮要素5の吸込パイプ17から、冷凍室用蒸発器34を出た作動ガスは低圧用圧縮要素4の吸込パイプ15から各々吸込まれる。尚、減圧機構35、36としては通常キャピラリチューブと呼ばれる細長い銅管が使用され、吸込ガスの冷却力を有効利用するとともに吸込パイプ表面の露付きを防止するため、各吸入経路で吸込パイプと抱き合わせて熱交換している。
【0058】一般的に、冷蔵庫の冷凍室内の温度は−18℃、冷蔵室内の温度は3℃に保たれるが、それぞれの庫内温度に対応した蒸発器を用いているため、二つの蒸発温度レベル即ち吸込圧力レベルを持ち、これに、本発明の圧縮機30を組合わせることにより、低圧用圧縮要素4で吸込圧力レベルの低い冷凍室用蒸発器34からの作動ガスを吸込んで、冷蔵室用蒸発器33の蒸発圧力レベル(中間圧力)まで圧縮し、次に、高圧用圧縮要素5で冷蔵室用蒸発器33からの作動ガスも加えて吐出圧力(凝縮圧力)まで圧縮するようにしているため、無駄な膨張圧縮を無くして冷凍サイクルの成績係数COPを単段圧縮で単一蒸発温度のサイクルに比べ約30%向上することができるとともに、本発明の圧縮機30を搭載しているので、エネルギー効率に優れ、高信頼性の冷凍システムが得られる。尚、冷蔵庫内の冷却力の制御方法としては、主に、電動要素2や蒸発器ファン33a、34aの回転速度をインバータ制御等によりコントロールすることによって実現される。
【0059】次に、本発明の第4実施例を図10を用いて説明する。図10は本発明の第4実施例による冷凍装置の構成図である。この第4実施例は空気調和機に適用した例である。
【0060】この冷凍装置の冷凍サイクルは、冷暖房運転が可能なヒートポンプサイクルであり、前述の図1で説明した本発明の圧縮機30、室外熱交換器41、二段階の膨張を行う膨張弁42と43、二つの膨張弁42と43の間に配設された気液分離器44、この気液分離器44からガス冷媒のみ取出すガス抽出管44a、膨張弁42、43、気液分離器44をひし形に取り囲む形に配設された4個の逆止弁45a、45b、45c、45d、室内熱交換器46、4方弁47、及び吸込アキュムレータ48を配管にて接続して構成されている。ファン41aは室外熱交換器41を外気と強制的に熱交換させるものであり、ファン46aは室内熱交換器46を室内空気と強制的に熱交換するものである。なお、一点鎖線49は室外ユニット、50は室内ユニットを示す。
【0061】密閉型二段回転圧縮機30を起動することにより各圧縮要素4、5で作動ガス(例えばR407C、R410A、R290等)の圧縮作用が行われる。
【0062】冷房運転の場合、高圧用圧縮要素5で圧縮された高温・高圧の作動ガスは破線矢印で示すように、吐出パイプ18から4方弁47を通り、室外熱交換器41に流入してファン41aの送風作用で放熱・液化し、逆止弁45aを通って一段目の膨張弁42で絞られて中温中圧となって気液分離器44内に入り、ここでガス冷媒と液冷媒に分けられて、ガス冷媒はガス抽出管44aから高圧用圧縮要素5の吸込パイプ17に吸込まれる。一方、液冷媒は二段目の膨張弁43で再び絞られて低温低圧となり、逆止弁45bを通って室内熱交換器46とファン46aで室内の熱を吸熱してガス化した後、4方弁47、吸込アキュムレータ48を通って低圧用圧縮要素4の吸込パイプ15に吸込まれる。
【0063】また、暖房運転の場合は、4方弁47が切り替えられることにより、実線矢印で示すように、冷房運転とは逆に流れ、高圧用圧縮要素5で圧縮された高温・高圧の作動ガスは、吐出パイプ18から4方弁47を通り、室内熱交換器46に流入してファン46aの送風作用で室内に放熱して液化し、逆止弁45cを通って一段目の膨張弁42で絞られて中温中圧となって気液分離器44内に入り、ガス冷媒と液冷媒に分けられて、ガス冷媒はガス抽出管44aから高圧用圧縮要素5の吸込パイプ17に吸込まれ、液冷媒は二段目の膨張弁43で再び絞られて低温低圧となり、逆止弁45dを通って室外熱交換器41とファン41aで室外の熱を吸熱してガス化した後、4方弁47、吸込アキュムレータ48を通って低圧用圧縮要素4の吸込パイプ15に吸込まれる。
【0064】この冷凍サイクルでは膨張過程の途中に気液分離器44を配設し、冷却力に寄与しないガス冷媒を無駄に膨張圧縮することなくガス抽出管44aを通して高圧用圧縮要素5に吸込むようにしているため、冷凍サイクルの成績係数COPが改善されるとともに、本発明の圧縮機を搭載しているので、特に高圧力比運転となる低外気温時の暖房運転や高温風吹き出し時においてエネルギー効率に優れ、高信頼性の空調システムが得られる。
【0065】尚、本発明は図9及び図10に示した冷凍装置に限定されるものではなく、単純に従来の単段の密閉型圧縮機に置き換えて本発明の二段圧縮機を使用することも可能である。この場合にも、密閉容器内圧を中間圧力とし、高圧用圧縮要素の作動室に着実にかつ適正量だけ給油する内部潤滑機構を備えた二段圧縮機構により、圧縮機の高性能高信頼性化が図れ、システムのエネルギ効率を向上することができる。また、脱フロン化対応も実現可能となる。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、コストダウンが図れ、かつ小型で高性能及び高信頼性の揺動ピストン形圧縮機及び冷凍装置を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年3月8日(2000.3.8)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−254688(P2001−254688A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−68622(P2000−68622)