トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F04 液体用容積形機械;液体または圧縮性流体用ポンプ




【発明の名称】 ベーン式流体機械
【発明者】 【氏名】松本 謙司

【氏名】川上 泰伸

【氏名】本間 健介

【氏名】筒井 寿博

【要約】 【課題】各ベーンのシール部の構造を改良することによって,ケーシング内面の加工精度を緩和しても良好なシール性を確保し得るようにしたベーン式流体機械を提供する。

【解決手段】ベーン式流体機械4は,ケーシング7と,そのケーシング7内を回転するロータ31と,そのロータ31に支持されてケーシング内面45を摺動する複数のベーン42とを有する。各ベーン42のシール部50は,それがロータ回転方向C後側に向って撓んだ状態でケーシング内面45を摺動するように弾性変形自在に構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーシング(7,120)と,そのケーシング(7,120)内を回転するロータ(31,123)と,そのロータ(31,123)に支持されて前記ケーシング内面(45,47;134,135)を摺動する複数のベーン(42,126)とを有するベーン式流体機械において,各ベーン(42,126)のシール部(50,131)は,それがロータ回転方向(C)後側に向って撓んだ状態で前記ケーシング内面(45,47;134,135)を摺動するように弾性変形自在に構成されていることを特徴とするベーン式流体機械。
【請求項2】 各ベーン(42,126)の前記シール部(50,131)は耐熱性を有する合成ゴムよりなる,請求項1記載のベーン式流体機械。
【請求項3】 各ベーン(42,126)の前記シール部(50,131)表面に固体潤滑層(55,132)を設けた,請求項1または2記載のベーン式流体機械。
【請求項4】 前記固体潤滑層(55,132)は,前記シール部(50,131)の表面に分散して付着する複数の小片の集合体よりなる,請求項3記載のベーン式流体機械。
【請求項5】 前記固体潤滑層(55,132)はダイヤモンド状炭素膜よりなる,請求項4記載のベーン式流体機械。
【請求項6】 前記ベーン(42,126)はベーン本体(43,127)と,そのベーン本体(43,127)に設けられた耐熱性合成ゴム製シール部材(44,128)とよりなり,前記ベーン本体(43,127)はU字板形状および平板形状の一方の形状を有し,前記シール部材(44,128)は前記ベーン本体(43,127)に装着されるU字形およびコ字形の一方の形を持つ装着部(49,130)およびその装着部(49,130)の外周部分に連設された前記シール部(50,131)を有し,前記シール部(50,131)の表面に,そのシール部(50,131)の弾性変形を許容すべく,多数のマイクロクラックを有する固体潤滑層(55,132)が設けられている,請求項1記載のベーン式流体機械。
【請求項7】 ケーシング(7,120)と,そのケーシング(7,120)内を回転するロータ(31,123)と,そのロータ(31,123)に支持されて前記ケーシング内面(45,47;134,135)を摺動する複数のベーン(42,126)とを有するベーン式流体機械において,前記ベーン(42,126)はベーン本体(43,127)と,そのベーン本体(43,127)に設けられた耐熱性合成ゴム製シール部材(44,128)とよりなり,前記シール部材(44,128)のシール部(50,131)表面に,そのシール部(50,131)の弾性変形を許容すべく,多数のマイクロクラックを有する固体潤滑層(55,132)が設けられていることを特徴とするベーン式流体機械。
【請求項8】 前記ベーン本体(43,127)はU字板形状および平板形状の一方の形状を有し,前記シール部材(44,128)は前記ベーン本体(43,127)に装着されるU字形およびコ字形の一方の形を持つ装着部(49,130)およびその装着部(49,130)の外周部分に連設された前記シール部(50,131)を有する,請求項7記載のベーン式流体機械。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はベーン式流体機械,特に,ケーシングと,そのケーシング内を回転するロータと,そのロータに支持されて前記ケーシング内面を摺動する複数のベーンとを有するものの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】本出願人は,先に,この種の流体機械として,二つ割のケーシング内に,ロータ回転軸線を含む仮想平面内において略競技用トラック形をなすロータチャンバを設け,そのロータチャンバ内面に,各ベーンの略U字形をなすシール部を摺動させるようにしたものを提案している(特願平11−57933号明細書および図面参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この場合,ロータチャンバ内面に,微小凹,凸部やケーシングの両合せ面のずれに因る微小段差が存すると,前記シール部が硬質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)より構成されていて,それら微小凹,凸部等に倣うように変形することができないことからロータチャンバ内面およびシール部間のシール性が損われる。
【0004】そこで,ロータチャンバ内面には精密加工を施さなければならないが,前記のようにロータチャンバは特殊な形状をしているため,その精密加工には多くの作業時間を要し,これが流体機械のコスト上昇の一因となっていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は,各ベーンのシール部の構造を改良することによって,ケーシング内面の加工精度を緩和しても良好なシール性を確保し得るようにした前記ベーン式流体機械を提供することを目的とする。
【0006】前記目的を達成するため本発明によれば,ケーシングと,そのケーシング内を回転するロータと,そのロータに支持されて前記ケーシング内面を摺動する複数のベーンとを有するベーン式流体機械において,各ベーンのシール部は,それがロータ回転方向後側に向って撓んだ状態で前記ケーシング内面を摺動するように弾性変形自在に構成されているベーン式流体機械が提供される。
【0007】各ベーンのシール部を前記のように構成すると,ケーシング内面に微小凹凸部や微小段差が在っても,それらの形状に倣うようにシール部が弾性変形するため,シール部およびケーシング内面間のシール性を確保することができる。
【0008】またロータの高速回転に伴う遠心力によりシール部の面圧が上昇すると,その摺動発熱量が大となってシール部の耐久性が損われることになるが,このような不具合の発生は次のような作用で自動的に回避される。即ち,ロータの高速回転時にはシール部のロータ回転方向前側の面とケーシング内面との間に形成される楔形空間内の動圧力が上昇し,その動圧力は,遠心力によりシール部の変形量が増すことによって一層上昇する。その上昇した動圧力はシール部のケーシング内面に対する押圧力となり,その押圧力の作用点がシール部の変形により,その先端部分よりも基端部分側へ変位しているためシール部の先端部分に作用する圧力は低下する。これがシール部の面圧上昇の抑制となり,その摺動発熱量を減少させて,そのシール部の耐久性を大いに向上させることができる。なお,楔形空間内の動圧力が設計値を上回る場合にはシール部が大きく変形してその動圧力の過剰分を逃がし,楔形空間内の動圧力を略一定に保持する。
【0009】
【発明の実施の形態】図1において,内燃機関1の廃熱回収装置2は,内燃機関1の廃熱,例えば排気ガスを熱源として,流体としての,温度および圧力の上昇を図られた蒸気,つまり昇温昇圧蒸気を発生する蒸発器3と,その昇温昇圧蒸気の膨脹によって出力を発生する,ベーン式流体機械としての膨脹器4と,その膨脹器4から排出される,前記膨脹後の,温度および圧力が降下した蒸気,つまり降温降圧蒸気を液化する凝縮器5と,凝縮器5からの液体,例えば水を蒸発器3に供給する供給ポンプ6とを有する。
【0010】膨脹器4は特殊な構造を有するもので,次のように構成される。
【0011】図2〜5において,ケーシング7は金属製第1,第2半体8,9より構成される。両半体8,9は,略楕円形の凹部10を有する主体11と,それら主体11と一体の円形フランジ12とよりなり,両円形フランジ12を金属ガスケット13を介し重ね合せることによって略楕円形のロータチャンバ14が形成される。また第1半体8の主体11外面は,シェル形部材15の深い鉢形をなす主体16により覆われており,その主体16と一体の円形フランジ17が第1半体8の円形フランジ12にガスケット18を介して重ね合せられ,3つの円形フランジ12,12,17は,それらの円周方向複数箇所においてボルト19によって締結される。これにより,シェル形部材15および第1半体8の両主体11,16間には膨脹チャンバ20が形成される。
【0012】両半体8,9の主体11は,それらの外面に外方へ突出する中空軸受筒21,22を有し,それら中空軸受筒21,22に,ロータチャンバ14を貫通する中空の出力軸23の大径部24が軸受メタル25を介して回転可能に支持される。これにより出力軸23の軸線Lは略楕円形をなすロータチャンバ14における長径と短径との交点を通る。また出力軸23の小径部26は,第2半体9の中空軸受筒22に存する孔部27から外部に突出して伝動軸28とスプライン結合29を介して連結される。小径部26および孔部27間は2つのシールリング30によりシールされる。
【0013】ロータチャンバ14内に円形のロータ31が収容され,その中心の軸取付孔32と出力軸23の大径部24とが嵌合関係にあって,両者31,24間にはかみ合い結合部33が設けられている。これによりロータ31の回転軸線は出力軸23の軸線Lと合致するので,その回転軸線の符号として「L」を共用する。
【0014】ロータ31には,その回転軸線Lを中心に軸取付孔32から放射状に延びる複数,この実施例では12個のスロット状空間34が円周上等間隔に形成されている。各空間34は,円周方向幅が狭く,且つロータ31の両端面35および外周面36に一連に開口するように,両端面35に直交する仮想平面内において略U字形をなす。
【0015】各スロット状空間34内に,同一構造の第1〜第12ベーンピストンユニットU1〜U12が,次のように放射方向に往復動自在に装着される。略U字形の空間34において,その内周側を区画する部分37に段付孔38が形成され,その段付孔38に,セラミックよりなる段付形シリンダ部材39が嵌入される。シリンダ部材39の小径部a端面は出力軸23の大径部24外周面に当接し,その小径孔bが大径部24外周面に開口する通孔cに連通する。またシリンダ部材39の外側に,その部材39と同軸上に位置するようにガイド筒40が配置される。そのガイド筒40の外端部は,ロータ31外周面に存する空間34の開口部に係止され,また内端部は段付孔38の大径孔dに嵌入されてシリンダ部材39に当接する。またガイド筒40は,その外端部から内端部近傍まで相対向して延びる一対の長溝eを有し,両長溝eは空間34に面する。シリンダ部材39の大径シリンダ孔f内にセラミックよりなるピストン41が摺動自在に嵌合され,そのピストン41の先端部側は常時ガイド筒40内に位置する。
【0016】図2,6に示すように,ロータ31の回転軸線Lを含む仮想平面A内におけるロータチャンバ14の断面Bは,直径gを相互に対向させた一対の半円形断面部B1と,両半円形断面部B1の両直径gの一方の対向端相互および他方の対向端相互をそれぞれ結んで形成される四角形断面部B2とよりなり,略競技用トラック形をなす。図6において,実線示の部分が長径を含む最大断面を示し,一方,一部を2点鎖線で示した部分が短径を含む最小断面を示す。ロータ31は,図6に点線で示したように,ロータチャンバ14の短径を含む最小断面よりも若干小さな断面Dを有する。
【0017】図2,5,7〜11に明示するように,ベーン42は略U字板形状のベーン本体43と,そのベーン本体43に装着された略U字板形状のシール部材44とより構成される。
【0018】ベーン本体43は,ロータチャンバ14の半円形断面部B1による内周面45に所定の間隔を以て対向する半円弧状部46と,四角形断面部B2による対向内端面47に所定の間隔を以て対向する一対の平行部48とを有する。各平行部48の端部に外方へ突出する短軸51が設けられ,また半円弧状部46および両平行部48の外周部分に,外方に向って開口するU字溝52が一連に形成され,さらに半円弧状部46の両平面部分にそれぞれ欠円形断面の一対の突条53が設けられている。両突条53は,それらによる仮想円柱の軸線L1が,両平行部48間の間隔を2等分し,且つ半円弧状部46を周方向に2等分する直線に一致するように配置されている。また両突条53の内端部は両平行部48間の空間に僅か突出しており,両突条53間の間隙54は半円弧状部46内まで延びている。
【0019】シール部材44は,長方形断面を有するU字形装着部49と,その装着部49の外周部分に連設されると共に三角形断面を有するシール部50とを備える。その装着部49はベーン本体43のU字溝52に装着され,シール部50はU字溝52から突出して,ロータチャンバ14の半円形断面部B1による内周面45および四角形断面部B2による対向内端面47を摺動する。
【0020】図5に一部拡大して示すように,シール部50は,それがロータ回転方向Cの後側に向って撓んだ状態でケーシング7の内面,したがって前記内周面45および対向内端面47を摺動するように弾性変形自在に構成されている。シール部材44は,基本的には,耐熱性を有する合成ゴムより構成されるが,実施例においてはシール部50の表面に固体潤滑層55が設けられている。
【0021】前記合成ゴムとしてはパーフロロエラストマが用いられ,一方,固体潤滑層55は,硬く,且つ摩擦係数が小さいダイヤモンド状炭素(DLC)膜よりなる。
【0022】本実施例において用いられるダイヤモンド状炭素膜とは,レーザーラマンスペクトルにおいて,1680cm-1のグラファイトバンドと,1370cm-1のダイヤモンドバンドの何れか一方に鋭いピークが現れ,他方に非常にブロードなピークが現れるような皮膜,または前記グラファイトバンドおよびダイヤモンドバンドの両方に非常にブロードなピークが現われるような皮膜を言う。これは,Jascoリポートvol.31,No. 3,49−53(1989年),大久保優晴著,「ラマン分光法によるダイヤモンド膜の評価」による。ダイヤモンド状炭素膜はイオンビーム蒸着法の適用下でシール部50表面に付着形成されて固体潤滑層55を構成する。この固体潤滑層55には,シール部50を図5に示すように撓ませると,多数のマイクロクラックがランダムに生じ,これにより固体潤滑層55は,シール部50表面に分散して付着する複数の小片の集合体より構成されることになり,その結果,シール部50の弾性変形が許容されるので,それの前記内周面45等に対する倣い性が良好となる。この場合,シール部50に対する各小片の付着力は高く,したがって各小片の脱落は生じない。
【0023】各ベーン42はロータ31の各スロット状空間34に摺動自在に収められており,その際,ベーン本体43の両突条53はガイド筒40内に,また両突条53の両側部分はガイド筒40の両長溝e内にそれぞれ位置し,これにより両突条53の内端面がピストン41の外端面と当接することができる。ベーン本体43の両短軸51にボールベアリング構造のローラ59が取付けられ,それらローラ59は第1,第2半体8,9の対向内端面47に形成された略楕円形の環状溝60にそれぞれ転動自在に係合される。これら環状溝60の楕円形状は,図5に明示するように,ロータチャンバ14の楕円形状と相似の関係を持つ。これにより,ローラ59と環状溝60との協働で,ベーン本体43の半円弧状部46およびロータチャンバ14の内周面45間の間隙ならびに各平行部48およびロータチャンバ14の対向内端面47間の間隙がそれぞれ保持されると共にフリクションロスの軽減が図られている。またそれらの間隙は,ロータ31の回転停止時において,シール部材44により埋められているか,または最小に保たれているので,ロータ31の回転開始時,またはその直後から前記間隙をシールすることができる。
【0024】図2,3において,出力軸23の大径部24は第2半体9の軸受メタル25に支持された厚肉部分62と,その厚肉部分62から延びて第1半体8の軸受メタル25に支持された薄肉部分63とを有する。その薄肉部分63内にセラミックよりなる中空軸64が,出力軸23と一体に回転し得るように嵌着される。その中空軸64の内側に固定軸65が配置され,その固定軸65は,ロータ31の軸線方向厚さ内に収まるように中空軸64に嵌合された大径中実部66と,出力軸23の厚肉部分62に存する孔部67に2つのシールリング68を介して嵌合された小径中実部69と,大径中実部66から延びて中空軸64内に嵌合された薄肉の中空部70とよりなる。その中空部70の端部外周面と第1半体8の中空軸受筒21内周面との間にシールリング71が介在される。
【0025】シェル形部材15の主体16において,その中心部内面に,出力軸23と同軸上に在る中空筒体72の端壁73がシールリング74を介して取付けられる。その端壁73の外周部から内方へ延びる短い外筒部75の内端側は第1半体8の中空軸受筒21に連結筒76を介して連結される。端壁73に,それを貫通するように小径で,且つ長い内管部77が設けられ,その内管部77の内端側は,そこから突出する短い中空接続管78と共に固定軸65の大径中実部66に存する段付孔hに嵌着される。内管部77の外端部分はシェル形部材15の孔部79から外方へ突出し,その外端部分から内管部77内に挿通された昇温昇圧蒸気用導入管80の内端側が中空接続管78内に嵌着される。内管部77の外端部分にはキャップ部材81が螺着され,そのキャップ部材81によって,導入管80を保持するホルダ筒82のフランジ83が内管部77の外端面にシールリング84を介して圧着される。
【0026】図2〜4,12に示すように,固定軸65の大径中実部66に,第1〜第12ベーンピストンユニットU1〜U12のシリンダ部材39に,中空軸64および出力軸23に一連に形成された複数,この実施例では12個の通孔cを介して昇温昇圧蒸気を供給し,またシリンダ部材39から膨脹後の第1の降温降圧蒸気を通孔cを介して排出する機構が次のように設けられている。
【0027】図12に明示するように,大径中実部66内において,中空接続管78に連通する空間85から互に反対方向に延びる第1,第2孔部86,87が形成され,第1,第2孔部86,87は大径中実部66の外周面に開口する第1,第2凹部88,89の底面に開口する。第1,第2凹部88,89に,供給口90,91を有するカーボン製第1,第2シールブロック92,93が装着され,それらの外周面は中空軸64内周面に摺擦する。第1,第2孔部86,87内には同軸上に在る短い第1,第2供給管94,95が遊挿され,第1,第2供給管94,95の先端側外周面に嵌合した第1,第2シール筒96,97のテーパ外周面i,jが第1,第2シールブロック92,93の供給口90,91よりも内側に在ってそれに連なるテーパ孔k,m内周面に嵌合する。また大径中実部66に,第1,第2供給管94,95を囲繞する第1,第2環状凹部n,oと,それに隣接する第1,第2盲孔状凹部p,qとが第1,第2シールブロック92,93に臨むように形成され,第1,第2環状凹部n,oには第1,第2ベローズ状弾性体98,99が,また第1,第2盲孔状凹部p,qには第1,第2コイルばね100,101がそれぞれ収められ,第1,第2ベローズ状弾性体98,99および第1,第2コイルばね100,101の弾発力で第1,第2シールブロック92,93を中空軸64内周面に押圧する。
【0028】また大径中実部66において,第1コイルばね100および第2ベローズ状弾性体99間ならび第2コイルばね101および第1ベローズ状弾性体98間に,常時2つの通孔cに連通する第1,第2凹状排出部102,103と,それら排出部102,103から導入管80と平行に延びて固定軸65の中空部r内に開口する第1,第2排出孔104,105とが形成されている。
【0029】これら第1シールブロック92と第2シールブロック93といったように,同種部材であって,「第1」の文字を付されたものと「第2」の文字を付されたものとは,固定軸65の軸線に関して点対称の関係にある。
【0030】固定軸65の中空部r内および中空筒体72の外筒部75内は第1の降温降圧蒸気の通路sであり,その通路sは,外筒部75の周壁を貫通する複数の通孔tを介して膨脹チャンバ20に連通する。
【0031】図2,5に示すように,第1半体8の主体11外周部において,ロータチャンバ14の短径の両端部近傍に,半径方向に並ぶ複数の導入孔106よりなる第1,第2導入孔群107,108が形成され,それら導入孔群107,108からロータチャンバ14内に,膨脹チャンバ20内にて温度および圧力が降下した第2の降温降圧蒸気が導入される。また第2半体9の主体11外周部において,ロータチャンバ14の長径の一端部と第2導入孔群108との間に,半径方向および周方向に並ぶ複数の導出孔109よりなる第1導出孔群110が形成され,また長径の他端部と第1導入孔群107との間に,半径方向および周方向に並ぶ複数の導出孔109よりなる第2導出孔群111が形成される。これら第1,第2導出孔群110,111からは,相隣る両ベーン42間での膨脹により,さらに温度および圧力が降下した第3の降温降圧蒸気が外部に排出される。
【0032】出力軸23等は水により潤滑されるようになっており,その潤滑水路は次のように構成される。即ち,図2,3に示すように第2半体9の中空軸受筒22に形成された給水孔112に給水管113が接続される。給水孔112は,第2半体9側の軸受メタル25が臨むハウジング114に,またそのハウジング114は出力軸23の厚肉部分62に形成された通水孔uに,さらにその通水孔uは中空軸64の外周面母線方向に延びる複数の通水溝v(図12も参照)に,さらにまた各通水溝vは第2半体8側の軸受メタル25が臨むハウジング115にそれぞれ連通する。また出力軸23の厚肉部分62内端面に,通水孔uと,中空軸64および固定軸65の大径中実部66間の摺動部分とを連通する環状凹部wが設けられている。
【0033】これにより,各軸メタル25および出力軸23間ならびに中空軸64および固定軸65間が水により潤滑され,また両軸受メタル25および出力軸23間の間隙からロータチャンバ14内に進入した水によって,ケーシング7と,シール部材44および各ローラ59との間の潤滑が行われる。
【0034】図4において,ロータ31の回転軸線Lに関して点対称の関係にある第1および第7ベーンピストンユニットU1,U7は同様の動作を行う。これは,点対称の関係にある第2,第8ベーンピストンユニットU2,U8等についても同じである。
【0035】例えば,図12も参照して,第1供給管94の軸線がロータチャンバ14の短径位置Eよりも図4において反時計方向側に僅かずれており,また第1ベーンピストンユニットU1が前記短径位置Eに在って,その大径シリンダ孔fには昇温昇圧蒸気は供給されておらず,したがってピストン41およびベーン42は後退位置に在るとする。
【0036】この状態からロータ31を僅かに,図4反時計方向,つまりロータ回転方向Cに回転させると,第1シールブロック92の供給口90と通孔cとが連通して導入管80からの昇温昇圧蒸気が小径孔bを通じて大径シリンダ孔fに導入される。これによりピストン41が前進し,その前進運動はベーン42がロータチャンバ14の長径位置F側へ摺動することによってロータ31の回転運動に変換される。通孔cが供給口90からずれると,昇温昇圧蒸気は大径シリンダ孔f内で膨脹してピストン41をなおも前進させ,これによりロータ31の回転が続行される。この昇温昇圧蒸気の膨脹は第1ベーンピストンユニットU1がロータチャンバ14の長径位置Fに至ると終了する。その後は,ロータ31の回転に伴い大径シリンダ孔f内の第1の降温降圧蒸気は,ベーン42によりピストン41が後退させられることによって,小径孔b,通孔c,第1凹状排出部102,第1排出孔104,通路s(図3参照)および各通孔tを経て膨脹チャンバ20に排出される。膨脹チャンバ20において,なおも膨脹することによって温度および圧力が降下した第2の降温降圧蒸気は,図2,5に示すように,第1導入孔群107を通じてロータチャンバ14内に導入され,相隣る両ベーン42間でさらに膨脹してロータ31を回転させた後第3の降温降圧蒸気が第1導出孔群110より外部に排出される。
【0037】このように,昇温昇圧蒸気の膨脹によりピストン41を作動させてベーン42を介しロータ31を回転させ,また昇温昇圧蒸気の圧力降下による降温降圧蒸気の膨脹によりベーン42を介しロータ31を回転させることによって出力軸23より出力が得られる。
【0038】各ベーン42のシール部50を弾性変形自在に構成して,前記のように撓んだ状態でロータチャンバ14の内周面45および対向内端面47を摺動させると,その内周面45等に微小凹凸部や第1,第2半体8,9による微小段差が在っても,それらの形状に倣うようにシール部50が弾性変形するため,シール部50およびロータチャンバ14の内周面45間等のシール性を確保することができる。一方,ベーン本体43のU字溝52およびシール部材44の装着部49間のシール性は,その装着部49の弾性により確保される。
【0039】また図13に示すように,ロータ31の高速回転時にはシール部50のロータ回転方向C前側の面,実施例では固体潤滑層55の面とロータチャンバ14の内周面45との間に形成される楔形空間SW内の動圧力が上昇し,その動圧力は,遠心力によりシール部50の変形量が増すことによって一層上昇する。その上昇した動圧力はシール部のロータチャンバ内周面45に対する押圧力となり,その押圧力の作用点Zがシール部50の変形により,その先端部分よりも基端部分側へ変位しているためシール部50の先端部分に作用する圧力は低下する。これがシール部50の面圧上昇の抑制となり,その摺動発熱量を減少させて,そのシール部50の耐久性を大いに向上させることができる。なお,楔形空間SW内の動圧力が設計値を上回る場合にはシール部50が大きく変形してその動圧力の過剰分を逃がし,楔形空間SW内の動圧力を略一定に保持する。
【0040】さらにシール部50にフラッタリングが生じても,その撓みによる振動減衰効果により,シール部50の面圧を低減し得るので,シール部50表面に硬いダイヤモンド状炭素膜よりなる固体潤滑層55が存在していても,ロータチャンバ14の内周面45および対向内端面47に縞状の摺動痕が生じることはない。
【0041】さらにまたシール部材44を前記合成ゴムより構成すると,その摩擦係数が比較的大きいため,摺動状況によっては,シール部材44がベーン本体43のU字溝52から外れたり,またそのシール部材44に裂け目が生じたりすることがあるが,前記のようにシール部50に,摩擦係数の小さい固体潤滑層55を設けると前記不具合の発生を確実に回避することができる。
【0042】次に,シール部材44に関し摺動試験を行って,そのシール部50の撓み量xと摩擦係数μとの関係を調べた。図14は試験方法を示し,それは次の通りである。即ち,ケーシング7に相当する平板116に,その下方から,ベーン本体43に相当するホルダ117に保持されたシール部材44のシール部50を所定の荷重で押付け,次いで平板116を矢印yで示すように所定の速度で一方向に摺動させるものである。この試験は,水中,つまりウエット状態および大気中,つまりドライ状態で,固体潤滑層55を有するシール部50と,それを持たないシール部50について行われた。この場合,平板116はJIS SUS316で示されるステンレス鋼より構成され,またホルダ117はJIS SUS304で示されるステンレス鋼より構成された。シール部材44は前記パーフロロエラストマーより構成され,また固体潤滑層55は厚さ約1μmのダイヤモンド状炭素膜より構成された。平板116の摺動速度は0.5m/sに設定され,またシール部50の押圧荷重は撓み量xに応じ0.3〜3kgfの範囲で調節された。
【0043】図15は試験結果を示す。図15から,シール部50表面に固体潤滑層55を設けると,ドライ状態においても,またウェット状態においても固体潤滑層55を持たない場合に比べてシール部50の摩擦係数μが小さくなることが判る。シール部50の摩擦係数μは,好ましくはμ≦0.3であり,そのためにはシール部50撓み量xを,ドライ状態においては,x≦0.24mmに,一方ウエット状態においては,この実施例ではx≦0.5mmに設定する。
【0044】シール部50の形状は前記三角形断面に限らず,図16に示すような各種の形状が適用される。図16において,(a)は漏斗形断面を有する場合に,(b)はブレード形断面を有する場合に,(c)は三角形断面を有するものの両裾部にそれぞれ切欠き118を形成してシール部50を撓み易くした場合に,(d)はブレード形断面を有するものの峰側に前記同様の切欠き118を形成した場合にそれぞれ該当する。
【0045】前記膨脹器4を圧縮機として使用する場合には,出力軸23によりロータ31を図4時計方向に回転させて,ベーン42により,流体としての外気を第1,第2導出孔群110,111からロータチャンバ14内に吸込み,このようにして得られた低圧縮空気を第1,第2導入孔群107,108から膨脹チャンバ20,各通孔t,通路s,第1,第2排出孔104,105,第1,第2凹状排出部102,103,通孔cを経て大径シリンダ孔fに供給し,またベーン42によりピストン41を作動させて低圧縮空気を高圧縮空気に変換し,その高圧縮空気を通孔c,供給口90,91,および第1,第2供給管94,95を経て導入管80に導入するものである。
【0046】図17はベーン式流体機械としてのベーンポンプ119を示す。そのケーシング120は円筒形ケーシング本体121と,その両端に設けられる2つの環状端板122とよりなる。ケーシング120内には円筒形ロータ123が収容され,その回転軸124の軸線L3はケーシング120の中心線L4からεだけずれている。ロータ123は円周上等間隔に形成された3つのベーン溝125を有し,それらベーン溝125に,ケーシング内面,つまりケーシング本体121の内周面134および両端板122の内面135を摺動するベーン126が摺動自在に嵌込まれている。
【0047】図18,19および図20,21に示すように,各ベーン126はベーン本体127と,そのベーン本体127に設けられた耐熱性合成ゴム製シール部材128とよりなる。ベーン本体127は平板形状を有し,その長縁部および両短縁部に亘り一連のコ字形溝129が形成されている。シール部材128は,ベーン本体127のコ字形溝129に装着されるコ字形装着部130およびその装着部130の外周部分に連設されたシール部131を有する。前記同様に,装着部130は長方形断面を持ち,またシール部131は三角形断面を持つ。シール部131の表面には,そのシール部131の弾性変形を許容すべく,多数のマイクロクラックを有する固体潤滑層132が前記同様に設けられている。耐熱性合成ゴムとしては前記同様にパーフロロエラストマが用いられ,また固体潤滑層132は前記同様にダイヤモンド状炭素膜より構成される。
【0048】通常のベーンポンプにおいては,運転中のロータ123の熱膨脹を考慮して,ロータ123の端面133と,それと対向する端板122の内面135との間に所定の間隙が設けられているが,前記のようなシール部材128を用いると,そのシール部材128によってロータ123回転停止時に前記間隙を埋めるか,または最小にすることができ,これによりロータ123の回転開始時,或はその直後から前記間隙をシールすることができる。
【0049】ベーン式流体機械には,前記のものの外に例えばベーンモータ,送風機,ベーン圧縮機等が含まれる。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば,各ベーンのシール部の構造を前記のように特定することによってケーシング内面の加工精度を緩和しても良好なシール性を確保し得るようにしたベーン式流体機械を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年11月4日(1999.11.4)
【代理人】 【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開2001−132672(P2001−132672A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−313485