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【発明の名称】 ピストンポンプ
【発明者】 【氏名】村田 幸雄

【氏名】増子 実

【要約】 【課題】作動開始初期には、低圧・大吐出量の特性を発揮でき、作動開始後に吐出圧が一定以上になると、高圧・小吐出量の特性を発揮することができるピストンポンプを得る。

【解決手段】ピストンの往復動によって作動液の吐出を行うピストンポンプ21のポンプ部を、大径の第1ピストン33の往復動により吐出を行う第1ポンプ部23と、第1ピストン33の後端に形成された小径の第2シリンダ51内を往復動する小径の第2ピストン53を有した第2ポンプ部25との多段構成にし、吐出圧が規定以下の時には第1ピストン33の往復動によるポンプ動作によって低圧・大吐出量の特性発揮させ、吐出圧が規定以上の時には第2ピストン53の往復動によるポンプ動作によって高圧・小吐出量の特性を発揮させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 大径の第1シリンダと、この第1シリンダに摺動可能に保持されて第1シリンダ内に画成した大径の第1ポンプ室を圧縮・膨張する第1ピストンと、作動機器の圧力室が接続される吐出口と前記第1ポンプ室とを連通させる吐出用通路に装備されて前記第1ピストンの吐出行程時に第1ポンプ室内の圧力が作動機器側の圧力よりも高くなると前記第1ポンプ室と前記吐出口とを連通状態にする吐出用第1チェック弁と、リザーバが接続される吸入口と前記第1ポンプ室とを連通させる吸込用通路に装備されて前記第1ピストンの吸込行程時に前記第1ポンプ室と前記吸入口とを連通状態にする吸込用第1チェック弁とを備えた第1ポンプ部と、前記第1ポンプ室とは反対側に位置する前記第1ピストンの後端部に形成された小径の第2シリンダと、この第2シリンダに摺動可能に保持されて第2シリンダ内に画成した小径の第2ポンプ室を圧縮・膨張する第2ピストンと、前記第2ポンプ室を前記吐出口に連通させる吐出用第2通路と、この吐出用第2通路に装備されて前記第2ピストンの吐出工程時に第2ポンプ室内の圧力が作動機器側の圧力よりも高くなると前記第2ポンプ室と前記吐出口とを連通状態にする吐出用第2チェック弁と、前記第2ポンプ室を前記吸入口に連通させる吸込用第2通路と、この吸込用第2通路に装備されて前記第2ピストンの吸込工程時に前記第2ポンプ室を前記吸入口とを連通状態にする吸込用第2チェック弁とを備えた第2ポンプ部と、前記第2ピストンを往復動させる電動式のポンプ駆動部とを備えたことを特徴とするピストンポンプ。
【請求項2】 大径の第1シリンダと、この第1シリンダに摺動可能に保持されて第1シリンダ内に画成した大径の第1ポンプ室を圧縮・膨張する第1ピストンと、作動機器の圧力室が接続される吐出口と前記第1ポンプ室とを連通させる吐出用通路に装備されて前記第1ピストンの吐出行程時に第1ポンプ室内の圧力が作動機器側の圧力よりも高くなると前記第1ポンプ室と前記吐出口とを連通状態にする吐出用第1チェック弁と、リザーバが接続される吸入口と前記第1ポンプ室とを連通させる吸込用通路に装備されて前記第1ピストンの吸込行程時に第1ポンプ室と前記吸入口とを連通状態にする吸込用第1チェック弁と、一端が前記第1ピストンの先端面に当接すると共に他端が前記第1ピストンの先端面に対峙する第1ポンプ室の端面に当接するように第1ポンプ室の内周に装備されて前記第1ピストンの摺動部からの流体の漏れを防止すると同時に前記第1ピストンの吐出工程時には第1ピストンに弾性変形に応じた負荷を付与する第1弾性シール材とを備えた第1ポンプ部と、前記第1ポンプ室とは反対側に位置する前記第1ピストンの後端部に形成された小径の第2シリンダと、この第2シリンダに摺動可能に保持されて第2シリンダ内に画成した小径の第2ポンプ室を圧縮・膨張する第2ピストンと、前記第2ポンプ室と第1ポンプ室とを連通させる連通路と、一端が前記第2ピストンの先端面に当接すると共に他端が前記第2ピストンの先端面に対峙する第2ポンプ室の端面に当接するように第2ポンプ室の内周に装備されて前記第2ピストンの摺動部からの流体の漏れを防止すると同時に前記第2ピストンの吐出工程時には第2ピストンに弾性変形に応じた負荷を付与する第2弾性シール材とを備えた第2ポンプ部と、前記第2ピストンを往復動させる電動式のポンプ駆動部とを備え、 前記第1弾性シール材の弾性係数を前記第2弾性シール材の弾性係数よりも小さく設定したことを特徴とするピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両や自動車等の油圧ブレーキ装置の油圧発生源等として用いて好適なピストンポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の車両においては、アンチロックブレーキシステムの装備や、トラクションコントロールシステムの装備など、ブレーキ機能のインテリジェント化が活発に行われている。そして、このようなインテリジェント化に伴い、例えば、油圧式のブレーキユニットを使用するブレーキシステムでは、油圧発生源として組み込まれるポンプの電動化や小型化が必要不可欠になってきている。
【0003】電動ポンプは、ポンプ羽根を電動モータで回転駆動して油圧を発生する回転式のものと、ハウジングに収容したピストンの往復動で流体の吐出を行うポンプ部とピストンを往復動させる駆動部とを備えるピストン式のものとに大別されるが、一般的に、ピストン式のものの方が、コンパクト化や軽量化を図り易い。ブレーキシステムに油圧発生源として組み込む電動ポンプは、小型化や軽量化が重要課題となるため、ブレーキ用の電動ポンプとしては、ピストン式のものが有利とされている。
【0004】そして、最近では、ピストン式の電動ポンプとして、ハウジングに収容したピストンの往復動で流体の吐出を行うポンプ部と、ピストンを往復動させる駆動源として伸縮動作を電気的に制御可能な固体素子を使用したピストン駆動部とを備えた構成のものが各種提案されている。そして、この種の電動ポンプにおいて、伸縮動作を電気的に制御可能な固体素子としては、圧電セラミックスや超磁歪素子等が提案されている(特開平7−167327号公報、特開平8−334082号公報等参照)。
【0005】圧電セラミックスの場合、その伸縮動作に高電圧が必要となり、圧電セラミックスの伸縮動作を制御するために装備する電源や制御回路が大型化し易い。これに対して、超磁歪素子の伸縮動作は、超磁歪素子の周囲に配置したコイルから超磁歪素子へ磁界を加えることによって行うもので、コイルへの通電が低電圧で済むため、圧電セラミックスと比較すると、電源や制御回路を小型化することができ、軽量・小型化の点で、超磁歪素子の方が有利であるともいえる。そこで、最近では、超磁歪素子を使用した電動ポンプの開発、その電動ポンプを使用したブレーキシステムの開発が活発になっている。
【0006】図6は、超磁歪素子を駆動源として利用したピストンポンプの従来例を示したものである。このピストンポンプ1は、ポンプ部11とポンプ駆動部12とから構成されている。ポンプ部11は、シリンダ2と、このシリンダ2に摺動可能に保持されてこのシリンダ2内に画成したポンプ室3を圧縮・膨張するピストン4と、シリンダ2に装備されて作動機器であるブレーキキャリパ5の圧力室が接続される吐出口6と、シリンダ2に装備されてリザーバ7が接続される吸込口8と、吐出口6とポンプ室3とを連通させる吐出用通路3aに装備されてピストン4の吐出行程時にポンプ室3内の圧力が吐出口6に作用する作動機器側の圧力よりも高くなると、ポンプ室3と吐出口6とを連通状態にする吐出用チェック弁9と、吸込口8とポンプ室3とを連通させる吸込用通路3bに装備されてピストン4の吸込行程時にポンプ室3と吸込口8とを連通状態にする吸込用チェック弁10と、ポンプ室3内の作動液がピストン4の摺動部から漏れることを防止するためにポンプ室3内に装備された弾性シール材13とを備えて構成され、ピストン4の往復動により、ブレーキオイルをリザーバ7からブレーキキャリパ5へ圧送する。
【0007】ポンプ駆動部12は、シリンダ2に一体化されたハウジング16に収容されて磁界が加えられると伸長する超磁歪素子14と、電流印加により超磁歪素子14に磁界を加えるコイル15と、ピストン4を超磁歪素子14に当接した状態に付勢するバネ17とを有して構成され、コイル15に印加する電流を制御することで、ピストン4の往復動作を制御する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば、油圧式のディスクブレーキユニットでは、非制動時には、パッドの引き摺りが生じないように、パッドをロータから離間させるパッドクリアランスを設定している。このため、制動時、ブレーキユニットへの油圧供給が開始されても、初期の油圧は、パッドクリアランス分のパッドの変位に使用され、直ぐには、制動力を発生できない。このパッドクリアランス分の変位に要する時間は、制動力の立ち上がりを遅らせ、制動距離の短縮を困難にしている。このような問題は、油圧式のドラムブレーキの場合にも、共通である。従って、ブレーキ用のポンプの場合は、図8の特性曲線Frに示すように、制動初期には制動の立ち上がりを迅速にするために低圧・大吐出量の特性を持ち、且つ、パッドクリアランス除去後は制動力の微調整が可能なように高圧・小吐出量の特性を持つことが望ましい。
【0009】しかし、上記のピストンポンプ1の場合、ピストン4の径を小さくすると、図7の特性線G1に示すように、高圧・小吐出量の特性を示し、ピストン4の径を大きくすると、図7の特性線G2に示すように、低圧・大吐出量の特性を示す。図7のG1の出力特性では、図8の特性曲線F1に示すように、制動開始初期の立ち上がりが遅れ、また、図7のG2の出力特性では、図8の特性曲線F2に示すように、制動開始初期の立ち上がりは早くすることができるが、制動圧を十分に高めることが難しくなる。即ち、上記のピストンポンプ1では、図8の特性曲線Frに示した理想の出力特性を得ることができない。
【0010】そこで、このような背景から、上記ピストンポンプ1に、ピストンポンプ1の出力する油圧が蓄圧可能なアキュムレータを組合せ、制動開始初期にはアキュムレータからの出力を利用することで、制動初期における供給油圧の大容量化を実現することも、本願発明者等により鋭意研究されている。しかし、アキュムレータの装備は、構成部品の増大と、構成の複雑化により、コストアップを招く可能性がある。
【0011】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、アキュムレータ等を必要とせず、ピストン式のポンプ部の改良のみで、作動開始初期には、低圧・大吐出量の特性を発揮すると共に、作動開始後に吐出圧が一定以上になると、高圧・小吐出量の特性を発揮することができ、従って、ブレーキ装置における圧力発生源として理想的な出力特性を安価に実現することのできるピストンポンプを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係るピストンポンプは、大径の第1シリンダと、この第1シリンダに摺動可能に保持されて第1シリンダ内に画成した大径の第1ポンプ室を圧縮・膨張する第1ピストンと、作動機器の圧力室が接続される吐出口と前記第1ポンプ室とを連通させる吐出用通路に装備されて前記第1ピストンの吐出行程時に第1ポンプ室内の圧力が作動機器側の圧力よりも高くなると前記第1ポンプ室と前記吐出口とを連通状態にする吐出用第1チェック弁と、リザーバが接続される吸入口と前記第1ポンプ室とを連通させる吸込用通路に装備されて前記第1ピストンの吸込行程時に前記第1ポンプ室と前記吸入口とを連通状態にする吸込用第1チェック弁とを備えた第1ポンプ部と、前記第1ポンプ室とは反対側に位置する前記第1ピストンの後端部に形成された小径の第2シリンダと、この第2シリンダに摺動可能に保持されて第2シリンダ内に画成した小径の第2ポンプ室を圧縮・膨張する第2ピストンと、前記第2ポンプ室を前記吐出口に連通させる吐出用第2通路と、この吐出用第2通路に装備されて前記第2ピストンの吐出工程時に第2ポンプ室52内の圧力が作動機器側の圧力よりも高くなると前記第2ポンプ室と前記吐出口とを連通状態にする吐出用第2チェック弁と、前記第2ポンプ室を前記吸入口に連通させる吸込用第2通路と、この吸込用第2通路に装備されて前記第2ピストンの吸込工程時に前記第2ポンプ室を前記吸入口とを連通状態にする吸込用第2チェック弁とを備えた第2ポンプ部と、前記第2ピストンを往復動させる電動式のポンプ駆動部とを備えたことを特徴とする。
【0013】そして、上記構成によれば、吐出用第1チェック弁のチェック圧を、吐出用第2チェック弁のチェック圧よりも低く設定しておけば、ポンプ駆動部の作動によって第2ピストンの往復動が開始された際、吐出口に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも低い時には、吐出用第2チェック弁のチェック圧のために、第2ポンプ室は密封状態に保たれ、ポンプ駆動部から第2ピストンに伝達された加圧力が、第2ポンプ室に封入された作動流体を介して第1ピストンに伝達され、第1ピストンのポンプ動作によって作動液の吐出が行われる。従って、吐出口に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも低い時には、大径の第1ピストンの往復動によるポンプ動作によって、低圧・大吐出量の特性を発揮する。また、作動開始後、吐出口に作用する作動機器側の圧力が徐々に上昇して前記吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも高くなると、この作動機器側の圧力によって、吐出用第1チェック弁は閉じた状態に保持される。従って、吐出口に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも高くなった場合には、小径の第2ピストンの往復動によるポンプ動作によって、高圧・小吐出量の特性を発揮する。
【0014】また、上記目的を達成するための本発明に係るピストンポンプは、大径の第1シリンダと、この第1シリンダに摺動可能に保持されて第1シリンダ内に画成した大径の第1ポンプ室を圧縮・膨張する第1ピストンと、作動機器の圧力室が接続される吐出口と前記第1ポンプ室とを連通させる吐出用通路に装備されて前記第1ピストンの吐出行程時に第1ポンプ室内の圧力が作動機器側の圧力よりも高くなると前記第1ポンプ室と前記吐出口とを連通状態にする吐出用第1チェック弁と、リザーバが接続される吸入口と前記第1ポンプ室とを連通させる吸込用通路に装備されて前記第1ピストンの吸込行程時に第1ポンプ室と前記吸入口とを連通状態にする吸込用第1チェック弁と、一端が前記第1ピストンの先端面に当接すると共に他端が前記第1ピストンの先端面に対峙する第1ポンプ室の端面に当接するように第1ポンプ室の内周に装備されて前記第1ピストンの摺動部からの流体の漏れを防止すると同時に前記第1ピストンの吐出工程時には第1ピストンに弾性変形に応じた負荷を付与する第1弾性シール材とを備えた第1ポンプ部と、前記第1ポンプ室とは反対側に位置する前記第1ピストンの後端部に形成された小径の第2シリンダと、この第2シリンダに摺動可能に保持されて第2シリンダ内に画成した小径の第2ポンプ室を圧縮・膨張する第2ピストンと、前記第2ポンプ室と第1ポンプ室とを連通させる連通路と、一端が前記第2ピストンの先端面に当接すると共に他端が前記第2ピストンの先端面に対峙する第2ポンプ室の端面に当接するように第2ポンプ室の内周に装備されて前記第2ピストンの摺動部からの流体の漏れを防止すると同時に前記第2ピストンの吐出工程時には第2ピストンに弾性変形に応じた負荷を付与する第2弾性シール材とを備えた第2ポンプ部と、前記第2ピストンを往復動させる電動式のポンプ駆動部とを備え、前記第1弾性シール材の弾性係数を前記第2弾性シール材の弾性係数よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0015】そして、上記構成によれば、ポンプ駆動部の作動によって第2ピストンの往復動が開始された際、ポンプ駆動部から第2ピストンに伝達された加圧力は、第2ポンプ室に装備された第2弾性シール材を介して第1ピストンに伝達されることになる。このような第2ピストンの加圧動作時、吐出口に作用する作動機器側の圧力が低い時には、第2弾性シール材は殆ど弾性変形せずに第1ピストンに加圧力を伝達し、第1ピストンが第1弾性シール材を圧縮しつつ、その際の第1ポンプ室の圧縮率に応じた吐出を行うため、大径の第1ピストンの往復動によるポンプ動作によって、低圧・大吐出量の特性を発揮する。また、作動開始後、吐出口に作用する作動機器側の圧力が徐々に上昇して、第2弾性シール材が弾性変形するようになると、第1弾性シール材は最大限に圧縮変形した状態に保持されて、第1ピストンは殆ど変位をしなくなり、第2ピストンが第2弾性シール材の圧縮変形・復元を伴う往復動をして、小径の第2ピストンのポンプ動作によって高圧・小吐出量の特性を発揮する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るピストンポンプの好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1乃至図3は本発明に係るピストンポンプの第1の実施の形態を示したもので、図1は第1の実施の形態のピストンポンプの縦断面図、図2は図1に示したピストンポンプの油量−油圧特性図、図3は図1に示したピストンポンプの時間−油圧特性図である。
【0017】この第1の実施の形態のピストンポンプ21は、自動車や鉄道車両等に装備する油圧ブレーキ装置の油圧発生源として使用されるもので、ピストンの往復動によって作動液を吐出する第1及び第2の2つのポンプ部23,25と、これらのポンプ部のピストンを往復動作させるポンプ駆動部27とから構成されている。
【0018】第1ポンプ部23は、大径の第1シリンダ31と、この第1シリンダ31に摺動可能に保持されて第1シリンダ31内に画成した大径の第1ポンプ室32を圧縮・膨張する第1ピストン33と、第1シリンダ31に装備されて作動機器であるブレーキキャリパ41の圧力室が接続される吐出口34と、第1シリンダ31に装備されてリザーバ43が接続される吸入口35と、吐出口34と第1ポンプ室32とを連通させる吐出用通路36に装備され第1ピストン33の吐出行程時に第1ポンプ室32内の圧力が吐出口34に作用する作動機器側の圧力よりも高くなると第1ポンプ室32と吐出口34とを連通状態にする吐出用第1チェック弁45と、吸入口35と第1ポンプ室32とを連通させる吸込用通路37に装備され第1ピストン33の吸込行程時に第1ポンプ室32と吸入口35とを連通状態にする吸込用第1チェック弁47とを備えている。
【0019】第1ポンプ室32内には、ポンプ室32内の作動液が第1ピストン33の摺動部から漏れることを防止するために、弾性シール材38が装備されている。この弾性シール材38は、略円筒状で、一端を第1ピストン33の先端面に当接すると共に、他端を第1ピストン33の先端面に対峙する第1シリンダ31の端面に当接した状態でポンプ室32の内周に嵌合状態に装備され、第1ピストン33の吐出工程時には、第1ピストン33による加圧で、内径方向に膨出して、第1ポンプ室32の容積を低減させ、吐出効率を向上させる。
【0020】第2ポンプ部25は、第1ポンプ室32とは反対側に位置する第1ピストン33の後端部に形成された小径の第2シリンダ51と、この第2シリンダ51に摺動可能に保持されて第2シリンダ51内に画成した小径の第2ポンプ室52を圧縮・膨張する第2ピストン53と、第2シリンダ51及び第1シリンダ31を貫通して第2ポンプ室52を第1ポンプ部23の吐出口34に連通させる吐出用第2通路56と、この吐出用第2通路56に装備され第2ピストン53の吐出工程時に第2ポンプ室52内の圧力が吐出口34に作用する作動機器側の圧力よりも高くなると第2ポンプ室52と吐出口34とを連通状態にする吐出用第2チェック弁65と、第2シリンダ51及び第1シリンダ31を貫通して第2ポンプ室52を第1ポンプ部23の吸入口35に連通させる吸込用第2通路57と、この吸込用第2通路57に装備され第2ピストン53の吸込工程時に第2ポンプ室52を吸入口35に連通させる吸込用第2チェック弁67とを備えている。
【0021】第2ポンプ室52内には、ポンプ室52内の作動液が第2ピストン53の摺動部から漏れることを防止するために、弾性シール材58が装備されている。この弾性シール材58は、略円筒状で、一端を第2ピストン53の先端面に当接すると共に、他端を第2ピストン53の先端面に対峙する第2シリンダ51の端面に当接した状態でポンプ室52の内周に嵌合状態に装備され、第2ピストン53の吐出工程時には、第2ピストン53による加圧で、内径方向に膨出して、第2ポンプ室52の容積を低減させ、吐出効率を向上させる。また、吐出用第2通路56、吸込用第2通路57が貫通する第1ピストン33の外周面には、これらの通路を通る作動液が第1ピストン33の摺動面から漏れることを防止するためのシールリング59が装備されている。
【0022】本実施の形態の場合、ポンプ駆動部27は、第1シリンダ31に一体化されたハウジング71に収容されて、磁界が加えられるとピストン33,53の往復動方向に沿って伸長する超磁歪素子73と、電流印加により超磁歪素子73に磁界を加えるコイル75と、第2ピストン53を超磁歪素子73に当接した状態に付勢するバネ77とを有した構成で、コイル75に印加する電流を制御することで、第2ポンプ部25の第2ピストン53の往復動作を制御する。バネ77は、超磁歪素子73に圧縮荷重をかけて該超磁歪素子73の伸長動作を効率化する予負荷ばねを兼ねている。
【0023】以上のピストンポンプ21では、既述したように、吐出用第1チェック弁45のチェック圧P45を、吐出用第2チェック弁65のチェック圧P65よりも低く設定しておけば、ポンプ駆動部27の作動によって第2ピストン53の往復動が開始された際、吐出口34に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁45のチェック圧P45よりも低い時には、吐出用第2チェック弁65のチェック圧P65のために、第2ポンプ室52は密封状態に保たれ、ポンプ駆動部27から第2ピストン53に伝達された加圧力が、第2ポンプ室52に封入された作動流体を介して第1ピストン33に伝達され、第1ピストン33のポンプ動作によって作動液の吐出が行われる。従って、吐出口34に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁45のチェック圧P45よりも低い時には、大径の第1ピストン33の往復動によるポンプ動作によって、低圧・大吐出量の特性を発揮する。また、作動開始後、吐出口34に作用する作動機器側の圧力が徐々に上昇して吐出用第1チェック弁45のチェック圧P45よりも高くなると、この作動機器側の圧力によって、吐出用第1チェック弁45は閉じた状態に保持される。従って、吐出口34に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁45のチェック圧P45よりも高くなった場合には、小径の第2ピストン53の往復動によるポンプ動作によって、高圧・小吐出量の特性を発揮する。
【0024】従って、アキュムレータ等を必要とせずに、図2に特性線G0,図3に特性曲線F0で示すように、作動開始初期には、低圧・大吐出量の特性を発揮すると共に、作動開始後に吐出圧が一定以上になると、高圧・小吐出量の特性を発揮することができ、ブレーキ装置における圧力発生源として利用した場合に、制動初期には大吐出量によってパッドクリアランス分の変位に要する時間を短縮して制動力の立ち上がりを迅速にし、パッドクリアランス除去後は制動力の微調整が可能なように高圧・小吐出量の特性を持つ理想的な出力特性を安価に実現することができる。
【0025】具体的には、以上のピストンポンプ21において、弾性シール材58によってシールされた第2ポンプ室52の断面積S1,弾性シール材38によってシールされた第1ポンプ室32の断面積S2,吸込用第1チェック弁47のチェック圧P47,吸込用第2チェック弁67のチェック圧P67,吐出用第1チェック弁45のチェック圧P45,吐出用第2チェック弁65のチェック圧P65を、次のように設定する。
S1=10cm2 ,S2=20cm2 ……(1)
47=P67=0.01MPa ……(2)
45=1MPa ……(3)
65=2MPa ……(4)
そして、上記ポンプ駆動部27が第2ピストン53に伝達する推力Fを10kNとした時、第2ポンプ室52からブレーキキャリパ41への供給油圧P2は、P2=(F/S1)+P65=12MPaとなる。また、第1ポンプ室32からブレーキキャリパ41への供給油圧P1は、同様の計算から、P1=6MPaとなる。即ち、上記の例では、キャリパ油圧が6MPaまでは、主に第1ポンプ部23がポンプ動作を行って低圧・大吐出量を実現し、それ以上のキャリパ油圧の時は、第2ポンプ部25がポンプ動作を行って、高圧・低吐出量を実現する。
【0026】なお、図2における特性線G1,G2及び、図3における特性曲線F1,F2は、先に図7及び図8で示した単一のピストンによる従来のピストンポンプによる特性である。
【0027】図4は、本発明に係るピストンポンプの第2の実施の形態の縦断面図である。この第2の実施の形態のピストンポンプ81は、第1の実施の形態のピストンポンプと同様に、自動車や鉄道車両等に装備する油圧ブレーキ装置の油圧発生源として使用されるもので、ピストンの往復動によって作動液を吐出する第1及び第2の2つのポンプ部83,85と、これらのポンプ部83,85のピストンを往復動作させるポンプ駆動部27とから構成されている。
【0028】第1ポンプ部83は、大径の第1シリンダ91と、この第1シリンダ91に摺動可能に保持されて第1シリンダ91内に画成した大径の第1ポンプ室92を圧縮・膨張する第1ピストン93と、第1シリンダ91に装備され作動機器の圧力室が接続される吐出口94と、第1シリンダ91に装備されリザーバ43が接続される吸入口95と、吐出口94と第1ポンプ室92とを連通させる吐出用通路96に装備され第1ピストン93の吐出行程時に第1ポンプ室92内の圧力が吐出口94に作用する作動機器側の圧力よりも高くなると第1ポンプ室92と吐出口94とを連通状態にする吐出用第1チェック弁105と、吸入口95と第1ポンプ室92とを連通させる吸込用通路97に装備され第1ピストン93の吸込行程時に第1ポンプ室92と吸入口95とを連通状態にする吸込用第1チェック弁107と、一端が第1ピストン93の先端面に当接すると共に他端が第1ピストン93の先端面に対峙する第1ポンプ室92の端面に当接するように第1ポンプ室92の内周に装備され第1ピストン93の摺動部からの流体の漏れを防止すると共に第1ピストン93の吐出工程時には第1ピストン93に弾性変形に応じた負荷を付与する第1弾性シール材109とを備えている。
【0029】第2ポンプ部85は、第1ポンプ室92とは反対側に位置する第1ピストン93の後端部に形成された小径の第2シリンダ111と、この第2シリンダ111に摺動可能に保持されて第2シリンダ111内に画成した小径の第2ポンプ室112を圧縮・膨張する第2ピストン113と、第1ピストン93を貫通して第2ポンプ室112と第1ポンプ室92とを連通させる連通路115と、一端が第2ピストン113の先端面に当接すると共に他端が第2ピストン113の先端面に対峙する第2ポンプ室112の端面に当接するように第2ポンプ室112の内周に装備され第2ピストン113の摺動部からの流体の漏れを防止すると共に第2ピストン113の吐出工程時には第2ピストン113に弾性変形に応じた負荷を付与する第2弾性シール材119とを備えている。
【0030】第1弾性シール材109及び第2弾性シール材119は、何れも、シリンダの内周面に嵌合する略円筒状で、シールの倒れを防止するバックアップリング121が嵌合装着されている。これらの各弾性シール材109,119は、それぞれのピストンによる加圧で、内径方向に膨出して、各ポンプ室の容積を低減させ、吐出効率を向上させる。本実施の形態の場合、第1弾性シール材109の弾性係数を、第2弾性シール材119の弾性係数よりも小さく設定している。
【0031】第2ピストン113を往復動させる電動式のポンプ駆動部27は、第1の実施の形態のものと同一の構成で、共通の構成に同番号を付して、説明を省略する。
【0032】そして、上記構成によれば、ポンプ駆動部27の作動によって第2ピストン113の往復動が開始された際、ポンプ駆動部27から第2ピストン113に伝達された加圧力は、第2ポンプ室112に装備された第2弾性シール材119を介して第1ピストン93に伝達されることになる。このような第2ピストン113の加圧動作時、吐出口94に作用する作動機器側の圧力が低い時には、第2弾性シール材119は殆ど弾性変形せずに第1ピストン93に加圧力を伝達し、第1ピストン93が第1弾性シール材109を圧縮しつつ、その際の第1ポンプ室92の圧縮率に応じた吐出を行うため、大径の第1ピストン93の往復動によるポンプ動作によって、低圧・大吐出量の特性を発揮する。また、作動開始後、吐出口94に作用する作動機器側の圧力が徐々に上昇して、第2弾性シール材119が弾性変形するようになると、第1弾性シール材109は最大限に圧縮変形した状態に保持されて、第1ピストン93は殆ど変位をしなくなり、第2ピストン113が第2弾性シール材119の圧縮変形・復元を伴う往復動をして、小径の第2ピストン113のポンプ動作によって高圧・小吐出量の特性を発揮する。
【0033】従って、アキュムレータ等を必要とせずに、作動開始初期には、低圧・大吐出量の特性を発揮すると共に、作動開始後に吐出圧が一定以上になると、高圧・小吐出量の特性を発揮することができ、ブレーキ装置における圧力発生源として利用した場合に、制動初期には大吐出量によってパッドクリアランス分の変位に要する時間を短縮して制動力の立ち上がりを迅速にし、パッドクリアランス除去後は制動力の微調整が可能なように高圧・小吐出量の特性を持つ理想的な出力特性を安価に実現することができる。
【0034】図5は、本発明に係るピストンポンプの第3の実施の形態の縦断面図である。この第3の実施の形態のピストンポンプ131は、第2の実施の形態に示したピストンポンプ81の一部を改良したもので、基本的な構成は共通である。共通する構成には、同番号を付して、説明を簡略化する。この第3の実施の形態のピストンポンプ131の改良点は、吐出口94に至る吐出用通路96と、吸入口95に至る吸込用通路97とが合流して単一の通路となって第1ポンプ室92に接続された点と、第1弾性シール材109の装備位置が第2弾性シール材119の装備位置の外周側に位置をずらして、第1ポンプ室92と第2ポンプ室112とが軸線方向に略重なる配置とすることで、軸線方向の寸法の短縮を図った点である。
【0035】以上の相違点以外の構成は、第2の実施の形態と同様である。なお、本発明において、吐出用通路や吸込用通路に装備するチェック弁のチェック圧、各ポンプ室に装備する弾性シール材の弾性係数や、大小のポンプ室の横断面積比等は、上記実施の形態の例示に限定するものではなく、車両のブレーキ性能等に応じて、適宜に設計変更可能であることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】本発明のピストンポンプによれば、吐出用第1チェック弁のチェック圧を、吐出用第2チェック弁のチェック圧よりも低く設定しておけば、ポンプ駆動部の作動によって第2ピストンの往復動が開始された際、吐出口に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも低い時には、吐出用第2チェック弁のチェック圧のために、第2ポンプ室は密封状態に保たれ、ポンプ駆動部から第2ピストンに伝達された加圧力が、第2ポンプ室に封入された作動流体を介して第1ピストンに伝達され、第1ピストンのポンプ動作によって作動液の吐出が行われる。従って、吐出口に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも低い時には、大径の第1ピストンの往復動によるポンプ動作によって、低圧・大吐出量の特性を発揮する。また、作動開始後、吐出口に作用する作動機器側の圧力が徐々に上昇して吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも高くなると、この作動機器側の圧力によって、吐出用第1チェック弁は閉じた状態に保持される。従って、吐出口に作用する作動機器側の圧力が吐出用第1チェック弁のチェック圧よりも高くなった場合には、小径の第2ピストンの往復動によるポンプ動作によって、高圧・小吐出量の特性を発揮する。従って、アキュムレータ等を必要とせずに、作動開始初期には、低圧・大吐出量の特性を発揮すると共に、作動開始後に吐出圧が一定以上になると、高圧・小吐出量の特性を発揮することができ、ブレーキ装置における圧力発生源として利用した場合に、制動初期には大吐出量によってパッドクリアランス分の変位に要する時間を短縮して制動力の立ち上がりを迅速にし、パッドクリアランス除去後は制動力の微調整が可能なように高圧・小吐出量の特性を持つ理想的な出力特性を安価に実現することができる。
【0037】また、請求項2に記載の構成にすると、ポンプ駆動部の作動によって第2ピストンの往復動が開始された際、ポンプ駆動部から第2ピストンに伝達された加圧力は、第2ポンプ室に装備された第2弾性シール材を介して第1ピストンに伝達されることになる。このような第2ピストンの加圧動作時、吐出口に作用する作動機器側の圧力が低い時には、第2弾性シール材は殆ど弾性変形せずに第1ピストンに加圧力を伝達し、第1ピストンが第1弾性シール材を圧縮しつつ、その際の第1ポンプ室の圧縮率に応じた吐出を行うため、大径の第1ピストンの往復動によるポンプ動作によって、低圧・大吐出量の特性を発揮する。また、作動開始後、吐出口に作用する作動機器側の圧力が徐々に上昇して、第2弾性シール材が弾性変形するようになると、第1弾性シール材は最大限に圧縮変形した状態に保持されて、第1ピストンは殆ど変位をしなくなり、第2ピストンが第2弾性シール材の圧縮変形・復元を伴う往復動をして、小径の第2ピストンのポンプ動作によって高圧・小吐出量の特性を発揮する。従って、アキュムレータ等を必要とせずに、作動開始初期には、低圧・大吐出量の特性を発揮すると共に、作動開始後に吐出圧が一定以上になると、高圧・小吐出量の特性を発揮することができ、ブレーキ装置における圧力発生源として利用した場合に、制動初期には大吐出量によってパッドクリアランス分の変位に要する時間を短縮して制動力の立ち上がりを迅速にし、パッドクリアランス除去後は制動力の微調整が可能なように高圧・小吐出量の特性を持つ理想的な出力特性を安価に実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000145541
【氏名又は名称】株式会社曙ブレーキ中央技術研究所
【出願日】 平成12年3月13日(2000.3.13)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平 (外4名)
【公開番号】 特開2001−254671(P2001−254671A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−68807(P2000−68807)