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【発明の名称】 圧縮機の片頭ピストン
【発明者】 【氏名】平松 修

【氏名】神崎 繁樹

【氏名】村尾 和重

【氏名】星田 隆宏

【要約】 【課題】クランク室内の潤滑油を片頭ピストンとカムプレートとの係留部へ十分に導くことのできる圧縮機の片頭ピストンを提供する。

【解決手段】片頭ピストン21の尾部21aの外側には窪み部29が形成されると共に、その尾部21aの外面中央には離隔面を構成する平坦状の切欠部30が形成されている。また、前記尾部21aの先端周縁には傾斜面28がほぼ全周に亘って形成されている。従って、圧縮機のシリンダボア12a内での、前記片頭ピストン21の上死点位置から下死点位置への移動により、クランク室15内の潤滑油は前記傾斜面28に沿って前記切欠部30とクランク室15の内周面との間の空隙S1を通して窪み部29へ導かれた後、片頭ピストン21とカムプレート19との係留部に取り込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮機ハウジングの内部のシリンダボア内に収容されるヘッド部と、そのヘッド部から後方に延びる尾部とを備えた圧縮機の片頭ピストンにおいて、前記各ピストンの尾部の先端周縁には、ハウジングの内部に形成されたクランク室の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油を、前記片頭ピストンと当該ピストンを係留するカムプレートとの係留部側へ取り込むための傾斜面を形成した圧縮機の片頭ピストン。
【請求項2】 前記尾部の外面中央には、ハウジング内周面から離隔する離隔面が形成されている請求項1に記載の圧縮機の片頭ピストン。
【請求項3】 前記尾部の外側には、前記離隔面とハウジング内周面との間の空隙を通して導かれた潤滑油を前記係留部側へ導くための窪み部が前記離隔面と連通するように形成されている請求項1または2に記載の圧縮機の片頭ピストン。
【請求項4】 前記傾斜面は、前記尾部の先端周縁において、前記離隔面の形成領域を含んだほぼ全周に亘って形成されている請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の圧縮機の片頭ピストン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば車両空調装置に使用される圧縮機の片頭ピストンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、可変容量圧縮機においては、ハウジングの内部にクランク室が形成されるとともに、駆動シャフトが回転可能に支持されている。ハウジングの一部を構成するシリンダブロックには複数のシリンダボアが形成され、各シリンダボア内には片頭ピストンが往復動可能に収容されている。クランク室内において駆動シャフトにはカムプレートが一体回転可能かつ揺動可能に装着され、そのカムプレートの周縁が各ピストンの尾部に係留されている。そして、容量制御弁等により、クランク室内の圧力とシリンダボア内の圧力とのピストンを介した差圧を変更し、その差圧に応じてカムプレートの傾角を変更して、吐出容量を制御するように構成されている。
【0003】この種の可変容量圧縮機においては、クランク室が冷媒ガスの吸入通路を構成しておらず、外部冷媒回路からの冷媒ガスがクランク室を通ることなく、吸入室へ導入されるようになっている。このため、ピストンと斜板等のカムプレートとの係留部に対する潤滑は、ブローバイガスとともにクランク室に供給される潤滑油に大きく依存している。
【0004】ところが、このブローバイガスの量、すなわち、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に供給される潤滑油の量は、片頭ピストンとシリンダボアとの間のクリアランスの大きさに左右される。従って、この係留部に対して十分な量の潤滑油を供給するためには、クリアランスを大きく取る必要がある。しかし、片頭ピストンとシリンダボアとの間のクリアランスを大きく取ることは、圧縮機の基本的性能である圧縮効率の低下につながる。
【0005】このような問題に対処するため、例えば片頭ピストンの外周面に円環状の油掻き溝を形成し、片頭ピストンの往復運動に際して、この油掻き溝によりシリンダボアの内周面に付着している潤滑油を掻き集めて、クランク室内へ導くように構成した圧縮機も従来から提案されている。この構成によれば、片頭ピストンとシリンダボアとの間のクリアランスを大きくすることなく、つまり、圧縮効率の低下を招くことなく、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に潤滑油を供給することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この従来の可変容量圧縮機において、前記片頭ピストンは、その尾部の外面全体がクランク室の内周面に当接して往復動される。このため、クランク室の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油が、片頭ピストンの尾部先端面により押し戻されて、飛び散るおそれがある。そして、この潤滑油を、圧縮機内でもっとも潤滑を必要とする片頭ピストンとカムプレートとの係留部に導きにくいという問題があった。
【0007】この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、クランク室内の潤滑油を、片頭ピストンとカムプレートとの係留部へ十分に取り込むことができる圧縮機の片頭ピストンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、圧縮機ハウジングの内部のシリンダボア内に収容されるヘッド部と、そのヘッド部から後方に延びる尾部とを備えた圧縮機の片頭ピストンにおいて、前記各ピストンの尾部の先端周縁には、ハウジングの内部に形成されたクランク室の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油を、前記片頭ピストンと当該ピストンを係留するカムプレートとの係留部側へ取り込むための傾斜面を形成したものである。
【0009】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧縮機の片頭ピストンにおいて、前記尾部の外面中央には、ハウジング内周面から離隔する離隔面が形成されているものである。
【0010】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の圧縮機の片頭ピストンにおいて、前記尾部の外側には、前記離隔面とハウジング内周面との間の空隙を通して導かれた潤滑油を前記係留部側へ導くための窪み部が前記離隔面と連通するように形成されているものである。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の圧縮機の片頭ピストンにおいて、前記傾斜面は、前記尾部の先端周縁において、前記離隔面の形成領域を含んだほぼ全周に亘って形成されているものである。
【0012】さて、請求項1及びに記載の発明においては、駆動シャフトが回転されると、カムプレートを介して片頭ピストンがシリンダボア内で往復動され、カムプレートの傾角に応じた吐出容量で冷媒ガスの圧縮が行われる。また、この片頭ピストンの圧縮運転時には、潤滑油が片頭ピストンとシリンダボアとの間の隙間を介してブローバイされる冷媒ガスに含有されて、クランク室内に導入される。そして、このクランク室内に導入された潤滑油は、その内周面に付着されたり、クランク室の下部に貯留されたりするが、このクランク室の内周面に付着されたり、クランク室の下部に貯留されたりしている潤滑油は、前記片頭ピストンの往復動時に、前記傾斜面に沿って、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に導かれる。
【0013】請求項2に記載の発明においては、前記尾部の外面中央の離隔面と、クランク室の内周面をなすハウジングの内周面との間に、潤滑油の通過通路が確保される。このため、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に対して、潤滑油をより確実に導くことができる。
【0014】請求項3に記載の発明においては、前記クランク室の内周面に付着されたり、クランク室の下部に貯留されたりしている潤滑油が、前記離隔面とハウジング内周面との間を通して窪み部に導かれた後、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に導入される。
【0015】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下に、この発明の第1の実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。
【0016】まず、第1の実施形態の片頭ピストンを採用した可変容量圧縮機について、説明する。なお、図1において、左側を圧縮機の前部、右側を圧縮機の後部とする。
【0017】図1に示すように、フロントハウジング11は、シリンダブロック12の前部に接合固定されている。リヤハウジング13は、バルブプレート14を介してシリンダブロック12の後部に接合固定されている。そして、フロントハウジング11、シリンダブロック12及びリヤハウジング13により、圧縮機全体のハウジングが構成されている。
【0018】前記リヤハウジング13内には吸入室13a及び吐出室13bが区画形成されている。バルブプレート14には吸入弁14a及び吐出弁14bが設けられている。前記フロントハウジング11とシリンダブロック12とにより形成された閉空間はクランク室15をなしている。そのクランク室15内を貫通するように、フロントハウジング11及びシリンダブロック12には、駆動シャフト16が一対のベアリング17を介して回転可能に架設支持されている。
【0019】ラグプレート18は前記駆動シャフト16に止着されている。また、カムプレートをなす斜板19は、クランク室15内において駆動シャフト16にその軸線L1方向へスライド移動可能かつ傾動可能に支持されている。そして、この斜板19はヒンジ機構20を介してラグプレート18に連結され、そのヒンジ機構20により軸線L1方向へのスライド移動及び傾動が案内されるとともに、駆動シャフト16と一体回転される。
【0020】複数のシリンダボア12aは前記シリンダブロック12に形成されている。片頭ピストン21は、各シリンダボア12a内に往復動可能に収容されている。片頭ピストン21は中空状のヘッド部21cと、そのヘッド部21cの後端背部から後方に突出する尾部21aとよりなる。尾部21aの腹側には凹部21bが形成され、その凹部21bの前後に対向する一対の球状をなす受け面21dが形成されている。
【0021】そして、前記斜板19は、片頭ピストン21の尾部21aの凹部21b内に進入した状態で、受け面21dに支持された前後一対のシュー22を介して片頭ピストン21に係留されている。従って、斜板19の回転運動がシュー22を介して片頭ピストン21の往復直線運動に変換され、その片頭ピストン21がシリンダボア12a内を前後動される。これにより、吸入室13aから吸入弁14aを介してシリンダボア12a内へ吸入された冷媒ガスが圧縮されつつ、吐出弁14bを介して吐出室13bへ吐出される。
【0022】圧力供給通路23は、吐出室13bとクランク室15とを接続するように形成されている。電磁弁よりなる容量制御弁24は圧力供給通路23上に介在されている。この容量制御弁24のソレノイド24aが励磁されることにより、スプール24bがポート24cを閉鎖する。また、ソレノイド24aが消磁されることにより、スプール24bがポート24cを開放する。
【0023】そして、前記片頭ピストン21の前後に作用されるクランク室15内の圧力と、シリンダボア12a内の圧力との差圧を調整して、斜板19の傾斜角を制御し、片頭ピストン21のストロークを変更することにより、吐出容量が調整されるようになっている。このクランク室15内の圧力は、容量制御弁24の励磁・消磁による圧力供給通路23の閉・開により制御される。
【0024】つまり、圧力供給通路23が閉鎖された状態においては、駆動シャフト16及びシリンダブロック12の中心に形成された放圧通路16aと、バルブプレート14の中心に形成された放圧孔12bとを介して、クランク室15内の圧力が吸入室13aに放圧される。そして、クランク室15の圧力が、吸入室13aの低圧力に近づいていく。よって、図1に示すように、斜板19の傾角が最大傾角になって、吐出容量は大きくなる。また、圧力供給通路23が開放された状態においては、吐出室13b内の高圧力がクランク室15に導入され、そのクランク室15内の圧力上昇により、斜板19の傾角が最小傾角に移行される。従って、吐出容量は小さくなる。
【0025】なお、前記斜板19の最大傾角は、その斜板19に設けられたストッパ19aと、ラグプレート18との当接によって規定される。また、斜板19の最小傾角は、駆動シャフト16に装着されたリング25と、斜板19との当接によって規定される。
【0026】さて、図1〜図4に示すように、油掻き溝26は片頭ピストン21のヘッド部21cの先端部の外周面において、その周方向へ円環状に形成されている。図3に示すように、この油掻き溝26は、片頭ピストン21が下死点位置に至った場合においても、シリンダボア12a内から露出されない位置に形成されている。なお、図1においては、斜板19が最大傾角の状態にある。
【0027】また、図1〜図4に示すように、縦溝27は、片頭ピストン21のヘッド部21cの外周面において前記油掻き溝26の直近の前部側から、片頭ピストン21の中心軸線L2方向に延びるように形成されている。さらに、この縦溝27は、片頭ピストン21の中心軸線L2に対して、駆動シャフト16の回転中心軸線L1側及び回転方向R1側ではない四半周面における上位部分21−1(図4における上方部分)を除いた周面部分21−2(図4において矢印で示す部分)に設けられている。そして、図1に示すように、この縦溝27は片頭ピストン21が上死点位置付近にある状態では、シリンダボア12a内から露出されない位置及び長さに形成されている。また、この縦溝27と前記油掻き溝26とは接続されていない。
【0028】なお、前記片頭ピストン21の表面の研磨処理は、センタレス研磨にて行われる。このセンタレス研磨においては、チャックを用いず、ピストンワークは受け台上に載置されて研磨輪とともに回転される。このため、片頭ピストン21の周方向(ワークの回転方向)に対して部分的に存在することとなる縦溝27の数が多いと、受け台上に載置されたピストンワークの回転中心が安定せず、精度の良い研磨を行い得ない。よって、片頭ピストン21の精度良い研磨処理を行うためには、縦溝27の数はできるだけ少ないほうが良く、この実施形態においては、潤滑油供給構成にて必要最小限の幅及び深さを有する1本のみが形成されている。
【0029】図1、図2及び図5に示すように、前記片頭ピストン21の尾部21aの端部にはほぼT字状に形成され、その先端周縁には傾斜面28がほぼ全周に亘って形成されている。そして、片頭ピストン21が上死点位置から下死点位置に移動されるとき、クランク室15の内周面に付着している潤滑油を、この傾斜面28に沿って片頭ピストン21と斜板19との係留部側に導くようになっている。
【0030】窪み部29は前記片頭ピストン21の尾部21aの外側に形成されている。離隔面を構成する平坦状の切欠部30は、窪み部29と連通するように尾部21aの外面中央に形成されている。その切欠部30の両側には一対の円弧面状の回り止め部31が形成されている。また、この回り止め部31の曲率半径は、クランク室15の内周面の曲率半径とほぼ同一となるように形成されている。
【0031】そして、片頭ピストン21が往復動される際には、この一対の回り止め部31がクランク室15の内周面に当接することにより、片頭ピストン21が中心軸線L2の周りで回転しないように回り止めされる。また、この片頭ピストン21の往復動時には、クランク室15の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油が、切欠部30とクランク室15の内周面との間の空隙S1を通して窪み部29に導かれた後、片頭ピストン21と斜板19との係留部に取り込まれる。
【0032】次に、前記のように構成された可変容量圧縮機の動作を説明する。さて、この圧縮機において駆動シャフト16が回転されると、斜板19を介して片頭ピストン21が往復動され、斜板19の傾角に応じた吐出容量で冷媒ガスの圧縮が行われる。この圧縮運転時には、冷媒ガスに含まれる潤滑油が、ブローバイガスとしてシリンダボア12aの内周面に付着される。そして、片頭ピストン21が往復動するとき、特に、上死点位置から下死点側に向けて変位する吸入行程において、前記油掻き溝26によりシリンダボア12aの内壁面に付着している潤滑油が掻き取られて、その溝26内に一時的に蓄えられる。
【0033】このとき、前記油掻き溝26と縦溝27とは、図1に示す片頭ピストン21とシリンダボア12aとの間の狭いクリアランスC1を介して連通されている。従って、吸入行程中に油掻き溝26内に蓄えられた潤滑油は、片頭ピストン21が下死点位置から上死点側に向けて変位する圧縮行程中に、圧力差に基づきクリアランスC1を介して徐々に縦溝27へ送られ、その後クランク室15内に流入される。
【0034】この場合、縦溝27内には潤滑油がクリアランスC1により絞られた状態で送り込まれるため、その縦溝27内とクランク室15内との圧力差は小さくなる。ところが、縦溝27の前端部と片頭ピストン21の尾部21aとのシール長が短く設定されている。このため、片頭ピストン21の上死点位置で、縦溝27がシリンダボア12a内から露出されないような設定であっても、縦溝27内の潤滑油はクランク室15に向けて円滑に導入される。
【0035】そして、クランク室15内に導入されてその内周面に付着されたり、クランク室15の下部に貯留されたりしている潤滑油は、片頭ピストン21が上死点位置から下死点位置に移動されるとき、片頭ピストン21の尾部21aの先端周縁に形成された傾斜面28に沿って、片頭ピストン21と斜板19との係留部に導かれる。また、片頭ピストン21の往復動時には、クランク室15の内周面上及び下部の潤滑油が、切欠部30とクランク室15の内周面との間の空隙S1を通して窪み部29に導かれた後、片頭ピストン21と斜板19との係留部に導入される。
【0036】従って、片頭ピストン21が上死点位置から下死点側に変位する吸入行程において、片頭ピストン21の尾部21aの端面により、クランク室15の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油が押し戻されて飛び散ることが抑制される。そして、クランク室15内の潤滑油が、片頭ピストン21と斜板19との係留部に十分に導かれる。
【0037】前記の第1の実施形態によって期待できる効果について、以下に記載する。
(a) この第1の実施形態においては、尾部21a上の一対の回り止め部31間に空隙S1が形成される。このため、この空隙S1を通して、クランク室15の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油が、片頭ピストン21と斜板19との係留部へ十分に導かれる。従って、前記潤滑油が、片頭ピストン21の尾部21aの端面により押し戻されて、飛び散ることが抑制される。そして、圧縮機内でもっとも潤滑を必要とする片頭ピストン21と斜板19との係留部の潤滑を確保することができる。
【0038】(b) この第1の実施形態では、一対の回り止め部31間において、尾部21aの外面中央に平坦状の切欠部30が形成されている。このため、一対の回り止め部31間において、潤滑油の通過通路をなす空隙S1の通過面積を広げることができる。従って、片頭ピストン21と斜板19との係留部に対して、潤滑油を一層効果的に取り込むことができる。
【0039】(c) この第1の実施形態では、片頭ピストン21の尾部21aの先端周縁に傾斜面28が形成されている。そして、クランク室15の内周面に付着している潤滑油を、この傾斜面28に沿って、片頭ピストン21と斜板19との係留部に取り込むようになっている。このため、前記回り止め部31間の空隙S1の構成との相乗効果により、係留部の潤滑効果をより向上させることができる。
【0040】(第2の実施形態)次に、この発明の第2の実施形態を、図6に基づいて説明する。さて、この第2の実施形態では、片頭ピストン21の尾部21aの外面において、複数(この実施形態では、中央及び両側の3カ所)の切欠部30、30aが形成されている。そして、これらの切欠部30、30a内、両側の一対の切欠部30aが、平面状の回り止め部及び離隔面を構成している。
【0041】すなわち、片頭ピストン21の尾部21aが、そのピストン21の中心軸線L2とほぼ平行に延びる両切欠部30aの両端縁30bにおいて、クランク室15の内周面に当接するようになっている。そして、これらの両端縁30bが、ピストン21の往復動に伴って、フロントハウジング11の内周面に摺接することより、片頭ピストン21の中心軸線L2の周りでの回り止めがなされるようになっている。
【0042】また、これらの切欠部30aとフロントハウジング11の内周面との間にも、潤滑油の通過を許容する空隙S1がそれぞれ形成される。従って、この第2の実施形態においても、前記第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を発揮することができる。
【0043】また、この第2の実施形態では、回り止め部が平面状の切欠部30aによりなっているため、片頭ピストン21の尾部21aを複数の平面のみにより構成することができる。従って、フロントハウジング11の内周面との対向面を単に平面状に加工すればよくて、円弧状に加工する必要がなく、片頭ピストン21の尾部21aの加工を一層容易に行うことができる。
【0044】しかも、片頭ピストン21の往復動時には、クランク室15内の潤滑油が複数の空隙S1を通して、ピストン21と斜板19との係留部に一層効率良く供給することができる。
【0045】(第3の実施形態)次に、この発明の第3の実施形態を、図7に基づいて説明する。さて、この第3の実施形態においても、前記第1の実施形態と同様に、片頭ピストン21の尾部21aの外面中央に切欠部30が形成され、その両側に一対の回り止め部31が形成されている。これらの回り止め部31は、片頭ピストン21の軸線L2方向に延びるとともに、所定間隔をおいて突出形成された突条32となっている。そして、これらの突条32は、フロントハウジング11の内周面に接触しており、片頭ピストン21の往復動に伴って、フロントハウジング11の内周面に摺接するようになっている。これにより、片頭ピストン21の中心軸線L2の周りでの回り止めがなされるようになっている。
【0046】従って、この第3の実施形態においても、前記第1の実施形態及び第2の実施形態とほぼ同様の作用効果を発揮することができる。また、この第3の実施形態では、突条32の存在により、切欠部30とフロントハウジング11の内周面との間に、潤滑油の通過を許容する大きな空隙S1が形成される。このため、ピストン21の往復動時には、クランク室15内の潤滑油が大きな空隙S1を通して、ピストン21と斜板19との係留部に一層効率良く供給することができる。
【0047】なお、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
(1) 片頭ピストン21の尾部21a上に、前記各実施形態とは異なった数、たとえば3以上の回り止め部31を所定の間隔をおいて形成すること。
【0048】このように構成した場合、クランク室15の内周面と回り止め部31との当接面積を大きくすることができて、一層確実に片頭ピストン21の回り止めを行うことができる。
【0049】(2) 片頭ピストン21の尾部21a上に円弧凹面状の切欠部30を形成すること。このように構成した場合、複数の回り止め部31間における空隙S1の通過面積を広げることができて、より確実にクランク室15の内周面上及び下部の潤滑油を片頭ピストン21と斜板19との係留部に導くことができる。
【0050】前記実施形態から把握される技術的思想を以下に述べる。
(イ) ハウジングの内部にクランク室を形成するとともに駆動シャフトを回転可能に支持し、ハウジングの一部を構成するシリンダブロックには複数のシリンダボアを形成し、各シリンダボア内にはピストンを往復動可能に収容し、クランク室内において駆動シャフトにはカムプレートを一体回転可能かつ揺動可能に装着して、そのカムプレートの周縁を各ピストンの尾部に係留した圧縮機において、前記各ピストンの尾部の外面には、クランク室の内周面に当接して、ピストンが自身の中心軸線の周りで回転するのを阻止するための複数の回り止め部を、所定の間隔をおいて形成した圧縮機。
【0051】このような構成においては、前記各実施形態と同様な効果を享受できる。
(ロ) 前記(イ)項において、クランク室内の圧力とシリンダボア内の圧力とのピストンを介した差圧を変更し、その差圧に応じてカムプレートの傾角を変更して、吐出容量を制御するようにした容量制御手段を設けた可変容量圧縮機。
【0052】この構成においては、前記(イ)項の構成がいっそう有効である。すなわち、可変容量圧縮機においては、クランク室の圧力を調整するために、クランク室をガス通路にすることができない。このため、クランク室内がオイルレス雰囲気になりやすい。これに対して、(ロ)項の構成によれば、ブローバイガスに同伴される潤滑油を、片頭ピストンとカムプレートとの係留部の潤滑のために有効に利用できる。
【0053】
【発明の効果】この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発明によれば、クランク室の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油を、片頭ピストンとカムプレートとの係留部へ十分に取り込むことができる。そして、圧縮機内でもっとも潤滑を必要とする片頭ピストンとカムプレートとの係留部の潤滑が確保される。
【0054】請求項2に記載の発明によれば、前記尾部の外面中央の離隔面と、ハウジングの内周面との間に、潤滑油の通過通路が確保されて、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に対して、潤滑油をより確実に導くことができる。
【0055】請求項3に記載の発明によれば、前記クランク室の内周面に付着されたり、下部に貯留されたりしている潤滑油を、前記離隔面とハウジング内周面との間を通して窪み部に導いた後、片頭ピストンとカムプレートとの係留部に対して確実に導くことができる。
【0056】請求項4に記載の発明によれば、傾斜面と離隔面との相乗効果により、係留部の潤滑効果をより向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成9年7月15日(1997.7.15)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【公開番号】 特開2001−254676(P2001−254676A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2001−46793(P2001−46793)