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【発明の名称】 可変容量スクロール型圧縮機
【発明者】 【氏名】岩波 重樹

【氏名】近藤 誠

【要約】 【課題】可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減を図りつつ、バイパス孔の開口面積を増大させる。

【解決手段】第1作動室Vc1の第1バイパス孔114Aの中心と第1作動室Vc1と同一状態にある第2作動室Vc2の第1バイパス孔114aの中心を結ぶ第1中心線分LA、第1作動室Vc1)の第2バイパス孔114Bの中心と第2作動室Vc2の第2バイパス孔114bの中心を結ぶ第2中心線分LB、及び第1作動室Vc1の第3バイパス孔114Cの中心と第2作動室Vc2の第3バイパス孔114cの中心を結ぶ第3中心線分(LC)が、互いに交差するとともに、各中心線分LA〜LCの長さa1〜a3が互いに等しくなり、かつ、各中心線分LA〜LCの中点CA、CB、CC又は各中心線分LA〜LCを底辺とする合同な3個の三角形の頂点が同一直線上に並ぶようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定スクロール(104)及び旋回スクロール(105)を有し、前記旋回スクロール(105)を前記固定スクロール(104)に対して旋回させることにより流体を吸入圧縮する作動室(Vc)を拡大縮小させる圧縮機構(Cp)、圧縮行程中の前記作動室(Vc)と前記圧縮機構(Cp)の吸入側とを連通させるバイパス孔(114)、並びに前記バイパス孔(114)を開閉する弁体(116)を備える可変容量スクロール型圧縮機であって、前記バイパス孔(114)は、前記作動室(Vc)のうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室(Vc1、Vc2)それぞれに第1、2バイパス孔(114A、114B、114a、114b)を有して、少なくとも合計4個設けられており、さらに、前記第1作動室(Vc1)の第1バイパス孔(114A)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第1バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、及び前記第1作動室(Vc1)の第2バイパス孔(114B)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第2バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)は互いに交差するとともに、前記両中心線分(LA、LB)の長さは互いに等しいことを特徴とする可変容量スクロール型圧縮機。
【請求項2】 固定スクロール(104)及び旋回スクロール(105)を有し、前記旋回スクロール(105)を前記固定スクロール(104)に対して旋回させることにより流体を吸入圧縮する作動室(Vc)を拡大縮小させる圧縮機構(Cp)、圧縮行程中の前記作動室(Vc)と前記圧縮機構(Cp)の吸入側とを連通させるバイパス孔(114)、並びに前記バイパス孔(114)を開閉する弁体(116)を備える可変容量スクロール型圧縮機であって、前記バイパス孔(114)は、前記作動室(Vc)のうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室(Vc1、Vc2)それぞれに第1〜3バイパス孔(114A〜114C、114a〜114c)を有して、少なくとも合計6個設けられており、さらに、前記第1作動室(Vc1)の第1バイパス孔(114A)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第1バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、前記第1作動室(Vc1)の第2バイパス孔(114B)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第2バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)、及び前記第1作動室(Vc1)の第3バイパス孔(114C)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第3バイパス孔(114c)の中心を結ぶ第3中心線分(LC)は互いに交差するとともに、前記各中心線分(LA〜LC)の長さは互いに等しく、かつ、前記各中心線分(LA〜LC)の中点(CA、CB、CC)は同一直線上に並んでいることを特徴とする可変容量スクロール型圧縮機。
【請求項3】 固定スクロール(104)及び旋回スクロール(105)を有し、前記旋回スクロール(105)を前記固定スクロール(104)に対して旋回させることにより流体を吸入圧縮する作動室(Vc)を拡大縮小させる圧縮機構(Cp)、圧縮行程中の前記作動室(Vc)と前記圧縮機構(Cp)の吸入側とを連通させるバイパス孔(114)、並びに前記バイパス孔(114)を開閉する弁体(116)を備える可変容量スクロール型圧縮機であって、前記バイパス孔(114)は、第1〜4バイパス孔(114A、114B、114a、114b)を有して、少なくとも4個設けられており、さらに、前記第1バイパス孔(114A)の中心と前記第3バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、及び前記第2バイパス孔(114B)の中心と前記第4バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)は互いに交差するとともに、前記両中心線分(LA、LB)の長さは互いに等しいことを特徴とする可変容量スクロール型圧縮機。
【請求項4】 固定スクロール(104)及び旋回スクロール(105)を有し、前記旋回スクロール(105)を前記固定スクロール(104)に対して旋回させることにより流体を吸入圧縮する作動室(Vc)を拡大縮小させる圧縮機構(Cp)、圧縮行程中の前記作動室(Vc)と前記圧縮機構(Cp)の吸入側とを連通させるバイパス孔(114)、並びに前記バイパス孔(114)を開閉する弁体(116)を備える可変容量スクロール型圧縮機であって、前記バイパス孔(114)は、前記作動室(Vc)のうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室(Vc1、Vc2)それぞれに第1〜3バイパス孔(114A〜114C、114a〜114c)を有して、少なくとも合計6個設けられており、前記第1作動室(Vc1)の第1バイパス孔(114A)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第1バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、前記第1作動室(Vc1)の第2バイパス孔(114B)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第2バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)、及び前記第1作動室(Vc1)の第3バイパス孔(114C)の中心と前記第2作動室(Vc2)の第3バイパス孔(114c)の中心を結ぶ第3中心線分(LC)は互いに交差するとともに、前記各中心線分(LA〜LC)の長さは互いに等しく、さらに、前記各中心線分(LA〜LC)を底辺とする、合同な3個の三角形をを想定したときに、それら三角形の頂点は同一直線上に並ぶことを特徴とする可変容量スクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可変容量スクロール型圧縮機に関するもので、車両用冷凍サイクル(車両用空調装置)に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】可変容量スクロール型圧縮機の構造は、例えば特開平9−296787号公報に記載のごとく、圧縮行程中の作動室と吸入側とを連通させるバイパス孔を固定スクロールに設けるとともに、このバイパス孔をスプール弁により開閉することにより、吐出容量(実質的な吸入量)を変化させるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、スクロール型圧縮機では、流体(冷凍サイクルでは、冷媒)を吸入圧縮する作動室(圧縮室)は、旋回スクロールの旋回と共にその体積を変化させながら渦巻の中心部に移動していくが、このとき、体積(圧縮度合い)が略等しい状態の作動室が、必ず渦巻の中心(吐出口)を挟んで2個づつ存在する。
【0004】したがって、バイパス孔を設けるに当たっては、図3に示すように、略等しい状態の作動室それぞれにバイパス孔を設けることが望ましい。
【0005】また、バイパス孔の開口面積(穴径)が小さいと、バイパス孔での圧力損失(流通抵抗)が大きくなってしまうので、特に、旋回スクロールの回転数が高いときには、バイパス孔が開いても十分な量の流体が吸入側に流れないため、十分に吐出容量を低下させることができないという問題が発生する。
【0006】この問題を解決するには、バイパス孔の数を増大させる等してバイパス孔の開口面積を増大させ、バイパス孔での圧力損失を低減する必要があるが、単純にバイパス孔の数を増大させると、略等しい状態の作動室それぞれにバイパス孔を設けることと相まって、製造時において、ワーク(固定スクロール)及び穴開けを行うドリルの移動量が増大するとともに、ワーク又はドリルをX−Y方向(二次元的)に移動させる必要がある。
【0007】このため、バイパス孔を設けるための加工工数が増大してしまうとともに、ワーク又はドリルをX−Y方向(二次元的)に移動させることができる高価な工作機械(マシニングセンタ)を必要とするので、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価上昇を招いてしまう。
【0008】本発明は、上記点に鑑み、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減を図りつつ、バイパス孔の開口面積を増大させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、可変容量スクロール型圧縮機において、バイパス孔(114)は、作動室(Vc)のうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室(Vc1、Vc2)それぞれに第1、2バイパス孔(114A、114B、114a、114b)を有して、少なくとも合計4個設けられており、さらに、第1作動室(Vc1)の第1バイパス孔(114A)の中心と第2作動室(Vc2)の第1バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、及び第1作動室(Vc1)の第2バイパス孔(114B)の中心と第2作動室(Vc2)の第2バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)は互いに交差するとともに、両中心線分(LA、LB)の長さは互いに等しいことを特徴とする。
【0010】これにより、各中心線分(LA、LB)を決定する2個のバイパス孔を1組として、それらを同時に形成することが可能となるので、穴開け加工(バイパス孔形成)に必要な工数(時間)を低減することができ、バイパス孔(114)の開口面積を増大させつつ、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減を図ることができる。
【0011】請求項2に記載の発明では、可変容量スクロール型圧縮機において、バイパス孔(114)は、作動室(Vc)のうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室(Vc1、Vc2)それぞれに第1〜3バイパス孔(114A〜114C、114a〜114c)を有して、少なくとも合計6個設けられており、さらに、第1作動室(Vc1)の第1バイパス孔(114A)の中心と第2作動室(Vc2)の第1バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、第1作動室(Vc1)の第2バイパス孔(114B)の中心と第2作動室(Vc2)の第2バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)、及び第1作動室(Vc1)の第3バイパス孔(114C)の中心と第2作動室(Vc2)の第3バイパス孔(114c)の中心を結ぶ第3中心線分(LC)は、互いに交差するとともに、各中心線分(LA〜LC)の長さは互いに等しく、かつ、各中心線分(LA〜LC)の中点(CA、CB、CC)は同一直線上に並んでいることを特徴とする。
【0012】これにより、請求項1に記載の発明と同様に、各中心線分(LA、LB、LC)を決定する2個のバイパス孔を1組として、それらを同時に形成することが可能となるので、穴開け加工(バイパス孔形成)に必要な工数(時間)を低減することができ、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減を図ることができる。
【0013】また、各中心線分(LA〜LC)の中点(CA、CB、CC)は同一直線上に並んでいるので、後述するように、ワーク又はドリルをX−Y方向(二次元的)に移動させることなく、2個のバイパス孔を1組として複数組のバイパス孔(114)を形成することができる。
【0014】したがって、高価な工作機械(マシニングセンタ)を導入する(設備投資を行う)ことなく、バイパス孔(114)を形成することができるので、バイパス孔(114)の製造工数低減効果と相まって、バイパス孔(114)の開口面積を増大させつつ、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減をさらに図ることができる。
【0015】請求項3に記載の発明では、可変容量スクロール型圧縮機において、バイパス孔(114)は、第1〜4バイパス孔(114A、114B、114a、114b)を有して、少なくとも4個設けられており、さらに、第1バイパス孔(114A)の中心と第3バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、及び第2バイパス孔(114B)の中心と第4バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)は互いに交差するとともに、両中心線分(LA、LB)の長さは互いに等しいことを特徴とする。
【0016】これにより、請求項1に記載の発明と同様に、各中心線分(LA、LB)を決定する2個のバイパス孔を1組として、それらを同時に形成することが可能となるので、穴開け加工(バイパス孔形成)に必要な工数(時間)を低減することができ、バイパス孔(114)の開口面積を増大させつつ、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減を図ることができる。
【0017】請求項4に記載の発明では、固定スクロール(104)及び旋回スクロール(105)を有し、旋回スクロール(105)を固定スクロール(104)に対して旋回させることにより流体を吸入圧縮する作動室(Vc)を拡大縮小させる圧縮機構(Cp)、圧縮行程中の作動室(Vc)と圧縮機構(Cp)の吸入側とを連通させるバイパス孔(114)、並びにバイパス孔(114)を開閉する弁体(116)を備える可変容量スクロール型圧縮機であって、バイパス孔(114)は、作動室(Vc)のうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室(Vc1、Vc2)それぞれに第1〜3バイパス孔(114A〜114C、114a〜114c)を有して、少なくとも合計6個設けられており、第1作動室(Vc1)の第1バイパス孔(114A)の中心と第2作動室(Vc2)の第1バイパス孔(114a)の中心を結ぶ第1中心線分(LA)、第1作動室(Vc1)の第2バイパス孔(114B)の中心と第2作動室(Vc2)の第2バイパス孔(114b)の中心を結ぶ第2中心線分(LB)、及び第1作動室(Vc1)の第3バイパス孔(114C)の中心と第2作動室(Vc2)の第3バイパス孔(114c)の中心を結ぶ第3中心線分(LC)は互いに交差するとともに、各中心線分(LA〜LC)の長さは互いに等しく、さらに、各中心線分(LA〜LC)を底辺とする、合同な3個の三角形をを想定したときに、それら三角形の頂点は同一直線上に並ぶことを特徴とする。
【0018】これにより、請求項2に記載の発明と同様に、穴開け加工(バイパス孔形成)に必要な工数(時間)を低減することができるとともに、ワーク又はドリルをX−Y方向(二次元的)に移動させることなく、2個のバイパス孔を1組として複数組のバイパス孔(114)を形成することができるので、可変容量スクロール型圧縮機の製造原価低減を図ることができる。
【0019】因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0020】
【発明の実施の形態】本実施形態は、本発明に係る可変容量スクロール型圧縮機(以下、圧縮機と略す。)を車両用冷凍サイクル(車両用空調装置)に適用したものであって、図1は車両用冷凍サイクル(以下、サイクルと略す。)の模式図である。
【0021】100は本実施形態に係る圧縮機であり、200は圧縮機100から吐出した冷媒(流体)を冷却する凝縮器(放熱器)である。300は凝縮器200から流出した冷媒を減圧するとともに、後述する蒸発器400の出口側の加熱度が所定値となるように開度が制御される膨張弁(減圧器)であり、400は膨張弁300にて減圧された液相冷媒を蒸発させる蒸発器である。
【0022】なお、圧縮機100は、Vベルト510、プーリ520及び電磁クラッチ等の動力を断続可能に伝達する動力伝達手段(図示せず)を介して車両走行用エンジン(以下、エンジンと略す。)500により駆動される。
【0023】また、600はエンジン500の負荷(本実施形態では、スロットルバルブ(図示せず))の開度を検出する駆動負荷センサ(駆動負荷検出手段)であり、700は駆動負荷センサ600の検出値に基づいて予め設定されたプログラムに従って後述する圧力調整手段118(第1、2電磁弁118b、118d)を制御する電子制御装置(ECU)である。
【0024】次に、圧縮機100の構造について述べる。
【0025】図2は圧縮機100の断面を示しており、101は動力伝達手段(電磁クラッチ)を介して回転駆動されるシャフトである。102はシャフト101を回転可能に支持する転がり軸受103を保持するフロントハウジングであり、このフロントハウジング102には、渦巻き状の歯部104aが形成された固定スクロール(固定部)104が固定されている。
【0026】また、固定スクロール104とフロントハウジング102とによって形成される空間には、歯部104aに噛み合う渦巻き状の歯部105aが形成された旋回スクロール(可動部)105が配設されており、旋回スクロール105は、シャフト101の回転中心から所定量偏心した位置に形成されたクランク部(偏心部)101aに軸受101b及びブッシング101cを介して回転可能に組付けれている。
【0027】因みに、本実施形態では、ブッシング101cはクランク部101aに対して僅かに摺動可能となっており、旋回スクロール105に作用する圧縮反力によって、両歯部104a、105aの接触圧力が増大する向きに旋回スクロール105を摺動変位させることにより、両歯部104a、105aの接触圧力を増大させている(従動クランク機構)。
【0028】そして、旋回スクロール105が、シャフト101の回転とともにシャフト101周りを旋回することにより、両スクロール104、105によって構成された作動室Vcの体積を拡大縮小させて冷媒を吸入圧縮する。なお、以下、両スクロール104、105等の冷媒を吸入圧縮する機構を圧縮機構Cpと呼ぶ。
【0029】また、106は蒸発器400の出口側に接続される吸入口(図示せず)に連通する吸入室であり、107は凝縮器200の入口側に接続される吐出口(図示せず)に連通するとともに、作動室Vcから吐出する冷媒の脈動を平滑する吐出室である。そして、吐出室107は、固定スクロール104の端板部(歯部104aの根本部に形成された板状の部位)104bに形成された吐出ポート104c(図3参照)を介して作動室Vcと連通しており、吐出ポートのうち吐出室107側には、冷媒が吐出室107から作動室Vcに逆流することを防止するリード弁状の吐出弁108が配設されている。
【0030】なお、吐出室107は、ガスケット(図示せず。)を介して固定スクロール104に固定されたリアハウジング151と固定スクロール104とによって囲まれた空間に形成されている。また、吐出弁108は、吐出弁108の最大開度を規制する弁止板(弁押さえ)109とともにボルト110により端板部104bに共締め固定されている。
【0031】また、端板部104bには、図3に示すように、圧縮行程中の作動室Vcと吸入室106とを連通させるパイパスポート(バイパス孔)114が形成されており、このバイパスポート114は、端板部104bのうち、作動室Vcの体積がその最大体積に対して約50%となる部位に設けられている。
【0032】そして、このバイパスポート114は、作動室Vcのうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室Vc1、Vc2それぞれに第1〜3バイパスポート114A〜114C、114a〜114cを有して、少なくとも合計6個設けられている。なお、第1〜3バイパスポート114A〜114C、114a〜114cは、歯部105aのインボリュート曲線に沿うように、その中心が略円弧を描くように位置している。
【0033】また、第1作動室Vc1の第1バイパスポート114Aの中心と第2作動室Vc2の第1バイパスポート114aの中心を結ぶ第1中心線分LA、第1作動室Vc1の第2バイパスポート114Bの中心と第2作動室Vc2の第2バイパスポート114bの中心を結ぶ第2中心線分LB、及び第1作動室Vc1の第3バイパスポート114Cの中心と第2作動室Vc2の第3バイパスポート114cの中心を結ぶ第3中心線分LCは互いに交差するとともに、各中心線分LA〜LCの長さa1〜a3は互いに等しく、かつ、各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCは同一直線(本実施形態では、第2中心線分LB)上に並んでいる。
【0034】ところで、シャフト101を回転させると、旋回スクロール105は、クランク部101a周りに自転しようとするが、図2に示すように、ピン及びリングからなる周知の自転防止機構105cが設けられているので、旋回スクロール105は自転せずに、シャフト101周りを旋回(公転)する。
【0035】また、端板部104b内には、図2、3に示すように、直線上に延びるガイドシリンダボア(円柱状の穴)115が形成されており、このガイドシリンダボア(以下、シリンダと略す。)115内には、バイパスポート114を開閉するスプール弁体(以下、スプールと略す。)116が摺動可能に配設されている。
【0036】そして、スプール116には、シリンダ115の内径寸法と略等しい外形寸法を有してバイパスポート114を開閉する第1、2弁部116a、及びシリンダ115の内径寸法より小さい外形寸法を有してバイパスポート114から流出する冷媒の通路を構成するロッド部116bが形成されている。
【0037】因みに、117a〜117cは、バイパスポート114から流出した冷媒を吸入室106に導くバイパス通路である。
【0038】ところで、スプール116の摺動方向(図2の矢印方向)一端側(本実施形態では、図2、3の上方側)には、スプール116の摺動方向他端側に向けてスプール116を押圧する弾性力を発揮するコイルスプリング(弾性手段)118cが配設されているとともに、バイパス通路117a、117cを介して圧縮機構Cpの吸入圧(吸入室106内の圧力)Psが作用している。以下、スプール116の摺動方向一端側に作用するコイルスプリング118cの弾性力Fs及び吸入圧Psによる力を開弁力と呼ぶ。
【0039】一方、スプール116の摺動方向他端側(本実施形態では、図2、3の下方側)には、図2に示すように、圧縮機構Cpの吐出圧Pdを減圧調整し、その減圧調整した調整圧力(以下、この調整圧力を制御圧Pcと呼ぶ。)をスプール116のうち摺動方向の他端側に作用させる圧力調整手段118が設けられている。
【0040】なお、以下、スプール116の摺動方向他端側(制御圧Pcが導入されている空間119)を制御圧力室119と呼び、スプール116の摺動方向他端側に作用する制御圧Pcによる力を閉弁力と呼ぶ。
【0041】また、圧力調整手段118は、吸入室106と制御圧力室119とを連通させる制御通路118aと、制御通路118aを開閉する電磁弁(弁手段)118bとから構成されている。因みに、電磁弁118bは、非通電時開(ノーマルオープン)型の電磁弁である。
【0042】また、120はスプール116の最大変位を規制するとともに、シリンダ115の一端側を閉塞する蓋(プラグ)を兼ねるストッパであり、121は吐出室107と制御圧力室119とを所定圧力損失をもって連通させる固定絞り(絞り手段)である。
【0043】次に、圧縮機100概略作動を述べる。
【0044】1.最小容量(約50%)運転時電磁弁118bへの通電を遮断することにより制御通路118aをを連通させる。
【0045】これにより、制御圧力室119内の制御圧Pcは吸入圧Psとなるので、コイルスプリング118cの弾性力Fsにより開弁力が閉弁力を上回り、スプール116がストッパ120に衝突するまで弾性力Fsの向きに摺動変位する。そして、この状態ではバイパスポート114が開くので、一旦、作動室Vcに吸入された冷媒は、圧縮行程においてバイパスポート114から吸入室106に戻り、圧縮機100(圧縮機構Cp)の吐出容量が、最大時の約50%となる。
【0046】3.最大容量(100%)運転時第1電磁弁118bへ通電することにより制御通路118aを閉じる。
【0047】これにより、制御圧Pcは吐出圧Pdとなるので、閉弁力が開弁力を上回り、コイルスプリング118cを押し縮めるようにスプール116が弾性力Fsの向きと反対の向きに摺動変位する。そして、この状態では、バイパスポート114が閉じるように構成されているため、圧縮機100(圧縮機構Cp)の吐出容量が、最大容量となる。
【0048】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0049】第1〜3バイパスポート114A〜114C、114a〜114cは、前述のごとく、その中心が円弧を描くように位置しているので、各中心線分LA〜LCは、図4に示すように、第1〜3バイパスポート114A〜114C、114a〜114cの中心が描く円弧S1の中心Oに対する弦と見なすことができる。
【0050】このとき、各中心線分LA〜LCの長さa1〜a3は互いに等しいので、バイパスポート114A、114a及び中心Oからなる二等辺三角形OAa、バイパスポート114B、114b及び中心Oからなる二等辺三角形OBb、及びバイパスポート114C、114c及び中心Oからなる二等辺三角形OCcは合同な二等辺三角形となる。
【0051】したがって、本実施形態のごとく、各中心線分LA〜LCの長さa1〜a3は互いに等しく、かつ、互いに交差してい状態においては、二等辺三角形OBb、OCcは、二等辺三角形OAaを中心Oの周りに回転させたものとなるので、図5に示すように、距離が一定に保持された2本のドリルDriを用いて、第1、2作動室Vc1、Vc2それぞれ同時に穴開け加工を行うことができる。
【0052】したがって、2個のバイパスポートを1組として穴開け加工(バイパスポート114の形成)を行うことができるので、穴開け加工に必要な工数(時間)を低減することができる。延いては、バイパスポート114の数を増大させてバイパスポート114の開口面積を増大させつつ、圧縮機100の製造原価低減を図ることができる。
【0053】なお、上述の説明では、理解を容易にする為に三角形の頂点(中心O)が一致するものとして説明したが、現実には完全に一致するものではないが、そのずれは僅かであるので、上記説明のように考えても実用上問題ない。
【0054】因みに、本実施形態では、バイパスポート114Aとバイパスポート114aとを、バイパスポート114Bとバイパスポート114bとを、バイパスポート114Cとバイパスポート114cとを組として中心線分を考えたが、例えばバイパスポート114Aとバイパスポート114cとを、バイパスポート114Bとバイパスポート114bとを、バイパスポート114Cとバイパスポート114aとを組として中心線分を考えると、これらの中心線分は互いに交差することなく、かつ、その長さも相違する。したがって、2個のバイパスポートを1組として穴開け加工を行うことができない。
【0055】ところで、二等辺三角形OBb、OCcは、二等辺三角形OAaを中心Oの周りに回転させたものとなるので、単純に二等辺三角形OAaを中心Oの周りに回転させるように、各バイパスポート114を設定すると、1組の穴開け加工が終了する毎に、2本のドリルDriをその2本のドリルDri間の中央にて回転移動させるとともに、固定スクロール104をドリルDriに対してX−Y方向(紙面上下左右方向)に移動させる必要がある。
【0056】これに対して、本実施形態のごとく、各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCは同一直線(本実施形態では、第2中心線分LB)上に並ぶように各バイパスポート114を設定すると、図3に示すように、固定スクロール104をX−Y方向(紙面上下左右方向)に移動させることなく直線上に移動させることにより、各組をなすバイパスポート114(114A〜114C、114a〜114c)を形成することができる。
【0057】具体的には、先ず、2本のドリルDriを結ぶドリル基準線分(図示せず)を中心線分LAと一致させた状態でバイパスポート114A、114aを形成した後、ドリル基準線分が中心線分LBと一致するように2本のドリルDriを回転移動させるとともに、ドリル基準線分の中点が中点CAの位置から中点CBの位置に移動するように固定スクロール104を直線的に移動させた後、バイパスポート114B、114bを形成する。
【0058】その後、ドリル基準線分が中心線分LCと一致するように2本のドリルDriを回転移動させるとともに、ドリル基準線分の中点が中点CBの位置から中点CCの位置に移動するように固定スクロール104を直線的に移動させた後、バイパスポート114C、114cを形成する。
【0059】したがって、固定スクロール104(ワーク)又はドリルDriをX−Y方向(二次元的)に移動させる必要がないので、高価な工作機械(マシニングセンタ)を導入する(設備投資を行う)ことなく、バイパスポート114を形成することができる。
【0060】したがって、バイパスポート114(114A〜114C、114a〜114c)の製造工数低減効果と相まって、さらに、圧縮機100の製造原価低減を図ることができる(その他の実施形態)上述の実施形態では、固定スクロール104を直線移動させ、2本のドリルDriを回転移動させたが、固定スクロール104を固定して、2本のドリルDriを直線移動及び回転移動させてもよい。
【0061】また、第1〜3バイパスポート114A〜114C、114a〜114cの位置関係は、図3、4に示す関係に限定されるものではなく、図6に示すような関係であっても、第1〜3バイパスポート114A〜114Cと第1〜3バイパスポート114a〜114cとは、作動室Vcのうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室Vc1、Vc2に設けられたものとなる。
【0062】また、上述の実施形態では、バイパスポート114を合計6個としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1、2作動室Vc1、Vc2それぞれに2個づつ以上、合計4個以上であればよい。なお、バイパスポート114が合計4個の場合には中心線分は2本となるので、中心線分の中点が同一直線上に位置するか否かは、事実上関係ない。
【0063】また、上述の実施形態では、各中心線分LA〜LCは互いに交差するとともに、その長さa1〜a3は互いに等しく、かつ、各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCは同一直線上に並んでいたが、少なくとも各中心線分LA〜LCは互いに交差し、かつ、その長さa1〜a3は互いに等しければ、前述のごとく、2のバイパスポート114を同時に形成することができるので、各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCは同一直線上に並んでいなくても本発明を実施することができる。
【0064】また、上述の実施形態では、作動室Vcのうち圧縮行程において略等しい状態となる第1、2作動室Vc1、Vc2それぞれに複数個のバイパスポート114を形成したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数個のバイパスポート114が略円弧状に並ぶようなものに適用することができる。
【0065】また、上述の実施形態では、ドリル基準線分の中点が各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCと一致していたが、本発明はドリル基準線分の中点を各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCからずれた位置に配置してもよい。なお、図7に示すように、ドリル基準線分の中点を各中心線分LA〜LCの中点CA〜CCからずれた位置に配置した場合には、各中心線分LA〜LCを底辺とする、合同な3個の三角形をを想定したときに、それら三角形の頂点は同一直線上に並ぶこととなる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成11年11月10日(1999.11.10)
【代理人】 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外2名)
【公開番号】 特開2001−132668(P2001−132668A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−320187