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【発明の名称】 スクロール圧縮機
【発明者】 【氏名】関田 真澄

【要約】 【課題】高効率を維持しつつ容量制御を行い、駆動源への負担を低減させることを可能とする。

【解決手段】固定及び旋回スクロール11、12の渦巻状ラップ11a、12aを相互に偏心させ、かつ位相をずらして噛み合わせる。旋回スクロール12を公転旋回運動させ、それぞれの渦巻状ラップ11a、12a間に形成される第1から第3の圧縮室13−1、14−1、13−2、14−2、13−3、14−3を中心へ向かって移動させ、吸入側から取り入れたガスを、中心に形成される高圧室17を介して吐出ポート15から送り出させる。対向する渦巻状ラップ12a、11aに接触するそれぞれの渦巻状ラップ11a、12aの内端において最後に接触する限界点a、bから渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転(2π)分より外側にて、吸入側と連通するバイパス孔21を固定スクロール11の端板11bに形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 端板に渦巻状ラップが立設された固定スクロール及び旋回スクロールを相互に偏心させ、かつ位相をずらして噛み合わせ、前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールを公転旋回運動させることにより、それぞれの渦巻状ラップ間に形成される複数の圧縮室を中心へ向かって移動させ、吸入側から前記圧縮室内に取り入れたガスを、中心に形成される高圧室を介して該高圧室に連通する吐出ポートから送り出すスクロール圧縮機であって、渦巻状ラップの内端において対向する渦巻状ラップに最後に接触する限界点から渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転分より外側に、吸入側と連通するバイパス孔が形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】 前記バイパス孔は、前記固定スクロールを構成する端板に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機、冷凍機等に搭載されるスクロール圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、空気調和機や冷凍機等には、スクロール圧縮機が用いられている。このスクロール圧縮機は、高効率かつ低騒音で稼動できるという特性を有しており、この特性を生かして空気調和機や冷凍機等に広く用いられつつある。このように、空気調和機や冷凍機等に用いられるスクロール圧縮機は、エバポレータで熱を吸収して低温・低圧となった冷媒ガスを吸入・圧縮し、高温・高圧となった冷媒ガスをコンデンサに送り込む役割を担っている。この種のスクロール圧縮機の固定スクロール及び旋回ロールの一例を図3に示すものを例にとって説明する。
【0003】固定スクロール1は、端板1bと、その内面に立設された渦巻状ラップ1aとからなり、旋回スクロール2は、端板2bとその内面に立設された渦巻状ラップ2aとからなる。これら固定スクロール1と旋回スクロール2のそれぞれの渦巻状ラップ1a、2aは、実質的に同じ形状とされている。これら固定スクロール1と旋回スクロール2とは、その渦巻状ラップ1a、2aの先端面1c、2cが、相手側の端板2b、1bの内面2d、1dに密接し、各ラップ1a、2aの側面が複数箇所で線接触することにより渦巻きの中心に対して点対称をなす複数の圧縮室3−1、4−1、3−2、4−2が形成されるようになっている。
【0004】そして、旋回スクロール2を図示しない自転阻止機構によってその自転を阻止しながら図示しない旋回駆動機構を介して駆動することにより公転旋回運動させると、各ラップ1a、2aの外周端から圧縮室3−2、4−2内にガスが取り込まれ、各ラップ1a、2aの線接触部が渦巻きの中心に向かって移動するにしたがってその内部のガスが圧縮され、圧縮されたガスは最内方の高圧室7から端板1bの中央に設けられた吐出ポート5を経て吐出弁6を押し開いて吐出チャンバー8に吐出されるようになっている。また、図3(C)には、渦巻状ラップ1a、2aと吐出ポート5との相対位置関係が示されている。渦巻状ラップ1a、2aは、対向する渦巻状ラップ2a、1aに最後に接触する限界点a、bより外方はインボリュート曲線で構成され、限界点a、b間は円弧状の曲線(必ずしも円関数ではない)によって構成されている。
【0005】旋回スクロール2の公転旋回運動により渦巻状ラップ1a、2aは限界点a、bで互いに離れ始め、この時点で最内方の高圧室7より一つ外方の2つの圧縮室3−1、4−1が最内方の高圧室7を介して突出ポート5に連通し始めるようになっている。ところで、小型自動車等のエアコンにおいては、スクロール圧縮機を駆動させる際の負担が大きいため、このような場合、必要に応じて圧縮比を小さくして駆動源の負担を小さくする容量制御機能を有するスクロール圧縮機が用いられている。この種の容量制御機能を有するスクロール圧縮機としては、圧縮室3−1、3−2、4−1、4−2と連通するバイパス孔を固定スクロール1の端板1bに形成し、このバイパス孔から圧縮室内のガスを吸入側へ逃がすものが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の容量制御機能を有するスクロール圧縮機にあっては、旋回スクロール2の公転旋回運動により渦巻状ラップ1a、2aが限界点a、bで互いに離れ始めて高圧室7とこの高圧室7の一つ外側の圧縮室3−1、4−1とが連通した、いわゆる三室合流時に、高圧室7にて高圧に圧縮されたガスがバイパス孔から吸入側へ流出してしまい、効率が低下してしまうという問題があった。
【0007】この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高効率を維持しつつ容量制御を行い、駆動源への負担を低減させることが可能なスクロール圧縮機を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載のスクロール圧縮機は、端板に渦巻状ラップが立設された固定スクロール及び旋回スクロールを相互に偏心させ、かつ位相をずらして噛み合わせ、前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールを公転旋回運動させることにより、それぞれの渦巻状ラップ間に形成される複数の圧縮室を中心へ向かって移動させ、吸入側から前記圧縮室内に取り入れたガスを、中心に形成される高圧室を介して該高圧室に連通する吐出ポートから送り出すスクロール圧縮機であって、渦巻状ラップの内端において対向する渦巻状ラップに最後に接触する限界点から渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転分より外側に、吸入側と連通するバイパス孔が形成されていることを特徴としている。
【0009】これにより、渦巻の中心へ向かって移動される圧縮室がバイパス孔にさしかかると、圧縮室内のガスがバイパス孔から吸入側へ逃がされて容量が制御されるので、駆動源への負担を低減させて円滑な駆動を行うことができる。しかも、バイパス孔は、渦巻状ラップの内端において最後に接触する限界点から渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転分より外側に形成されているので、対向する渦巻状ラップから限界点が離間して、高圧室と高圧室から渦巻に沿って中心から離間する側に隣接する圧縮室とが合流する三室合流により、高圧室と圧縮室とが連通したとしても、高圧室の高圧のガスがバイパス孔から吸入側へ逆流して効率が低下してしまうようなことがなく、確実に高圧のガスを、吐出ポートから送り出すことができる。つまり、高効率を維持しつつ容量制御を行って駆動源への負担を低減させることが可能なスクロール圧縮機とすることができる。
【0010】請求項2記載のスクロール圧縮機は、請求項1記載のスクロール圧縮機において、前記バイパス孔が、前記固定スクロールを構成する端板に形成されていることを特徴としている。
【0011】つまり、固定スクロールを構成する端板に吸入側と連通するバイパス孔を形成した簡略的な構造にて、高効率を維持しつつ容量制御を可能とすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明のスクロール圧縮機の実施の形態例を図によって説明する。図1において、符号11は、固定スクロール、符号12は、旋回スクロールであり、これら固定スクロール11及び旋回スクロール12は、それぞれ約3周半の渦巻状ラップ11a、12aを有している。
【0013】そして、この渦巻状ラップ11a、12aによって、内周側から順に、吐出ポート15と連通する高圧室17、第1の圧縮室13−1、14−1、第2の圧縮室13−2、14−2及び第3の圧縮室13−3、14−3が形成されるようになっている。固定スクロール11を構成する端板11bには、吸入側に連通する一対一組のバイパス孔21が形成されている。
【0014】これらバイパス孔21は、渦巻状ラップ11a、12aの内端において、それぞれ対向側の渦巻状ラップ12a、11aの内周面に最後に接触する限界点a、bから渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転(2π)分よりも外側に形成されている。すなわち、バイパス孔21は、限界点a、bが、対向側の渦巻状ラップ12a、11aの内周面から離間し、高圧室17と第1の圧縮室13−1、14−1とが合流する三室合流時点にて、限界点a、bとともに第1の圧縮室13−1、14−1を形成していた渦巻状ラップ11a、12a同士の接触点A、Bよりも渦巻に沿って中心から離れる側に形成された第2の圧縮室13−2、14−2と連通する位置に形成されている。
【0015】次に、上記の固定スクロール11及び旋回スクロール12を備えたスクロール圧縮機の動作を図2を参照して説明する。
(1)図2(a)に示すように、それぞれの渦巻状ラップ11a、12aの限界点a、bがそれぞれ対向する渦巻状ラップ12a、11aに接触した時点からさらに旋回スクロール12の公転が進行すると、高圧室17と第1の圧縮室13−1、14−1とが合流して三室合流となる。
【0016】(2)図2(b)に示すように、この時点より第2の圧縮室13−2、14−2が第1の圧縮室13−1、14−1となり、中心へ向かうにしたがって圧縮される。このとき、新たに形成された第1の圧縮室13−1、14−1内のガスが、これら第1の圧縮室13−1、14−1と連通するバイパス孔21から吸入側へ逃がされて、駆動源の負担が軽減される。
【0017】(3)図2(c、d)に示すように、旋回スクロール12の公転がさらに進行すると、吐出ポート15と連通する高圧室17が徐々に加圧される。また、このとき、第1の圧縮室13−1、14−1は、依然としてバイパス孔21と連通した状態であるので、圧縮に伴いバイパス孔21から吸入側へガスが逃がされる。
【0018】(4)図2(a)に示すように、旋回スクロール12の公転がさらに進行すると、それぞれの渦巻状ラップ11a、12aの限界点a、bがそれぞれ対向する渦巻状ラップ12a、11aに接触し、この時点からさらに旋回スクロール12の公転が進行すると、高圧室17と第1の圧縮室13−1、14−1とが合流して三室合流となる。
【0019】このとき、バイパス孔21は、それぞれ対向側の渦巻状ラップ12a、11aの内周面に接触した限界点a、bから渦巻に沿って中心から離れる方向に一回転(2π)分よりも外側に形成されているので、バイパス孔21は、限界点a、bが対向側の渦巻状ラップ12a、11aの内周面から離間し、高圧室17と第1の圧縮室13−1、14−1とが合流する三室合流時点にて、限界点a、bとともに第1の圧縮室13−1、14−1を形成する渦巻状ラップ11a、12a同士の接触点A、Bよりも渦巻に沿って外側である第2の圧縮室13−2、14−2に配置される。
【0020】これにより、三室合流により、高圧室17と第1の圧縮室13−1、14−1とが連通したとしても、高圧室17の高圧のガスは、バイパス孔21から吸入側へ逆流することなく、吐出ポート15から吐出弁を介して送り出される。
【0021】このように、上記のスクロール圧縮機によれば、渦巻の中心へ向かって移動される第1の圧縮室13−1、14−1がバイパス孔21にさしかかると、第1の圧縮室13−1、14−1内のガスがバイパス孔21から吸入側へ逃がされて容量が制御されるので、駆動源への負担を低減させて円滑な駆動を行うことができる。
【0022】しかも、バイパス孔21は、渦巻状ラップ11a、12aの内端において最後に接触する限界点a、bから渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転(2π)分より外側に形成されているので、対向する渦巻状ラップ12a、11aから限界点a、bが離間して、高圧室17と高圧室17から渦巻に沿って中心から離間する側に隣接する第1の圧縮室13−1、14−1とが合流する三室合流により、高圧室17と第1の圧縮室13−1、14−1とが連通したとしても、高圧室17の高圧のガスがバイパス孔21から吸入側へ逆流して効率が低下してしまうようなことがなく、確実に高圧のガスを、吐出ポート15を介して吐出弁から送り出すことができる。
【0023】つまり、高効率を維持しつつ容量制御を行って駆動源への負担を低減させることが可能なスクロール圧縮機とすることができる。また、固定スクロール11を構成する端板11bに吸入側と連通するバイパス孔21を形成した簡略的な構造にて、高効率を維持しつつ容量制御を可能とすることができる。
【0024】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明のスクロール圧縮機によれば、下記の効果を得ることができる。請求項1記載のスクロール圧縮機によれば、渦巻の中心へ向かって移動される圧縮室がバイパス孔にさしかかると、圧縮室内のガスがバイパス孔から吸入側へ逃がされて容量が制御されるので、駆動源への負担を低減させて円滑な駆動を行うことができる。しかも、バイパス孔は、渦巻状ラップの内端において最後に接触する限界点から渦巻に沿って中心から離間する方向へ一回転分より外側に形成されているので、対向する渦巻状ラップから限界点が離間して、高圧室と高圧室から渦巻に沿って中心から離間する側に隣接する圧縮室とが合流する三室合流により、高圧室と圧縮室とが連通したとしても、高圧室の高圧のガスがバイパス孔から吸入側へ逆流して効率が低下してしまうようなことがなく、確実に高圧のガスを、吐出ポートから送り出すことができる。つまり、高効率を維持しつつ容量制御を行って駆動源への負担を低減させることが可能なスクロール圧縮機とすることができる。
【0025】請求項2記載のスクロール圧縮機によれば、固定スクロールを構成する端板に吸入側と連通するバイパス孔を形成した簡略的な構造にて、高効率を維持しつつ容量制御を可能とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成11年11月4日(1999.11.4)
【代理人】 【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴 (外3名)
【公開番号】 特開2001−132667(P2001−132667A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−314265