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【発明の名称】 深層水の汲み上げ装置及び汲み上げ方法
【発明者】 【氏名】小川 進

【要約】 【課題】構造が簡単でありメンテナンスをほとんど必要とせず、しかも深い深度での汲み上げを容易に行うことができる深層水の汲み上げ装置及び汲み上げ方法を提供することにある。

【解決手段】海面30よりも低位置に配設された取水口2を有する汲上タンク1と、上端が汲上タンク1の取水口2に連通連結されると共に下端が海中の深層水域31に開口する吸込管3と、位置エネルギーの変換された高圧力により汲上タンク1内に自然流入した深層水を外部に流送する流送手段4と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 海面30よりも低位置に配設された取水口2を有する汲上タンク1と、上端が該汲上タンク1の取水口2に連通連結されると共に下端が海中の深層水域31に開口する吸込管3と、位置エネルギーの変換された高圧力により上記汲上タンク1内に自然流入した深層水を外部に流送する流送手段4と、を備えたことを特徴とする深層水の汲み上げ装置。
【請求項2】 汲上タンク1を海面30に浮上させた請求項1記載の深層水の汲み上げ装置。
【請求項3】 汲上タンク1を沿岸乃至その近傍に設置した請求項1記載の深層水の汲み上げ装置。
【請求項4】 吸込管3の下端にアンカー10を設けた請求項1、2又は3記載の深層水の汲み上げ装置。
【請求項5】 海面30よりも低位置の取水口2を有する汲上タンク1の該取水口2から、吸込管3を介して、深層水を位置エネルギーの変換された高圧力にて上記汲上タンク1内に自然流入させ、かつ、汲上タンク1内に流入した深層水を外部に流送することを特徴とする深層水の汲み上げ方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、深層水の汲み上げ装置及び汲み上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】海の深層水域の深層水を汲み上げる方法としては、海面上にポンプを設置し、ポンプに接続した吸込管を深層域まで延ばして汲み上げる方法があるが、吸込管の内径が小さいため管抵抗(摩擦抵抗)が大きく、ポンプにキャビテーションが発生し、深度の深い汲み上げには使用できなかった。そのため、海面上に一次ポンプ及びエアコンプレッサを設置すると共に、吸込管の吸込口近傍に竜巻ポンプを配設し、一次ポンプからの高圧水を配管を介して竜巻ポンプに圧送し、かつ、エアコンプレッサからの高圧エアを配管を介して吸込管の吸込口及び途中部に圧送して、竜巻ポンプを回転させて深い深度の深層水を汲み上げる方法がとられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高圧水及び高圧エアを吸込管に供給して深層水を汲み上げる方法では、高圧水及び高圧エアの圧送にも深度が大きいほど管抵抗が甚だ大きくなるため、エネルギーロスは多大で非常に大きな動力を要し、また機械構造体が深層水域にあるためメンテナンスに大きな難点があった。
【0004】そこで、本発明は、構造が簡単でありメンテナンスをほとんど必要とせず、しかも深い深度での汲み上げを容易に行うことができる深層水の汲み上げ装置及び汲み上げ方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明に係る深層水の汲み上げ装置は、海面よりも低位置に配設された取水口を有する汲上タンクと、上端が該汲上タンクの取水口に連通連結されると共に下端が海中の深層水域に開口する吸込管と、位置エネルギーの変換された高圧力により上記汲上タンク内に自然流入した深層水を外部に流送する流送手段と、を備えたものである。
【0006】このとき、汲上タンクを海面に浮上させたものとする。あるいは、汲上タンクを沿岸乃至その近傍に設置したものとするも良い。また、吸込管の下端にアンカーを設けるも好ましい。
【0007】また、本発明に係る深層水の汲み上げ方法は、海面よりも低位置の取水口を有する汲上タンクの該取水口から、吸込管を介して、深層水を位置エネルギーの変換された高圧力にて上記汲上タンク内に自然流入させ、かつ、汲上タンク内に流入した深層水を外部に流送するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
【0009】図1と図2は、本発明に係る深層水の汲み上げ装置の実施の一形態を示す。この汲み上げ装置は、海面30よりも低位置に配設された取水口2を有する汲上タンク1と、上端が汲上タンク1の取水口2に連通連結されると共に下端が海中の深層水域31に開口する吸込管3と、位置エネルギーの変換された高圧力により汲上タンク1内に自然流入した深層水を外部に流送する流送手段4と、を備える。
【0010】具体的に説明すると、汲上タンク1は、内部が大気と連通するように、例えば上方開口箱型に形成されると共に、その底壁5に取水口2が形成されている。そして、この汲上タンク1の外側面6…の上端にフロート7…を連結し、フロート7の浮力により汲上タンク1を海面30に浮上させるようにしている。これによって、汲上タンク1の上方開口部8は常に海面30よりも高く保持される。なお、フロート7としては、ブイ、木材、浮力材等や、あるいは台船、船舶等の海上移動手段であっても良く、作業台を兼ねたものとするのが好ましい。
【0011】吸込管3は、その上端の吐出口が汲上タンク1の取水口2に連通連結され、垂直状に海中へ延びて下端の吸込口9が深層水域31に開口する。また、吸込管3の下端にはアンカー10…が設けられ、アンカー10…が海底32に着地することにより吸込管3の吸込口9が所定位置に係留され、ひいては装置全体が海流にて流されることが防止される。なお、海流の激しいところであれば上記アンカー10…に加えて汲上タンクからも別のアンカーを下ろしても良い。
【0012】流送手段4は、汲上タンク1の内底面c上に設置されたポンプ11と、ポンプ11に接続された流送配管12と、を備える。そして、ポンプ11を駆動することにより、汲上タンク1内の深層水を流送配管12を介して(例えば)沿岸乃至その近傍に設置された中継タンク13へ流送する。あるいは、汲上タンク1に横付けした袋体14内に流送配管12から放出した深層水を貯留し、密封した袋体14内の深層水を船舶15にて沿岸まで輸送し、その後はポンプ等により袋体14から中継タンク13へ深層水を移送させるようにしたり、または、船舶15内のタンクに直接深層水を入れ輸送するようにしても良い。なお、中継タンク13に輸送された深層水は、その後目的の送水地点16までは配管流送やトラック輸送等により移送させれば良い。
【0013】次に、深層水の汲み上げにおける汲み上げ装置の作用について説明する。停止時においては、汲上タンク1内は海面30と同じ水位aを保っている。流送手段4のポンプ11を駆動させると汲上タンク1内の水位は低下するが、低下した分だけ海面30との位置差が生じ、位置エネルギーの変換された高圧力によって深層水域31の深層水が吸込管3の吸込口9から吸い込まれてタンク1内に自然流入する。
【0014】このとき、初めはポンプ11による外部への流出速度V2 に比較して吸込管3からの流入速度V1 は、吸込管3を通る深層水の管抵抗(摩擦抵抗)や出入り口の損失水頭等により遅くなり、汲上タンク1内の水位は低下していく。そして、タンク1内の水位が低下するにしたがって海面30との水位差が大きくなり、同時に位置エネルギーの変換された高圧力も増大して吸込管3からの流入速度V1 が大きくなっていく。
【0015】その後、ポンプ11による流出速度V2 と吸込管3からの流入速度V1 が等しくなると、汲上タンク1内の水位の変動はなくなり自然淘汰的に一定の水位bが保持される。このとき、汲上タンク1の内底面cの取水口2から流入する水量を汲上要求量Qよりも大になるようにタンク1の深さ寸法H、及び吸込管3の内径寸法Dを設定すれば、汲上要求量Qは常にタンク1内に供給されてくることとなり、タンク1内の海水(深層水)を汲み上げるだけで良い。なお、タンク1の深さ寸法H、吸込管3の長さ寸法L・内径寸法Dは容易に計算が可能であるため、コスト面・作業性等を考慮して最も効率の良い組合せを設定すれば良い。
【0016】このように、本発明の深層水の汲み上げ方法は、海面30よりも低位置の取水口2を有する汲上タンク1の該取水口2から、吸込管3を介して、深層水を位置エネルギーにて汲上タンク1内に自然流入させ、かつ、汲上タンク1内に流入した深層水を流出手段4にて外部に流送すれば良い。また、ポンプ11による汲み上げを停止しても、タンク1内の水位aは海面30と等しく、それを越えることがないためオーバーフローの心配はない。
【0017】次に、図3と図4は、本発明の汲み上げ装置の他の実施の形態を示し、この汲み上げ装置の場合、汲上タンク1を沿岸乃至その近傍に設置する。つまり、上述した(図1の)中継タンク13が省略される。例えば、沿岸に形成したピットに汲上タンク1を設置し、海面30よりも低位置となるようにタンク1の外側壁17(又は底壁5)に取水口2を設け、吸込管3の上端の吐出口を取水口2に接続し深層水域31まで延設して下端の吸込口9を開口させる。また、吸込管3の下端にはアンカー10…を連結すると共にフロート18を連結し、吸込口9を海底32よりも上方位置に係留する。
【0018】この汲み上げ装置の場合、吸込管3の長さ寸法Lが長大にならないよう沿岸から比較的近距離に存在する深層水域31の深層水を汲み上げるのに使用するのが好ましく、それにより海上から沿岸までの輸送が省略されると共に、装置の海上管理が省略され、コストを大幅に低減することができる。
【0019】なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、例えば、汲上タンク1に上方開口部8を覆う屋根を設けて雨や、高波による海面30付近の海水がタンク1内に混入しないようにするも良い。あるいは、タンク1全体を密封ドーム型とし、海面30よりも低位置に取水口2を設け、海面よりも高位置に大気取入ダクトを設けるようにするも良い。
【0020】
【発明の効果】本発明は上述の如く構成されるので、次に記載する効果を奏する。
【0021】(請求項1によれば)海中にポンプや複雑な配管等の機械構造体が不要であり、動力は汲上タンク1内に設けたポンプ11のみで良いため、構造が非常に簡素でありメンテナンスがほとんど不要である。また、位置エネルギーの変換された高圧力を利用してタンク1内に深層水を自然流入させるため、少ないエネルギーで深い深度の深層水を容易に汲み上げることができる。
【0022】(請求項2によれば)汲上タンク1から目的の深度の深層水域31まで到達する吸込管3の長さ寸法Lを最小限まで短くすることができ、それによって汲み上げ時の管抵抗(摩擦抵抗)が低減し、汲上要求量Qを大きく設定することができる。即ち、より深い深度の深層水が得やすくなる。
【0023】(請求項3によれば)海中から汲上タンク1への深層水の汲み上げと、タンク1から目的の送水地点16への深層水の移送を、同時に行うことができ、移送コストを大幅に低減することができる。また、汲上タンク1側は沿岸乃至その近傍に設置されるため、安全に作業を行うことができると共に、管理や維持が容易であり諸経費が低コストで済む。
【0024】(請求項4によれば)目的の深層水域31に吸込管3の吸込口9を係留することができ、一定の品質の深層水を汲み上げることができる。
【0025】(請求項5によれば)位置エネルギーの変換された高圧力を利用してタンク1内に深層水を自然流入させるため、少ないエネルギーで深い深度の深層水を容易に汲み上げることができる。また、汲み上げ装置を簡単なものとすることができる。
【出願人】 【識別番号】591135819
【氏名又は名称】小川 昌也
【出願日】 平成12年6月12日(2000.6.12)
【代理人】 【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
【公開番号】 特開2001−355575(P2001−355575A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−175682(P2000−175682)