| 【発明の名称】 |
ベーンポンプの焼き付き防止構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】伊藤 祐二
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| 【要約】 |
【課題】作動油の温度が上昇しても焼き付きを生じる怖れのないベーンポンプを提供すること。
【解決手段】上記パワーステアリング回路PSの圧力をばね室1Kに導く連通路1Mの途中に油温の上昇によって通過流量が増大しない薄刃オリフィス17を設ける一方、ボディ1とスプール21間の嵌合隙間或いは上記リリーフバルブ22,23を迂回してばね室とタンクポートとの間に設けたチョーク孔21H等の油温の上昇によって通過流量が増大するチョーク型通路を設け、オリフィス17Aとチョーク型通路間のばね室に連通するパワーステアリング回路の圧力を油温の上昇によって低下させること。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンの回転数に応じて吐出量が変化するベーンポンプと、このベーンポンプをパワーステアリング回路に接続する流路の途中に設けた可変絞りによってパワーステアリング回路への供給流量を制御する流量制御弁とを備え、この流量制御弁は、ボディと、前記可変絞りの上流側のポンプポートに接続した圧力室と、タンクに連通するタンクポートと、前記ボディに摺動自在に組み込んだスプールと、このスプールを挟んで圧力室の反対側に設けられたばね室と、このばね室に収容されスプールを左方に付勢するスプリングとから構成され、上記流量制御弁の上流側の圧力を前記スプールの左側の圧力室に、また下流側の圧力を連通路を介してばね室に導き、前記可変絞り前後の差圧が所定圧力以上になったとき、圧力室の圧力とばね室間の差圧によるスプールの右方への推力が前記スプリングのバネ力に打ち勝って前記スプールを移動させ、そのスプールの位置に応じた開度で圧力室を前記タンクポートに開口させる一方、当該スプールのばね室とタンクポートとの間にリリーフバルブを内蔵したベーンポンプにおいて、上記パワーステアリング回路の圧力をばね室に導く連通路の途中に油温の上昇によって通過流量が増大しない薄刃オリフィスを設ける一方、上記ボディとスプール間の嵌合隙間或いは上記リリーフバルブを迂回してばね室とタンクポートとの間に設けたチョーク孔等の油温の上昇によって通過流量が増大するチョーク型通路を設け、オリフィスとチョーク型通路間のばね室に連通するパワーステアリング回路の圧力を油温の上昇によって低下させることを特徴とするベーンポンプの焼き付き防止構造。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、流量制御弁を備えたベーンポンプの改良に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の流量制御弁を備えたベーンポンプとしては、流量制御弁FVがベーンポンプVPに1体に組付けられた図3に示すような構造が知られている。このベーンポンプVPは、ボディ1側のブッシュ3及びカバー15側のブッシュ13によってシャフト9を回転自在に支持している。シャフト9は、ボディ1内に設けたロータ12の駆動軸であり、このロータ12には複数のベーン10が放射状に組み込まれている。 【0003】更に、上記ロータ12の周囲には、図4に示すように楕円形の内壁を有するカムリング11が設けられている。そして、シャフト9が駆動されると、当該シャフト9に連結されたロータ12も回転し、このときベーン10がカムリング11の内壁に沿って出没を繰り返す。つまり、各ベーン10の先端がカムリング11に密接したまま回転するとともに、これら各ベーン10間のそれぞれが、独立した室を構成する。そして、各室が収縮行程に入ったときに吐出口から作動油を吐出する一方、各室が拡大行程に入ったときに作動油を吸入する。 【0004】ロータ12及びカムリング11の側面にはサイドプレート6が設けられている。このサイドプレート6の背面側には高圧室1Bを形成するとともに、この高圧室1Bにポンプ吐出圧が導かれる。そして、この高圧室1B内の作動油の圧力により、サイドプレート6をロータ12側に押しつけ、ローディングバランスを保つとともに当接面からの圧油の漏出を少なくする。ボディ1とサイドプレート6の当接部にはシール7及び8が介装され高圧室1Bからの圧油の流出を防止するとともに、ボディ1の右端部にはオイルシール2が装着されシャフト9をシールしている。 【0005】ベーンポンプVPのシャフト9は図示していないエンジンに連結されており、エンジンを始動するとシャフト9に連結されたロータ12が回転する。従って、エンジン回転数が上昇すればするほどベーンポンプVPの吐出量が多くなる。 【0006】図5(A)に示す作動停止状態の流量制御弁FVは、ベーンポンプVPと共通のボディ1にポンプポートPとタンクポートTを形成するとともに、ボディ1に螺着されたコネクタ27には、オリフィス26Aを設けたスリーブ26が保持されている。また、ボディ1に摺動自在に嵌合されたスプール21の左側には、スリーブ26との当接段部21Aとパワーステアリング装置PSへの出力流量を制御する小径段部21B及び大径段部21Cが突設されている。この小径段部21B及び大径段部21Cを前記スリーブのオリフィス26A内に挿入することで、その挿入部分に可変オリフィスVを形成する。従って、小径段部21B及び大径段部21Cがスリーブ26内を左右に移動することによって可変オリフィスVの開口面積が変化する。 【0007】ボディ1内には、スプール21が摺動自在に嵌合され、このスプール21の右側にはばね室1Kが形成されている。このばね室1K内には、可変オリフィスVの下流側(パワーステアリング装置PS側)の圧力が、コネクタの連通孔27A,溝27B及びボディ1の連通孔1L,1M,1Rを介して導かれるとともに、スプリング25が収容されスプール21を左方に付勢している。また、スプール21の内部には、ボール22およびスプリング23からなるリリーフバルブを内蔵している。 【0008】ベーンポンプVPより供給される圧油は、ポンプポートPを介して圧力室1Jに導かれ、スプール21の大径部左端面21Fの受圧面積に圧力室1Jとばね室1K間の差圧を乗じた推力が、パワーステアリング装置PS側の圧力が導かれたばね室1K内のスプリング25のばね力に打ち勝って、図5(B)に示すようにスプール21を右方に移動させる。この結果、可変オリフィスVが開口するので、可変オリフィスVの開口面積に応じた出力流量がパワーステアリング装置PS側に供給される。 【0009】ここで、可変オリフィスVの前後の差圧は、スプール21の大径部左端面21Fの右方への移動によって連通するタンクポートTの開口面積によって決定される。可変オリフィスVの下流側の圧力、つまりパワーステアリング装置PS側の供給圧力は、通路27A,27B,1L,1M,1Rを通ってばね室1Kに導かれるので、スプール21の両端の差圧は、可変オリフィスVの前後の差圧に等しくなる。 【0010】そして差圧が大きくなると、この差圧にスプール21の大径部左端面21Fの面積を乗じた推力が、スプリング25のバネ力にうち勝って、この推力がスプリング25のバネ力にバランスする位置までスプール21を右方に移動させる。そして、スプール21の大径部左端面21FがタンクポートTに開口する位置まで移動すると、ポンプポートPとタンクポートTが連通するので、ベーンポンプVPの圧油の一部はタンクに還流される。 【0011】上記のように、スプール21の移動量に応じて、可変オリフィスV前後の差圧が変化する。パワーステアリング装置PS側の圧力が低下し、スプールの小径段部21Bがスリーブのオリフィス26Aに係合するまでスプール21が左方に移動すると、可変オリフィスVの開口面積が拡大されて、パワーステアリング装置PS側に供給される圧油の流量が増加する。 【0012】また、パワーステアリング装置PS側の供給圧力が導かれたばね室1K内の圧力は、フィルター24を介してボール22に付加される。そしてこの圧力がスプリング23によって設定されている圧力を越えると、ボール22を押し開き、作動油がタンクポートTへ還流する。このように、スプール21内のリリーフバルブ22,23により、パワーステアリング装置PS側に供給される圧油の最大圧力が制御される。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】上記従来技術においては、ベーンポンプの高圧室1Bの圧力によるサイドプレート6のベーン10側への押し付け力は、圧力によって定まり作動油の温度には関係しないため、パワーステアリング装置PS側の負荷の増大により作動油の温度が上昇すると、サイドプレート6及びカバー15とベーン10との摺動摩擦が増大し、この際の発熱が更に作動油の温度を上昇させる悪循環により、所謂焼き付きを生じる怖れがある。 【0014】本発明は以上の様な実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作動油の温度が上昇しても焼き付きを生じる怖れのないベーンポンプを提供することである。 【0015】 【課題を解決するための手段】この発明は、「エンジンの回転数に応じて吐出量が変化するベーンポンプと、このベーンポンプをパワーステアリング回路に接続する流路の途中に設けた可変絞りによってパワーステアリング回路への供給流量を制御する流量制御弁とを備え、この流量制御弁は、ボディと、前記可変絞りの上流側のポンプポートに接続した圧力室と、タンクに連通するタンクポートと、前記ボディに摺動自在に組み込んだスプールと、このスプールを挟んで圧力室の反対側に設けられたばね室と、このばね室に収容されスプールを左方に付勢するスプリングとから構成され、上記流量制御弁の上流側の圧力を前記スプールの左側の圧力室に、また下流側の圧力を連通路を介してばね室に導き、前記可変絞り前後の差圧が所定圧力以上になったとき、圧力室の圧力とばね室間の差圧によるスプールの右方への推力が前記スプリングのバネ力に打ち勝って前記スプールを移動させ、そのスプールの位置に応じた開度で圧力室を前記タンクポートに開口させる一方、当該スプールのばね室とタンクポートとの間にリリーフバルブを内蔵したベーンポンプ」を前提とするものである。 【0016】上記の課題を解決するために本発明のとった手段は、「上記パワーステアリング回路の圧力をばね室に導く連通路の途中に油温の上昇によって通過流量が増大しない薄刃オリフィスを設ける一方、上記ボディとスプール間の嵌合隙間或いは上記リリーフバルブを迂回してばね室とタンクポートとの間に設けたチョーク孔等の油温の上昇によって通過流量が増大するチョーク型通路を設け、オリフィスとチョーク型通路間のばね室に連通するパワーステアリング回路の圧力を油温の上昇によって低下させること」である。 【0017】 【発明の実施の形態】本発明の流量制御弁FCを車両に搭載する際には、図1の各動作状態図に示す如くほぼ水平にして使用される場合が多い。図1(A)は第1実施形態に係わる流量制御弁FCの停止状態,図1(B)は第2実施形態に係わる流量制御弁FCの操舵状態を示している。 【0018】上記従来技術においては、図3に示すベーンポンプの高圧室1Bの圧力によるサイドプレート6のベーン10側への押し付け力はパワーステアリング装置PS側の圧力によって定まり、作動油の温度が上昇した場合にサイドプレート6及びカバー15とベーン10との間の摺動摩擦が増大し、この際の発熱に起因して所謂焼き付きを生じる。作動油の温度が上昇した場合の上記摺動摩擦の増大は、作動油の温度の上昇に従いサイドプレート6のベーン10側への押し付け力を小さくすれば防止することができる。 【0019】本発明は上記の関係に着目してなされたもので、作動油の温度の上昇に従いサイドプレート6のベーン10側への押し付け力を小さくすることのできる制御弁FVの構造に係わるものである。つぎに、図1(A)示す本発明の第1実施形態について、従来例と異なる部分にのみ異なる符号を付して説明する。 【0020】従来技術との相違点は、パワーステアリング装置PS側の圧力をばね室1Kに導く通路27A,27B,1L,1M,1Nの途中にオリフィス孔17Aを備えた薄刃オリフィス17を介在させる一方、従来と同じスプール21に内蔵されたリリーフバルブ22,23を迂回してばね室1KをタンクポートTに連通する細長いチョーク孔21Hを追加したことである。 【0021】薄刃オリフィス17A前後の差圧(Ps−Pb)と通過流量の最大値Qaとの関係は、薄刃オリフィス17Aの断面積をAa,比例常数をKaとして、 Qa=Ka・Aa(Ps−Pb)1/2 ■また、チョーク孔21H前後の差圧(Pb−Pt)と通過流量Qbとの関係は、チョーク孔21Hの断面積をAb,比例常数をKb,作動油の粘性係数をμとして、 Qb=Kb・Ab(Pb−Pt)/μ ■となる。 【0022】薄刃オリフィス17Aの場合は、■式に示すように温度上昇に従って小さくなる作動油の粘性係数μと無関係であるため、通過流量の最大値Qaは、図2(A)の実線で示すように作動油の温度が上昇しても殆ど変化しない。一方、チョーク孔21Hの場合は、■式に示すように温度上昇に従って小さくなる作動油の粘性係数μを分母に含んでいるため、流出する流量Qbは、図2(A)の点線で示すように作動油の温度上昇に従って増大する。 【0023】すなわち、ばね室1KからタンクポートTに流出する流量Qbは、作動油の温度上昇に従って増大するのに対し、パワーステアリング装置PS側からばね室1Kに供給される流量の最大値Qaは、図2(A)の実線で示すように温度上昇に関わりなくほぼ一定である。 【0024】薄刃オリフィス17Aの断面積Aaとチョーク孔21Hの断面積Abによって設定される変移温度Ts(例えば150℃)を超える領域では、ばね室1Kから流出する流量Qbがパワーステアリング装置PS側から供給される流量の最大値Qaを上回ることになるので、流出する流量Qbと供給される流量の最大値Qaをバランスさせるためにばね室1Kの圧力が低下する。ばね室1Kはパワーステアリング装置PS側に連通し、可変オリフィスVを介してポンプポートに連通しているので、図2(B)に示すようにベーンポンプの圧力も低下する。 【0025】この結果、作動油の圧力により、サイドプレート6をロータ12側に押し付ける力が、変移温度Tsを超える領域では低下するので、焼き付きを未然に防止することができるのである。 【0026】上述した第1実施形態では、説明を容易にするため、スプール21に内蔵されたリリーフバルブ22,23を迂回してばね室1KをタンクポートTに連通する細長いチョーク孔21Hを設けた例を説明したが、ボディ1とスプール21の嵌合部には微小な嵌合隙間が存在するので、図1(B)に示す第2実施形態のように第1実施形態のチョーク孔21Hを省略することもできる。 【0027】ばね室1KとタンクポートT間の差圧(Pb−Pt)と通過流量Qcとの関係は嵌合隙間をhとすれば、比例常数をKc,作動油の粘性係数をμとして、Qb=Kc・h3(Pb−Pt)/μ ■となるので、ばね室1KからタンクポートTに流出する流量は、第1実施形態と同様、図2(A)の点線で示すように作動油の温度上昇に従って増大する。この結果、作動油の圧力によりサイドプレート6をベーン10側に押し付ける力が、変移温度Tsを超える領域では低下するので、第1実施形態と同様、焼き付きを未然に防止することができる。 【0028】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明の第1実施形態によれば、パワーステアリング装置側の圧力をばね室に導く通路の途中に薄刃オリフィスを介在させる一方、スプールに内蔵されたリリーフバルブを迂回してばね室をタンクポートに連通する細長いチョーク孔を設けることにより、ばね室からタンクポートに流出する流量は、作動油の温度上昇に従って増大するのに対し、パワーステアリング装置側からばね室に供給される最大流量は、温度上昇に関わりなくほぼ一定であるので、薄刃オリフィスの断面積とチョーク孔断面積によって設定される変移温度を超える領域ではばね室の圧力が低下する。ばね室はパワーステアリング装置側に連通し、可変オリフィスを介してポンプポートに連通しているので、変移温度を超える領域ではポンプの圧力を低下させることができる。また、第2実施形態によれば、パワーステアリング装置側の圧力をばね室に導く通路の途中に薄刃オリフィスを介在させることにより、ばね室からボディとスプールの嵌合隙間を介してタンクポートに流出する流量は、作動油の温度上昇に従って増大するのに対し、パワーステアリング装置側からばね室に供給される最大流量は、温度上昇に関わりなくほぼ一定であるので、薄刃オリフィスの断面積とボディとスプールの嵌合隙間によって設定される変移温度を超える領域ではばね室の圧力が低下する。ばね室はパワーステアリング装置側に連通し、可変オリフィスを介してポンプポートに連通しているので、変移温度を超える領域ではポンプの圧力を低下させることができる。以上、いずれの実施形態においても、作動油の圧力によりサイドプレートをロータ側に押し付ける力が、変移温度を超える領域では低下するので、焼き付きを未然に防止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000929 【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年8月31日(1999.8.31) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−73963(P2001−73963A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月21日(2001.3.21) |
| 【出願番号】 |
特願平11−244228 |
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