| 【発明の名称】 |
電動斜板圧縮機 |
| 【発明者】 |
【氏名】中根 芳之
【氏名】村上 和朗
【氏名】多羅尾 晋
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| 【要約】 |
【課題】電動モータの過熱減磁による回転効率の低下及び冷媒の昇温に伴う圧縮効率の低下を防止するとともに、ブローバイガス及び機械損失を低減して圧縮効率、耐久性及び静粛性などの性能向上を図ることができる電動斜板圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機は、モータ室15及び斜板室16を備え、電動モータ21がモータ室15に、斜板22が斜板室16に各々設けられている。圧縮機は、ケース内冷媒経路を構成する吸入室31とモータ室15とを連通する連通路39が設けられるとともに、モータ室15と斜板室16とが隔絶される。モータ室15は、ケース内冷媒経路内の冷媒が連通路39を介して導入されることで冷却される。斜板室16の圧力状態は、外部冷媒回路50からの吸入冷媒と、同回路50への吐出冷媒との中間の圧力状態にすることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケース内に形成されたモータ室、斜板室及びシリンダボアと、前記シリンダボア内に往復動可能に収容されるとともに圧縮作用を行うピストンと、前記モータ室及び斜板室に挿通された状態で前記ケース内に回転可能に支持され、該モータ室内の電動モータに連結されるとともに、前記モータの駆動によって、前記斜板室内に配設された斜板を介して前記ピストンを往復駆動する駆動軸とを備えた電動斜板圧縮機において、前記圧縮機のケース内冷媒経路と前記モータ室とを連通する連通路が設けられるとともに、該モータ室と前記斜板室とは隔絶されることを特徴とする電動斜板圧縮機。 【請求項2】 前記圧縮機は、外部冷媒回路からの吸入冷媒を吸入して圧縮する第1のシリンダボアと、少なくとも1度圧縮された中間圧の冷媒を吸入して圧縮する他のシリンダボアとを備えた多段式圧縮機であり、前記斜板室は、前記中間圧の冷媒が存在する中間圧室に連通されることを特徴とする請求項1に記載の電動斜板圧縮機。 【請求項3】 前記連通路は、前記外部冷媒回路からの吸入冷媒が存在する吸入室及び該吸入冷媒を該吸入室に導入する吸入孔のうち少なくともいずれか一方と、前記モータ室とを連通することを特徴とする請求項1または2に記載の電動斜板圧縮機。 【請求項4】 前記吸入室に設けられるとともに前記外部冷媒回路からの吸入冷媒を該吸入室に導入する第1の吸入孔と、前記モータ室に設けられるとともに前記外部冷媒回路からの吸入冷媒を該モータ室に導入する第2の吸入孔とを備えることを特徴とする請求項3に記載の電動斜板圧縮機。 【請求項5】 前記モータ室及び前記斜板室は両室の間に設けられた隔壁によって圧力的に隔絶され、前記隔壁には、該隔壁を貫通するように装着された前記駆動軸と、該隔壁との隙間からの冷媒の漏れを防止するためのシール部材が備えられることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電動斜板圧縮機。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば車両用空調装置に使用される電動斜板圧縮機に関するものである。 【0002】 【従来の技術】車両用空調装置などの熱交換装置の冷媒循環回路に組み込まれる圧縮機として電動圧縮機が知られている。一般に電動圧縮機は、その外殻となるケース内に電動モータおよびこのモータによって駆動される冷媒圧縮機構を備えている。該冷媒圧縮機構は、圧縮機内のシリンダボアに往復動可能に収容されたピストンと、圧縮機内に区画形成された斜板室に設けられ前記モータの回転運動を該ピストンの往復運動に変換する斜板などから構成される。このモータには高回転を実現する回転能力と高い負荷トルクに耐え得る駆動力が望まれるため、前記圧縮機には高出力なモータが備えられる必要がある。しかし高出力モータでもって高い回転負荷に対抗するという構成においては、モータの高発熱化が促され、該モータの雰囲気温度上昇が更に促進されてしまう。この雰囲気温度上昇は当然ながら該モータ自身を高温にするため、この高温化による該モータ自身の減磁が引き起こす回転効率の低下というリスクがつきまとう。そのため、このモータの高温化を避けるためのモータ冷却が必要となっている。 【0003】前記モータ冷却のための構成として、圧縮機内への吸入後であって圧縮作用をまだ受けていない吸入冷媒を、該モータが備えられたモータ室に導入するというものが知られている(特開平9−32729号公報)。前記公報に開示された構成では、前記吸入冷媒が、前記モータ室を通過した後に冷媒圧縮機構によって圧縮作用を受けるようになっているが、この冷媒圧縮機構はスクロール式によるものである。また、特開平5−187356号公報に開示された構成では、前記モータ室と、前記斜板が備えられた斜板室とは連通しており、斜板室に排出されたブローバイガスや、前記モータ室の壁を通した放熱により、前記モータが冷却されるようになっている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】電動斜板式圧縮機においては、斜板室はモータ室に比べて比較的低温状態にある。また、斜板室が昇温してもモータ室におけるモータ減磁といった直接的悪影響を受け難い。 【0005】前述の特開平5−187356号公報に開示された圧縮機のように、モータ室と斜板室とが連通している構成では、吸入冷媒を導入してモータ冷却を行わせる場合、斜板室内温度によっても冷媒が昇温されてしまう。冷媒の昇温は圧縮機としての圧縮効率の低下につながる。 【0006】本発明の第1の目的は、電動モータの過熱減磁による回転効率の低下を防止するとともに冷媒の昇温に伴う圧縮効率の低下を防止することができる電動斜板圧縮機を提供することにある。更に、第2の目的は、ブローバイガス及び機械損失を低減して圧縮効率、耐久性及び静粛性などの性能向上を図ることができる多段式電動斜板圧縮機を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ケース内に形成されたモータ室、斜板室及びシリンダボアと、前記シリンダボア内に往復動可能に収容されるとともに圧縮作用を行うピストンと、前記モータ室及び斜板室に挿通された状態で前記ケース内に回転可能に支持され、該モータ室内の電動モータに連結されるとともに、前記モータの駆動によって、前記斜板室内に配設された斜板を介して前記ピストンを往復駆動する駆動軸とを備えた電動斜板圧縮機において、前記圧縮機のケース内冷媒経路と前記モータ室とを連通する連通路が設けられるとともに、該モータ室と前記斜板室とは隔絶されることを要旨とする。 【0008】この発明によれば、電動斜板圧縮機のモータ室は、ケース内冷媒経路内の冷媒が連通路を介して導入されることで冷却される。つまり、電動モータの過熱を防ぎ、ひいては、このモータの過熱減磁による回転効率の低下を防止することができる。また、前記モータ室と斜板室とは圧力的に隔絶されているため、モータ室に導入された冷媒が斜板室に入り込むことを防ぐことができる。 【0009】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動斜板圧縮機において、前記圧縮機は、外部冷媒回路からの吸入冷媒を吸入して圧縮する第1のシリンダボアと、少なくとも1度圧縮された中間圧の冷媒を吸入して圧縮する他のシリンダボアとを備えた多段式圧縮機であり、前記斜板室は、前記中間圧の冷媒が存在する中間圧室に連通されることを要旨とする。 【0010】この発明によれば、前記斜板室は、多段式圧縮機の中間圧室に吐出された中間圧冷媒が導入されて中間圧状態になる。この中間圧状態になった斜板室は、例えば、該室内が吸入圧状態(外部冷媒回路から圧縮機に吸入された後であって未だ圧縮作用を受けていない冷媒の圧力状態)である場合に比べ室内圧力が高い状態にある。つまり、多段式圧縮機の少なくとも最終段シリンダボア内での冷媒圧縮時における前記ピストンの冷媒圧縮面に作用する圧力と、該面の反対面である斜板側の面に作用する圧力との差は、前記斜板室が中間圧状態にある場合の方が、吸入圧状態にある場合に比して小さい。これにより前記シリンダボアとピストンとの隙間を介して前記斜板室側に漏洩する冷媒(ブローバイガス)が減少する。また、前記圧力差の減少により、前記ピストンが圧縮時に受ける力も減少するため、該ピストン、シュー、斜板及び駆動軸などに作用する力や摩擦力が小さくなり、機械損失は減少する。従って、圧縮機の圧縮効率、耐久性や静粛性などの性能が向上する。 【0011】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電動斜板圧縮機において、前記連通路は、前記外部冷媒回路からの吸入冷媒が存在する吸入室及び該吸入冷媒を該吸入室に導入する吸入孔のうち少なくともいずれか一方と、前記モータ室とを連通することを要旨とする。 【0012】この発明によれば、前記モータ室には、前記外部冷媒回路からの吸入冷媒が導入される。該吸入冷媒は低温低圧であり、冷却効率の向上のためには好適なものであるといえる。 【0013】請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動斜板圧縮機において、前記吸入室に設けられるとともに前記外部冷媒回路からの吸入冷媒を該吸入室に導入する第1の吸入孔と、前記モータ室に設けられるとともに前記外部冷媒回路からの吸入冷媒を該モータ室に導入する第2の吸入孔とを備えることを要旨とする。 【0014】この発明によれば、前記吸入冷媒の一部は前記モータ室に導入されるが、一部は同室に導入されることなく吸入室を介してシリンダボアに吸入される。従って、前記モータ室内で昇温される吸入冷媒は、その一部のみにすぎないため、前記シリンダボア内に吸入される冷媒の温度は比較的上昇しない。つまり、このシリンダボアに吸入される冷媒の温度上昇に伴う比体積の増大が引き起こす圧縮効率の低下が抑えられる。 【0015】請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電動斜板圧縮機において、前記モータ室及び前記斜板室は両室の間に設けられた隔壁によって圧力的に隔絶され、前記隔壁には、該隔壁を貫通するように装着された前記駆動軸と、該隔壁との隙間からの冷媒の漏れを防止するためのシール部材が備えられることを要旨とする。 【0016】この発明によれば、シール部材によって、モータ室及び斜板室は、より確実に圧力的に隔絶される。両室が異なる圧力状態を要求される場合には、一方から他方への冷媒の漏れが引き起こす圧縮機全体としての圧縮効率の低下を防ぐことができる。 【0017】 【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明を冷媒として二酸化炭素を使用する多段式の電動斜板圧縮機に具体化した第1の実施形態を図1および図2に従って説明する。なお、図1の左方を圧縮機の前方とし、右方を後方とする。 【0018】図1に示すように、電動斜板圧縮機は、モータハウジング11、フロントハウジング12、シリンダブロック13及びリアハウジング14を備えている。これら各ハウジング11,12,14及びシリンダブロック13は、図示しない複数本の通しボルトにより相互に接合固定されて、ほぼ円筒形状をした圧縮機のケースを構成する。モータハウジング11とフロントハウジング12とに囲まれた領域にはモータ室15が、フロントハウジング12とシリンダブロック13とに囲まれた領域には斜板室16がそれぞれ区画形成されている。 【0019】モータハウジング11とシリンダブロック13との間には、モータ室15および斜板室16に挿通された駆動軸17が前後一対のラジアルベアリング18A、18Bを介して回転可能に支持されている。駆動軸17はフロントハウジング12に形成された隔壁としての壁部12Aの孔12Bを貫通するように装着されている。孔12Bには、シール部材12Cが設けられている。シール部材12Cは、その内縁が駆動軸17の外周に密着するように形成されている。従って、壁部12A、シール部材12C及び駆動軸17によって、モータ室15と斜板室16とは圧力的に隔絶される。 【0020】モータ室15にはステータ19と、駆動軸17上に一体回転可能に固定されたロータ20とよりなる電動モータ21が収容されている。斜板室16において、駆動軸17上には円盤形状の斜板22が一体回転可能に固定され、斜板22と壁部12Aとの間にはスラストベアリング23が配設されている。一体化された駆動軸17および斜板22は、シリンダブロック13の中央に形成された収容凹部13C内に配設されたバネ24によって前方付勢された座金25と、スラストベアリング23とによってスラスト方向(駆動軸軸線方向)に位置決めされている。 【0021】シリンダブロック13には、第1のシリンダボア13Aと、該シリンダボア13Aよりも小径に形成された他のシリンダボアとしての第2のシリンダボア13Bとが、互いに駆動軸17を挟んで対向する位置に形成されている。各シリンダボア13A,13Bには、片頭型の第1および第2のピストン26,27がそれぞれ前後方向に往復摺動可能に収容されており、各ボア13A,13B内には各ピストン26,27の往復摺動に応じて体積変化する圧縮室13E,13Fがそれぞれ区画されている。各ピストン26,27の前側部には、凹部26A,27Aがそれぞれ設けられており、この凹部26A,27Aには、一対のシュー28,29が収容されている。両シュー28,29に斜板22の周縁部が摺動可能に挟持されることによって、各ピストン26,27は斜板22に作動連結されている。このため、前記電動モータ21による駆動軸17の回転に伴い、斜板22がこの駆動軸17と同期回転することで、斜板22の回転運動がその傾斜角度に対応するストロークでの各ピストン26,27の往復直線運動に変換される。 【0022】シリンダブロック13とリアハウジング14との間には、弁形成体30が両者に挟まれるようにして設けられている。図1及び図2に示すように、弁形成体30とリアハウジング14との間には、リアハウジング14の周壁に設けられた第1の吸入孔31Aを介して外部冷媒回路50からの吸入冷媒が導入される吸入室31が形成されている。更に、各シリンダボア13A,13B同士を接続する中間圧室32と、リアハウジング14の後壁に設けられた吐出孔33Aを介して外部冷媒回路50に連通された吐出室33とが区画形成されている。 【0023】弁形成体30は、吸入弁形成部材34、ポート形成部材35、第1及び第2吐出弁36A,36B、第1及び第2リテーナ37A,37B並びにピン30A,30Cからなる。 【0024】ポート形成部材35には、ポート35A,35B,35C,35D,35E及び35Fが形成されている。ポート35Aは吸入室31と第1のシリンダボア13Aとを連通させ、ポート35Bは第1のシリンダボア13Aと中間圧室32とを連通させる。また、ポート35Cは第2のシリンダボア13Bと中間圧室32とを連通させ、ポート35Dは第2のシリンダボア13Bと吐出室33とを連通させる。更に、ポート35Eは、後述する連通孔38を介して中間圧室32と斜板室16とを連通させ、ポート35Fは、同じく後述する連通路39を介して吸入室31とモータ室15とを連通させる。 【0025】また、吸入弁形成部材34には、ポート35A,35Cに整合する位置に吸入弁が形成されている。更に、中間圧室32内では、吐出弁36A及びリテーナ37Aが、ピン30Aによって吸入弁形成部材34及びポート形成部材35に固定されている。また、図2に示すように吐出室33内では、吐出弁36B及びリテーナ37Bが、ピン30Cによって両形成部材34,35に固定されている。 【0026】シリンダブロック13には、ポート35Eを介して中間圧室32と斜板室16とを連通させる連通孔38が形成されている。また、モータ室15の後側域は、連通路39及びポート35Fによって吸入室31と常時連通している。連通路39は、モータハウジング11、フロントハウジング12及びシリンダブロック13に亘って、モータ室15とポート35Fとの間に貫通形成されている。更に、モータハウジング11の前側部分には、該モータハウジング11に形成されたベアリング18Aを収容するための収容凹部11Aと外部冷媒回路50とを連通する第2の吸入孔31Bが設けられている。なお、外部冷媒回路50は、冷媒を圧縮機に供給する経路が分岐形成されており、これら分岐経路がそれぞれ第1及び第2の吸入孔31A,31Bに連通するように構成されている。 【0027】なお、第1の吸入孔31A、吸入室31、ポート35A、第1のシリンダボア13A、ポート35B、中間圧室32、ポート35C、第2のシリンダボア13B、ポート35D、吐出室33、吐出孔33A、第2の吸入孔31B、収容凹部11A、モータ室15、連通路39及びポート35Fによってケース内冷媒経路が構成される。 【0028】次に、上記のように構成された圧縮機の作用について説明する。電動モータ21により駆動軸17が回転されると、斜板22が一体に回転する。斜板22の回転に伴って各ピストン26,27がそれぞれシュー28,29を介して往復駆動される。この駆動の継続によって各圧縮室13E、13Fでは、冷媒の吸入、圧縮及び吐出が順次繰り返される。 【0029】第1の吸入孔31Aから吸入室31に至った冷媒は、ポート35Aを介して圧縮室13Eに吸入され、第1のピストン26の移動による圧縮作用を受けた後、ポート35Bを介して中間圧室32に吐出される。 【0030】更に、この中間圧室32内の冷媒の一部は、ポート35Cを介して圧縮室13Fに吸入され、第2のピストン27の移動による圧縮作用の後、ポート35Dを介して吐出室33に吐出される。吐出室33に吐出された冷媒は、吐出孔33Aから外部冷媒回路50に送り出される。 【0031】前述の中間圧室32内の冷媒のうち圧縮室13Fに吸入されなかったものの少なくとも一部は、ポート35E及び連通孔38を通過して斜板室16に供給される。そのため、斜板室16は中間圧室32と同等の圧力にまで昇圧される。 【0032】一方、外部冷媒回路50から第1の吸入孔31Aに導入されずに第2の吸入孔31Bに至った冷媒は、収容凹部11A内のベアリング18Aの隙間を介してモータ室15に導入される。このモータ室15に導入された冷媒は、ステータ19とロータ20との隙間を通過した後、連通路39及びポート35Fを介して吸入室31に導入される。このモータ室15に供給された冷媒により電動モータ21が冷却される。 【0033】本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。 (1) モータ室15の冷却のために、外部冷媒回路50からの吸入冷媒を導入している。この吸入冷媒は、圧縮機による圧縮作用を受ける前の低温状態にあるため、効率よくモータ室15を冷却することができる。その結果、高速運転を行ったり、電動モータ21に高負荷がかかったりした場合にも、電動モータ21の温度上昇が抑えられるため、電動モータ21の減磁が防止される。 【0034】(2) 中間圧室32内の冷媒を斜板室16へ導入することによって斜板室16内の圧力は中間圧室32内の圧力と同等の中間圧力となる。つまり、第1のピストン26の前側に作用する圧力と、圧縮室13Eの冷媒吐出時に該ピストン26の後側に作用する圧力とがほぼ等しい状態となる。また、第2のピストン27の前側に作用する圧力と、圧縮室13Fの冷媒吐出時に該ピストン27の後側に作用する圧力との圧力差も従来に比べて小さくなる。即ち、各ピストン26,27にかかる負荷荷重が最も大きくなる吐出工程にあるときの各ピストン26,27の前側と後側との圧力差が少なくなる。従って、各部材(ピストン26,27、シュー28,29、斜板22、駆動軸17及びスラストベアリング23)に作用する力や摩擦力が減少して機械損失が減少するため、圧縮機の耐久性や静粛性などの性能向上が可能になる。更に、ブローバイガスが減少するため、圧縮効率の向上を図ることができる。 【0035】(3) 圧縮室13Eに導入される吸入冷媒は、第1の吸入孔31Aのみを介して吸入室31に導入された冷媒と、第2の吸入孔31Bを介してモータ室15を通過した後に吸入室31に導入された冷媒との混合冷媒となる。そのため、モータ室15内で加熱され高温状態になった冷媒は、吸入室31内で、第1の吸入孔31Aのみを通過した低温状態の冷媒とミックスされて比較的低温となる。つまり、温度上昇による比体積の増大が抑えられた冷媒が圧縮室13Eに吸入されるため、圧縮効率の低下を抑止することができる。 【0036】(4) 壁部12Aに設けられたシール部材12Cが、孔12Bと駆動軸17との隙間におけるモータ室15と斜板室16との連通を阻んでいる。従って、モータ室15と斜板室16との圧力的隔絶をより確実なものとすることができる。つまり、斜板室16からモータ室15への冷媒の漏れをより確実に防ぎ、圧縮機全体としての圧縮効率の向上を可能とする。 【0037】(5) 第2の吸入孔31Bに導入された冷媒がラジアルベアリング18Aの隙間を通過してモータ室15に至るように構成されている。即ち、冷媒は、ラジアルベアリング18Aを冷却するとともに、この冷媒中に含まれるミスト状の潤滑油によってラジアルベアリング18Aを潤滑する。これにより、高温状態にさらされやすい傾向にあるモータ室15内のラジアルベアリング18Aの耐久性を向上させることができる。 【0038】(6) 第2の吸入孔31Bからモータ室15に導入された冷媒がステータ19とロータ20との隙間を介してモータ室15の後側域へと通過するように構成されている。即ち、冷媒は、電動モータ21の表面の広範囲を冷却する。これにより、電動モータ21を効率よく冷却することができる。 【0039】(第2の実施形態:図3及び図4参照)この第2の実施形態の電動斜板圧縮機は、前記第1の実施形態においてケース内冷媒経路及び連通路の構成を変更したものであり、その他の点では第1の実施形態の電動斜板圧縮機と同一の構成になっている。従って、第1の実施形態と共通する構成部分については図面上に同一符号を付して重複した説明を省略する。 【0040】この実施形態では、冷媒が必ず斜板室16を経て吸入室31に導入される構成で、外部冷媒回路50から直接的に吸入室31に冷媒を導入する吸入孔31Aは設けられていない。 【0041】モータ室15に冷媒を導入する吸入孔31Bは、モータ室15の前側域と外部冷媒回路50とを連通するようにモータハウジング11周壁に形成されている。また、駆動軸17には、モータ室15の後側域と後述する中継室13Gとを連通する連通孔17Aが形成されている。中継室13Gは、収容凹部13Cの後方に設けられ、シリンダブロック13に設けられた中継室連通孔13Hとポート形成部材35に設けられたポート35Gとを介して連通孔17Aと吸入室31とを連通している。つまり、前記連通孔17A、中継室13G及び中継室連通孔13Hによって連通路が構成される。 【0042】また、吸入孔31B、モータ室15、連通孔17A、中継室13G、中継室連通孔13H、ポート35G、吸入室31、ポート35A、第1のシリンダボア13A、ポート35B、中間圧室32、ポート35C、第2のシリンダボア13B、ポート35D、吐出室33及び吐出孔33Aによってケース内冷媒経路が構成される。 【0043】シリンダブロック13には、ポート形成部材35に設けられたポート35Hを介して中間圧室32と斜板室16とを連通させる連通孔40が形成されている。また、収容凹部13C内周面と駆動軸17外周面との間には、シール部材41が設けられている。シール部材41は、シール部材41を挟んだ収容凹部13Cの前側域と後側域とを圧力的に隔絶する。 【0044】外部冷媒回路50から吸入孔31Bを介してモータ室15に導入された冷媒は、ステータ19とロータ20との隙間を通過してモータ室15の後側域に至ると、連通孔17Aを介して中継室13Gに導入される。この中継室13Gに導入された冷媒は、中継室連通孔13H及びポート35Gを介して吸入室31に導かれる。その後、各ポート35A,35B,35C,35Dを介して圧縮室13E、中間圧室32、圧縮室13F、吐出室33、吐出孔33Aを経て外部冷媒回路50へ吐出される。 【0045】なお、中間圧室32に導入された冷媒の一部は、圧縮室13Fに吸入されずにポート35H及び連通孔40を介して斜板室16に導入される。これにより斜板室16は中間圧室32と同等の中間圧力状態になる。一方、外部冷媒回路50から吸入された後であって圧縮作用を受ける前の吸入冷媒が通過する中継室13Gはその室内圧力が斜板室16の圧力よりも低い。シール部材41は、この圧力差に起因する斜板室16から中継室13Gへの冷媒の漏れを防止する。 【0046】この実施形態によれば、前記実施形態の(1),(2),(4)及び(6)の効果の他に以下のような効果を得ることができる。 (7) 外部冷媒回路50から吸入室31に冷媒が導入される経路はひとつであり、その経路にはモータ室15が含まれている。即ち、圧縮機内に導入された冷媒は強制的にモータ室15を通過させられ、その後に吸入室31に導入される。従って、モータ室15の冷却効率が向上する。 【0047】(8) シール部材41が、斜板室16ひいては中間圧室32と、中継室13Gひいては吸入室31との連通を阻んでいる。従って、中間圧室32と吸入室31との圧力的隔絶をより確実なものとすることができ、圧縮機全体としての圧縮効率の向上を可能とする。 【0048】(第3の実施形態:図5及び図6参照)この第3の実施形態の電動斜板圧縮機は、前記第1の実施形態においてケース内冷媒経路及び連通路の構成を変更したものであり、その他の点では第1の実施形態の電動斜板圧縮機と同一の構成になっている。従って、第1の実施形態と共通する構成部分については図面上に同一符号を付して重複した説明を省略する。 【0049】ポート形成部材35には、各ポート35A,35B,35C,35D及び35Eに加え、ポート35Jが設けられている。ポート35Jは吐出室33と後述する連通路42とを連通させる。 【0050】図6に示すように、吐出室33はリアハウジング14の外周部近傍まで延出形成されている。圧縮機ケース(図6ではリアハウジング14)の外周面上には駆動軸17と平行に膨出形成された冷媒冷却手段としての凸部43内に連通路42が形成されている。連通路42は、モータハウジング11、フロントハウジング12及びシリンダブロック13に亘って貫通形成されており、ポート35Jとモータ室15内の後側域とを連通している。従って、モータ室15と吐出室33とは、連通路42及びポート35Jを介して連通されている。 【0051】第1の実施形態で、収容凹部11Aと外部冷媒回路50とを連通するようにモータハウジング11に設けられていた吸入孔31Bと、吐出室33と外部冷媒回路50とを連通するようにリアハウジング14に設けられていた吐出孔33Aとは廃されている。一方、この第3の実施形態では、モータハウジング11の前側部分に吐出孔33Bが設けられている。吐出孔33Bは、収容凹部11Aと外部冷媒回路50とを連通するように形成されている。 【0052】なお、吸入孔31A、吸入室31、ポート35A、第1のシリンダボア13A、ポート35B、中間圧室32、ポート35C、第2のシリンダボア13B、ポート35D、吐出室33、ポート35J、連通路42、モータ室15、収容凹部11A及び吐出孔33Bによってケース内冷媒経路が構成される。 【0053】吸入孔31Aを介して外部冷媒回路50から吸入室31に導入された冷媒は、各ポート35A,35B,35C,35Dを介して圧縮室13E、中間圧室32、圧縮室13F、吐出室33の順に各室に導入される。吐出室33に至った冷媒は、ポート35J及び連通路42を介してモータ室15の後側域に導入される。その後、ステータ19とロータ20との隙間及びラジアルベアリング18Aの隙間を通過して吐出孔33Bを経て外部冷媒回路50に至る。 【0054】なお、中間圧室32に導入された冷媒の一部は、圧縮室13Fに吸入されずにポート35E及び連通孔38を介して斜板室16に導入される。これにより斜板室16内は中間圧室32と同等の中間圧力状態になる。 【0055】この実施形態によれば、前記実施形態の(2)及び(4)の効果の他に以下のような効果を得ることができる。 (9) 圧縮作用を受ける前の冷媒を用いず、全圧縮行程完了後であって外部冷媒回路50への吐出前段階にある吐出冷媒を用いてモータ室15の冷却を行っている。該吐出冷媒は、モータ室15よりは低温であるため、この構成によってもモータ室15を冷却することができる。また、モータ室15内で加熱される前の低温状態の冷媒が各圧縮室13E,13Fに導入される。この冷媒はモータ室15内で加熱されたものに比して比体積が小さいため、圧縮効率の向上を図ることができる。 【0056】(10) 吐出室33に至った冷媒は、ポート35J及び連通路42を通過してモータ室15に至る。この連通路42は圧縮機ケースの外周部から膨出形成された凸部43内に形成されているため連通路42内の熱は圧縮機外部に放出されやすい。そのため、この連通路42を通過する冷媒は冷却されてからモータ室15に至ることになる。つまり、低温化された冷媒がモータ室15に吸入されるため、冷却効率の向上を図ることができる。 【0057】(11) モータ室15の前側域に至った冷媒がラジアルベアリング18Aの隙間を通過して吐出孔33Bを介して外部冷媒回路50に導入されるように構成されている。即ち、冷媒は、ラジアルベアリング18Aを冷却するとともに、この冷媒中に含まれるミスト状の潤滑油によってラジアルベアリング18Aを潤滑する。これにより、高温状態にさらされやすい傾向にあるモータ室15内のラジアルベアリング18Aの耐久性を向上させることができる。 【0058】(12) 連通路42を介してモータ室15に導入された冷媒がステータ19とロータ20との隙間を通過してモータ室15の前側域へと至るように構成されている。即ち、冷媒は、電動モータ21の表面の広範囲を冷却する。これにより、電動モータ21を効率よく冷却することができる。 【0059】実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、以下の様態でも実施できる。 ○ 前記実施形態では、モータ室15の冷却は、圧縮作用が一度も行われていない吸入冷媒、又は、全圧縮行程が完了した吐出冷媒によって行われたが、例えば、後述のような圧縮機の中間圧冷媒によって行われるようにしてもよい。 【0060】この圧縮機は、第1のシリンダボア13Aの吐出側ポートであるポート35Bに連通する第1の中間圧室と、第2のシリンダボア13Bの吸入側ポートであるポート35Cに連通する第2の中間圧室とを備えている。モータ室15は、両中間圧室にそれぞれ連通形成された連通経路に連通している。つまり、モータ室15は、ケース内冷媒経路内で両中間圧室の中間に位置する。一方、斜板室16は、前記連通経路とは別の連通孔によって前記第1の中間圧室と連通している。この構成によれば、第1のシリンダボア13Aから前記第1の中間圧室に導入された中間圧冷媒はモータ室15を通過して前記第2の中間圧室に至った後に第2のシリンダボア13Bに吸入される。また、前記連通孔を介して前記第1の中間圧室から斜板室16に中間圧冷媒が導入される。従って、モータ室15が冷却されるとともに、斜板室16は中間圧状態に昇圧される。 【0061】○ 前記実施形態では、シリンダボア等は2段式のものを1組のみ設けたが、例えば、2組以上設けてもよい。また、3段式以上の多段式としてもよい。 ○ 多段式圧縮機に限らず、冷媒が圧縮機に吸入された後、一度だけ圧縮作用を受けて圧縮機外に吐出される単段式圧縮機に適用してもよい。 【0062】○ ピストンのストローク量が一定の固定容量式に限らず、ピストンのストローク量を変化させることが可能な可変容量式圧縮機であってもよい。 ○ 第1及び第2の実施形態では、吸入孔31Bをモータ室15の前側域や収容凹部11Aに連通するように設けたが、モータ室15に連通し、モータ室15と斜板室16とが圧力的に隔絶されている限り、どの箇所に設けられていてもよい。同様に、第3の実施形態で収容凹部11Aに連通するように設けられた吐出孔33Bの設置箇所は、この箇所に限定されない。 【0063】○ 前記実施形態では、1個のみの吸入孔31Bまたは吐出孔33Bがモータ室15(収容凹部11A)に連通するように設けられたが、複数個設けられていてもよい。 【0064】次に、前記実施形態から把握できる請求項に記載した発明以外の技術的思想について、その効果と共に以下に記載する。 ○ 請求項1に記載の発明において、前記圧縮機は、冷媒が圧縮機に吸入された後、一度だけ圧縮作用を受けて圧縮機外に吐出される単段式圧縮機である。この場合、単段式圧縮機の電動モータの過熱減磁による回転効率の低下を抑止することができる。 【0065】○ 請求項2に記載の発明において、前記連通路は、前記外部冷媒回路への吐出冷媒が存在する吐出室及び前記吐出冷媒を前記外部冷媒回路に導入する吐出孔のうち少なくともいずれか一方と、前記モータ室とを連通する。この場合、吐出冷媒によるモータ室冷却が可能になり、圧縮作用を一度も受けていない吸入冷媒を用いた場合に比して、圧縮室に吸入される冷媒の温度を低下させることができ、比体積の減少による圧縮効率の向上を図ることができる。 【0066】○ 請求項3に記載の発明において、前記連通路及び前記モータ室は前記ケース内冷媒経路に含まれるとともに、前記圧縮機に設けられた唯一の吸入孔と吸入室との間に設けられる。この場合、吸入孔に導入された冷媒は強制的にモータ室に導入されるため、モータ室の冷却効率が向上する。 【0067】 【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜5に記載の本発明によれば、電動斜板圧縮機において、電動モータの過熱減磁による回転効率の低下を防止するとともに冷媒の昇温に伴う圧縮効率の低下を防止することができる。また、請求項2〜5に記載の多段式電動斜板圧縮機においては、ブローバイガス及び機械損失を低減して、圧縮効率、耐久性及び静粛性などの性能向上を図ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003218 【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
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| 【出願日】 |
平成12年1月18日(2000.1.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068755 【弁理士】 【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−200785(P2001−200785A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月27日(2001.7.27) |
| 【出願番号】 |
特願2000−9254(P2000−9254) |
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