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【発明の名称】 クライオポンプ
【発明者】 【氏名】安光 直樹

【氏名】坪井 時雄

【要約】 【課題】主として、簡単な構成で、シェブロンバッフル220への輻射熱を低減し、設備、維持コストを低減したクライオポンプ10を提供する。

【解決手段】シェブロンバッフル220と活性炭パネル240とこのシェブロンバッフル220と活性炭パネル240を収納するシールド容器230とを具備し真空槽300内に組み込まれるクライオパネル210と、活性炭パネル210を冷却する第1の冷凍機260Aと、シェブロンバッフル220を冷却する第2の冷凍機260Bとを備えたクライオポンプにおいて、シェブロンバッフル220と真空槽300の内壁面300aとの間に、真空槽300の内壁面300aから放射される輻射熱を遮るシールド板20を設け、第2の冷凍機260Bとして小型ヘリウム冷凍機を用いるように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シェブロンバッフルと、活性炭パネルと、前記シェブロンバッフルと活性炭パネルを収納するシールド容器とを具備し真空槽内に組み込まれるクライオパネルと、前記活性炭パネルを冷却する第1の冷凍機と、前記シェブロンバッフルを冷却する第2の冷凍機とを備えたクライオポンプにおいて、前記シェブロンバッフルと前記真空槽の内壁面との間に、真空槽の内壁面から放射される輻射熱を遮るシールド板を設けるようにしたことを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】 前記シェブロンバッフルを冷却する第2の冷凍機として、小型ヘリウム冷凍機を用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】 上記シールド板の形状を断面L字状に形成するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】 上記シールド板の素材にアルミニウムを用い、かつ、アルミニウム素材を銀メッキすることにより、このシールド板を形成するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項5】 上記シールド板を、銅等の熱伝導材を銀メッキして構成した支持材を介して、上記シールド容器で支持するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項6】 複数の偏向電磁石を備え、電子(陽電子を含む)ビームを閉軌道内に所望のエネルギーで蓄積するようにした電子蓄積リングにおいて、真空装置として、請求項1乃至5のいずれかに記載のクライオポンプを備えるようにしたことを特徴とする電子蓄積リング。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、主として電子蓄積リングの真空装置として用いられるクライオポンプの改良、及び、真空装置としてこのクライオポンプを備えた電子蓄積リングに関する。
【0002】
【従来の技術】電子蓄積リングでは、従来より、電子ビームを周回軌道内に蓄積するビームダクト内を高真空に維持するための真空装置として、クライオポンプが用いられている。以下、電子蓄積リングの基本構成について簡単に説明し、クライオポンプの構成及び基本動作について詳細な説明を行う。
【0003】高エネルギーで運動している電子(陽電子を含む。)は、その軌道を強制的に変更されると、接線方向に制動放射の形でシンクロトロン放射光(以下、「SR」という。)を放出するという性質を有している。この性質を利用して、所望の波長及び強度のSRの光源として用いることを目的とした小型電子蓄積リングが実用に供されている。この小型電子蓄積リングの基本原理は、特願平11−227051に比較的詳細に説明されており、本願明細書では、図2を用いてその基本構成を簡単に説明するのに留める。
【0004】図2に小型電子蓄積リングの一例として、レーストラック型の電子蓄積リング100の平面図を示す。このタイプの電子蓄積リング100では、図2に示すように180度偏向型の偏向電磁石110A、110Bを対向配置し、高真空に保たれたビームダクト130内の周回軌道に、入射器140からセプタム電磁石120を介して入射された電子(以下「電子ビーム」ともいう。)を磁場の偏向作用により所望のエネルギーで、水平面内の周回設計軌道内に蓄積する。
【0005】また、電子蓄積リング100の他の主要構成としては、電子ビームを設計軌道内に収束する四重極電磁石150A、150B、蓄積した電子ビームにエネルギーを供給する高周波加速空胴160、電子を入射する際の入射軌道を形成するパータベーター電磁石170、ビームダクト130内の周回設計軌道上に電子ビームが設計通り蓄積されているかどうかをモニタリングするビームポジションモニタ180が挙げられる。
【0006】図2に示す電子蓄積リング100は、主としてSR用光源として開発された典型的な電子加速器である。蓄積する電子ビームの電流が大きく、強磁場で偏向電磁石の曲率半径を小さくして、SRの臨界波長を比較的高エネルギーのX線領域まで短くし、特に、X線リソグラフィー用の小型光源として使用されることを目的としている。
【0007】次に、図3を用い、図2を参照して、電子蓄積リング100の真空装置であるクライオポンプ200について説明する。図3は、電子蓄積リング100に真空装置として用いられる従来のクライオポンプ200の概略構成を示す縦断側面図である。
【0008】図2に示す偏向電磁石110A、110B部では、ビームダクト130は、図3に示すように、偏向される際に放射されるSRを利用するために、SRの放射側にはギャップGが形成されている。従って、ギャップGから真空がブレークするのを防止するために、ビームダクト130自身が真空槽300に収容されている。ビームダクト130内では、電子はほぼ光の速さで周回軌道を周回しているため、イオンとの相互作用等により電子が散失してしまう事態を防止するために、高真空状態にしておく必要がある。この真空槽300を高真空に保つことにより、ビームダクト130内を高真空にすることができる。
【0009】ところで、真空槽300内を高真空に保つための真空装置としてクライオポンプ200が用いられているが、このクライオポンプ200の基本構成について図3を用いて説明する。
【0010】クライオポンプの主要構成は、クライオパネル210と、第1の冷凍機となる小型ヘリウム冷凍機260と、第2の冷凍機となる液体窒素型冷凍機280である。クライオパネル210は、図3に示すように、ガスの吸い込み口となるシェブロンバッフル220と、真空槽300の内壁面300aからの輻射熱を遮るための箱状のシールド容器230と、この容器230内部に断熱材で支持取り付けられている活性炭パネル240を備えた構成で、真空槽300内に組み込まれる。
【0011】従来のクライオポンプ200では、活性炭パネル240は、第1の冷凍機である小型ヘリウム冷凍機260により、冷却配管262を循環するヘリウムガスを冷媒として、絶対温度4〜10Kに冷却されている。また、シェブロンバッフル220は、第2の冷凍機である液体窒素型冷凍機280により、冷却配管282を循環する液体窒素を冷媒として、絶対温度80〜90K程度に冷却されている。
【0012】クライオポンプ200の真空装置としての機能は、水分はシェブロンバッフル220とシールド容器230に吸着させ、それ以外のガスは、シェブロンバッフル220を通過させ、活性炭パネル240に吸着させることにより作用させている。
【0013】活性炭パネル240のガスの吸着効率を維持するためには、活性炭パネル240の温度を低く保つ必要がある。しかし、真空槽300内部には、ギャップGから放出されるSRの反射光が存在し、また、常温の真空槽300の内壁面300aからの輻射熱の問題がある。一方、小型ヘリウム冷凍機260の冷却能力は余り大きくなく、活性炭パネル240をこれらからシールドする必要がある。
【0014】図3に示すように、従来のクライオポンプ200では、箱状のシールド容器230内に活性炭パネル240を断熱材を介して収容し、上方及び側方からの輻射熱や反射SRをシールドし、下方には、シェブロンバッフル220を配して、輻射熱や反射SRを防いでいた。
【0015】従って、シェブロンバッフル220は、アルミニウム素材に黒クロムメッキし、図3に示すように、断面略「く」字状に形成し、ガスを通過させるバッフル板222を多数配置した構成となっている。これにより、シェブロンバッフル220が、下方からのSRの反射光や真空槽300の内壁面300aからの輻射熱を吸収し、活性炭パネル240を常時、極低温レベルに冷却でき、吸着能力を維持させることができる。
【0016】従って、上述したように、シェブロンバッフル220の表面は黒色にされ、SRや輻射熱を吸収するので、シェブロンバッフル220の冷却用の第2の冷凍機には、冷却能力の大きい液体窒素型冷凍機280が用いられている。また、シールド容器230も、特に、極低温まで冷却する必要がないので液体窒素型冷凍機280で冷却されている。
【0017】なお、第1、第2の各冷凍機について図3を用いて、補足説明する。先ず、小型ヘリウム冷凍機260は、図3に示すように、冷凍機本体264でヘリウムガスを冷却して、冷却配管262にこのヘリウムガスを循環させる構成であり、上述したように、活性炭パネル240を冷却する第1の冷凍機として用いられ、冷却能力は小さい。
【0018】一方、液体窒素型冷凍機280は、図2に示す電子蓄積リング100を収容している建屋の屋外に設置される液体窒素タンク284、液体窒素の供給量を調整する調整弁285、冷却配管282に気体窒素が混入して冷却能力が低下するのを防止するための気液分離器286、シェブロンバッフル220を冷却した窒素を加温する加温器288を備えた構成である。この液体窒素型冷凍機280は、上述したように、シールド容器230及びシェブロンバッフル220を冷却する第2の冷凍機として用いられ、冷却能力は大きい。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したように、常温の真空槽の内壁面から放射される輻射熱や、反射されるSRを、従来のクライオポンプでは、活性炭パネルの吸熱を極力防止するために、主としてシェブロンバッフルで吸収しており、シェブロンバッフルを冷却するには、冷却能力が大きい液体窒素型冷凍機を用いざるを得ない。
【0020】しかし、液体窒素型冷凍機には、次のような問題点がある。
(1)先ず、液体窒素型冷凍機は、冷媒である液体窒素の消費量が大きく、例えば、電子蓄積リングに用いているタイプのものでは、年間数百万円の経費がかかり、維持経費が過大である。
(2)次に、上述したように、液体窒素型冷凍機には、液体窒素用タンク、建屋の内外を結ぶ配管、気液分離器等の装置が必要で、設備コストが過大であり、また、それら設置するスペースが必要になる。
(3)また、液体窒素の取り扱いでは、高圧ガス取締法で製造保安責任者が管理することが義務づけられ、管理負担が過大である。
【0021】本願発明は、上記課題(問題点)を解決し、簡単な構成で、シェブロンバッフルへの輻射熱を低減したクライオポンプ、また、シェブロンバッフルの冷却効率を向上させて、設備、維持コストを低減したクライオポンプと、このクライオポンプを備えることにより設備コストを削減した電子蓄積リングを提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本願発明のクライオポンプは、請求項1に記載のものでは、シェブロンバッフルと、活性炭パネルと、前記シェブロンバッフルと活性炭パネルを収納するシールド容器とを具備し真空槽内に組み込まれるクライオパネルと、前記活性炭パネルを冷却する第1の冷凍機と、前記シェブロンバッフルを冷却する第2の冷凍機とを備えたクライオポンプにおいて、前記シェブロンバッフルと前記真空槽の内壁面との間に、真空槽の内壁面から放射される輻射熱を遮るシールド板を設けるように構成した。
【0023】このように構成すると、真空槽の内壁面が放射する輻射熱や同じく内壁面が反射するSRをシールドできるので、シェブロンバッフルの冷却効率が向上し、クライオポンプの維持コストを削減することができる。
【0024】請求項2に記載のクライオポンプでは、前記シェブロンバッフルを冷却する第2の冷凍機として、小型ヘリウム冷凍機を用いるように構成した。
【0025】シェブロンバッフルの冷却能力を低減できる結果、このような構成が可能となり、液体窒素型冷凍機を用いないので済むので、設備コスト、維持コストを削減できると共に、クライオポンプの管理が楽になる。また、シェブロンバッフルの冷却温度を極低温近傍まで低下させることが可能になり、水分等の吸着効率が向上し、クライオポンプの性能が向上する。
【0026】請求項3に記載したクライオポンプでは、上記シールド板の形状を断面L字状に形成するように構成した。
【0027】このように構成すると、真空槽の側面部の内壁面からの輻射熱やSRの反射もシールドできるようになり、シェブロンバッフルの冷却効率が向上し、維持コストの削減に更に貢献する。
【0028】請求項4に記載のクライオポンプでは、上記シールド板の素材にアルミニウムを用い、かつ、アルミニウム素材を銀メッキすることにより、このシールド板を形成するように構成した。
【0029】このように構成すると、シールド板の輻射熱、SRの反射効率が高まり、シェブロンバッフルの冷却効率が一層向上する。
【0030】請求項5に記載のクライオポンプでは、上記シールド板を、銅等の熱伝導材を銀メッキして構成した支持材を介して、上記シールド容器で支持するように構成した。
【0031】このように構成すると、シールド板をシールド容器と共に冷却できるため、シールド板からの輻射熱も殆ど無くなり、シェブロンバッフルの冷却効率が更に向上し、クライオポンプの維持コストを一層削減することができる。
【0032】請求項6に記載の電子蓄積リングでは、複数の偏向電磁石を備え、電子(陽電子を含む)ビームを閉軌道内に所望のエネルギーで蓄積するようにした電子蓄積リングにおいて、真空装置として、請求項1乃至5のいずれかに記載のクライオポンプを備えるように構成した。
【0033】このように構成すると、クライオポンプの構成自体が簡単になり、電子蓄積リングを設置する建屋において、省スペースか可能となり、電子蓄積リングの設備コスト、維持コストを大幅に削減することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】本願発明のクライオポンプの一実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は、本願発明のクライオポンプ10の一実施の形態を説明するための縦断側面図である。なお、図1において、図3と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略している。
【0035】先ず、本実施の形態のクライオポンプ10の基本構成及び特徴について説明する。本実施の形態のクライオポンプ10の主要構成は、図3に示す従来のクライオポンプ200と同様に、シェブロンバッフル220と、真空槽300の内壁300aからの輻射熱を遮るための箱状のシールド容器230と、この容器230内部に断熱材で支持取り付けられている活性炭パネル240を具備したクライオパネル210である。また、活性炭パネル240を冷却する第1の冷凍機には、小型ヘリウム冷凍機260Aを用いている。
【0036】一方、本実施の形態のクライオポンプ10の構成上の特徴は、図1に示すように、シェブロンバッフル220と真空槽300の内壁面300aとの間に、真空槽300の内壁面300aからの輻射熱やSRの反射光をシールドするためのシールド板20を取り付けていることである。また、シェブロンバッフル220を冷却する第2の冷凍機として、小型ヘリウム冷凍機260Bを用いている。
【0037】本実施の形態のクライオポンプ10では、真空槽300の内壁面300aからの輻射熱をシールドするためのシールド板20を取り付けたことにより、これらの輻射熱を遮ることができるために、シェブロンバッフル220の冷却効率が向上し、クライオパネル210全体で吸収する熱量が小さくなるので、冷凍能力が大きい液体窒素型冷凍機を用いず、小型ヘリウム冷凍機260Bでも充分に冷却可能になっている。
【0038】これにより、従来のクライオポンプ200の課題であった、設備コスト、維持コストを削減できると共に、第2の冷凍機260Bの管理が楽になる。また、小型ヘリウム冷凍機260Bで冷却するために、シェブロンバッフル220の冷却温度が低下し、クライオポンプ10の吸着能力が向上し、真空装置としての性能が向上する。
【0039】また、本実施の形態のクライオポンプ10では、図1に示すように、シールド板20の素材にアルミニウムを用い、かつ、このアルミニウム素材に銀メッキすると共に、断面形状をL字状に形成した。シールド板20を断面L字状に形成すると、真空槽300の底部内壁面300aからの輻射熱ばかりではなく、側部内壁面300aからの輻射熱もシールドできる。また、シールド板20をアルミニウム素材に銀メッキすることで、軽量化、熱容量の削減、輻射熱の反射効率が向上し、シェブロンバッフル220の冷却効率が一層改善される。
【0040】更に、本実施の形態のクライオポンプ10では、図1に示すように、シールド板20を、熱伝導材である銅に銀メッキして形成した支持材30を介して、シェブロンバッフル220に支持している。このようにすると、シェブロンバッフル220が冷却されるのに伴い、シールド板20自体も冷却され、シールド板20の温度が上昇し、輻射熱を放射するようになる事態が防止できる。また、支持材30を銀メッキすることで、支持材30の熱吸収も防止できる。従って、シェブロンバッフル220の冷却効率が更に向上し、クライオポンプ10の性能が一層改善される。
【0041】本実施の形態のクライオポンプ10では、シールド板20を取り付けることによるシェブロンバッフル220の冷却効率が向上し、クライオパネル210全体の吸収熱量が減少することについて定性的に説明すると、真空槽300の内壁面300aからクライオパネル210に照射される輻射熱量は不変であるが、反射率の大きいシールド板20で反射される輻射熱の量が増加し、黒色のシェブロンバッフル220に直接入射する輻射熱が減少することにより、全体的に、クライオパネル210が吸収する熱量が減少するということである。
【0042】このように、クライオパネル210における熱吸収がかなり防げることが定性的に予測できるが、本願発明のクライオポンプ10では、具体的な構成について、厳密なシミュレーションを行っている。以下、このシミュレーションによる計算結果について、図1を参照して説明する。
【0043】実際に、クライオポンプ10を用いている真空槽300、クライオパネル210、シェブロンバッフル220等の各パラメータを、以下表1に示す。
表1 パラメータ 記 号 数値 真空槽内壁面表面積 SH ・・・ 2.48 m2 クライオパネル外表面積 SL ・・・ 1.597m2シェブロンバッフル表面積 SLS ・・・ 0.65 m2 真空槽内表面輻射 εH ・・・ 0.1 クライオパネル表面輻射 εL ・・・ 0.018シェブロンバッフル表面輻射 εLS ・・・ 1.0 真空槽内壁面表面温度 TH ・・・ 300 K クライオパネル表面温度 TL ・・・ 70 K【0044】一方、輻射熱により吸収する熱量は、一般に、式(1)で与えられる。
【数1】

【0045】先ず、従来のクライオポンプ200において、シールド板20を取り付けなかった場合におけるシェブロンバッフル220が吸収する輻射熱を算出する。上記パラメータを式(1)に代入することにより、クライオパネル210の全表面に入射する輻射熱の総量Q′Sは、Q′S=107.6Wとなる。
【0046】シェブロンバッフル220の表面は、上述したように、黒クロムメッキされている。従って、シェブロンバッフル220に入射する輻射熱は総てシェブロンバッフル220に吸熱されるとすると、上記表1に示すように輻射εLSを、εLS=1.0と設定して、シェブロンバッフル220が吸収する熱量QSは、面積比から、式(2)より、QS=43.8Wと算出できる。
S=Q′S×(SLS/SL) (2)
【0047】同様に、シェブロンバッフル220以外のクライオパネル210表面が吸収する熱量Q′Lは、シールド容器230の表面は銀メッキされて反射効率が高く、表面の輻射ε′Lを、表1に示すように、ε′L=0.018と設定しているので、式(1)に代入し、Q′L=7.07Wとなる。従って、従来のクライオパネル210全体が、真空槽300の内壁面300a輻射熱より吸収していた総熱量Q′は、Q′=50.87Wとなる。これを上述したように、従来のクライオポンプ200では、第2の冷凍機となる液体窒素型冷凍機280で冷却していた。
【0048】次に、シールド板20を取り付けた場合で、クライオパネル210が吸収する総熱量Qを算出する。先ず、クライオパネル210及びシールド板20が吸収する熱量QLは、式(1)に代入し、QL=13.8Wである。ここで、シールド容器230及びシールド板20は銀メッキしているので、表面の輻射ε′Lを、表1に示すように、ε′L=0.018と設定している。高反射率のシールド板20を取り付けることにより、輻射熱の吸収が大幅に低減していることが示されている。
【0049】一方、シールド板20の開口部を通過してくる輻射熱Q12を考慮する必要がある。シールド板20が断面L字状であることを考慮し、入射係数Fを大きくてもF=0.5と設定して、また、開口部が2箇所あることを考慮すると、Q12=4.9Wと算出できる。但し、算出は次式(3)に従った。
12=5.67×10-8・εH・εL・F・SH(TH4−TL4) (3)
従って、シールド板20を取り付けた場合にクライオパネル210全体及びシールド板20が吸収する総熱量Qは、Q=QL+Q12=18.7Wになる。即ち、従来のクライオパネル210全体が吸収していた総熱量Q′=50.87Wに比較して、1/3程度に抑えられているのが分かる。
【0050】即ち、従来のクライオポンプ200でクライオパネル210が吸収していた熱量に比較して、本実施の形態のクライオパネル210が吸収する熱量は、シールド板20が吸収する熱量を含めても大幅に低減していることが示されている。従って、シェブロンバッフル220、シールド容器230、シールド板20を冷却する第2の冷凍機として小型ヘリウム冷凍機260Bを用いても充分に対応できることが理解される。
【0051】また、上記シミュレーションではSRの反射光の影響を考慮に入れていない。SRもシールド板20によりかなりの量シールドされることを考えると、シェブロンバッフル220の冷却効率が、シールド板20を取り付けることにより、更に向上することが容易に予想される。従って、本実施の形態のクライオポンプ10では、吸収熱量が大幅に減少するので、シールド容器230、シールド板20及びシェブロンバッフル220を冷却する冷凍機の冷却能力が小さくても充分に対応可能であることが理解される。
【0052】ところで、上記シミュレーションでは、本願発明のクライオポンプ10では、クライオパネル210自体の構造は変更していない。従って、活性炭パネル240が吸収する熱量についての考察は行っていない。しかし、シールド板20を取り付けることにより、シェブロンバッフル220に入射する輻射熱が大幅に削減できることから、シェブロンバッフル220を通過して活性炭パネル240に到達する輻射熱も大幅に削減できることが容易に予想できる。従って、活性炭パネル240を冷却する第1の冷凍機である小型ヘリウム冷凍機260Aの負担も軽減され、維持コストを更に削減できる。
【0053】本願発明のクライオポンプは上記実施の形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば、シールド板の素材や形状は上記実施の形態で示したものに限定されるものではない。また、シェブロンバッフルを冷却する冷凍機も、小型ヘリウム冷凍機に限定されるものではないのは勿論のことである。
【0054】最後に、本願発明のクライオポンプを用いた電子蓄積リングについて簡単に言及する。従来のクライオポンプを用いた電子蓄積リングでは、電子蓄積リングを収容する建屋の屋外に液体窒素用タンクを設置し、屋外と屋内を結ぶ冷却配管を取り付け、気液分離器等の装置を設置するスペースを確保しなければならず、建屋の構造も含めて初期投資が過大であった。また、液体窒素型冷凍機も上述したように、維持、管理コストが過大であった。従って、本願発明のクライオポンプを用いるようにすることにより、初期の建設コスト、及び、電子蓄積リングのランニングコストを削減することができる。
【0055】
【発明の効果】本願発明のクライオポンプ又は電子蓄積リングは、上記のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)本願発明のクライオポンプは、請求項1に記載したように、シェブロンバッフルと真空槽の内壁面との間に、真空槽の内壁面から放射される輻射熱を遮るシールド板を設けるようにすると、真空槽の内壁面が放射する輻射熱や同じく内壁面が反射するSRをシールドできるので、シェブロンバッフルの冷却効率が向上し、クライオポンプの維持コストを削減することができる。
【0056】(2)請求項2に記載したように、シェブロンバッフルを冷却する第2の冷凍機として、小型ヘリウム冷凍機を用いるようにすると、液体窒素型冷凍機を用いないので済むので、設備コスト、維持コストを削減できると共に、クライオポンプの管理が楽になる。
(3)また、シェブロンバッフルの冷却温度を極低温近傍まで低下させることが可能になり、水分等の吸着効率が向上し、クライオポンプの性能が向上する。
【0057】(4)請求項3に記載したように、シールド板の形状を断面L字状に形成するようにすると、真空槽の側面部の内壁面からの輻射熱やSRの反射もシールドできるようになり、シェブロンバッフルの冷却効率が向上し、維持コストの削減に更に貢献する。
【0058】(5)請求項4に記載したように、シールド板の素材にアルミニウムを用い、かつ、アルミニウム素材を銀メッキすることにより、このシールド板を形成するようにすると、シールド板の輻射熱、SRの反射効率が高まり、シェブロンバッフルの冷却効率が一層向上する。
【0059】(6)請求項5に記載したように、シールド板を、銅等の熱伝導材を銀メッキして構成した支持材を介して、シールド容器で支持するようにすると、シールド板をシェブロンバッフルと共に冷却できるため、シールド板からの輻射熱も考慮する必要が無くなり、シェブロンバッフルの冷却効率が更に向上し、クライオポンプの維持コストを一層削減することができる。
【0060】(7)本願発明の電子蓄積リングでは、請求項6に記載したように、複数の偏向電磁石を備え、電子(陽電子を含む)ビームを閉軌道内に所望のエネルギーで蓄積するようにした電子蓄積リングにおいて、真空装置として、請求項1乃至5のいずれかに記載のクライオポンプを備えるようにすると、クライオポンプの構成自体が簡単になり、電子蓄積リングを設置する建屋において、省スペースか可能となり、電子蓄積リングの設備コスト、維持コストを大幅に削減することができる。
【出願人】 【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
【出願日】 平成12年3月10日(2000.3.10)
【代理人】 【識別番号】100109575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 陽介 (外1名)
【公開番号】 特開2001−254678(P2001−254678A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−67570(P2000−67570)