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【発明の名称】 ロータリー圧縮機
【発明者】 【氏名】新宅 秀信

【氏名】生駒 光博

【氏名】西脇 文俊

【氏名】長谷川 寛

【要約】 【課題】従来、起動時に、ベーンがローラ外周あるいはローラ溝と衝突することを繰り返すチャタリングが発生していた。

【解決手段】軸受部と偏心部を有するクランク軸2、シリンダ5、ベーン26、およびシリンダ5内で偏心運動するローラ27を有する圧縮機構部と、その圧縮機構部を駆動する駆動部と、圧縮機構部と駆動部を収容する密閉容器とを備え、圧縮機構部に、ローラ27の外側のローラ側連結部24とベーン26の先端部(ベーン側連結部23)とを連結する連結ピン22をさらに設ける。ベーン26とローラ27を連結する連結ピン22を設けることで、上死点から下死点へローラ27が移動する際も追従してベーン26が移動するため、ローラ溝29からベーン26が外れることがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸受部と偏心部を有するクランク軸、シリンダ、ベーン、および前記シリンダ内で偏心運動するローラを有する圧縮機構部と、その圧縮機構部を駆動する駆動部と、前記圧縮機構部と前記駆動部を収容する密閉容器とを備え、前記圧縮機構部は、前記ローラの所定の一部と前記ベーンの所定の一部とを連結する連結手段をさらに有することを特徴とするロータリー圧縮機。
【請求項2】 前記連結手段によって連結される前記ローラの所定の一部は、前記ローラの外側の所定の一部であって、前記連結手段によって連結される前記ベーンの所定の一部は、前記ベーンの先端部であることを特徴とする請求項1記載のロータリー圧縮機。
【請求項3】 前記ローラの外側の所定の一部は、前記ローラの一方または両方の端面側に設けられたローラ側座グリ部と、そのローラ側座グリ部に設けられたローラ側連結穴とを有し、前記ベーンの先端部は、前記ローラの一方または両方の端面に対応する面側に設けられたベーン側座グリ部と、そのベーン側座グリ部に設けられたベーン側連結穴とを有し、前記連結手段は、前記ローラ側連結穴と嵌合する第1嵌合ピンと、前記ベーン側連結穴と嵌合する第2嵌合ピンと、前記第1嵌合ピンおよび前記第2嵌合ピンを支持する支持部とを有することを特徴とする請求項2記載のロータリー圧縮機。
【請求項4】 前記ローラと前記ベーンは、前記シリンダ内部を、所定の流体が供給される吸入室と、前記流体が外部に吐出される側の吐出室とに分割し、前記ローラ側座グリ部および前記ベーン側座グリ部は、前記吸入室側に設けられることを特徴とする請求項3記載のロータリー圧縮機。
【請求項5】 軸受部と偏心部を有するクランク軸、シリンダ、ベーン、ベーン溝、ベーンばね、および前記シリンダ内で偏心運動するローラを有する圧縮機構部と、その圧縮機構部を駆動する駆動部と、前記圧縮機構部と前記駆動部を収容する密閉容器とを備え、前記ローラの外周には、前記ベーン先端が当接収容される凹状の溝部が設けられており、前記ベーンばねのばね荷重、および前記ローラの回転加速度は、少なくとも1回目に前記ローラが上死点から下死点に移動するさい、前記ベーンがチャタリングを発生させないような数値に設定されていることを特徴とするロータリー圧縮機。
【請求項6】 前記ローラが起動し始めたときの前記ローラの回転加速度は実質上100〜400Hz/sであって、前記ローラが上死点に位置するときの前記ベーンばねのばね荷重をFとし、前記ベーンと前記ベーン溝との接触面積をSとした場合、前記Fに対する前記Sの比F/Sは、0.3kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項5記載のロータリー圧縮機。
【請求項7】 前記ベーンばねのばね定数は、前記ローラが下死点に位置するときよりも、前記ローラが上死点に位置するときの方が大きいことを特徴とする請求項5または6記載のロータリー圧縮機。
【請求項8】 前記ローラが上死点に位置するときの前記ベーンばねのばね荷重をFとし、前記ベーンと前記ベーン溝との接触面積をSとした場合、前記Fに対する前記Sの比F/Sは実質上0.08〜0.2kgf/cm2であって、前記駆動部は、前記ローラが起動し始めてから前記クランク軸が所定の回転速度になるまでは、前記ローラの回転加速度の大きさを30Hz/s以下に制御することを特徴とする請求項5記載のロータリー圧縮機。
【請求項9】 塩素を含まない冷媒が流体として用いられることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のロータリー圧縮機。
【請求項10】 二酸化炭素を主成分とする冷媒が流体として用いられることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のロータリー圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば冷凍冷蔵庫や空調機等に用いられるロータリー圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】代表的な回転式流体機械であるロータリー圧縮機はそのコンパクト性や構造が簡単なことから、冷凍冷蔵庫や空調機などに多く使用されている。圧縮機の主要構成部品であるベーンやローラなどを有する圧縮機構部は、例えば、川平著、密閉形冷凍機(平成5年、日本冷凍協会)第14頁、図6.1に記載されている。また、高効率化、高信頼性化のために、ローラ外周にベーン先端を収容する凹状の溝を形成したローラ揺動タイプのものは、例えば、実開昭55−180989、特開平2−23289などに記載されている。
【0003】以下に、図7および図8を用いて、従来の揺動タイプのロータリー圧縮機の動作について説明する。
【0004】図7は従来のローラ揺動タイプのロータリー圧縮機の縦断面図であり、図8(a)はそのA−A部(シリンダ中央部)の横断面図で、ローラが下死点に位置する状態を示したものである。
【0005】密閉容器1内に、偏心部を有するクランク軸2とクランク軸2を支える主軸受3、副軸受4と、シリンダ5と、ベーン6と、前記シリンダ5内で偏心回転するローラ7とからなる圧縮機構部を構成している。
【0006】図8(a)に示すように、先端が円弧状のベーン6は、シリンダ5のベーン溝8内を往復運動し、その先端部はローラ7外周に設けられた凹状のローラ溝9に収容され、ベーンばね10によるばね力およびシリンダ5の内外の圧力差による力によって、ローラ溝9に押し付けられて、ローラ溝9と接触し揺動運動の摺動をしながら、シリンダ5内を吸入室11と圧縮室12に分割している。
【0007】図8(a)の点Oはシリンダ5とクランク軸2の中心で、クランク軸2は中心Oから偏心量eだけ偏心した点Pを中心とするクランクピン13を有し、クランクピン13にはローラ7が嵌合されており、ステータ14およびロータ15からなる電動機によりクランク軸2が矢印Bの方向に回転してローラ7がシリンダ5内を公転することにより、冷媒ガスを吸入管16から吸い込み、吐出口17に圧縮しながら送る。吐出口17にきた冷媒ガスは吐出弁(図示せず)から密閉容器1内を通り吐出管18から冷凍サイクル側に送られる。このように冷媒ガスの圧縮作用を行うものである。
【0008】なお、図8(b)は(a)の下死点からクランク軸2が90°回転した状態をしめしたもので、ローラ7は、ローラ溝9でベーン先端部19により回転を規制されながら、ベーン先端部19の円弧中心を中心に揺動運動しながら、クランク軸2の中心の回りを公転する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構成では、起動時に、比較的大きいチャタリング音が数秒発生し、問題となっていた。このチャタリング音の原因は、ベーン先端部19がローラ溝9の縁またはローラ7の外周面と衝突する際に生じる衝突音である。
【0010】起動時にベーン6の先端部がローラ溝9からはずれ衝突する様子を図9を用いて説明する。
【0011】図9(a)に示す下死点位置から、ローラ溝9にベーン6の先端部が収容されている状態から、クランク軸2の回転に伴いローラ7が上死点位置に向かって回転する区間(図9(b)参照)では、ベーン6はクランク軸2の回転に伴いローラ7により図の上方に押し上げられるので、ベーン6の先端部がローラ溝9から離れることはない。
【0012】しかし、クランク軸2の回転に伴いローラ7が上死点位置を過ぎ下死点に向かう区間では、ローラ7は図の下方に下がるが、ガス圧力による力が作用しない起動時には、ベーン6を押し下げる力は、ベーンばね10による押し付け力のみである。この力がベーン6とベーン溝8との間に働く粘性力とベーン6の慣性力に打勝ちながら、ベーン6を下方に押し下げるが、ばね力が大きくないとその押し下げる速度がローラ7の下がる速度より遅くなり、図9(a)に示すようにベーン6の先端がローラ溝9より離れる。さらにクランク軸2の回転に伴い、ローラ7は矢印Bの方向に回転するためローラ溝9は、ベーン6の先端から遠ざかっていき、下死点から上死点に向かう区間で、ローラ7が上方へ押し上げられ、ベーンばね10により押し下げられてきたベーン6の先端とローラ7の外周面が衝突する。その後、矢印B方向に回転してきたローラ溝9がベーン6の先端と出くわし、ローラ溝9の縁とベーン6の先端部が衝突する。このようにして、衝突しチャタリング音が発生する。
【0013】この衝突が何度か繰り返され、少しずつ冷媒ガスが圧縮されガス圧力があがり、ベーン6をローラ7に押し付けるガス力が働くようになると、ローラ溝9にベーン6の先端部がはまり収容され、衝突しなくなりチャタリング音がしなくなる。
【0014】このようにして、ベーン6の先端部と、ローラ溝9またはローラ7の外周面が衝突し、その際発生する音が、上述のチャタリング音となって発生し、揺動タイプのロータリー圧縮機おいて騒音及び信頼性の観点から問題となっていた。
【0015】本発明は、上述した従来の課題を考慮し、起動時に発生するチャタリングを防止し、振動や騒音が小さいロータリー圧縮機を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】第1の本発明(請求項1に対応)は、軸受部と偏心部を有するクランク軸、シリンダ、ベーン、および前記シリンダ内で偏心運動するローラを有する圧縮機構部と、その圧縮機構部を駆動する駆動部と、前記圧縮機構部と前記駆動部を収容する密閉容器とを備え、前記圧縮機構部が、前記ローラの所定の一部と前記ベーンの所定の一部とを連結する連結手段をさらに有することを特徴とするロータリー圧縮機である。
【0017】第2の本発明(請求項5に対応)は、軸受部と偏心部を有するクランク軸、シリンダ、ベーン、ベーン溝、ベーンばね、および前記シリンダ内で偏心運動するローラを有する圧縮機構部と、その圧縮機構部を駆動する駆動部と、前記圧縮機構部と前記駆動部を収容する密閉容器とを備え、前記ローラの外周には、前記ベーン先端が当接収容される凹状の溝部が設けられており、前記ベーンばねのばね荷重、および前記ローラの回転加速度が、少なくとも1回目に前記ローラが上死点から下死点に移動するさい、前記ベーンがチャタリングを発生させないような数値に設定されていることを特徴とするロータリー圧縮機である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のいくつかの実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】本発明の実施の形態のロータリー圧縮機の構成は、ベーン溝部及びローラ溝部などの一部を除いて図7〜9で説明した従来例と概略同様な構成であり、本発明の実施の形態において、前述の従来例について説明した構成部分と同様な部分については、同一符合を付し、その説明を省略する。
【0020】尚、本実施の形態におけるロータリー圧縮機の説明は、HFC134aやR410A、ハイドロカーボン(HC)等の塩素を含まない冷媒や、二酸化炭素などの冷媒を、冷凍及び空調サイクル装置などに用いた場合のものを主にしているが、従来の冷媒HCFC22などにも同様に適用可能である。
【0021】(実施の形態1)本発明の実施の形態1について、図1、図2を用いて説明する。
【0022】図1は本発明の実施の形態1におけるロータリー圧縮機の主要部の横断面図である。図2は主要部品の斜視図である。
【0023】図1、図2に示すように、本実施の形態では、ベーン26に、座ぐり部23aと連結穴23bを有するベーン側連結部23を、主軸受、副軸受と接する面、すなわち図2のベーン側面26a、26b側で吸入室側の側面26cに寄ったベーン26先端付近に設けている。同様に、ローラ27に、座ぐり部24aと連結穴24bを有するローラ側連結部24を、主軸受、副軸受と接する面、すなわち図2のローラ端面27a、27bの外周面付近でローラ溝29の吸入室側に設けている。両連結部23、24を連結する連結ピン22は、両連結穴23b、24bに各々挿入されるピン部22a、22bと、両ピン部22aおよび22bを支持するピン支持部22cを有している。
【0024】また、図1、2に示すように、座ぐり部23a、24a及び連結ピン逃げ部25は、ローラ27が公転運動運動する際、ピン支持部22cを可動自在にする空間を確保するために設けている。この空間が圧縮室12側にあるとデッドボリュームとなり性能低下に影響するが、図1に示すようにこの空間を吸入室11側に設けることで性能へ影響しないようにしている。当然、座ぐり部23a、24aは、吸入室11と吐出室(圧縮室)12を連通させないために吐出側に出ないよう形成されている。このピン逃げ部25はできるだけ小さくもしくはなくすためや、連結ピン22を小さくするために、ベーン側及びローラ側連結部23、24は、なるだけベーン26先端部付近に設けられている。
【0025】ピン部22a、22bは円形状であり、ベーン側連結穴23bはローラ27が揺動運動するために、長穴形状としている。ローラ側連結穴24bは、ピン部22bより少し大きい円形状として、回転可能にしている。
【0026】この構成によれば、クランク軸2の回転によりローラ27が上死点位置から下死点まで矢印B方向に公転し移動する際も、ベーン26は連結ピン22を介して、ローラ27の移動と共に下死点まで下方に移動する。なお、この際、ローラ27は常にクランク軸2の方向に回転する力が作用しているためベーン26の先端部はローラ溝29に接触する方向の力を受けながらローラ27とともに下死点まで移動する。したがって、ベーン26の先端部がローラ溝29よりはずれることがなく、問題となっていたチャタリング発生を防止することができる。
【0027】なお、図1の例では、従来同様にベーンばね30を用いた構成を示したが、ベーンばね30を用いない構成でも十分効果が得られることは言うまでもなく、さらにはベーンばね30が収容される穴の加工が必要なくるため、シリンダ5の加工が減り生産性を向上できるほか、ベーン溝28のシール長を長くできベーン溝28からの冷媒ガスの漏れも減少でき効率も向上できる。
【0028】また、連結ピン22のピン支持部22cをばねで構成しても同様の効果が得られるとともに、ベーン26側のピン穴(連結穴)23bが円形でもローラ27の揺動運動に追従することができ、加工が容易となる。
【0029】なお、上述した実施の形態1では、ベーン26とローラ27とを連結するために、ベーン側連結穴部23と、ローラ側連結部24とを設けるとしたが、ベーン側連結穴部23およびローラ側連結部24は、必ずしも設ける必要はない。要するに、起動時にベーン26がローラ27から離れないようにするための連結手段によって、ベーン26をローラ27から離さないようにしさえすればよく、そのようにすれば、起動時にチャタリングを発生させることはない。したがって、騒音や振動が小さくなる。また、起動時にチャタリングを発生させないようにするためには、連結手段で、ベーン26のどの部分とローラ27のどの部分とを連結してもよい。
【0030】(実施の形態2)次に、本発明の実施の形態2について、図3〜図4を用いて説明する。尚、本実施の形態のロータリー圧縮機の主要な構成で、従来例と同様なものは、同一の番号を用い説明する。
【0031】本実施の形態の特徴は、一定速で通常運転されるロータリー圧縮機において上死点近傍でのベーンばね荷重を所定の値以上に設定できる特性を有するベーンばね10を用いた点である。
【0032】図3は、本発明の実施も形態2におけるベーンばね10の荷重とばね縮み長さ(以後ばね縮長)の関係を示した特性図である。インバータを用いた可変速機では回転加速度を変えられるが通常一定速のロータリー圧縮機の場合、起動時の回転加速度は約100〜400Hz/sにほぼ含まれる。図4は、起動時のローラ7の回転加速度が実質上100Hz/sであるときの、単位ばね荷重とチャタリング発生率の関係を示した図である。ここで、単位ばね荷重は、上死点位置でのベーン6の先端部を除く側面(図2に示す、26a、26b、26c、26d)に対応する部分であって、シリンダ5と上軸受、下軸受で構成されるベーン溝8との摺動面となる接触面積Sと、上死点位置でのベーンばね10の荷重Fとの比F/Sで示している。
【0033】チャタリング発生を防止するためには、上死点から下死点へローラ7が移動する際、ベーン6がローラ7に追従して下死点に移動しなければならない。そのために、ベーン6がベーン溝8との間に介在するオイルによる粘性力やベーン溝8との摩擦力などに打ち勝つ力をベーンばね10で与える必要がある。チャタリングは、オイル温度が低い時の起動時に発生しやすく、オイル粘度が高いことが要因となっているため、その起動時のベーン6の挙動にはオイル粘性力が支配的に影響している。
【0034】そこで、上死点位置での単位ばね荷重(F/S)とチャタリング発生率の関係をみると図4の傾向を示し、単位ばね荷重が矢印Xで示す約0.3(kgf/cm2)以上でチャタリング発生率が0%となることがわかった。この結果をもとに、ベーンばね10の上死点位置での荷重を上記値となる様に設定することで、チャタリング発生を防止することができる。
【0035】なお、ベーン6の大きさや形状により、その慣性力や摩擦力などの影響も無視できなくなるが、家庭用の冷凍機、空調機用の圧縮機を対象とする従来の一定速のロータリー圧縮機の範囲では、回転加速度が100〜400Hz/sの間にほぼある為、図4の場合より回転加速度が低い範囲では単位ばね荷重が0.3kgf/cm2より低い値でもチャタリングが生じず、ほぼ上記の結果が適用できる。
【0036】図3は、本発明に適用可能なベーンばね10の特性を示したもので、SP−aが従来のベーンバネの特性で、上死点、下死点位置では荷重P2a、P2bを示す。前述のように、チャタリング防止のため、単位ばね荷重F/Sが約0.3(kgf/cm2)以上となるように、上死点位置での荷重をP2bまで増加させたベーンばね特性を、SP−b、SP−cに示す。SP−bはベーンばね特性が線形の場合であり、下死点位置での荷重P1bも従来の荷重P1aより増加するが、その性能への影響は小さい。SP−cは、ベーンバネ特性が非線型(下死点付近より、上死点付近でのばね定数が大きくなる特性)の場合で、下死点での荷重P1cを従来より減少させることが可能であり、ベーン6先端での摺動損失を低減できるものである。このような特性を有するバーンばねには、タケノコばねや、不等ピッチコイルばね、二重コイルばねなどを用いるとよい。
【0037】上述のようなベーンバネ特性を有する構成によれば、実施の形態1のように新たに部品を追加することなく、上死点位置での単位ベーンばね荷重を0.3(kgf/cm2)以上に設定できるため、容易にまた安価にチャタリングを防止することができる。
【0038】(実施の形態3)次に、本発明の実施の形態3について、図5〜図6を用いて説明する。尚、本実施の形態のロータリー圧縮機の主要な構成で、従来例と同様なものは、同一の番号を用い説明する。
【0039】本実施の形態の特徴は、起動時、クランク軸2を所定の回転加速度(角加速度に相当)で起動させる点である。
【0040】図5は、クランク軸2の起動からの経過時間に対する回転速度の変化の様子である加速特性を示したものである。従来のロータリー圧縮機のベーンばねの単位ばね荷重は0.08〜0.2kgf/cm2の範囲にあり、図6は、実施の形態2で説明した単位ばね荷重が実質上0.08kgf/cm2であるときの、起動時のローラ7の回転加速度に対するチャタリング発生率を示したものである。
【0041】チャタリングの発生を防止するためには、上死点から下死点へローラ7が移動する際、ベーン6がローラ7に追従して下死点に移動しなければならない。スペース制約のため実施の形態2で示したように、べーんばね10を設計できない場合には、設計可能なべーんばね10を用いるとともに、ベーン6が上死点から下死点へ移動する速度にあわせてローラ7が移動するように、クランク軸2の回転加速度を設定し回転速度を加速していくことで、ベーン6がローラ溝9から飛び出さないようにできる。
【0042】そこで、その回転加速度を変えてチャタリング発生率をみると、図6の傾向を示し、回転加速度が矢印Yでしめす約30(Hz/s)以下にするとチャタリング発生率が0%となることがわかった。この結果をもとに、従来のベーンばねの単位ばね荷重が0.08より高い場合は、所定の回転速度Nsでの回転加速度を30(Hz/s)以下とすることで、チャタリングを防止することができる。
【0043】なお、ベーン6の大きさや形状により、その慣性力や摩擦力などの影響も無視できなくなるが、家庭用の冷凍機、空調機用の圧縮機を対象とする範囲では、ほぼ上記の結果が適用できる。
【0044】図5で、本実施の形態に用いた加速特性について説明する。従来の加速特性をしめす直線SP−1は、回転加速度α1で経過時間0からT1間で回転速度Nsまで加速している。本実施の形態に用いた加速特性は直線SP2であって、その直線SP2では、設定回転速度Nsまでは、上述の30(Hz/s)となる一定回転加速度α2の直線としている。これによりチャタリングを防止することができる。また、起動時の回転加速度をより低くするため曲線SP4で示すような加速特性にしても同様の効果が得られることは、いうまでもない。
【0045】以上説明したように、あらたな部品を追加することもなく、さらに従来のベーンばねを用いても、安価にまた容易に起動時のチャタリング発生を防止できる。
【0046】上記実施の形態1〜3の構成とすることで、運転条件が10MPa程度の高圧力となる二酸化炭素を冷媒に用いる場合でも、チャタリング発生を防止することができるため、騒音、振動を低減することができ、信頼性をも向上することができる。
【0047】尚、本発明のロータリー圧縮機において取り扱う流体は、上述した第1〜第3の実施の形態においては、HFC134a等の塩素を含まない冷媒や二酸化炭素などの冷媒であるとして説明したが、これに限るものではない。
【0048】また、上記実施の形態1〜3をいずれかを併用した構成にしてもよく、同等以上の効果があることはいうまでもない。
【0049】
【発明の効果】以上説明したところから明らかなように、本発明は、起動時に発生するチャタリングを防止し、振動や騒音が小さいロータリー圧縮機を提供することを目的とするものである。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成11年9月1日(1999.9.1)
【代理人】 【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
【公開番号】 特開2001−73975(P2001−73975A)
【公開日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願番号】 特願平11−247431