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【発明の名称】 スクロール圧縮機
【発明者】 【氏名】鈴木 昭

【氏名】町田 茂

【氏名】川野 勇

【要約】 【課題】ダブルスクロール圧縮機において、冷却を効率化して大型のスクロ−ル圧縮機を実現する。

【解決手段】ダブルスクロール圧縮機は、1個の鏡板の軸方向両面にそれぞれ螺旋状のラップを有する旋回スクロール1と、この旋回スクロ−ルの左右両側にそれぞれ配置された2個の固定スクロール2、3とを有している。各固定スクロールは、1個の鏡板と旋回スクロ−ルラップと噛み合う1個の螺旋状ラップを有している。固定スクロ−ルには旋回スクロ−ルを旋回運動させるクランクシャフトと補助クランクシャフトとが軸受8〜13により回転支持されている。クランクシャフトと補助クランクシャフトとはタイミングベルト7により同期回転される。さらに、クランクシャフトと補助クランクシャフトは、固定スクロールに形成された吐出口22より外周側にある。固定スクロ−ルの外表面には複数の冷却フィン30,31がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】1個の鏡板と該鏡板の軸方向両面にそれぞれ設けられた螺旋状のラップとを有する旋回スクロールと、該旋回スクロ−ルの左右両側にそれぞれ配置され、それぞれ1個の鏡板と前記旋回スクロ−ルラップと噛み合う1個の螺旋状ラップを有する2個の固定スクロ−ルと、前記左右の固定スクロ−ルにそれぞれ軸受を介して回転支持され前記旋回スクロ−ルを旋回運動させるクランクシャフト及び補助クランクシャフトと、前記クランクシャフトと補助クランクシャフトとを同期させて回転させるためのタイミングベルトと、前記左右の固定スクロ−ル外表面に形成された複数の冷却フィンと、前記冷却フィンに沿って冷却媒体を強制供給する冷却ファンとを備え、前記クランクシャフトと補助クランクシャフトとは一方の固定スクロールに形成された吐出口よりも外周側に配置されたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気圧縮機や冷凍・空調用圧縮機として使用されるスクロール圧縮機に関し、特に大形のスクロール圧縮機を実現するのに好適な両側にラップを有する構造のスクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】実開昭63−136281に開示された空冷オイルレススクロール圧縮機のものは、圧縮室が旋回スクロールの一方側にのみ形成されたシングルタイプのものであり、大容量を得るためにスクロールの径を大きくするとスラスト荷重が大きくなり製品化が難しくなる問題があり、このため5.5kW以下のものしか製品化されていなかった。
【0003】これを解決するため、スクロールのラップ(圧縮室)を旋回スクロールの鏡板両側に設けたダブルスクロ−ル圧縮機も知られており、これによって5.5kW以上の容量を実現したものもある。この種公知例としては、例えば特開昭57−76202や実開平5−87285に記載のものなどがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】無給油式のスクロール圧縮機(空気圧縮機)ではガス温度が200℃位まで上昇し高温となるためこの冷却を効率よく行う必要があった。すなわち、無給油式スクロール圧縮機はスクロールの圧縮室に油のような冷却冷媒を入れないため高温(約200℃)となる。このため旋回スクロール及び固定スクロールが熱変形し、これによりギャップの増加やスクロールどうしの接触により回転不能になるという問題があった。
【0005】本発明の目的は、無給油式のダブルスクロール圧縮機における圧縮機を効率良く冷却して性能向上を図ると共に、熱変形によるスクロールの接触を防止できるスクロール圧縮機を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、1個の鏡板と該鏡板の軸方向両面にそれぞれ設けられた螺旋状のラップとを有する旋回スクロールと、該旋回スクロ−ルの左右両側にそれぞれ配置され、それぞれ1個の鏡板と旋回スクロ−ルラップと噛み合う1個の螺旋状ラップを有する2個の固定スクロ−ルと、左右の固定スクロ−ルにそれぞれ軸受を介して回転支持され旋回スクロ−ルを旋回運動させるクランクシャフト及び補助クランクシャフトと、クランクシャフトと補助クランクシャフトとを同期させて回転させるためのタイミングベルトと、左右の固定スクロ−ル外表面に形成された複数の冷却フィンと、冷却フィンに沿って冷却媒体を強制供給する冷却ファンとを備え、クランクシャフトと補助クランクシャフトとは一方の固定スクロールに形成された吐出口よりも外周側に配置したものである。
【0007】無給油式のスクリュ−圧縮機では圧縮過程に冷却媒体を入れないため、圧縮室が高温(約200℃)となる。左右の固定スクロールの外表面にクランクシャフトと補助クランクを結ぶ方向の冷却フィンを有し、冷却ファンにより強制冷却するようにした本発明では、冷却媒体を冷却ファンにより均一に流すことができ、冷却媒体はスクロ−ルの長手方向にスム−ズに流れるため、スクロール内部の圧縮過程で発生する熱と冷却媒体とを効率良く熱交換させることができ、吐出ガス温度を充分に低下させることができる。これにより旋回及び固定スクロールの熱変形が防止され、ギャップ拡大により性能低下やスクロールどうしの接触防止を図ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の基本的な構成要素としては、左固定スクロール、右固定スクロール、旋回スクロール及びこれらを構成するクランクシャフト、補助クランクから構成されている。左右の固定スクロールと旋回スクロールの位置合せを行うために基本的には各々にノック穴を設けこれを基準に組立てる。すなわち、左固定スクロールと右固定スクロールのスクロールラップ面の位置決めは固定スクロール位置決め用に設けた外周フランジ部のノック穴により決める。旋回スクロールと右固定スクロールの位置決めは右固定スクロールのクランクシャフト、補助クランクの軸端側にそれぞれ設けたノック穴と、前記両クランクの軸受を押さえるための軸受カバ−(この軸受カバ−も固定スクロ−ルに対しノックピンにより位置決めされて組立てられている)に設けたノック穴とを連通させて行う。すなわち、クランクシャフトと補助クランクの偏心トップ位置と同調する位置にノック穴は設けられており、このノック穴どうしをノックピンにより連結し、クランクシャフト及び補助クランクの偏心量がトップにきたときに旋回スクロールと固定スクロールが最小トルク位置になるようにする。これによって、両固定スクロ−ルと旋回スクロ−ルとのラップ面の位相を合致させることができ、この状態でクランクシャフトと補助クランクとをタイミングベルトで接続することにより、旋回スクロールをその両側の固定スクロールに対し、正しい位相で旋回運動させることができるようにし、その後固定スクロールの外周部の固定ボルトを固定し、軸受カバ−と、クランクシャフト及び補助クランクとを位置決めしていたノックピンを取りはずし、組立を完了する。以上により、スムーズな回転と共に圧縮機としての機能を発揮させうるダブルスクロ−ル圧縮機を実現できる。
【0009】左右両側にそれぞれ同じ形状のラップ形状を有する旋回スクロールをもつダブルスクロール圧縮機は、同位相において左右の圧力が同じ圧縮状態を形成する構成としている。なお、左固定スクロールの外表面に表面積の大きい冷却フィンを取り付け、また同様に右固定スクロールの外表面にも冷却フィンを設け、外部の冷却ファンによる冷却風の強制供給によりスクロール圧縮過程で発生する圧縮機を強制的に冷却し、吐出ガス温度の低下を図るようにもしている。これによって無給油式ダブルスクロール圧縮機の冷却効率を高め、性能向上及びスクロールの熱変形による接触防止を図ることができるから、大容量の無給油式スクロール圧縮機を実現できる。
【0010】なお、旋回スクロールの両側にラップ面を持つダブルスクロールは、両側に圧縮室をもっているため、ラップが旋回スクロールの片側にのみあるシングルスクロール圧縮機に対して、スクロール外径を小さくでき、かつ、左右の圧縮室が同圧力であるためスクロール圧縮機の欠点の1つである大きなスラスト荷重が鏡板面に作用する欠点がない。特に無給油式スクロール圧縮機の場合、旋回と固定スクロールの間は無潤滑で回転するためスラスト荷重を受けないダブルスクロールは無給油式として最適な圧縮機である。
【0011】以下本発明の具体的実施例を図1〜図4を用いて説明する。圧縮される流体の流れは吸入口24、吸入通路23を通過し、旋回スクロール1と、左固定スクロール2及び右固定スクロール3とのラップ面で構成される圧縮室に吸入され、回転が進むごとに所定の圧力まで昇圧され、吐出口22から吐出される。旋回スクロール1を旋回運動させる駆動系は、まずモ−タなどの動力源からVプーリ6に動力が伝達され、クランクシャフト4を回転させる。クランクシャフト4には負荷側軸受8、クランク軸受9、反負荷側軸受10が取り付けられており、これらにより圧縮時のガス荷重などを支持している。
【0012】一方、補助クランク5はタイミングベルト7を介してクランクシャフト4により同期回転させられる。補助クランク5にはクランクシャフト4と同様に負荷側軸受11、クランク軸受12及び反負荷側軸受13が取り付けられ、補助クランク5を支持している。また、クランクシャフト4及び補助クランク5の一方の軸端面に対向するように軸受カバ−14,15が右固定スクロ−ル3に取付けられている。なお、この軸受カバ−14,15は前記反負荷側軸受10,13を右固定スクロ−ル3の軸方向に固定するものである。クランクシャフト4及び補助クランク5にクランク軸受9,12を介し取り付けられている旋回スクロール1はクランクシャフト4及び補助クランク5のクランク半径分のストロークを旋回運動し、左右固定スクロール2,3との容積変化により吸入流体を圧縮する構成となっている。
【0013】本実施例では左右にラップ面をもつダブルスクロール圧縮機の旋回スクロール1と、左固定スクロール2及び右固定スクロール3とのラップ面の位置合せを容易にするため以下の構成をとっている。すなわち、左固定スクロール2と右固定スクロール3の加工は固定スクロールのノックピン20の挿入用の加工穴(ノック穴)20a,20bを基準として左右固定スクロールを加工する。組立時には固定スクロールの前記ノック穴20a,20bにノックピン20を打ち込み、これにより左右固定スクロールを高精度に位置合せできる。
【0014】右固定スクロール3と旋回スクロール1の位置合せは次のようにする。すなわち、右固定スクロール3の反負荷側軸受10,13を取付ける部分の外周部にノック穴3a,3bを加工しておく。ノック穴3aはクランクシャフト4側に、ノック穴3bは補助クランク5側に加工している。これと同調するように軸受カバ14,15にもそれぞれノック穴14a,15aを加工し、右固定スクロール3と軸受カバ−14,15とを、ノック穴3aと14a、及び3bと15aにそれぞれノックピン16,18を挿入し位置決めしてボルトで固定し、軸受カバ−14及び15を右固定スクロール3に高精度に位置決めする。
【0015】クランクシャフト4の軸端には、クランクシャフト4のクランク半径が最大となる位置で同心となるノック穴4aを設ける。同様に補助クランク5の軸端にも、補助クランク5のフランク半径が最大となる位置で同心となるノック穴5aを設ける。すなわち、図1,図3,図4において各クランク4,5のクランク部が最上位となったとき、ノック穴4a,5aも最上位に位置するようにノック穴を形成しておく。また、このシャフト側のノック穴4a,5aが最上位にきたときこれらのノック穴と同調する位置の軸受カバ−14、15にもそれぞれノック穴14b,15bを設けておく。組立て時は、これらノック穴4aと14b、及び5a,15bにそれぞれノックピン17(クランクシャフト側)及び19(補助クランク側)を挿入し、クランクシャフト4及び補助クランク5のクランク部が共に最上位の位置とした状態で、旋回スクロール1と、左固定スクロール2及び右固定スクロール3が最適な組立て状態となるように位置決めされる。この状態でクランクシャフト4と補助クランク5とをタイミングベルト7で正しい位相で接続する。組立て完了後、クランクシャフト側ノックピン17及び補助クランク側ノックピン19を取りはずすことにより圧縮機の運転が可能となる。なお、21は左固定スクロール2と右固定スクロール3の外周フランジ部どうしを締付け固定する取付けボルト、35,36は軸受カバ−14,15を固定スクロ−ル3に締め付け固定するためのボルトである。本実施例によれば、固定スクロールと旋回スクロールとの高精度な位置決めが各々のノックピンにより容易に可能になる。
【0016】また、本実施例では旋回スクロールの両側に圧縮室を持つダブルスクロールにおいて、圧縮過程で発生する熱を、固定スクロール2,3を効率的に冷却してやることにより吐出ガス温度を低下させるようにしている。すなわち、図1に示すように左固定スクロール2の外表面に表面積の大きい左冷却フィン30を取り付け、また同様に右固定スクロール3の外表面にも右冷却フィン31を取付けている。いづれも固定スクロール2,3と一体成形された冷却フィンとなっており、これらの冷却フィン30,31はクランクシャフト4と補助クランク5とを結ぶ方向、すなわち上下方向に形成している。これによって、冷却フィンを圧縮機の長手方向に形成できる。
【0017】図2は右固定スクロール3の右冷却フィン31の形状を示す。右冷却フィン31の外枠部には冷却フィンとで冷却媒体(例えば冷却空気などの冷却風)の通路を形成するためのダクト取付座32を取り付け、これにダクト(図示せず)を取り付ける。このダクトの中に外部ファン(図示せず)から強制的に冷却風を冷却風入口33から冷却風出口34に流し、スクロール圧縮機内部で発生した圧縮機と熱交換させ、吐出ガス温度を低下させるようにしている。本実施例では、冷却フィンを圧縮機の長手方向に形成しているので、冷却風との熱交換が効率良く行われ、ダクトの通路面積も小さくでき、旋回及び固定スクロールの熱変形を防止できる。
【0018】以上説明した実施例によれば、以下の効果が得られる。
(1)両側にラップ面をもつダブルスクロール圧縮機において、固定スクロールと旋回スクロール、クランクシャフトの機械加工を高精度で加工するだけで、容易にラップ面の最適ギャップを確保した高精度の組立てを容易にできる。これにより、スクロール圧縮機の性能を5〜10%向上させることができる。
(2)スクロール圧縮機の組立作業にばらつきがなくなり、圧縮機性能のばらつきをなくすことができる。
(3)スクロール圧縮機の固定スクロ−ルと旋回スクロールとの組立が容易になることにより組立工数も約30%低減できる。
(4)スクロール圧縮機の組立てが作業員の熟練に関係なく可能となり、スクロールのラップ面の接触防止が図られ、信頼性を大幅に向上できる。
(5)固定スクロールの両側に冷却フィンを取り付けることにより無給油式スクロール圧縮機の吐出ガス温度を200℃以下に低下でき、旋回及び固定スクロールの熱変形を防止できる。このため、スクロール間のギャップを小さくとることができ、性能を更に10%程度向上させることができる。
(6)旋回及び固定スクロールの表面温度を低下できるため、スクロール間の接触防止が図られ、信頼性を向上できる。
(7)上記(5)(6)の効果により7.5kW以上の出力の無給油式スクロール圧縮機を実現できる。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、冷却フィンを設けたので、無給油式のダブルスクロール圧縮機における圧縮機を効率良く冷却して性能向上を図ることができると共に、熱変形によるスクロール圧縮機ラップの接触を防止できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成6年3月18日(1994.3.18)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2001−132663(P2001−132663A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願2000−311706(P2000−311706)